説明

土木用シート

【課題】予め軟弱地盤の表面に敷設することにより軟弱地盤を補強して重機の軟弱地盤への沈み込みを防ぐことができ、重機のトラフィカビティを確保することができ、軟弱地盤の上に敷設した後に盛土施工した時の盛土補強を図ることができ、この際、経糸及び緯糸の種類としてポリ乳酸繊維が用いられているので、生体に対して安全が保証されると共に通常の土中や水中での自然環境下で3乃至5年程度で分解すると予想され、強度保持率もポリエステル繊維に比べて高く、太陽光による劣化が少なくて耐候性を高めることができる。
【解決手段】多数の経糸T及び多数の緯糸Yを交錯して製織してなる織物Cからなり、経糸及び緯糸の種類としてポリ乳酸繊維が用いられ、かつ、経糸と緯糸の交錯のしかたである織物組織が擬紗織である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に軟弱地盤の埋め立て工事などの土木工事を行う際に用いられる土木用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の土木用シートとして、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの合成繊維の織編物や不織布、ポリエチレンなどの合成樹脂を成形した成形シートからなる構造のものが知られている。
【0003】
しかして、土木用シートを予め軟弱地盤の表面に敷設し、軟弱地盤を補強して重機の軟弱地盤への沈み込みを防ぎ、重機のトラフィカビイヒティを確保したり、軟弱地盤の上に敷設した後に盛土施工した時の盛土補強を図ることになる。
【特許文献1】特開平5−163656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらこれら従来構造の場合、工事終了後の廃棄処理が問題となったり、分解せずに土中に残り、花木などの植物の根の成長を妨げたり、建造物の構築に当たって支障になることがあるという不都合を有している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこれらの不都合を解決することを目的とするもので、本発明のうちで、請求項1記載の発明にあっては、多数の経糸及び多数の緯糸を交錯して製織してなる織物からなり、上記経糸及び緯糸の種類としてポリ乳酸繊維が用いられ、かつ、上記経糸と緯糸の交錯のしかたである織物組織が擬紗織であることを特徴とする土木用シートにある。
【発明の効果】
【0006】
本発明は上述の如く、請求項1記載の発明にあっては、この土木用シートを予め軟弱地盤の表面に敷設することにより軟弱地盤を補強して重機の軟弱地盤への沈み込みを防ぐことができ、重機のトラフィカビイヒティを確保することができ、軟弱地盤の上に敷設した後に盛土施工した時の盛土補強を図ることができ、この際、上記経糸及び緯糸の種類としてポリ乳酸繊維が用いられているので、生体に対して安全が保証されると共に通常の土中や水中での自然環境下で3乃至5年程度で分解すると予想され、強度保持率もポリエステル繊維に比べて高く、使用後に回収して焼却しても、ダイオキシン、塩化水素、NOX等の有毒ガスが発生せず、太陽光による劣化が少なくて耐候性を高めることができ、かつ、上記経糸と緯糸の交錯のしかたである織物組織が擬紗織であるから、引張強度を経年保持することができ、目開きが大きいことにより通気性や透水係数を高めることができ、軟弱地盤の圧密による排水を促進することができ、目ずれが生じにくく、更に、盛土補強に限らず、盛土法面の法面緑化シートとしても使用することができ、種子の法面定着効果を発揮すると共に植物が十分に生育した後に分解され、しかも、生分解性の性質とは相反するが、紫外線による耐候性に優れることにより防草シートとして使用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1乃至図2は本発明の実施の形態例を示し、1は土木用シートであり、多数の経糸T及び多数の緯糸Yを交錯して製織してなる織物Cからなる。
【0008】
この場合、上記経糸T及び緯糸Yの種類としてポリ乳酸繊維が用いられ、かつ、上記経糸Tと緯糸Yの交錯のしかたである織物組織が擬紗織となっている。
【0009】
ここに、上記ポリ乳酸繊維とは、トウモロコシなどの植物に含まれるデンプンを発酵して乳酸を作り、この乳酸を重合させ、こうして得られたポリ乳酸を繊維化することにより得られる植物を原料とした合成繊維をいう。例えば、東レ株式会社製ポリ乳酸繊維「エコデイア(登録商標)」等を用いることができる。
【0010】
また、上記擬紗織とは、緯糸1本ごとにからみ経を地経の左右に出してもじらせる絡み組織である紗織のからみ組織に見た目は疑似しているものの、その組織は経糸同士をもじらせず、緯糸、経糸とも3〜5本の糸を束ねて平行に配列して織ることにより、束と束との間により多くの隙間を確保し、メッシュ調に仕立てた組織をいう。
