説明

圃場用畦畔、畦畔施工方法及び畦畔施工装置

【課題】強度の略均一な畦畔2を容易に施工できるようにする。
【解決手段】圃場1の畦畔施工箇所3の土壌を掘削攪拌する掘削攪拌手段29と、該掘削攪拌手段29により攪拌される掘削土壌4中に土壌硬化材11を含む硬化材ペースト6を注入する注入手段32と、掘削攪拌手段29により攪拌されて硬化材ペースト6と混練された掘削土壌4を所定形状に成形する成形手段33とを備える。掘削攪拌手段29は縦軸心廻りに回転する中空状の回転軸45の外周に掘削攪拌具46を備え、注入手段32は回転軸45に形成された注入口55を有し、回転軸45内の注入通路54から注入口55を経て硬化材ペースト6を注入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場用畦畔、畦畔施工方法及び畦畔施工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水田等の圃場の畦畔には、その周囲を取り囲むように畦畔が設けられている。この圃場用の畦畔には、周辺の土壌を固めた土畦畔の他にコンクリート製のコンクリート畦畔、合成樹脂製の畦畔用の構成材を畦畔施工箇所に埋設して成形された構成材埋設畦畔(特許文献1)、畦畔施工箇所の土壌をセメントで硬化させたセメント硬化畦畔(特許文献2)等がある。
【0003】
コンクリート畦畔は畦畔施工箇所を掘削して型枠を組み、その型枠内にコンクリートを充填し硬化させてコンクリート壁を形成するものであり、構成材埋設畦畔は畦畔施工箇所に溝を掘削し、その溝に中空4角形状の合成樹脂製の構成部材を所定幅に並べて埋設したものである。
【0004】
またセメント硬化畦畔は畦畔施工箇所の地表面にセメントを散布し、その上から界面活性剤とエマルジョン樹脂とを含む養生水を散布した後、畦畔施工箇所の土壌を掘削し攪拌して、その掘削土壌にセメント及び養生水を混合して鎮圧し、セメントにより土壌を硬化させたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−41562号公報
【特許文献2】特開平11−117292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コンクリート畦畔は、従来の土畦畔に比較して水漏れ等がない上に、耐久性に優れ長期間にわたって補修が不要になる等の利点があるが、施工が非常に大掛かりであって多額の工事費を要し、しかもロータリ装置等により圃場の畔際を耕耘する際に耕耘爪、爪軸等がコンクリート畦畔と接触して損傷するという問題がある。
【0007】
構成材埋設畦畔は特別な合成樹脂製の構成材を準備する必要があり、また畦畔施工箇所に溝を掘削して構成材を埋設するため、コンクリート畦畔程ではないまでも、施工がかなり大掛かりなものとなる欠点がある。しかも施工後の畦畔は合成樹脂製の構成材が地面から露出した状態であるため、耐候を有する構成材を使用しない限り比較的短期間で劣化する惧れがあり、またロータリ装置の耕耘爪、爪軸等との接触により構成材が損傷し易いという問題もある。
【0008】
セメント硬化畦畔は、畦畔施工箇所の土壌をセメントで硬化させたものであるため、比較的施工が容易である上に耐久性に優れ、また畔際の耕耘時に耕耘爪等が畦畔に接触しても、その接触箇所の畦畔が損傷する程度であって、耕耘爪等の損傷を極力少なくできる利点がある。
【0009】
しかし、このセメント硬化畦畔は畦畔施工箇所の地表面にセメントを散布し、その上から界面活性剤とエマルジョン樹脂とを含む養生水を散布した後、その畦畔施工箇所の土壌を掘削して攪拌するため、畦畔施工箇所の掘削土壌に対してセメント及び養生水を均一に混合することが非常に困難であり、局部的に強度が極端に低下する箇所ができる等バラツキが生じ易いという欠点がある。
【0010】
本発明は、このような従来の課題に鑑み、土壌硬化材を含む硬化材ペーストを利用することにより比較的簡単な方法で容易に略均一に施工できる圃場用畦畔、畦畔施工方法及び畦畔施工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る圃場用畦畔は、圃場1の畦畔施工箇所3において該畦畔施工箇所3の土壌を掘削した掘削土壌4中に土壌硬化材11を含む硬化材ペースト6を注入し、前記掘削土壌4と前記硬化材ペースト6とを混練して前記土壌硬化材11により前記掘削土壌4を硬化させたものである。
