説明

土練機

【課題】ドラム内部における坏土の密度の不均一化を防ぎ、均質性の高い良好な柱状体が得られる土練機およびセラミックス原料を含む柱状体の製造方法を提供する。
【解決手段】回転軸6と螺旋状の回転羽根5とを有して内部に流入した坏土を混練しつつ圧送するスクリュー4を含むドラム2を備え、スクリュー4が、ドラム2内部の供給口20側に設けられ、坏土を混連しつつ圧送する昇圧部10と、ドラム2内部の押出口側20に設けられ、坏土を円柱状にまとめるための整流部11と、を有し、整流部11が、回転軸6中心線を通る平面上の断面形状での押出口20側の面と、回転軸6中心線とのなす角度を押出口20に近づくに従って漸次減少するように設けられた整流用回転羽根7を有し、整流用回転羽根7の回転軸6方向の間隔が、昇圧部10における回転羽根5の回転軸6方向の間隔より長く設けられた土練機1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、セラミックス原料を含む柱状体の製造等に好適に用いられる土練機に関するものであり、詳しくは、土練機内部のスクリュー回転に伴う坏土密度の不均一化を防ぎ、均質性の高い良好な柱状体が得られる土練機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばセラミックス原料を含む坏土をドラム内でスクリューの回転により混練して均質化し、円柱形状体を作製するために使用する土練機は種々の構成のものが知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。
【0003】
図2は従来の土練機の一例を示す概略構成図である。従来の土練機において、図2に示すように、ドラム2が、内部にスクリュー4を設けた構造を有している。供給口19からドラム2内に流入された坏土は、ドラム2内部のスクリュー34が大きなせん断力を付与することにより坏土を混練し、均質化する。そして、ドラム2内部において混練・均質化された坏土が押出口20から押出されて、坏土31の柱状体が製造される。
【0004】
また、セラミックスハニカム成形体の製造法として、セラミックス原料、水、バインダー等を調合した後、混練機(ニーダー)によって大きな粘土状の塊である坏土を作製し、土練機を使用して脱気および混練により坏土を均質化すると同時に押出しによって柱状体の作製を行い、この柱状体を押出成形(プランジャ型成形機)してセラミックスハニカム成形体を製造することも知られている。
【0005】
その際、土練機により柱状体を作製するが、土練機のスクリューの回転によって部分的に坏土の密度が不均一になることがある。また、その柱状体を用いて、セラミックスハニカム構造体の押出成形を実施した場合、様々な成形体欠陥が発生する。
【0006】
特に近年、セラミックスハニカム構造体における隔壁の薄壁化がさらに進展しており、このような薄壁を有する成形体に用いられるセラミックス柱状体を作製する際には、均質性が極めて強く要求されるようになり、柱状体の製造工程において厳しい品質管理要求を満たす工夫が必要となってきた。
【0007】
【特許文献1】特開平9−94818
【特許文献2】特開平10−100131
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図2に示されるような構造の従来の土練機で得られた柱状体を使用してセラミックスハニカム構造体等の押出し成形を行う際、土練機内部のスクリュー回転に伴って、柱状体の坏土密度に不均一を生じ、ハニカム構造体の成形不良が発生することがあった。
【0009】
図3は、図2に示す従来の土練機30のスクリュー34の先端構造を示す模式的説明図である。図4は、図3中の破線部Aで示す部分の坏土の密度分布を示す模式的説明図である。図4において、濃淡の濃い部分が高密度の状態を示し、薄い部分が低密度の状態を示す。横軸は、スクリュー34の回転軸方向41を示し、縦軸はドラムの径方向42を示す。図4中の斜線部で示される領域は、スクリュー34の断面を示す。図4に示すように、横軸方向においては、回転羽根35の回転によって生じた推力を坏土が直接受ける部分、即ち回転羽根35の押出方向41側の面に接する坏土が高密度化する(破線部B)。縦軸方向は、スクリューの回転に伴ってドラム4内部で坏土が移動する際に、ドラム径方向42の遠心方向へ力が加わり、ドラム内壁43との摩擦力が発生するため、ドラム内壁43に接する坏土が高密度化する。また、回転軸36の周囲や回転羽根35の押出方向41とは反対の面付近は坏土の密度が低くなっている(破線部C)。
