説明

土質改良材、土質改良方法及び改良土

【課題】軟弱なシルト系粘性土の改質を行うことができ、リサイクル品の使用が可能でエネルギー効率の高い土質改良材、土質改良方法及び改良土を提供する。また、備北層群を形成する備北層群粘性土の土質改良に好適な土質改良材及び土質改良方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る土質改良材は、生石灰と鉄鋼スラグからなり、シルト系粘性土1m当たり添加される生石灰が質量10kg以上、かつ、生石灰と鉄鋼スラグが合計質量で25〜70kgであるものである。シルト系粘性土は、軟弱な海成層から成る備北層群粘性土を使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弱なシルト系粘性土についての土質改良材、土質改良方法及び改良土に係り、特に備北層群を形成するシルト系粘性土に好適に使用することができる土質改良材、土質改良方法及び改良土に関する。
【背景技術】
【0002】
軟弱な土壌の土質改良材又は土質改良方法として、セメント系のもの、あるいは石灰系のものをはじめ種々の材料を利用した土質改良材又は土質改良方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に、大量の軟弱土を、比較的少ない添加量の改良材にて減容化させ中性領域で改良し、また、土工材料としても使用可能な土壌に改良する、経済的な軟弱土の改良方法として、石こう100重量部に対して酸化マグネシウムを20〜100重量部混合してなる改良材を軟弱土1mに対して50〜200kg添加する軟弱土の改良方法が提案されている。
【0004】
特許文献2に、水を含んだ粘土、シルトなどの低品質な土に、主材の生石灰と助材の石炭灰を添加、混合してなる砂状の改良土が提案されている。そして、従来の石炭灰(フライアッシュ)を利用した土質改良法においては、第3、4種建設発生土、泥土、浚渫土など細粒分を多く含む低品質な土を改良して、1週間位で一軸圧縮強度qu=250KN/m以上の改良土に改良する場合、生石灰を3.0〜5.0%程度添加する必要があったけれども、この発明によると、低品質な土(特に含水率15〜60%)に、生石灰を主材とし、助材として石炭灰を好ましくは10〜30%(特に好ましくは15〜20%)程度(低品質土重量比)添加すると、生石灰の添加量は1.0〜3.0%(特に好ましくは1.5〜2.0%)程度にまで減らすことができることが開示されている。
【0005】
また、特許文献3に、トンネル工事、上水道や下水道工事等の工事現場で発生した泥土、湖沼や河川における浚渫泥土等の処理泥土の一軸強度を高めることができる土質改良材が提案されている。すわちち、半水石膏、及び高炉スラグを含有した土質改良材であって、前記半水石膏と前記高炉スラグの重量混合比が50:50〜70:30であり、前記高炉スラグに対して消石灰が、0.1〜2.0重量%添加されてなる土質改良材が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004-278133号公報
【特許文献2】特開2001-55756号公報
【特許文献3】特開2004-315662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1又は3に係る土質改良材は、生石灰を土質改良材として利用すると、土壌がアルカリ性になり盛土材、埋戻し材、園芸用度には適さないということから提案されたものであるが、元々酸性土壌の我国においては生石灰を土質改良材として利用することは必ずしも不利益とは言えず、実際に生石灰は広く土質改良材として利用されている。しかしながら、生石灰はその製造のために多くのエネルギーを消費するものであり、また土壌のアルカリ度の過剰な上昇を防止するためにも、土質改良に使用する生石灰量は少なくするのが望ましい。
【0008】
一方、特許文献2の提案に係る土質改良材のような石炭灰を利用する土質改良材又は土質改良方法は、廃棄物である石炭灰のリサイクル利用をするもので好ましい。しかしながら、さらに少ない量の土質改良材により効率よく土質を改良することができる土質改良材又は土質改良方法が求められている。
【0009】
また、シルト系粘性土であるが海成層からなる備北層群のような軟弱なシルト系粘性土の土質改良について提案されたものはない。備北層群が広範囲にわたる広島県北部において、その土質改良を好適に行うことができる土質改良材又は土質改良方法が求められている。
【0010】
本発明は、このような要請及び問題点に鑑み、軟弱なシルト系粘性土の改質を行うことができ、リサイクル品の使用が可能でエネルギー効率の高い土質改良材、土質改良方法及び改良土を提供することを目的とする。また、備北層群を形成する備北層群粘性土の土質改良に好適に使用される土質改良材及び土質改良方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る土質改良材は、生石灰と鉄鋼スラグからなり、シルト系粘性土1m当たり添加される生石灰が質量10kg以上、かつ、生石灰と鉄鋼スラグが合計質量で25〜70kgとされるものである。
【0012】
