説明

土砂等を充填した横長袋体の沈設方法とその横長袋体および横長袋体の吊下装置

【課題】 本発明は、土砂等を充填した横長袋体の沈設方法とその横長袋体および横長袋体の吊下装置を提供する。
【解決手段】 土砂等を充填した横長袋体1を、内部に空気を収納可能なフロート6を取り付け、同フロート6に空気を供給し水面に浮かべている浮沈式の吊下装置2に、袋体全長が水面付近の深さに位置するようにして吊り下げ、この状態で吊下装置2を、水中構造物の構築場所の上方に位置する水面に移動させ、それからフロート6の空気を排出して吊下装置2を沈下させ、横長袋体1を着底させたのち、横長袋体1を吊下装置2から切り離し、その後フロート6に空気を供給し吊下装置2を浮上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海・河川・湖・港湾等の水底に設置する、潜堤や洗掘防止用の水底地盤等の水中構造物を構築するのに用いる土砂等を充填した横長袋体の沈設方法とその横長袋体および土砂等を充填した横長袋体の吊下装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、沿岸付近・河口部・沖合い・港内等の水底に設置される、人工リーフ等を含む潜堤、漁礁、海藻礁、洗掘防止用の水底地盤等の水中構造物を、土砂や浚渫土などを充填した横長袋体を水中に沈下させ水底に積み上げたり、水底に敷き詰めたりすることによって構築する場合がある。
【0003】
このような横長袋体の沈設方法は、例えば、水中構造物を設置する水域に係留した台船上で空の横長袋体に土砂等を充填し、この横長袋体を台船上に設置したクレーンで水中に投下して沈める方法(パックレイ工法とも呼ばれる)や、船底が開閉可能になっている底開式土運船を浚渫船に横付けした状態で係留し、船倉内に配置している空の横長袋体に、浚渫船で採取した浚渫土を供給して浚渫土を横長袋体に充填したのち、底開式土運船を水中構造物を設置する水域まで移動させて船底を開き横長袋体を水中に投下する方法がある(ジオコンテナー工法とも呼ばれる)。
【特許文献1】特開平6−43688公報(第2〜3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、パックレイ工法は横長袋体の大きさの割りには大型の作業船団が必要なため、作業効率が悪い。一方、ジオコンテナー工法は横長袋体を大型化することで、水中構造物を効率良く構築できるようになり建設コストの減縮を図れるメリットがあるものの、水中投下時の管理が困難であり、且つ、横長袋体が水中を自由落下するため水深が深い場合には、沈設精度が悪くなり沈設状態が一定しないというデメリットがある。
【0005】
また、水中構造物を設置する水域の水深が浅い場合や、設置する水域に水深の浅いところがある場合には、台船や底開式土運船の船体が浅瀬に乗り上げ座礁するおそれがあるため、潮位が上昇する満潮時を見計らって作業をしなければならない。したがって、潮位が上昇している短時間の間でしか作業を行うことができず作業効率が非常に悪い。
【0006】
そこで本発明は、このような問題点を解決するため、水深の浅い水域や浅瀬のある水域において効率的に作業を行うことができる、土砂等を充填した横長袋体の沈設方法とその横長袋体および横長袋体の吊下装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため請求項1記載の土砂等を充填した横長袋体の沈設方法は、水底に沈下させ潜堤や洗掘防止用の水底地盤等の水中構造物を構築するための、土砂等を充填した横長袋体の沈設方法であって、土砂等を充填した前記横長袋体を、内部に空気を収納可能なフロートに空気を供給し水面に浮かべている浮沈式の吊下装置に、袋体全長が水面付近の深さに位置するようにして吊り下げ、この状態で前記吊下装置を、前記水中構造物の構築場所の上方に位置する水面に移動させ、それから前記フロートの空気を排出して前記吊下装置を沈下させ、前記横長袋体を着底させるか或いは着底場所に接近させたのち、前記横長袋体を前記吊下装置から切り離し、その後前記フロートに空気を供給し前記吊
下装置を浮上させることを特徴としている。
【0008】