【0012】
本発明に係る畦畔施工方法は、圃場1の畦畔施工箇所3の土壌を掘削してその掘削土壌4を前記畦畔施工箇所3で攪拌しながら、該掘削土壌4中に土壌硬化材11を含む硬化材ペースト6を注入して、前記掘削土壌4と前記硬化材ペースト6とを混練した後、前記土壌硬化材11により前記掘削土壌4を硬化させて畦畔とするものである。
【0013】
前記硬化材ペースト6に界面活性剤12、高分子エマルジョン樹脂13を配合してもよい。前記土壌硬化材がセメント11でもよい。
【0014】
本発明に係る畦畔施工装置は、圃場1の畦畔施工箇所3の土壌を掘削攪拌する掘削攪拌手段29と、該掘削攪拌手段29により攪拌される掘削土壌4中に土壌硬化材11を含む硬化材ペースト6を注入する注入手段32と、前記掘削攪拌手段29により攪拌されて前記硬化材ペースト6と混練された前記掘削土壌4を所定形状に成形する成形手段33とを備えたものである。
【0015】
前記掘削攪拌手段29は縦軸心廻りに回転する中空状の回転軸45の外周に掘削攪拌具46を備え、前記注入手段32は前記回転軸45に形成された注入口55を有し、前記回転軸45内の注入通路54を経て前記注入口55を経て前記硬化材ペースト6を注入するものでもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る圃場用畦畔は、圃場1の畦畔施工箇所3において該畦畔施工箇所3の土壌を掘削した掘削土壌4中に土壌硬化材11を含む硬化材ペースト6を注入し、掘削土壌4と硬化材ペースト6とを混練して土壌硬化材11により掘削土壌4を硬化させているので、比較的簡単な方法で強度の略均一な畦畔2を容易に施工することができる。
【0017】
また本発明に係る畦畔施工方法は、圃場1の畦畔施工箇所3の土壌を掘削してその掘削土壌4を畦畔施工箇所3で攪拌しながら、該掘削土壌4中に土壌硬化材11を含む硬化材ペースト6を注入して、掘削土壌4と硬化材ペースト6とを混練した後、土壌硬化材11により掘削土壌4を硬化させて畦畔2とするので、比較的簡単な方法で強度の略均一な畦畔2を容易に施工することができる。
【0018】
更に本発明に係る畦畔施工装置は、圃場1の畦畔施工箇所3の土壌を掘削攪拌する掘削攪拌手段29と、該掘削攪拌手段29により攪拌される掘削土壌4中に土壌硬化材11を含む硬化材ペースト6を注入する注入手段32と、掘削攪拌手段29により攪拌されて硬化材ペースト6と混練された掘削土壌4を所定形状に成形する成形手段33とを備えているので、強度の略均一な畦畔2を容易に施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す畦畔構造の断面図である。
【図2】同畦畔施工方法を示すブロック図である。
【図3】同セメントペーストを示すブロック図である。
【図4】同トラクタ装着型畦畔施工装置の断面図である。
【図5】同トラクタ装着型畦畔施工装置の平面図である。
【図6】同掘削攪拌手段の一部破断側面図である。
【図7】同成形手段の一部破断背面図である。
【図8】同注入手段の説明図である。
【図9】本発明の第2の実施形態を示す畦畔施工装置の断面図である。
【図10】同畦畔施工装置の平面図である。
【図11】同要部の断面図である。
【図12】本発明の第3の実施形態を示す成形手段の背面図である。
【図13】本発明の第4の実施形態を示す畦畔施工装置の断面図である。
【図14】同畦畔施工構造の断面図である。
【図15】本発明の第5の実施形態を示す畦畔施工装置の平面図である。
【図16】本発明の第6の実施形態を示す畦畔施工構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて詳述する。図1〜図8は本発明の第1の実施形態を例示する。図1は水田等の圃場1間の従来の土畦畔等をセメント硬化畦畔2に改良した場合を示す。セメント硬化畦畔2は上下に長い縦長矩形状の断面形状を有し、上端側の一部を残す略全体が地中に埋入している。
【0021】