また、本発明に係る改良土は、シルト系粘性土と、該シルト系粘性土1m当たり生石灰が質量10kg以上、かつ、生石灰と鉄鋼スラグが合計質量で25〜70kg添加されてなるものである。そして、この発明は、シルト系粘性土として備北層群粘性土を対象にすることができる。
【0013】
また、本発明に係る土質改良方法は、シルト系粘性土1m当たり10kg以上の生石灰を添加し、かつ、生石灰と鉄鋼スラグを合計質量で25〜70kg添加することにより実施される。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る土質改良材又は土質改良方法は、生石灰とリサイクル品である鉄鋼スラグを利用するものであり、より少ない生石灰量及び生石灰と鉄鋼スラグの合計量で軟弱なシルト系粘性土の改質を行うことができる。また、この土質改良材を用いてCBR値が数%以下の備北層群粘性土をCBR値が10%以上の改良土に改質することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る土質改良材の実施の形態について説明する。本発明に係る土質改良材は、生石灰と鉄鋼スラグからなり、シルト系粘性土1m当たり添加される生石灰が質量10kg以上、かつ、生石灰と鉄鋼スラグとの合計質量で25〜70kgである土質改良材である。
【0016】
本発明において、生石灰、鉄鋼スラグは特に限定されない、市販されているものを使用することができる。なお、鉄鋼スラグは、盛土への使用、経済性等を考慮すると高炉徐冷スラグが好ましい。
【0017】
シルト系粘性土とは、例えば、シルト成分が質量比で90%以上、CBR値が3%未満の粘性土であり、本発明はこのような軟弱なシルト系粘性土に適用することができる。
【0018】
本発明に係る土質改良材は、このようなシルト系粘性土1m当たり添加される質量が、生石灰について質量10kg以上で、かつ、生石灰と鉄鋼スラグについて合計質量25〜70kgとなるものである。すなわち、本土質改良材は、生石灰がシルト系粘性土1m当たり質量10kg以上加えられてなる。これにより、図1及び2に示すように、鉄鋼スラグの添加の効果が発揮され、より少ない生石灰量で土質を改質することができる。
【0019】
図1は、横軸にシルト系粘性土1m当たり添加される鉄鋼スラグの質量を示し、縦軸にCBR値を示す。図中の数字は、シルト系粘性土1m当たり添加される生石灰の質量を示す。図2は、横軸にシルト系粘性土1m当たりの生石灰及び鉄鋼スラグの合計質量を示し、縦軸にCBR値を示す。図中の記号及び数字、例えば図中の(○ 10)は、シルト系粘性土1m当たりの生石灰の質量を10kgに固定し、鉄鋼スラグのシルト系粘性土1m当たりの質量を生石灰の質量比で0.25〜3倍に変化させた場合を示す。すなわち、生石灰量を一定に固定し、生石灰と鉄鋼スラグの組成割合を変化させて添加した場合を示す。なお、生石灰のみ(鉄鋼スラグなし)の場合を図2に併記した(図中の▽生石灰)
【0020】
図1によると、各CBR曲線は概して右肩上がりの直線状をしている。そして、シルト系粘性土1m当たりの生石灰の量が、30kg以下の場合はわずかに上に凸状、45kg以上の場合はわずかに下に凸状、35又は40kgの場合はほぼ直線状になっている。また、CBR曲線の勾配をみると、シルト系粘性土1m当たりの生石灰の量が5kgの場合の勾配は1/10以下、10kgの場合の勾配は10/35以下、40kgの場合の勾配は9/10、45kgの場合の勾配は10/10以上であり、生石灰が10kg曲線を境にして、勾配が急速に大きくなっている。すなわち、生石灰に加えて鉄鋼スラグを添加することによってCBR値を向上させることができ、その向上度合いは、生石灰の量を多くするほど高くすることができることが分かる。
【0021】
一方、一般に改良土のCBR値は8%以上必要とされるが、安全率を考慮して、例えばCBR値を10%とする場合には、図2によると、生石灰の質量が10kg以上である場合には、生石灰と鉄鋼スラグの合計質量を25〜35kgとすればよいが、生石灰の量が5kgの場合には、生石灰と鉄鋼スラグの合計質量を70kg以上にしなければならないことが分かる。
【0022】
ずなわち、生石灰の質量は、シルト系粘性土1m当たり10kg以上とするのがよい。そして、生石灰の質量を10kgを越えてさらに増加すれば、生石灰の質量を増加させるほど鉄鋼スラグを追加することによりCBR値を一層高めることができる。また、シルト系粘性土1m当たりの生石灰量を40kg以上にすると、鉄鋼スラグの添加により生石灰と同等以上にCBR値を向上させることができる。したがって、本発明によれば、できるだけ少ない生石灰量で、また、より少ない生石灰と鉄鋼スラグ量で所定以上のCBR値(8〜10%、あるいは必要に応じて12%)を有する改良土を製造することができるようになる。
【0023】
また、本発明に係る土質改良材は、生石灰と鉄鋼スラグの合計質量がシルト系粘性土1m当たり25〜70kgとなるものである。一般に改良土の目標CBR値は20%とされるが、図2によると、シルト系粘性土1m当たり生石灰と鉄鋼スラグの合計質量を40〜60kgにするとCBR値を20%にできることが分かる。さらに、シルト系粘性土1m当たり生石灰と鉄鋼スラグの合計質量を50〜70kgにすればCBR値を30%にできることが分かる。なお、シルト系粘性土1m当たりの生石灰の量が40〜50kgを越えると、土質改良材を添加したときの発熱量が高く、また、改質土が変色するので、生石灰の量は40〜50kg以下にするのが好ましい。
