説明

固液分離装置

【課題】複数のスペーサによって互いに間隔をあけて配置された複数の固定リングと、隣り合う固定リングの間に配置された可動リングと、固定リングと可動リングの内部を延びるスクリューと、そのスクリューを回転駆動するモータとを有し、複数のスペーサによって、可動リングが隣り合う固定リングの間から抜け出ることを阻止した固液分離装置において、可動リングに作用する抵抗を下げ、可動リングの内周面の摩耗量を低減させる。
【解決手段】固定リング28の外径Dを、複数のスペーサ38の固定リング中心側の部分に接する円CCの直径Dよりも小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに間隔をあけて配置された複数の固定リングと、隣り合う固定リングの間に配置された可動リングと、固定リング及び可動リングの内部を延びるスクリューとを有し、可動リングの内径がスクリューの外径よりも小さく設定されている固液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を含む処理対象物、例えば、廃豆腐、食品加工排水、下水処理物或いは養豚場から排出される廃水などの有機系汚泥、切削屑を含む切削油、メッキ廃液、インク廃液、顔料廃液、塗料廃液などの無機系汚泥、或いは野菜屑や果実の皮、食品残渣、おからなどの処理対象物から液体を分離するために、上記形式の固液分離装置を用いることは従来より周知である(例えば、特許文献1参照)。この形式の固液分離装置によれば、複数の固定リングと複数の可動リングによって形成された筒状体の軸線方向一端側の入口開口から流入した処理対象物を、回転するスクリューによって、筒状体の軸線方向他端側の出口開口へ向けて移動させ、筒状体内を移動する処理対象物から分離された液体を、固定リングと可動リングの間の微小ギャップを通して筒状体外へ排出させ、液体分の減少した処理対象物を筒状体の軸線方向他端側の出口開口から排出させることができる。
【0003】
その際、可動リングの内径がスクリューの外径よりも小さく設定されているので、スクリューは、その回転によって、可動リングを半径方向に押動させ、該可動リングを固定リングに対して積極的に運動させることができる。このため、可動リングを駆動する専用の駆動装置を設けずとも、固定リングと可動リングの間の微小ギャップに入り込んだ固形物を効率よく排出させることができ、微小ギャップの目詰まりを防止することができる。このように、この形式の固液分離装置は、固定リングと可動リングの間に入り込んだ固形物を自動的に排出させるセルフクリーニング機能を備えている。
【0004】
ところが、処理対象物の種類によっては、可動リングの動きが鈍くなり、充分なセルフクリーニング機能が得られなくなるおそれがある。また、可動リングは、回転するスクリューによって押し動かされる部材であるため、可動リングの内周面が摩耗することは避けられない。従って、処理対象物によっては、可動リングが早期に寿命となり、固液分離装置の維持費が高くなるおそれを免れない。
【0005】
【特許文献1】特開平5−228695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述した従来の欠点を効果的に抑制することのできる固液分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、互いに間隔をあけて配置された複数の固定リングと、隣り合う固定リングの間に配置された可動リングと、隣り合う固定リングの間から前記可動リングが抜け出ることを阻止する複数の離脱阻止手段と、前記固定リングと可動リングの内部を延びるスクリューと、該スクリューを回転駆動する駆動手段とを具備し、前記複数の離脱阻止手段の固定リング中心側の部分に接する円の直径をD、前記固定リングの外径をD、該固定リングの内径をD、前記可動リングの外径をD、該可動リングの内径をD、前記スクリューの外径をDとしたとき、D>D,D>D,D>D,D>D,D>Dをそれぞれ満たすように各径の大きさが設定されている固液分離装置を提案する(請求項1)。
【0008】
また、上記請求項1に記載の固液分離装置において、前記離脱阻止手段は、隣り合う固定リングの間に配置されたスペーサより成ると有利である(請求項2)。
【0009】
さらに、上記請求項2に記載の固液分離装置において、隣り合う固定リングの間に配置された複数のスペーサのうちの少なくとも1つのスペーサが、隣り合う固定リングのいずれか一方に一体に形成されていると有利である(請求項3)。
【0010】