なお、セメント硬化畦畔2は縦長状である必要はなく、施工場所によってはセメント硬化畦畔2の上下方向の寸法よりも左右方向の幅を大にしてもよい。またセメント硬化畦畔2が十分な幅を有するか、又は十分な埋め込み深さを有するか等により、セメント硬化畦畔2が倒れる惧れのない場合には、セメント硬化畦畔2から圃場1の内側の土壌は削り取ってもよい。
【0022】
このセメント硬化畦畔2を施工する場合には、図2に示すように、土畦畔等の畦畔施工箇所3においてその畦畔施工箇所3の土壌を掘削し攪拌する掘削攪拌工程5と、その掘削土壌4にセメントペースト6(図3参照)を注入する注入工程7と、その注入後の掘削土壌4を更に攪拌してセメントペースト6と混練する混練工程8と、混練済みの掘削土壌4を所定形状に成形する成形工程9と、成形後に所定時間養生して硬化させる養生工程10とを経て行う。
【0023】
セメントペースト6は硬化材ペーストの一例であって、図3に示すように、土壌硬化材であるセメント11を主成分とし、これに界面活性剤12と高分子エマルジョン樹脂13と水14とを所定の割合で配合してペースト化したものである。
【0024】
セメント11、界面活性剤12、高分子エマルジョン樹脂13の配合割合は、土畦畔等の畦畔施工箇所3の土壌の条件に応じて適宜決定するが、粘土質土壌の場合には、例えば土壌1m3 に対してセメント300Kg、ABS(界面活性剤12)の15%溶液5Kg、SBR(高分子エマルジョン樹脂13)の45%溶液14Kgを配合し、これに水200Kgを添加してペースト化したものである。
【0025】
因みに、粘土質土壌の場合において、例えば土壌1m3 に対するセメント300Kgは施工後のセメント硬化畦畔2に要求される強度を考慮したものであり、また水200Kgは混練後の掘削土壌4が所定の成形性を有し自然流動しない範囲内のものである。界面活性剤12の15%溶液5Kgは土壌に対するセメントペースト6の馴染みをよくするためであり、また高分子エマルジョン樹脂13の45%溶液14Kgは硬化後のセメント硬化畦畔2の防水性を確保するためである。
【0026】
このセメント硬化畦畔2を施工する場合には、図4〜図7に示すようにトラクタ16に装着された畦畔施工装置17を使用する。トラクタ16は前後方向に配置された車体19と、この車体19の左右両側に装着された左右一対の後輪18と、車体19上に装着された昇降用の油圧装置20、運転席21等を有する。
【0027】
畦畔施工装置17はトラクタ16の後方に三点リンク機構22を介して着脱、昇降自在に装着されている。三点リンク機構22は上部リンク23と、左右一対の下部リンク24とを有し、その下部リンク24がリフトロッド25を介して油圧装置20の油圧アーム26に昇降自在に連結されている。
【0028】
畦畔施工装置17は、三点リンク機構22に連結された支持枠28と、この支持枠28に装着され且つ畦畔施工箇所3の土壌を所定の掘削幅、掘削深さで縦長角形状に掘削して攪拌する掘削攪拌手段29と、支持枠28に装着され且つ掘削攪拌手段29の掘削深さを規制するゲージ体30と、支持枠28上に装着され且つセメントペースト6を貯留する貯留手段31と、掘削攪拌手段29により掘削し攪拌される掘削土壌4中に貯留手段31からのセメントペースト6を注入する注入手段32と、掘削攪拌手段29により攪拌されてセメントペースト6と混練された掘削土壌4を所定の畦畔形状に成形する成形手段33とを備えている。
【0029】
支持枠28は左右方向の略中央に配置された入力用伝動ケース34と、この入力用伝動ケース34の左右両側に装着された支持筒体35と、各支持筒体35の外端に前後方向に固定された下部ブラケット36と、一方の下部ブラケット36を介して支持筒体35の延長上に固定された掘削用伝動ケース37と、入力用伝動ケース34上に固定された上部ブラケット38と、掘削用伝動ケース37から後方に突出するブラケット39等により構成され、その上部ブラケット38の上端部に上部リンク23が、下部ブラケット36の前端部に下部リンク24が夫々連結されている。
【0030】
入力用伝動ケース34は前側に突出する入力軸40を有し、この入力軸40が自在軸継ぎ手41を介してトラクタ16のPTO軸42に連結されている。入力軸40は入力用伝動ケース34内のベベルギアー機構、一方の支持筒体35内の伝動軸43を介して掘削攪拌手段29へと動力を伝達するようになっている。