【0010】
このため、図2および図3に示すような従来の土練機30で形成された坏土の柱状体を用いて、セラミックスハニカム構造体の押出成形や、その後の焼成を実施した場合、上記理由で生じた坏土の柱状体内部の密度が不均一であることにより、様々な成形体欠陥や、焼成欠陥が発生する恐れがあった。
【0011】
例えば、図5は、図3の従来のスクリュー先端構造を備えた土練機30を用いて得られた坏土31の柱状体の側面から見た模式的断面図である。この図に示すように、坏土31の柱状体の中心線16を回転対称にして、押出方向41に湾曲した、坏土内部の密度差によるフローパターン17が形成されている。
【0012】
図6は、図5中の破線部D中のフローパターンを、坏土31の柱状体の中心線16付近で拡大した模式的断面図である。図示したように、中心線16から湾曲したフローパターン17の前後で坏土が高密度化された部分と低密度化された部分とが交互に積層された構造となっている。
【0013】
本発明は上記した従来の課題に鑑みてなされたものであり、ドラム内部に土練機内部のスクリュー回転に伴って、均質性の高い良好な柱状体が得られる土練機および柱状体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、以下の構成を採用することにより上記課題を達成することを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は下記に示す通りである。
【0015】
[1] セラミックス原料を含む坏土が内部に流入される供給口と、前記坏土が柱状体として押出される押出口と、回転軸と前記回転軸に沿った螺旋状の回転羽根とを有して前記回転羽根の回転により内部に流入した前記坏土を混練しつつ圧送するスクリューと、を含むドラムを備え、前記スクリューが、前記ドラム内部の前記供給口側に設けられ、前記坏土を混連しつつ圧送する昇圧部と、前記ドラム内部の前記押出口側に設けられ、前記回転軸に沿って圧送された螺旋状の前記坏土を円柱状にまとめるための整流部と、を有し、前記整流部が、前記回転軸中心線を通る平面上の断面形状での前記押出口側の面と、前記回転軸中心線とのなす角度を前記押出口に近づくに従って漸次減少するように設けられた整流用回転羽根を有し、前記整流用回転羽根の前記回転軸方向の間隔が、前記昇圧部における前記回転羽根の前記回転軸方向の間隔より長く設けられた土練機。
【0016】
[2] 整流用回転羽根の回転軸方向の間隔が、押出口に近づくに従って漸次増加するように設けられた前記[1]に記載の土練機。
【0017】
[3] 整流用回転羽根が、回転軸と垂直方向の断面形状において、回転軸中心線に対して回転対称となるように2条設けられた前記[1]または[2]に記載の土練機。
【0018】
[4] 整流用回転羽根が、回転軸と垂直方向の断面形状において、押出口に近づくに従ってドラムの径方向外側へ向かって漸次縮小するとともに、ドラム内壁に沿って伸張するように設けられた前記[1]〜[3]のいずれかに記載の土練機。
【0019】
[5] 整流用回転羽根が、回転軸と垂直方向の断面形状において、押出口に近づくに従ってドラムの径方向外側へ向かって漸次縮小するとともに、ドラム内壁に沿って伸張して、押出口において円弧状になるように設けられた前記[1]〜[4]のいずれかに記載の土練機。
【0020】
[6] 前期整流用回転羽根の前記押出口から5〜30cmの範囲における回転の1周期分に伴って前記押出口側に圧送される体積を一定とした前記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の土練機。
【発明の効果】
【0021】
上記[1]の構成の土練機によれば、土練機の押出口側において、スクリューが整流用回転羽根を備えた整流部を有している。そしてこの整流用回転羽根は、回転軸中心線を通る平面上の断面形状での前記押出口側の面と、前記回転軸中心線とのなす角度が前記押出口に近づくに従って漸次減少するように設けられている。このため、回転羽根の推力によって坏土内部の密度差が生じて不均一となる問題を減少することができる。整流用回転羽根は、回転軸中心線とのなす角度を減少することで、柱状体内部のフローパターンの湾曲を低減できる。
