説明

土壌改質濾材、この土壌改質濾材の製造方法及びこの土壌改質濾材を用いた土壌改質方法

【課題】家畜類から排泄される糞尿類を利用して土壌改質濾材を形成するとともに、この濾材を形成するための工程と利用方法を提供すること。
【解決手段】土壌改質濾材は、家畜類の糞尿等を燃焼した下灰を基に焼成して形成した基材部に自然鉱石粉を主原料とする釉薬を塗布し焼成してこの釉薬部の振動スペクトルが土壌中に含有する水の吸収スペクトルに相応する物性を有して改質する家畜糞尿粉塊濾材と、 自然鉱石の石粉を基に焼成して形成した基材部に前記同様の釉薬を塗布し焼成してこの釉薬部の振動スペクトルが接する水の吸収スペクトルに相応する物性を有して改質する自然鉱石粉塊濾材とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛、豚、鶏などの家畜類から排泄される糞尿類を利用して土壌改質濾材を形成するとともに、この濾材を形成するための工程と利用方法をシステム化し、形成された濾材資源を活用して糞尿の悪臭除去、糞尿中に含有している有害物質の除去、土壌改質システムによる無害な工作物の生育を促進するための一貫した土壌改質濾材、この土壌改質濾材の製造方法及びこの土壌改質濾材を用いた土壌改質方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家畜類から排泄される糞尿類は、強酸性と強アルカリ性資材を利用して、機械的固液分離後の糞尿液からさらに尿と糞とに分離するとともに、尿から有機物を除去し、加えて分離された上澄み液及び糞について、燃料エネルギーや有機栽培用肥料等に利用する方法が提案されている(特許文献1)。
【0003】
この特許文献1の糞尿処理システムは、家畜の糞尿混合物から有機物質を除去する方法として家畜の糞と尿とが混合して畜舎等から排出された糞尿混合物を機械的分離手段にて固形糞と糞尿液に分離し、この分離された糞尿液に、鉱石を酸性水溶液にて溶解して得られた酸性資材を混合して糞尿液を酸性にし、次にアルカリ性資材を添加して上記糞尿酸性液をアルカリ性にすることにより、糞尿液に溶解して存在していた有機および無機成分を沈殿分離する糞尿処理システムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−251400号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、次の通りである。
家畜から排泄される糞尿中には、銅、亜鉛、カドミウム等の人体に有害な重金属類が含有されていることは、すでに公知の事実であり、大きな社会的問題となっているが、前記特許文献1に記載の糞尿処理システムでは、これらの重金属を無害化することができず、糞尿類の再資源化を困難にしている。重金属の含有の相関関係は、家畜類の成長促進などを目的とした汚染米等を含む飼料に銅、亜鉛、カドミウム等が添加されていることが要因であると考えられているが、悪臭公害とともに有効な手立てが講じられていないのが現状である。
また、家畜類の排泄糞尿物については、メタンガス燃料としての利用効果はあるが、牛などの家畜のげっぷとして放出されるメタンガスについては、地球温暖化の要因になっていることが最近の専門家の研究で明らかになり、世界的に問題視されている。
それによると、牛などの家畜類が牧草を飼料として体内に取り入れた場合、体内で炭酸ガスと水素が結合してメタンガスになり、口からげっぷとして牛1頭当たり約324.39CHppm(1日の量が400リットル・ドラム缶2本分)が放出され、温室効果ガスとして地球環境の温暖化を加速させていることが明らかになっている。全世界の畜産生産量の推計(全米で約1億頭、日本で約1700万頭・農水省調べ)から試算した場合、地球温暖化への影響を示す寄与率が約20パーセントと、2酸化炭素に次いで高く、その約17パーセントは家畜類のげっぷに含まれ、大気中のメタンガス総量の4分の1を占めていることが確認されていて、緊急の課題となっている。
【0006】
