説明

固形筆記体及びそれを用いた固形筆記体セット

【課題】 常温域において変色前後の状態を互変的に記憶保持できる筆跡を摩擦によって簡易に熱変色でき、前記筆跡が変色した状態を常温下で保持できる機能を備えた実用性に優れる固形筆記体を提供する。
【解決手段】 可逆熱変色性組成物を賦形剤に分散状態に保持、成形してなる固形筆記体であって、前記組成物は色濃度−温度曲線に関して大きなヒステリシス特性を示して第1色相と第2色相間の互変性を呈し、発色開始温度が−30〜0℃の範囲にあり、完全消色温度が50〜90℃の範囲にある固形筆記体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固形筆記体及びそれを用いた固形筆記体セットに関する。詳細には、熱変色性筆跡の変色前後の両様相の何れかを常温域で互変的に記憶保持させる構成のクレヨン、色芯等の固形筆記体及びそれを用いた固形筆記体セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱変色性筆跡を形成させる固形筆記体に関して、開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
前記特許文献1に記載の固形筆記体による熱変色性筆跡は、所定の温度を境としてその前後で変色し、変化前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しえない。即ち、もう一方の状態は、その状態が発現するに要する熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用が無くなれば常温域で呈する状態に戻ってしまうタイプのものである。
また、特許文献2に記載の固形筆記体による熱変色性筆跡は、変色前後の両状態のうち常温域では一方の状態しか存在せず、いずれかを選択的に視認できる機能を有するものの、前記筆記体を実用に供する場合、常温域で色調を保持する機能を必ずしも満足させるものではなく、冬場や夏場の環境温度によっては固形筆記体自体が変色したり、或いは、筆記して得られた記録物が変色して所期の機能を発現できない場合がある。
なお、消去方法については、体温、ヘアドライヤー、温水等が挙げられているが、体温で変色する可逆熱変色性組成物は夏場に変色前の状態を維持することができず、ヘアドライヤーや温水で変色する可逆熱変色性組成物は比較的高い温度で変色する機能を付与できるとしても、簡便な手段であるとはいえず、携帯性を満足させていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭49−62230号公報
【特許文献1】実開平7−6248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は可逆熱変色性組成物により形成された筆跡を、摩擦という簡便な手段により変色させることができ、前記筆跡が変色した状態を常温域で保持できる固形筆記体及びそれを用いた固形筆記体セットを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を賦形剤に分散状態に保持、成形してなる固形筆記体であって、前記組成物は色濃度−温度曲線に関して大きなヒステリシス特性を示して第1色相と第2色相間の互変性を呈し、各相の保持温度域が共に常温域にあり、第1色相状態にあって温度が上昇する過程では、第2の温度Tに達すると、第1色相は変色し始め、第2の温度Tより高い温度T以上の温度域で完全に第2色相となり、第2色相状態にあって温度が下降する過程では、前記第2の温度Tより低い第1の温度Tに達すると、第2色相は変色し始め、第1の温度Tより低い温度T以下の温度域で完全に第1色相となり、前記第1の温度Tと第2の温度Tの間の温度域で第1色相或いは第2色相が選択的に保持されるヒステリシス特性を示し、温度T2は−30〜0℃の範囲にあり、温度Tは50〜90℃の範囲にある固形筆記体を要件とする。
更には、前記可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を賦形性ワックスに分散状態に保持、成形してなること、前記可逆熱変色性組成物又は可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の温度T2は−30〜−5℃の範囲にあり、温度Tが60〜80℃の範囲にあること、前記可逆熱変色性組成物又は可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、色濃度−温度曲線に関して50℃乃至80℃のヒステリシス幅(ΔH)を示すこと、非変色性染料又は顔料を含んでなること、摩擦部材を設けてなること等を要件とする。
更には、前記固形筆記体と、摩擦体とからなる固形筆記体セットを要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、色濃度−温度曲線に関して広いヒステリシス幅(ΔH)を示して可逆的変色を生起させ、常温域において変色前後の状態を互変的に記憶保持できる可逆熱変色性組成物により形成された筆跡を摩擦によって簡易に熱変色でき、前記筆跡が変色した状態を常温下で保持できる機能を備えた実用性に優れる固形筆記体及びそれを用いた固形筆記体セットを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の固形筆記体は、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体とから少なくともなる発色状態の可逆熱変色性組成物、或いは、前記可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を賦形剤中に分散して固めたものであり、賦形剤は汎用されているワックス類が有効である。