【0022】
上記[2]の構成によれば、整流用回転羽根の回転軸方向の間隔が、押出口に近づくに従って漸次増加するように設けられたため、ドラム内部で回転羽根に沿って螺旋状に移動する坏土が、螺旋状のまま積み重なるようにして一体化することを防ぐことができる。整流用回転羽根の間隔が増加することで、昇圧部内で螺旋状に移動する坏土が、整流部においてより密度の高低差の少ない均質な柱状体へ整流されていく。
【0023】
上記[3]の構成によれば、整流用回転羽根が、回転軸と垂直方向の断面形状において、回転軸中心線に対して回転対称となることで、柱状体内部の密度高低差によるフローパターンが回転対称となる。また、回転対称となることにより、坏土推進時に回転羽根が偏心することによる、回転羽根とドラムとの接触による設備故障のリスクを低減できる。
【0024】
上記[4]の構成によれば、整流用回転羽根が、回転軸と垂直方向の断面形状において、押出口に近づくに従ってドラムの径方向外側へ向かって漸次縮小するとともに、ドラム内壁に沿って伸張するように設けられるので、回転軸と垂直方向の断面形状において、整流用回転羽根がドラム内部の坏土をせん断する領域が減少し、密度の不均一を減少することができる。
【0025】
上記[5]の構成によれば、整流用回転羽根が、回転軸と垂直方向の断面形状において、押出口に近づくに従ってドラムの径方向外側へ向かって漸次縮小するとともに、ドラム内壁に沿って伸張して、押出口において円弧状になるように設けられたため、整流用回転羽根と、坏土が接する面での摩擦を減少し、柱状体の成形性を向上することができる。
【0026】
上記[6]の構成によれば、整流用回転羽根の押出口の端部から5〜30cm以上離れた範囲における回転の1周期分に伴って押出口側に圧送される体積を一定としたため、先端部までに坏土が飢餓状態となってスクリューの中で積層し坏土の粗密部分が発生するのを防ぐことができる。押出口の端部から0〜5cm以内の範囲においては、坏土がほぼ柱状になっており、この範囲で圧送または整流する必要はほとんどない。
【0027】
本発明の土練機によれば、土練機内部のスクリュー回転に伴う坏土密度の不均一化を防ぎ、均質性の高い良好な柱状体が得られるとともに、その柱状体を用いて、セラミックスハニカム構造体の押出成形を実施した場合、欠陥のないセラミックスハニカム構造体を容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものでないことはいうまでもない。
【0029】
本発明においては、土練機1を用いて柱状体を作製するが、本発明の実施の形態の土練機1の概略構成を、図1および図7を用いて以下に説明する。図1は土練機1の一例を示す概略構成図であり、セラミックス原料にバインダー等を所定量調合した後ニーダーなどで混練されて形成された粘土状の坏土がドラム2の供給口19に投入される。ドラム2内においてスクリュー4により坏土が混練され、回転しながら押出口20へ圧送される。
【0030】
図1に本発明の実施の形態の土練機1の概略構成を示す。この図において、土練機1は、セラミックス原料を含む坏土が内部に流入される供給口19と、回転軸6とその回転軸6に沿った螺旋状の回転羽根5とを有してこの回転羽根5の回転により内部に流入した坏土を混練しつつ圧送するスクリュー4と、坏土が柱状体として押出される押出口20と、を含むドラム2を有している。更に本発明の実施の形態の土練機1におけるこのスクリュー4は、ドラム2内部の供給口19側に設けられ、内部の坏土を混練しつつ圧送する昇圧部10と、ドラム内部の押出口20側に設けられ、回転軸6に螺旋状に沿って圧送される坏土を柱状体へとまとめる整流部11とを有している。そして更にこの整流部11において、回転軸6の中心線を通る平面による断面形状での回転軸中心線とのなす角度を押出口20に近づくに従って漸次減少するように設けられた整流用回転羽根7を備えている。この整流用回転羽根7が、ドラムの内壁との間で回転軸6に沿って圧送された螺旋状の坏土を円柱状にまとめる役割を果たす。また更に、整流部11において整流用回転羽根7の回転軸方向の間隔が、昇圧部における回転羽根の回転軸方向の間隔より長く設けられている。整流部11の一例を図7に、模式的一部拡大説明図として示す。
