説明

圧力センサ

【課題】耐腐蝕性に優れる安価な圧力センサであって、圧力検出範囲の拡大や圧力以外の検出機能を付加することのできる、新規な圧力センサを提供する。
【解決手段】シリコン基板11の一方の表面Saに、平坦な底面を有する凹部11tが形成され、圧力によって変形可能なダイヤフラム12が、凹部11tを蓋するようにして配置され、凹部11tとダイヤフラム12とで密閉空間Vcが形成され、密閉空間Vc内にガスが封入されてなり、凹部11tの底面側に、加熱素子Hと測温素子M1,M2とが配置され、シリコン基板11のもう一方の表面Sbに、加熱素子Hおよび測温素子M1,M2に接続する電極13が配置されてなり、ダイヤフラム12に印加される圧力を、加熱素子Hにより熱せられた前記ガスを媒体として、測温素子M1,M2の温度変化から検知する圧力センサ10とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐腐蝕性に優れる安価な圧力センサであって、圧力検出範囲の拡大や圧力以外の検出機能を付加することのできる、新規な圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車におけるエンジン吸気圧等の圧力を検出する圧力センサが、例えば、特開2001−330530号公報(特許文献1)と特開2005−181065号公報(特許文献2)に開示されている。
【0003】
図7は、特許文献2に開示された従来の半導体圧力センサ装置100を要部で切断した状態の縦断面図である。
【0004】
図7に示す半導体圧力センサ装置100において、樹脂パッケージ1は、例えばフィラーが充填されたエポキシ樹脂等よりなるもので、その上面には、センサチップ2をマウントするための凹部3が形成されている。樹脂パッケージ1には、銅などの導電材料よりなる複数本のインサートピン4がインサート成形により一体的に設けられている。
【0005】
センサチップ2は、周知の半導体ダイヤフラム式の構成を有するものであり、たとえば単結晶シリコンなどのピエゾ抵抗効果を有した材料よりなるダイヤフラム2a上に、図示しない複数個の拡散抵抗を形成して、これら拡散抵抗をブリッジ接続した構成となっている。そして、センサチップ2においては、このダイヤフラム2aの変形に応じた拡散抵抗の抵抗値変化を上記ブリッジ回路から電気信号として取り出すようになっている。このセンサチップ2は、上記凹部3の底面にガラス台座5を介して、例えばフロロシリコーン系の接着剤5aによりダイボンディングされるとともに、インサートピン4のボンディングパッド4aに対し金(Au)からなるボンディングワイヤ6を介して電気的に接続されている。
【0006】
凹部3内には、センサチップ2およびボンディングワイヤ6の保護、電気的な絶縁性の確保、並びに防食などを図るための絶縁材料製の保護部材7が、センサチップ2およびボンディングワイヤ6を埋めるように充填されている。この保護部材7は、電気的な絶縁性且つ柔軟性を有するもので、この保護部材7により、センサチップ2、ボンディングワイヤ6、センサチップ2とボンディングワイヤ6との接続部、および、インサートピン4とボンディングワイヤ6との接続部が、被覆され保護されている。このような保護部材7は、柔軟性を有するフッ素系樹脂材料(例えばフッ素ゲルまたはフロロシリコーンゲル)を用いて、塗布およびその後の熱硬化処理(たとえば、125〜150℃で1時間加熱)を行うことで、凹部3へ充填される。
【特許文献1】特開2001−330530号公報
【特許文献2】特開2005−181065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、図7の半導体圧力センサ装置100では、受圧面であるダイヤフラム2aにピエゾ抵抗素子を配置し、圧力をモニタしている。また、該ピエゾ抵抗素子からなるブリッジ回路の電圧変化を検知するための電極は、センサチップ2の上面に配置され、
該電極やボンディングワイヤ6等を酸性や腐蝕性の圧力媒体
から保護するため、フッ素系ゲルからなる保護部材7を凹部3内に充填して保護している。
【0008】
