説明

土木資材用袋

【課題】破網が生じにくく網糸の使用量を減らして網地全体の重量を減らすことができるような網地を備えた土木資材用袋を提供する。
【解決手段】中詰め材bを内包し正方形の目合いを有する網地1を備えた土木資材用袋aであって、網地1は引張強度4cN/dtex以上、切断伸度12〜30%の合成繊維の原糸を複数本束ねた網糸により編網され、網糸の引張強さA(N)、中詰め材bの長径(中詰め材を平面に投影したときの最大寸法)B(mm)、目合いの大きさC(mm)が100×A2/(B2×C)≧8の関係を満たす土木資材用袋aとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川の橋脚や岸壁などの水中構造物の根固め、河岸や海岸の浸食防止等に使用される軽量で耐破網性に優れた土木資材用袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、河川の橋脚や港湾の岸壁などの根固め工、あるいは河岸や海岸の浸食を防止するための護岸工において、玉石、割栗石、コンクリート片などの中詰め材を網地に入れた土木資材用袋を水中の適所に浸積し、水流によって水中構造物の水底周囲の地盤が押し流されたり、土砂が流出して河岸や海岸が浸食されたりするのを防止している。
【0003】
このような土木資材用袋に用いる網地は、中に入れる玉石などの重量に耐えられるように設計され、破網(網糸切れ)を抑制するために網地に使用する網糸を太くしたり、網地を二重に折り重ねたりして強度を高めている(たとえば、特許文献1の段落[0010]および図2)。
【特許文献1】特開2004−183173号公報
【0004】
しかしながら、網糸を太くしたり、網地を二重して用いたりする場合には網地の強さは強くなるものの、使用する網糸の量が増えて網地の重量が顕著に重くなると共に網地全体が嵩張り土木資材用袋の輸送や現場での作業性が悪くなるなどの問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前述の問題を解決するためになされたものであり、玉石などの中詰め材の大きさ、網糸の引張強さ、および目合いの大きさ相互の関係に着目し、破網が生じにくく網糸の使用量を減らして網地全体の重量を減らすことができる網地を備えた土木資材用袋を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る手段は、中詰め材を内包し正方形の目合いを有する網地を備えた土木資材用袋であって、前記網地は引張強度4cN/dtex以上、切断伸度12〜30%の合成繊維の原糸を複数本束ねた網糸により編網され、前記網糸の引張強さA(N)、前記中詰め材の長径(中詰め材を平面に投影したときの最大寸法)B(mm)、前記目合いの大きさC(mm)が100×A2/(B2×C)≧8の関係を満たす土木資材用袋である。
【0007】
請求項2に係る手段は、合成繊維は、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ乳酸繊維の中から選ばれた一種または二種以上である請求項1に記載の土木資材用袋である。
【0008】
請求項3に係る手段は、網地はラッセル編または無結節編により編網されている請求項1または請求項2に記載の土木資材用袋である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の土木資材用袋によれば、玉石などの中詰め材の大きさ、網糸の引張強さ、および目合いの大きさ相互の関係に着目した網地としたため、破網が生じにくく網糸の使用量を減らして網地全体の重量を減らすことができる網地を備えた土木資材用袋を得ることができる。
【0010】
請求項2に記載の土木資材用袋によれば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ乳酸繊維の中から選ばれた一種または二種以上の合成繊維を原糸として束ねた網糸を用いて編網した網地とすることで、原糸の引張強度が強くなって網地の編網時の原糸の糸切れを抑制できると共に、所定の破断伸度を有するため衝撃吸収性にも優れている。
【0011】
請求項3に記載の土木資材用袋によれば、網地の編網をラッセル編または無結節編としたため、衝撃吸収性および引張強さに優れた網地を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態の一例を、図1〜図4に基づき説明する。
【0013】
図1においてaは土木資材用袋であり、土木資材用袋aの中に玉石、割栗石、コンクリート片などの中詰め材bを入れて河川の橋脚や港湾の岸壁などの根固め工、あるいは河岸や海岸の浸食を防止するための護岸工などに用いる。
【0014】
この土木資材用袋aは玉石などの中詰め材bを内包するための円筒状の網地1と、網地1の下部を縛って袋状に形成する底縛りロープ2と、網地1の上部に設けられて口縛りをする口縛りロープ3と、網地1の上部に設けられて土木資材用袋aを吊り上げるための吊りロープ4を備えている。
【0015】