【0031】
上述した土本発明の実施の形態の土練機1を使用して原料坏土を混練、圧送しつつ坏土の柱状体に成形した場合、図2、図3に示すような従来の土練機30で生じていた坏土の粗密によるフローパターンの発生を抑制できる。本発明の実施の形態の土練機1においては、ドラム2内部のスクリュー4には回転羽根5が設けられており、この回転羽根5の回転により、昇圧部10で坏土を混練しつつ圧送し、続いてスクリュー4の整流部11に設けられた整流用回転羽根7によりドラム2内部で回転軸6の周囲で圧送された螺旋状の坏土の柱状体が積層されることなく一本の坏土の柱状体へと徐々に集約されていく。このため、フローパターンの発生を抑制できる。
【0032】
図16は、本発明の土練機のスクリュー先端構造中の坏土15の一例を示す模式的説明図である。また図17は、図2、図3に示すような従来の土練機30のスクリュー先端構造中の坏土31を示す模式的説明図である。図17に示すように、従来の土練機においては、スクリュー先端構造中の坏土31が螺旋状のまま圧送されて柱状体へ積層されるためにフローパターンが形成されていた。ところが、図16に示すように、本発明の土練機のスクリュー構造中の坏土15は、螺旋状に圧送されながらも整流用回転羽根によって次第に円柱状にまとめられるため、坏土の密度差によるフローパターンの形成を抑制することができる。
【0033】
図7は、本発明の土練機の一実施形態における整流部11の模式的一部拡大説明図である。図7に示すように、回転軸6は、テーパー状に先が細くなっており、同時にドラム2内部の容積を保つため、ドラム2の内径も、整流用回転羽根7の径も減少し、細くなっている。このドラム2内部の径、および整流用回転羽根7の径は、回転軸6のテーパー状の先端形状によって、変更可能なものでもあるが、必ずしもこれに準ずる必要はなく、所望の柱状体の径や、土練機の回転数等の運転条件、坏土が含むセラミックス原料等に応じても適宜変更可能なものとする。
【0034】
図7に示す整流部11には、整流用回転羽根7が回転軸6に沿って螺旋状に、回転軸6に対して回転対称に2条配置されている。整流用回転羽根が、2条であることや、回転対称であることは、坏土内部の品質安定に一定の効果があるが、必ずしも限定されるものではない。例えば、整流用回転羽根7が1条設けられた場合には、整流部11において、坏土が一体的に成形されるので、坏土内部の均一性がより保たれる。
【0035】
また、図7に示すように、整流用回転羽根7の回転軸中心線9を通る平面による断面形状において、回転軸中心線9と整流用回転羽根7の押出口20側の内表面とがなす角度(α、β、γ)を押出口20に近づくに従ってα、β、γの順に漸次減少させている。回転軸中心線9と整流用回転羽根7の内表面とがなす角度は、押出口20に近づく順にα、β、γとすると、α≧β≧γの関係を満たすことが好ましい。図8は、側面から見た整流用回転羽根7の回転軸中心線を通る平面での断面図である。これにより整流用回転羽根7がドラム2内部の螺旋状に移動する坏土を、最終的に得られる柱状体の長手方向、即ちドラム2内部で回転軸方向41に、徐々に伸ばした形状の円柱状へとまとめるように整流することができる。これにより、坏土の密度差によるフローパターンを減少させることができる。
【0036】
また更に、整流用回転羽根7の回転軸6方向の間隔を、押出口20に近づくに従って漸次増加させることが好ましい。即ち、整流用回転羽根7の送りピッチ1周期分を、押出口20に近づくに従って漸次増加させることが好ましい。ただし、押出口20から一定の距離の範囲(0〜30cm)では送りピッチが無限大となるため、この範囲は除外する。これにより、上述の回転軸中心線9と整流用回転羽根7とがなす角度を押出方向41に従って漸次減少させることによるフローパターンの減少の効果をより増加することができる。
【0037】
図9〜図11は、図7中の整流用回転羽根7の回転軸6と垂直方向な平面での断面形状の推移を示す。図9は、図7中のa−a線上での回転軸と垂直方向の断面形状を示す。また、図10は、図7中のb−b線上での回転軸と垂直方向の断面形状を示す。また更に図11は、図7中のc−c線上での回転軸と垂直方向の断面形状を示す。図9〜図11は、整流回転羽根7が押出口20に近づくに従って、ドラムの径方向外側へ向かって漸次縮小するとともに、ドラム内壁に沿って伸張し、押出口20において円弧状になるように設けられたことを示している。
