説明

固形物微粒子懸濁液処理装置

【課題】 濃縮装置と、脱水装置とを備える固形物微粒子懸濁液処理装置であって、従来技術に比べて小型化された固形物微粒子懸濁液処理装置を提供する。
【解決手段】 固形物微粒子懸濁液を濃縮する濃縮装置と、汚泥脱水装置と、濃縮装置の底部に沈殿した汚泥を汚泥脱水装置へ搬送する汚泥搬送装置とを備え、濃縮装置は中空糸濾過膜と逆洗装置とを有し、中空糸濾過膜は固形物微粒子懸濁液を吸引して濾過し、逆洗装置は中空糸濾過膜を逆洗して膜表面に付着したスケールを剥落させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形物微粒子懸濁液処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固形物微粒子懸濁液を濃縮する濃縮装置と、脱水装置とを備える固形物微粒子懸濁液処理装置が特許文献1等に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−264720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の固形物微粒子懸濁液処理装置が備える濃縮装置は、一般に平膜を介して固形物微粒子懸濁液を吸引し、エアバブリングによって膜表面に付着したスケールを剥離させるものであった。平膜故に吸引時の負圧が微小であり、その結果スケールを形成する固形物微粒子間の結合が弱いことと、エアバブリングによって固形物微粒子懸濁液が攪拌されることとが相俟って、膜表面から剥離したスケールは微粒子化されて水中に分散し、再び懸濁液を形成していた。濃縮された固形物微粒子懸濁液を脱水するには、大型高回転の遠心分離機を利用するか、或いはフィルタープレスを使用する必要があり、脱水装置の大型化ひいては固形物微粒子懸濁液処理装置の大型化を招いていた。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、濃縮装置と、脱水装置とを備える固形物微粒子懸濁液処理装置であって、従来技術に比べて小型化された固形物微粒子懸濁液処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明においては、固形物微粒子懸濁液を濃縮する濃縮装置と、汚泥脱水装置と、濃縮装置の底部に沈殿した汚泥を汚泥脱水装置へ搬送する汚泥搬送装置とを備え、濃縮装置は中空糸濾過膜と逆洗装置とを有し、中空糸濾過膜は固形物微粒子懸濁液を吸引して濾過し、逆洗装置は中空糸濾過膜を逆洗して膜表面に付着したスケールを剥落させることを特徴とする固形物微粒子懸濁液処理装置を提供する。
本発明に係る固形物微粒子懸濁液処理装置においては、中空糸濾過膜を使用するので、平膜を使用する場合に比べて吸引時の負圧を大きくすることができ、膜表面に付着したスケールを形成する固形物微粒子間の結合を強くすることができる。スケールを形成する固形物微粒子間の結合が強いことと、逆洗はエアバブリングと異なり固形物微粒子懸濁液を攪拌しないこととが相俟って、逆洗によって膜表面から剥離したスケールは、微粒子化されることなく、ひいては水中に分散して再び懸濁液を形成することなく、砂粒大の粒子となって濃縮装置の底部に沈殿する。砂粒大の固形物粒子から成る汚泥は、大型高回転の遠心分離機やフィルタープレスを使用するまでもなく、小型低回転の遠心分離機を用いて脱水することができる。この結果、固形物微粒子懸濁液処理装置が小型化される。
固形物微粒子懸濁液を加圧して中空糸濾過膜を透過させるのではなく、固形物微粒子懸濁液を常圧のまま吸引して中空糸濾過膜を透過させるので、固形物微粒子懸濁液と中空糸濾過膜とを収容する濃縮槽を耐圧構造にする必要がない。この結果、濃縮装置の構造が簡素化される。
【0006】
本発明の好ましい態様においては、汚泥搬送装置は往復動ポンプを有する。
往復動ポンプは遠心ポンプや軸流ポンプ等とは異なり流体を攪拌しないので、汚泥を形成する砂粒大の固形物粒子を微細粒子に破砕することなく、汚泥を汚泥脱水装置まで搬送することができる。
【0007】
本発明の好ましい態様においては、汚泥脱水装置は遠心分離装置である。
