説明

圧力交換装置

【課題】処理流量を減らすことなくコンパクト化、低コスト化が可能な圧力交換装置を提供する。
【解決手段】圧力交換装置10は、第1流路41と第2流路42とが連通形成された圧力伝達部が軸心周りに配設された回転体40と、高圧濃縮海水Hiを第1流路41に案内する第1流体流入路21と高圧海水Hoを第2流路42から案内する第2流体流出路22と低圧海水Liを第2流路41に案内する第2流体流入路23と低圧濃縮海水Loを第1流路41から案内する第1流体流出路24とが形成された第1側方部材20と、回転体40を第1側方部材20との間で保持部材11を介して回転可能に挟持する第2側方部材30とを備え、回転体40と第1及び第2側方部材との隙間、及び、回転体40と保持部材11の隙間に進入した高圧濃縮海水Hi又は高圧海水Hoにより圧力バランスを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1流体と第2流体との間で圧力を交換する圧力交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
逆浸透膜装置を用いる海水淡水化施設では、逆浸透膜装置から排水される高圧濃縮流体である高圧濃縮海水がもつ余剰圧力を、逆浸透膜装置に給水される被濃縮流体である低圧海水の昇圧に利用する圧力交換装置が設けられている。
【0003】
図11に示すように、特許文献1には、管状の圧力伝達部が回転軸心周りに複数本配設されたロータ80を備えた圧力交換装置が記載されている。
【0004】
該圧力交換装置は、ロータ80の回転に伴って、高圧入口側ポート82へ供給される高圧濃縮海水と低圧入口側ポート81へ供給される低圧海水とを圧力伝達部で接触させて、高圧濃縮海水の圧力によって昇圧した低圧海水を、高圧出口側ポート83から高圧海水として排水し、低圧入口側ポート81へ供給される低圧海水によって前記圧力を伝達し終えた低圧濃縮海水を低圧出口側ポート84から排水するように構成されている。
【0005】
図12に示すように、特許文献2には、一対の回転板91、92と当該回転板91、92を連接する軸93とで構成される回転体90を備えた圧力交換装置が記載されている。
【0006】
一方の回転板91には、低圧入口側ポート95に供給された低圧海水を圧力伝達部96に案内する流路91aと、圧力伝達部96から排水される高圧海水を高圧出口側ポート97に案内する流路91bが形成されている。
【0007】
他方の回転板92には、高圧入口側ポート94に供給された高圧濃縮海水を圧力伝達部96に案内する流路92bと、圧力伝達部96から排水される低圧濃縮海水を低圧出口側ポート98に案内する流路92aが形成されている。
【0008】
該圧力交換装置は、回転体90の回転に伴って、高圧入口側ポート94へ供給される高圧濃縮海水と、低圧入口側ポート95へ供給される低圧海水を、管状の圧力伝達部96内で接触させて、高圧濃縮海水の圧力によって昇圧した低圧海水を高圧出口側ポート97から高圧海水として排水し、低圧入口側ポート95へ供給される低圧海水によって前記圧力を伝達し終えた低圧濃縮海水を低圧出口側ポート98から排水するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009180903号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第200710056401号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載された圧力交換装置では、ロータ80に配設された管状の圧力伝達部の断面積に依存して圧力伝達される処理流量が定まるので、処理流量を増やすためには、圧力伝達部の配設本数を増加させるか、圧力伝達部の一本あたりの断面積を大きくする必要があり、何れの場合であってもロータ80が大きくなり、それに伴って圧力交換装置が大型になり重量も増大する。
【0011】
一般的にロータ80は、軽量化、高剛性、耐摩耗性、低摩擦係数等の条件を満足させるために、セラミックス等の高価な材料で形成されているため、圧力交換装置を大型化するとそれに伴って材料費、製造費が嵩むという問題があった。
【0012】
さらに、大型のロータ80を回転させるために要するトルクも増大し、小型のロータ80を回転させる場合よりも大きなエネルギーが必要になり、効率が低下するという問題もあった。このような理由によって、圧力交換装置1台あたりの処理流量を増加させるのは極めて困難であった。
【0013】
そのため、大量の海水を淡水化処理する大型の海水淡水化施設には、多数の圧力交換装置が設置されていた。しかし、圧力交換装置の設置台数が増加すると、各圧力交換装置を接続する配管の施工及び管理が煩雑になるという問題があった。
【0014】