【0031】
掘削攪拌手段29は一方の後輪18の後方側で左右方向の一端に支持枠28に装着されている。この掘削攪拌手段29は一方の支持筒体35の先端に装着された掘削用伝動ケース37と、この掘削用伝動ケース37により縦軸心廻りに回転自在に支持され且つ掘削用伝動ケース37から下側に突出する回転軸45と、この回転軸45の外周に固定された掘削攪拌具46とを備え、回転軸45の回転時に掘削攪拌具46により畦畔施工箇所3の土壌を掘削して、その掘削土壌4をその位置で攪拌するようになっている。なお、掘削攪拌手段29は一方の後輪18の後方で、その後輪18よりも外側に配置してもよい。
【0032】
掘削用伝動ケース37内にはベベルギアー機構37a等が組み込まれており、伝動軸43の動力をそのベベルギアー機構37a等を介して回転軸45に伝達するようになっている。回転軸45は中空状であり、若干前側に傾斜して設けられている。掘削攪拌具46は回転軸45の外周に螺旋状に連続又は間欠的に設けられた掘削刃47と、この掘削刃47の上側に設けられた攪拌突起48とを有する。
【0033】
なお、掘削攪拌具46は回転軸45に対して螺旋状に連続又は間欠的に設けられた掘削刃47と、回転軸45に対して径方向の攪拌突起48とを組み合わせて構成してもよいし、螺旋状に連続又は間欠的に設けられた掘削刃47のみで構成してもよい。
【0034】
ゲージ体30は畦畔施工箇所3の地表面を基準に掘削攪拌手段29の掘削深さを規制するためのもので、例えば掘削攪拌手段29の前側近傍で地表面上を転動するゲージ輪49と、このゲージ輪49を支持する支持杆50とを有し、その支持杆50が支持枠28に対して上下調整自在に固定されている。支持杆50は支持枠28の保持筒51により上下調整自在に保持されている。従って、ゲージ体30を上下調整することにより、掘削攪拌手段29の掘削深さを適宜調整可能である。
【0035】
貯留手段31はタンクにより構成されており、支持枠28の後部側で左右一対の下部ブラケット36間に設けられた支持台52上に装着されている。この貯留手段31は上側に開閉蓋31aを有し、また内部のセメントペースト6を取り出し易くなるように底壁が傾斜状に構成されている。なお、貯留手段31は適宜支持手段により支持枠28に装着してもよい。また貯留手段31はその内部でのセメントペースト6の沈澱を防止するために、内部に攪拌手段を備えることが望ましい。
【0036】
注入手段32は図8に示すように中空状の回転軸45内に形成された注入通路54と、回転軸45の長手方向に所定間隔をおいて形成され注入口55と、掘削用伝動ケース37上に配置され且つ貯留手段31側の供給管路56と回転軸45とを接続する回転管継ぎ手57と、供給管路56の途中に介装された注入ポンプ58とを備えている。
【0037】
そして、この注入手段32は、貯留手段31内のセメントペースト6を注入ポンプ58により回転管継ぎ手57を介して回転軸45内の注入通路54へと圧送し、その注入通路54を経て注入口55から土壌内にセメントペースト6を加圧状態で注入するようになっている。
【0038】
供給管路56は注入ポンプ58の作動時に貯留手段31内のセメントペースト6を取り出し得るように貯留手段31に接続されている。注入ポンプ58は例えば電動式であって、支持台52上に設けられている。なお、注入口55は掘削刃47の下側近傍に配置されている。注入口55は回転軸45の周方向に位置を変えて配置してもよい。注入ポンプ58はエンジン駆動式でもよいし、入力軸40に伝達される動力により駆動されるものでもよい。
【0039】
成形手段33は図4〜図7に示すように掘削攪拌手段29の左右両側に上下調整可能に配置された左右一対の側部成形板60と、この一対の側部成形板60間に配置された頂部成形板61とを備え、これら成形板60,61により地表面から上側の畦畔形状を凸状に成形するようになっている。左右一対の側部成形板60は上部カバー62の左右両側の屈曲部62aに上下調整手段60aを介して上下調整可能に固定されている。また上部カバー62は回転軸45が貫通して掘削用伝動ケース37の下側に装着されている。なお、上部カバー62及び側部成形板60は支持枠28に上下調整可能に取り付けてもよいし、ゲージ体30の上下調整に連動して上下動するように支持枠28に取り付けてもよい。
