説明

園芸ポットおよび連結園芸ポット

【課題】苗の情報を表示した表示具を確実に、かつ容易に取り付けることができる園芸ポットを提供する。
【解決手段】底部と、その底部の周縁部から立設して上方へ開口する胴部と、底部の周縁部から下方に連なり、その底部を自身の下端部よりも上位に位置させる底上げ部とを備える。また、胴部の開口から差し入れられる、植物に関する情報を表示した表示具を先端側から受け入れ、その先端を前記底上げ部の内側に位置させて保持する保持孔が底部に形成されている。表示具が保持孔に入らなかった場合は、底部に当たるので、その手ごたえで、作業者は表示具が入らなかったことが分かる。また、開口部から出ている表示具の長さを見ることによっても、表示具が入らなかったことが容易に分かる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、園芸ポットおよび連結園芸ポットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、植物の苗を入れて育苗に用いるために、ポリエチレンやポリプロピレン等の軟質合成樹脂で構成された園芸ポットが使用されている。育苗された植物は園芸ポットごと搬送され、店頭にて展示販売される。販売の際には、植物の名称や育て方、写真などを表示した表示具を取り付けるのが一般的である。
【0003】
表示具は、表示部と脚部からなる立て札状のものが主に使用される。従来から、表示具を取り付ける際には、園芸ポットの内面と培土の隙間に脚部を差し込む方法が用いられてきた。しかしこの方法では表示具が簡単に抜けるので、搬送中にトラックなどの振動で抜け落ちたり、展示販売中にいたずらで引き抜かれたりする問題があった。そこで、表示具を抜けにくくするために、園芸ポットの内面と培土の隙間に脚部を差し込んだ後、ホッチキスで固定していた。しかしながらホッチキスを使用すると、大量の園芸ポットに表示具を取り付ける必要があるので、作業が大変である。
【0004】
このような問題点を解決するために、下記特許文献1には、上端開口部の鍔部に保持孔(切込み)を設けた園芸ポットが開示されている。この園芸ポットによると、鍔部に設けた保持孔に表示具が差し込まれ、係合される。これにより、表示具が抜けにくくなる。また、ホッチキスを用いる必要が無いので取り付け作業が楽である。しかしながらこの園芸ポットは、保持孔だけで表示具を保持しているのでぐらつきやすく、前のめりに倒れたりすることがある。その結果、倒れた表示具によって苗が傷むという問題があった。
【特許文献1】実公平7−46128号公報
【0005】
また、下記特許文献2には、側壁に、開口から所定間隔を空けた部分に凹部を形成し、その凹部の開口を望む部分(上端)に保持孔を設けた園芸ポットが開示されている。この園芸ポットによると、表示具は保持孔で保持されるとともに、側壁の内面と培土で挟まれるので、前のめりに倒れたりする不具合が生じにくい。しかしながらこの園芸ポットは、表示具を取り付ける際に保持孔が培土で埋もれているので、その保持孔の位置が分かりにくいという問題がある。また、凹部は側壁の一部分にのみ形成されているので、取り付け作業の際に、凹部が無い箇所に誤って表示具を差し込むことがある。その場合、表示具の先端が凹部の上端に突き当たらないため、作業者は、保持孔が無い箇所に表示具を差し込んでいることになかなか気付かないという不具合があった。そのため、表示具の取り付け作業を確実に、かつ容易に行える園芸ポットが望まれていた。
【特許文献2】特許第3556213号公報
【0006】
一方、保持孔は通常、細いスリット状に構成されるのであるが、これに表示具を取り付けるのは容易な作業ではない。従来の園芸ポットは、1つの表示具を取り付けるべき箇所に、保持孔が1つだけ単独で形成されており、作業者は細いスリット状に構成された単独の保持孔に、表示具をなんとか取り付ける必要があった。特に、一日に一人で数千個ものポットに表示具を取り付ける必要がある場合には、その作業は大変なものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述のような事情を背景になされたもので、特に、苗の情報を表示した表示具を確実に、かつ容易に取り付けることができる園芸ポットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