砂粒大の固形物粒子から成る汚泥は、小型低回転の遠心分離装置で脱水することができる。この結果、汚泥脱水装置、ひいては固形物微粒子懸濁液処理装置が小型化される。
【0008】
本発明においては、中空糸濾過膜と逆洗装置とを有し、中空糸濾過膜は固形物微粒子懸濁液を吸引して濾過し、逆洗装置は中空糸濾過膜を逆洗して膜表面に付着したスケールを剥落させることを特徴とする固形物微粒子懸濁液濃縮装置を提供する。
本発明においては、中空糸濾過膜に固形物微粒子懸濁液を吸引して濾過し、中空糸濾過膜を逆洗して膜表面に付着したスケールを剥落させることを特徴とする固形物微粒子懸濁液濃縮方法を提供する。
固形物微粒子懸濁液を加圧して中空糸濾過膜を透過させるのではなく、固形物微粒子懸濁液を常圧のまま吸引して中空糸濾過膜を透過させるので、固形物微粒子懸濁液と中空糸濾過膜とを収容する濃縮槽を耐圧構造にする必要がない。この結果、濃縮装置の構造が簡素化される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例に係る固形物微粒子懸濁液処理装置の構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施例に係る固形物微粒子懸濁液処理装置を説明する。
図1に示すように、固形物微粒子懸濁液処理装置は濃縮装置1を備えている。濃縮装置1は、複数の中空糸濾過膜モジュール1aと、中空糸濾過膜モジュール1aを収納する濃縮槽1bと、中空糸濾過膜モジュール1aの上部から延びる濾過水排出通路1cと、濾過水排出通路1cの途上に配設されたポンプ1dとを有している。濃縮装置1は更に、図示しない加圧空気供給装置から延びて濾過水通路1cのポンプ1dよりも上流の部位に接続する逆洗エア供給通路1eと、逆洗エア供給通路1eの途上に配設された開閉弁1fとから構成される逆洗装置1gとを有している。
固形物微粒子懸濁液供給通路2が濃縮槽1bの上部に接続している。
濃縮槽1bの漏斗状の底部から濃縮槽1bの上部へ汚泥循環通路3が延び、汚泥循環通路3の途上にポンプ3aが配設されている。
汚泥吸引通路4が、ポンプ3aの上流側で汚泥循環通路3から分岐している。汚泥吸引通路4の途上に、往復動ポンプであるダイヤフラムポンプ4aが配設されている。
汚泥循環通路3の汚泥吸引通路4分岐部よりも上流の部位と、汚泥吸引通路4と、ダイヤフラムポンプ4aとが、汚泥搬送装置5を形成している。
汚泥搬送装置5の汚泥吸引通路4は、汚泥脱水装置である遠心分離機6に接続している。
分離液通路7が遠心分離機6から延びて分離液槽8に接続している。
ポンプ9が分離液槽8の底部に配設されている。ポンプ9から延びる分離液循環通路10が、汚泥循環通路3のポンプ3aよりも下流の部位に接続している。
【0011】
本実施例に係る固形物微粒子懸濁液処理装置の作動を説明する。
固形物微粒子であるシリコン切削粉が水中に懸濁した半導体・ソーラーウエハー加工廃液が、図示しない半導体・ソーラーウエハー加工装置から固形物微粒子懸濁液供給通路2を介して、濃縮装置1の濃縮槽1bに供給される。
ポンプ1dが作動し、中空糸濾過膜モジュール1aが廃液を吸引して、廃液を濾過する。濾過液である水は、濾過水排出通路1cを介して図示しない半導体・ソーラーウエハー加工装置へ還流する。中空糸濾過膜モジュール1aの吸引時の負圧は、平膜濾過モジュールの吸引時の負圧に比べて大きいので、中空糸濾過膜の外表面に付着するスケールを形成するシリコン切削粉は、相互に強く結合している。
【0012】
定期的に開閉弁1fが開き、逆洗エア供給通路1eを介して、図示しない加圧空気供給装置から中空糸濾過膜モジュール1aに逆洗エアが供給され、中空糸濾過膜モジュール1aが逆洗されて再生する。
逆洗時に中空糸濾過膜の外表面に付着したスケールが剥離する。スケールを形成するシリコン切削粉間の結合が強いことと、逆洗はエアバブリングと異なり半導体・ソーラーウエハー加工廃液を攪拌しないこととが相俟って、逆洗により膜表面から剥離したスケールは、微粒子化されることなく、ひいては水中に分散して再び懸濁液を形成することなく、砂粒大の粒子となって濃縮槽1bの底部に沈殿し、汚泥を形成する。
