説明

圧力センサ

【課題】圧力センサのケーシングの被装着面への装着を検出する手段を有する、空気と接触することなく体外循環回路内の圧力を測定することができる圧力センサを提供すること。
【解決手段】空気出入口と空気室を有する空気室側容器と、液体流入口と液体流出口と液体室を有する液体室側容器と、前記空気室側容器と前記液体室側容器に挟まれて空気室と液体室を区画し、空気室内と液体室内の圧力差に応じて変形する可撓性隔膜とを有する圧力センサのケーシングと、該ケーシングが装着される被装着面と、該ケーシングが該被装着面に装着されたことを検知する装着検知手段と、該被装着面に開口している、前記空気出入口と接続可能な連通部が接続された空気室内圧力測定手段とを有し、前記装着検知手段がケーシングの装着を検知しているときに、前記空気出入口と前記連通部とが気密に接続されるように構成されていることを特徴とする圧力センサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体、特に体液或いは薬液を流通させる体外循環回路内の圧力を測定する圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の体内から血液を取り出し、血液処理装置を用いて血液の体外処理を行い、処理された血液を体内に戻す体外循環療法においては、通常、体外循環回路内の圧力を測定するための圧力センサが配置される。
【0003】
体外循環回路内の圧力を測定する手段の一例として、特許文献1には、体外循環療法で多用されているドリップチャンバーを用いた圧力測定方法が記載されている。
【0004】
図9はドリップチャンバーを用いた圧力測定方法の構成の一例を示す概略構成図である。ドリップチャンバー2は、体外循環回路100の途中に配置され、ドリップチャンバー2の上部から分岐した分岐チューブ110と、分岐チューブ110の末端に配された圧力測定手段62とから構成されている。
【0005】
図9に示すようなドリップチャンバー形式の圧力測定方法においては、ドリップチャンバー2内にある程度の量の、例えば体積の半分程度の体液或いは薬液を貯留し、残り半分は空気層として体外循環療法を施行する。空気を介することで、圧力測定手段62が体液或いは薬液と直接接触することなく、体外循環回路100内の圧力を測定している。
【0006】
しかしながら、ドリップチャンバー2は、空気を介して圧力の測定を行うため、体液、特に血液と空気が接触することで、凝固を誘発してしまう可能性があった。
【0007】
このような問題点を解消する圧力センサの一例として、特許文献2には、体液或いは薬液と空気との接触を回避する圧力の測定方法として、可撓性隔膜を介して体外循環回路内の圧力を測定する圧力測定方法が記載されている。
【0008】
図10は隔膜を介して体外循環回路内の圧力を測定する圧力測定方法の構成の一例を示す概略構成図である。
【0009】
従来の圧力センサ3は体外循環回路100の途中に配置され、空気出入口50を持つ空気室30、液体流入口40と液体流出口41を有する液体室10、空気室30と液体室10に挟まれて空気室30と液体室10を区画し、空気室内と液体室内の圧力差に応じて変形する可撓性隔膜20、とから構成されるケーシング200と、空気室側容器の空気出入口50に連通部51を介して接続され、液体室内の圧力を、可撓性隔膜20を介して空気室側で測定する圧力測定手段60、とより構成される。従来の圧力センサ3は、液体室10の圧力の変化により、可撓性隔膜20が変形して空気室30の圧力が液体室内圧力と相関して変化するので、空気室内の圧力を測定し、この値を変換することにより液体室10内の圧力を測定している。
【0010】
しかしながら、図10に示すような圧力センサは、使い捨てのディスポーサブル製品であり、使用時毎に、ケーシングを、圧力測定手段に接続する必要がある。従って、この接続が不完全である場合、ケーシングと圧力測定手段の間で漏れが生じ、圧力を正しく測定することが不可能となってしまう。さらには、漏れが生じることで、空気室側の容積が無限となり、体外循環回路100内の圧力が陰圧となった場合、可撓性隔膜20が液体室側に向かって大きく変形し、液体流入口40または液体流出口41を塞いでしまい、体液あるいは薬液が流通しなくなり、体液の凝固を誘発してしまう可能性があった。
【0011】
【特許文献1】特開2002−282355号公報
【特許文献2】特開平09−024026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記の従来技術の問題点に鑑み、圧力センサのケーシングの被装着面への装着を検知する手段を有する、空気と接触することなく体外循環回路内の圧力を測定することができる圧力センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は上記の課題を解決すべく鋭意検討したところ、圧力センサのケーシングが被装着面に装着されていることを検知した時に、圧力センサのケーシングに設けられた空気出入口と空気室内圧力測定手段に連通する連通部とが気密に接続されるように構成された圧力センサを用いれば、空気出入口と連通部を簡便かつ確実に接続できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち本発明は以下の構成からなる。
