説明

土壌用センサ及びこれを用いた土壌監視装置

【課題】土壌中のEC値の分布を手軽にかつ正確に、リアルタイムで計測することができる土壌用センサ及びこれを用いた土壌監視装置を提供する。
【解決手段】センサ側面に複数個の電極11,12,13と給水口14を備えた土壌用センサ10とこれに接続する計測制御装置20とから構成される土壌監視装置30であり、計測制御装置20にはEC値計測ユニット23と水分含有率計測ユニット24とを設け、2つの電極間の土壌の水分含有率が、55%を超える時にはEC値を計測せず、50〜55%の時にEC値を計測して出力し、55%未満の時には給水口14から水分を補給して2つの電極間の水分含有率を50〜55%にしてEC値を計測するようにした土壌監視装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は土壌用センサ及びこれを用いた土壌監視装置に関し、特に土壌用ECセンサ及びEC(電気伝導度)センサを用いた土壌監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農業分野においては、図1(a)に示すように、農作物1の生育を助長させるために、土壌を細長く直線状に盛り上げた畝2が作られることが多い。畝2には元々農作物1を生育させるための肥料(元肥)が全体に与えられているが、農作物1の生育を更に助長するために、畝2と畝2の間の通路3に追肥肥料4を与えることが行われる。この追肥肥料4は、図1(b)に示すように、土壌中の水分によってゆっくりと土壌5の中で拡散する。そして、畝2の下に拡散した追肥肥料4によって農作物1の生育が助長される。図1(b)では、点線Dが土壌5の中の追肥肥料4の拡散を示し、破線Bが追肥肥料4の拡散の程度が同程度の部分の分布を示している。
【0003】
ところが、この追肥肥料4の土壌5への拡散の程度は地上からは分からない。このため、追肥肥料4を与え過ぎると、追肥肥料4が過剰に畝2の下に拡散することになり、畝2に植えられた農作物1にとっては肥料過度となり、かえって農作物1の生育が阻害されることがある。そこで、追肥肥料4を与えた後の時間経過と、土壌5の中の追肥肥料4の拡散状態をリアルタイムで知りたいという要求が農業従事者から上がっている。
【0004】
ここで、土壌の中の肥料の含有量を示す指標として使用される土壌のEC値(電気伝導度)について説明する。土壌のEC値は土壌中の塩類濃度計測に用いられるものである。特に、土壌中の硝酸態窒素量が多いと、塩類濃度が上昇してEC値が高くなるという関係がある。このことから、EC値は土壌中の窒素肥料成分含有量の目安として用いられるのである。
【0005】
一方、土壌中のEC値を計測する点については、以下の課題がある。即ち、EC値は、図2に示す土壌の水分含有率‐EC値の特性図から分かるように、土壌中の水分含有量により計測値が変化する。このため、土壌のEC値を計測する場合は通常、土壌のサンプルを採取し、それに一定量の比の水を加えたけん濁液を作り、土壌の水分含有量を一定の値にした状態で評価を行っていた。
【0006】
しかし、土壌のサンプルを採取して土壌のEC値を計測する方法では、例えば、図1に示すような追肥肥料4を与えた後の時間経過と、追肥肥料4の拡散状況をリアルタイムに知りたいという要求には答えられない。これは、土壌のEC値を計測するのにサンプル手法をとったのでは、サンプル採取の手間と、さらにサンプル採取によって土壌状態を乱してしまうため、同一箇所の継続的なEC値の計測は難しいからである。
【0007】
そこで、土壌のEC値をリアルタイムに計測するためには、土壌のEC値を計測可能なセンサ(ECセンサ)を土壌の中に埋めた状態での計測を行わなければならない。土壌のEC値を直接計測する場合には、EC値が土壌の水分含有量により変化するので、土壌の種類毎に水分含有率とEC値との関係を予め調べておく。そして、土壌中で水分含有率とEC値の両方の値をセンサで計測した結果から、EC値を算出するという考え方がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3831249号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、図2に示した土壌の水分含有率‐EC値の特性図から分かるように、土壌中の水分含有率が小さいと、EC値をセンサで計測できない場合が生じる。このような場合にも計測を行うには、土壌に水分を補給することが必要である。土壌への水分補給の方法としては、土壌表面から水をまく方法が一般的である。しかし、センサ付近の土壌表面から水をまく方法では、センサ周りの肥料成分の拡散が他の部分よりも進み、肥料成分が土壌中の深部まで浸透してしまい、計測箇所と非計測箇所の間でEC値に差ができるため望ましくない。