前記賦形剤として具体的には、融点40〜120℃のパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム、酸化パラフィンワックス、酸化ペトロラクタム等の石油系ワックス、酸化ポリエチレンワックス、モンタン酸ワックス、エチレン酢酸ビニル共重合ワックス、エチレンアクリル共重合ワックス、ビニールエーテルワックス等の合成ワックス、セラック、カルナバワックス、カスターワックス、牛脂硬化油等の動植物系ワックス、ベヘン酸ベヘニル、ベベン酸ステアリル、パルミチン酸ステアリル、ミリスチン酸ステアリル、ラウリン酸ステアリル、ステアリン酸ステアリル、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ステアロン、ベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、リグノモリン酸、セロチン酸等のエステル類、高級アルコール類、ケトン類、脂肪酸類、パーム油、流動パラフィン、ポリブテン、ポリブタジエン、スチレンオリゴマー等の油脂脂肪酸、液状炭化水素類が挙げられる。
なお、鉛筆芯やシャープペンシル用芯等の鉛芯の場合は、タルク、マイカ、カオリン、クレー、沈降性硫酸バリウム、炭酸カルシウム、窒化ホウ素、チタン酸カリウムウィスカー等の体質材を強度の向上や書き味を調整する目的で配合される。
【0008】
前記可逆熱変色性組成物は、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体とから少なくともなる特開2005−1369号公報、特開2006−137886号公報、特開2006−188660号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性(ΔH=8〜70℃)を示し、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、低温域での第一色相を呈する状態(発色状態)、又は、高温域での第二色相を呈する状態(消色状態)を特定温度域で保持できる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物が好適に用いられる。
【0009】
以下に前記可逆熱変色性組成物の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性を図1のグラフによって説明する。
図1において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する温度T(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは完全発色状態を保持できる温度T(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは完全消色状態を保持できる温度T(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する温度T(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
また、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が大きい程、変色前後の各状態の保持が容易である。
ここで、TとTの差、或いは、TとTの差(Δt)が変色の鋭敏性を示す尺度である。
【0010】
更に、可逆熱変色性組成物の発消色状態のうち常温域では特定の一方の状態のみ存在させると共に、前記可逆熱変色性組成物による筆跡を摩擦により簡易に変色させるためには、完全消色温度(T)が50〜90℃であり、且つ、発色開始温度(T)が−30〜0℃である。
ここで、変色状態が常温域で保持でき、且つ、筆跡の摩擦による変色性を容易とするために何故完全消色温度(T)が50〜90℃、且つ、発色開始温度(T)が−30〜0℃以下であるかを説明すると、発色状態から消色開始温度(T)を経て完全消色温度(T)に達しない状態で加温を止めると、再び第一の状態に復する現象を生じること、及び、消色状態から発色開始温度(T)を経て完全発色温度(T)に達しない状態で冷却を中止しても発色を生じた状態が維持されることから、完全消色温度(T)が常温域を越える50℃以上であれば、発色状態は通常の使用状態において維持されることになり、発色開始温度(T)が常温域を下回る−30〜0℃の温度であれば消色状態は通常の使用において維持される。
更に、摩擦により筆跡を消去する場合、完全消色温度(T)が90℃以下であれば、筆記面に形成された筆跡上を摩擦部材による数回の摩擦による摩擦熱で十分に変色できる。
完全消色温度(T)が90℃を越える温度の場合、摩擦部材による摩擦で得られる摩擦熱が完全消色温度に達し難くなるため、容易に変色し難くなり、摩擦回数が増加したり、或いは、荷重をかけ過ぎて摩擦する傾向にあるため、筆記面を傷めてしまう虞がある。
よって、前記温度設定は筆記面に変色状態の筆跡を選択して択一的に視認させる熱消去性筆記具には重要な要件であり、利便性と実用性を満足させることができる。
前述の完全消色温度(T)の温度設定において、発色状態が通常の使用状態において維持されるためにはより高い温度であることが好ましく、しかも、摩擦による摩擦熱が完全消色温度(T)を越えるようにするためには低い温度であることが好ましい。
よって、完全消色温度(T)は、好ましくは60〜80℃である。
更に、前述の発色開始温度(T)の温度設定において、消色状態が通常の使用状態において維持されるためにはより低い温度であることが好ましく、−30〜−3℃が好適であり、−30〜−5℃がより好適である。
なお、筆記体に分散された状態の可逆熱変色性組成物を予め発色状態にするためには冷却手段としては汎用の冷凍庫にて冷却することが好ましいが、冷凍庫の冷却能力を考慮すると、−30℃迄が限度であり、従って、完全発色温度(T)は−30℃以上である。
本発明においてヒステシス幅(ΔH)は50℃乃至80℃の範囲であり、好ましくは55乃至80℃、更に好ましくは60乃至80℃である。
【0011】
以下に可逆熱変色性組成物を構成する(イ)、(ロ)、(ハ)成分について具体的に化合物を例示する。
本発明の(イ)成分、即ち電子供与性呈色性有機化合物としては、ジフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類等を挙げることができ、以下にこれらの化合物を例示する。