しかしながら、例えば前記電極が金(Au)からなる場合には上記構造で問題ないものの、コストダウンのため前記電極をアルミニウム(Al)とする場合には、フッ素系ゲルからなる保護部材7が逆にアルミニウム電極を腐食させてしまう。従って、コストダウンを図るため電極材料としてアルミニウムを採用する場合には、図7に示した半導体圧力センサ装置100の構造を採用することはできない。また、図7の半導体圧力センサ装置100の構造は、受圧面であるダイヤフラム2aが弾性率の決まった単結晶シリコンからなるため、検出できる圧力範囲が限定され、圧力以外の検出機能を付加することも困難である。
【0009】
そこで本発明は、耐腐蝕性に優れる安価な圧力センサであって、圧力検出範囲の拡大や圧力以外の検出機能を付加することのできる、新規な圧力センサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の圧力センサは、シリコン基板の一方の表面に、平坦な底面を有する凹部が形成され、圧力によって変形可能なダイヤフラムが、前記凹部を蓋するようにして配置され、前記凹部と前記ダイヤフラムとで密閉空間が形成され、前記密閉空間内にガスが封入されてなり、前記凹部の底面側に、加熱素子と測温素子とが配置され、前記シリコン基板のもう一方の表面に、前記加熱素子および前記測温素子に接続する電極が配置されてなり、前記ダイヤフラムに印加される圧力を、前記加熱素子により熱せられた前記ガスを媒体として、前記測温素子の温度変化から検知することを特徴としている。
【0011】
上記圧力センサは、単結晶シリコンのピエゾ抵抗効果を利用した従来の圧力センサと異なり、密閉空間内に封入されたガスを媒体とする、新規な圧力センサである。上記圧力センサにおいては、加熱素子で密閉空間内に封入されているガスを加熱し、密閉空間内に所定の初期温度分布を形成することで、圧力測定の準備ができる。受圧面であるダイヤフラムに圧力が印加されると、ダイヤフラムが変形し、密閉空間の体積変化に伴って、密閉空間内のガスの温度分布も変化する。この温度分布の変化を測温素子により検知することで、ダイヤフラムに印加された圧力の測定が可能となる。
【0012】
また、上記圧力センサにおいては、圧力検出のための加熱素子と測温素子とがシリコン基板の一方の表面に形成された凹部の底面側に配置されており、該加熱素子と測温素子に接続する電極が、シリコン基板のもう一方の表面に配置されている。すなわち、受圧面であるダイヤフラムのある側をシリコン基板の主面側とすると、前記電極は、シリコン基板の裏面側に配置される。従って、被測定圧力媒体が酸やアルカリ等の腐蝕性のある圧力媒体である場合やダイヤフラム周りの保護部材に腐蝕性の成分が含まれている場合であっても、腐食に対して最も弱い電極を前記腐食成分から十分に離間させることができ、電極を確実に保護することができる。
【0013】
これに対してピエゾ抵抗効果を利用した従来の圧力センサでは、ダイヤフラム部のシリコン表面の不純物濃度を調整してピエゾ素子を形成し、該ピエゾ素子からの出力信号でダイヤフラム部に印加される圧力を検知している。従って、従来の圧力センサでは、ピエゾ素子に接続する電極がダイヤフラムのあるシリコン基板の主面側に配置されるため、一般的に前記腐食成分に晒され易い構造となってしまう。
【0014】
以上のようにして、上記圧力センサは、従来と異なる方法で圧力検出する新規な圧力センサであって、耐腐蝕性に優れる圧力センサとすることができる。
【0015】
上記圧力センサにおけるダイヤフラムは、任意の材料であってよく、例えば、シリコン、金属およびポリイミド等を採用することができる。中でも、請求項2に記載のように、前記ダイヤフラムの構成材料として、ポリイミドが好適である。ポリイミドはシリコンに較べてヤング率が低く、ポリイミドを構成材料としたダイヤフラムは、低い圧力範囲まで(変形)対応することができる。また、ポリイミドは、耐腐食性の高い材料でもある。このように、上記圧力センサは、ダイヤフラムの材料を適宜選択することにより、従来のピエゾ抵抗効果を利用した圧力センサに較べて、圧力検出範囲を拡大することが可能である。
【0016】
上記圧力センサにおいて、密閉空間内に封入されるガスは任意のガスであってよいが、請求項3に記載のように、熱伝導性の良いヘリウムが好適である。
【0017】
上記圧力センサにおける加熱素子は、請求項4に記載のように、安価に製造できる前記シリコン基板に形成された不純物拡散領域とすることが好ましい。
【0018】
また、上記圧力センサにおける測温素子は、例えば熱電対、サーミスタ、ショットキー接合等を採用することができ、中でも請求項5に記載のように、一般的に用いられている熱電対が好ましい。
【0019】