【0010】
また、肥料成分の作物の吸収状態や、雨などによる肥料成分の土壌深層部への浸透状態の把握のため、土壌中の深さ方向のEC値の分布、及び水平方向のEC値の分布を知りたいとう要望もある。そのためには、土壌の深さ方向に複数個のEC値計測用のセンサを配置したり、異なる場所にてEC値を計測することが必要であり、通常は複数個のセンサが必要であった。しかし、複数個のセンサを別々の位置に設置するのは手間がかかるという課題があった。
【0011】
以上の問題の解決のため、この出願は、土壌中のEC値の水平方向、及び垂直方向の分布を手軽にかつ正確にリアルタイムで計測することができる土壌用センサ及びこれを用いた土壌監視装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本出願の土壌用センサは、センサ本体の外面に露出する複数の電極と、外面に開口した給水口と、給水口に水を供給する給水手段とを備えていることを特徴としている。
【0013】
本出願の土壌監視装置は、前述のように構成された土壌用センサと、計測制御装置とから構成される土壌監視装置であって、計測制御装置には、複数の電極に接続された水分含有率計測ユニットと、水分含有率計測ユニットによる複数の電極の周囲の土壌の水分含有率の計測結果に基づいて、給水手段による給水を制御するコントローラが設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
この出願の土壌用センサは、EC値の計測箇所の水分含有率を計測する手段と、EC値の計測箇所近傍に水分を補給する機構を有し、EC値の計測箇所の水分含有率を計測しながら一定条件量の水分含有率となったところでEC値を計測可能である。ここで水分補給は、EC値計測箇所の近傍のみであるので、計測点の肥料成分の他の場所への流出もほとんどなく、多数回のEC値の計測を行っても、EC値の計測箇所と非計測箇所の肥料成分の状態差が小さく、さらに水分含有率について一定条件での計測が行える。更に、1つのセンサに検出電極を3個以上並べて土壌センサを構成し、この土壌センサを土壌中に設置し、これに計測制御装置を接続してEC値を計測するので、土壌の複数箇所のEC値の計測が同時に出来る。従って、本出願の土壌用センサ及びこれを用いた土壌監視装置によれば、土壌の状態変化が容易に把握でき、土壌用センサの設置方法に応じて土壌中の深さ方向や水平方向のEC値の分布計測を行える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は畑に作られた畝と通路、及び通路に与えられた追肥肥料を示す斜視図、(b)は(a)の要部の断面を示す断面図である。
【図2】一定条件下の土壌の水分含有量と電気伝導度の関係を示す線図である。
【図3】(a)はこの出願の土壌センサの一実施例の側面図、(b)は(a)に示した土壌センサの内部構成の一例を示す断面図、(c)は(a)に示した土壌センサの電極周辺に開口する給水口の別の例を示す部分側面図、(d)はこの出願の土壌センサを所定距離離して連結した実施例を示す側面図である。
【図4】(a)は図3(b)に示した土壌センサと計測制御装置とを備える土壌監視装置の構成を示す構成図、(b)は(a)の計測制御装置に表示器が設けられた実施例を示す正面図である。
【図5】図4(a)に示した土壌監視装置の土壌監視制御動作の一実施例の手順を示す流れ図である。
【図6】(a)は図5(a)の土壌監視装置の土壌センサが土壌に垂直に埋め込まれて使用されている実施例を示す説明図、(b)は図5(a)の土壌監視装置の土壌センサが土壌に水平に埋め込まれて使用されている実施例を示す説明図である。
【図7】給水機構を土壌センサの外部に設けた壌監視装置の実施例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を用いて本出願の実施の形態を、具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図3(a)は、この出願の一実施例の土壌センサ10を側面から見たものである。土壌センサ10は長尺であり、その側面には、この実施例では第1、第2、第3の3つの電極11,12,13と、第1と第2の2つの給水口14A,14Bがある。土壌センサ10の先端部は土壌中に差し込み易いように先細になっており、土壌センサ10の後端部には給水機構15が設けられている。3つの電極11,12,13は所定間隔を隔てて設けられており、2つの給水口14A,14Bは、3つの電極11,12,13の間の部分に開口している。
