説明

固液分離装置

【課題】加圧構成の大型化を来たすことなく多様な種類の汚泥について良好な処理性能を発揮できる固液分離装置を提供する。
【解決手段】固液分離装置1は、混和槽部2と、固液分離部4とを有し、固液分離部4には濾過体3が設けられている。濾過体3の上部には濾過体3上を搬送される汚泥85を加圧する加圧体9と、該加圧体9を平行運動させる加圧体駆動機構が設けられている。加圧体9の底面には汚泥85を搬送する複数の送り羽根19が固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥(畜産糞尿、食品工場などの排水処理から発生する含油汚泥、下水処理から発生する余剰汚泥、金属加工、メッキ、建設系、食肉加工場、弁当製造などの食品加工等の現場から発生する汚泥等の概念を含む)中に含まれる固形物と水分とを分離する固液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の固液分離装置としては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。これは、汚泥の搬送方向に延びる固定プレート群と可動プレート群とを互いに交互に位置するように配置して濾過体を構成し、可動プレート群を搬送方向の前後・上下に変位する平行運動をさせることにより汚泥を重力脱水しながら搬送するものである。
処理対象物としての汚泥は、高分子凝集剤によって適度にフロック化(約5〜10mm程度の塊)されて濾過体の入口側に投入され、プレート間の受け渡し作用によって出口側に向けて搬送される。
濾過体の上部には搬送される汚泥を加圧して更なる脱水を促すウエイトプレート(加圧体)が設けられており、濾過体の搬送面とウエイトプレートとの間の空間は出口側に向って狭まるように構成されている。
特許文献2においても同様のウエイトプレートが設けられている。
【0003】
濾過体の構成は上記のようなプレートを交互配置したフィルタ方式の他に、濾布を用いたものやベルト搬送方式のものも知られているが、この種のフィルタ脱水方式では、スクリュ作用で軸方向に圧縮しながら搬送する方式に比べて、濾過体の搬送面は開放系となっている関係から、脱水機能を向上させるべくウエイトプレート等により出口側に向って加圧する構成は共通となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−000888号公報
【特許文献2】特開平06−155090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したウエイトプレート等による加圧脱水方式では、ウエイトプレートの重量(例えばウエイトプレートに載せる重りの重量)が大きいほど脱水機能は向上するが、その分汚泥の搬送に対する抵抗も高まって処理効率の低下を来たしていた。
この問題を解消すべく、加圧体として回転ドラムを設けて加圧と搬送を同時に行う方式も提案されている。この方式によれば、汚泥の停滞は解消できるが、濾過体上の汚泥に接するドラムの外周面積を大きくしなければ十分な加圧時間が確保できず、ドラムの大径化によるコストアップと装置の大型化を避けられない。
ドラムの大径化を制限した場合、処理対象物の種類が限られてくる。すなわち、加圧力が不足するため、処理性能を維持するためには、紙やワラなどの繊維質を多量に含むパルプ排水、養豚汚水など特定の汚水に限定される。
【0006】
本発明は、このような現状に鑑みてなされたもので、加圧構成の大型化を来たすことなく多様な種類の汚泥について良好な処理性能を発揮できる固液分離装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、処理対象物をその入口側から出口側へ向けて脱水しながら搬送する濾過体と、該濾過体の上部に設けられ、前記濾過体上の処理対象物を加圧する加圧手段とを有する固液分離装置において、前記加圧手段が、処理対象物に前記濾過体との間で挟むように接する加圧体と、該加圧体を、搬送方向の前後及び上下に変位する平行運動をさせる加圧体駆動機構とからなり、処理対象物に加圧と共に搬送力を付与せしめることを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明は、請求項1に記載の固液分離装置において、前記濾過体の搬送面に対向する前記加圧体の下面が、前記出口側へ向って処理対象物に対する加圧力を徐々に強める形状を有していることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の