また、上記請求項1に記載の固液分離装置において、前記離脱阻止手段は、複数の固定リングを固定する連結部材より成ると有利である(請求項4)。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、固定リングの外径が、複数の離脱阻止手段の固定リング中心側の部分に接する円の直径よりも小さく設定されているので、隣り合う固定リングと可動リングが重なり合う部分の面積が従来よりも小さくなり、これによって可動リングに作用する抵抗が少なくなる。このため、回転するスクリューによって、可動リングを効率よく動かすことができ、セルフクリーニング機能を高めることが可能である。しかも、可動リングが動きやすくなるため、可動リング内周面がスクリューから受ける力を小さくすることができ、これによって可動リング内周面の摩耗を抑え、その寿命を伸ばすことができ、固液分離装置の維持費を低減することができる。さらに、隣り合う固定リングと可動リングとが重なり合う部分の面積が小さくなるので、固定リングと可動リングの間から濾液が抜けやすくなり、これによって処理対象物に対する脱液効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態例を図面に従って説明し、併せて上述した従来の欠点を図面に即してより具体的に明らかにする。
【0013】
図1は固液分離装置の一例を示す部分断面正面図である。この固液分離装置によって、各種の処理対象物を固液分離することが可能であるが、ここでは、多量の水分を含んだ汚泥を脱水処理する場合について説明する。
【0014】
ここに示した固液分離装置は、入口部材1と、出口部材2と、これらの間に配置された筒状体3とを有し、入口部材1は、上部が開口した矩形の箱状に形成され、その上部開口によって、汚泥が流入する流入口4が構成されている。符号7は入口部材1の底壁を示す。また筒状体3を向いた側の入口部材1の側壁5には開口6が形成され、さらに入口部材1の側壁5に対向したもう一つの側壁8には、横断面が矩形状に形成されたモータ支持部材9の一方の側壁10がボルトとナットによって固定され、モータ支持部材9の他方の側壁11に、減速機付きのモータ12が固定されている。
【0015】
入口部材1の両側壁5,8は下方に延び、その下端部が図示していないボルトとナットによって支持フレームのステー13,14にそれぞれ着脱可能に固定され、モータ支持部材9の両側壁10,11も下方に延び、その下端部が図示していないボルトとナットによって支持フレームのステー14に着脱可能に固定されている。
【0016】
出口部材2は、その上部と下部が開口し、水平断面が矩形状に形成されていて、筒状体3を向いた側の出口部材2の側壁19と、これに対向する出口部材2の側壁20には、開口22,23がそれぞれ形成されている。側壁19,20は、下方に延び、その下端部が支持フレームのステー52,53に図示していないボルトとナットによって着脱可能に固定されている。また、側壁20に形成された開口23には、軸受板18が配置され、その軸受板18は、ボルト24とナット25によって側壁20に着脱可能に固定されている。出口部材2の下部開口は、脱水処理された汚泥が排出される排出口26を構成している。
【0017】
一方、筒状体3は、小リング状の複数のスペーサ38によって軸線方向に互いに間隔をあけて配置された複数の固定リング28と、軸線方向に隣り合う固定リング28の間に配置された可動リング29とによって構成されている。図2は隣り合う2つの固定リング28と、これらの固定リング28の間に配置された可動リング29と、スペーサ38の外観を示す分解斜視図であり、図3は筒状部3の部分縦断面図である。複数の固定リング28は、図1乃至図3に示すように同心状に配列され、軸線方向に隣り合う固定リング28の間に4つのスペーサ38がそれぞれ配置されている。図1に示すように、筒状体3は出口部材2の側が高くなるように傾斜して配置されている。
【0018】
図示した固液分離装置においては、図2及び図3に示すように、各固定リング28には、その半径方向に突出し、かつその周方向に配列された4つの耳部39が形成され、その各耳部39に取付孔32がそれぞれ形成されている。各耳部39に形成された各取付孔32と、軸線方向に隣り合う固定リング28の間に配置された各スペーサ38の中心孔には、連結部材の一例であるステーボルト34がそれぞれ貫通して延び、さらにその各ステーボルト34は、図1に示すように、入口部材1の側壁5と、出口部材2の側壁19を貫通し、その各端部に形成された雄ねじにナット36,36Aがそれぞれ螺着されて締め付けられている。なお、図1においては、図を判りやすくするため、一部のステーボルトとスペーサなどの図示を省略してある。
【0019】