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3,6−ジフェニルアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、2−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−キシリジノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジエチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(N−エチル−N−i−アミルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−フェニル、3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド等を挙げることができる。
更には、蛍光性の黄色〜赤色の発色を発現させるのに有効な、ピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物等を挙げることができる。
【0012】
成分(ロ)の電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して成分(イ)を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群等がある。
活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂等を挙げることができる。又、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩であってもよい。
【0013】
以下に具体例を挙げる。
フェノール、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン等がある。
前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1、2、3−トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物等であってもよい。
【0014】
前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分について説明する。前記(ハ)成分としては下記一般式(1)で示される化合物、或いは、下記一般式(2)で示される化合物が好適に用いられる。
【化1】

〔式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、mは0〜2の整数を示し、X、Xのいずれか一方は−(CHOCOR又は−(CHCOOR、他方は水素原子を示し、nは0〜2の整数を示し、Rは炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、Y及びYは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、又は、ハロゲンを示し、r及びpは1〜3の整数を示す。〕
【化2】

〔式中、Rは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、m及びnはそれぞれ1〜3の整数を示し、X及びYはそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲンを示す。〕
【0015】
前記式(1)で示される化合物のうち、Rが水素原子の場合、より広いヒステリシス幅を有する可逆熱変色性組成物が得られるため好適であり、更にRが水素原子であり、且つ、mが0の場合がより好適である。
また、前記式(2)中のRは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示すが、好ましくは炭素数10〜24のアルキル基、更に好ましくは炭素数12〜22のアルキル基である。
前記化合物としては、オクタン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ノナン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、デカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ウンデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ドデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、トリデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、テトラデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ペンタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘキサデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘプタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、オクタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、オクタン酸1,1−ジフェニルメチル、ノナン酸1,1−ジフェニルメチル、デカン酸1,1−ジフェニルメチル、ウンデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ドデカン酸1,1−ジフェニルメチル、トリデカン酸1,1−ジフェニルメチル、テトラデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ペンタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘキサデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘプタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、オクタデカン酸1,1−ジフェニルメチル等を挙げることができる。