上記課題を解決するために本第1発明は、
植物を培土とともに入れるための園芸ポットにおいて、
底部と、
その底部の周縁部から立設して上方へ開口する胴部と、
前記底部の周縁部から下方に連なり、その底部を自身の下端部よりも上位に位置させる底上げ部と、
前記胴部の開口から差し入れられる、前記植物に関する情報を表示した表示具を先端側から受け入れ、その先端を前記底上げ部の内側に位置させて保持する、前記底部に形成された保持孔と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
上記本発明の園芸ポットによると、底部が底上げされており、この底上げされた底部に保持孔が形成される。より詳しくは、底部の周縁部から上方に胴部が立設し、底部の周縁部からは底上げ部が下方に連設されており、この底上げ部によって底部は上方に持ち上げられた恰好となっている。植物の生産者は、底部と胴部によって囲まれた空間に、植物を培土とともに入れて育てる。そして上記植物が育って出荷する時には、この植物に関する情報を表示した表示具を取り付ける作業を行なう。この際、胴部と培土の隙間に表示具を差し込んで、その先端を保持孔に差し込むのであるが、培土によって保持孔の位置が見えなくなっている。しかしながら上記本発明によると、保持孔の形成されていない箇所に表示具を差し込んだとしても、表示具の先端が底部に突き当たるので、作業者はその手ごたえで、保持孔の無い箇所に表示具を差し込んだことを容易に気付くことができる。
【0010】
また、本第2発明は、
植物を培土とともに入れるための園芸ポットにおいて、
底部と、
その底部の周縁部から立設して上方へ開口する胴部と、
前記底部の下面に設けられた脚部と、
前記胴部の開口から差し入れられる、前記植物に関する情報を表示した表示具を先端側から受け入れ、その先端を前記底部の下方に位置させて保持する、前記底部に形成された保持孔と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
上記第2発明によると、底部の下面に脚部が設けられており、この脚部によって底部が底上げされている。そして、この底部に保持孔が形成されている。
【0012】
本第3発明は、上記第1および第2発明におけるもので、前記底部には下方へ凹むように凹部が形成され、前記園芸ポットに前記培土を入れた際にその凹部に前記培土の一部が入ることにより、全体の重心を低くして安定させている。このような構造にすることにより、底部を底上げしても、重心が不安定になって園芸ポットが倒れることが少なくなる。また、ポット内の体積が凹部の分だけ増えるので、植物の根の生育スペースが増える。その結果、根づまりを防止できる。
【0013】
また、本第4発明は、上記第3発明において、前記凹部の底面から側面にわたって、水抜用の切欠孔が形成されている。この切欠孔により、凹部の水はけが良くなり、根腐されや苗の徒長を防止できる。
【0014】
さらに本第5発明の園芸ポットによると、上記第1〜第4発明において、前記保持孔は前記底部の前記周縁部に、該底部の中心を取り囲むように複数個、形成されている。このようにすると、植物を展示販売する際に、消費者に対して最も見栄えの良くなる方向に植物や、その花を向けるとともに、複数個、形成されている保持孔のうち最適な位置にある保持孔に表示具を取り付けることができる。
【0015】