固液分離装置において、前記加圧体の下面に処理対象物を搬送する送り羽根が設けられていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の固液分離装置において、前記送り羽根が搬送方向に間隔をおいて複数設けられていることをと特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の固液分離装置において、前記各送り羽根は、前記出口側へ向って搬送量が異なる形状を有していることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1つに記載の固液分離装置において、前記加圧体の出口側に、処理対象物の最終的な排出量を調整可能な圧力調整手段が設けられていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の固液分離装置において、前記圧力調整手段が、一端部が前記加圧体に固定された圧力調整板と、前記加圧体に支持され、回転操作することにより前記圧力調整板の前記出口側寄りに位置する自由端部を上下に変位させるネジ部材とを有していることを特徴とする。
【0010】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1つに記載の固液分離装置において、前記濾過体の搬送面が、前記出口側へ向けて上り勾配を有していることを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の固液分離装置において、前記濾過体が、前記入口側から出口側へ延びるプレートをその長手方向と略直交するプレート厚み方向に略一定の間隔で複数配置して一体化した第1のプレート群と、前記長手方向に延びる各プレートを第1のプレート群のプレート間に入り込むように配置して一体化した第2のプレート群とを有し、第1のプレート群と第2のプレート群のうち少なくとも一方を、互いのプレート上面が交互に変位するように平行運動を行わせることにより、処理対象物を前記入口側から前記出口側へ向けて搬送する構成を有していることを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の固液分離装置において、前記濾過体の前記出口側寄りの部分は、第1のプレート群と第2のプレート群との間で処理対象物の受け渡しが可能で且つ搬送力が低減ないし消失するように、第1のプレート群と第2のプレート群のうちの少なくとも一方のプレートの形状が設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加圧体の平行運動によって大型化を来たすことなく効率的に加圧と搬送を行うことができ、処理対象物の性状や種類の制限を受けることなく処理効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る固液分離装置の概要側面図である。
【図2】同装置の概要平面図である。
【図3】図2のS−S線での概要断面図である。
【図4】加圧体を保持するフック部の主要部を示す図である。
【図5】加圧体の概要平面図である。
【図6】加圧体の底面を示す図である。
【図7】加圧体とフック部を示す分解図で、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
【図8】各送り羽根を示す図で、(a)、(b)、(c)、(d)は各左側面図、(e)、(f)、(g)、(h)は各正面図である。
【図9】圧力調整板を示す図で、(a)は左側面図、(b)は正面図である。
【図10】圧力調整板を変位させる調整用ボルトを支持するブラケットを示す図で、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は平面図である。
【図11】加圧体の平行運動を示す図で、(a)は最も汚泥に入り込んだ状態を示す図、(b)は最も出口側に変位した状態を示す図、(c)は最も上方に変位した状態を示す図、(d)は最も入口側に変位した状態を示す図である。
【図12】図1で示した固液分離装置の搬送方向と直交する方向の断面図である。
【図13】第1のプレート群と第2のプレート群のプレート配置構造を示す図で、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図14】第2のプレート群を有する第2のプレートユニットの概要斜視図である。
【図15】濾過体を偏芯カムにより平行運動させる機構を示す斜視図である。