請求項1記載の土砂等を充填した横長袋体の沈設方法によれば、前記横長袋体を袋体全長が水面付近の水深の浅いところに位置した状態を保ったままで、前記水中構造物の構築場所の上方に位置する水面まで運搬することができるため、作業台船や底開式土運船等が進入できない水深の浅い水域において効率良く沈設作業を行なうことができる。しかも、前記吊下装置を水中に沈下させて沈設作業を行うため前記横長袋体の位置合わせが容易で、より効率的に沈設作業を行なえる。
【0009】
なお、前記横長袋体は設置場所の環境や使用目的等に応じ、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ナイロン系、植物繊維系などの織布や不織布、または、ナイロン系やポリエステル系などの繊維で製造したネットを用いて形成することができる。
【0010】
例えば、海藻礁として利用する場合には、海藻や海藻の種子が定着しやすいように不織布を用いて形成すれば良く、土砂を充填する場合には、帆布等の強靭なポリエチレン系織布で形成することによって波浪等による損傷を抑えることができ、さらに、内面に不織布を張り合わせて二層構造にすれば微細な土砂の吸い出しが抑制され、土砂漏れによる環境悪化を防止することができる。そして、骨材等の比較的塊の大きなものを充填して使用する場合には、前記横長袋体をネットで形成することもできる。これら以外に、種類が異なる材料を組み合わせ多層構造となるようにして形成することもできる。
【0011】
なお、土砂等としているのは、骨材やセメント混合物、コンクリートガラや浚渫土砂等の産業廃棄物なども用いることができるためである。
【0012】
請求項2記載の土砂等を充填した横長袋体の沈設方法は、水底に沈下させ潜堤や洗掘防止用の水底地盤等の水中構造物を構築するために用いられる土砂等を充填した横長袋体の沈設方法であって、土砂等を充填した前記横長袋体を、内部に浮力体を収納したフロートを取り付け水面に浮上させている吊下装置に、袋体全長が水面付近の深さに位置するようにして吊り下げ、この状態で前記吊下装置を、前記水中構造物の構築場所の上方に位置する水面に移動させたのち、前記横長袋体を前記吊下装置から切り離すことによって沈下させて着底させることを特徴としている。
【0013】
請求項2記載の土砂等を充填した横長袋体の沈設方法によれば、上記請求項1の作用と同様、前記横長袋体を袋体全長が水面付近の水深の浅いところに位置した状態を保ったままで、前記水中構造物の構築場所の上方に位置する水面まで運搬することができるため、作業台船や底開式土運船等が進入できない水深の浅い水域において効率良く沈設作業を行なうことができる。
【0014】
請求項3記載の土砂等を充填した横長袋体の沈設方法は、土砂等を充填した横長袋体が吊下げられている複数台の吊下装置を一列に連結し、一方の端の前記吊下装置に残りの前記吊下装置を牽引させるようにして水中構造物の構築場所の上方に位置する水面に移動させたのち、前記各吊下装置の前記横長袋体を順次沈設することを特徴としている。
【0015】
請求項3記載の土砂等を充填した横長袋体の沈設方法によれば、一度に複数本の前記横長袋体を運搬することができるため、沈設作業の効率化を図ることができる。
【0016】
請求項4記載の土砂等を充填した横長袋体の沈設方法は、横長袋体の切り離しを、船上または陸上から遠隔操作によって行なうことを特徴としている。こうすると、前記横長袋体を人手を使わずに前記吊下装置から切り離すことができるようになるため、能率が良く、且つ、安全に作業が行なえるようになる。
【0017】
請求項5記載の土砂等を充填した横長袋体の沈設方法は、水面に浮上させている吊下装置に空の横長袋体を吊下げ、それから前記横長袋体に土砂等を充填することを特徴としている。
【0018】
請求項5記載の土砂等を充填した横長袋体の沈設方法によれば、前記横長袋体を容易に前記吊下装置に吊り下げることができ、前記横長袋体に浮力が作用することによって、前記横長袋体への土砂等の充填作業がしやすくなる。
【0019】
請求項6記載の横長袋体は、前記請求項1〜5のいずれか1項の土砂等を充填した横長袋体の沈設方法に記載されている前記横長袋体に、その外周面に底部を経由させた状態で取り付けられ長手方向から見てU字状になっている吊ベルトを設け、同吊ベルトを前記横長袋体の長手方向に所定間隔毎に配設し、前記各吊ベルトの両端部に、前記吊下装置に配置した連結具への取付部をそれぞれ設けることを特徴としている。
【0020】