【0015】
(1)
空気出入口と空気室を有する空気室側容器と、液体流入口と液体流出口と液体室を有する液体室側容器と、前記空気室側容器と前記液体室側容器に挟まれて空気室と液体室を区画し、空気室内と液体室内の圧力差に応じて変形する可撓性隔膜とを有する圧力センサのケーシングと、該ケーシングが装着される被装着面と、該ケーシングが該被装着面に装着されたことを検知する装着検知手段と、該被装着面に開口している、前記空気出入口と接続可能な連通部が接続された空気室内圧力測定手段とを有し、前記装着検知手段がケーシングの装着を検知しているときに、前記空気出入口と前記連通部とが気密に接続されるように構成されていることを特徴とする圧力センサ。
【0016】
(2) 前記装着検知手段が、前記圧力センサのケーシングに備えられていることを特徴とする(1)に記載の圧力センサ。
【0017】
(3) 前記装着検知手段が、前記被装着面に備えられていることを特徴とする(1)に記載の圧力センサ。
【0018】
(4) 前記被装着面の連通部の開口部周囲に前記ケーシングに向かって力を加える緩衝部が設けられており、かつ該緩衝部が前記空気出入口と連通部の接続方向に移動可能となっていることを特徴とする(1)から(3)の何れかに記載の圧力センサ。
【0019】
(5) 前記装着検知手段が、前記ケーシングが被装着面に装着された時の前記ケーシングと被装着面との接触を検知する手段であることを特徴とする(1)から(4)の何れかに記載の圧力センサ。
【0020】
(6) 前記装着検知手段が、前記ケーシングが被装着面に沿って回転してあらかじめ設定された位置に装着されたことを検知する手段であることを特徴とする(1)から(4)の何れかに記載の圧力センサ。
【0021】
(7) 前記圧力センサが前記ケーシングの周囲に回転体を有し、前記装着検知手段が、該回転体が被装着面に沿って回転してあらかじめ設定された位置に装着されたことを検知する手段であることを特徴とする(1)から(4)の何れかに記載の圧力センサ。
【発明の効果】
【0022】
本発明の圧力センサによれば、空気と接触することなく体外循環回路内の圧力を測定する場合に、ケーシングの空気出入口が空気室内圧力測定手段に連通部を介して確実かつ所要の気密性を確保して接続された否かを装着検出手段からの検出信号に基づいて判断できる。更に本発明の圧力センサによれば、ケーシングの液体流入口または液体流出口の閉塞に伴う体液あるいは薬液の凝固を回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る圧力センサの実施態様を説明するが、本発明はこれらの態様のみに限定されるものではない。
【0024】
図1は本実施形態に係る圧力センサの模式図である。圧力センサ1は、空気出入口50を持つ空気室30、液体流入口40と液体流出口41を有する液体室10、空気室30と液体室10に挟まれて空気室30と液体室10を区画し、空気室30内と液体室10内の圧力差に応じて変形する可撓性隔膜20とから構成される、体外循環回路100の途中に配置されたケーシング200を有する。更に圧力センサ1は、空気出入口50に被装着面300に開口している連通部51を介して接続され、液体室10内の圧力を、可撓性隔膜20を介して空気室側で測定する空気室内圧力測定手段60と、ケーシング200が装着される被装着面300と、ケーシング200と被装着面300の密着を判断する装着検知手段210とから構成される。
【0025】
圧力センサ1は、体外循環回路100の途中に配置され、体外循環回路100内の圧力を測定する。圧力センサ1は、液体室10の圧力の変化により、可撓性隔膜20が変形して空気室30の圧力が液体室内圧力と相関して変化するので、空気室30内の圧力を測定し、この値を変換することにより液体室10内の圧力を測定している。
【0026】
ここで、ケーシング200は、連通部51を介して空気出入口50と空気室内圧力測定手段60とが連通する。ここで圧力センサ1は、ケーシング200が装着検知手段210に接触した時に、連通部51と空気出入口50が気密に接続されるように構成されている。
【0027】
空気出入口50と連通部51との接続方法は、ルアーコネクタによる方式、カプラーによる方式、スリーブ状の管の挿入などを挙げることができるが、空気出入口50と連通部51を気密に接続できるものであれば何でもよく、特に限定するものではない。
【0028】
また、装着検知手段210は、図1において、被装着面300に設置されているが、ケーシング200に設置されていても、上記効果を損なうものではないが、通常ケーシング200は上記したように使い捨ての製品であるため、装着検知手段のような高価な部品をケーシング側に設置することはコストの面から不利であり、被装着面300に設置されていることが望ましい。