前述したように、上記圧力センサは、腐食に対して電極を確実に保護する構造となっている。従って、請求項6に記載のように、上記圧力センサの電極には腐食には弱いが安価なアルミニウムを採用することができ、これによって製造コストを低減することができる。
【0020】
また、上記圧力センサは、請求項7に記載のように、前記電極を除いて、ゲル中に封入されてなる構造であってよい。これによって、受圧面であるダイヤフラム周りを、酸やアルカリ等の腐蝕性のある被測定圧力媒体から保護することができる。
【0021】
上記圧力センサにおいては、請求項8に記載のように、前記測温素子が、前記凹部の底面側に、複数個配置されてなることが好ましい。またこの場合、複数個の測温素子は任意の配置であってよいが、特に請求項9に記載のように、前記測温素子が、前記加熱素子に対して、対称的に配置されてなることが好ましい。これによって、密閉空間内のガス移動による温度分布変化をより精密に測定することができ、ダイヤフラムに印加される圧力の検出精度をより高めることができる。
【0022】
上記圧力センサは、前述したように、ダイヤフラムの変形に伴う密閉空間内に封入された加熱ガスの移動による温度分布変化を測定して、ダイヤフラムに印加される圧力を検出するものである。一方、加熱ガスの移動による温度分布変化は、ダイヤフラムに圧力が印加される場合だけでなく、上記圧力センサに加速度が加わった場合にも起り得る。従って、複数個の測温素子を適宜配置することで、請求項10に記載のように、上記圧力センサは、加速度検出にも用いることが可能である。このように、上記圧力センサは、圧力以外の検出機能を付加することも可能である。
【0023】
以上のようにして、上記圧力センサは、耐腐蝕性に優れる安価な圧力センサであって、圧力検出範囲の拡大や圧力以外の検出機能を付加することのできる、新規な圧力センサとなっている。
【0024】
従って、上記圧力センサは、請求項11に記載のように、腐食環境に晒され易い車載用の圧力センサとして好適で、特に請求項12に記載のように、インテークマニホールドの吸気圧測定に用いられて好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図に基づいて説明する。
【0026】
図1は、本発明の圧力センサの一例で、図1(a)は、圧力センサ10の模式的な断面図であり、図1(b)は、圧力センサ10の下面図である。図1(a)は、図1(b)における一点鎖線A−Aでの断面を示した図である。
【0027】
図2は、図1に示した圧力センサ10の圧力検出方法を説明する図である。図2(a)は、圧力が印加されていない状態を示した図であり、図2(b)は、正の圧力が印加された状態を示した図である。
【0028】
また、図3は、図1の圧力センサ10をパッケージした、圧力センサ装置110の模式的な断面図である。尚、図3の圧力センサ装置110において、図7に示した半導体圧力センサ装置100と同様の部分については、同じ符号を付した。
【0029】
図1に示す圧力センサ10は、図7に示した単結晶シリコンのピエゾ抵抗効果を利用する従来の圧力センサ(センサチップ2)と異なり、密閉空間Vc内に封入されたガスを媒体とする新規な圧力センサである。
【0030】
図1の圧力センサ10においては、シリコン基板11の一方の表面Saに、平坦な底面を有する凹部11tが形成されている。また、圧力によって変形可能なダイヤフラム12が、凹部11tを蓋するようにして配置され、凹部11tとダイヤフラム12とで、密閉空間Vcが形成されている。この密閉空間Vc内には、ガスが封入される。
【0031】
圧力センサ10におけるダイヤフラム12は、任意の材料であってよく、例えば、シリコン、金属およびポリイミド等を採用することができる。中でも、ダイヤフラム12の構成材料として、ポリイミドが好適である。ポリイミドはシリコンに較べてヤング率が低く、ポリイミドを構成材料としたダイヤフラム12は、低い圧力範囲まで(変形)対応することができる。また、ポリイミドは、耐腐食性の高い材料でもある。このように、図1の圧力センサ10は、ダイヤフラム12の材料を適宜選択することにより、図7に示した従来のピエゾ抵抗効果を利用した圧力センサ(センサチップ2)に較べて、圧力検出範囲を拡大することが可能である。
【0032】
また、図1の圧力センサ10において、密閉空間Vc内に封入されるガスは任意のガスであってよいが、熱伝導性の良いヘリウムが好適である。