【図16】第1のプレートユニットと第2のプレートユニットにおける偏芯カムの位相差を示す図である。
【図17】プレートの平行運動による処理対象物の搬送原理を示す模式図である。
【図18】プレートの上下変位による処理対象物の絞り込み作用(脱水作用)を示す模式図である。
【図19】第1のプレート群と第2のプレート群におけるプレートの形状の変形例を示す図である。
【図20】濾過体の搬送力とプレートとの関係を示す図で、(a)は加圧体との関係で搬送力が高まることを説明するための図、(b)は濾過体における加圧体に対応する領域での搬送力を消失させるプレート形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。なお、各図において、適宜、部材の厚みを省略している。
図1に示すように、固液分離装置1は、収容した処理対象物としての汚泥に凝集剤を投入してフロック化するための混和槽部2と、混和槽部2からのフロック化汚泥を固液分離処理する濾過体3を備えた固液分離部4と、濾過体3の上部に設けられた加圧手段5とを有している。なお、濾過体3は分かり易くするために模式的に表示しており、その詳細については後述する。
固液分離部4には、攪拌モータ6と、攪拌部材7が備えられている。攪拌モータ6は、図2に示すように、混和槽部2の筐体上面に固定されたプレート8に支持されている。
図1に示すように、濾過体3はフロック化汚泥(以下、単に「汚泥」という)21の入口側(混和槽部2側)から出口側へ向って上り勾配となるように斜めに配置されている。
【0014】
加圧手段5は、上面が開口した箱状の加圧体(ウエイトプレート)9と、該加圧体9を平行運動させる加圧体駆動機構とを有している。加圧体9の上面には加圧体9を支持するフック部10が複数(ここでは4個)設けられている。図2に示すように、各フック部10は加圧体9の上面に固定された断面コ字状のプレート11に固定されている。
図1に示すように、各フック部10は、カム軸受15と、カム軸受15とプレート11との間に挿入される複数の調整板16と、カム軸受15と調整板16とをプレート11に一体に固定する固定ボルト17とを有している。
加圧体9は濾過体3との間で挟む汚泥85の容積が出口側に向って減少するような形状を有しており、汚泥85に接触する底面18には、汚泥85を強制的に搬送する送り羽根19が搬送方向に間隔をおいて複数設けられている。
【0015】
加圧体9の出口側側面(前側面)には、出口側端部における汚泥85の排出量を調整するための圧力調整手段20が設けられている。
圧力調整手段20は、加圧体9の前側面に固定される薄肉の圧力調整板21と、圧力調整板21と共に前側面に固定されるブラケット22と、ブラケット22に支持され、回転操作することにより圧力調整板21を上下に変位させるネジ部材としての調整用ボルト23とを有している。ブラケット22の上面には、調整用ボルト23を保持するためのナット51が固定されている。
【0016】
調整用ボルト23を螺進方向に回すと圧力調整板21の自由端部21aが下方へ曲がって変位し、出口側端部の開口面積が狭くなって排出量が少なくなる。すなわち、汚泥85の出口側近傍の圧力が高められる。調整用ボルト23を逆に回すと出口側端部の開口面積が広くなって汚泥85の出口側近傍の圧力が低くなる。
加圧体9の搬送方向の前後及び上下に変位する平行運動により、汚泥85は加圧されながら搬送され、加圧力が強くても送り羽根19により確実に搬送される。
汚泥85の圧力は加圧体9による加圧力と圧力調整手段20による圧力との複合的結果として生じる。図1において、符号WLは液面を示している。
【0017】
図2、図3に示すように、固液分離部4の側板24、25の外側には2組の軸受26が固定されており、各組の軸受26間には、シャフト27、29が支持されている。
出口側に位置する駆動軸としてのシャフト27の手前側端部は軸受26を貫通して延びており、図示しないブラケットに支持された駆動モータ31に接続されている。シャフト27にはプーリ33が固定されている。
入口側に位置するシャフト29の手前側端部も軸受26を貫通して延びており、プーリ37が固定されている。プーリ33とプーリ37との間にはタイミングベルト41が掛け回されており、シャフト27、29は駆動モータ31によって同期回転する。駆動モータ31とシャフト27との接続はギヤ列を介した構成としてもよい。
シャフト27、29はそれぞれ2つのフック部10に挿通され、これによって加圧体9はシャフト27、29に吊られた状態となっている。
