説明

固液分離システムおよびその制御方法

【課題】汚泥に凝集剤を添加・混合して凝集汚泥を形成し、その凝集汚泥をスクリュープレス脱水機により脱水する固液分離システムにおいて、凝集汚泥の凝集状態の良否を的確に判断して、凝集剤の添加量を適切に調整することができる固液分離システムおよびその制御方法を提供する。
【解決手段】スクリュープレス脱水機5のろ過スクリーン5cから排出される脱水ろ液の流量を流量計6によって測定するとともに、その脱水ろ液中の固形分濃度を固形分濃度計7によって測定し、制御装置8がそれらの流量測定値と固形分濃度測定値から凝集汚泥の凝集状態の良否を判断し、それに基づいて、凝集剤供給ポンプ3の作動を調節して、凝集反応装置2への凝集剤の供給量(添加量)を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥の固液分離システムおよびその制御方法に関し、特に、スクリュープレス脱水機を用いた汚泥の固液分離システムおよびその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
汚泥の固液分離システムの一つに、汚泥に凝集剤を添加及び混合し、スクリュープレス脱水機により脱水する固液分離システムがある。
【0003】
図2に、そのようなスクリュープレス脱水機を用いた固液分離システムの一例を示す。図2に示すように、スクリュープレス脱水機を用いた固液分離システムにおいては、汚泥(原汚泥)が汚泥供給ポンプ1によって凝集反応装置(凝集装置)2に供給されるとともに、同時に凝集剤が凝集剤溶解槽4から凝集剤供給ポンプ3によって凝集反応装置2に供給される。そして、凝集反応装置2において原汚泥と凝集剤が攪拌・混合されて凝集汚泥が形成された後、凝集反応装置2から流出した凝集汚泥がスクリュープレス脱水機5に投入される。スクリュープレス脱水機5は、投入口5aと、スクリュー駆動モータ5eにより回転される内胴スクリーン5bと、外筒スクリーン(ろ過スクリーン)5cと、排出口5dを備えており、投入口5aから投入された凝集汚泥が内胴スクリーン5bの回転により排出口5dに向かって進行させられ、排出口5dから脱水汚泥(脱水ケーキ)として排出されるとともに、脱水ろ液が外筒スクリーン5cから排出される。
【0004】
このような、スクリュープレス脱水機を用いた固液分離システムでは、スクリュープレス脱水機に投入される凝集汚泥の凝集状態によってスクリュープレス脱水機の処理性能が大きく左右され、投入する凝集汚泥の凝集状態が悪化すると、スクリュープレス脱水機の脱水性能が著しく低下して、脱水不良となる傾向がある。
【0005】
したがって、凝集汚泥の凝集状態の良否をいち早く検知することが重要であり、特許文献1には、ろ過スクリーンから排出される脱水ろ液の量から凝集汚泥の凝集状態の良否を判断する手法が提案されている。
【0006】
すなわち、特許文献1においては、図2に示すように、ろ過スクリーン5cから排出される脱水ろ液の流量を流量計6によって測定し、その流量測定値が制御装置8に入力される。制御装置8は、脱水ろ液の流量測定値から凝集汚泥の凝集状態の良否を判断し、それに基づいて、凝集剤供給ポンプ3の作動を調節して、凝集反応装置2への凝集剤の供給量(添加量)を調整するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−117598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載のように、スクリュープレス脱水機のろ過スクリーンから排出される脱水ろ液の量から凝集汚泥の凝集状態の良否を判断し、それに基づいて、凝集剤の添加量を調整する方法には、以下のような問題点がある。
【0009】
すなわち、スクリュープレス脱水機のろ過スクリーンから排出される脱水ろ液には、一般に、固形物分(固形分)が含まれており、脱水ろ液の量からだけでは凝集汚泥の凝集状態の良否を的確に判断することは難しい。