【0029】
装着検知手段210は、ケーシング200と被装着面300との接合を検知できるものであれば何でもよく、例えば、マイクロスイッチやホール素子等を挙げることができるが、特に限定するものではない。また図1においては、装着検知手段210は被装着面300の表面に配置され、ケーシング200の空気室30の表面と接触するように記載されているが、どの位置に配置されていても上記効果を損なうものでなければ問題なく、特に限定するものではない。
【0030】
図1において、ケーシング200は、被装着面300に対して90°の角度を成して装着されているが、例えば図2に示すように、70°の角度でも問題ない。望ましくは70°〜90°の角度から装着されること、さらに望ましくは80°〜90°の角度で装着されること、最も望ましくは装着性・ケーシング200と被装着面300の加工性から、90°の角度から装着されることが好ましい。
【0031】
図1において、ケーシング200の装着面と被装着面300の接合面はどちらも平面であるが、空気出入口50と連通部51を気密に接続できる形状であれば問題なく、例えば波状やサイン波状などを挙げることができ、いずれにおいても上記発明の効果を低下させるものではなく、特に限定するものではない。
【0032】
圧力センサ1における、ケーシング200と被装着面300との接合部は、図1においては、空気出入口50と連通部51のみであるが、図3に示すように、ケーシング200の固定器具220が配置されていることがさらに望ましい。固定器具220がケーシング200を固定することにより、治療中にケーシング200が被装着面300から脱落することなく圧力を測定することが可能となる。
【0033】
固定器具220は図3においては、被装着面300に設置されているが、ケーシング200側に設置されていても上記効果を低下させるものではなく、特に限定するものではない。また固定器具220はケーシング200を被装着面300から脱落することを防げるものであれば何でもよく、特にその形状を限定するものではない。
【0034】
図1において、ケーシング200と空気室内圧力測定手段60は空気出入口50から直接、連通部51に接続されるが、図4に示すように、空気出入口50にガイドチューブ52が配置され、その先端に連通部接続口53を配置し、その部分と連通部51が接続されるような形状であっても問題はなく、この場合、連通部接続口53と被装着面300との接続が装着検知手段210により検知されれば問題ない。
【0035】
また図4には記載されていないが、図3に示したような固定器具を用いて連通部装着口53を固定するものがあることが望ましい。また連通部接続口53の形状は、図1の説明において記した空気出入口50と同等の形状であれば問題はない。加えて、装着検知手段210は連通部接続口53に設置されていても上記効果を低下させるものではない。
【0036】
図3において、ケーシング200は、被装着面に対し、垂直方向に装着することで、固定器具220に装着されるが、図5に示すように、カギ型の固定器具220にケーシング200を差込み、被装着面300に沿って回転させることで固定する手段を用いても上記効果を低下させるものではなく、特に限定するものではない。
【0037】
また図6に示すように、ケーシング200が回転し終えた場所に装着検知手段220を配置しても上記効果を低下させるものではなく、特に限定するものではない。
【0038】
ここで、ケーシング200は、体外循環回路100の途中に配置されているため、ケーシング200を回転させることは、体外循環回路全体を回転する必要があり、大きな労力を要する。そこで、図7に示すように、ケーシング200の周囲に回転体240を配置することで、ケーシング200を回転することなく、図5、6に示したような取付け方法が可能となる。
【0039】
図1〜図7に示したような装着方法の場合、空気出入口50または連通部接続口53と連通部51との接続に遊びがなく、製造誤差を非常に小さいものにしなければならない。そこで、図8に示すように、連通部51の先端に緩衝部250を設けることにより、接続部の大きさに余裕を持たせることが可能となる。
【0040】
緩衝部250はケーシング200の接続方向に動きかつ、ケーシング200に向かって力が加わるものであれば何でもよく、たとえばバネによる反力を用いたものを挙げることができるが、特に限定するものではない。また緩衝部250の動作方向をケーシングの接続方向に限定するため、移動ガイド260を設置することは、なお望ましい。
【0041】
(材質)
空気室30、液体室10の材質は、硬質・軟質は特に問わないが、液温や気温、液体室10および空気室30を変形させるような外的な力などの環境要因により、液体室10および空気室30の形状に変化が生じてしまうと、正しく体外循環回路100内の圧力を測定することが難しくなる。そのため、液体室10および空気室30の材質は硬質であることが好ましく、さらには患者の体液に直接または間接的に触れるため、生体適合性を有している材質が好ましい。例えば、塩化ビニル、ポリカーボネイト、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン等を挙げることができ、いずれにおいても好適に用いることができる。またその製造方法は特に限定するものではないが、インジェクション成型、ブロー成型、切削加工による成型などが例示できる。