【0018】
図3(b)は図3(a)に示した土壌センサ10の内部構成の一例を示すものである。3つの電極11,12,13は、内部配線33によって土壌センサ10の頭部に設けられた接続端子34にそれぞれ接続している。なお、内部配線33をケーブルで形成し、接続端子34を設けずにそのまま土壌センサ10の頭部から引き出すことも可能である。
【0019】
この実施例の土壌センサ10には給水機構15が設けられている。給水機構15は、この実施例では貯水タンク16と加圧ポンプ17とから構成されている。加圧ポンプ17の吐出口は土壌センサ10の内部に配設された給水管19の基部に接続している。給水管19の先端側は2つの分岐管19A、19Bに分岐され、2つの分岐管19A、19Bがそれぞれ第1の給水口19Aと第2の給水口19Bに接続している。また、第1の給水口19Aと第2の給水口19Bにはそれぞれ、第1の電磁開閉弁18Aと第2の電磁開閉弁18Bが設けられている。貯水タンク16の容量は500ml程度で良い。なお、給水機構15は、図7に示すように、土壌センサ10の外部に設けることも可能である。図7の構成では、貯水タンク16への給水が容易である。
【0020】
加圧ポンプ17に接続する駆動端子35と、電磁開閉弁18A,18Bに接続する駆動端子36A,36Bは、土壌センサ10の頭部に設けられている。よって、駆動端子35にオン信号が印加された状態で、駆動端子36Aにオン信号が印加されれば、給水口14Aから土壌に水分が供給され、駆動端子36Bにオン信号が印加されれば、給水口14Bから土壌に水分が供給される。なお、この実施例では、2つの分岐管19A、19Bにはそれぞれ1つずつの第1の給水口19Aと第2の給水口19Bが接続しているが、2つの分岐管19A、19Bにそれぞれ複数の給水口を設けることもできる。図3(c)は、1つの電極(例えば電極12)の周囲に複数の給水口14を開口させた実施例である。
【0021】
また、土壌センサ10は単独で構成することもできるが、図3(d)に示すように、2つ(或いは3つ以上)の土壌センサ10を所定距離だけ離して連結バー31で連結し、各土壌センサ10の接続端子や駆動端子をまとめてケーブル32で外部に引き出すことも可能である。この形態では、ケーブルの先端部をコネクタにしておけば、土壌センサ10の設置、及び外部の計測装置への接続が容易になる。
【0022】
図4(a)は、図3(b)に示した土壌センサ10を土壌5に垂直に埋め込み、これをケーブル37で計測制御装置20に接続して構成される土壌監視装置30の構成を示すものである。計測制御装置20には、電極切替器21、計測項目切替器22、EC値計測ユニット23、水分含有率計測ユニット24、マイクロコントローラ25、バルブ制御器26、及びポンプ運転制御器27がある。マイクロコントローラ25は、電極切替器21、計測項目切替器22、EC値計測ユニット23、水分含有率計測ユニット24、バルブ制御器26、及びポンプ運転制御器27の動作を制御する。
【0023】
ここで、土壌センサ10と計測制御装置20との接続について説明する。土壌センサ10の頭部に設けられた3つの端子からなる接続端子34(図3参照)は、ケーブル37によって電極切替器21の3つの入力端子に接続する。電極切替器21は、マイクロコントローラ25の指令により、この3つの入力端子の内の2つの端子を選択して2つの出力端子に接続する。電極切替器21の2つの出力端子は、計測制御装置20の内部で計測項目切替器22の入力端子に接続される。計測項目切替器22には、EC値計測ユニット23に接続する2つの出力端子と、水分含有率計測ユニット24に接続する2つの出力端子とがある。計測項目切替器22の2つの入力端子は、マイクロコントローラ25の指令により、EC値計測ユニット23に接続する2つの出力端子と、水分含有率計測ユニット24に接続する2つの出力端子の何れかに接続される。
【0024】
また、土壌センサ10の頭部に設けられた加圧ポンプの駆動端子35(図3参照)は、ケーブル37によって計測制御装置20内にあるポンプ運転制御器27に接続される。更に、土壌センサ10の頭部に設けられた第1と第2の電磁開閉弁18A,18Bの駆動端子36A,36B(図3参照)は、ケーブル37によって計測制御装置20内にあるバルブ制御器26に接続される。