【0033】
図1の圧力センサ10においては、凹部11tの底面側に、加熱素子Hと測温素子M1,M2とが配置されている。そして、シリコン基板11のもう一方の表面Sbに、加熱素子Hおよび測温素子M1,M2に接続する電極13が配置されている。圧力センサ10においては、2個の測温素子M1,M2は、加熱素子Hを中心として対称的に配置されている。尚、図1(a)の符号6は、ボンディングワイヤである。
【0034】
圧力センサ10における加熱素子Hは、安価に製造できるシリコン基板11に形成された不純物拡散領域とすることが好ましい。圧力センサ10における測温素子M1,M2は、例えば熱電対、サーミスタ、ショットキー接合等を採用することができ、中でも一般的に用いられている熱電対が好ましい。また、後述するように、図1の圧力センサ10は、腐食に対して電極13を確実に保護することのできる構造となっている。従って、圧力センサ10の電極13には、腐食には弱いが安価なアルミニウムを採用することができ、これによって製造コストを低減することができる。
【0035】
図1に示す圧力センサ10は、ダイヤフラム12に印加される圧力を、加熱素子Hにより熱せられたガスを媒体として、測温素子M1,M2の温度変化から検知する。
【0036】
図2(a)に示すように、圧力センサ10においては、加熱素子Hで密閉空間Vc内に封入されているガスを加熱し、密閉空間Vc内に所定の初期温度分布を形成することで、圧力測定の準備ができる。次に、図2(b)に示すように、受圧面であるダイヤフラム12に圧力が印加されると、ダイヤフラム12が変形し、密閉空間Vcの体積変化に伴って、密閉空間Vc内のガスの温度分布も変化する。例えば、図2(b)に示す圧力P(>0)が印加される場合には、測温素子M1,M2の周りの温度T1,T2が等しく上昇する。この温度分布の変化を測温素子M1,M2により検知することで、ダイヤフラム12に印加された圧力の測定が可能となる。
【0037】
このように、図1に示す圧力センサ10は、図7に示した単結晶シリコンのピエゾ抵抗効果を利用する従来の圧力センサ(センサチップ2)と異なり、密閉空間Vc内に封入されたガスを媒体とする新規な圧力センサとなっている。尚、圧力センサ10の感度を上げるためには、図1(a)に示した凹部11tの底面の厚さdは、できるだけ薄いほうが望ましい。
【0038】
また、図1に示す圧力センサ10においては、圧力検出のための加熱素子Hと測温素子M1,M2とがシリコン基板11の一方の表面Saに形成された凹部11tの底面側に配置されており、加熱素子Hと測温素子M1,M2に接続する電極13が、シリコン基板11のもう一方の表面Sbに配置されている。すなわち、受圧面であるダイヤフラム12のある側をシリコン基板11の主面側とすると、電極13は、シリコン基板11の裏面側に配置される。
【0039】
上記構造によって、圧力センサ10は、図3の圧力センサ装置110に示すように、半田バンプ14を用いて、リードフレームのインサートピン4にフリップチップ型の搭載が可能である。尚、図3の圧力センサ装置110においては、シリコン基板11の裏面側における電極13の周りが、接着剤15で覆われている。そして、圧力センサ10は、電極13の周りを除いて、ゲルからなる保護部材7中に封入された構造となっている。これによって、受圧面であるダイヤフラム12周りを、酸やアルカリ等の腐蝕性のある被測定圧力媒体から保護することができる。
【0040】
また、上記電極13をシリコン基板11の裏面側に配置した構造によって、圧力センサ10は、図3の圧力センサ装置110に示すように、被測定圧力媒体が酸やアルカリ等の腐蝕性のある圧力媒体である場合や、ダイヤフラム12周りのゲルからなる保護部材7に腐蝕性の成分が含まれている場合であっても、腐食に対して最も弱い電極13を前記腐食成分から十分に離間させることができる。これによって、圧力センサ10では、電極13を確実に保護することができる。
【0041】
これに対して、図7のピエゾ抵抗効果を利用した従来の圧力センサ(センサチップ2)では、ダイヤフラム2aのシリコン表面の不純物濃度を調整してピエゾ素子を形成し、該ピエゾ素子からの出力信号でダイヤフラム2aに印加される圧力を検知している。従って、従来の圧力センサでは、ピエゾ素子に接続する電極がダイヤフラム2aのあるシリコン基板の主面側に配置されるため、一般的に前記腐食成分に晒され易い構造となってしまう。
【0042】