また、本第6発明の園芸ポットによると、上記第1〜第4発明において、前記保持孔は前記底部の中心を取り囲むように複数個、形成され、該底部の前記中心から遠い距離に位置する外側保持孔と、その外側保持孔よりも内側に位置する内側保持孔とが交互に位置するとともに、互いに隣接する前記外側保持孔と前記内側保持孔の端部が、前記底部の中心から外側に向かう方向においてそれぞれ重なり合うようにされている。このようにすると、胴部の内側と培土の隙間に表示具を差し入れた場合、表示具の先端が外側保持孔に差し込まれるか、又はそれよりも内側に位置する内側保持孔のどちらかに差し込まれることになる。つまり、外側保持孔と内側保持孔とで底部の中心が隙間無く取り囲まれているので、任意の位置に表示具を差し込めば必ずどこかに入るようにされている。これにより表示具の取り付け作業の効率が大幅にアップする。
【0016】
また、本第7発明の園芸ポットによると、上記第1〜第5発明において、複数の前記保持孔が、前記底部の中心から外側に向かう方向に並べて形成されている。これにより、胴部の内側と培土の隙間に表示具を差し入れた際に、外側の保持孔に表示具の先端が差し込まれなかったとしても、その内側に形成された別の保持孔に差し込むことができるようになる。
【0017】
また、本第8発明によると、上記第1〜第7発明において、前記底部は、前記周縁部から中心方向に向かって低くなるように傾斜している。このような構造にすると、保持孔が形成されている底部の周縁部を高く位置させるとともに、保持孔が形成されていない中心部を低くさせて、全体の重心を低くして安定させることができる。また、本第7発明のように複数の保持孔が形成されている場合、一番外側の保持孔に表示具が入らなくても、表示具の先端が傾斜した底部で滑るので、内側の保持孔に挿入しやすくなる。
【0018】
さらに、本第9発明は、上記第1〜第7発明におけるもので、すなわち、
前記胴部と底部のなす角度は鋭角にされているものである。このようにすると、表示具の先端が引っかかりやすくなり、取り付け作業の効率を上げることができる。
【0019】
また、本第10発明は、
植物を培土とともに入れる園芸ポットにおいて、
底部と、
その底部の周縁部から立設して上方に開口する胴部と、
前記園芸ポットの上方から差し入れられる、前記植物に関する情報を表示する表示具を先端から受け入れて保持する保持孔と、
を有し、前記園芸ポットの表面を構成する複数の面のうち一つの面内、又は複数の面内において、複数個の前記保持孔が前記胴部の横断面中心から外側に向かう方向に並べて形成されることを特徴とする。
【0020】
上記本第10発明によると、園芸ポットは底部と、その底部の周縁部から立設して上方に開口する胴部とを有する。これら底部および胴部は軟質合成樹脂などで構成され、真空成形やブロー成形などを利用して一体的に形成されている。そして、表示具を先端から受け入れて保持する保持孔が複数個、形成されている。より詳しくは、園芸ポットは複数の面を有し、このうち一つの面内、又は複数の面内において、複数の保持孔が、胴部の横断面中心から外側に向かう方向に並べられ、その保持孔に表示具が取り付けられる。つまり、所定の面積を有する面内に、複数の保持孔がまとまって配置されているので、表示具の取り付け作業をする者は、大まかな位置に表示具を差し込むだけで、複数の保持孔のうちどれかの保持孔に入れることが可能となる。これにより、表示具の取り付け効率が大幅に改善される。
【0021】
本第11発明は、上記本第10発明をさらに具体的に記述したもので、すなわち、
前記胴部の上縁部に鍔部が設けられ、その鍔部に前記複数の保持孔が前記胴部の横断面中心から外側に向かう方向に並べて形成されていることを特徴とする。
【0022】
また、本第12発明は、本第10発明をさらに具体的にしたもので、すなわち、
前記胴部の上縁部から所定の間隔を空けた位置に、その胴部から内側へ凹む内側凹部が形成され、その内側凹部の上端に前記複数の保持孔が前記胴部の横断面中心から外側に向かう方向に並べて形成されていることを特徴とする。
【0023】
さらに本第13発明は、本第10発明をさらに具体的に記述したもので、すなわち、
前記胴部は、底部に連なる下側胴部と、その下側胴部よりも大きな横断面形状を有して上方へ開口する上側胴部と、それら上側胴部と下側胴部とをつなぐ段形状をなす肩部とを含み、その肩部に前記複数の保持孔が前記肩部の横断面中心から外側に向かう方向に並べて形成されていることを特徴とする。