【0016】
前記(イ)、(ロ)、(ハ)成分の構成成分割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分0.1〜50、好ましくは0.5〜20、(ハ)成分1〜800、好ましくは5〜200の範囲である(前記割合はいずれも質量部である)。
又、各成分は各々二種以上の混合であってもよい。
【0017】
前記三成分からなる可逆熱変色性組成物はマイクロカプセルに内包して使用することもでき、酸性物質、塩基性物質、過酸化物等の化学的に活性な物質又は他の溶剤成分と接触しても、その機能を低下させることがなく、耐熱安定性が保持できる。また、種々の使用条件において可逆熱変色性組成物は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができる。
前記マイクロカプセルは、平均粒子径が0.5〜50μm、好ましくは1〜30μm、より好ましくは2〜20μmの範囲が実用性を満たす。
前記マイクロカプセルは最大外径の平均値が50μmを越えると分散安定性に欠けることがあり、また、最大外径の平均値が0.5μm未満では高濃度の発色性を示し難くなる。
また、前記マイクロカプセルは、内包物:壁膜=7:1〜1:1(質量比)、好ましくは6:1〜1:1(質量比)の範囲が有効であり、内包物の比率が前記範囲より小になると発色時の色濃度及び鮮明性の低下を免れず、内包物の比率が前記範囲より大になると、壁膜の厚みが肉薄となり過ぎ、圧力や熱に対する耐性の低下を生じ易くなる。
前記マイクロカプセル化は、従来より公知のイソシアネート系の界面重合法、メラミン−ホルマリン系等のin Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
前記マイクロカプセル顔料の形態は円形断面の形態のものの適用を拒まないが、非円形断面の形態が効果的である。
筆記により形成される筆跡は、前記マイクロカプセル顔料が被筆記面に対して長径側(最大外径側)を密接させて濃密に配向、固着されており、高濃度の発色性を示すと共に、前記筆跡を摩擦体による摩擦による外力に対して、前記マイクロカプセル顔料は外力を緩和する形状に微妙に弾性変形し、マイクロカプセルの壁膜の破壊が抑制され、熱変色機能を損なうことなく有効に発現させることができる。
【0018】
更に、電子受容性化合物として没食子酸エステルを用いた加熱発色型の可逆熱変色性組成物やそれを内包したマイクロカプセル顔料(特開2003−253149号公報)であっても、完全発色温度が45〜95℃の範囲にあり、消色開始温度が−30℃〜0℃の範囲を満たしていれば使用することができる。
【0019】
前記固形筆記体には、一般の染顔料(非熱変色性)を配合し、有色(1)から有色(2)への変色挙動を呈することもできる。
【0020】
本発明の固形筆記体により形成された筆跡を変色させるためには、筆跡を摩擦する別体の摩擦具を用いたり、固形筆記体に設けた摩擦部材を用いることができる。
前記固形筆記体に摩擦部材を設けることにより、携帯性に優れた筆記体が得られる。
また、前記摩擦具は固形筆記体と組み合わせて固形筆記体セットとすることもできる。
前記摩擦具や摩擦部材は、弾性感に富み、摩擦時に適度な摩擦を生じて摩擦熱を発生させることのできるエラストマー、プラスチック発泡体等の弾性体が好適であるが、プラスチック成形体や金属であってもよい。
なお、消しゴムを使用して筆跡を摩擦することもできるが、摩擦時に消しカスが発生するため、好ましくは前述のような摩擦具や摩擦部材が用いられる。
前記摩擦具や摩擦部材の材質としては、シリコーン樹脂やSEBS樹脂(スチレンエチレンブタジエンスチレンブロック共重合体)が好適に用いられる。
【実施例】
【0021】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
尚、実施例中の部は質量部を示す。
実施例1
可逆熱変色性組成物の調製
(イ)成分として6−(N−エチルイソペンチルアミノ)ベンゾ[a]フルオラン1部、(ロ)成分として4,4′−(2−メチルプロピリデン)ビスフェノール3部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル15部を加温、溶解させて、色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を得た。
【0022】
固形筆記体の調製
パラフィンワックス140F(融点61℃)〔日本精蝋(株)製〕35部、エチレン酢酸ビニル共重合ワックス〔日本精蝋(株)製〕25部、牛脂極度硬化油〔新日本理化(株)製〕25部からなる賦形性ワックス中に、前記可逆熱変色性組成物15部を加えて加熱混合溶融させ、クレヨン成形金型に流し込み冷却させて、固形筆記体(クレヨン)を得た。
前記固形筆記体を−16℃以下に冷却して可逆熱変色性組成物をピンク色に発色させた後、紙面上に筆記すると、ピンク色の筆跡を形成することができた。
前記筆跡は、SEBS樹脂からなる摩擦体を用いて摩擦することにより消去でき、再び固形筆記体を用いて文字を描くことができた。
【0023】
実施例2
固形筆記具の作製
実施例1で得たクレヨンをプラスチック製円筒状容器にセットして固形筆記具を得た。なお、容器の後端部にSEBS樹脂からなる摩擦体を設けてなる。
前記固形筆記具は紙面上に筆記すると、ピンク色の筆跡を形成することができ、容器の後端部に設けた摩擦体を用いて筆跡を摩擦することにより消去でき、携帯性に優れた固形筆記体であった。
【0024】
実施例3