特許文献2に記載された圧力交換装置では、一方の回転板91に形成された流路91bと他方の回転板92に形成された流路92bの夫々が、回転体内部で軸心方向に沿った流路に円周方向に形成された流路が連通するように構成されているため、回転板91、92に流路を形成するための厚みが必要となる。そのため、回転板91、92が大型になり材料費や加工費が嵩むという問題があった。
【0015】
さらに、回転板91、92の大型化によって重量が増すと、回転体90の回転時に軸部93に作用するねじりや曲げ応力が大きくなり、その変形や破損を防止するために軸部93を太くする必要があるばかりでなく、回転のために要するエネルギーが増加し、効率が低下するという問題もあった。
【0016】
本発明の目的は、処理流量を減らすことなくコンパクト化、低コスト化が可能な効率の良い圧力交換装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の目的を達成するため、本発明による圧力交換装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載したとおり、第1流体と第2流体との間で圧力を交換する圧力交換装置であって、一端側から第1流体が流入及び流出する第1流路と前記一端側から第2流体が流入及び流出する第2流路とが連通するように形成された圧力伝達部が、回転軸心周りに配設された回転体と、第1流体を前記第1流路に案内する第1流体流入路と、第1流体との間で圧力交換された第2流体を前記第2流路から案内する第2流体流出路と、第2流体を前記第2流路に案内する第2流体流入路と、第2流体との間で圧力交換された第1流体を前記第1流路から案内する第1流体流出路とが、厚み方向に形成された第1側方部材と、前記回転体を第1側方部材との間で保持部材を介して回転可能に挟持する第2側方部材と、で構成される圧力交換部を備え、第1流路及び第2流路が前記回転体を貫通するように形成され、前記第1流体又は第2流体により、圧力交換部の圧力バランスを調整する圧力バランス調整機構を備えている点にある。
【0018】
上述の構成によれば、第1側方部材及び第2側方部材と保持部材とで区画される空間内で回転体が回転しながら、第1流体流入路から第1流路に流入した第1流体から圧力伝達された第2流体が第2流路から第2流体流出路へ流出し、第2流体流入路から第2流路に流入した第2流体から圧力伝達された第1流体が第1流路から第1流体流出路へ流出する動作が連続的に行われるなかで、前記回転体と第1及び第2側方部材との隙間、及び、前記回転体と前記保持部材との隙間に第1流体又は第2流体が進入する。前記隙間は、狭すぎると大きな摺動抵抗が発生し、広すぎると流体の漏れ量が多くなり圧力の交換効率が低下するため、好ましくは1〜100μm程度に設定される。
【0019】
回転体と第1側方部材の隙間に進入した第1流体又は第2流体は、回転体を第2側方部材に向けて押圧する。回転体と第2側方部材の隙間に進入した第1流体又は第2流体は、回転体を第1側方部材に向けて押圧する。両隙間に進入した流体により、回転体は第1側方部材又は第2側方部材と常時摺動しながら回転することがなくなる。回転体と保持部材の隙間に進入した第1流体又は第2流体により、回転体は保持部材の内周面と常時摺動しながら回転することがなくなる。
【0020】
このように、回転体は隙間に進入した第1流体又は第2流体により、周囲の第1及び第2側方部材、及び、保持部材との摺動が低減されるので円滑に回転する。また、磨耗が低減できるので、高価な耐磨耗性材料を用いなくとも耐久性を向上させることができる。さらに、処理流量を稼ぐために回転体を大径に形成し、圧力伝達部を構成する第1流路及び第2流路の断面積を大きくした場合でも、回転体を回転駆動するために要するエネルギーが低く抑えられるようになる。
【0021】
このとき、圧力バランス調整機構は、隙間に進入した第1流体又は第2流体により圧力交換部の圧力バランスを調整するので、回転体の軸方向への片寄り、第1側方部材や第2側方部材や保持部材の流体の圧力による変形を防止することができる。つまり、第1側方部材や第2側方部材や保持部材と回転体が互いに摺動することを防止するので、回転体を円滑に回転させ効率を向上することができる。
【0022】
第1流路と第2流路と両流路の連通部とで圧力伝達部を構成し、回転体の一端側から該圧力伝達部へ第1流体又は第2流体を流入させて、第1流体と第2流体との間で圧力を交換し、該一端側から第1流体又は第2流体を流出させることで、特許文献1に記載されたような直管で構成された圧力伝達部と比較して、同じ流量の圧力交換処理を行なう場合に回転体の回転軸心方向の長さを短く構成することができるので、装置のコンパクト化と低コスト化を図ることができる。また、圧力交換処理の流量を増加させる必要がある場合でも、回転体の回転軸心方向の長さを短く構成することができるので、装置の極端な大型化を回避することができる。
【0023】