請求項6記載の横長袋体によれば、土砂等を充填した前記横長袋体を前記吊下装置に吊下げた際に、前記横長袋体の垂れ下がりを抑えることができるため運搬し易くなる。
【0021】
請求項7記載の横長袋体は、吊ベルトが、横長袋体を側方から見て、取付部の真下よりも前記横長袋体の中央部寄りにずれた位置の前記底部を経由させることを特徴にしている。こうすると、充填した土砂等が前記横長袋体の中間部に寄り集まるため、前記横長袋体の長さが縮まり前記横長袋体の形状を保持し易くなる。したがって、前記吊下装置に吊り下げた前記横長袋体が運搬し易くなる。
【0022】
請求項8記載の横長袋体は、前記吊ベルトを、前記横長袋体を側方から見て、前記底部に向かって前記横長袋体の長手方向に開いた二股形状にすることを特徴にしている。こうすると、土砂等を充填した際の前記横長袋体の膨らみがより抑えられ運搬し易くなる。
【0023】
請求項9記載の土砂等を充填した横長袋体の吊下装置は、水底に沈下させ潜堤や洗掘防止用の水底地盤等の水中構造物を構築するために用いられる、土砂等を充填した横長袋体を沈設するための装置であって、少なくとも前記横長袋体の長さと同程度の全長を有する装置本体に、浮力体を内部に収納可能なフロートを設けるとともに、前記横長袋体を前記装置本体の全長方向と、略平行状態で吊下げ可能な吊下支持部が全長方向に沿って所定の間隔で配設し、前記フロートを、吊下げられた前記横長袋体が水面付近の深さに位置するように、前記装置本体を浮かせることが可能な浮力を付与することを特徴としている。
【0024】
請求項9記載の土砂等を充填した横長袋体の吊下装置によれば、前記横長袋体をその全長が水面付近の深さに位置した状態で吊り下げた状態にすることができるため、前記横長袋体を水深の浅い水域に運搬し沈設することが可能になる。
【0025】
請求項10記載の土砂等を充填した横長袋体の吊下装置は、浮力体を空気とし用い、前記フロートに空気を出し入れ可能にすることを特徴としている。請求項10記載の土砂等を充填した横長袋体の吊下装置によれば、請求項9に記載している作用の他、前記吊下装置を水中に沈下させて前記横長袋体を着底させることがでるため、前記横長袋体の位置合わせが容易になるし、前記横長袋体を降ろした位置が規定の位置からズレた場合には、前記フロートに給気して前記吊下装置を浮上させ、再び前記横長袋体を吊り上げることで位置合わせを行なうこともできる。
【0026】
また、作業水域の気象条件の急変により強風や高波等で曳航作業、或いは、沈設作業の中断を余儀なくされた場合には、前記吊下装置を、前記横長袋体を取り付けた状態のまま
設置場所付近の水底に沈めて仮置きしておけるため、工事再開後、直に作業に取り掛かることができるので作業の効率化が図れる。さらに、前記フロートから空気を排出し前記吊下装置を潜航させることもできるため、波が高い気象条件下でも前記横長袋体を安全に運搬することができる。
【0027】
それから、前記フロートの空気量を調節して前記吊下装置の沈下速度をコントロールすることができるので、例えば、ダム湖の湖底に前記横長袋体を設置する場合、前記横長袋体をゆっくりと着底させることで堆積土の巻き上げを抑え貯留水の濁りを抑えることができる。
【発明の効果】
【0028】
上述のような手段をもって為される本発明の土砂等を充填した横長袋体の沈設方法および横長袋体の吊下装置によれば、水深の浅い水域や浅瀬がある水域に水中構造物を構築する場合、潮位に関係なく横長袋体の沈設作業を行なえるため、工期を短縮することができ、工事費も抑えることができる。さらに、吊下装置を浮沈式にすることで横長袋体を沈設する場所の位置決めが容易になるため作業がはかどり、工期短縮を促進することができる。また、横長袋体と吊下装置とを遠隔操作で切り離し可能にすれば、人手を省き作業能率を上げることができる。そして、空の横長袋体を吊下装置に吊下げたあとに土砂等を充填すれば、横長袋体の吊下げ作業や土砂等の充填作業が容易になり作業の効率化を図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、本発明にかかる土砂等を充填した横長袋体の沈設方法と横長袋体の吊下装置との実施形態について、図面1〜13を参照しつつ説明する。
【0030】