上述のようにして、複数の固定リング28は、複数のステーボルト34と、ナット36,36Aとによって一体的に固定連結され、入口部材1と出口部材2に対して固定されている。連結部材の一例であるステーボルト34は、複数の固定リング28を貫通して延びていて、その複数の固定リング28を連結する用をなす。ステーボルト以外の細長部材、例えば連結棒などから成る連結部材を用いることもできる。かかる連結部材が複数設けられているのである。スペーサによって互いに間隙をあけて配置された各固定リングをわずかに遊動できるように組み付けることもできる。
【0020】
図3に示すように、各固定リング28の間にそれぞれ配置された各可動リング29の厚さTは、各固定リング間の間隙幅Gより小さく設定され、各固定リング28の端面と、これに対向する可動リング29の端面の間には、例えば0.1mm乃至1mm程の微小なギャップgが形成される。かかる微小ギャップgは、後述するように汚泥から分離された水分、すなわち濾液を通過させるものである。可動リング29の厚さTは、例えば、1.0mm乃至2mm程に設定され、間隙幅Gは、例えば2mm乃至3mm程に設定される。また固定リング28の厚さtは、例えば1.5mm乃至3mm程に設定される。ギャップg、厚さT,t及び間隙幅Gの大きさは、処理対象物の種類などを考慮して適宜設定されるものである。
【0021】
図4は、固定リング28と、可動リング29と、隣り合う固定リング28の間に配置されたスペーサ38と、ステーボルト34の配置状態を示す説明図であり、この図では可動リング29を破線で示してある。ここで、固定リング28の周方向に隣り合う2つのスペーサ38の間の間隔をLとしたとき、図4から明らかなように、この間隔Lの方が可動リング29の外径Dよりも小さくなっている(L<D)。このため、可動リング29が隣り合う固定リング28の間から抜け出ることが阻止される。このように、各スペーサ38は、可動リング29が固定リングの間から離脱することを阻止する離脱阻止手段の一例を構成している。固液分離装置は、隣り合う固定リング28の間から可動リング29が抜け出ることを阻止する複数の離脱阻止手段を有しているのである。
【0022】
また、図2に示すように、スペーサ38より成る複数の離脱阻止手段の固定リング中心側の部分に接する円CCを考えたとき、各可動リング29の外径Dは、円CCの直径Dよりも小さく、しかも各可動リング29の外径Dが各固定リング28の内径Dよりも大きく設定されている(D>D,D>D)。これにより、各可動リング29は、各固定リング28の中心孔から抜け出ることなく、該可動リング29の半径方向に可動で、かつ回転可能に隣り合う固定リング28の間に保持される。
【0023】
また、複数の固定リング28と複数の可動リング29の内部には、これらのリング28,29の軸線方向に延びるスクリュー21が配置され、このスクリュー21は、軸部41と、これに一体のらせん状の羽根部42を有している。かかるスクリュー21は、図1に示すように、入口部材1の側壁5と、出口部材2の側壁19,20に形成された開口6,22,23を貫通して延びている。
【0024】
また、図1に示すように、軸受板18は、内部に軸受43が収容された軸受カップ44を有し、上述のスクリュー21の軸部41の一方の端部が、軸受カップ44に挿入され、軸受43を介して、軸受板18に回転自在に支持されている。
【0025】
一方、図1に示したモータ12の出力軸45は、モータ支持部材9の側壁11,10と、入口部材1の側壁8を貫通して延び、側壁10に軸受を介して回転自在に支持されている。かかる出力軸45の先端部は、図5に示すように、内部が中空に形成され、その中空部49の中央部に係合片50が固定配置されている。また、スクリュー21の軸部41の他方の端部には、係合溝51が形成され、軸部41の端部が図1に示すように出力軸45の中空部49に挿入され、軸部41に形成された係合溝51が出力軸45に設けられた係合片50に係合している。
【0026】
モータ12が作動して出力軸45が回転すると、その回転が、互いに係合した係合片50と係合溝51を介してスクリュー21に伝えられ、該スクリュー21がその中心軸線のまわりに回転する。このように、本例の固液分離装置においては、減速機付きのモータ12と、その出力軸45によって、スクリュー21を回転駆動する駆動手段が構成されているが、他の適宜な形態の駆動手段を採用することもできる。
【0027】
次に、本例の固液分離装置の動作を説明する。
【0028】
