説明

土木構造体用構築部材および土木構造体

【課題】 製造が容易であると共に、安定した土木構造体を効率よく構築し得る、土木構造体用構築部材を提供すること。
【解決手段】 少なくとも1つの表面にセメント硬化物層2が形成された短尺な発泡樹脂ブロック3と、セメント硬化物層を有しない任意の長さの発泡樹脂ブロック4とを、連結部材7を介して結合した構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木構造体用構築部材に関するものであり、さらに詳しくは、発泡樹脂ブロックの少なくとも1つの表面にセメント硬化物層を形成してなる土木構造体用構築部材、及び該土木構造体用構築部材を用いて構築した土木構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、発泡樹脂ブロックの少なくとも1つの表面にセメント硬化物層を形成してなる土木構造体用構築部材を使用し、セメント硬化物層が外表面に位置するように該土木構造体用構築部材を複数積層載置し、外部からの熱に対する耐力、および砂利等の異物に対する強度を高めた、鉄道のプラットホームや道路等の土木構造体は知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2607192号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような表面にセメント硬化物層を備えた発泡樹脂ブロックから成る土木構造体用構築部材を製造するにあたっては、発泡樹脂ブロックのセメント硬化物層の形成部位を型枠で囲み、該型枠内にセメントモルタルを塗工し、養生、硬化させて製造したり、或いはセメント硬化物層を別に作製し、それを接着剤を用いて発泡樹脂ブロックの表面に貼着する等の作業により成されているが、これらの作業は、発泡樹脂ブロックの大きさが小さい(長さが短い)ほど容易となり、またその作業、養生のためのスペースも少なくてすむ。
【0005】
一方、土木構造体を構築するに際しては、構築部材の発泡樹脂ブロックの大きさが小さい(長さが短い)と、積層載置する作業回数が増大し、効率的に土木構造体を構築できないと共に、重心がセメント硬化物層側に大きく片寄った構築部材となり、施工時に該構築部材がセメント硬化物層側に転倒しやすく、施工の妨げになると共に、構築した構造体の内部にその偏心に起因する歪が残存し、構造体が全体として安定性に欠けることが生じる。このことから、土木構造体を構築するに際しては、上記製造時とは逆に、発泡樹脂ブロックの大きさ(長さ)は、ある程度大きい(長い)構築部材とすることが要求される。
【0006】
本発明は、上述した相反する発泡樹脂ブロックの大きさに関する要求を満足し、製造が容易であると共に、安定した土木構造体を効率よく構築し得る、土木構造体用構築部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するため、請求項1の土木構造体用構築部材は、少なくとも1つの表面にセメント硬化物層が形成された短尺な発泡樹脂ブロックと、セメント硬化物層を有しない任意の長さの発泡樹脂ブロックとを、連結部材を介して結合した構造としたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2の土木構造体用構築部材は、上記請求項1の発明において、上記短尺な発泡樹脂ブロックの長さを、200〜500mmとしたことを特徴とする。
【0009】
さらに、請求項3の土木構造体用構築部材は、上記請求項1または2の発明において、上記発泡樹脂ブロック同士の合わせ面の対向する位置に各々アリ溝を形成し、該アリ溝の両者にアリ結合する連結部材によって上記両発泡樹脂ブロックを結合したことを特徴とする。
【0010】
さらに、請求項4の土木構造体用構築部材は、上記請求項3の発明において、上記アリ溝を発泡樹脂ブロックの全高に亘って形成し、上記連結部材を上下方向で二分割した構成としたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項5の土木構造体用構築部材は、上記請求項3または4の発明において、上記連結部材の先端を後端より細くしたことを特徴とする。
【0012】
さらに、請求項6の土木構造体用構築部材は、上記請求項1乃至5のいずれかの発明において、上記連結部材を発泡樹脂で形成すると共に、その密度を上記発泡樹脂ブロックの密度よりも高くしたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項7の土木構造体は、上記請求項1乃至6のいずれかに記載の土木構造体用構築部材を、該構築部材のセメント硬化物層が外表面となるように複数積層載置して構築したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上記した請求項1の本発明に係る土木構造体用構築部材によれば、表面にセメント硬化物層を備えた発泡樹脂ブロックの製造に際しては、短尺な発泡樹脂ブロックの状態で製造できるため、その製造作業性は良好なものとなり、またその作業、養生のためのスペースも少なくてすむ。一方、土木構造体を構築するに際しては、上記表面にセメント硬化物層を備えた発泡樹脂ブロックに連結部材によって他の発泡樹脂ブロックを結合した長尺な構築部材としているため、安定した土木構造体を効率よく構築できる。