【0024】
また、本第14発明は、上記本第1発明から本第13発明の園芸ポットを縦横に並べて切離可能に連結した連結園芸ポットに関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら説明する。
まず、図1に本発明の園芸ポット1の一部透視斜視図を示す。園芸ポット1はポリプロピレンやポリエチレン等の軟質合成樹脂からなり、底部2と、その底部2の周縁部から立設して上方に開口する胴部3と、底部2の周縁部から下方に連なる底上げ部4を備える。この底上げ部4によって、底部2は上方に持ち上げられた恰好になっている。そしてこの底部2に、表示具を先端側から受け入れ、その先端を底上げ部4の内側に位置させて保持する、複数個の保持孔5が形成されている。
【0026】
底部2と胴部3に囲まれた空間には苗Pが培土Sとともに入れられ、育てられる。苗Pが育った後に、胴部3と培土Sの間に表示具6を差し込んで、表示具6を保持孔5に取り付ける。表示具6には苗Pの名称や育て方、写真などが表示されており、消費者はその表示具6を見ることで、苗Pについての情報を得ることができる。一方、表示具6の先端には切り欠きCが形成されており、保持孔5に係止している。表示具6を上方へ引き抜いた時には、切り欠きCが保持孔5の両端に引っかかって抜け止めになる。このため、苗Pをトラックなどで輸送した時に振動で表示具が取れることが少なくなる。また、展示販売中にいたずらで引き抜かれることも少なくなる。
【0027】
なお、表示具6の取り付け作業において、保持孔5が形成されていない箇所に表示具6が差し込まれた場合には、その表示具6の先端は底部2に突き当たる。そのため、作業者は手ごたえと、表示具5が上縁から出ている長さで、保持孔5が形成されていない箇所に差し込まれたことを容易に気付くことができる。
【0028】
また、図1に示すように、保持孔5は、底部2の周縁部に沿って、その底部2の中心を取り囲むように複数個、形成されている。これにより、例えば花が咲いた状態の苗を園芸ポット1ごと販売する場合には、消費者に対して花を向け、その花の手前か又は真後ろになる位置に、表示具6を取り付けることができる。つまり、複数の保持孔5が形成されているので、その中から最適な位置を選んで表示具6を取り付けることが可能となる。これによって、販売時には苗Pの見栄えが最もよくなる向きを消費者に見せ、同時に最適な位置に表示具6を取り付けることが可能となり、その結果、消費者の購買意欲を高めることができる。
【0029】
次に、図2Aに園芸ポット1の断面図を示し、図2Bにその要部拡大断面図を示す。このように、底部2の保持孔に差し入れられた表示具6は、胴部3の内面と培土Sによって挟まれるので、少々の振動では倒れない。そのため、表示具6が倒れて苗Pが傷つくようなこともない。
【0030】
なお、図3に示す実施形態のように、底部2の下面に設けた脚部8によって底部2を上方に位置させるようにしてもよい。脚部8は必ずしも底部2の周縁部に設ける必要はなく、保持孔5と重ならない位置であれば底部の下面のどこに設けてもよい。
【0031】
次に、底部2から下方に凹むように凹部Dを設けた実施形態を図4A,Bに示す。このように凹部Dを設けることにより、培土Sの一部が凹部Dに入り、全体の重心を低くして安定させることができる。また、ポット内の体積が凹部の分だけ増えるので、植物の根の生育スペースが増える。その結果、根づまりを防止できる。凹部Dを設けないと、底部2の底上げ位置を高くした場合に、重心が不安定になる場合がある。また、根づまりがおきる場合がある。
【0032】
一方、図4Bに示すように凹部Dの中心には水抜孔7を設けてあるが、これだけでは水はけが十分でない場合がある。そのため、苗Pが根腐れを起こしてしまうことがある。この問題を解決するためには図5A,Bに示すように、凹部Dの底面から側面にわたって水抜き用の切欠孔9を形成するとよい。図5A,Bのように複数の切欠孔9を放射状に設けることで、凹部Dの底面からも側面からも水が抜けるようになり、苗Pの生育にとって、より理想的な園芸ポット内の土壌環境を作ることができる。