筒状体3の下方に位置する図示していないサービスタンク内の汚泥が、同じく図示していないフロック化装置に供給され、そのフロック化装置において、多量の水分を含む汚泥に凝集剤が混合撹拌され、これによって汚泥がフロック化される。フロック化された汚泥(図には示さず)は、図1に矢印Aで示すように、固液分離装置の入口部材1内に流入する。かかる汚泥の含水率は、例えば99重量%程度である。このとき、スクリュー21はモータ12によって回転駆動されているので、入口部材1に流入した汚泥は、矢印Bで示すように、入口部材1の側壁5に形成された開口6を通って、固定リング28と可動リング29の内部空間、すなわち筒状体3の内部空間に、その軸線方向一端側の入口開口3Aから流入する。
【0029】
上述のようにして筒状体3の内部に流入した汚泥は、モータ12により回転駆動されたスクリュー21によって、筒状体3の軸線方向他端側の出口開口3Bへ向けて搬送される。このとき、汚泥から分離された水分、すなわち濾液が、各固定リング28と可動リング29との間の微小ギャップg(図3)を通して筒状体外に排出される。排出された濾液は、ステー13,52に固定された濾液受け部材40に受け止められ、次いで濾液排出管46を通って流下する。この濾液には未だ多少の固形分が含まれているので、当該濾液は他の汚泥と共に再度水処理され、次いで固液分離装置に供給されて脱水処理される。
【0030】
ここで、図3及び図4に示す如く、スクリュー21の外径Dは、その回転が阻害されないように、固定リング28の内径Dよりもわずかに小なる大きさに設定されている(D>D)が、このスクリュー21の外径Dは可動リング29の内径Dよりも大きく設定されている。可動リング29の内径Dがスクリュー21の外径Dよりも小さく設定されているのである(D>D)。このため、スクリュー21の回転によって、各可動リング29は、スクリュー21から外力を受けて半径方向に押し動かされ、固定リング28に対して積極的に運動する。このようにして、可動リング29を駆動する専用の駆動手段を設けることなく、微小ギャップgに入り込んだ固形物を積極的に排出させることができ、そのギャップgに対するクリーニング効率を高めることができる。これがセルフクリーニング機能である。
【0031】
上述のように筒状体3内の汚泥の含水率が下げられ、含水量の減少した汚泥が筒状体3の軸線方向他端側の出口開口3Bから排出される。筒状体3から排出された汚泥は、図1に矢印Dで示すように、出口部材2の開口22を介して出口部材2内に移動し、その下方の排出口26を通して下方に落下する。
【0032】
上述のようにして脱水処理された後の汚泥の含水率は、例えば80乃至85重量%程度である。図1に示すように、出口部材2の一方の側壁に形成された開口22に対向して、軸部41に背圧板47が固定されており、これによって筒状体3内の汚泥に加えられる圧力を高めることができる。
【0033】
図9は従来の固液分離装置における固定リング28と、可動リング29と、スペーサ38と、ステーボルト34の位置関係を示す、図4と同様な説明図である。この図から判るように、従来の固液分離装置においては、固定リング28の外径Dが大きく設定されている。より具体的には、固定リング28の外径Dが、複数のスペーサ38の固定リング中心側の部分に接する円CCの直径Dに等しく設定されていたのである。ところが、このように固定リング28の外径Dが大きいと、隣り合う固定リング28と可動リング29が互いに重なり合う部分の面積が大きくならざるを得ない。すなわち、図9においては、隣り合う固定リング28と可動リング29を、その軸線方向に見たときに、これらのリング28,29が互いに重なり合う部分にハッチングを付してあるが、このハッチングを付した部分の面積がかなり大きなものになるのである。固液分離装置の作動時に、固定リング28と可動リング29の間の微小ギャップには、濾液や固形分が存在するので、固定リング28と可動リング29の重なり合う部分の面積が大きいと、回転するスクリューによって可動リング29が押し動かされたとき、その可動リング29に大きな抵抗が作用し、その動きが鈍くなる。このため、先にも説明したように、固液分離装置のセルフクリーニング機能が低下すると共に、スクリュー21と可動リング29の内周面との接触圧が高まり、可動リング29の摩耗が促進されるおそれを免れない。
【0034】
そこで、本例の固液分離装置においては、図4に示すように、固定リング28の外径Dが前述の円CCの直径Dよりも小さく設定されている(D>D)。図4においても、隣り合う固定リング28と可動リング29を、その軸線方向に見たときに、これらのリング28,29が互いに重なり合う部分にハッチングを付してあるが、固定リング28の外径Dを上述のように設定することによって、ハッチングを付した部分の面積(以下、オーバラップ面積という)は、図9に示したオーバラップ面積よりも格段と小さなものになる。図9に示した従来の固液分離装置においては、固定リング28と可動リング29の重なった部分の各幅X1,X2は、例えばそれぞれ12mmと5mmとなっているのに対し、図4に示した固液分離装置においては、両リング28,29の重なった部分の各幅X1,X2が、例えば、それぞれ4mmとなっている。