図1(a)(b)に示すように、横長袋体1はポリエステル系織布を用いて断面円形の細長い筒状に形成されたもので、長手方向の両側にはそれぞれ土砂等を充填するための円筒形の投入口1aが、周方向で同じ位置になるように設けられている。この投入口1aは横長袋体1の外周面に設けられた収納部1dに出し入れ可能になっており、折り畳んで収納部1dに収め、収納部1dの口をロープで締め上げることによって閉じれる仕組みになっている。また、投入口1aが設けられている方とは反対側の外周面には、長手方向における両端と中間部の二箇所にほぼ一定間隔で、周方向に沿って縫着された吊ベルト1bが設けられており、その両端には端部を折り返し縫製した環状部に取付リング(取付部)1cがそれぞれ取り付けられている。
【0031】
そして、図2(a)(b)に示すように、吊下装置2は二本の長尺の鋼管3を、間隔をあけて平行に並べて配置し、端部どうしを短い鋼管4でそれぞれ連結することで形成されたフレーム5を備えている。このフレーム5は、鋼管内部の気密性が保たれた状態になっているため、鋼管に封入された空気を浮力体として水面に浮くことができる。
【0032】
このフレーム5には、各長尺の鋼管3に沿って円筒型のゴムフロート6がそれぞれ配設されている。各ゴムフロート6はそれぞれ、長尺の鋼管3と同程度の長さを有し、内部に空気を出し入れ可能になっていて、外周面の長手方向に沿って吊設した横長の帯状部6aで長尺の鋼管3にそれぞれ取り付けられている。
【0033】
長尺の鋼管3の上部外周面にはそれぞれ、一対の横長の板状部材を長手方向に沿った状態で隙間をあけて並べた連結部3aがそれぞれ設けられており、各ゴムフロート6の帯状部6aを挟み込んだ状態でボルトにより締結されている。
【0034】
また、各長尺の各鋼管3の互いに対向する面にはそれぞれ、横長袋体1を吊り下げるた
めの吊下支持部7が、長尺の鋼管3の長手方向に所定間隔ごとに配設されており、各長尺の鋼管3の吊下支持部7は互いに相対するように配置されていて、横長袋体1の取付リング1cとほぼ対応する位置にある。
【0035】
各吊下支持部7は、反対側の吊下支持部7側に斜め上方に向かって延設されたアームを備え、その先端には張出部7aが設けられており、この張出部7aの下面に逆U字型の連結具8が取り付けられている。
【0036】
この吊下支持部7のアームは鋼板で形成されており、左右両側にそれぞれ配置した二枚のへの字型の側板を先端部で連結したもので、左右の側板は基端部に向かって間隔が徐々に広くなるように形成されている。そして、左右の側板の間に連結具8の開閉を行うためのエアシリンダ9が配設されている。なお、エアシリンダの代わりに油圧シリンダを用いることもできる。
【0037】
このエアシリンダ9は、図2(c)に示すように、吊下支持部7の張出部7aと略平行に配置され、且つ、ピストンロッド9aが連結具8に向かって伸縮するように配置されており、ピストンロッド9aを伸ばし先端部を連結具8の係合孔8aに挿通することによって、連結具8を閉状態にすることができる。またピストンロッド9aを縮め先端部を連結具8の係合孔8aから引き抜くことで連結具8を開状態にすることができる。
【0038】
連結具8の開閉は、ピストンロッド9aの中間部に一端で接続され後方に傾いた状態で配設されている棒状の把持部9bを持ち、この把持部9bを前方へ移動させることによりピストンロッド9aを手動で伸ばしたり、シリンダ9cの前端部に設けた給気口9dからエアを供給してピストン9e後退させることで、ピストンロッド9aを自動的に縮めて行うことができる。
【0039】
また、横長袋体を吊下装置2にセットする際に用いる取付治具10を図3(a)(b)に示す。この取付治具10は、二本のH型鋼11を間隔をあけて平行に並べ、両方のH型鋼11間を長手方向に所定の間隔ごとに配置した角パイプ12で連結することで形成したフレーム13を備えており、各H型鋼11の両端にはそれぞれ上方に反った形状のツメ11aが取り付けられている。
【0040】
そしてフレーム13の上面には、各角パイプ12間の開口部を塞ぐようにして1ピッチおきにグレーチング14が取り付けられており、両方のH型鋼11の上面にはそれぞれ、横長袋体1の取付リング1cを係止可能なピン15が長手方向に所定間隔毎に設けられている。両方のH型鋼11に設けられているピン15はそれぞれ相対した配置になっており、横長袋体1の取付リング1cにほぼ対応した位置にある。また、各H型鋼11の上面には、長手方向両側にフレーム13を吊り上げる際に用いるアイボルト16がそれぞれ配設されている。