【0033】
次に、保持孔5の配列方法が異なる別の実施形態について説明する。図6では、底部2の中心から遠い距離に位置する外側保持孔5aと、その外側保持孔5aよりも内側に位置する内側保持孔5bとが交互に位置するとともに、互いに隣接する外側保持孔5aと内側保持孔5bの端部Eが、底部2の中心から外側に向かう方向においてそれぞれ重なり合うようにされている。つまり、底部2の中心から外側に向かう方向において、互いに隣接する外側保持孔5aと内側保持孔5bとの間に隙間が無いようにされている。このような構造にすると、胴部3の内面と培土S(図示しない)の隙間から表示具6を差し込んだ際に、差し込んだ部位の、胴部3のすぐ近くに形成されている外側保持孔5aまたは内側保持孔5bのいずれかの保持孔に表示具6を入れることができる。ここで仮に互いに隣接する外側保持孔5a及び内側保持孔5bの端部Eが重なっていないとすると、その端部E間の隙間に表示具6が突き当たった場合に、その表示具6がスムーズに入らない場合がある。しかしながら本実施形態では端部Eが重なって隙間ができない構成となっているので、そのような不具合が生じない。
【0034】
なお、図7Aに示すように、内側保持孔5bのさらに内側に別の保持孔を配置して、底部2の中心を取り囲むように同心円状に配置することができる。このようにすると、底部2に保持孔5が略隙間無く形成されているので、底上げになっている底部2のどこに表示具6を差し込んだとしても確実に取り付けることができる。また、複数個、形成された保持孔は水抜孔の機能も兼ねるので、培土の水はけが良くなり、苗Pの根腐れを効果的に防止できる。
【0035】
なお、図15に示すように、凹部Dを設けず、底部の周縁部から水抜孔7まで保持孔5a,5bを配置してもよい。
【0036】
さらに、図7Bに示すように、内側保持孔5bの端部だけを内側に位置させて、中心部5b’を外側へ位置させることにより、内側保持孔5bの中心部5b’と外側保持孔5aとを略同一の同心円位置に配置するようにしてもよい。このようにすると、表示具6を胴部3の内面に沿って差し込んだ場合に、内側保持孔5bと外側保持孔5aの同心円位置が揃っているので、どちらにもスムーズに表示具6を差し込むことができる。つまり、例えば図6または図7Aの実施形態のように内側保持孔5bの中心部5b’を外側へ位置させていない場合は、胴部3の内面に沿って表示具6を差し込んだ場合、表示具6が一旦、底部2に突き当たる。その後、内側に動いて内側保持孔5bに入ることになる。それに対して図7Bでは内側保持孔5bの中心部5b’と外側保持孔5aとが略同一の同心円位置に配置されているので、胴部3の内面に沿って表示具6を差し込みさえすれば、底部2に突き当たることがなく、いずれかの保持孔にスムーズに装着することができる。
【0037】
次に、本発明の別の実施形態を図8に示す。図8Aでは底部2が四角形状とされており、その四角形状の底部2の周縁部に保持孔5が形成されている。また、図8Bでは複数の保持孔5が、底部の中心から外側に向かう方向に並べて形成されている。図8Bのようにすると、1箇所に複数の保持孔5が並べて形成されているので、取り付け作業をする者は、複数個、形成されている保持孔5のうちいずれかに入れればよいので、これにより、表示具の取り付け作業が楽になる。
【0038】
一方、底部2の凹部Dは、図9Aのように形成することができる。図9Aでは底部2から立設して上方に開口する胴部3と、底部2から下方に連なって底部2を自身の下端部より上方に位置させる底上げ部4を備え、胴部3は横断面形状が四角形とされ、底部には下方へ凹む凹部Dが形成され、その凹部Dは底部2を2つに分断して、四角形状の胴部3の対抗する2辺部に沿う部分にのみ残すように形成されている。このようにすると、凹部Dの体積を大きくとることができ、凹部Dの内部に培土Sを多く入れることができるので、重心を安定させやすい。また、ポット内の体積が凹部の分だけ増えるので、植物の根の生育スペースが増える。その結果、根づまりを防止できる。これによると、図示しないが、重心を安定させたまま底部2を更に高い位置に持ち上げた構成にすることが可能となり、その結果、短い表示具6でも保持孔に差し込むことができるようになる。