【0010】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、汚泥に凝集剤を添加・混合して凝集汚泥を形成し、その凝集汚泥をスクリュープレス脱水機により脱水する固液分離システムにおいて、凝集汚泥の凝集状態の良否を的確に判断して、凝集剤の添加量を適切に調整することができる固液分離システムおよびその制御方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有している。
【0012】
[1]汚泥に凝集剤を添加し、凝集処理を施す凝集装置と、該凝集装置から流出する凝集汚泥を脱水するスクリュープレス脱水機とを有する固液分離システムにおいて、前記スクリュープレス脱水機から排出される脱水ろ液の流量測定手段と固形分濃度測定手段と、前記流量測定手段と固形分濃度測定手段による測定値に基づき前記凝集装置での凝集剤の添加量を調整する凝集剤添加量調整手段を設けたことを特徴とする固液分離システム。
【0013】
[2]汚泥に凝集剤を添加及び混合し、スクリュープレス脱水機により脱水する固液分離システムにおいて、前記スクリュープレス脱水機から排出される脱水ろ液の流量と固形分濃度を測定し、その測定値に基づき前記凝集剤の添加量を調整することを特徴とする固液分離システムの制御方法。
【0014】
[3]前記脱水ろ液の流量測定値が所定の上限値より大きく、かつ、前記脱水ろ液の固形分濃度測定値が所定の上限値より大きい場合は、前記凝集剤の添加量を増加し、
前記脱水ろ液の流量測定値が所定の下限値より小さく、かつ、前記脱水ろ液の固形分濃度測定値が所定の下限値より小さい場合は、前記凝集剤の添加量を減少することを特徴とする前記[2]に記載の固液分離システムの制御方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、汚泥に凝集剤を添加・混合して凝集汚泥を形成し、その凝集汚泥をスクリュープレス脱水機により脱水する固液分離システムにおいて、凝集汚泥の凝集状態の良否を的確に判断して、凝集剤の添加量を適切に調整することができる。その結果、スクリュープレス脱水機の脱水性能が保持され、脱水不良の発生を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態を示す図である。
【図2】従来技術(特許文献1)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明においては、汚泥に凝集剤を添加・混合して凝集汚泥を形成し、その凝集汚泥をスクリュープレス脱水機により脱水する固液分離システムにおいて、凝集汚泥の凝集状態の良否を判断して、凝集剤の添加量を調整するに際して、スクリュープレス脱水機のろ過スクリーンから排出される脱水ろ液の量(流量)の測定に加えて、脱水ろ液中の固形分量(固形分濃度)の測定を行い、この二つの測定値に基づいて、凝集汚泥の凝集状態の良否を判断し、それによって凝集剤の添加量を調整することにより、凝集剤の使用量を最適化するようにしている。
【0018】
すなわち、凝集剤の添加量が過少で、凝集汚泥の凝集状態が著しく悪い場合は、脱水ろ液の流量が多くなるとともに、脱水ろ液中の固形分濃度も高くなる。一方、凝集剤の添加量が過多の場合は、凝集汚泥の凝集状態が進み過ぎて、脱水ろ液の粘性(粘度)が高くなり、脱水ろ液の流量が少なくなるとともに、脱水ろ液中の固形分濃度も低くなる。
【0019】
逆に言えば、凝集剤の添加量が適正で、凝集汚泥の凝集状態が良好の場合は、脱水ろ液の流量が多くなっても、脱水ろ液中の固形分濃度はそれほど高くならないし、脱水ろ液の流量が少なくなっても、脱水ろ液中の固形分濃度はそれほど低くならない。
【0020】
したがって、脱水ろ液の流量に加えて、脱水ろ液中の固形分濃度を測定することによって、両者の測定値から凝集汚泥の凝集状態をより正確に判断することができるようになる。