図4に示すように、カム軸受15には挿通孔15aが形成されており、挿通孔15aには、偏芯カム43が固定されたシャフト27、29が、偏芯カム43が挿通孔15aに収容される状態に挿通されている。図4において、符号15bはボルト挿通孔を示している。
上述したフック部10、軸受26、シャフト27、29、駆動モータ31、プーリ33、37、タイミングベルト41は、加圧体駆動機構を構成している。
【0018】
図5に示すように、加圧体9の上面に固定された、フック部10を支持するためのプレート11には、固定ボルト17を螺合するためのネジ穴11aが形成されている。
加圧体9の前側板9aにはネジ穴9d(図7参照)が形成されており、圧力調整板21とブラケット22は、固定ネジ45で前側板9aに固定されている。
図6に示すように、加圧体9の底面9bには、送り羽根19を固定するための複数のネジ穴9cが形成されている。図7に示すように、送り羽根19は固定ネジ52で固定されている。
【0019】
加圧体9の平行運動だけでは粘性の高い汚泥が付着して停滞する可能性があり、より効果的に汚泥85を搬送するために送り羽根19が設けられている。
図8に示すように、各送り羽根19の形状、サイズはそれぞれの位置における搬送機能に鑑みて異ならせている。入口側から出口側に向って汚泥85の性状は次第に流動性がなくなって硬くなり減容化される。入口側ではより多くの汚泥を搬送し、出口側に向って次第に少なくなるように送り込む量を変える必要があるためである。
【0020】
図8(a)、(e)は、最も入口側の領域に位置する送り羽根19Aを示している。出口側に向って次の領域に位置する(b)、(f)に示す送り羽根19Bと、(c)、(g)に示す送り羽根19Cは、送り羽根19Aよりも搬送量を少なくするために溝53が形成されている。
所定の搬送量を維持できるように、送り羽根19Bと送り羽根19Cとでは溝53の位置を異ならせている。すなわち、出口側に向って溝53が連続しないようにしている。
最も出口側(加圧体9の略中央部)に位置する送り羽根19Dは、薄肉で上下方向の高さを短くし且つ溝を形成した形状としている。各送り羽根19において、符号19aは固定ネジ52の挿通孔を示している。
【0021】
図9に示すように、圧力調整板21には、固定ネジ45を挿通するための4つの挿通孔21bが形成されている。
図10に示すように、L字形のブラケット22には、その側面に固定ネジ45を挿通するための4つの挿通孔22aが形成され、上面に調整用ボルト23を挿通するための3つの挿通孔22bが形成されている。
【0022】
図11に基づいて、加圧体9の平行運動を説明する。
図11(a)は加圧体9が濾過体3の搬送面上の汚泥85を最も加圧している状態を示している。この状態からシャフト27、29が右回りに90°回転すると、図11(b)に示す状態となり、加圧体9は最も出口側へ移動(変位)する。この間、汚泥85は強くに加圧されつつ送り羽根19により搬送される。
図11(b)に示す状態から、シャフト27、29がさらに右回りに90°回転すると、図11(c)に示す状態となり、汚泥85に対する加圧力が最も弱くなる。この状態からシャフト27、29がさらに右回りに90°回転すると、図11(d)に示す状態となり、加圧体9は最も入口側に位置する。
以上の動作が連続的に生じ、汚泥85はその性状にかかわらず効果的に加圧されながら搬送される。
【0023】
以下に濾過体3を詳細に説明する。
図12に示すように、濾過体3は、第1のプレート群28と第2のプレート群30が互いに櫛歯状に噛み合った構成を有しており、出口側に設けられたモータ32の駆動力により互いに上下左右方向に変位する平行運動(後述)を行うようになっている。
図13に示すように、第1のプレート群28は、帯板状のAプレートをその厚み方向にスペーサ34を介して一定の間隔で多数枚積層配置し、入口側と出口側の端部に長ボルト35Aを挿通して一体に組み付けられている。
第2のプレート群30は、重力濃縮部に配置された第1の分割プレートとしての帯板状のBプレートと、加圧脱水部に配置された第2の分割プレートとしての帯板状のCプレートの2種類のプレートを有している。したがって、濾過体3は3種類のプレートから構成されている。
Bプレートは、Aプレートと同様にその厚み方向にスペーサ34を介して一定の間隔で多数枚積層配置され、入口側と出口側の端部に長ボルト35Bを挿通して一体に組み付けられている。
Cプレートは、その厚み方向にスペーサ36を介して一定の間隔で多数枚積層配置され、入口側と出口側の端部に長ボルト35Bを挿通して一体に組み付けられている。
【0024】
Cプレートの厚みを大きくすることにより、加圧脱水部におけるプレート間のギャップg2は、重力濃縮部におけるギャップg1の半分に狭められている。