【0041】
次に、これらの吊下装置2を用いて横長袋体1を沈設する方法について説明する。空の横長袋体1を岸壁G上に、投入口1aを上向きにした状態で延ばして配置する。そして、取付治具10をクレーン等で吊り上げて横長袋体1の上方に移動させ(図4(a)参照)、長手方向の向きを横長袋体1に合わせつつ所定の高さまで下ろす。それから取付治具10の各ピン15に、横長袋体1の取付リング1cをそれぞれ係止させるとともに、グレーチング14間の各開口部から横長袋体の投入口1aをそれぞれ上方に向かって引き出す。
【0042】
このように、取付治具10を用いるメリットは、横長袋体1を吊下装置2に取り付ける際の作業がし易くなる他、吊下装置2を岸壁に引き上げる際の衝突等による損傷を回避できる点である。
【0043】
一方、吊下装置2はタグボート(図示省略)に係留した状態で岸壁G付近に浮かばせておく(図5参照)。両側の各フロート6には、途中に給排気用操作部19を設け一端をコンプレッサ20に接続している一対の給排気ホース21を、長手方向両端に別々に接続する。また、一端をコンプレッサに接続している別の給気ホース22を、吊下支持部7にあるエアシリンダ9の各給気口9bを経由させるようにフレーム5に沿って配管した図示しない分配ホースに接続する(図6参照)。なお、コンプレッサ20と給排気用操作部19はタグボードに搭載しており、吊下装置2の浮沈や横長袋体1の切り離しを船上から遠隔操作できるようになっている。
【0044】
水面に浮かべた吊下装置2は、給排気ホース21からフロート6に空気を充填するとともに、給気ホース22からエアシリンダ9に空気を供給し連結具8を開状態にしておく。
【0045】
なお、岸壁Gにはホッパー17が設置されホッパー17に土砂等を投入するための重機18が配置されている。ホッパー17の排出口には、一端を横長袋体1の投入口1aに挿入可能なフレキシブルホース17aの他端部が接続されている(図5参照)。
【0046】
次に、横長袋体1をセットした取付治具10を吊り上げて吊下装置2の上方に移動させ(図7(a))、吊下装置2と長手方向の向きを合わせながら徐々に下ろし、取付治具10のツメ11aを吊下装置2のフレーム5の短い鋼管4にあずけた状態にして吊下装置2に載置する。
【0047】
そして、横長袋体1の取付リング1cを取付治具10のピン15から外して連結具8に付け替え、ピストンロッド9aを伸長させて連結具8を閉じ取付リング1cを連結具8に連結する。全ての取付リング1cの連結作業が終了し、横長袋体1を吊下装置2の吊下支持部7に吊下げた状態にしたら、取付治具10を吊り上げて地上に移動させる。
【0048】
そして、吊下装置2に吊り下げた横長袋体1の投入口1aから、フレキシブルホース17aを通してホッパー17内の土砂を供給し土砂を充填する(図7(b))。充填率は80%程度以下にし、ある程度内部に余裕を設けておく。これは、着底した横長袋体1が、充填した土砂の流動によって横広がりの変形をし、より安定した状態で設置することが可能になるからである。
【0049】
土砂が横長袋体1に充填されれば、投入口1aを収納部1dに折り畳んで収納し、収納部1dの口を閉じて(図7(c))、図8に示すように、吊下装置2をタグボートTの小型船舶で曳航して、水中構造物を設置する水域に移動させる。
【0050】
この際、横長袋体1は吊下装置2に、袋体の全長が水面付近の深さで吊り下げらたれた状態で運搬されるので、横長袋体1を水底に引きずったり浅瀬に乗り上げたりさせることなく、目的の水域まで運ぶことができる。
【0051】
そうして、横長袋体1を沈設する場所の上方の水面に吊下装置2を配置し、吊下装置2とタグボートTとを切り離したのちに、フロート6の内部の空気を少しずつ排出して浮力を低下させ吊下装置2を徐々に沈下させる。そして、横長袋体1が水底Bに着底したら(図7(d))、吊下装置2のエアシリンダ9に空気を供給して連結具8を開状態にし、吊下装置2から横長袋体1を切り離して水底Bに沈設する。
【0052】
横長袋体1を切り離した吊下装置2は、フロート6に再び空気を供給し浮力を与えて水面に浮上させる(図7(e))。なお、吊下装置2は横長袋体1を切り離したことで軽くなるため、フレーム5の鋼管の浮力だけで浮上することができるが、次の作業を効率良く