以上のようにして、図1に示す圧力センサ10は、従来と異なる方法で圧力検出する新規な圧力センサであって、耐腐蝕性に優れる圧力センサとなっている。
【0043】
次に、図1に示した圧力センサ10の製造方法について、簡単に説明する。
【0044】
図4は、圧力センサ10の製造方法の一例を示す図で、(a)〜(d)は、製造工程別の断面図である。
【0045】
最初に、図4(a)に示すように、圧力センサ10の裏面側となるシリコン基板11の第1面Sbに、加熱素子Hと測温素子M1,M2を形成する。次に、図4(b)に示すように、加熱素子Hと測温素子M1,M2に接続する電極13を形成する。加熱素子Hと測温素子M1,M2および電極13の形成には、半導体装置の製造において一般的に用いられている方法を採用することができる。
【0046】
次に、図4(c)に示すように、シリコン基板11を反転し、圧力センサ10の主面側となるシリコン基板11の第2面Saに、平坦な底面を有する凹部11tを形成する。凹部11tの形成は、ドライエッチングとウエットエッチングのいずれであってもよい。次に、図4(d)に示すように、所定の雰囲気ガス中で、凹部11tを蓋するようにしてダイヤフラム12を配置し、ダイヤフラム12をシリコン基板11の第2面Saに接着する。これによって、所定のガスが封入された密閉空間Vcが形成される。尚、ダイヤフラム12がポリイミドである場合には、上記接着に例えば接着剤を使用し、ダイヤフラム12がシリコンである場合には、上記接着に例えば陽極接合を使用することができる。
【0047】
以上で、図1に示した圧力センサ10の製造が完了する。
【0048】
図1の圧力センサ10においては、2個の測温素子M1,M2が、凹部11tの底面側に加熱素子Hを中心として対称的に配置されていた。これに限らず、測温素子は、1個であっても、非対称な配置であってもよい。
【0049】
しかしながら、高精度な圧力測定のためには、図1の圧力センサ10のように、測温素子が、凹部11tの底面側に複数個配置されていることが好ましい。また、この場合、複数個の測温素子は、図1の圧力センサ10のように、加熱素子Hに対して、対称的に配置されていることが好ましい。これによって、密閉空間Vc内のガス移動による温度分布変化をより精密に測定することができ、ダイヤフラム12に印加される圧力の検出精度をより高めることができる。
【0050】
図5は、別の圧力センサの例で、圧力センサ20の模式的な下面図である。
【0051】
図5に示す圧力センサ20においては、4個の測温素子M1〜M4が、凹部11tの底面側に、加熱素子Hを中心として90°対称に配置されている。
【0052】
図1や図5に示した圧力センサ10,20は、前述したように、ダイヤフラム12の変形に伴う密閉空間Vc内に封入された加熱ガスの移動による温度分布変化を測定して、ダイヤフラム12に印加される圧力を検出するものである。一方、加熱ガスの移動による温度分布変化は、ダイヤフラム12に圧力が印加される場合だけでなく、圧力センサ10,20に加速度が加わった場合にも起り得る。
【0053】
図6は、図1に示した圧力センサ10を用いて、加速度の検出が可能であることを説明する図である。図中の太線矢印が、加速度方向である。
【0054】
図2(b)において説明したように、圧力センサ10に圧力P(>0)が印加された場合には、測温素子M1,M2の周りの温度T1,T2が等しく上昇した。
【0055】
これに対して、図6のように圧力センサ10に加速度Gが加わる場合には、加熱素子Hで加熱されたガスが加速度方向に移動する。従って、この場合には、加速度方向にある測温素子M1の周りの温度T1が上昇し、加速度方向の反対にある測温素子M2の周りの温度T2は低下する。
【0056】
圧力センサ10は、上記したダイヤフラム12に圧力が印加された場合と圧力センサ10に加速度Gが加わった場合の測温素子M1,M2の検出温度T1,T2の違いを分析することで、圧力検出だけでなく、加速度検出にも用いることが可能である。尚、図1の圧力センサ10は、1軸方向(X軸方向)の加速度検出のみが可能であり、図5の圧力センサ20は、2軸方向(X軸方向とY軸方向)の加速度検出が可能である。このように、上記した圧力センサ10,20は、圧力以外の検出機能を付加することも可能である。
【0057】
以上のようにして、上記圧力センサ10,20は、耐腐蝕性に優れる安価な圧力センサであって、圧力検出範囲の拡大や圧力以外の検出機能を付加することのできる、新規な圧力センサとなっている。