【0025】
計測制御装置20には、図4(b)に示すように、EC値計測ユニット23で計測されたEC値、或いは水分含有率計測ユニット24で計測された土壌の水分含有率を表示することができる表示器28が設けられることもある。以上のように構成された土壌監視装置30では、土壌センサ10の第1の電極11と第2の電極12の間にある土壌の水分含有率とEC値、或いは、土壌センサ10の第2の電極12と第3の電極13の間にある土壌の水分含有率とEC値の計測が可能である。
【0026】
ここで、図4のように構成された土壌監視装置30における土壌監視制御動作、即ち、EC値の検出動作の一実施例を、図5の流れ図を用いて説明する。なお、この実施例では、土壌中の水分含有率が50%以上、55%以下の条件でEC値を計測しているが、EC値を計測する土壌中の水分含有率の範囲は、土壌の種類によって変更しても良く、この値に限定されるものではない。
【0027】
ステップ501ではEC値計測時期か否かを判定する。EC値の計測は、数ヶ月に渡る等、長いスパンで行われるので、EC値の計測時期は、少なくて1日1回、多くて1時間毎であり、通常は1日に数回の計測が行われることが多い。ステップ501の判定において、EC値計測時期でないと判定された場合(NO)はこのルーチンを終了し、EC値計測時期であると判定された場合(YES)はステップ502に進む。
【0028】
ステップ502では土壌の水分含有率Xを計測する。このとき、図4に示した土壌監視装置30では、水分含有率計測ユニット24が計測項目切替器22の入力端子に接続されている。そして、土壌センサ10の第1と第2の電極11、12の間の土壌の水分含有率の計測時には、第1と第2の電極11、12の接続端子が、計測項目切替器22の入力端子に接続されている。また、土壌センサ10の第2と第3の電極12、13の間の土壌の水分含有率の計測時には、第2と第3の電極12、13の接続端子が、計測項目切替器22の入力端子に接続されている。
【0029】
続くステップ503では、水分含有率Xが55%以下であるかどうかを判定する。水分含有率Xが55%より大きい場合(NO)は、水分過多としてステップ510に進み、EC値の計測をスキップし(行わず)、計測不能のエラー信号を出してこのルーチンを終了する。一方、水分含有率Xが55%以下の場合(YES)はステップ504に進んで水分含有率Xが50%以上であるかどうかを判定する。
【0030】
ステップ504の判定がYESの場合は、土壌の水分含有率Xが50%以上かつ55%以下であるので、ステップ508に進んでEC値を計測する。このときは、図4で説明したEC値計測ユニット23の入力端子が計測項目切替器22の入力端子に接続される。計測項目切替器22の入力端子は電極切替器21に接続しているので、この実施例では電極切替器21の切り替えにより、土壌センサ10の電極11−電極12間、或いは電極12−電極13間のEC値を計測可能である。そして、この後にステップ509に進み、EC値の計測結果を出力する、或いは計測結果を表示器に表示してこのルーチンを終了する。
【0031】
一方、ステップ504の判定がNOの場合は、土壌の水分含有率Xが50%に届かず、土壌の水分含有率Xが不足している。この場合はステップ505に進み、加圧ポンプを稼動させ、続くステップ506において電磁開閉弁を10秒程度開く。ここで、第1の電極11と第2の電極12との間のEC値を計測する場合は、電磁開閉弁19A(図4参照)が10秒程度開かれる。電磁開閉弁19Aの開弁により、第1の電極11と第2の電極12との間の土壌に水分が補給される。
【0032】
続くステップ507では浸透待ち時間が経過したかどうかを判定する。浸透待ち時間は給水口14Aから供給した水分が土壌中に浸透したかどうかを判定するものであり、例えばこの時間は20秒程度である。ステップ507で浸透待ち時間が経過していないと判定された場合(NO)は、浸透待ち時間が経過するまで待つ。そして、浸透待ち時間が経過した場合(YES)はステップ502に戻り、ステップ502からステップ504の動作を繰り返し、この間に土壌の水分含有率Xが50%以上かつ55%以下になったら、前述のステップ508,509の処理を実行してこのルーチンを終了する。ステップ505からステップ507の処理は、土壌の水分含有率Xが50%以上かつ55%以下になるまで繰り返す。
【0033】