半導体・ソーラーウエハー加工廃液を加圧して中空糸濾過膜を透過させるのではなく、半導体・ソーラーウエハー加工廃液を常圧のまま吸引して中空糸濾過膜を透過させるので、半導体・ソーラーウエハー加工廃液と中空糸濾過膜モジュール1aとを収容する濃縮槽1bを耐圧構造にする必要がない。この結果、濃縮装置1の構造が簡素化される。
【0013】
ポンプ3aが作動し、濃縮槽1bの底部に溜まった汚泥を汚泥循環通路3へ吸引して流動化させる。汚泥循環通路3内の汚泥流は、ポンプ3aよりも上流域では層流を形成している。定期的にダイヤフラムポンプ4aが作動し、汚泥循環通路3内の流動化した汚泥の一部を、汚泥吸引通路4へ吸引する。ダイヤフラムポンプ4aは往復動ポンプであり汚泥を攪拌しないので、汚泥は層流を形成したまま遠心分離機6まで搬送される。汚泥搬送装置5により、濃縮槽1bの底部から遠心分離機6まで、汚泥が乱流を形成することなく層流を形成したまま搬送されるので、汚泥を形成する砂粒大のシリコン切削粉は微細粒子に破砕されることなく、遠心分離機6まで搬送される。
砂粒大の固形物粒子から成る汚泥は、大型高回転の遠心分離機やフィルタープレスを使用するまでもなく、小型低回転の遠心分離機6を用いて脱水することができる。この結果、脱水装置が小型化され、ひいては固形物微粒子懸濁液処理装置が小型化される。
本実施例に係る固形物微粒子懸濁液処理装置は、凝集剤を使用することなく、有価物の懸濁物質を回収できるので、半導体・ソレラーウエハー加工廃水からのシリコン回収に有効である。
【0014】
遠心分離機6による汚泥の脱水はバッチ処理により行われる。一回のバッチ処理毎に、シリコン切削粉が形成するケーキが遠心分離機6から取り出される。汚泥から分離された水は、分離液槽8に貯留され、ポンプ9と分離液循環通路10と、汚泥循環通路3の下流域とを通って、濃縮槽1へ還流する
【0015】
ダイヤフラムポンプ4a以外の往復動ポンプを汚泥吸引通路4の途上に配設しても良い。
本発明に係る固形物微粒子懸濁液処理装置を、半導体・ソーラーウエハー加工廃液以外の固形物微粒子懸濁液の処理に使用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0016】
固形物微粒子懸濁液処理装置は、固形物微粒子懸濁液の処理に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0017】
1 濃縮装置
1a 中空糸濾過膜モジュール
1b 濃縮槽
1g 逆洗装置
4a ダイヤフラムポンプ
5 汚泥搬送装置
6 遠心分離機
8 分離液槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形物微粒子懸濁液を濃縮する濃縮装置と、汚泥脱水装置と、濃縮装置の底部に沈殿した汚泥を汚泥脱水装置へ搬送する汚泥搬送装置とを備え、濃縮装置は中空糸濾過膜と逆洗装置とを有し、中空糸濾過膜は固形物微粒子懸濁液を吸引して濾過し、逆洗装置は中空糸濾過膜を逆洗して膜表面に付着したスケールを剥落させることを特徴とする固形物微粒子懸濁液処理装置。
【請求項2】
汚泥搬送装置は往復動ポンプを有することを特徴とする請求項1に記載の固形物微粒子懸濁液処理装置。
【請求項3】
汚泥脱水装置は遠心分離装置であることを特徴とする請求項2に記載の固形物微粒子懸濁液処理装置。
【請求項4】
中空糸濾過膜と逆洗装置とを有し、中空糸濾過膜は固形物微粒子懸濁液を吸引して濾過し、逆洗装置は中空糸濾過膜を逆洗して膜表面に付着したスケールを剥落させることを特徴とする固形物微粒子懸濁液濃縮装置。
【請求項5】
中空糸濾過膜に固形物微粒子懸濁液を吸引して濾過し、中空糸濾過膜を逆洗して膜表面に付着したスケールを剥落させることを特徴とする固形物微粒子懸濁液濃縮方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−78950(P2011−78950A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235699(P2009−235699)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(391022658)パーカーエンジニアリング株式会社 (21)
【Fターム(参考)】