説明

園芸用ポットの製造方法および園芸用ポット

【課題】 土中に埋めておくと自然に分解するとともに、環境を破壊することがないようにした園芸用ポットの製造方法を提供する。
【解決手段】 原材料としての籾殻11を粉状に砕く。粉状の砕かれた籾殻11と、片栗粉を含む粘着剤12と、固体剤13とを攪拌機で混合する。混合された物質を型に入れて、150度から200度の温度で所定時間加熱して成形する。加熱が終了したら、炉から取り出して、自然乾燥させる。片栗粉は、高温で糊状になり、籾殻11を繋ぐ粘着剤となる。籾殻、片栗粉および粘着剤は天然の物質であるので、時間がたてば自然に土中で分解する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精米の際に生じる籾殻を利用した園芸用ポットの製造方法および園芸用ポットに関する。
【背景技術】
【0002】
植物の栽培に用いる園芸用ポットとしては、従来、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の合成樹脂を主成分としたものが用いられている。ところが、合成樹脂を主成分とした園芸用ポットは、土中に埋設しても分解しない。このため、例えば、園芸用ポットで育てた苗を畑に移植する際に、苗を園芸用ポットから抜き出して、土壌に植え替える必要がある。また、合成樹脂の園芸用ポットは、消却すると有毒な燃焼ガスが発生する。このため、従来の合成樹脂の園芸用ポットは、廃棄が難しく、環境を悪化させる危険性がある。
【0003】
そこで、地中で分解する素材を用いて形成された園芸用ポットとして、例えば特許文献1〜特許文献3に示すようなものが提案されている。
【0004】
特許文献1に記載されている育苗ポットは、木材を粉砕して得られる粉末等のセルロース系粉末を利用した育苗ポットであって、育成時には生分解が抑えられるとともにポットを構成する各層間の剥離がなく、ひとたびポットごと土中に埋設された後には速やかに完全分解するようにしたものである。
【0005】
特許文献2に記載されている植物栽培用ポットは、セルロース系素材に炭及びバインダーが配合され、栽培容器形状としたポット本体に、木酢又は竹酢を含有させるようにして、根が張るのを阻害する等の植物の成長に悪影響がなく、地中に放置しても分解可能としたものである。
【0006】
特許文献3に記載されている苗木容器は、おがくず、籾殻、又は木砕繊維から選ばれた木質繊維含有物に肥料成分を含浸させたものとパルプスラリーを混合し、上部が開口した容器状に脱水成型し乾燥するようにして、苗木をそのまま移植できるようにしたものである。
【特許文献1】特開2000−217442号公報
【特許文献2】特開2002−262671号公報
【特許文献3】特開平5−252836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、地中で分解する素材を用いた園芸用ポットは、苗木を育てた園芸用ポットのまま直接土中に埋設することができ、苗木の移植を簡単に行えるという利点がある。また、このような園芸用ポットでは、地中に埋めておけば自然に分解し、廃棄の問題がなくなり、環境破壊のおそれがなくなる。
【0008】
また、このような園芸用ポットでは、原材料とともに、粘着剤についても、土中に分解し、環境を破壊しないものを用いることが望まれる。
【0009】
本発明は、上述の課題を鑑み、土中に埋めておくと自然に分解するとともに、環境破壊を防止するようにした園芸用ポットの製造方法および園芸用ポットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る園芸用ポットの製造方法は、原材料としての籾殻を粉状に砕く工程と、粉状に砕かれた籾殻と、片栗粉を含む粘着剤と、固体剤とを混合する工程と、前記混合行程で混合された物質を型に入れて150度から200度の温度で所定時間加熱して成型する工程と、加熱された成型物を高温炉から取り出して乾燥させる工程とを備えることを特徴とする。
【0011】
好ましくは、更に、玄米糠を原材料として加えることを特徴とする。
【0012】
好ましくは、更に、豚油を混合することを特徴とする。
【0013】
好ましくは、更に、食紅の色素を混合することを特徴とする。
【0014】
好ましくは、片栗粉を含む粘着剤は、片栗粉の他、ホルムアルデヒドと、尿素と、メラミンと、ゼラチンとを配合してなる粘着物質を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、原材料としての籾殻を粉状に砕く工程と、粉状に砕かれた籾殻と、片栗粉を含む粘着剤と、固体剤とを混合する工程と、前記混合行程で混合された物質を型に入れて150度から200度の温度で所定時間加熱して成形する工程と、加熱された成型物を高温炉から取り出して乾燥させる工程とを備えるようにしている。このため、原材料とともに、粘着剤についても、土中に分解し、環境を悪化させることがない。