行なうため、フロート6にエアを供給し短時間で浮上させるようにしている。そして、タグボート等で岸壁Gまで移動させて再び同じ手順で別の横長袋体を吊り下げる。
【0053】
こうして図9(a)、(b)に示すように、水底Bに横長袋体1を積み上げて人工リーフ等の潜堤・漁礁・海藻礁などを構築したり、水底に敷設して洗掘防止用の水底地盤等を構築するのであるが、隣り合う横長袋体1の取付リング1cどうしを結束するなどして一体にしておくと、構築した水中構造をより安定化させることができる。一体にするための治具は、横長袋体1どうしをしっかりと連結できるものであれば良く、例えば、取付リング1cどうしを連結する場合には、図示したような両端にゲート付のフックがそれぞれ取り付けられたバックル状の治具も有効である。
【0054】
なお、図10に示すように、吊下装置2を複数台用意し、各吊下装置2に土砂を充填した横長袋体1をそれぞれ吊り下げ、これらの吊下装置2を一列に連結した状態にして、端に位置する吊下装置をタグボートTに連結して曳航すれば、一度に複数の横長袋体1を運搬し沈設することができるため、より効率的に作業を行うことができる。
【0055】
この実施形態にかかる吊下装置2はトラック輸送が可能なサイズであるため、海に限らず河川、湖沼、ダム湖などでも手軽に使用することができる。例えば、大きな河川では自然回復のための流勢抑制潜堤、ダム湖では上流部に堆積した土砂等を水深の深い湖底に運ぶのに用いることができる。
【0056】
それから、フロートはゴム製のみならず、鋼管や硬質の樹脂製パイプを用いて形成することもでき、その場合には空気圧を利用して、内部に水を出し入れすることによって浮沈させることもできる。
【0057】
また、吊下装置2は図11に示すように、吊下装置2の長尺の鋼管3を片側に二本ずつ配置して、フロート6を片側二本ずつ設けるようにすると、吊下装置2の浮力をアップさせることができる。こうすると吃水が浅くなるため、水深が浅い場所などでは有利になる。
【0058】
上記実施形態はある程度水深のある場所に水中構造物を構築する場合における横長袋体の沈設方法を説明しているが、水深が浅い場合には、吊下装置2を沈下させずに横長袋体1を切り離し、自重により横長袋体1を沈めて水底Bに設置することも可能である。
【0059】
この場合、横長袋体1をより正確に設置場所に沈設するため、図12のようにフレーム5の長尺の鋼管3の一方にウインチ23を所定間隔で配置し、ウインチ23から繰り出したロープ24を横長袋体1の両方の取付リング1cに通したのち、先端を他方の長尺の鋼管3に着脱可能に固定するように構成することもできる。こうすると、ロープ24を、ウインチ23で巻き取ったり繰り出したりすることによって、横長袋体1を上下に移動することが可能になり、位置合わせをより細かく行なえるようになるからである。
【0060】
そして、本実施形態で用いている連結具8およびエアシリンダ9の代わりに図示は省略するが、解除用の浮子が装着されているフックを用いることができる。このフックは先端寄りの部分に、内部に空気を出し入れすることができる浮子が装着されており、水中で浮子に空気を供給すると、フックが先端を下に向け横向きの状態になることにより、自動的に横長袋体の取付リングか外れる仕組みになっている。
【0061】
また、別の例では回転式のフックを備えた連結具を用いることもできる。図13に示すように、この連結具25は横方向にスライド可能なフック止め26と、このフック止め26の先端部を係止させ回転を阻止できるようになっている回転フック27とを、主な構成
要素として備えている。これらは、図示しないアーム等の支持台に取り付けられていて、フック止め26はスライド方向両端部が、支持台に固定したホルダー28にそれぞれ支持されており、且つ、中間部には操作レバー29の先端部が回転可能に取り付けられている。この操作レバー29は、先端部寄りの位置で支持台に軸支されており、操作レバー29を旋回させるとフック止め26が横方向に移動する仕組みになっている。
【0062】
一方、回転フック27は基端部で支持台に軸支されており、フック止め26を回転フック27の方向へスライドさせることによって回転を阻止し、ロック状態にすることができる。そして、フック止め26を反対方向へスライドさせると、回転フック27の先端部からフック止め24が外れ、ロック状態を解除することができる。
