説明

固液分離装置

【課題】液体含有材料を粉体と蒸気とに分離する際の発熱効率を向上し、液体含有材料から液体成分と固体成分とを効率よく分離して回収し得る固液分離装置を提供する。
【解決手段】容器1の内部に液体含有材料を収容する衝突反応室4を形成し、衝突反応室4には複数の回転軸12、13を回転自在に備え、各回転軸12、13には液体含有材料を衝突させて粉砕して運動エネルギーを与える回転翼12A〜12D、13A〜13Dをそれぞれ設け、各回転軸12、13は回転方向および回転速度を制御可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体含有材料を液体成分と固体成分とに分離する固液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の固液分離装置は、回転翼を立設した回転軸を粉砕室内に配設した粉砕部と、この粉砕部に隣接した蒸気取出室に蒸気取出口を開口して前記回転軸を延設し、前記回転軸に粉体流出防止スクリューを配設した蒸気取出部とを備え、前記粉砕室に収容した液体含有材料を、前記回転翼で跳ね上げかつ叩打して液体含有材料を発熱させながら粉体と蒸気とに分離し、前記粉体流出防止スクリューによって粉体の前記蒸気取出室への流出を防止しながら、蒸気を前記蒸気取出室から取り出し、この取り出した蒸気を冷やして液化し、液体含有材料に含有される液体成分を蒸気として回収している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−194598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、かかる従来の固液分離装置では、液体含有材料を回転翼で跳ね上げかつ叩打して粉体と蒸気とに分離する際の発熱効率がいまだ満足できるものではなく、液体含有材料から液体成分を効率よく分離して回収することが難しかった。
【0005】
本発明の課題は、液体含有材料を粉体と蒸気とに分離する際の発熱効率を向上し、液体含有材料から液体成分と固体成分とを効率よく分離して回収し得る固液分離装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を達成すべく、本発明は次の手段をとった。即ち、
液体含有材料を回転翼の回転によって衝突させて運動エネルギーを与え、この運動エネルギーを自己発熱に変換して液体含有材料の液体成分を蒸発させて気体として回収し、液体含有材料の固体成分をペースト状または乾燥粉末として分離回収する固液分離装置において、液体含有材料を投入する開閉自在な材料投入口と、液体含有材料の液体成分を蒸発させて気体として回収する開閉自在な蒸気排出口と、液体含有材料の固体成分をペースト状または乾燥粉末として回収する開閉自在な固体排出口とを容器に配設し、この容器の内部に液体含有材料を収容する衝突反応室を形成し、この衝突反応室には複数の回転軸を回転自在に備え、各回転軸には液体含有材料を衝突させて粉砕して運動エネルギーを与える回転翼をそれぞれ設け、各回転軸は回転方向および回転速度を制御可能にしたことを特徴とする固液分離装置がそれである。
【0007】
この場合、前記衝突反応室の温度を制御可能にしてもよい。また、前記衝突反応室の圧力を制御可能にしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
以上詳述したように、請求項1に記載の発明は、液体含有材料を投入する開閉自在な材料投入口と、液体含有材料の液体成分を蒸発させて気体として回収する開閉自在な蒸気排出口と、液体含有材料の固体成分をペースト状または乾燥粉末として回収する開閉自在な固体排出口とを容器に配設し、この容器の内部に液体含有材料を収容する衝突反応室を形成し、この衝突反応室には複数の回転軸を回転自在に備え、各回転軸には液体含有材料を衝突させて粉砕して運動エネルギーを与える回転翼をそれぞれ設け、各回転軸は回転方向および回転速度を制御可能にした。このため、衝突反応室に収容する液体含有材料の特性に応じて、複数の回転軸の回転方向および回転速度を最適値に制御することができるから、回転翼に衝突させて粉砕する液体含有材料を少ないエネルギーで効率よく自己発熱させることができ、液体含有材料を粉体と蒸気とに分離する際の発熱効率を向上し、液体含有材料から液体成分と固体成分とを効率よく分離して回収することができる。