BプレートとCプレート間の隙間g3は、処理対象物の搬送が長手方向で滑らかに進行するようにできるだけ小さい方がよい。
【0025】
図14に示すように、Bプレート群とCプレート群は、L字形の一対の側板38、39間に長ボルト35Bを支持することにより位置決めされ、これらは第2のプレートユニット40を構成している。符号38a、39aはボルト挿通孔を、42はナットを示している。第2のプレートユニット40の入口側と出口側は図示しない側板で塞がれている。
側板38の底面38aの入口側と出口側には、偏芯カムホルダ44が固定されている。偏芯カムホルダ44は、側板38の底面38bにボルト46とナット47(図12参照)により固定されるL字形のブラケット48と、ブラケット48に固定されたカム受け50を有している。
偏芯カムホルダ44は側板38の出口側にも同様に固定されており、側板39においても同様である。同図において、符号38c、39cはボルト挿通孔を示す。
第2のプレートユニット40における重力濃縮部と加圧脱水部との境界には仕切り板52が固定されており、重力濃縮部の処理水と加圧脱水部の処理水とを分けて回収できるようになっている。
側板38の底面38bと側板39の底面39bの間の隙間54は水分の落下用空間としてなる。
仕切り板52によって区画される領域に対応して、筐体12(固液分離部4の筐体で、側板24、25を含む)の底面部12aも仕切り板55で2つの領域に区画されており、各領域に設けられた排水口56、58から処理水を移送できるようになっている。
【0026】
図12に示すように、モータ32に接続された駆動軸60は筐体12の側板の外側に固定された軸受62、64に回転可能に支持されている。駆動軸60には4つの偏芯カム66A、66B、66C、66Dが固定されており、内方2つの偏芯カム66A、66Bはそれぞれ第2のプレートユニット40の偏芯カムホルダ44のカム受け50に回転可能に収容されている。
第1のプレート群28は側板38、39よりも外側に位置するL字形の一対の側板68、70間に長ボルト35Aを支持することにより位置決めされ、これらは第1のプレートユニット72を構成している。
上記加圧手段18の加圧プレート24は側板68、70間に回動自在に支持されている。なお、第2のプレートユニット40と同様に、第1のプレートユニット72の入口側と出口側も図示しない側板で塞がれており、上記濃縮ガイド16の平行部22aは入口側の側板に固定されている。
第2のプレートユニット40と同様に、側板68、70の底面には偏芯カムホルダ44が固定されており、外方2つの偏芯カム66C、66Dはこれらの偏芯カムホルダ44のカム受け50に回転可能に収容されている。
【0027】
図15に示すように、筐体12の入口側には従動軸74が駆動軸60と同様に支持されており、駆動軸60と同様に4つの偏芯カム66A、66B、66C、66Dが固定されている。
駆動軸60と従動軸74のモータ32側には、それぞれチェーンスプロケット76、78が固定されており、これらにチェーン80が掛け回されてモータ32の駆動力が従動軸74に伝達されるようになっている。
図16に示すように、各偏芯カム66はδの偏芯量(ここでは5mm)を有し、Aプレートを有する第1のプレートユニット72に対応する偏芯カム66C、66Dと、Bプレート及びCプレートを有する第2のプレートユニット40に対応する偏芯カム66A、66Bは、180°の位相差をもつように設定されている。
すなわち、Aプレートと、Bプレート及びCプレートとの間のプレート上面(上縁)の上下変位が最大となるように設定されている。但し、この位相差に限定される趣旨ではない。
【0028】
上記のように第1のプレートユニット72と第2のプレートユニット40が偏芯カム66A、66B、66C、66Dを介して支持されている構成により、Aプレートからなる第1のプレート群28と、Bプレート及びCプレートからなる第2のプレート群30は互いに180°の位相差をもって、上記偏芯量による円運動に基づく上下・左右変位を伴う平行運動をする。
図17(a)は、Aプレート群のプレート上面で形成されるフィルタ面(濾過面、搬送面)にフロック化汚泥85が載っている状態を示している。この状態で上記平行運動によりAプレート群のフィルタ面と、Bプレート群及びCプレート群のプレート上面で形成されるフィルタ面とが互いに上下に変位して入れ替わり、フロック化汚泥85は図17(b)に示すように、Bプレート群及びCプレート群のフィルタ面で持ち上げられて出口側へ移動する。
【0029】