【0035】
上述のように、固定リング28と可動リング29のオーバラップ面積を小さくすることにより、固液分離装置の作動時に、可動リング29に作用する抵抗を小さくすることができる。このため、スクリュー21によって可動リング29を効率よく押し動かすことができ、セルフクリーニング機能を高めることができる。しかも可動リング29が動きやすくなるため、可動リング内周面とスクリュー21との接触圧が小さくなり、可動リング内周面がスクリュー21から受ける力が小さくなる。これにより、可動リング29の内周面の摩耗を抑え、その寿命を伸ばすことができ、固液分離装置の維持費を低減することができる。さらに、隣り合う固定リング28と可動リング29のオーバラップ面積が小さいので、固定リング28と可動リング29の間から濾液が抜けやすくなり、汚泥に対する脱水効率を高めることができる。さらに、固定リング28の外径Dが小さいので、固定リングを小型化することができる。このように、固定リング28を軽量化できると共に、その製造コストを低減することも可能である。
【0036】
以上のように、本例の固液分離装置は、複数の離脱阻止手段が設けられていると共に、その複数の離脱阻止手段の固定リング中心側の部分に接する円CCの直径をD、固定リング28の外径をD、該固定リングの内径をD、可動リング29の外径をD、該可動リングの内径をD、スクリュー21の外径をDとしたとき、D>D,D>D,D>D,D>D,D>Dをそれぞれ満たすように各径の大きさが設定されている。これにより、固液分離装置の作動時に、可動リング29に作用する抵抗を抑え、効率のよいセルフクリーニング機能を達成できる。
【0037】
なお、本例の固定リング28は、複数の耳部39を有しているが、かかる固定リング28の場合、その外径Dは、これらの耳部39以外の円環状の部分の外径である。
【0038】
以上説明した具体例においては、離脱阻止手段が、隣り合う固定リング28の間に配置されたスペーサ38より成るが、隣り合う固定リング28の間に配置された複数のスペーサ38のうちの少なくとも1つのスペーサ38を、隣り合う固定リング28のいずれか一方に一体に形成することもできる。図6は、全てのスペーサ38を固定リング28に一体に形成し、固定リング28とスペーサ38を1つの部品として構成した例を示す。
【0039】
固定リングとスペーサを一体に構成するには、例えば、固定リング28とスペーサが共に金属より成るときは、これらを溶接によって一体化し、或いは鋳造によって、これらを一体に成形することができる。或いは、素材を切削加工して、一体となった固定リング28とスペーサを製造することもできる。また固定リング28とスペーサを共に樹脂により構成するときは、これらを成形型によって一体の成形品として製造することもできる。固定リングとスペーサを接着剤により接着することも可能である。
【0040】
また、図7及び図8に示した固液分離装置においては、各固定リング28の耳部39に形成された取付孔32に嵌合した各ステーボルト34にスペーサ38が嵌合していない。しかも、固定リング28の周方向に隣り合う2つのステーボルト34の間の間隔L1が、固定リング28の外径Dよりも小さく設定され、これによって各可動リング29が隣り合う固定リング28の間から離脱することが阻止される。このように、図7及び図8に示した固液分離装置においては、隣り合う固定リング28の間から可動リング29が抜け出ることを阻止する離脱阻止手段が、複数の固定リング28を固定するステーボルト34より成る連結部材によって構成されている。しかも各固定リング28の外径Dが、複数のステーボルト34の固定リング中心側の部分に接する円CCの直径Dよりも小さく設定されている(D>D)。
【0041】
また、図7及び図8に示した固液分離装置においては、各固定リング28に、上述した耳部39のほかに、複数の耳部39Aが突設され、隣り合う固定リング28の各耳部39Aの間にスペーサ38がそれぞれ配置され、これらのスペーサ38によって、隣り合う固定リング28が互いにその軸線方向に間隔をあけて配置され、その両固定リング28の間に可動リング29が配置されている。その際、各スペーサ38は、複数のステーボルト34の固定リング中心側の部分に接する円CCよりも外方に位置している。これにより可動リング29が各スペーサ38に接触することはない。このように、本例のスペーサ38は、可動リング29が隣り合う固定リング28の間から離脱することを阻止する離脱阻止手段としての働きをなすことはない。かかるスペーサ38が隣り合う固定リング28の間から離脱しないように、スペーサ38を、隣り合う固定リング28のいずれか一方に、先に説明した態様で、一体に形成することが好ましい。また、これらのスペーサ38の固定リング中心側の部分が円CCに接するように配置して、ステーボルト34とスペーサ38とによって、可動リング29が隣り合う固定リング28の間から離脱することを阻止する離脱阻止手段を構成することもできる。