【0042】
圧力によって少なくとも一部が変形する可撓性隔膜20の変形する部分(変形部)の材質は、硬質であると、圧力による変動量が小さくなり、体外循環回路100内の圧力を正確に測定することが難しくなることから、圧力に対して柔軟に変形する軟質な材質であることが望ましい。さらには患者の体液に直接または間接的に触れるため、生体適合性を有している材質が好ましい。例えば、ポリ塩化ビニル、シリコン系樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマーコンパウンド等を例示することができ、何れにおいても好適に用いることができる。それ以外の部分(変形しない部分)の材質に関しては、上記した液体室10および空気室30と同等の材質であれば特に問題はない。
【0043】
体外循環回路100、ガイドチューブ52の材質は、合成樹脂、金属およびガラス等の何れでも構わないが、製造コスト、加工性および操作性の観点から合成樹脂、特に熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリオフィレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、弗素系樹脂、シリコン系樹脂等、さらにはABS(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合体)樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネイト、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアセタール等を例示することができ、何れにおいても好適に用いることができる。なかでも、軟質素材は折れ曲がりや割れ等に強く、操作時の柔軟性に優れているため好ましく、組み立て性の理由から軟質塩化ビニルが特に好ましい。
【0044】
固定器具220、回転体240の材質は合成樹脂、金属およびガラス等の何れでも構わないが、操作性の観点から硬質であることが好ましく、また製造コスト、加工性および操作性の観点から合成樹脂、特に熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリオフィレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、弗素系樹脂、シリコン系樹脂等、さらにはABS(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合体)樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネイト、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアセタール等を例示することができ、何れにおいても好適に用いることができる。
【0045】
次に、連通部51は、空気室30と、空気室内圧力測定器具60までを連通するものであればなんでもよく、合成樹脂、金属およびガラス等の何れでも構わないが、製造コスト、加工性および操作性の観点から合成樹脂、特に熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、弗素系樹脂、シリコン系樹脂等、さらにはABS(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合体)樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネイト、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアセタール等を例示することができ、何れにおいても好適に用いることができる。なかでも、軟質素材は折れ曲がりや割れ等に強く、操作時の柔軟性に優れているため好ましく、組み立て性の理由から軟質塩化ビニルが特に好ましい。
【0046】
(接合方法)
液体室10および空気室30、体外循環回路100のそれぞれの接合方法は、特に限定はしないが、一般に合成樹脂の接合には、熱溶融接合や接着が挙げられ、例えば、熱溶融接合においては、高周波溶接、誘導加熱溶接、超音波溶接、摩擦溶接、スピン溶接、熱板溶接、熱線溶接などが挙げられ、接着剤の種類としては、シアノアクリレート系、エポキシ系、ポリウレタン系、合成ゴム系、紫外線硬化型、変性アクリル樹脂系、ホットメルトタイプ等を挙げる事ができる。
【0047】