【0038】
図13〜15は、図7の整流用回転羽根7が1条であった場合に上記図9〜11と同様に回転軸6と垂直な平面での断面形状の推移を示す。図13は図7の整流用回転羽根7が1条であった場合において、図7中のa−a線上での回転軸と垂直方向の断面形状を示す。また、図14は、図7の整流用回転羽根7が1条であった場合において、図7中のb−b線上での回転軸と垂直方向の断面形状を示す。また更に図15は、図7の整流用回転羽根7が1条であった場合において、図7中のc−c線上での回転軸と垂直方向の断面形状を示す。図13から図15は、整流回転羽根7が押出口20に近づくに従って、ドラムの径方向外側へ向かって漸次縮小するとともに、ドラム内壁に沿って伸張し、押出口において円弧状になるように設けられたことを示している。
【0039】
本発明の実施の形態の土練機1において、整流用回転羽根7は、押出口20の端部からドラム2の長手方向に内側に向かって5〜30cm以上離れた範囲における回転の1周期分に伴って押出口20側に圧送される体積を一定とすることが好ましい。このとき、押出口20側に圧送される体積を一定とするとは、単位時間当たりに圧送される体積の変動が0〜10%の範囲にあることをいう。これにより、先端部までに坏土が飢餓状態となってスクリューの中で積層し坏土の粗密部分が発生するのを防ぐことができる。ただし、押出口20の端部から長手方向の0〜5cm以内の範囲においては、坏土がほぼ柱状になっており、この範囲で圧送または整流する必要はほとんどないのでこの範囲内においては、上述の圧送される坏土の体積を一定とする記述からは除外するものとする。
【0040】
また、図11および、図15において示されるような、回転軸と垂直方向の断面形状が円弧状である整流用回転羽根7は、図12に示すように、円弧状の両端がつながって、断面形状が円環状となっていても良い。また、整流用回転羽根7が2条である場合に、図11において示されるような、回転軸と垂直方向の断面形状が円弧状である整流用回転羽根7は、図10の状態から一つの円弧状にまとまることなくドラム内壁に沿って伸長した二つの円弧状の形状であっても良い。
【実施例】
【0041】
坏土の柱状体を土練機を用いて押出成形する際に、スクリューに備え付けられた回転羽根の回転に伴って生じていたフローパターンを抑制する目的で、数種類の土練機を用いて実験を行った。ドラム内部で混練しつつ圧送するためのスクリューの構造を変化させる場合と、ドラム内部のスクリューより押出側にフローパターンを消失させる構造を設けた場合で比較検討した。以下、図面を参照しつつ、実施例1、比較例1〜4に用いた土練機の構造と得られた結果について記載する。
【0042】
(実施例1)本発明の実施の形態において上述した図1、図7に示すような形状の整流用回転羽根7を備えた土練機1を使用して坏土の柱状体を作成した。この坏土の柱状体を押出方向41に平行に図22に示すように中心部分を試験片18として切断し、その坏土の柱状体の切断面を観察した。実施例1の試験片18の模式的な側面図を図23に示す。図23中の矢印は柱状体の径方向14を示す。図23に示すように、柱状体の試験片18には不均質な筋は認められなかった。この試験片の両端を持ち曲げたときの状態を観察して行った曲げ試験をおこなったが、一様に伸展し、ワレは発生しなかった。
【0043】
(比較例1)比較例1として図2およびその一部を拡大した図3に示すような従来の土練機30を使用し、坏土31の柱状体を作成した。実施例1と同様にしてこの坏土31の柱状体を押出方向41に平行な中心部分を試験片38として切断し、その坏土の柱状体31の試験片38の断面を観察した。比較例1の土練機30を使用して得られた坏土31の柱状体の試験片38を図24に示す。図24に示す試験片38で確認できるように、坏土31の粗密部分で形成されたフローパターン17が明確に確認された。そして、比較例1の土練機30で得られた坏土31の柱状体の試験片38に対して実施例1と同様の曲げ試験を行ったところ、このフローパターン17に沿って試験片38が破断した。このことから、フローパターン17が生じた部分での柱状体の一体性(均質性)が低いことが確認された。
【0044】