【0040】
頂部成形板61は前端側の横方向の枢支軸63により上下動自在に枢支され、後部側が付勢手段65により下方に付勢されている。枢支軸63は上部カバー62の後端部に設けられており、頂部成形板61は枢支軸63を介して上部カバー62に連結されている。なお、枢支軸63は上部カバー62の後端部近傍で左右一対の側部成形板60間に支架してもよい。
【0041】
付勢手段65は下端が頂部成形板61上に枢支され且つ保持体66により上下摺動自在に保持された付勢ロッド67と、保持体66の下側で付勢ロッド67に套嵌された付勢バネ68とを有し、その付勢バネ68により所定の成形圧で頂部成形板61を下方に付勢するようになっている。保持体66はブラケット36,39の後端に横軸心廻りに回動自在に支持されている。なお、付勢バネ68はそのバネ圧を調整可能である。
【0042】
セメント硬化畦畔2の施工に際しては、トラクタ16に装着された畦畔施工装置17を使用して次のような方法により行う。先ずゲージ輪49により掘削攪拌手段29の掘削深さを調整し、またその掘削深さに応じて成形手段33の側部成形板60の高さを調整する。そして、回転軸45を回転させた状態で掘削攪拌手段29が畦畔施工箇所3に対応するように畦畔施工装置17全体を下降させて、畦畔施工箇所3に沿って走行しながら作業を行う。
【0043】
このとき図4、図5に示すようにゲージ輪49が畦畔施工箇所3の地表面上を転動するため、油圧装置20をフローティング状態にしておけば、掘削攪拌手段29を含む畦畔施工装置17が畦畔施工箇所3の地表面の凹凸に追従しながら前進し、その掘削攪拌手段29、注入手段32、成形手段33により、掘削攪拌工程5、注入工程7、混練工程8、成形工程9の各工程が順次なされる。
【0044】
先ず掘削攪拌手段29の回転軸45が所定方向に回転すると、図6、図7に示すように、その掘削刃47により畦畔施工箇所3の土壌を所定の掘削幅、掘削深さで掘削して、その掘削土壌4を畦畔施工箇所3において攪拌する(掘削攪拌工程5)。
【0045】
一方、注入手段32の注入ポンプ58を作動させておけば、注入ポンプ58が貯留手段31内のセメントペースト6を定量ずつ取り出して、そのセメントペースト6を回転管継ぎ手57を介して回転状態の回転軸45の注入通路54へと送り、注入通路54を経て各注入口55から、掘削刃47により攪拌状態にある掘削土壌4中にセメントペースト6を注入する(注入工程7)。そして、掘削攪拌手段29により、その掘削土壌4とセメントペースト6とを満遍なく混練する(混練工程8)。
【0046】
このように掘削攪拌手段29で畦畔施工箇所3の土壌を掘削しながら、回転軸45の注入口55からその掘削土壌4中にセメントペースト6を注入すれば、この掘削攪拌手段29により、畦畔施工箇所3の土壌の掘削に続いて掘削土壌4とセメントペースト6との混練を略同時に連続的に行うことになり、掘削土壌4とセメントペースト6とを短時間でムラなく混練することができ、セメントペースト6を掘削土壌4に対して略均一に混ぜ合わせることができる。
【0047】
特に掘削攪拌手段29により畦畔施工箇所3の土壌を掘削しながら所定の速度で前進して行けば、畦畔施工箇所3の土壌は掘削攪拌手段29の掘削刃47により掘削された後、掘削刃47の回転により持ち上げられながら掘削刃47を通過して直ちに埋め戻される。このため掘削刃47の回転に伴って掘削土壌4を持ち上げては埋め戻す動作が繰り返されるので、掘削刃47の回転による掘削土壌4の攪拌作用が大となり、土壌の掘削と同時にその掘削土壌4とセメントペースト6とを略満遍なく混練することができる。
【0048】
また掘削攪拌手段29は掘削刃47の上側に攪拌突起48を備えているため、この攪拌突起48の回転により掘削土壌4とセメントペースト6とをより一層均一に混練することができる。即ち、掘削土壌4はセメントペースト6と混練されるものの、攪拌により膨隆化して体積を増しながら地表面側へと浮上する。そして、その浮上する掘削土壌4を攪拌突起48により攪拌するので、表層側での土壌とセメントペースト6との混練をより一層均一にすることができる。