また、可撓性隔膜20において、変形する部分(変形部)と、それ以外の部分(変形しない部分)との接合方法は特に限定しないが、一般に硬質な素材と軟質な素材の接合には、軟質な素材を硬質な素材が押さえ込むことによりシールする機械的シールや、上記に示したような熱溶融接合や接着などを挙げる事ができる。
【0048】
このような圧力センサ1は、成型、接合後そのままの状態で使用してもよいが、特に体外循環療法の医療用途においては、滅菌して利用する。滅菌方法は通常の医療用具の滅菌方法に準じるとよく、薬液、ガス、放射線、高圧蒸気、加熱等によって滅菌すればよい。
【0049】
[形状]
図1において、液体室10の断面形状は四角形であるが、ドーム形状や、多角形形状、台形等であっても特に問題はないが、液体の滞留の問題が生じ難い四角形断面であることが好ましく、更に好ましくはその四隅に丸みを帯びている事が最も好ましい。
【0050】
空気室30の断面形状はドーム形状であるが、四角形や、多角形形状であっても特に問題はないが、可撓性隔膜20が最も変形しやすいドーム形状である事が最も好ましい。
【0051】
また、図1において、液体室10の正面形状は円形であるが、楕円形や、多角形形状であっても特に問題はなく、また、点対称でなくても特に問題はないが、スムーズな液の流れを形成する円形でかつ点対称である形状が最も好ましい。
【0052】
加えて、空気室30の正面形状も図1において円形であるが、楕円形や、多角形形状であっても特に問題はないが、可撓性隔膜20が変形した際に追従しやすく、また成型のしやすい円形形状であることが最も好ましい。
【0053】
液体流入口40および、液体流出口41の形状は、特に限定するものではないが、接続される体外循環回路100に則した形状をしていることが好ましい。体外循環療法の中の一つである血液浄化療法においては、一般的に2mm〜5mm程度の内径の体外循環回路が選択される。体外循環回路100の断面形状は円形断面以外にも、楕円形や四角形、六角形を含む非円形断面であっても問題は無く、それに則して液体流入口40および、液体流出口41の形状が選択されれば問題はない。
【0054】
空気出入口50の形状は、特に限定するものではないが、接続される連通部51に則した形状をしていることが好ましい。連通部51の断面形状は円形断面以外にも、楕円形や四角形、六角形を含む非円形断面であっても問題は無く、それに則して空気出入口50の形状が選択されれば問題はない。
【0055】
図1において、可撓性隔膜20の断面形状は波状であるが、可撓性隔膜20を介して圧力を測定できるものであれば何でもよく、サイン波状、平板状などの形状であっても問題はない。また、成型・組み立て性の理由から、図1の圧力センサの正面図(A)のような可撓性隔膜20の中心を中心とした点対称であることが好ましく、その形状は正多角形や円形が挙げられるが、円形であることが最も好ましい。
【0056】
また図1において、液体流入口40および、液体流出口41の位置は一直線上に配置されているが、どのような位置に配置されていても、圧力測定に影響を与えるものではなく、特に限定するものではない。
【0057】
空気出入り口50は、空気室30において、可撓性隔膜20から最も遠い位置に配置されているが、どのような位置に配置されていても、圧力測定に影響を与えるものではなく、特に限定するものではない。
【0058】
(大きさ)
液体室10の大きさは、あまり大きいと、プライミングボリュームが増大してしまうが、あまり小さいと、体外循環回路内の圧力が陰圧となることによる可撓性隔膜20の変形量が多くとれないため、圧力測定範囲が小さくなるという問題が生じる。そのため、液体室10の大きさは、容積にして1cm〜10cm程度が好ましく、さらに好ましくは1cm〜5cm程度であり、最も好ましくは、1cm〜3cmである。
【0059】
空気室30の大きさは、あまり大きいと、陰圧時に可撓性隔膜20が液体室10側に大きく変形することで、陰圧側の圧力測定範囲が小さくなり、あまり小さいと陽圧時に可撓性隔膜20が空気室30に接触しやすくなり、陽圧側の圧力測定範囲が小さくなる。そのため、空気室30の大きさは、容積にして0.2cm〜1.0cmであることが好ましく、さらに好ましくは0.3cm〜0.8cmである。
【0060】
連通部51の容積は、大きすぎると、それに伴って空気室30と併せた容積が増加し、陰圧時に可撓性隔膜20が液体室10側に大きく変形することで、陰圧側の圧力測定範囲が小さくなり、
小さすぎると、空気出入り口50から空気室内圧力測定器具60までの距離が短くなり、取扱性を犠牲にしてしまう。そのため、連通部51の容積は1cm以下が好ましく、更に好ましくは、0.5cm以下であり、最も好ましくは0.2cm以下である。ここで、空気出入口50も含めた連通部51の容積が0cmである場合が理想ではあるが、圧力を測定する圧力測定器具60内にも少量の容積が存在するため0cmとなることはあり得ない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る圧力センサは、圧力センサのケーシングと被装着面との接続を確実に検出できるため、患者の体内から血液を取り出し、血液処理装置を用いて血液の体外処理を行い、処理された血液を体内に戻す体外循環療法において、安全に体外循環回路内の圧力を測定できるので、体外循環治療に有用に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の圧力センサの実施態様を示す正面図(A)と側面図(B)の模式図である。