【0015】
また、上記した請求項2の本発明に係る土木構造体用構築部材によれば、表面にセメント硬化物層が形成された短尺な発泡樹脂ブロックの長さを、具体的に200〜500mmとしたため、短すぎず長すぎず、製造作業時および連結作業時のハンドリング性が極めて良好なものとなる。
【0016】
また、上記した請求項3の本発明に係る土木構造体用構築部材によれば、発泡樹脂ブロック同士の結合を、容易かつ確実に行うことができる。なお、本発明において言うアリ溝は、開口部の幅に対して内部の幅が広い溝の総称として使用しており、その断面形状は、台形、円形、T字形等、種々のものを採用し得る。
【0017】
また、上記した請求項4の本発明に係る土木構造体用構築部材によれば、アリ溝の発泡樹脂ブロックへの形成が容易であると共に、連結部材のアリ溝への挿入が、上方と下方とから容易に行え、連結作業性が良好なものとなる。
【0018】
さらに、上記した請求項5の本発明に係る土木構造体用構築部材によれば、連結部材のアリ溝への挿入が、さらに容易なものとなる。
【0019】
また、上記した請求項6の本発明に係る土木構造体用構築部材によれば、連結部材の成形が容易であると共に、軽量であり、また密度が発泡樹脂ブロックより高いため、連結部材の強度が高く、アリ溝への挿入が容易となると共に、信頼性の高い発泡樹脂ブロックの結合を実現できる。
【0020】
また、上記した請求項7の本発明に係る土木構造体によれば、重心がセメント硬化物層側に片寄っていない本発明に係る土木構造体用構築部材を複数積層載置して構築されているため、安定した土木構造体となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、上記した本発明に係る土木構造体用構築部材、および該土木構造体用構築部材を用いて構築した土木構造体の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
なお、図1は、本発明に係る土木構造体用構築部材の一実施の形態を示した斜視図、図2は、図1の土木構造体用構築部材の結合前の状態を示した斜視図、図3は、図1の土木構造体用構築部材の結合時の状態を示した部分拡大斜視図である。また、図4は、図1の土木構造体用構築部材を用いて構築する本発明に係る土木構造体の構築途中の状態を示した斜視図である。
【0022】
本発明に係る土木構造体用構築部材1は、図1に示したように、少なくとも1つの表面にセメント硬化物層2が形成された短尺な発泡樹脂ブロック3と、セメント硬化物層を有しない任意の長さの発泡樹脂ブロック4とを結合した構造のものである。
【0023】
上記短尺な発泡樹脂ブロック3と任意の長さの発泡樹脂ブロック4とは、その幅Wが500〜1500mm、高さHが300〜1000mm程度がよく、この実施の形態においては、幅Wが1000mm、高さHが500mmに形成されている。また、短尺な発泡樹脂ブロック3の長さL1は、取扱性が良好な長さ、好ましくは100〜800mm、更に好ましくは200〜500mmがよく、この実施の形態においては、250mmに形成されている。また、任意の長さの発泡樹脂ブロック4の長さL2は、構築する土木構造体を考慮し、適宜長さの異なるものとすることも出来るが、通常、500〜2000mmがよく、この実施の形態においては、1000mmに形成されている。
【0024】
また、上記発泡樹脂ブロック3,4の各々の結合面3a,4aには、図2に示したように、アリ溝5,6が、対向する位置に各々2本その全高に亘って形成されている。このアリ溝5,6は、この実施の形態においては、開口部の幅w0が100mm、深さhが100mm、底部の幅w1が150mmに形成されている。
【0025】
上記発泡樹脂ブロック3,4の結合には、上記結合面3a,4aに各々形成されたアリ溝5,6に嵌入する連結部材7が用いられる。この連結部材7は、発泡樹脂により形成されており、図3に示したように、合わされたアリ溝5,6の平面形状と略同形の断面形状を有する棒体に形成され、その長さlは、発泡樹脂ブロック3,4の高さHの2分の1程度、この実施の形態においては、250mmに形成されている。また、この連結部材7の側面には、下方にいくに従い細くなるテーパが付けられており、該テーパ幅aは、1〜5mm程度取られている。
【0026】