図4に示した実施例の構造では、土壌センサ10に3つの電極11,12,13があり、電極11−電極12間、或いは電極12−電極13間の2箇所のEC値の計測しかできないが、電極の数をn個(n≧4)にすれば、n−1箇所のEC値の計測、若しくは任意の2箇所の電極間のEC値の計測を行うことができる。土壌センサ10に設ける電極の数は特に限定されるものではない。
【0034】
以上のように本出願では、土壌センサ自体から、計測箇所近傍のみに必要最小限の水分補給を行うことができるので、計測による土壌への水分過多の影響を抑えながら一定条件のEC値計測が可能となる。更に、1つの土壌センサで土壌の複数箇所のEC値の計測ができる。例えば、図6(a)に示すように、土壌センサ10を土壌5の表面に対して垂直方向に埋設すれば、EC値の縦方向の分布が分かり、図6(b)に示すように、土壌センサ10を土壌5の表面に対して水平方向に埋設すれば、EC値の横方向の分布が分かる。この結果、土壌中の深さ方向や水平方向のEC分布の計測も可能となる。なお、土壌センサは、土壌に斜めに差し込んでも良いものである。
【0035】
本出願のように、計測箇所近傍に必要最小限の水分補給を行うことにより、計測による土壌への影響を抑えながら一定条件のEC値の計測がほぼリアルタイムで可能となり、同地点でのEC値変化の観測が可能となる。さらに、複数箇所のEC値が1つの土壌センサで計測でき、土壌中の深さ方向や水平方向のEC値分布の計測も容易となる。
【0036】
EC値は残存窒素肥料成分の目安となる。EC値の状態を知ることにより、残存窒素肥料成分が多い場合には、次回の追肥時期に追肥を控えることによって過剰肥料による肥料焼け等の生育障害を防止できる。また、規定量より減らした追肥を行うことにより肥料コストの削減ができる。このように、EC値の分布を知ることにより、作物が肥料を吸収する様子がわかる。そして、栽培終了後の残存肥料の把握により、次作物の元肥作りの際にその残存量を考慮し、過剰な肥料成分の混合を防ぐことにより、作物の効率的な生育・生産が可能となる。
【0037】
以上、本出願を特にその好ましい実施の形態を参照して詳細に説明した。本出願の容易な理解のために、本出願の具体的な形態を以下に付記する。
【0038】
(付記1) センサ本体の長手方向側面に、所定間隔を隔てて設けられた複数個の電極と、
前記複数個の電極の周辺に少なくとも1つ開口し、土壌に水分を供給する給水口と、
前記本体内に配置された給水機構と、
前記本体内に配置され、一端が分岐されて前記各水口に接続する分岐管を構成し、他端が前記給水機構に接続する給水管と、
前記分岐管にそれぞれ設けられた電磁開閉弁と、
前記本体上部には、前記各電極への接続端子、前記給水機構の駆動端子、及び前記電磁開閉弁の駆動端子が設けられていることを特徴とする土壌用センサ。
(付記2) 前記給水機構は、貯水タンクと、該貯水タンク中の水を前記給水管に送り出す加圧ポンプとから構成され、前記給水機構の駆動端子は、前記加圧ポンプに接続することを特徴とする付記1に記載の土壌用センサ。
(付記3) 前記前記給水口は前記電極の周囲に複数個開口することを特徴とする付記1又は2に記載の土壌用センサ。
(付記4) 前記給水機構は、センサ本体の外部に設けられていることを特徴とする付記1から3の何れかに記載の土壌用センサ。
(付記5) 付記1から4の何れかに記載の土壌用センサと、計測制御装置とから構成される土壌監視装置であって、前記計測制御装置には、
前記各電極への接続端子に、切替機構を介して切り替え可能に接続されたEC値計測ユニットと水分含有率計測ユニットと、
前記給水機構の駆動端子に接続するポンプ運転制御器と、
前記電磁開閉弁の駆動端子に接続するバルブ制御器と、
前記EC値計測ユニット、前記水分含有率計測ユニット、前記ポンプ運転制御器、及び前記バルブ制御器にそれぞれ接続するコントローラとが設けられ、
前記土壌用センサからの出力信号に基づいて前記コントローラが土壌中のEC値を計測することを特徴とする土壌監視装置。
【0039】
(付記6) 前記切替機構は、前記コントローラからの指令により、前記複数の電極の中の2つを、前記EC値計測ユニットと水分含有率計測ユニットの何れかに接続することを特徴とする付記5に記載の土壌監視装置。
(付記7) 前記コントローラは、前記切替機構を介して接続された2つの電極間の水分含有率を、前記水分含有率計測ユニットによって計測し、予め決めておいた水分含有量未満の時には、前記ポンプ運転制御器及び前記バルブ制御器を駆動して、前記2つの電極間の土壌に、予め決めておいた水分含有量になるまで水分補給を行うことを特徴とする付記6に記載の土壌監視装置。