【0063】
この回転フック27を、横長袋体の取付リング1cを通した状態でロック状態にし、フック止め26をスライドさせてロック状態を解除すると、回転フック27が回転して取付リング1cが外れ横長袋体を切り離すことができる。
【0064】
また、横長袋体1については、ポリエステル系のほか、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ナイロン系、植物繊維系などの織布や不織布、または、ナイロン系やポリエステル系などの繊維で製造したネットを用いて形成することができる。
【0065】
そして、図14のように吊ベルト1bを、横長袋体1を側面から見て、取付リング1cの真下から横長袋体の中間部方向へずれたところに位置している袋体底部を経由するように配設すると、充填した土砂等が横長袋体の中間部に寄り集まり横長袋体の長さが縮まるため、横長袋体の形状が保持し易くなる。それから、吊ベルト1bを1つの取付リング1cに対し2本設けて、各吊ベルト1bを側面視、取付リング1cの真下から別々の横長袋体の端部方向へずれた位置にある袋体底部を経由するように配設すると、土砂等を充填した際の袋体の膨らみを抑えることができる。このように、土砂等を充填した横長袋体を吊下装置に吊下げた際、その垂れ下がりを抑えることができるため運搬し易くなる。
【0066】
なお、横長袋体に充填するものとして浚渫土砂を用いると、従来産業廃棄物として埋立処分されている浚渫土砂の利用が促進され、飽和状態の埋立処分場の負担を軽減することができる。また、管中混合固化処理工法と組み合わせると、浚渫土砂の早期利用が可能になり、したがって、浚渫工事と平行して、採取した浚渫土砂を横長袋体に充填し水中構造物を構築できるようになるため、浚渫土砂の再利用を効率良く行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】水中構造物の構築に用いられる横長袋体を示しており、(a)は平面図、(b)は側面図を表している。
【図2】本発明にかかる吊下装置の実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は(a)におけるA−A矢視方向の断面図、(c)は吊下支持部の構造を示す部分拡大図である。
【図3】吊下装置に横長袋体を吊下げる際に用いる取付治具であり、(a)は平面図、(b)は側面図を現している。
【図4】(a)、(b)は横長袋体を取付治具に取り付ける際の手順を示した説明図である。
【図5】吊下装置を岸壁付近に浮かべた状態を示す説明図であり、土砂を供給するためのホッパーとホッパーに土砂を投入する重機の配置も示している。
【図6】吊下装置の空気配管の配置を示す概略図である。
【図7】横長袋体の沈設手順を示す説明図でありそれぞれ、(a)横長袋体の吊り下げ作業を行なっている図、(b)横長袋体に土砂を投入している状態、(c)土砂が充填された横長袋体を吊下装置に吊り下げた状態、(d)吊下装置を沈下させた状態、(e)横長袋体を沈設し吊下装置を再び水面に浮上させた状態を示している。
【図8】吊下装置をタグボートで曳航している状態を示す概念図である。
【図9】(a)図は沈設した横長袋体で構築した水中構造物の側面図であり、(b)図はその平面図である。
【図10】土砂を充填した横長袋体を吊り下げた複数の吊下装置を連結し移動させている状態を示す説明図である。
【図11】本発明にかかる吊下装置の別の実施形態を示す断面図である。
【図12】本発明にかかる吊下装置のさらに別の実施形態を示す断面図である。
【図13】連結具の別の実施形態であり、(a)図はロック状態、(b)はロックを解除した状態を示す概念図である。
【図14】本発明にかかる横長袋体の別の実施形態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 横長袋体
2 吊下装置
3 長尺の鋼管
4 短尺の鋼管
5 フレーム
6 ゴムフロート
7 吊下支持部
8 連結具
9 エアシリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水底に沈下させ潜堤や洗掘防止用の水底地盤等の水中構造物を構築するための、土砂等を充填した横長袋体の沈設方法であって、