その後、図17(c)に示すように、Bプレート群及びCプレート群のフィルタ面上のフロック化汚泥85は、再び入れ替わることにより上昇するAプレート群のフィルタ面に受け渡される。
この動作が繰り返されることにより、フロック化汚泥85は徐々に出口側へ搬送される。
第1のプレート群28と第2のプレート群30は互いに上下に変位するので、フロック化汚泥85を搬送する濾過面は偏芯カム66の1回転毎に新しい濾過面として現れることになる。
図18に示すように、プレートが上昇してフロック化汚泥85を受け取るときに、プレートがフロック化汚泥85に突き上げるようにフロック化汚泥85を搾り込み、脱水が促される。したがって、第1のプレート群28と第2のプレート群30のプレート上面の高低差が最も大きいときに水分が落下する量が多い。
プレート上面の高低差が最も小さくなったときは、重力濃縮部では、上記プレートの搾り込み作用による脱水は期待できず、単に重力のみによる脱水作用となる。
【0030】
BプレートとAプレートの平行運動が行われる重力濃縮部では、フロック化汚泥85は主に重力を利用した濃縮作用で水分が除去される。換言すれば、単にザルの目から水が抜けるのと同様の脱水作用となる。
したがって、水の分離に伴う固形分の流出は極めて少ない処理水が得られる。
加圧脱水部では加圧手段18によりフロック化汚泥85は濾過体3の濾過面に加圧されるため、フロックに抱き込まれた水分の流出が促される。
加圧手段18は短い搬送距離で処理効率を上げるためには必要であるが、重力濃縮部でのプレート間のギャップがそのまま維持された場合、水分と共に多量の固形物が流出することになる。
一般に、汚水処理プラントの中では、脱水機から離脱した処理水は再び汚水処理の原水槽に戻されることが多いために、処理水に固形物が多く含まれることは汚水処理装置に余計な負担を与えることにつながり、好ましくない。
したがって、従来においては、固形分の流出が極めて少ない重力濃縮部と、強制加圧により固形分の流出が多い加圧脱水部での処理水は分けて回収した方が望ましく、加圧脱水部での処理水をそのまま汚水処理系(浄化槽)に排出することは困難となっていた。
【0031】
本実施形態に係る固液分離部4では、上述のように、加圧脱水部でのプレート間ギャップg2は0.25mmで、重力濃縮部のプレート間ギャップg1(0.5mm)の半分となっているため、加圧されても固形分の流出が抑制される。
加圧脱水部ではフロック化汚泥85の容積が次第に小さくなることと、フィルタ面のギャップ(プレート間ギャップ)の目幅が小さくなることで、重力濃縮部と同様のギャップを有している場合に比べて圧力が高まり、良好に脱水される。
圧力が高まるに伴い、僅かなギャップ(g2)から水分が除去され、脱水された固形物はシュータ20より落下する。
従来の平行プレート搬送方式では、搬送方向全体に亘ってプレート間ギャップ幅が同じであるため、脱水ケーキの含水率を低下させようとして加圧脱水部における加圧力を高めても、ギャップから漏れ出る固形物の量が増えるだけであった。
これに対し、本実施形態に係る固液分離装置2では固形物の流出を抑制しながら脱水ケーキの含水率を良好に低下させることができる。
【0032】
なお、本実施形態では、図14に示すように、重力濃縮部と加圧脱水部との境界に仕切り板52を設けて処理水を分けて回収するようにしているが、加圧脱水部での処理水も重力濃縮部での処理水と同様に直接浄化槽に回すことが可能となる。
フロック化汚泥85の種類、ギャップg2の大きさによっては、重力濃縮部と加圧脱水部での処理水を分けて回収する構成は不要である。
【0033】
図19に示すように、AプレートとBプレートの上面に波形を形成して入口側での搬送力を高めるようにしてもよい。
上記の平行運動によって濾過体3は搬送力を有しているが、加圧手段5による搬送力とも相まって搬送力が高まり、加圧体9の領域で十分に圧力を受けることなく排出される懸念がある。
これを防止するためには、インバータなどで駆動速度そのものを抑制する方法もあるが、処理効率の低下を避けられない。
そこで、Cプレートの搬送能力(CプレートとBプレートが一体になったプレートの場合には略出口側半分の搬送能力)を消失させる構成とする。
すなわち、図20(a)に示すように、Aプレートに対して相対的にCプレートが偏芯量δ位置ずれすることにより搬送力が生じるが、(b)に示すように、Cプレートの高さをAプレートに対する位置ずれ量分小さくする。このようにすれば、AプレートとCプレート間での汚泥85の受け渡しはできるが搬送力は生じない。
【0034】