(付記8) 前記コントローラは、前記切替機構を介して接続された2つの電極間の水分含有率が、予め決めておいた水分含有率条件である時にはEC値を計測して出力することを特徴とする付記6又は7に記載の土壌監視装置。
(付記9) 前記計測制御装置に表示器が設けられており、前記コントローラは、前記EC値をこの表示器に表示することを特徴とする付記8に記載の土壌監視装置。
(付記10) 1つの前記計測制御装置に対して、複数個の前記土壌用センサを接続し、前記複数個の土壌用センサは、前記EC値の計測領域に分散設置することにより、広範囲の領域のEC値分布を計測できるようにしたことを特徴とする付記5から9に何れかに記載の土壌監視装置。
【0040】
(付記11) 複数個の前記土壌用センサの上端部が連結バーによって接続されており、各土壌用センサの接続端子及び駆動端子に接続するケーブルは、前記連結バーの端部から取り出されるようになっていることを特徴とする付記1に記載の土壌用センサ。
(付記12) 前記土壌用センサの、全長は30〜60cm、直径は5〜10cmであることを特徴とする付記1から4及び付記11に記載の土壌用センサ。
(付記13) 前記土壌用センサは、地面に対して垂直方向の土壌中に設置、或いは地面に対して水平方向の土壌中に設置されることを特徴とする付記1から4及び付記11に記載の土壌用センサ。
(付記14) 前記ポンプ運転制御器及び前記バルブ制御器を駆動して、前記2つの電極間の土壌に水分を補給した場合には、水分補給後に所定の浸透待ち時間が経過した後に、前記2つの電極間の土壌の水分含有量を計測することを特徴とする付記7に記載の土壌監視装置。
(付記15) 前記コントローラは、前記水分含有率計測ユニットによる土壌の水分含有率の検出値が、所定値を超える場合にはEC値の計測をスキップすることを特徴とする付記6に記載の土壌監視装置。
【符号の説明】
【0041】
1 農作物
2 畝
3 通路
4 追肥肥料
5 土壌
10 土壌センサ
11,12,13 電極
14A,14B 給水口
15 給水機構
16 貯水タンク
17 加圧ポンプ
18A,18B 電磁開閉弁
19 給水管
19A,19B 分岐管
20 計測制御装置
21 電極切替器
22 計測項目切替器
23 EC値計測ユニット
24 水分含有率計測ユニット
25 マイクロコントローラ
26 バルブ制御器
27 ポンプ運転制御器
28 表示器
30 土壌監視装置
32 ケーブル
33 内部配線
34 接続端子
35,36 駆動端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ本体の外面に露出する複数の電極と、
該外面に開口した給水口と、
該給水口に水を供給する給水手段とを備えていることを特徴とする土壌用センサ。
【請求項2】
前記給水手段は、貯水タンク及び該貯水タンク中の水を前記給水口に送り出す加圧ポンプを前記センサ本体内に配置して構成されることを特徴とする請求項1に記載の土壌用センサ。
【請求項3】
前記給水口は前記複数の電極の間の位置に開口することを特徴とする請求項1又は2に記載の土壌用センサ。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載の土壌用センサと、計測制御装置とから構成される土壌監視装置であって、前記計測制御装置には、
前記複数の電極に接続された水分含有率計測ユニットと、該水分含有率計測ユニットによる前記複数の電極の周囲の土壌の水分含有率の計測結果に基づいて、前記給水手段による給水を制御するコントローラが設けられていることを特徴とする土壌監視装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記水分含有率計測ユニットによって計測した水分含有率が、予め決めておいた水分含有量未満の時に、前記給水手段を駆動することを特徴とする請求項4に記載の土壌監視装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記複数の電極周囲の土壌の水分含有率が、予め決めておいた水分含有率条件である時に、前記電極に接続された電気伝導度計測ユニットに前記電極の周辺の土壌の電気伝導度を計測させることを特徴とする請求項4又は5に記載の土壌監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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