ここで網地1について説明する。網地1は図2に示したように複数本の原糸11を束ねて網糸12とし、この網糸12を編網して目合いが正方形となるように形成される。束ねられる原糸11の本数は網糸12の引張強さが所定の値になるように決められる。前述の原糸11は例えば太さが0.01〜0.20mmの合成繊維であり、好適にはポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ乳酸繊維の中から選ばれた一種または二種以上の合成繊維が使われる。これらの合成繊維を使用すればいずれも後述する引張強度が4cN/dtex以上であって、切断伸度が12〜30%の原糸の条件を満たすためである。また、網地1の編網はラッセル編、無結節編、蛙又編、文字編などにより行われるが、ラッセル編または無結節編とするのが望ましい。ラッセル編みは伸縮性が大きいため衝撃吸収性に優れており、無結節編は網地の引張強さが優れているためである。
【0016】
次に、土木資材用袋aの形成方法および中詰め材bの充填方法について説明する。図3(a)に示したように網地1を横長の矩形状に形成し、長手方向に直交する軸を中心に丸めて網地1の長さ方向の両端部(耳部)1a、1bを接合し、図3(b)に示すように円筒状の網地1を形成する。なお、編網時にシ−ムレスの編網機を用いて円筒状に網地1を形成する場合には耳部のつなぎは必要ない。
【0017】
そして、図4に示したように底縛りロープ2で円筒状の網地1の下部開口端を縛って閉塞させ袋状となるようにする。また、網地1の上部開口端近傍には開口端の周縁に沿って口縛りロープ3および吊りロープ4を設けることにより土木資材用袋aが形成される。なお、底縛りロープ2、口縛りロープ3、吊りロープ4を網地1から容易に外れないように設けるため、たとえば網地1の編目に挿通するなどして固定する。
【0018】
このようにして形成した土木資材用袋aを図5に示したように型枠cの中に敷き、たとえばバックホウ等を用いてあらかじめ選別された所定の大きさの玉石、割栗石、コンクリート片などの中詰め材bをたとえば2〜20トン充填し、充填後は中詰め材bが外部にこぼれないように口縛りロープ3により網地1の上部開口端を口縛りする。なお、中詰め材bが充填された土木資材用袋aの移動は、吊りロープ4を例えばクレーンのフックに引っ掛けて吊り上げることにより行われる。
【0019】
ところで、本発明の網地1を構成する網糸12の原糸11は引張強度が4cN/dtex以上、切断伸度が12〜30%とする必要がある。
【0020】
引張強度が4cN/dtex未満であると編網時に原糸の糸切れを起こしやすくなり、また、原糸11の引張強度が小さいと同じ引張強さの網糸12を得るためには原糸11の本数を増やさなければならず、網糸12が太くなって編網し難くなるからである。
【0021】
また、切断伸度が12%未満であると網地1の伸縮性が小さくなり、設置場所の地盤に起伏が大きい場合には網地1と地盤との間に隙間が多く発生したり、中詰め材bが充填されている土木資材用袋aの吊り上げによる変形等に耐えきれずに破網が発生し易くなる。一方、切断伸度が30%を超えると結果的に原糸11の引張強度が小さくなると共に、伸びが大きくなり過ぎて吊り上げ難くなる。
【0022】
さらに、本発明に係る網地1は、網糸12の引張強さをA(N)、中詰め材bの長径をB(mm)、目合いの大きさをC(mm)としたときに100×A2/(B2×C)≧8の関係を満たすことが必要である。ここで、中詰め材bの長径Bとは中詰め材bを平面に投影したときの最大寸法(mm)であり、目合いの大きさとは図2において網地1の正方形の目合いの一辺の長さC(mm)を表している。
【0023】
ところで、前述の式の左辺100×A2/(B2×C)(以下「強度式」という。)は網地1の耐破網性を表す指標と考えられている。すなわち網地1の耐破網性は中詰め材bが充填された土木資材用袋aをクレーン等による吊り上げたときの網地1の破網に対する耐性(A/B)および中詰め材bが充填された土木資材用袋aを静置したときの破網に対する耐性((100/C×A)/B)の積で表されるものと考えられ、発明者らは種々の実験の結果から強度式の値が8以上となる場合には吊り上げ時および静置時のいずれにおいても網地1が破網を生じ難くなることを見いだした。
【実施例】
【0024】
表1〜表3に本発明の係る網地の実施例を比較例と対比させて示す。なお、実施例及び比較例共に使用した原糸はポリエステル繊維(ユニチカファイバー株式会社製:商品名ユニエコロ)である。また、所定の引張強さとなるように原糸11を複数本束ねて網糸12とし、シ−ムレスのラッセル編機を使用しラッセル編により編網して網地1を形成している。
【0025】
(試験方法)
本発明の土木資材用袋aに所定量の中詰め材bを充填後、クレーンを用いて所定の高さ(5m)の吊り上げおよび吊り降ろしを10回繰り返して行った後、網地の破網の状態を観察する。
【0026】
(判定基準)
前述の試験を実施後、網地の破網の状態を確認して以下の基準により判定を行った。
○(適合):破網(網糸切れ)の発生が4カ所以下である、かつ、網傷の伝染がない
×(不適合):破網(網糸切れ)の発生が5カ所以上である、または、網傷の伝染がある
なお、網傷の伝染とは一の網糸の切断箇所を起点に他の網糸の切断箇所に切断が拡大した連鎖状態をいう。
【0027】
表1は網糸12の引張強さAに対する強度式の計算値および網地1の試験後の判定を表しており、実施例及び比較例共に中詰め材bの長径Bを500mm、目合いの大きさCを25mmとした場合の結果である。
【表1】