ここで、自己発熱とは、液体含有材料が外部から熱エネルギーを付与されず、自らの運動エネルギーを熱エネルギーに転換することによって発熱して自己の温度を上昇させることをいう。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明の効果に加え、衝突反応室の温度を制御可能にしている。このため、目的に応じて、衝突反応室の温度を変化させ、例えば、液体含有材料がビタミン類の場合には、ビタミン類が破壊されない60°C以下に衝突反応室の温度を制御して固液分離を行い、品質が良好なビタミン類を抽出することができる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明の効果に加え、衝突反応室の圧力を制御可能にしている。このため、目的に応じて、衝突反応室の圧力を変化させ、例えば、衝突反応室を増圧して高圧に制御して固液分離を行い、液体含有材料を蒸すことができたり、また、衝突反応室を減圧して気圧を下げ、液体含有材料から分離した液体成分を迅速に気体にして抽出することができたりする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態を示した固液分離装置の縦断面図である。
【図2】図1の線A−Aに沿った断面図である。
【図3】図1の矢視Bから見た図である。
【図4】他実施形態を示した固液分離装置の縦断面図である。
【図5】図4の線C−Cに沿った断面図である。
【図6】図4の矢視Dから見た図である。
【図7】液体含有材料を粉体と蒸気とに分離する際の温度と圧力との関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
図1ないし図3において、1は2個の円筒部を水平方向に連設して横断面を略繭形に形成した容器で、孔2を軸方向に貫通して両側面を開口している。3A、3Bは容器1に備えた側板で、孔2の両側面への開口を閉塞している。4は液体含有材料を収容する衝突反応室で、容器1の開口を側板3A、3Bで閉塞し、容器1の内部に形成している。5は液体含有材料を衝突反応室4に投入する材料投入口で、容器1の上方部に開口形成している。6は材料投入口5を閉塞する第1蓋部材で、容器1に着脱自在に取り付け、材料投入口5を開閉自在に設けている。第1蓋部材6は上方に突出して筒部6Aを有し、筒部6Aには衝突反応室4に接続する予備排出孔6Bを上面に開口し、予備排出孔6Bの開口を筒部6Aに着脱自在に取り付けた詰栓6Cで閉塞している。予備排出孔6Bは液体含有材料から分離した液体成分を蒸発させて気体としたものを回収する予備的なもので、常時は詰栓6Cで閉塞している。なお、液体含有材料から分離した液体成分を蒸発させて気体としたものは、通常、容器1に備えた側板3Bに貫通形成した蒸気排出口7から回収する。蒸気排出口7には配管8を取り付け、配管8に配設した開閉弁9で開閉自在としている。開閉弁9は常時は開いており、蒸気排出口7から配管8を流通した気体を図示しない冷却手段により冷却して液体成分として回収する。配管8には開閉弁9より回収側に図示しないブロワーを備え、衝突反応室4を減圧する場合には、ブロワーを作動して吸引する。また、衝突反応室4を増圧する場合には、開閉弁9を閉じて衝突反応室4を密閉する。
【0013】
10は液体含有材料から分離した固体成分を回収する固体排出口で、容器1の下方部に開口形成している。11は固体排出口10を閉塞する第2蓋部材で、容器1に着脱自在に取り付け、固体排出口10を開閉自在に設けている。12、13は側板3A、3Bを気密に貫通して衝突反応室4に回転自在に備えた2個の回転軸で、一方の回転軸12は略繭形の一方の円筒部に、他方の回転軸13は略繭形の他方の円筒部にそれぞれ配置している。一方の回転軸12と他方の回転軸13には、それぞれ軸方向へ間隙を有して4個の回転翼12A、12B、12C、12Dと回転翼13A、13B、13C、13Dを設け、各回転翼12A〜13Dは回転方向に所定角度位相して設け、それぞれの回転軸12、13より2本の棒状部を径方向の反対方向に突出し、突出した各先端を孔2の内周面と僅少な隙間を介して対向している。そして、一方の回転軸12に設けた4個の回転翼12A、12B、12C、12Dと、他方の回転軸13に設けた4個の回転翼13A、13B、13C、13Dとは軸方向へ互い違いに配置し、一方の回転軸12に設けた各回転翼12A〜12Dは、他方の回転軸13に設けた各回転翼13A〜13D間の間隙に位置し、また、他方の回転軸13に設けた各回転翼13A〜13Dは、一方の回転軸12に設けた各回転翼12A〜12D間の間隙に位置し、液体含有材料を衝突させて粉砕して運動エネルギーを与える。