(比較例2)比較例1の問題解消のため、図18に示すような土練機50を使用し、スクリュー54より先の部分でドラム2内径の縮小、拡大を実施することにより、坏土の柱状体に生じていたフローパターンの解消を試みた。比較例2の土練機50を使用して得られた坏土51の柱状体の試験片58を図25に示す。フローパターン17は押出し方向に伸展し変化したものの、フローパターン17は解消しなかった。比較例2の土練機50で得られた坏土51の柱状体の試験片58に対して実施例1と同様の曲げ試験を実施したところ、フローパターンの部分で試験片58が破断した。
【0045】
(比較例3)比較例1の改良のため、図19の土練機60に示すように、スクリュー64先端部の回転羽根を非連続状の回転羽根67にして、スクリュー先端部で坏土の再混練と、坏土の一体化を試みた。比較例3の土練機60を使用して得られた坏土61の柱状体の試験片68を図26に示す。図26に示すように、フローパターン17は薄くなったものの、依然として残存していた。比較例3の土練機60で得られた坏土61の柱状体の試験片68に対して実施例1と同様の曲げ試験を実施したところ、試験片68のフローパターンに沿った破壊は起きないものの、部分的に、フローパターン17に沿った切れが発生した。
【0046】
(比較例4)比較例1の改良のため、図20の土練機70に示すように、スクリュー74の先端部より押出口側のドラム2内部の、図20中に示す位置に、図21に示すような複数の細孔79を備えた細分板77を設置することにより、フローパターンの解消を試みた。比較例4の土練機70を使用して得られた坏土の柱状体の試験片78を図27に示す。その結果、フローパターンは発生しなかった。ところが、この坏土の柱状体を押出方向に垂直な平面で切断し、図28に示すような断面を観察すると、坏土の柱状体78にはハニカム状の筋80が見られた。比較例4の土練機70で得られた坏土の柱状体の試験片78に対して実施例1と同様の曲げ試験を実施したところ、ハニカム状の筋80に沿って試験片78が破断した。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の土練機は、特に、セラミックハニカム構造体の成形に用いるためのセラミックス原料を含む柱状体の作製に好ましく適用することができる。また、ドラム内部における坏土の密度の不均一化を防ぎ、均質性に優れる柱状体を作製できるので、セラミックハニカム構造体の成形だけでなく、その他の成形用柱状体の作製に好適に利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の土練機を示す概略構成図である。
【図2】従来の土練機を示す概略構成図である。
【図3】従来の土練機のスクリューの先端構造を示す模式的説明図である。
【図4】従来の土練機の図3中の破線部Aにおける坏土の密度分布を示す模式的説明図である。
【図5】従来の土練機で形成された柱状体内部のフローパターンを示す模式的断面図である。
【図6】図5の従来の土練機で形成された柱状体内部のフローパターン中の破線部Dにおける密度の高低を示す模式的断面拡大図である。
【図7】本発明の土練機のスクリューの整流部を模式的に示す側面図である。
【図8】本発明の土練機のスクリューの整流部を示す側面からの模式的断面図である。
【図9】図7中のa−a線上での回転軸に垂直な平面での断面形状を示すa−a断面図である。
【図10】図7中のb−b線上での回転軸に垂直な平面での断面形状を示すb−b断面図である。
【図11】図7中のc−c線上での回転軸に垂直な平面での断面形状を示すc−c断面図である。
【図12】図7中のc−c線上での回転軸に垂直な平面での断面形状の他の例を示すc−c断面図である。
【図13】図7において整流用回転羽根が1条である場合の図7中のa−a線上での回転軸に垂直な平面での断面形状を示すa−a断面図である。
【図14】図7において整流用回転羽根が1条である場合の図7中のb−b線上での回転軸に垂直な平面での断面形状を示すb−b断面図である。
【図15】図7において整流用回転羽根が1条である場合の図7中のc−c線上での回転軸に垂直な平面での断面形状の他の例を示すc−c断面図である。
【図16】本発明の土練機のスクリュー先端構造中の坏土の一例を示す模式的説明図である。
【図17】従来の土練機のスクリュー先端構造中の坏土の一例を示す模式的説明図である。
【図18】比較例2の土練機を示す概略構成図である。