【0058】
従って、上記圧力センサ10,20は、腐食環境に晒され易い車載用の圧力センサとして好適で、特に、インテークマニホールドの吸気圧測定に用いられて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の圧力センサの一例で、(a)は、圧力センサ10の模式的な断面図であり、(b)は、圧力センサ10の下面図である。
【図2】圧力センサ10の圧力検出方法を説明する図で、(a)は、圧力が印加されていない状態を示した図であり、(b)は、正の圧力が印加された状態を示した図である。
【図3】圧力センサ10をパッケージした、圧力センサ装置110の模式的な断面図である。
【図4】圧力センサ10の製造方法の一例を示す図で、(a)〜(d)は、製造工程別の断面図である。
【図5】別の圧力センサの例で、圧力センサ20の模式的な下面図である。
【図6】圧力センサ10を用いて、加速度の検出が可能であることを説明する図である。
【図7】特許文献2に開示された従来の半導体圧力センサ装置100を要部で切断した状態の縦断面図である。
【符号の説明】
【0060】
10,20 圧力センサ
11 シリコン基板
11t 凹部
12 ダイヤフラム
Vc 密閉空間
H 加熱素子
M1〜M4 測温素子
13 電極
7 保護部材(ゲル)
110 圧力センサ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板の一方の表面に、平坦な底面を有する凹部が形成され、
圧力によって変形可能なダイヤフラムが、前記凹部を蓋するようにして配置され、
前記凹部と前記ダイヤフラムとで密閉空間が形成され、前記密閉空間内にガスが封入されてなり、
前記凹部の底面側に、加熱素子と測温素子とが配置され、
前記シリコン基板のもう一方の表面に、前記加熱素子および前記測温素子に接続する電極が配置されてなり、
前記ダイヤフラムに印加される圧力を、前記加熱素子により熱せられた前記ガスを媒体として、前記測温素子の温度変化から検知することを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
前記ダイヤフラムが、ポリイミドからなることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記ガスが、ヘリウムであることを特徴とする請求項1または2に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記加熱素子が、前記シリコン基板に形成された不純物拡散領域からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記測温素子が、熱電対からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の圧力センサ。
【請求項6】
前記電極が、アルミニウムからなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の圧力センサ。
【請求項7】
前記圧力センサが、前記電極を除いて、ゲル中に封入されてなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の圧力センサ。
【請求項8】
前記測温素子が、前記凹部の底面側に、複数個配置されてなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の圧力センサ。
【請求項9】
前記測温素子が、前記加熱素子に対して、対称的に配置されてなることを特徴とする請求項8に記載の圧力センサ。
【請求項10】
前記圧力センサが、加速度検出にも用いられることを特徴とする請求項8または9に記載の圧力センサ。
【請求項11】
前記圧力センサが、車載用であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の圧力センサ。
【請求項12】
前記圧力センサが、インテークマニホールドの吸気圧測定に用いられることを特徴とする請求項11に記載の圧力センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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