【0039】
一方、図9Bに示すように、底部2を、周縁部から中心方向に低くなるように傾斜させることもできる。また、図9Bの園芸ポットの断面図を図18に示す。このようにすると、保持孔5が形成されている底部2の周縁部を高く位置させるとともに、保持孔5が形成されていない中心部を低くさせて、全体の重心を低くして安定させることができる。
【0040】
逆に、図19に示すように、胴部3と底部2のなす角度θが鋭角になるようにしてもよい。このようにすると、表示具6の先端が引っかかりやすくなり、その結果、保持孔5が複数個、並べて配置されていなくても、表示具の取り付け作業を効率よく行なうことができる。
【0041】
なお、図9Bでは底部2が四角形であったが、どのような形状でもよい。例えば図7A,Bのように底部2が円形の園芸ポットにおいて、周縁部から中心方向に低くなるように底部2を傾斜させてもよい。
【0042】
次に、図10を用いて本発明の別の実施形態について説明する。図10Aでは胴部3の上縁に鍔部10が形成され、その鍔部10に複数の保持孔5が、胴部3の横断面中心から外側に向かう方向に複数、並べて形成されている。このようにすることにより、表示具6の取り付け作業をする者は、大まかな位置に表示具6を差し込むだけで、一箇所にまとめて形成されている複数個の保持孔6のうち、いずれかの保持孔6に差し込むことができる。つまり従来の園芸ポットでは、それぞれの箇所に1つずつしか保持孔5が形成されていなかったので、作業者はその1つの保持孔5に表示具6を差し込む必要があったのだが、図10Aの園芸ポットによると、複数個の保持孔5が形成されているので、表示具6を差し込みやすくなる。
【0043】
さらに、図10Bに示すように、胴部3の上縁部から所定の間隔を空けた位置に、その胴部3から内側へ凹む内側凹部11が形成され、その内側凹部11の上端11aに複数の保持孔5が、胴部3の横断面中心から外側に向かう方向に並べられた構成にしてもよい。この構成によると、保持孔5が一箇所に複数個、まとめて形成されているので、表示具を取り付けやすく、また、差し込まれた表示具は培土Sと胴部3によって挟まれる恰好となるので、ぐらついたり倒れたりすることがなくなる。
【0044】
また、図11に示すように、底部2の周縁部から連なる下側胴部3aと、その下側胴部3aよりも大きな横断面形状を有して上方に開口する上側胴部3bと、それら下側胴部3aおよび上側胴部3bをつなぐ段形状をなす肩部12とを備え、その肩部12に複数の保持孔5が肩部12の横断面中心から外側へ向かう方向に並べられた構成にしてもよい。このようにすると、保持孔5が一箇所にまとめて形成されているので、表示具6を取り付けやすく、また、保持孔5が形成されていない箇所に表示具6を入れた場合に、表示具6の先端が肩部12に当たるので、作業者はその手ごたえで、保持孔5が形成されていない箇所に表示具6を入れたことを容易に気付くことができる。
【0045】
なお、図17に示すように、上側胴部3bの横断面形状を四角形にし、下側胴部3aの横断面形状を円形にしてもよい。さらに、図示しないが、上側胴部3bおよび下側胴部3aの横断面形状をともに四角形にしてもよい。
【0046】
また、図1の実施形態では、表示具2を取り付ける際には、保持孔5は培土Sに埋もれており、位置が分かりにくい。その問題を解決するため、図12A,Bに示すように、上側胴部5の上縁部UEに目印13を設けるとよい。このようにすると、保持孔5が培土Sに埋もれていても、目印13のある位置に表示具6を差し込めば、表示具6の先端を簡単に保持孔5へ入れることができる。
【0047】