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として2−(ブチルアミノ)−8−(ジペンチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−〔1〕ベンゾピラノ〔2−3−g〕ピリミジン−5,1′(3′H)−イソベンゾフラン〕−3−オン2.0部、(ロ)成分として2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、4,4′−(2−メチルプロピリデン)ビスフェノール3.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:−16℃、T:−8℃、T:48℃、T:58℃、ΔH:65℃、平均粒子径:2.5μm、可逆熱変色性組成物:壁膜=2.6:1.0、ピンク色から無色に色変化する)を得た。
【0025】
固形筆記体の調製
パラフィンワックス115F(融点46℃)〔日本精蝋(株)製〕5部、パラフィンワックス140F25部、エチレン酢酸ビニル共重合ワックス20部、ステアリン酸25部からなるワックス組成中に前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料20部を加えて、加熱混合溶融し、クレヨン成形金型に流し込み冷却させて固形筆記体(クレヨン)を得た。
前記固形筆記体を−16℃以下に冷却して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料をピンク色に発色させた後、紙面上に筆記すると、ピンク色の筆跡を形成することができた。
前記筆跡は、SEBS樹脂からなる摩擦体を用いて摩擦することにより消去でき、再び固形筆記体を用いて文字を描くことができた。
【0026】
実施例4
固形筆記具セットの作製
前記固形筆記体とSEBS樹脂からなる摩擦体を組み合わせて固形筆記具セットを得た。
前記固形筆記具セットは固形筆記体を用いて紙面上に筆記すると、ピンク色の筆跡を形成することができ、摩擦体を用いて筆跡を摩擦することにより消去でき、携帯性に優れた固形筆記体セットであった。
【0027】
実施例5
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として4,5,6,7−テトラクロロ−3−〔4−(ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル〕−3−〔1−エチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル〕−1(3H)−イソベンゾフラノン1.5部、(ロ)成分として2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、4,4′−(2−メチルプロピリデン)ビスフェノール3.0部、(ハ)成分としてカプリン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:−18℃、T:−9℃、T:42℃、T:63℃、平均粒子径:2.5μm、可逆熱変色性組成物:壁膜=2.8:1.0、青色から無色に色変化する)を得た。
【0028】
固形筆記体の調製
パラフィンワックス115F(融点46℃)〔日本精蝋(株)製〕5部、パラフィンワックス140F25部、エチレン酢酸ビニル共重合ワックス20部、ステアリン酸25部からなるワックス組成中に、蛍光顔料エポカラーFP−112(蛍光ピンク)〔日本触媒(株)製〕5部、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料20部を加えて、加熱混合溶融し、クレヨン成形金型に流し込み冷却させて固形筆記体(クレヨン)を得た。
前記固形筆記体を−18℃以下に冷却して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を青色に発色させた後、紙面上に筆記すると、青色とピンク色が混色となった紫色の筆跡を形成することができた。
前記筆跡は、SEBS樹脂からなる摩擦体を用いて摩擦することによりピンク色に変色した。
【0029】
実施例6
固形筆記具セットの作製
前記固形筆記体とSEBS樹脂からなる摩擦体を組み合わせて固形筆記具セットを得た。
前記固形筆記具セットは固形筆記体を用いて紙面上に筆記すると、紫色の筆跡を形成することができ、摩擦体を用いて筆跡を摩擦することによりピンク色になり、携帯性に優れた固形筆記体セットであった。
【0030】
実施例7
可逆熱変色性組成物の調製
(イ)成分として6−(N−エチルイソペンチルアミノ)ベンゾ[a]フルオラン1部、(ロ)成分として2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン3部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル15部を加温、溶解させて、色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を得た。
【0031】
固形筆記体の調製
ポリエチレンワックス(軟化点107℃)〔三洋化成(株)製、商品名サンワックス171−P〕100部、牛脂極度硬化油〔新日本理化(株)製〕13部からなる賦形性ワックス中に、前記可逆熱変色性組成物13部を加えて加熱混合溶融させ、押出成形により、成形・冷却・乾燥させて、固形筆記体(鉛芯)を得た。
前記鉛芯を−16℃以下に冷却して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料をピンク色に発色させた後、軸内に内蔵して鉛筆を得た。なお、軸の後部にはSEBS樹脂からなる摩擦体を設けてなる。
前記鉛筆を用いて紙面上に筆記すると、ピンク色の筆跡を形成することができた。
前記筆跡は、軸の後部に設けた摩擦体を用いて摩擦することにより消去でき、再び鉛筆を用いて文字を描くことができた。
【0032】
実施例8