【0049】
膨隆化して地表面側に浮上した土壌は、成形手段33の左右一対の側部成形板60により掘削攪拌手段29の掘削幅と略同じ幅に規制されながら、頂部成形板61により所定の成形圧で加圧されるので、これらの側部成形板60、頂部成形板61により地表面から上側が所定の畦畔形状(例えば凸状)に成形される。その後に、所定期間養生してセメント11を硬化させれば、畦畔施工箇所3の掘削土壌4をセメント11により固めたセメント硬化畦畔2となる。
【0050】
従って、セメント11を主成分とするセメントペースト6を使用して、その畦畔施工箇所3の土壌を掘削し、その掘削土壌4を畦畔施工箇所3において攪拌しながらセメントペースト6を注入して、掘削土壌4とセメントペースト6とを混練することにより、比較的簡単な方法でセメント硬化畦畔2を容易に施工することができる。
【0051】
またセメントペースト6を掘削攪拌手段29により土壌を掘削し攪拌しながら、その掘削土壌4にセメントペースト6を注入して混練するので、掘削土壌4に対してセメントペースト6を略均一に混練することが可能であり、施工後のセメント硬化畦畔2の部分的な強度ムラの発生を極力防止することができる。
【0052】
更にセメントペースト6に界面活性剤12と高分子エマルジョン樹脂13とを配合しているので、土壌に対するセメントペースト6の馴染みがよく略均一に混練できる上に、硬化後のセメント硬化畦畔2の防水性を確保することができる。
【0053】
畦畔施工装置17は、圃場1の畦畔施工箇所3の土壌を掘削攪拌する掘削攪拌手段29と、この掘削攪拌手段29により掘削し攪拌される掘削土壌4中にセメント11を含むセメントペースト6を注入する注入手段32と、掘削攪拌手段29により攪拌された掘削土壌4を所定形状に成形する成形手段33とを備えているので、この畦畔施工装置17をトラクタ16に装着すれば、走行しながら連続的にセメント硬化畦畔2の施工作業を行うことができる。
【0054】
掘削攪拌手段29は縦軸心廻りに回転する中空状の回転軸45の外周に掘削刃47を備え、注入手段32は回転軸45に形成された注入口55を有し、回転軸45内の注入通路54を経て注入口55からセメントペースト6を注入するため、掘削攪拌手段29と注入手段32との構造を簡素化できると共に、セメントペースト6を容易且つ確実に注入することができる。
【0055】
図9〜図11は本発明の第2の実施形態を例示する。この実施形態の畦畔施工装置17では、掘削攪拌手段29の回転軸45が略垂直に配置され、また掘削深さ規制用のゲージ体30が成形手段33側に設けられている。回転軸45は掘削用伝動ケース37から下側に略垂直に下方へと突出している。また回転軸45の外周には掘削刃47が螺旋状に設けられているが、その掘削刃47は下側に対して上側の直径が大になっている。従って、掘削攪拌手段29は、畦畔施工箇所3の土壌を逆台形状に掘削し攪拌するようになっている。
【0056】
ゲージ体30は畦畔施工箇所3の地表面上を摺動する左右一対のゲージ橇70により構成され、その各ゲージ橇70は成形手段33の各側部成形板60の下端外側に前後方向に配置されている。各側部成形板60は上部カバー62に対して上下調整可能である。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0057】
このような構成の畦畔施工装置17を使用してもよい。また畦畔施工箇所3の土壌を逆台形状に掘削する掘削攪拌手段29を使用すれば、畦畔施工箇所3の条件によっては掘削攪拌領域の断面積を小さくすることもできる。更に側部成形板60にゲージ橇70を設けることにより、ゲージ体30による掘削深さの調整と、その掘削深さに合わせた側部形成板60の高さ調整とを同時に行うことができる。
【0058】