さらに、図13Aに示すように、胴部3の内面から突出する一対のガイド部14を設けてもよい。この一対のガイド部14は、それぞれが保持孔5の両端を示す位置に設けられているので、表示具6の取り付け作業においては、培土Sに埋もれている保持孔5の目印になる。また、ガイド部14は上縁部UEから底部2にわたって設けられている。表示具6を取り付ける際には、図13B,Cに示すように、一対のガイド部14の間に表示具6を入れ、ガイド部14に沿ってスライドさせながら保持孔5へ差し込む。このようにすると、表示具6の先端が横方向にずれることがないので、確実に保持孔5へ差し込むことが可能となる。
【0048】
なお、図16に示すように、胴部3の外面から突出する目印13aを設けてもよい。
【0049】
次に、図8Bの園芸ポット1を縦横に繋げて複数一体化した連結園芸ポット15の平面図を図14に示す。このように、互いに隣接する園芸ポット1は胴部3の上縁部において、切離可能に連結されている。店頭で苗Pを販売する時には、一つ一つの園芸ポット1が切離された状態で、トレイに入れられて展示販売されるのが一般的である。そのため、生産者はトレイに園芸ポット1を入れる必要があるが、上述のように複数の園芸ポット1が連結した連結園芸ポット15を用いると、一つ一つ入れる必要が無く、一度にトレイに入れることができる。つまり、各園芸ポット1を一度に全て切離すことが可能な切離具を用意しておく。そして、その切離具をトレイの上方に配置し、連結園芸ポット15を切離具にセットして連結部分を一度に切離すとともに、そのまま切離された各園芸ポット1をトレイに入れるのである。これにより、複数の園芸ポット1を一度にトレイに入れることが可能となり、作業効率が大幅にアップする。
【0050】
なお、図3〜図9および図14〜16の実施形態において、底上げ部4の代わりに脚部8を用いても同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る園芸ポットの一部透視斜視図である。
【図2】(A)園芸ポットの断面図(B)その要部拡大図。
【図3】脚部を有する園芸ポットの一部透視斜視図。
【図4】(A)凹部Dを備えた園芸ポットの一部透視斜視図(B)その断面図。
【図5】(A)凹部Dに水抜き用の切欠部を設けた実施形態(B)その要部拡大図。
【図6】外側保持孔5aと内側保持孔5bを交互に配置した園芸ポットを上方から見た図。
【図7】A図、B図ともに図6とは別の実施形態である。
【図8】(A)底部が四角形状である園芸ポット(B)保持孔5を底部の中心から外側に向かう方向に複数個、並べた実施形態。
【図9】(A)凹部の別の実施形態(B)底部を中心に向かうほど低くなるように傾斜させた実施形態。
【図10】(A)鍔部に複数個の保持孔を並べて設けた形態(B)内側凹部11の上端部11aに複数個の保持孔を並べて設けた形態。
【図11】肩部12に複数個の保持孔を並べて設けた形態。
【図12】胴部3の上縁部UEに目印13を設けた形態。
【図13】胴部3の内面にガイド部14を設けたもの。
【図14】上記園芸ポットを縦横に並べて切離可能に一体に形成した連結園芸ポット。
【図15】底部2に凹部Dを形成せず、周縁部から水抜孔7まで保持孔5a,5bを設けた実施形態。
【図16】胴部3の外面から突出する目印13aを設けた形態。
【図17】上側胴部3bの横断面形状を四角形とし、下側胴部3aの横断面形状を円形とした形態。
【図18】図9Bの園芸ポットの断面図
【図19】胴部3と底部2のなす角度θを鋭角とした実施形態。
【符号の説明】
【0052】
1 園芸ポット
2 底部
3 胴部
4 底上げ部
5 保持孔
5a 外側保持孔
5b 内側保持孔
6 表示具
8 脚部
9 切欠孔
10 鍔部
11 内側凹部
12 肩部
15 連結園芸ポット
P 苗(植物)
S 培土
D 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を培土とともに入れるための園芸ポットにおいて、
底部と、
その底部の周縁部から立設して上方へ開口する胴部と、
前記底部の周縁部から下方に連なり、その底部を自身の下端部よりも上位に位置させる底上げ部と、