本発明で用いる上記発泡樹脂ブロック3,4、および上記連結部材7は、同一の発泡樹脂によって形成することができる。例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル等の樹脂を発泡させたもので形成することができるが、中でも、安価であり、低密度でも強度が大きいポリスチレン樹脂を発泡させたもので形成することが好ましく、特にポリスチレン樹脂発泡粒子成形体で形成されたものが好ましい。この実施の形態においては、発泡樹脂ブロック3,4、および連結部材7とも、ポリスチレン樹脂発泡体により形成されている。また、上記発泡樹脂ブロック3,4は、通常、10〜50kg/m3程度の密度を有するものがよく、この実施の形態においては、20kg/m3程度の密度に形成されている。また、上記連結部材7は、それより若干、具体的には5kg/m3程度密度の高いものとすることが好ましく、この実施の形態においては、25kg/m3程度の密度に形成されている。このような発泡樹脂ブロック3,4、および連結部材7の発泡体は、耐水性の面、強度面から独立した気泡を有するものであることが好ましい。
【0027】
また、上記発泡樹脂ブロック3に形成されたセメント硬化物層2は、コンクリートやモルタル等の様々な水硬性セメントで形成することができる。水硬性セメントとしては、例えば普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、低硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等のポルトランドセメントや、水硬性石灰、ローマン・セメント、天然セメント、アルミナセメント、高炉セメント、シリカセメント、膨張セメント、着色セメント等がある。これらの中でも、ポルトランドセメントや水硬性石灰、天然セメント、高炉セメント、膨張セメント、着色セメントを用いることが好ましい。
【0028】
また、上記セメントには、種々の骨材、補強材、軽量化材、水ガラス等を加えることもできる。骨材としては、砂、砂利、シリカフォーム等の通常の骨材や、膨張粘土、パーライト、膨張スラグ等の人工軽量骨材等がある。また、補強材としては、有機、無機の各種繊維、例えばスラグ繊維、炭素繊維、ナイロン、ポリエステル繊維等がある。また軽量化材としては、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン等の樹脂の、密度0. 008〜0. 1g/cm3 、粒径2〜15mmの発泡粒子等がある。
【0029】
また、上記セメント硬化物層2の厚さtは、通常、10〜30mmが適当であり、この実施の形態においては、20mmに形成されている。また、セメント硬化物層2は、発泡樹脂ブロック3との接合強度を向上させる観点から、発泡樹脂ブロック3の形成面に設けられた凹条、好ましくはアリ溝に嵌合する凸条を有しているものとすることが好ましく、この実施の形態においては、図1に示したように、発泡樹脂ブロック3に設けられたアリ溝8とアリ結合する凸条9が、その幅方向中央に1本形成されたセメント硬化物層2に形成されている。
【0030】
上記セメント硬化物層2を備えた発泡樹脂ブロック3を製造するにあたっては、発泡成形した発泡樹脂ブロック3のセメント硬化物層の形成部位を型枠で囲み、その型枠内に未硬化のセメントモルタルを流し込み、養生、硬化させてセメント硬化物層2を形成すればよい。また逆に、型枠中に所定量入れられたセメントモルタル上に、発泡樹脂ブロック3を入れ、養生、硬化させてセメント硬化物層2を形成してもよい。さらに、セメント硬化物層2を別に作製し、それを接着剤を用いて発泡樹脂ブロック3の表面に貼着することにより形成してもよい。上記したいずれの製造方法による場合も、本発明に係る発泡樹脂ブロック3は短尺なものであるため、取扱い性(ハンドリング性)が極めてよく、製造作業性は良好なものとなり、またその作業、養生のためのスペースも小さいものですむ。
【0031】
そして、上記製造したセメント硬化物層2を備えた発泡樹脂ブロック3と、セメント硬化物層を有しない発泡樹脂ブロック4とを、上記した連結部材7を各々の結合面3a,4aに形成された上記アリ溝5,6に上方及び下方より嵌入することにより、両発泡樹脂ブロック3,4を結合した本発明に係る土木構造体用構築部材1とする。この連結部材7を用いた発泡樹脂ブロック3,4の結合は、工場で行っても、土木構造体を構築する現場で行ってもよいが、少なくとも土木構造体を構築する作業前に行い、安定した土木構造体を効率よく構築できる本発明に係る土木構造体用構築部材1としておく必要がある。
【0032】
本発明の土木構造体は、上記した本発明に係る土木構造体用構築部材1を用いて構築されるものであるが、その用途例としては、道路、鉄道のプラットホーム、歩道橋の昇降スロープ、車道接続歩道部の拡幅等を挙げることができる。
【0033】