本発明の目的は、以下のとおりである。
(1)家畜の糞尿の循環利用
家畜類が排泄する糞尿類を処理して土壌改質資源として循環利用すること。
(2)糞尿類の無害化と無臭化
家畜に与える飲料用飼料水を改質して排泄する糞尿の無害化と無臭化をはかり、悪臭を外部に放出しないようにすること。また、家畜類から出るげっぷを抑制すること。
(3)無害のコンポスト化
バクテリア、マイクローブ等を増殖させて無害で高品質の有機コンポストを目指し、農産物の安全性を向上させること。
(4)土壌の改質
農薬や無機質化学肥料の多用、COや酸性雨降雨等で機能性を喪失した休耕地等の土壌を蘇生させ、安全な農産物として生育可能な工作土壌に改質する。
(5)水質の改善
農薬や廃棄物等で汚染された農業用水路等の水質を改善し、水稲栽培等の灌漑水を浄化して生育を促進する。
(6)鮮度維持
収穫農産物の鮮度を長時間維持可能な貯蔵方法を考察して解決する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による土壌改質濾材は、家畜類から排泄される糞尿や敷き藁等を燃焼した下灰に、用土に窯業用鉱物粘土を混ぜたものを混練してゲル状の家畜糞尿塊に形成し、この家畜糞尿塊を乾燥した後に溶融焼成して基材部としての陶器核を形成し、この基材部の表面に自然鉱石粉を主原料として混練熟成して製造した釉薬部となる釉薬を塗布して乾燥し、再度溶融焼成して前記釉薬部の振動スペクトルが土壌中に含有する水の吸収スペクトルに相応する物性を有し、土壌中の水の分子を改質する磁器セラミックス状に形成した家畜糞尿粉塊濾材と、
自然鉱石を焼成して水分を除去した後に微粉砕した石粉に、窯業原料用鉱物燃料を混練してゲル状の固形塊に形成し、このゲル状の固形塊を乾燥後に溶融焼成して基材部としての陶器核を形成し、この基材部の表面に自然鉱石粉を主原料として混練熟成して製造した釉薬部となる釉薬を塗布して乾燥し、再度溶融焼成して前記釉薬部の振動スペクトルがこの釉薬部に接する水の吸収スペクトルに相応する物性を有し、接する水の分子を改質する磁器セラミックス状に形成した自然鉱石粉塊濾材とからなることを特徴とする。
【0008】
本発明による土壌改質方法は、
通水筒の中に自然鉱石粉塊濾材を詰めてこの中に水道水を通すことにより得られた水を家畜に与える工程と、
この水を飲んだ家畜の糞尿等をビニールハウス等で乾燥させる工程と、
乾燥した糞尿等を焼却炉等で燃焼させて下灰を採取し、粉砕機でパウダー状の粉体に形成する工程と、
このパウダーに、用土を振動ふるいにかけたものを混合し、この混合物に、窯業用粘土と水を加えて混ぜ合わせ、団子状の固形物を形成する工程と、
この固形物をビニールハウス等で乾燥させる工程と、
乾燥後の固形物を焼成して陶器状の固形物を形成させる工程と、
形成した陶器状固形物を予め製造した釉薬液を付け、乾燥後に再び焼成して家畜糞尿粉塊濾材を形成する工程と、
形成した家畜糞尿粉塊濾材を固形化形状の状態で通水籠等に収納し、農業用水路や河川等の汚水浄化資源として利用する工程と、
形成した家畜糞尿粉塊濾材を顆粒状に形成された濾材を、そのままの状態で土壌に鋤き込むか、堆肥や肥料に混ぜ込むか、飼料と混ぜ合わせるかして使用する工程と、
自然鉱石を粉砕機で粉砕してパウダーにする工程と、
この自然鉱石のパウダーに、窯業原料用鉱物粘土を混合し、水を加えて混練機で練り上げる工程と、
混合原料を粉塊物に形成する工程と、
この粉塊物を溶融焼成して陶器状の基材部を形成する工程と、
この基材部の外側面に釉薬部を被覆し、焼成して自然鉱石粉塊濾材を形成する工程と、
この自然鉱石粉塊濾材を飲料水、清掃水、土壌散水、悪臭除去水、農作物栽培水の水質改良用として利用する工程と
からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上述のように構成したので、以下の効果を有する。
(1)家畜類が排泄する糞尿類を処理して土壌改質資源として循環利用することができる。