前記胴部の開口から差し入れられる、前記植物に関する情報を表示した表示具を先端側から受け入れ、その先端を前記底上げ部の内側に位置させて保持する、前記底部に形成された保持孔と、
を備えることを特徴とする園芸ポット。
【請求項2】
植物を培土とともに入れるための園芸ポットにおいて、
底部と、
その底部の周縁部から立設して上方へ開口する胴部と、
前記底部の下面に設けられた脚部と、
前記胴部の開口から差し入れられる、前記植物に関する情報を表示した表示具を先端側から受け入れ、その先端を前記底部の下方に位置させて保持する、前記底部に形成された保持孔と、
を備えることを特徴とする園芸ポット。
【請求項3】
前記底部には下方へ凹むように凹部が形成され、前記園芸ポットに前記培土を入れた際にその凹部に前記培土の一部が入ることにより、全体の重心を低くして安定させる請求項1または2記載の園芸ポット。
【請求項4】
前記凹部の底面から側面にわたって、水抜用の切欠孔が形成されている請求項3記載の園芸ポット。
【請求項5】
前記保持孔は前記底部の前記周縁部に、該底部の中心を取り囲むように複数個、形成されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の園芸ポット。
【請求項6】
前記保持孔は前記底部の中心を取り囲むように複数個、形成され、該底部の前記中心から遠い距離に位置する外側保持孔と、その外側保持孔よりも内側に位置する内側保持孔とが交互に位置するとともに、互いに隣接する前記外側保持孔と前記内側保持孔の端部が、前記底部の中心から外側に向かう方向においてそれぞれ重なり合う請求項1ないし4記載のいずれか1項に記載の園芸ポット。
【請求項7】
複数の前記保持孔が、前記底部の中心から外側に向かう方向に並べて形成されている請求項1ないし5のいずれか1項に記載の園芸ポット。
【請求項8】
前記底部は、前記周縁部から中心方向に向かって低くなるように傾斜している請求項1ないし7のいずれか1項に記載の園芸ポット。
【請求項9】
前記胴部と前記底部のなす角度は鋭角にされている請求項1ないし7記載のいずれか1項に記載の園芸ポット。
【請求項10】
植物を培土とともに入れる園芸ポットにおいて、
底部と、
その底部の周縁部から立設して上方に開口する胴部と、
前記園芸ポットの上方から差し入れられる、前記植物に関する情報を表示する表示具を先端から受け入れて保持する保持孔と、
を有し、前記園芸ポットの表面を構成する複数の面のうち一つの面内、又は複数の面内において、複数個の前記保持孔が前記胴部の横断面中心から外側に向かう方向に並べて形成されることを特徴とする園芸ポット。
【請求項11】
前記胴部の上縁部に鍔部が設けられ、その鍔部に前記複数の保持孔が前記胴部の横断面中心から外側に向かう方向に並べて形成されている請求項10記載の園芸ポット。
【請求項12】
前記胴部の上縁部から所定の間隔を空けた位置に、その胴部から内側へ凹む内側凹部が形成され、その内側凹部の上端に前記複数の保持孔が前記胴部の横断面中心から外側に向かう方向に並べて形成されている請求項10記載の園芸ポット。
【請求項13】
前記胴部は、底部に連なる下側胴部と、その下側胴部よりも大きな横断面形状を有して上方へ開口する上側胴部と、それら上側胴部と下側胴部とをつなぐ段形状をなす肩部とを含み、その肩部に前記複数の保持孔が前記肩部の横断面中心から外側に向かう方向に並べて形成されている請求項10記載の園芸ポット。
【請求項14】
請求項1ないし請求項13の園芸ポットを縦横に並べて切離可能に連結したことを特徴とする連結園芸ポット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2006−246707(P2006−246707A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−63451(P2005−63451)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(502403671)有限会社豊幸園 (5)
【Fターム(参考)】