本発明の土木構造体を構築するにあたっては、先ず、土砂を削ったり、土盛りした後、砂や砂利を敷いて、その上から突き固め作業を施して基礎を形成する。そして、その基礎上に、本発明に係る土木構造体用構築部材1を、図4に示したように、該構築部材1のセメント硬化物層2が外表面となるように複数積層載置していく。この際、本発明の土木構造体用構築部材1は、セメント硬化物層2を備えた発泡樹脂ブロック3に連結部材7によって他の発泡樹脂ブロック4を結合した長尺な構築部材としているため、安定した状態で積層載置できると共に、効率的に構造体を構築していくことができる。そして、構築した構造体の上部に、アスファルト、コンクリート、タイル等によって仕上げ工事を施し、また必要に応じて、積み上げた構築部材1,1間の目地部にシーリング材を充填し、土木構造体を完成する。このようにして構築された本発明に係る土木構造体10は、内部に歪が存在しない、安定した土木構造体となる。
【0034】
以上、本発明に係る土木構造体用構築部材、および該土木構造体用構築部材を用いて構築した土木構造体の実施の形態を説明したが、本発明は、何ら既述の実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した本発明の技術的思想の範囲内において、種々の変形および変更が可能であることは当然である。
【0035】
例えば、上記実施の形態においては、発泡樹脂ブロック3,4の結合面に形成するアリ溝5,6として、平面視台形のものを示したが、図5に示したように、円形、T字形等のアリ溝としてもよい。そして、このようにアリ溝の形状を変更した場合には、当然、該アリ溝にアリ結合する連結部材7の断面形状も、それに倣って変更する必要がある。従って、連結部材7は、前後左右に不動で上下に可動な難動形状のものが好適である。
【0036】
また、上記実施の形態においては、発泡樹脂ブロック3,4の全高に亘ってアリ溝5,6を形成したが、必ずしも全高である必要はなく、上下方向から途中までアリ溝を形成し、該アリ溝にアリ結合する長さが発泡樹脂ブロック3,4の高さの2分の1に満たない短尺な連結部材7で、発泡樹脂ブロック3,4を結合するものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る土木構造体用構築部材の一実施の形態を示した斜視図である。
【図2】図1の土木構造体用構築部材の結合前の状態を示した斜視図である。
【図3】図1の土木構造体用構築部材の結合時の状態を示した部分拡大斜視図である。
【図4】図1の土木構造体用構築部材を用いて構築する本発明に係る土木構造体の構築途中の状態を示した斜視図である。
【図5】発泡樹脂ブロックの結合面に形成するアリ溝の他の実施の形態を示した平面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 土木構造体用構築部材 2 セメント硬化物層
3 短尺な発泡樹脂ブロック 3a 結合面
4 任意の長さの発泡樹脂ブロック 4a 結合面
5 アリ溝 6 アリ溝
7 連結部材 8 アリ溝
9 凸条 10 土木構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの表面にセメント硬化物層が形成された短尺な発泡樹脂ブロックと、セメント硬化物層を有しない任意の長さの発泡樹脂ブロックとを、連結部材を介して結合した構造としたことを特徴とする、土木構造体用構築部材。
【請求項2】
上記短尺な発泡樹脂ブロックの長さを、200〜500mmとしたことを特徴とする、請求項1に記載の土木構造体用構築部材。
【請求項3】
上記発泡樹脂ブロック同士の合わせ面の対向する位置に各々アリ溝を形成し、該アリ溝の両者にアリ結合する連結部材によって上記両発泡樹脂ブロックを結合したことを特徴とする、請求項1または2に記載の土木構造体用構築部材。
【請求項4】
上記アリ溝を発泡樹脂ブロックの全高に亘って形成し、上記連結部材を上下方向で二分割した構成としたことを特徴とする、請求項3に記載の土木構造体用構築部材。
【請求項5】
上記連結部材の先端を後端より細くしたことを特徴とする、請求項3または4に記載の土木構造体用構築部材。
【請求項6】
上記連結部材を発泡樹脂で形成すると共に、その密度を上記発泡樹脂ブロックの密度よりも高くしたことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の土木構造体用構築部材。
【請求項7】
上記請求項1乃至6のいずれかに記載の土木構造体用構築部材を、該構築部材のセメント硬化物層が外表面となるように複数積層載置して構築したことを特徴とする、土木構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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