【0024】
なお、上記図1及び2は、表1に示す締め固めた土のCBR試験の結果と、図3及び図4のグラフから求めた。CBR試験は、JIS A1210、JIS A1211に基づいて行った。CBR試験に使用したシルト系粘性土は備北層群粘性土であった。その備北層群粘性土の特性値を表2に示す。生石灰は足立石灰工業株式会社製アートライムAL−100、鉄鋼スラグは東方金属株式会社製高炉徐冷スラグHMS−25を使用した。含水比試験はJIS A1203に基づいて、土粒子の密度試験はJIS A1202に基づいて行った。なお、表2によると、このシルト系粘性土の湿潤密度は、1.886g/cmであるから、シルト系粘性土1m当たり生石灰と鉄鋼スラグの合計質量が50kgであると、その質量%は2.65%となり、3%以下である。また、一般にCBR値が3%未満の粘性土は軟弱粘性土といわれているが、本シルト系粘性土の平均CBR値は、0.8%であり、0.6〜0.9%の範囲にあった。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
図3は、表1のCBR試験結果より求めたグラフで、鉄鋼スラグのシルト系粘性土1m当たりに添加する質量をパラメータとし、シルト系粘性土1m当たりの生石灰の質量とCBR値の関係を示すグラフである。横軸が生石灰の質量、縦軸がCBR値を示し、図中の数字が鉄鋼スラグの質量である。
【0028】
図4は、表1のCBR試験結果及び図3を基に求めたグラフで、シルト系粘性土1mに添加される生石灰の質量と鉄鋼スラグの質量に対して得られるCBR値を表したグラフである。横軸が生石灰の質量、縦軸が鉄鋼スラグの質量を示し、図中の数字がCBR値である。
【0029】
以上本発明に係る土質改良材について説明した。本土質改良材によりシルト系粘性土を効果的に改質することができる。すなわち、シルト系粘性土1m当たり10kg以上の生石灰を添加し、かつ、生石灰と鉄鋼スラグを合計質量で25〜70kg添加することにより、軟弱なCBR値が3%未満のシルト系粘性土をCBR値が8〜30%のものに改質することができる。なお、生石灰と鉄鋼スラグの添加方法は特に限定されないが、先ず生石灰を添加し、次に鉄鋼スラグを添加する方が、含水比を軽減し、ほぐされた状態で鉄鋼スラグを混合することができるから好ましい。
【実施例1】
【0030】
自然含水比が22.1%の備北層群粘性土の改質効果試験を行った。備北層群粘性土1m当たり生石灰を15kg、鉄鋼スラグを20kg添加して備北層群粘性土を改質した(設計CBR値が12%)。この改質土を巻きだし厚20cmの盛土にし、その含水比を種々に調整して10トンタイヤローラで転圧した。盛土は含水比が28.1%で破壊した。なお、生石灰及び鉄鋼スラグは、表1に示すCBR試験に使用したものを用いた。生石灰及び鉄鋼スラグの備北層群粘性土への添加は、株式会社小松製作所製自走式土質改良機リテラBZ210を使用して行った。含水比試験はJIS A1203に基づいて行った。
【0031】
また、比較のため、備北層群粘性土1m当たり生石灰を15.0kg添加して備北層群粘性土を改質し(設計CBR値が3.2%)、同様な試験を行った。この場合、盛土は含水比が23.6%で破壊した。上記結果によると、本発明係る改質土の方が、安定性が高いことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】シルト系粘性土1m当たりの生石灰質量をパラメータとする鉄鋼スラグ質量とCBR値の関係を示すグラフである。
【図2】シルト系粘性土1m当たりの生石灰と鉄鋼スラグの合計質量とCBR値の関係を示すグラフである。
【図3】シルト系粘性土1m当たりの鉄鋼スラグ質量をパラメータとする生石灰質量とCBR値の関係を示すグラフである。
【図4】シルト系粘性土1mに添加する生石灰の質量及び鉄鋼スラグの質量に対して得られるCBR値を表したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生石灰と鉄鋼スラグからなり、シルト系粘性土1m当たり添加される生石灰が質量10kg以上、かつ、生石灰と鉄鋼スラグが合計質量で25〜70kgであるシルト系粘性土の土質改良材。
【請求項2】
シルト系粘性土と、該シルト系粘性土1m当たり生石灰が質量10kg以上、かつ、生石灰と鉄鋼スラグが合計質量で25〜70kg添加されてなる改良土。
【請求項3】
シルト系粘性土が、備北層群粘性土であることを特徴とする請求項2に記載の改良土。
【請求項4】
シルト系粘性土1m当たり質量10kg以上の生石灰を添加し、かつ、生石灰と鉄鋼スラグを合計質量で25〜70kg添加する土質改良方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−133374(P2008−133374A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−320954(P2006−320954)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(506396962)株式会社大歳組 (1)
【Fターム(参考)】