図12は本発明の第3の実施形態を例示する。この実施形態の成形手段33は横軸75廻りに回転する回転式であって、畦畔施工箇所3の左右両側で地表面上を転動する左右一対の転動輪71と、この各転動輪71の内側に略同心状に形成された円錐状の側部成形部72と、この側部成形部72間に略同心状に設けられた小径の頂部成形部73と、各転動輪71の側部成形部72側に略同心状に設けられた規制円板74とを一体に有し、横軸75により回転自在に支持されている。横軸75は左右一対の支持腕76により支持され、支持枠28に上下調整可能に取り付けられている。転動輪71はゲージ体30を兼用する。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0059】
この場合には転動輪71が地表面上を転動しながら、その側部成形部72により地表面上の掘削土壌4の左右両側を成形でき、また頂部成形部73によりその頂部を成形できるので、成形手段33により成形抵抗を小さくすることができる。また転動輪71によりゲージ体30を兼用すれば、調整が容易であると同時に構造的にも簡単化することができる。しかも、円板74が地表面に食い込んだ状態で転動輪71が転動するので、直進性が向上する他、セメントペースト6を混練後の土壌の側方への移動を極力防止することができる。
【0060】
図13、図14は本発明の第4の実施形態を例示する。この実施形態の成形手段33は、付勢手段65の頂部成形板61に対する付勢力を十分大にして、頂面が地表面と略同一高さか、又は突出高さが比較的低い畦畔を成形するようにしている。他の構成は各実施形態と同様である。
【0061】
この場合には、セメント硬化畦畔2の施工に際しては、成形手段33の頂部成形板61が膨隆状の掘削土壌4を十分に押圧して、頂面が地表面と略同一高さか、又は突出高さが比較的低いセメント硬化畦畔2に成形する。従って、例えば図13に示すように圃場1の近傍に農道77があり、その農道77に隣接してセメント硬化畦畔2を施工するような場合にも、農道77の地表面と略同一高さか、又は農道77の地表面からの突出高の低い畦畔を設けることができるので、セメント硬化畦畔2の施工後も、それが邪魔になるようなこともない。なお、セメント硬化畦畔2は図14に示すように農道77の両側に設けてもよい。この場合には農道77の路肩補強用としてセメント硬化畦畔2を利用することができる。
【0062】
図15は本発明の第5の実施形態を例示する。この実施形態の畦畔施工装置17は、トラクタ16の後部に三点リンク機構22を介して装着された支持枠28に、揺動機構78を介して掘削攪拌手段29が揺動自在に連結されている。揺動機構78は基部側が入力用伝動ケース34に縦軸79廻りに、遊端側が掘削用伝動ケース37に回転軸45の軸心廻りに夫々角度変更可能に連結されている。揺動機構78は巻き掛け式の動力伝達機構を有し、入力用伝動ケース34内のベベルギアー機構、縦軸79、動力伝達機構を介してトラクタ16からの動力を掘削攪拌手段29の回転軸45へと伝達するようになっている。他の構成は各実施形態と同様である。
【0063】
このような構成の畦畔施工装置17では、揺動機構78の角度を適宜調整することにより、掘削攪拌手段29の位置を左右方向に調整できるので、トラクタ16を安全な位置に走行させながらも圃場1に対して最適位置にセメント硬化畦畔2を施工することができる。
【0064】
図16は本発明の第6の実施形態を例示する。圃場1の周囲にセメント硬化畦畔2を設ける場合、図15に示すように2条以上の複数条のセメント硬化畦畔2を並べて配置してもよい。例えば、掘削攪拌手段29の掘削幅が小さい場合には、施工されるセメント硬化畦畔2の幅も狭くなるため、複数条のセメント硬化畦畔2を設けてもよい。
【0065】
以上、本発明の各実施形態について詳述したが、本発明は各実施形態に限定されるものではない。例えば、各実施形態ではトラクタ16の後方に三点リンク機構22を介して装着するトラクタ装着型の畦畔施工装置17を例示しているが、トラクタ16以外の走行車体19に装着するものでもよいし、専用の乗用型又は歩行型の走行車体19に装着したものでもよい。
【0066】
掘削攪拌手段29は回転軸45の外周に螺旋状の掘削刃47を設けたオーガー式の他、回転軸45の外周に螺旋状以外の掘削刃47を設けたものでもよい。また掘削攪拌手段29はオーガー式のものが小型で便利であるが、掘削チェーンに掘削攪拌爪を装着したトレンチャー式のもの、横軸心廻りに回転する横軸の外周に掘削攪拌爪を設けたもの等を採用してもよい。
【0067】