(2)家畜に与える飲料用飼料水を改質して排泄する糞尿の無害化と無臭化をはかり、悪臭を外部に放出しないようにすることができる。
(3)バクテリア、マイクローブ等を増殖させて無害で高品質の有機堆肥を目指し、農産物の安全性を向上させることができるができる。
(4)農薬や無機質化学肥料の多用、COや酸性雨降雨等で機能性を喪失した休耕地等の土壌を蘇生させ、安全な農産物として生育可能な工作土壌に改質することができる。
(5)農薬や廃棄物等で汚染された農業用水路等の水質を改善し、水稲栽培等の灌漑水を浄化して生育を促進することができる。
(6)収穫農産物の鮮度を長時間維持可能な貯蔵方法を考察して解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による土壌改質濾材の製造方法及び土壌改質方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明による自然鉱石粉塊濾材10の断面図である。
【図3】本発明による家畜糞尿粉塊濾材13の断面図である。
【図4】(a)は、通水筒16の正面図、(b)は、通水筒16の平面図である。
【図5】本発明による土壌改質濾材の製造方法及び土壌改質方法を示す詳細なフローチャートである。
【図6】図5におけるフローチャートをイラストにより説明した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による土壌改質濾材は、家畜類から排泄される糞尿や敷き藁等を燃焼した下灰に、用土に窯業用鉱物粘土を混ぜたものを混練してゲル状の家畜糞尿塊に形成し、この家畜糞尿塊を乾燥した後に溶融焼成して基材部としての陶器核を形成し、この基材部の表面に自然鉱石粉を主原料として混練熟成して製造した釉薬部となる釉薬を塗布して乾燥し、再度溶融焼成して前記釉薬部の振動スペクトルが土壌中に含有する水の吸収スペクトルに相応する物性を有し、土壌中の水の分子を改質する磁器セラミックス状に形成した家畜糞尿粉塊濾材からなる。
【0012】
本発明による土壌改質濾材は、自然鉱石を焼成して水分を除去した後に微粉砕した石粉に、窯業原料用鉱物燃料を混練してゲル状の固形塊に形成し、このゲル状の固形塊を乾燥後に溶融焼成して基材部としての陶器核を形成し、この基材部の表面に自然鉱石粉を主原料として混練熟成して製造した釉薬部となる釉薬を塗布して乾燥し、再度溶融焼成して前記釉薬部の振動スペクトルがこの釉薬部に接する水の吸収スペクトルに相応する物性を有し、接する水の分子を改質する磁器セラミックス状に形成した自然鉱石粉塊濾材からなる。
【0013】
また、本発明による土壌改質濾材は、家畜糞尿粉塊濾材と自然鉱石粉塊濾材の両方を包含することがより好ましい。
【実施例1】
【0014】
本発明による土壌改質濾材及び土壌改質方法の実施例1を図1ないし図6に基づき説明する。
図1は、本発明による土壌改質濾材及び土壌改質方法を体系的に示したもので、その概要は、次の通りである。
(a)後述する自然鉱石粉塊濾材10(図2)のための自然鉱石粉塊(基材部11)を高温で燃焼して形成する工程。
(b)後述する家畜糞尿粉塊濾材13(図3)のための家畜糞尿粉塊(基材部14)を高温で燃焼して形成する工程。
(c)自然鉱石粉塊(基材部11)に、釉薬(釉薬部12)を塗布し、高温で焼成して自然鉱石粉塊濾材10を形成する工程と、家畜糞尿粉塊(基材部14)に釉薬(釉薬部15)を塗布し、高温で焼成して家畜糞尿粉塊濾材13を形成する工程。
(d)自然鉱石粉塊濾材10を通水筒16の内部に詰め、水道水、地下水等を通水して家畜用飲料水、畜舎内清掃水、土壌散水として利用する工程。
(e)前記(d)工程で得られた水を、糞尿・畜舎内悪臭除去、貯蔵農産物鮮度維持のために利用する工程。
(f)前記(d)工程で得られた水を、水稲栽培、水耕草木・果樹栽培の改良用水として利用する工程。
(g)家畜糞尿粉塊濾材13を粉砕して粉砕顆粒形成、堆肥混合熟成(糞尿中に含有する重金属物質除去)の工程。
(h)前記(g)工程の粉砕顆粒形成、堆肥混合熟成により土壌改質、耕作物の生育を維持する工程。