【0014】
14、15は各回転軸12、13の側板3Aより突出した端部に備えた平歯車で、側板3Aより突出して回転自在に備えた歯車16と噛み合って、歯車16のX方向への回転と反対方向のY方向に回転するよう設けている。歯車16は回転速度と回転方向とを制御可能な電動機20でタイミングベルト20Aを介して回転駆動される。17は側板3Bに取り付けた温度センサで、衝突反応室4の温度を検出する。18は側板3Bに取り付けた圧力センサで、衝突反応室4の圧力を検出する。19は容器1の外側面に取り付けた冷却器で、多数の流路19Aを設け、流路19Aに冷却水を流通して衝突反応室4を冷却する。温度センサ17および圧力センサ18で検出した温度実際値および圧力実際値は図示しない制御装置に出力する。制御装置は分離する液体含有材料の特性に基づいて最適な温度設定値および圧力設定値を設定し、温度設定値に温度実際値を、また圧力設定値に圧力実際値を略一致するよう制御する。詳述するに、制御装置は、温度実際値が温度設定値より低い場合には、電動機20に回転速度を上昇する制御信号を出力し、逆に、温度実際値が温度設定値より高い場合には、冷却器19の流通路19Aに冷却水を流すよう図示しない開閉手段を開作動する制御信号を出力する。また、制御装置は、圧力実際値が圧力設定値より低い場合には、開閉弁9を閉作動する制御信号を出力し、逆に、圧力実際値が圧力設定値より高い場合には、配管8に備えた図示しないブロワーを作動する制御信号を出力する。
【0015】
次に、かかる構成の作動を説明する。
いま、第1蓋部材6を容器1から取り外して材料投入口5から液体含有材料を衝突反応室4に投入し、第1蓋部材6を容器1に取り付けて材料投入口5を閉塞する。
この状態で、電動機20により歯車16を図3のX方向に回転駆動すると、平歯車14、15はともに歯車16と反対方向のY方向に回転し、一方の回転軸12に設けた回転翼12A〜12Dと、他方の回転軸13に設けた回転翼13A〜13DはともにY方向に回転する。衝突反応室4に投入した液体含有材料は、回転する回転翼12A〜12Dと回転翼13A〜13Dに衝突して跳ね上げかつ叩打されて粉砕し、発熱させながらペースト状または乾燥粉末と蒸気とに分離される。液体含有材料から分離された蒸気は、蒸気排出口7から開いている開閉弁9、配管8を通して回収し、回収した蒸気を冷やして液化し、液体成分として回収する。また、液体含有材料から分離されペースト状または乾燥粉末となった固体成分は、第2蓋部材11を容器1から取り外して固体排出口10から回収し、第2蓋部材11を容器1に取り付けて固体排出口10を閉塞する。
【0016】
そして、制御装置は温度センサ17で検出した衝突反応室4の温度実際値と温度設定値とを比較し、温度実際値が温度設定値より低い場合には、電動機20の回転速度を上昇する制御信号を出力し、液体含有材料を跳ね上げかつ叩打する回転翼12A〜12D、13A〜13Dの回転速度を上昇し、液体含有材料の発熱を促進して衝突反応室4の温度を上昇する。また、温度実際値が温度設定値より高い場合には、制御装置は図示しない開閉手段を開作動する制御信号を出力し、冷却器19の流通路19Aに冷却水を流通して衝突反応室4の温度を低下する。このようにして、衝突反応室4の温度実際値を温度設定値に一致するよう制御する。
【0017】
また、制御装置は圧力センサ18で検出した衝突反応室4の圧力実際値と温度設定値とを比較し、圧力実際値が圧力設定より低い場合には、開閉弁9を閉じ作動する制御信号を出力し、衝突反応室4を密閉して収容した液体含有材料より気体が分離することで体積が膨張して衝突反応室4の圧力を増圧する。また、圧力実際値が圧力設定値より高い場合には、制御装置は図示しないブロワーを作動する制御信号を出力し、衝突反応室4の気体を吸引して気圧を下げ衝突反応室4の圧力を減圧する。このようにして、衝突反応室4の圧力実際値を圧力設定値に一致するよう制御する。
【0018】