表1において強度式の計算値が8未満の比較例では不適合であるものの、強度式の計算値が8以上の実施例においてはいずれも適合であった。
【0028】
表2は中詰め材bの長径Bに対する強度式の計算値および網地1の試験後の判定を表しており、実施例及び比較例共に網糸12の引張強さAを800N、目合いの大きさCを25mmとした場合の結果である。
【表2】

表2において強度式の計算値が8未満の比較例では不適合であるものの、強度式の計算値が8以上の実施例においてはいずれも適合であった。
【0029】
表3は目合いの大きさCに対する強度式の計算値および網地1の試験後の判定を表しており、実施例及び比較例共に網糸12の引張強さAを800N、中詰め材bの長径Bを500mmとした場合の結果である。
【表3】

表3において強度式の計算値が8未満の比較例では不適合であるものの、強度式の計算値が8以上の実施例においてはいずれも適合であった。
【0030】
以上の結果から100×A2/(B2×C)≧8の関係を満たす場合にはいずれも適合であること(破網が発生しにくいこと)が判る。なお、適合の範囲で網糸12の使用量を極力少なくするためには強度式の計算値を8に近づけた設計の網地1とするのが好ましい。このような網地1とすることにより軽量で耐破網性に優れた土木資材用袋aを得ることができる。
【0031】
ところで、上述の実施例においてはポリエステル繊維を原糸として用いた場合の一例を示したが、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ乳酸繊維などの引張強度4cN/dtex以上、切断伸度12〜30%の合成繊維の原糸11あるいはこれらを組み合わせて用いた原糸11においても同様の結果が得られた。また、網地1の編網はラッセル編に限るものではなく、無結節編、蛙又編、文字編などにおいても同様の結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る一実施例の土木資材用袋に中詰め材を充填した状態での一部断面図である。
【図2】図1の土木資材用袋の網地部分を拡大した図である。
【図3】図1の土木資材用袋の製作過程を説明するための図である。
【図4】図1の土木資材用袋の完成品を表す斜視図である。
【図5】図1の土木資材用袋に中詰め材を充填する過程を説明するための図である。
【符号の説明】
【0033】
a 土木資材用袋
b 中詰め材
1 網地
11 原糸
12 網糸
2 底縛りロープ
3 口縛りロープ
4 吊りロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中詰め材を内包し正方形の目合いを有する網地を備えた土木資材用袋であって、前記網地は引張強度4cN/dtex以上、切断伸度12〜30%の合成繊維の原糸を複数本束ねた網糸により編網され、前記網糸の引張強さA(N)、前記中詰め材の長径(中詰め材を平面に投影したときの最大寸法)B(mm)、前記目合いの大きさC(mm)が
100×A2/(B2×C)≧8
の関係を満たすことを特徴とする土木資材用袋。
【請求項2】
合成繊維は、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ乳酸繊維の中から選ばれた一種または二種以上であることを特徴とする請求項1に記載の土木資材用袋。
【請求項3】
網地はラッセル編または無結節編により編網されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の土木資材用袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−162167(P2007−162167A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−360204(P2005−360204)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(591224766)ナカダ産業株式会社 (17)
【Fターム(参考)】