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン1.0部、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン2.0部、(ロ)成分として4,4′−(2−メチルプロピリデン)ビスフェノール4.5部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン7.5部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:−20℃、T:−9℃、T:40℃、T:57℃、ΔH:63℃、平均粒子径:2.5μm、可逆熱変色性組成物:壁膜=2.6:1.0、赤色から無色に色変化する)を得た。
【0033】
固形筆記体の調製
ポリエチレンワックス(軟化点107℃)〔三洋化成(株)製、商品名サンワックス131−P〕100部、エチレン酢酸ビニル共重合ワックス13部からなる賦形性ワックス中に、前記可逆熱変色性組成物13部を加えて加熱混合溶融させ、押出成形により、成形・冷却・乾燥させて、固形筆記体(鉛芯)を得た。
前記鉛芯を−20℃以下に冷却して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を赤色に発色させた後、軸内に内蔵して鉛筆を得た。なお、軸の後部にはSEBS樹脂からなる摩擦体を設けてなる。
前記鉛筆を用いて紙面上に筆記すると、赤色の筆跡を形成することができた。
前記筆跡は、軸の後部に設けた摩擦体を用いて摩擦することにより消去でき、再び鉛筆を用いて文字を描くことができた。
【0034】
実施例9
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として2−(2−クロロアミノ)−6−ジブチルアミノフルオラン4.5部、(ロ)成分として4,4′−(2−メチルプロピリデン)ビスフェノール4.5部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン7.5部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:−20℃、T:−9℃、T:40℃、T:57℃、ΔH:63℃、平均粒子径:2.5μm、可逆熱変色性組成物:壁膜=2.6:1.0、黒色から無色に色変化する)を得た。
【0035】
固形筆記体の調製
ポリエチレンワックス(軟化点107℃)〔三洋化成(株)製、商品名サンワックス151−P〕100部、蜜ろう13部からなる賦形性ワックス中に、前記可逆熱変色性組成物13部を加えて加熱混合溶融させ、押出成形により、成形・冷却・乾燥させて、固形筆記体(シャープペンシル用芯)を得た。
前記固形筆記体を−20℃以下に冷却して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を黒色に発色させた後、シャープペンシル本体に内蔵してシャープペンシルを得た。なお、軸の後部にはSEBS樹脂からなる摩擦体を設けてなる。
前記シャープペンシルを用いて紙面上に筆記すると、黒色の筆跡を形成することができた。
前記筆跡は、軸の後部に設けた摩擦体を用いて摩擦することにより消去でき、再びシャープペンシルを用いて文字を描くことができた。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に用いられる可逆熱変色性組成物の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフである。
【符号の説明】
【0037】
完全発色温度
発色開始温度
消色開始温度
完全消色温度
ΔH ヒステリシス幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を賦形剤に分散状態に保持、成形してなる固形筆記体であって、前記組成物は色濃度−温度曲線に関して大きなヒステリシス特性を示して第1色相と第2色相間の互変性を呈し、各相の保持温度域が共に常温域にあり、第1色相状態にあって温度が上昇する過程では、第2の温度Tに達すると、第1色相は変色し始め、第2の温度Tより高い温度T以上の温度域で完全に第2色相となり、第2色相状態にあって温度が下降する過程では、前記第2の温度Tより低い第1の温度Tに達すると、第2色相は変色し始め、第1の温度Tより低い温度T以下の温度域で完全に第1色相となり、前記第1の温度Tと第2の温度Tの間の温度域で第1色相或いは第2色相が選択的に保持されるヒステリシス特性を示し、温度T2は−30〜0℃の範囲にあり、温度Tは50〜90℃の範囲にある固形筆記体。
【請求項2】
前記可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を賦形性ワックスに分散状態に保持、成形してなる請求項1記載の固形筆記体。
【請求項3】
前記可逆熱変色性組成物又は可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の温度T2は−30〜−5℃の範囲にあり、温度Tが60〜80℃の範囲にある請求項1又は2記載の固形筆記体。
【請求項4】
前記可逆熱変色性組成物又は可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、色濃度−温度曲線に関して50℃乃至80℃のヒステリシス幅(ΔH)を示す請求項1乃至3のいずれか一項に記載の固形筆記体。
【請求項5】
非変色性染料又は顔料を含んでなる請求項1乃至4のいずれか一項に記載の固形筆記体。
【請求項6】
摩擦部材を設けてなる請求項1乃至5のいずれか一項に記載の固形筆記体。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の固形筆記体と、摩擦体とからなる固形筆記体セット。

【図1】
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【公開番号】特開2012−193369(P2012−193369A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−119240(P2012−119240)
【出願日】平成24年5月25日(2012.5.25)
【分割の表示】特願2007−135109(P2007−135109)の分割
【原出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】