【0016】
また、本発明によれば、更に、玄米糠を原材料として加えるようにしており、脱穀や精米により生じる籾殻や玄米糠を再利用することができる。
【0017】
また、本発明によれば、更に、豚油を混合するようにしているので、園芸用ポットの表面に光沢を施すことができる。
【0018】
また、本発明によれば、混合工程で、色素を混合するようにしているので、園芸用ポットの表面に色を施すことができる。
【0019】
また、本発明によれば、片栗粉を含む粘着剤は、片栗粉にホルムアルデヒドと、尿素と、メラミンと、ゼラチンとを配合してなる粘着物質を用いるようにしているので、粘着力を増強させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1(A)及び図1(B)は、本発明の第1実施形態の園芸用ポット1を示すものである。図1(A)及び図1(B)に示すように、園芸用ポット1は、上部が開口された円筒形の形状ものや、上部が開口とされた直方体形の形状のものがある。そして、本発明の第1実施形態の園芸用ポット1は、籾殻を粉状に砕き、片栗粉を含む粘着剤と混合し、型に入れて高温で所定時間加熱して成型し、その後乾燥させることによって製造される。
【0021】
このように、本発明の第1実施形態の園芸用ポット1は、原材料として籾殻を用いている。籾殻は天然素材であり、土中に埋めれば、全て分解し、自然に回帰する。現状では、籾殻は、ほとんど廃棄されており、籾殻を用いて園芸用ポットを形成すれば、従来廃棄されていた籾殻を有効な資源として利用できる。
【0022】
また、本発明の第1実施形態の園芸用ポット1では、籾殻を繋ぐ粘着剤として、片栗粉を含むものが用いられている。片栗粉は天然素材であり、土中に埋めれば、全て分解し、自然に回帰する。
【0023】
図2は、本発明の第1実施形態の園芸用ポットを用いた苗の植え替え作業を示すものである。図2(A)に示すように、園芸用ポット1で種蒔きを行い、植物の苗2を育てる。苗2が有る程度まで育ったら、畑3の土壌に植え替える作業を行う。このとき、図2(B)に示すように、園芸用ポット1から苗2を取り出さず、苗2が育った園芸用ポット1をそのまま、直接、畑3の土中に埋設する。
【0024】
園芸用ポット1は、原材料として籾殻を用いており、また、粘着剤として片栗粉を含むものが用いられているため、土中に埋めると、自然に分解して、土に戻る。したがって、園芸用ポット1は自然に分解していき、園芸用ポット1に植えられた苗は、自然に成長していく。
【0025】
また、このような園芸用ポット1では、不要になったときには、そのまま土中に埋めておけば、土中で自然に分解して土に戻り、環境破壊のおそれがない。
【0026】
次に、本発明の第1実施形態の園芸用ポットの製造工程について説明する。図3は、本発明の第1実施形態の園芸用ポットの製造工程を示すものである。
【0027】
図3において、先ず、籾殻11を砕き、粉状にする(工程S1)。籾殻11を砕くのは、残存物を土に返し易くするとともに、園芸用ポットの表面が滑らかな仕上がりになるようにするためである。
【0028】
次に、粉状に砕いた籾殻11と、片栗粉を含む粘着剤12と、固体剤13とを攪拌機で混合する(工程S2)。そして、粉状の籾殻11と、片栗粉を含む粘着剤12と、固体剤13とを混合した物質を、型に入れて、所定時間、高温で加熱する(工程S3)。
【0029】
片栗粉を含む粘着剤12は、高温に加熱されると、糊状となる。このため、粉状の籾殻11の繋となる。
【0030】
高温炉での加熱が終了したら、成型物を炉から取り出し、自然乾燥させる(工程S4)。
【0031】
上述のように、本発明の第1実施形態の園芸用ポット1では、粘着剤12として片栗粉を含むものが用いられている。片栗粉は、水で溶かして、熱を加えると、糊状になる。このことから、片栗粉は、原材料として籾殻を用いた園芸用ポットにおいて、籾殻を繋ぐ粘着剤として用いることができる。片栗粉は天然素材であり、土中に埋めれば、全て分解し、自然に回帰し、環境を破壊するおそれがない。また、片栗粉は安価で、入手し易い。
【0032】
第2実施形態.
図4は、本発明の第2実施形態を示すものである。この実施形態では、工程S1における原材料として、籾殻11とともに、玄米糠21を混ぜるようにしたものである。この実施形態では、精米時において発生する玄米糠も有効利用できる。他の工程については、前述の第1実施形態と同様であり、その説明を省略する。
【0033】
第3実施形態.
図5は、本発明の第3実施形態を示すものである。この実施形態では、工程S2において、粉末化した豚油22を混ぜるようにしたものである。このように、粉末化した豚油22を加えることにより、表面に光沢が出て、商品価値を上げることができる。他の工程については、前述の第1実施形態と同様であり、その説明を省略する。
【0034】
第4実施形態.