【0015】
本発明に使用される土壌改質濾材には、前述の通り、次の2種類がある。
1つ目は、自然鉱石を利用して家畜飲料用に用いるための自然鉱石粉塊の高温燃焼形成による自然鉱石粉塊濾材10(図2)と、
2つ目は、家畜類から排泄される糞尿類を利用して土壌改善等に用いることを目的とした家畜糞尿粉塊の高温燃焼形成による家畜糞尿粉塊濾材13(図3)である。
これらの自然鉱石粉塊の高温燃焼形成による自然鉱石粉塊濾材10と家畜糞尿粉塊の高温燃焼形成による家畜糞尿粉塊濾材13とは、双方共に釉薬を塗布して濾材に形成させるための釉薬塗布高温焼成濾材形成の工程を行う。
【0016】
前記1つ目の自然鉱石粉塊で形成した濾材10は、家畜用飲料水、畜舎内清掃水、土壌散水等として使用される。また、畜舎内の糞尿悪臭除去、貯蔵農作物鮮度維持等の使用や水稲栽培、水耕栽培、草木、果樹栽培等の水質改良用として利用される。この濾材10で濾過された水は、家畜だけに限られず、人間が引用しても無害であり、安全であることが裏付けられている。
【0017】
前記2つ目の家畜糞尿粉塊で形成した濾材13は、粉砕機等で顆粒状(約1〜2mmの粗目状)に形成して、堆肥、肥料等に混合して使用される。使用目的は、土壌改質や耕作物の生育促進と維持を図るためのものである。
【0018】
図2は、前記1つ目の自然鉱石粉塊で形成した濾材10を示しており、図3は、家畜糞尿粉塊濾材13を示しており、詳しい製造工程は、後述する。
図4は、通水筒16を示し、この通水筒16の中に、多数個の自然鉱石粉塊濾材10を詰め、一端部に水道のホースを連結してバルブ17を開閉することにより水道水の塩素等を濾過して前述の通り、家畜用飲料水、畜舎内清掃水、土壌散水等として使用し、また、畜舎内の糞尿悪臭除去、貯蔵農作物鮮度維持等の使用や水稲栽培、水耕栽培、草木、果樹栽培等の水質改良用として利用される。さらに、人間の飲料水としても供される。
図5は、図1に示した本発明による土壌改質濾材及び土壌改質方法に使用される前記自然鉱石粉塊濾材10と家畜糞尿粉塊濾材13の製造工程と利用時の流れを更に詳細に示したフローチャートであり、図5のイラストを参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図4及び図5において、まず、家畜糞尿粉塊濾材13の製造工程と利用時の流れを説明する。
(a)飼料サイロから飼料を取り出し、家畜類に与える。
(b)家畜類に飼料を与えるとき、後述する(u)工程の水道水等を、(v)工程の図2に示した水道水還元材である自然鉱石粉塊濾材10を詰めた通水筒16に通し、その水を家畜に飲ませる。この自然鉱石粉塊濾材10を通した水を家畜に飲ませると、家畜類の体内から細胞水を活性化させようとするバランス作用により健康を維持しながら水素と硝酸塩が素早く結合してアミノ酸化されて体内で減少し、炭酸ガスは、取り残されて糞尿と共に排泄され、体内発酵しないためにげっぷとして一切外部に放出しないことが目視からも確認されている。従って、本発明による自然鉱石粉塊濾材10は、土壌の改質、水の改質、悪臭防止、汚染水の浄化等の他に、家畜類のげっぷ放出による地球温暖化減少の役割をも担っている。家畜糞尿粉塊濾材13についても前記自然鉱石粉塊濾材10と同様の作用・効果を有する。
(c)畜舎内の流水路に糞尿が集められる。
(d)スクリーンで糞尿、敷き藁などの固形物と尿などの液体とを分離する。
(e)この水を飲んだ家畜の糞尿、敷き藁などの固形物だけをスクリーンで取り出す。基材部14とするため、家畜糞尿類を採取したものをビニールハウス等で乾燥させる。
(f)乾燥した糞尿等を焼却炉等で燃焼させて下灰を採取し、ジョークラッシャー、ポールミル、ポットミル、フレットミル、ロールクラッシャー等の粉砕機でパウダー状の粉体に形成する。
【0020】
(g)スクリーンで尿などの液体を分離して原水槽に貯留する。
(h−1)下灰の微粉砕したパウダーに、乾燥した畑土等の用土を振動ふるいにかけたものを5対1の割合で混合し、原水槽の液体や水を加えて混練機で練り合わせる。