【0021】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る固液分離システムを示す図である。図1に示すように、この実施形態に係る固液分離システムにおいては、汚泥(原汚泥)が汚泥供給ポンプ1によって凝集反応装置(凝集装置)2に供給されるとともに、同時に凝集剤が凝集剤溶解槽4から凝集剤供給ポンプ3によって凝集反応装置2に供給される。そして、凝集反応装置2において原汚泥と凝集剤が攪拌・混合されて凝集汚泥が形成された後、凝集反応装置2から流出した凝集汚泥がスクリュープレス脱水機5に投入される。スクリュープレス脱水機5は、投入口5aと、スクリュー駆動モータ5eにより回転される内胴スクリーン5bと、外筒スクリーン(ろ過スクリーン)5cと、排出口5dを備えており、投入口5aから投入された凝集汚泥が内胴スクリーン5bの回転により排出口5dに向かって進行させられ、排出口5dから脱水汚泥(脱水ケーキ)として排出されるとともに、脱水ろ液が外筒スクリーン5cから排出される。
【0023】
その上で、この実施形態においては、ろ過スクリーン5cから排出される脱水ろ液の流量を流量計6によって測定するとともに、その脱水ろ液中の固形分濃度を固形分濃度計7によって測定し、それらの流量測定値と固形分濃度測定値が制御装置8に入力される。制御装置8は、脱水ろ液の流量測定値と固形分濃度測定値から凝集汚泥の凝集状態の良否を判断し、それに基づいて、凝集剤供給ポンプ3の作動を調節して、凝集反応装置2への凝集剤の供給量(添加量)を調整する。
【0024】
具体的には、脱水ろ液の流量測定値が所定の上限値より大きく、かつ、脱水ろ液の固形分濃度測定値が所定の上限値より大きい場合は、凝集剤の添加量を増加する。一方、脱水ろ液の流量測定値が所定の下限値より小さく、かつ、脱水ろ液の固形分濃度測定値が所定の下限値より小さい場合は、凝集剤の添加量を減少する。
【0025】
ちなみに、上記の流量測定値の上限値と下限値および固形分濃度測定値の上限値と下限値については、当該固液分離システムの操業実績等に基づいて定めればよい。
【0026】
なお、上記において、上限値と下限値が同じ値(上限値=下限値)であってもよい。
【0027】
このようにして、この実施形態においては、スクリュープレス脱水機を用いて汚泥の固液分離を行うに際して、凝集汚泥の凝集状態の良否を的確に判断して、凝集剤の添加量を適切に調整することができる。その結果、スクリュープレス脱水機の脱水性能が保持され、脱水不良の発生を防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0028】
1 汚泥供給ポンプ
2 凝集反応装置(凝集装置)
3 凝集剤供給ポンプ
4 凝集剤溶解槽
5 スクリュープレス脱水機
5a 投入口
5b 内胴スクリーン
5c 外筒スクリーン(ろ過スクリーン)
5d 排出口
5e スクリュー駆動モータ
6 流量計
7 固形分濃度計
8 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥に凝集剤を添加し、凝集処理を施す凝集装置と、該凝集装置から流出する凝集汚泥を脱水するスクリュープレス脱水機とを有する固液分離システムにおいて、前記スクリュープレス脱水機から排出される脱水ろ液の流量測定手段と固形分濃度測定手段と、前記流量測定手段と固形分濃度測定手段による測定値に基づき前記凝集装置での凝集剤の添加量を調整する凝集剤添加量調整手段を設けたことを特徴とする固液分離システム。
【請求項2】
汚泥に凝集剤を添加及び混合し、スクリュープレス脱水機により脱水する固液分離システムにおいて、前記スクリュープレス脱水機から排出される脱水ろ液の流量と固形分濃度を測定し、その測定値に基づき前記凝集剤の添加量を調整することを特徴とする固液分離システムの制御方法。
【請求項3】
前記脱水ろ液の流量測定値が所定の上限値より大きく、かつ、前記脱水ろ液の固形分濃度測定値が所定の上限値より大きい場合は、前記凝集剤の添加量を増加し、
前記脱水ろ液の流量測定値が所定の下限値より小さく、かつ、前記脱水ろ液の固形分濃度測定値が所定の下限値より小さい場合は、前記凝集剤の添加量を減少することを特徴とする請求項2に記載の固液分離システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−5930(P2012−5930A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142207(P2010−142207)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】