更に実施形態では、畦畔施工箇所3の土壌の掘削から、掘削土壌4とセメントペースト6との混練までを掘削攪拌手段29により行うようにしているが、先ず掘削手段で畦畔施工箇所3の土壌を掘削し、次いで注入手段32により掘削土壌4にセメントペースト6を注入した後、攪拌手段により掘削土壌4とセメントペースト6とを混練するように、掘削手段と混練手段とを前後に別々に設けてもよい。
【0068】
注入手段32は中空状の回転軸45の内部を注入通路54として、回転軸45に形成した注入口55からセメントペースト6を注入するようにしているが、回転軸45の外側に鋼管等の注入管を上下方向に固定し、その注入管に注入口55を設けてもよい。注入手段32は要するに掘削土壌4中にセメントペースト6を注入できるものであればよい。
【0069】
実施形態では土壌硬化材としてセメント11を例示し、そのセメント11に界面活性剤12、高分子エマルジョン樹脂13を添加したセメントペースト6を使用しているが、セメント11以外の各種の土壌硬化材を使用することが可能である。また界面活性剤12、高分子エマルジョン樹脂13は例示の物質以外のものでもよい。更に夫々の配合割合は適宜変更可能である。またセメント11に水14を加えてペースト化したものでもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 圃場
2 セメント硬化畦畔
3 畦畔施工箇所
4 掘削土壌
6 硬化材ペースト
11 セメント(土壌硬化材)
12 界面活性剤
13 高分子エマルジョン樹脂
29 掘削攪拌手段
32 注入手段
33 成形手段
45 回転軸
46 掘削攪拌具
55 注入口
54 注入通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場(1)の畦畔施工箇所(3)において該畦畔施工箇所(3)の土壌を掘削した掘削土壌(4)中に土壌硬化材(11)を含む硬化材ペースト(6)を注入し、前記掘削土壌(4)と前記硬化材ペースト(6)とを混練して前記土壌硬化材(11)により前記掘削土壌(4)を硬化させたことを特徴とする圃場用畦畔。
【請求項2】
圃場(1)の畦畔施工箇所(3)の土壌を掘削してその掘削土壌(4)を前記畦畔施工箇所(3)で攪拌しながら、該掘削土壌(4)中に土壌硬化材(11)を含む硬化材ペースト(6)を注入して、前記掘削土壌(4)と前記硬化材ペースト(6)とを混練した後、前記土壌硬化材(11)により前記掘削土壌(4)を硬化させて畦畔とすることを特徴とする畦畔施工方法。
【請求項3】
前記硬化材ペースト(6)に界面活性剤(12)、高分子エマルジョン樹脂(13)を配合することを特徴とする請求項2に記載の畦畔施工方法。
【請求項4】
前記土壌硬化材がセメント(11)であることを特徴とする請求項2又は3に記載の畦畔施工方法。
【請求項5】
圃場(1)の畦畔施工箇所(3)の土壌を掘削攪拌する掘削攪拌手段(29)と、該掘削攪拌手段(29)により攪拌される掘削土壌(4)中に土壌硬化材(11)を含む硬化材ペースト(6)を注入する注入手段(32)と、前記掘削攪拌手段(29)により攪拌されて前記硬化材ペースト(6)と混練された前記掘削土壌(4)を所定形状に成形する成形手段(33)とを備えたことを特徴とする畦畔施工装置。
【請求項6】
前記掘削攪拌手段(29)は縦軸心廻りに回転する中空状の回転軸(45)の外周に掘削攪拌具(46)を備え、前記注入手段(32)は前記回転軸(45)に形成された注入口(55)を有し、前記回転軸(45)内の注入通路(54)から前記注入口(55)を経て前記硬化材ペースト(6)を注入することを特徴とする請求項5に記載の畦畔施工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−26852(P2011−26852A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173949(P2009−173949)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(397045378)サン・エンジニアリング株式会社 (1)
【出願人】(591018420)
【Fターム(参考)】