図6は、本発明の第4実施形態を示すものである。この実施形態では、工程S2において、食紅等の色素23を混ぜるようにしたものである。このように、色素23を加えることにより、園芸用ポットに色彩を施すことができ、商品価値を上げることができる。他の工程については、前述の第1実施形態と同様であり、その説明を省略する。
【実施例1】
【0035】
次に、本発明の園芸用ポット1の具体的な実施例について説明する。先ず、原材料としての籾殻11は、脱穀した稲から得られる稲籾を用いた。この籾殻を粉状に砕く工程(工程S1)では、籾殻を0.5mmから1mm程度に砕いた。なお、籾殻の代わりに、砂糖黍の廃材を用いても良い。他の原材料としては、草、麦わら、稲わら、麻、麻がら等、植物廃材の全てが利用可能である。
【0036】
片栗粉を含む粘着剤12としては、粘着力を向上させるために、片栗粉の他、ホルムアルデヒドと、尿素と、メラミンと、ゼラチンとからなる粘着物質を用いた。粘着剤の成分は、表1に示すように配合した。固体剤13としては、蓚酸を用いた。園芸用ポットを成型する際、原材料と、粘着剤と、固体剤とは、表1に示すような比率で混合した。
【0037】
【表1】

粉状に砕いた籾殻1と、片栗粉を含む粘着剤12と、固体剤13とを混合する工程(工程S2)では、原材料が25kgで、1時間程度の攪拌を行った。
【0038】
ポットを成型する型としては、図7(A)に示す内側金型51と図7(B)に示す外側金型52とからなるものを用いた。図7(C)は、内側金型51および外側金型52中にそれぞれニクロム線等のヒータ53を設けこのヒータ53によって内側金型51および外側金型52を加熱するようになっている。図7(D)は、内側金型51と外側金型52との間に、粉状の籾殻1と、片栗粉を含む粘着剤12と、固体剤13との混合物54を詰め込んだ状況を説明する図である。図7(D)において、この混合物をヒータ53で加熱された内側金型51と外側金型52で所定時間加熱することで、園芸用ポットが所望の形に成型される(工程S3)。
【0039】
加熱は、150度から200度の範囲の温度で、2分から10分間行った。なお、加熱温度、加熱時間は、成形するポットの大きさや厚みに依存する。
【0040】
高温炉での加熱が終了したら、成型物を炉から取り出し、自然乾燥させる(工程S4)。乾燥時間は、20分から1時間であった。
【0041】
以上のような実施例により、土中で1年程度で完全に分解して土に戻る園芸用ポット1を成型することができた。
【0042】
なお、園芸用ポット1が完全に分解して土に戻るまでの期間は、片栗粉を含む粘着剤12の比率に依る。上述のように、粘着剤12の比率を39.5%としたときには、園芸用ポット1が完全に分解して土に戻るまでの期間は約1年であり、粘着剤12の比率を27%としたときには、園芸用ポット1が完全に分解して土に戻るまでの期間は約3ヶ月である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、苗を育成するための園芸用ポットの他、鑑賞用の鉢植えのための園芸用ポットとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施形態の園芸用ポットを示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態の園芸用ポットにおいて苗を植え替えるときの説明図である。
【図3】本発明の第1実施形態の製造工程の説明に用いる工程図である。
【図4】本発明の第2実施形態の製造工程の説明に用いる工程図である。
【図5】本発明の第3実施形態の製造工程の説明に用いる工程図である。
【図6】本発明の第4実施形態の製造工程の説明に用いる工程図である。
【図7】園芸用ポットを製造するための型の説明に用いる斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
1 園芸用ポット
2 苗
3 畑
11 籾殻
12 片栗粉を含む粘着剤
13 固体剤
21 玄米糠
22 豚油
23 色素
51 内側金型
52 外側金型
53 ヒータ
54 混合物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原材料としての籾殻を粉状に砕く工程と、
前記粉状に砕かれた籾殻と、片栗粉を含む粘着剤と、固体剤とを混合する工程と、
前記混合行程で混合された物質を型に入れて150度から200度の温度で所定時間加熱して成型する工程と、
前記加熱された成型物を前記高温炉から取り出して乾燥させる工程と
を備えたことを特徴とする園芸用ポットの製造方法。
【請求項2】
更に、玄米糠を原材料として加えることを特徴とする請求項1に記載の園芸用ポットの製造方法。
【請求項3】
更に、豚油を混合することを特徴とする請求項1に記載の園芸用ポットの製造方法。
【請求項4】
更に、食紅の色素を混合することを特徴とする請求項1に記載の園芸用ポットの製造方法。
【請求項5】
前記片栗粉を含む粘着剤は、前記片栗粉に、ホルムアルデヒドと、尿素と、メラミンと、ゼラチンとを配合してなる粘着物質を用いることを特徴とする請求項1に記載の園芸用ポットの製造方法。
【請求項6】
前記請求項1ないし6に記載の園芸用ポットの製造方法を用いて製造された園芸用ポット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−82478(P2007−82478A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−276225(P2005−276225)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【特許番号】特許第3786286号(P3786286)
【特許公報発行日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(505305569)株式会社花の企画社 (1)
【Fターム(参考)】