【0011】
例えば、その完全組織は、図1の如く、3本の経糸Tと3本の緯糸とを経糸T同士をもじらせず、緯糸Y、経糸YTとも3本の糸を束ねて平行に配列してなる組織であり、そして、図2のように完全組織がたてよこに連続する織物組織をいう。
【0012】
また、この場合、製造工程として、まず、撚糸工程において、ポリ乳酸繊維からなる原糸に撚りを加え(仮撚工程は糸が太いときは省略する。又、引張強度と目開きの関係から糸の太さを決めている。)、次いで、整経工程において、撚糸工程を経た糸を織機に経糸として使うために、長さと本数を揃えてビームに巻き(通常、織りをスムーズに行うため、糸に糊付けを行うが、糊の洗浄等の環境面での悪影響を配慮すれば、糊付けは行わないほうがいい。)、この準備作業を経た後、製織工程において、経糸と緯糸を交錯させて擬紗織にて機織を行い、次いで、精錬工程において、熱湯に浸すことで織糸のテンションを開放し自然な状態にするとともに、繊維分子の結晶構造を安定化させて強度増加させ、次いで、プレセット工程において、熱風により繊維の強度を増加させ、次いで、必要に応じ、染色工程において、織り上げた反物に緑色や黒色の染色を施し、ついで、整理工程において、熱処理を行いながら反物を引っ張り、規定の幅に整えることにより製造される。
【0013】
この実施の形態例は上記構成であるから、この土木用シート1を予め軟弱地盤の表面に敷設することにより軟弱地盤を補強して重機の軟弱地盤への沈み込みを防ぐことができ、重機のトラフィカビイヒティを確保することができ、軟弱地盤の上に敷設した後に盛土施工した時の盛土補強を図ることができ、この際、上記経糸及び緯糸の種類としてポリ乳酸繊維が用いられているので、生体に対して安全が保証されると共に通常の土中や水中での自然環境下で3乃至5年程度で分解すると予想され、強度保持率もポリエステル繊維に比べて高く、使用後に回収して焼却しても、ダイオキシン、塩化水素、NOX等の有毒ガスが発生せず、太陽光による劣化が少なくて耐候性を高めることができ、かつ、上記経糸と緯糸の交錯のしかたである織物組織が擬紗織であるから、引張強度を経年保持することができ、目開きが大きいことにより通気性や透水係数を高めることができ、軟弱地盤の圧密による排水を促進することができ、目ずれが生じにくく、更に、盛土補強に限らず、盛土法面の法面緑化シートとしても使用することができ、種子の法面定着効果を発揮すると共に植物が十分に生育した後に分解され、しかも、生分解性の性質とは相反するが、紫外線による耐候性に優れることにより防草シートとして使用することもできる。
【実施例】
【0014】
[実施例1]
経糸と緯糸とも1120dtex/192filの糸を用いており、経糸密度は34本/吋、緯糸密度は32本/吋として擬紗織にて製織した(購入した原糸は560dtexであり、2本撚って1本の糸として使用している。)。
【0015】
[実施例2]
経糸と緯糸とも1450dtex/180filの糸を用いており、経糸密度は30本/吋、緯糸密度は27本/吋として擬紗織にて製織した(購入した原糸は1450dtexであり、この原糸1本を撚って使用している。)。
【0016】
[実施例3]
経糸と緯糸とも、1120dtex/192filの糸を2本撚って用いており、この経糸密度は34本/吋、緯糸密度は32本/吋として擬紗織にて製織した(購入した原糸は560dtexであり、4本撚って1本の糸として使用している。)。これら実施例の性能評価を下記表1に示している。
【0017】
【表1】

【0018】
尚、本発明は上記実施例に限られるものではなく、原糸の太さや本数等は適宜変更して設計される。
【0019】
以上、所期の目的を充分達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例の完全組織図である。
【図2】本発明の実施例の織物組織図である。
【符号の説明】
【0021】
T 経糸
Y 緯糸
C 織物
1 土木用シート



【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の経糸及び多数の緯糸を交錯して製織してなる織物からなり、上記経糸及び緯糸の種類としてポリ乳酸繊維が用いられ、かつ、上記経糸と緯糸の交錯のしかたである織物組織が擬紗織であることを特徴とする土木用シート。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−52256(P2009−52256A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219056(P2007−219056)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 新潟日報本社発行、平成19年7月4日付、新潟日報朝刊第6面
【出願人】(000146515)株式会社植木組 (6)
【Fターム(参考)】