(k−1)練り合わせた物をビニールハウス等で乾燥させ、成型機で粒状に造粒するなどして直径数mmの団子状の固形物を形成する。
(l−1)乾燥後の固形物を焼成窯で700〜800℃、約12時間焼成させて陶器状の素焼きの固形物を形成する。
(m−1)素焼きの固形物をサイロに移す。
【0021】
(n)釉薬部12に用いられる鉱物について詳しく説明すると、各種の自然鉱石は、その成分に起因して固有の分子スペクトルを持つことはよく知られている。鉱石固有の分子振動スペクトルと水の分子振動スペクトルが等しいか、整数倍の関係にあれば、その振動は共鳴する。このため、山から採取した自然鉱石(薬石)を400〜850℃程度で焼成して脱水し、脱水後に再結晶化したものを200〜450メッシュ程度に粉砕したものが使用される。通常は、焼成後粉砕するが、粉砕後に焼成してもよい。また、釉薬部12に使用する窯業用の釉薬としては、例えば、SrO、TiO、FeO、Fe等がある。配合は、鉱物成分90〜95重量%、釉薬成分5〜10重量%とするが、場合によっては、鉱物成分80〜95重量%、釉薬成分5〜20重量%としてもよい。
(o−1)形成した陶器状固形物を予め製造した釉薬液槽にどぶ付けし、この基材部14の外側面に釉薬部15を被覆し、乾燥させる。
(p−1)乾燥後において再び焼成窯で1200〜1300℃、約16時間焼成させると、図3に示す家畜糞尿粉塊濾材13が形成される。家畜糞尿は、飼料との相関関係で、銅や亜鉛等の重金属物質を含有するものであるが、形成工程において、素焼きの固形物を形成する700〜800℃、約12時間焼成させて陶器状とする工程と、釉薬部15を形成する1200〜1300℃、約16時間の2回焼成を行うことによって焼成糞尿類が溶融してガラス化し、基材部14を含めてガラス(セラミックス)状分子構造体として形成されるため、粉砕破壊しても基材部14の成分は、全く溶融されないことが確認されている。
【0022】
(q−1)形成した家畜糞尿粉塊濾材13を濾材サイロに移す。
(r)形成した家畜糞尿粉塊濾材13は、粉砕機を使用して1〜2mmの顆粒状に微粉砕して袋詰めし、持ち運び易くする。
(t−1)顆粒状に粉砕された又は粉砕されない濾材13は、そのままの状態で土壌に鋤き込んで使用する方法、堆肥や肥料に混ぜて使用する方法、飼料と混ぜ合わせて使用する方法などにより利用される。効用は、従来、家畜類の排泄糞尿物は、メタンガス等の燃料エネルギーとしての利用や堆肥等によるコンポスト化の利用は、広く知られているが、糞尿類を濾材として形成して有価資源化し、土壌改質や河川等の汚水浄化までを循環型による一貫したシステムで対処している例は、これまでに見当たらず、本発明により次世代の畜産と農業経営の課題に新しい道を切り開く効果が期待できる。
【0023】
次に、自然鉱石粉塊濾材10の製造工程と利用時の流れを説明する。
(i)図2における自然鉱石粉塊濾材10の核となる基材部11の原料の自然鉱石が鉱石・砂サイロに集められる。
(j)自然鉱石を粉砕機で粉砕してパウダーにする。
(h−2)この自然鉱石のパウダーに窯業原料用鉱物粘土を約5:1の割合で混合し、水を加えて混練機で練り上げる。窯業原料用鉱物粘土には、窯業用石英粉、アルミナ粉等が用いられる。
(k−2)混合原料を粒状に造粒するなど小さな塊の形状に形成する。
(l−2)この粉塊物を700〜800℃で約12時間溶融焼成して陶器状の基材部11を形成し、釉薬液体の塗布を容易にしている。
【0024】
(m−2)素焼きの固形物をサイロに移す。
(n)釉薬部12に用いられる鉱物については、前述のとおりである。
(o−2)形成した陶器状固形物を予め製造した釉薬液槽にどぶ付けし、この基材部11の外側面に釉薬部12を被覆し、乾燥させる。
(p−2)乾燥後において再び焼成窯で1200〜1300℃、約16時間焼成させると、図2に示す自然鉱石粉塊濾材10が形成される。前述の通り、釉薬として使用する窯業用釉薬には、水の分子振動スペクトルの中で赤外線の波長領域において最大の分子振動スペクトルを発する伸縮振動又は偏角振動を持つ鉱物の粉体を含んでいる。