かかる作動で、容器1の内部に液体含有材料を収容する衝突反応室4を形成し、衝突反応室4には複数の回転軸12、13を回転自在に備え、各回転軸12、13には液体含有材料を衝突させて粉砕して運動エネルギーを与える回転翼12A〜12D、13A〜13Dをそれぞれ設け、各回転軸12、13は回転方向および回転速度を制御可能にした。このため、衝突反応室4に収容する液体含有材料の特性に応じて、複数の回転軸12、13の回転方向および回転速度を最適値に制御することができるから、回転翼12A〜12D、13A〜13Dに衝突させて粉砕する液体含有材料を少ないエネルギーで効率よく自己発熱させることができ、液体含有材料を粉体と蒸気とに分離する際の発熱効率を向上し、液体含有材料から液体成分と固体成分とを効率よく分離して回収することができる。
【0019】
また、衝突反応室4の温度を制御可能にしているため、目的に応じて、衝突反応室4の温度を変化させ、例えば、液体含有材料がビタミン類の場合には、ビタミン類が破壊されない60°C以下に衝突反応室4の温度を制御して固液分離を行い、品質が良好なビタミン類を抽出することができる。
【0020】
また、衝突反応室4の圧力を制御可能にしているため、目的に応じて、衝突反応室4の圧力を変化させ、例えば、衝突反応室4を増圧して高圧に制御して固液分離を行い、液体含有材料を蒸すことができたり、また、衝突反応室4を減圧して気圧を下げ、液体含有材料から分離した液体成分を迅速に気体にして抽出することができたりする。
【0021】
また、回転速度と回転方向とを制御可能な電動機20により回転駆動される歯車16と各回転軸12、13に備えた平歯車14、15とを噛み合わせて各回転軸12、13を回転駆動している。このため、単一の電動機20で複数の回転軸12、13を回転駆動できるから、複数の回転軸を個別に電動機で回転駆動するものに比し、電動機20の個数を低減できで廉価に製作することができる。なお、平歯車14、15、歯車16の少なくとも一つを、異なる歯数の歯車に変更することで、回転軸12、13の回転速度を変更することができる。また、歯車16と平歯車14または歯車16と平歯車15回との間に一つの歯車を追加して噛み合わせることで、複数の回転軸12、13の回転方向を、相互に反対方向に変更して回転駆動することができる。
【0022】
図4ないし図6は本発明の他実施形態を示し、一実施形態と同一個所には同符号を付して説明を省略し、異なる個所についてのみ説明する。
液体含有材料を収容する容器21は、円筒状で横断面を略円形に形成し、孔22を軸方向に貫通して両側面を開口し、孔22の両側面への開口を側板23A、23Bで閉塞している。液体含有材料を衝突反応室24に投入する材料投入口25は、容器21の上方部に開口形成し、容器21に着脱自在に取り付けた第1蓋部材26で開閉自在に設けている。蒸気排出口27は側板23Bに貫通形成し、一実施形態と同様に配管を取り付け、配管に配設した開閉弁で開閉自在とし、開閉弁より回収側にブロワーを備え、衝突反応室24を減圧する場合には、ブロワーを作動して吸引する。また、衝突反応室24を増圧する場合には、開閉弁を閉じて衝突反応室24を密閉する。固体排出口30は容器21の下方部に開口形成し、容器21に着脱自在に取り付けた第2蓋部材31で開閉自在に設けている。
【0023】
衝突反応室24に回転自在に備えた2個の回転軸32、33は同心上に設けている。一方の回転軸32は側板23Aへ回転自在に支持し、側板23Aを気密に貫通して外部に突出して設け、中空円筒状に形成している。一方の回転軸32には、衝突反応室24の内部で側板23Aに隣接して円板32Aを固設し、円板32Aの外周面と孔22の内周面との間には僅少な隙間を形成している。円板32Aには6個の回転翼32B、32C、32D、32E、32F、32Gを側板23B側に向けて軸方向へ突設している。各回転翼32B〜32Gの中で3個の回転翼32B、32C、32Dは円板32Aの径方向中心から径方向の一方側へ間隙を有して配置し、最外周に回転翼32Dを配置している。また、残りの3個の回転翼32E、32F、32Gは前述3個の回転翼32B〜32Dと円板32Aの径方向中心を介して対称的に径方向中心から径方向の他方側へ間隙を有して配置し、最外周に回転翼32Gを配置している。そして、各回転翼32B〜32Gは回転方向Yに向けて先端側を細くする傾斜状に形成し、液体含有材料を粉砕し易くしている。最外周に配置する2個の回転翼32D、32Gは、軸方向に突設した端部を円板32Hに固設している。円板32Hは円板32Aと同一外径で、側板23Bに隣接して中心に備える筒部32Iで側板23Bへ気密に回転自在に支持している。
【0024】