【図2】本発明の圧力センサの別の実施態様を示す正面図(A)と側面図(B)の模式図である。
【図3】本発明の圧力センサの別の実施態様を示す正面図(A)と側面図(B)の模式図である。
【図4】本発明の圧力センサの別の実施態様を示す正面図(A)と側面図(B)の模式図である。
【図5】本発明の圧力センサの別の実施態様を示す正面図(A)と側面図(B)の模式図である。但し、図(A)と図(B)は独立である。
【図6】本発明の圧力センサの別の実施態様を示す正面図(A)と側面図(B)の模式図である。但し、図(A)と図(B)は独立である。
【図7】本発明の圧力センサの別の実施態様を示す正面図(A)と側面図(B)の模式図である。但し、図(A)と図(B)は独立である。
【図8】本発明の圧力センサの別の実施態様を示す正面図(A)と側面図(B)の模式図である。但し、図(A)と図(B)は独立である。
【図9】従来の圧力センサを示す模式図である。
【図10】従来の圧力センサを示す正面図(A)と側面図(B)の模式図である。
【符号の説明】
【0063】
1 …圧力センサ
2 …ドリップチャンバー
3 …従来の圧力センサ
10 …液体室
20 …可撓性隔膜
30 …空気室
40 …液体流入口
41 …液体流出口
50 …空気出入口
51 …連通部
52 …ガイドチューブ
53 …連通部接続口
60 …空気室内圧力測定手段
62 …圧力測定手段
100 …体外循環回路
200 …ケーシング
210 …装着検知手段
220 …固定器具
240 …回転体
250 …緩衝部
260 …移動ガイド
300 …被装着面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気出入口と空気室を有する空気室側容器と、
液体流入口と液体流出口と液体室を有する液体室側容器と、
前記空気室側容器と前記液体室側容器に挟まれて空気室と液体室を区画し、空気室内と液体室内の圧力差に応じて変形する可撓性隔膜とを有する圧力センサのケーシングと、
該ケーシングが装着される被装着面と、
該ケーシングが該被装着面に装着されたことを検知する装着検知手段と、
該被装着面に開口している、前記空気出入口と接続可能な連通部が接続された空気室内圧力測定手段とを有し、
前記装着検知手段がケーシングの装着を検知しているときに、前記空気出入口と前記連通部とが気密に接続されるように構成されていることを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
前記装着検知手段が、前記圧力センサのケーシングに備えられていることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記装着検知手段が、前記被装着面に備えられていることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記被装着面の連通部の開口部周囲に前記ケーシングに向かって力を加える緩衝部が設けられており、かつ該緩衝部が前記空気出入口と連通部の接続方向に移動可能となっていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記装着検知手段が、前記ケーシングが被装着面に装着された時の前記ケーシングと被装着面との接触を検知する手段であることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の圧力センサ。
【請求項6】
前記装着検知手段が、前記ケーシングが被装着面に沿って回転してあらかじめ設定された位置に装着されたことを検知する手段であることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の圧力センサ。
【請求項7】
前記圧力センサが前記ケーシングの周囲に回転体を有し、前記装着検知手段が、該回転体が被装着面に沿って回転してあらかじめ設定された位置に装着されたことを検知する手段であることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の圧力センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−259553(P2008−259553A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−102487(P2007−102487)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(000116806)旭化成クラレメディカル株式会社 (133)
【Fターム(参考)】