【図19】比較例3の土練機を示す概略構成図である。
【図20】比較例4の土練機を示す概略構成図である。
【図21】細分盤を示す模式的平面図である。
【図22】坏土中の試験片の位置を示す押出口方向から見た柱状体の模式的断面図である。
【図23】実施例の土練機で得られた柱状体の試験片の模式的側面図である。
【図24】比較例1の土練機で得られた柱状体の試験片の模式的側面図である。
【図25】比較例2の土練機で得られた柱状体の試験片の模式的側面図である。
【図26】比較例3の土練機で得られた柱状体の試験片の模式的側面図である。
【図27】比較例4の土練機で得られた柱状体の試験片の模式的側面図である。
【図28】比較例4の土練機で得られた柱状体の模式的断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1:土練機、2:ドラム、4:スクリュー、5:回転羽根、6:回転軸、7:整流用回転羽根、9:回転軸中心線、10:昇圧部、11:整流部、14:坏土の径方向、15:柱状体、16:柱状体中心線、17:フローパターン、18:試験片、19:供給口、20:押出口、19:試験片、24:スクリュー回転方向、30:土練機、31:坏土、34:スクリュー、35:回転羽根、36:回転軸、38:試験片、41:坏土押出方向、42:ドラム径方向、43:ドラム内壁、50:土練機、51:坏土、54:スクリュー、55:回転羽根、56:回転軸、58:試験片、60:土練機、61:坏土、64:スクリュー、65:回転羽根、66:回転軸、67:非連続状の回転羽根、68:試験片、70:土練機、71:坏土、74:スクリュー、75:回転羽根、76:回転軸、77:細分盤、78:試験片、79:細孔、80:ハニカム状の筋。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス原料を含む坏土が内部に流入される供給口と、前記坏土が柱状体として押出される押出口と、回転軸と前記回転軸に沿った螺旋状の回転羽根とを有して前記回転羽根の回転により内部に流入した前記坏土を混練しつつ圧送するスクリューと、を含むドラムを備え、
前記スクリューが、前記ドラム内部の前記供給口側に設けられ、前記坏土を混連しつつ圧送する昇圧部と、前記ドラム内部の前記押出口側に設けられ、前記回転軸に沿って圧送された螺旋状の前記坏土を円柱状にまとめるための整流部と、を有し、
前記整流部が、前記回転軸中心線を通る平面上の断面形状での前記押出口側の面と、前記回転軸中心線とのなす角度を前記押出口に近づくに従って漸次減少するように設けられた整流用回転羽根を有し、
前記整流用回転羽根の前記回転軸方向の間隔が、前記昇圧部における前記回転羽根の前記回転軸方向の間隔より長く設けられた土練機。
【請求項2】
前記整流用回転羽根の前記回転軸方向の間隔が、前記押出口に近づくに従って漸次増加するように設けられた請求項1に記載の土練機。
【請求項3】
前記整流用回転羽根が、前記回転軸と垂直方向の断面形状において、前記回転軸中心線に対して回転対称となるように2条設けられた請求項1または2に記載の土練機。
【請求項4】
前記整流用回転羽根が、前記回転軸と垂直方向の断面形状において、前記押出口に近づくに従って前記ドラムの径方向外側へ向かって漸次縮小するとともに、前記ドラム内壁に沿って伸張するように設けられた請求項1〜3のいずれか1項に記載の土練機。
【請求項5】
前記整流用回転羽根が、前記回転軸と垂直方向の断面形状において、前記押出口に近づくに従って前記ドラムの径方向外側へ向かって漸次縮小するとともに、前記ドラム内壁に沿って伸張して、前記押出口において円弧状になるように設けられた請求項1〜4のいずれか1項に記載の土練機。
【請求項6】
前期整流用回転羽根の前記押出口から0〜30cmの範囲における回転の1周期分に伴って前記押出口側に圧送される体積を一定とした請求項1〜5のいずれか1項に記載の土練機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2009−226594(P2009−226594A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70957(P2008−70957)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】