【0025】
(q−2)形成した自然鉱石粉塊濾材10を濾材サイロに移す。
(s)自然鉱石粉塊濾材10が貯蔵される。
(t−2)自然鉱石粉塊濾材10は、前述のように、貯蔵農作物鮮度維持等の使用や水稲栽培、水耕栽培、草木、果樹栽培等の水質改良用として利用される。また、飼育畜舎内等の悪臭除去に適用した例を説明する。臭気の発生は、以下の悪臭物質が特に発生した場合に不快感を及ぼすことになる。
塩基性系統では、アンモニア、リメチルアミン等であり、酸性系統では、硫化水素、メチルメルカプタンであり、中性系統では、2酸化ジメチル、アセトアルデヒドである。アンモニアNHは、酸化還元電位の低下によって通水筒16内の水が電子によって解離しやすくなり、この水に溶解して脱臭される。硫化水素HSは、還元水によって溶解が促進されて遊離硫黄が沈殿するため臭わなくなる。
形成した自然鉱石粉塊濾材10は、固形化形状の状態でメッシュ等の袋に収納し、反転したコンクリートU字溝等に取り付けて農業用水路や河川等の流れの中に浸漬しておくことにより、汚水浄化資源として利用する。
(u)水道水、地下水、河川の水等を家畜類の飲料水等の用途に用いる。
【0026】
(v)多数個の自然鉱石粉塊濾材10を、図4に示す通水筒16の内部に詰め、水道水、地下水、河川の水等を通水して飲料水として利用する。水が自然鉱石粉塊濾材10に接して通過する際に、釉薬部12から赤外線波長領域において最大の分子振動スペクトルを発し、周囲の水の酸化還元電位を減少させる。つまり、親水性の岩石の結晶において励起する内部振動の振動エネルギーを励起移動、特に、共鳴伝達により水分子及びオキソニウムに伝達して電子を励起し、その後に起こる励起状態から基底状態への遷移及び分解により派生する水和電子によって、還元力の強い水質の飲料水に改質することができる。
水道水中には、トリハロメタンの前駆物質をなす天然の有機物が微量に存在し、この前駆物質が塩素と反応してトリハロメタンを生成する。この前駆物質の代表的なものは、フミン酸、フルボ酸等の天然の腐食物質であり、水中の色度成分と呼ばれるものである。フミン酸粒子は、蛋白質の周りを水の層が3重に取り囲んだものであるが、最外層の水から順次に還元性を強めて行くことによって蛋白質表面の水が薄層となり、微生物との接触が促進され、微生物により分解される。
したがって、フミン酸を含んだ水道水を流水状態で自然鉱石粉塊濾材10に接触させると、水自体の還元力の高まりによってフミン酸を取り囲む水分子の層の薄層化を図ることができ、結果として、トリハロメタンの前駆物質の除去を促進することができる。
【0027】
また、水道水に含まれる一般細菌に対しては、その成分に必要なミネラル分、有機質等の栄養分を還元力により低減すると共に、水の酸化還元電位の低減により気体中の酸素の溶解度を高め、酸素分子が還元されて水分子を生成するまでに発生する中間体の毒性により、殺菌作用を及ぼすことができる。
つまり、中間体のスーパーオキシド(O)、ベルオキシド(O2−)及びヒドロキシラジカル(OH)は、毒性があり、特に、OHやOの酸化能力は強く、生体内では、Oは、SODによって過酸化水素に還元され、さらに過酸化水素は、カタラーゼ(過酸化水素を水と酸素に分解するための触媒の働きをするヘム蛋白質酵素)によって水と酸素に分解される。しかし、通性嫌気性細菌や絶体嫌気性細菌の中の大半は、カタラーゼを持たないので、中間体の毒性を無毒化することができない。したがって、一般細菌に対しては、水の酸化電位の低減によって気体中の酸素の溶解度を高め、酸素分子が還元されて水分子を生成するまでに発生する中間体の毒性により、殺菌作用を及ぼすことができる。
家畜類の糞尿悪臭除去は、本発明による自然鉱石粉塊濾材10を通水筒16内に収納して通水することにより、水道水等が通水筒16内の自然鉱石粉塊濾材10に接触したときに前記した作用を発揮するため、家畜類がその水を飲むことにより家畜類の体内から細胞水、細胞外水を活性化させようとするバランス作用の働きで、排泄される糞尿の腐敗の始まりを遅らせるため、悪臭の発生を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0028】