【0042】
図7及び図8に示した固液分離装置の他の構成は、図1乃至図6に示した固液分離装置と変わりはなく、その作用も実質的に相違するところはない。よって、図7及び図8には、先に説明した固液分離装置と同一ないしは対応する部分に、図3及び図4に付した符号と同一の符号を付し、その同一の部分の説明を省略する。
【0043】
また、前述の各構成の固液分離装置においては、軸線方向に隣り合う固定リング28の間に1つの可動リング29が配置されているが、軸線方向に隣り合う固定リング28の間に複数の可動リング29を配置してもよいことは当然である。隣り合う2つの固定リングの間に少なくとも1つの可動リングが配置されるのである。同様に、図示した固液分離装置のスクリュー21は、らせん状に延びる1つの羽根部42を有しているが、らせん状に延びる複数の羽根部を有するスクリューを用いてもよいことも当然である。スクリューは少なくとも1つの羽根部を有しているのである。さらに、固定リング28、可動リング29及びスクリュー21は、ステンレス鋼などの金属により構成することができるが、これらのうちの少なくとも一部を樹脂により構成すると、そのコストを低減できる共に、その各構成要素の重量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】固液分離装置の部分断面正面図である。
【図2】隣り合う固定リングと、その両固定リングの間に配置された可動リングなどを示す固液分離装置の分解斜視図である。
【図3】筒状体の縦断面図である。
【図4】固定リングと、可動リングと、スペーサと、ステーボルトの配置状態を示す説明図である。
【図5】出力軸とスクリューの軸部の連結に関する構成を示す斜視図である。
【図6】固定リングと、その固定リングに一体化されたスペーサを示す図である。
【図7】離脱阻止手段がステーボルトにより構成された例を示す、図3と同様な断面図である。
【図8】図7に示した固液分離装置の固定リングと、可動リングと、スペーサと、ステーボルトの配置状態を示す説明図である。
【図9】従来の固液分離装置の固定リングと、可動リングと、スペーサと、ステーボルトの配置状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0045】
21 スクリュー
28 固定リング
29 可動リング
38 スペーサ
CC 円

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔をあけて配置された複数の固定リングと、隣り合う固定リングの間に配置された可動リングと、隣り合う固定リングの間から前記可動リングが抜け出ることを阻止する複数の離脱阻止手段と、前記固定リングと可動リングの内部を延びるスクリューと、該スクリューを回転駆動する駆動手段とを具備し、前記複数の離脱阻止手段の固定リング中心側の部分に接する円の直径をD、前記固定リングの外径をD、該固定リングの内径をD、前記可動リングの外径をD、該可動リングの内径をD、前記スクリューの外径をDとしたとき、D>D,D>D,D>D,D>D,D>Dをそれぞれ満たすように各径の大きさが設定されている固液分離装置。
【請求項2】
前記離脱阻止手段は、隣り合う固定リングの間に配置されたスペーサより成る請求項1に記載の固液分離装置。
【請求項3】
隣り合う固定リングの間に配置された複数のスペーサのうちの少なくとも1つのスペーサが、隣り合う固定リングのいずれか一方に一体に形成されている請求項2に記載の固液分離装置。
【請求項4】
前記離脱阻止手段は、複数の固定リングを固定する連結部材より成る請求項1に記載の固液分離装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−90237(P2007−90237A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283097(P2005−283097)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(591007022)アムコン株式会社 (28)
【Fターム(参考)】