上記実施形態では、Aプレート群と、Bプレート群及びCプレート群とが共に平行運動をする構成としたが、いずれか一方群を固定する構成としてもよい。
また、BプレートとCプレートとからなる分割構成としたが、搬送方向におけるCプレートの領域に亘って一定の厚みを有するBプレート群のみとしてもよい。
また、濾過体3をプレート群の組み合わせによるフィルタ方式としたが、濾布やベルトによって搬送する方式においても同様に実施することができる。
【符号の説明】
【0035】
3 濾過体
5 加圧手段
9 加圧体
9b 加圧体の下面
19 送り羽根
20 圧力調整手段
21 圧力調整板
21a 自由端部
23 ネジ部材としての調整用ボルト
85 処理対象物としての汚泥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物をその入口側から出口側へ向けて脱水しながら搬送する濾過体と、該濾過体の上部に設けられ、前記濾過体上の処理対象物を加圧する加圧手段とを有する固液分離装置において、
前記加圧手段が、処理対象物に前記濾過体との間で挟むように接する加圧体と、該加圧体を、搬送方向の前後及び上下に変位する平行運動をさせる加圧体駆動機構とからなり、処理対象物に加圧と共に搬送力を付与せしめることを特徴とする固液分離装置。
【請求項2】
請求項1に記載の固液分離装置において、
前記濾過体の搬送面に対向する前記加圧体の下面が、前記出口側へ向って処理対象物に対する加圧力を徐々に強める形状を有していることを特徴とする固液分離装置。
【請求項3】
請求項2に記載の固液分離装置において、
前記加圧体の下面に処理対象物を搬送する送り羽根が設けられていることを特徴とする固液分離装置。
【請求項4】
請求項3に記載の固液分離装置において、
前記送り羽根が搬送方向に間隔をおいて複数設けられていることをと特徴とする固液分離装置。
【請求項5】
請求項4に記載の固液分離装置において、
前記各送り羽根は、前記出口側へ向って搬送量が異なる形状を有していることを特徴とする固液分離装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の固液分離装置において、
前記加圧体の出口側に、処理対象物の最終的な排出量を調整可能な圧力調整手段が設けられていることを特徴とする固液分離装置。
【請求項7】
請求項6に記載の固液分離装置において、
前記圧力調整手段が、一端部が前記加圧体に固定された圧力調整板と、前記加圧体に支持され、回転操作することにより前記圧力調整板の前記出口側寄りに位置する自由端部を上下に変位させるネジ部材とを有していることを特徴とする固液分離装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の固液分離装置において、
前記濾過体の搬送面が、前記出口側へ向けて上り勾配を有していることを特徴とする固液分離装置。
【請求項9】
請求項8に記載の固液分離装置において、
前記濾過体が、前記入口側から出口側へ延びるプレートをその長手方向と略直交するプレート厚み方向に略一定の間隔で複数配置して一体化した第1のプレート群と、前記長手方向に延びる各プレートを第1のプレート群のプレート間に入り込むように配置して一体化した第2のプレート群とを有し、第1のプレート群と第2のプレート群のうち少なくとも一方を、互いのプレート上面が交互に変位するように平行運動を行わせることにより、処理対象物を前記入口側から前記出口側へ向けて搬送する構成を有していることを特徴とする固液分離装置。
【請求項10】
請求項9に記載の固液分離装置において、
前記濾過体の前記出口側寄りの部分は、第1のプレート群と第2のプレート群との間で処理対象物の受け渡しが可能で且つ搬送力が低減ないし消失するように、第1のプレート群と第2のプレート群のうちの少なくとも一方のプレートの形状が設定されていることを特徴とする固液分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−230105(P2011−230105A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105699(P2010−105699)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【特許番号】特許第4585044号(P4585044)
【特許公報発行日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(502141393)ジャステック株式会社 (11)
【Fターム(参考)】