10…自然鉱石粉塊濾材、11…基材部、12…釉薬部、13…家畜糞尿粉塊濾材、14…基材部、15…釉薬部、16…通水筒、17…バルブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜類から排泄される糞尿や敷き藁等を燃焼した下灰に、用土に窯業用鉱物粘土を混ぜたものを混練してゲル状の家畜糞尿塊に形成し、この家畜糞尿塊を乾燥した後に溶融焼成して基材部としての陶器核を形成し、この基材部の表面に自然鉱石粉を主原料として混練熟成して製造した釉薬部となる釉薬を塗布して乾燥し、再度溶融焼成して前記釉薬部の振動スペクトルが土壌中に含有する水の吸収スペクトルに相応する物性を有し、土壌中の水の分子を改質する磁器セラミックス状に形成した家畜糞尿粉塊濾材からなることを特徴とする土壌改質濾材。
【請求項2】
家畜類から排泄される糞尿や敷き藁等を燃焼した下灰に、用土に窯業用鉱物粘土を混ぜたものを混練してゲル状の家畜糞尿塊に形成する工程と、この家畜糞尿塊を乾燥した後に溶融焼成して基材部としての陶器核を形成する工程と、この基材部の表面に自然鉱石粉を主原料として混練熟成して製造した釉薬部となる釉薬を塗布して乾燥し、再度溶融焼成して前記釉薬部の振動スペクトルが土壌中に含有する水の吸収スペクトルに相応する物性を有し、土壌中の水の分子を改質する磁器セラミックス状の家畜糞尿粉塊濾材を形成する工程とからなることを特徴とする土壌改質濾材の製造方法。
【請求項3】
自然鉱石を焼成して水分を除去した後に微粉砕した石粉に、窯業原料用鉱物燃料を混練してゲル状の固形塊に形成し、このゲル状の固形塊を乾燥後に溶融焼成して基材部としての陶器核を形成し、この基材部の表面に自然鉱石粉を主原料として混練熟成して製造した釉薬部となる釉薬を塗布して乾燥し、再度溶融焼成して前記釉薬部の振動スペクトルがこの釉薬部に接する水の吸収スペクトルに相応する物性を有し、接する水の分子を改質する磁器セラミックス状に形成した自然鉱石粉塊濾材からなることを特徴とする土壌改質濾材。
【請求項4】
自然鉱石を焼成して水分を除去した後に微粉砕した石粉に、窯業原料用鉱物燃料を混練してゲル状の固形塊に形成する工程と、このゲル状の固形塊を乾燥した後に溶融焼成して基材部としての陶器核を形成する工程と、この基材部の表面に自然鉱石粉を主原料として混練熟成して製造した釉薬部となる釉薬を塗布して乾燥し、再度溶融焼成して前記釉薬部の振動スペクトルが接する水の吸収スペクトルに相応する物性を有し、接する水の分子を改質する磁器セラミックス状の自然鉱石粉塊濾材を形成する工程とからなることを特徴とする土壌改質濾材の製造方法。
【請求項5】
家畜類から排泄される糞尿や敷き藁等を燃焼した下灰に、用土に窯業用鉱物粘土を混ぜたものを混練してゲル状の家畜糞尿塊に形成し、この家畜糞尿塊を乾燥した後に溶融焼成して基材部としての陶器核を形成し、この基材部の表面に自然鉱石粉を主原料として混練熟成して製造した釉薬部となる釉薬を塗布して乾燥し、再度溶融焼成して前記釉薬部の振動スペクトルが土壌中に含有する水の吸収スペクトルに相応する物性を有し、土壌中の水の分子を改質する磁器セラミックス状に形成した家畜糞尿粉塊濾材と、
自然鉱石を焼成して水分を除去した後に微粉砕した石粉に、窯業原料用鉱物燃料を混練してゲル状の固形塊に形成し、このゲル状の固形塊を乾燥後に溶融焼成して基材部としての陶器核を形成し、この基材部の表面に自然鉱石粉を主原料として混練熟成して製造した釉薬部となる釉薬を塗布して乾燥し、再度溶融焼成して前記釉薬部の振動スペクトルがこの釉薬部に接する水の吸収スペクトルに相応する物性を有し、接する水の分子を改質する磁器セラミックス状に形成した自然鉱石粉塊濾材とからなることを特徴とする土壌改質濾材。
【請求項6】