他方の回転軸33は棒状に形成し、一方の回転軸32、円板32Hの筒部32Iを貫通し、軸方向の一端を一方の回転軸32より軸方向に突出して設け、軸方向の他端を側板23Bに備えた軸受部材23Cへ回転自在に支持し、軸受部材23Cを気密に貫通している。他方の回転軸33には、円板32Hの軸方向の内方側に隣接して円板32Hより小径の円板33Aを固設し、円板33Aの外周面と円板32A、32Hの最外周に配置する2個の回転翼32D、32Gとの間には僅少な隙間を形成していると共に、円板33Aの一側面と円板32Aから軸方向へ突設する4個の回転翼32B、32C、32E、32Fの先端部との間には僅少な隙間を形成している。
【0025】
円板33Aには4個の回転翼33B、33C、33D、33Eを円板32A側に向けて軸方向へ突設し、円板32Aの一側面と各回転翼33B〜33Eの先端部との間には僅少な隙間を形成している。各回転翼33B〜33Eの中で2個の回転翼33B、33Cは円板33Aの径方向中心から径方向の一方側へ間隙を有して配置し、最外周に回転翼33Bを配置している。また、残りの2個の回転翼33D、33Eは前述2個の回転翼33B、33Cと円板33Aの径方向中心を介して対称的に径方向中心から径方向の他方側へ間隙を有して配置し、最外周に回転翼33Eを配置している。そして、回転翼33B、33Dは回転翼32B、32Eと回転翼32C、32Fとの間の間隙に位置し、また、回転翼33C、33Eは回転翼32C、32Fと回転翼32D、32Gとの間の間隙に位置している。そして、各回転翼33B〜33Eは各回転翼32B〜32Gの回転方向Yと反対方向の回転方向Xに向けて先端側を細くする傾斜状に形成し、液体含有材料を粉砕し易くしている。
【0026】
一方の回転軸32はタイミングベルト20Aを介して電動機20でY方向に回転駆動され、回転速度と回転方向とを制御可能とする。他方の回転軸33は電動機20とは別の電動機34でY方向と反対方向のX方向に回転駆動され、回転速度と回転方向とを制御可能とする。温度センサ17および圧力センサ18は側板23Bに取り付けている。温度センサ17および圧力センサ18で検出した温度実際値および圧力実際値は図示しない制御装置に出力する。制御装置は分離する液体含有材料の特性に基づいて最適な温度設定値および圧力設定値を設定し、温度設定値に温度実際値を、また圧力設定値に圧力実際値を略一致するよう一実施例と同様に電動機20、34の回転速度等を制御する。
【0027】
作動は、電動機20により一方の回転軸32をY方向に回転駆動すると共に、別の電動機34により他方の回転軸33を反対方向のX方向に回転駆動する。一方の回転軸32に設けた回転翼32B〜32GはY方向に回転すると共に、他方の回転軸33に設けた回転翼33B〜33EはX方向に回転し、衝突反応室24に投入した液体含有材料は、相互に反対方向に回転する回転翼32B〜32Gと回転翼33B〜33Eに衝突して跳ね上げかつ叩打されて粉砕し、発熱させながらペースト状または乾燥粉末と蒸気とに分離され、一実施形態と同様に回収する。
【0028】
かかる作動で、容器21の内部に液体含有材料を収容する衝突反応室24を形成し、衝突反応室24には複数の回転軸32、33を回転自在に備え、各回転軸32、33には液体含有材料を衝突させて粉砕して運動エネルギーを与える回転翼32B〜32G、33B〜33Eをそれぞれ設け、各回転軸32、33は回転方向および回転速度を制御可能にした。このため、衝突反応室24に収容する液体含有材料の特性に応じて、複数の回転軸32、33の回転方向および回転速度を最適値に制御することができるから、一実施形態と同様に、回転翼32B〜32G、33B〜33Eに衝突させて粉砕する液体含有材料を少ないエネルギーで効率よく自己発熱させることができ、液体含有材料を粉体と蒸気とに分離する際の発熱効率を向上し、液体含有材料から液体成分と固体成分とを効率よく分離して回収することができる。
【0029】
また、衝突反応室24の温度を制御可能にしているため、一実施形態と同様に、目的に応じて、衝突反応室24の温度を変化させ、例えば、液体含有材料がビタミン類の場合には、ビタミン類が破壊されない60°C以下に衝突反応室24の温度を制御して固液分離を行い、品質が良好なビタミン類を抽出することができる。
【0030】