土砂等を充填した前記横長袋体を、内部に空気を収納可能なフロートを取り付け同フロートに空気を供給し水面に浮かべている浮沈式の吊下装置に、袋体全長が水面付近の深さに位置するようにして吊り下げ、この状態で前記吊下装置を、前記水中構造物の構築場所の上方に位置する水面に移動させ、それから前記フロートの空気を排出して前記吊下装置を沈下させ、前記横長袋体を着底させるか或いは着底場所に接近させたのち、前記横長袋体を前記吊下装置から切り離し、その後前記フロートに空気を供給して前記吊下装置を浮上させることを特徴とする土砂等を充填した横長袋体の沈設方法。
【請求項2】
水底に沈下させ潜堤や洗掘防止用の水底地盤等の水中構造物を構築するための、土砂等を充填した横長袋体の沈設方法であって、
土砂等を充填した前記横長袋体を、内部に浮力体を収納したフロートを取り付けて水面に浮かべている吊下装置に、袋体全長が水面付近の深さに位置するようにして吊り下げ、この状態で前記吊下装置を、前記水中構造物の構築場所の上方に位置する水面に移動させたのち、前記横長袋体を前記吊下装置から切り離すことにより沈下させて着底させることを特徴とする土砂等を充填した横長袋体の沈設方法。
【請求項3】
土砂等を充填した前記横長袋体が吊下げられた複数台の前記吊下装置を一列に連結し、一方の端の前記吊下装置に残りの前記吊下装置を牽引させるようにして前記水中構造物の構築場所の上方に位置する水面に移動させたのちに、前記各吊下装置の前記横長袋体を順次沈設することを特徴とする請求項1または2記載の土砂等を充填した横長袋体の沈設方法。
【請求項4】
前記横長袋体の切り離しを、船上または陸上から遠隔操作によって行なうことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の土砂等を充填した横長袋体の沈設方法。
【請求項5】
水面に浮上させている前記吊下装置に空の前記横長袋体を吊下げ、それから前記横長袋体に土砂等を充填することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の土砂等を充填した横長袋体の沈設方法。
【請求項6】
前記請求項1〜5のいずれか1項の土砂等を充填した横長袋体の沈設方法に記載されている前記横長袋体が、その外周面に底部を経由させた状態で取り付けられ長手方向から見てU字状になっている吊ベルトを備え、同吊ベルトが前記横長袋体の長手方向に所定間隔毎に配設され、前記各吊ベルトの両端部に、前記吊下装置に配置した連結具への取付部がそれぞれ設けられていることを特徴とすること。
【請求項7】
前記吊ベルトが、前記横長袋体を側方から見て、前記取付部の真下よりも前記横長袋体の中央部寄りにずれた位置の前記底部を経由していることを特徴する請求項6記載の横長袋体。
【請求項8】
前記吊ベルトが、前記横長袋体を側方から見て、前記底部に向かって前記横長袋体の長手方向に開いた二股形状になっていることを特徴とする請求項6記載の横長袋体。
【請求項9】
水底に沈下させ潜堤や洗掘防止用の水底地盤等の水中構造物を構築するために用いられる、土砂等を充填した横長袋体を沈設するための装置であって、
少なくとも前記横長袋体の長さと同程度の全長を有する装置本体に、浮力体を内部に収納可能なフロートが設けられるとともに、前記横長袋体を前記装置本体の全長方向と、略
平行状態で吊下げ可能な吊下支持部が全長方向に沿って所定の間隔で配設されており、前記フロートは、吊下げられた前記横長袋体が水面付近の深さに位置するように、前記装置本体を浮かせることが可能な浮力を有していることを特徴する横長袋体の吊下装置。
【請求項10】
前記浮力体として空気が用いられ、前記フロートに出し入れ可能になっていることを特徴とする請求項9記載の横長袋体の吊下装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−348566(P2006−348566A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−175339(P2005−175339)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(593066634)海和テック株式会社 (11)
【出願人】(505225289)有限会社ダイヤテック (1)
【Fターム(参考)】