家畜類から排泄される糞尿や敷き藁等を燃焼した下灰に、用土に窯業用鉱物粘土を混ぜたものを混練してゲル状の家畜糞尿塊に形成する工程と、この家畜糞尿塊を乾燥した後に溶融焼成して基材部としての陶器核を形成する工程と、この基材部の表面に自然鉱石粉を主原料として混練熟成して製造した釉薬部となる釉薬を塗布して乾燥し、再度溶融焼成して前記釉薬部の振動スペクトルが土壌中に含有する水の吸収スペクトルに相応する物性を有し、土壌中の水の分子を改質する磁器セラミックス状の家畜糞尿粉塊濾材を形成する工程と、
自然鉱石を焼成して水分を除去した後に微粉砕した石粉に、窯業原料用鉱物燃料を混練してゲル状の固形塊に形成する工程と、このゲル状の固形塊を乾燥した後に溶融焼成して基材部としての陶器核を形成する工程と、この基材部の表面に自然鉱石粉を主原料として混練熟成して製造した釉薬部となる釉薬を塗布して乾燥し、再度溶融焼成して前記釉薬部の振動スペクトルが接する水の吸収スペクトルに相応する物性を有し、接する水の分子を改質する磁器セラミックス状の自然鉱石粉塊濾材を形成する工程とからなることを特徴とする土壌改質濾材の製造方法。
【請求項7】
家畜糞尿粉塊濾材を顆粒状に形成したものと、家畜類糞尿、敷き藁等を腐食させた堆肥を混合熟成したものであって、前記顆粒状に砕かれた濾材は、その振動スペクトルが前記堆肥中の含有する水の吸収スペクトルに相応する物性を有し、前記堆肥の腐敗熟成を高め、すき込み散布後の土壌中の微小なマイクローブやバクテリアを増殖させて土壌を還元させ、良質な耕作物の生育を促進させることを特徴とする請求項1記載の土壌改質濾材を用いた土壌改質方法。
【請求項8】
自然鉱石粉塊濾材を通水筒に詰めて通水することにより、前記自然鉱石粉塊濾材は、その振動スペクトルが接触する水の吸収スペクトルに相応する物性を有して接触する水の分子を改質還元し、飲料水、清掃水、土壌散水、悪臭除去水、農作物栽培水の水質改良用として利用される機能を持たせたことを特徴とする請求項2記載の土壌改質濾材を用いた土壌改質方法。
【請求項9】
通水筒の中に自然鉱石粉塊濾材を詰めてこの中に水道水を通すことにより得られた水を家畜に与える工程と、
この水を飲んだ家畜の糞尿等をビニールハウス等で乾燥させる工程と、
乾燥した糞尿等を焼却炉等で燃焼させて下灰を採取し、粉砕機でパウダー状の粉体に形成する工程と、
このパウダーに、用土を振動ふるいにかけたものを混合し、この混合物に、窯業用粘土と水を加えて混ぜ合わせ、団子状の固形物を形成する工程と、
この固形物をビニールハウス等で乾燥させる工程と、
乾燥後の固形物を焼成して陶器状の固形物を形成させる工程と、
形成した陶器状固形物を予め製造した釉薬液を付け、乾燥後に再び焼成して家畜糞尿粉塊濾材を形成する工程と、
形成した家畜糞尿粉塊濾材を固形化形状の状態で通水籠等に収納し、農業用水路や河川等の汚水浄化資源として利用する工程と、
形成した家畜糞尿粉塊濾材を顆粒状に形成された濾材を、そのままの状態で土壌に鋤き込むか、堆肥や肥料に混ぜ込むか、飼料と混ぜ合わせるかして使用する工程と、
自然鉱石を粉砕機で粉砕してパウダーにする工程と、
この自然鉱石のパウダーに、窯業原料用鉱物粘土を混合し、水を加えて混練機で練り上げる工程と、
混合原料を粉塊物に形成する工程と、
この粉塊物を溶融焼成して陶器状の基材部を形成する工程と、
この基材部の外側面に釉薬部を被覆し、焼成して自然鉱石粉塊濾材を形成する工程と、
この自然鉱石粉塊濾材を飲料水、清掃水、土壌散水、悪臭除去水、農作物栽培水の水質改良用として利用する工程と
からなることを特徴とする土壌改質方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−275343(P2010−275343A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126299(P2009−126299)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(395015559)株式会社関東管財 (5)
【Fターム(参考)】