また、衝突反応室24の圧力を制御可能にしているため、一実施形態と同様に、目的に応じて、衝突反応室24の圧力を変化させ、例えば、衝突反応室24を増圧して高圧に制御して固液分離を行い、液体含有材料を蒸すことができたり、また、衝突反応室24を減圧して気圧を下げ、液体含有材料から分離した液体成分を迅速に気体にして抽出することができたりする。
【0031】
また、一方の回転軸32を回転速度と回転方向とを制御可能な電動機20により回転駆動すると共に、他方の回転軸33を電動機20と別な回転速度と回転方向とを制御可能な電動機34により回転駆動する。このため、一方の回転軸32と他方の回転軸33とを格別に回転速度を調整自在にできるから、複数の回転軸を単一の電動機で回転駆動するものに比し、液体含有材料の特性に応じた最適な回転速度に容易に設定することができる。また、一方の回転軸32と他方の回転軸33とを同心状に設け、一方の回転軸32に軸方向へ突設した複数の回転翼32B〜32G間に有した径方向の間隙に、他方の回転軸33に軸方向へ突設した複数の回転翼33B〜33Eを位置しているため、回転翼を径方向へ突設した複数の回転軸を径方向へ並列的に配置しているものに比し、径方向寸法を減少でき、装置全体の小型化を図ることができる。
【0032】
図7に、液体含有材料を粉体と蒸気とに分離する際の温度と圧力との関係を示す。
液体含有材料を密柑搾りかすとした場合には、衝突反応室を低温減圧状態に制御して分離する。液体成分は飲料として、固体成分は乾燥粉末として飼料になることを確認した。
液体含有材料を竹の葉とした場合には、衝突反応室を中温減圧状態に制御して分離する。体積30L、重量2kgの竹の葉を、所用時間10分で、樹液1.5L、葉粉末1Lを回収した。
液体含有材料を檜のおがくずとした場合には、衝突反応室を高温減圧状態に制御して分離する。体積60L、重量7.5kgの檜のおがくずを、所用時間8分で、樹液3.5Lを回収した。
液体含有材料を廃棄栗皮とした場合には、衝突反応室を低温高圧状態に制御して分離する。
液体含有材料を豆腐のオカラや茶葉とした場合には、衝突反応室を中温高圧状態に制御して分離する。重量100kgの豆腐のオカラを、所用時間47分で、乾燥・微粉化したオカラ33kgを回収した。また、茶葉では加工工程で蒸す工程を省略できる。
液体含有材料を搾り油法の植物油抽出とした場合には、衝突反応室を高温高圧状態に制御して分離する。
【0033】
なお、前述の各実施形態では、2個の回転軸12、13または32、33を用いたが、3個以上の回転軸を用いても良い。また、一実施形態の固液分離装置に用いた冷却器19を用途に応じて設けなかったり、他実施形態の固液分離装置に用いたりしても良いことは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
1、21:容器
4、24:衝突反応室
5、25:材料投入口
7、27:蒸気排出口
10、30:固体排出口
12、13、32、33:回転軸
12A、12B、12C、12D、13A、13B、13C、13D、32B、32C、32D、32E、32F、32G、33B、33C、33D、33E:回転翼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体含有材料を回転翼の回転によって衝突させて運動エネルギーを与え、この運動エネルギーを自己発熱に変換して液体含有材料の液体成分を蒸発させて気体として回収し、液体含有材料の固体成分をペースト状または乾燥粉末として分離回収する固液分離装置において、液体含有材料を投入する開閉自在な材料投入口と、液体含有材料の液体成分を蒸発させて気体として回収する開閉自在な蒸気排出口と、液体含有材料の固体成分をペースト状または乾燥粉末として回収する開閉自在な固体排出口とを容器に配設し、この容器の内部に液体含有材料を収容する衝突反応室を形成し、この衝突反応室には複数の回転軸を回転自在に備え、各回転軸には液体含有材料を衝突させて粉砕して運動エネルギーを与える回転翼をそれぞれ設け、各回転軸は回転方向および回転速度を制御可能にしたことを特徴とする固液分離装置。
【請求項2】
前記衝突反応室の温度を制御可能にしたことを特徴とする請求項1に記載の固液分離装置。
【請求項3】
前記衝突反応室の圧力を制御可能にしたことを特徴とする請求項1に記載の固液分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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