さらに、第1流体流入路及び流出路、第2流体流入路及び流出路が第1側方部材にのみ形成されているため、各流体の流入路又は流出路と接続する配管を第1側方部材側に纏めて設置すればよく、従来の装置のように回転体の両端側に各流入路又は流出路と接続される配管を設置する場合と比較して、配管を含めた設置スペースをコンパクト化ができ、さらに、配管設置作業やメンテナンス作業等の作業性が良好になる。
【0024】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載したとおり、上述の第一特徴構成に加えて、前記第1側方部材は、少なくとも、第1流体流入路のうち前記回転体との対向面側に、前記回転体の周方向に沿って複数の第1流路と連通するように形成された第1流体流入路開口部と、第2流体流入路のうち前記回転体との対向面側に、前記回転体の周方向に沿って複数の第2流路と連通するように形成された第2流体流入路開口部と、を備え、前記圧力バランス調整機構は、前記第1側方部材に形成された前記第1流体流入路と第2流体流出路と第2流体流入路と第1流体流出路の前記回転体との対向面側の各開口部に相対する、前記回転体の第1側方部材との対向面側の受圧面積と、前記回転体の第2側方部材との対向面側の受圧面積とを略同一とする受圧部を備えている点にある。
【0025】
第1流体が第1流体流入路の第1流体流入路開口部から複数の第1流路に分散して流入するときに、第1流体の圧力は回転体の隣接する第1流路の間の端面にも作用し、回転体を第2側方部材側へ押圧することとなる。同様に、第2流体が第2流体流入路の第2流体流入路開口部から複数の第2流路に分散して流入するときに、第2流体の圧力は回転体の隣接する第1流路の間の端面にも作用し、回転体を第2側方部材側へ押圧することとなる。
【0026】
しかし、前記圧力バランス調整機構は、前記第1側方部材に形成された前記第1流体流入路と第2流体流出路と第2流体流入路と第1流体流出路の前記回転体との対向面側の各開口部に相対する、前記回転体の第1側方部材との対向面側の受圧面積と、前記回転体の第2側方部材との対向面側の受圧面積とを略同一とする受圧部を備えているので、回転体を第2側方部材に向けて押圧する力と、回転体を第1側方部材に向けて押圧する力が釣り合い、回転体は第1側方部材又は第2側方部材に一方的に摺動するようなことがなくなり、円滑に回転することができる。
【0027】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載したとおり、上述の第二特徴構成に加えて、前記第1側方部材は、少なくとも、第1流体流入路のうち前記回転体との対向面側に、前記回転体の周方向に沿って複数の第1流路と連通するように拡径して形成された第1傾斜部と、第2流体流入路のうち前記回転体との対向面側に、前記回転体の周方向に沿って複数の第2流路と連通するように拡径して形成された第2傾斜部と、を備え、第1傾斜部の傾斜方向と第2傾斜部の傾斜方向が同じになるように設定され、前記第1流路に流入する第1流体のエネルギーと、前記第2流路に流入する第2流体のエネルギーにより前記回転体にトルクを付与するトルク付与機構を備え、前記圧力バランス調整機構は、前記第1側方部材に形成された前記第1流体流入路と第2流体流出路と第2流体流入路と第1流体流出路の前記回転体との対向面側の各開口部と、前記第2側方部材の前記回転体との対向面に形成された、前記各開口部に対向する前記各開口部と輪郭と面積を同一とする凹部を備えている点にある。
【0028】
第1流体が第1流体流入路から複数の第1流路に分散して流入するときに、第1傾斜部に沿って流れる第1流体は前記回転体の周方向に沿って流れ、第1流路の壁面に作用し前記回転体を回転させるトルクを発生する。
【0029】
第2流体が第2流体流入路から複数の第2流路に分散して流入するときに、第2傾斜部に沿って流れる第2流体は前記回転体の周方向に沿って流れ、第2流路の壁面を押圧し前記回転体を回転させるトルクを発生する。
【0030】
第1傾斜部の傾斜方向と第2傾斜部の傾斜方向が同じになるように設定されているので、第1流体により発生する回転トルクと第2流体により発生する回転トルクは同じ向きとなる。
【0031】
少なくとも第1流路に流入する第1流体のエネルギーと第2流路に流入する第2流体のエネルギーにより回転体を回転させることができるので外部動力が不要となる。回転体の回転に伴って、圧力伝達部への第1流体の流入と流出、第2流体の流出と流入が切り替えられるので、別途の流路の切替機構が不要となる。
【0032】
ここで、第1流体が第1流体流入路から複数の第1流路に分散して流入するときに、第1流体の圧力は回転体の隣接する第1流路の間の端面にも作用し、回転体を第2側方部材側へ押圧することとなる。同様に、第2流体が第2流体流入路から複数の第2流路に分散して流入するときに、第2流体の圧力は回転体の隣接する第1流路の間の端面にも作用し、回転体を第2側方部材側へ押圧することとなる。しかし、第2側方部材に、前記第1流体流入路と第2流体流出路と第2流体流入路と第1流体流出路の前記回転体との対向面側の各開口部に対向する前記各開口部と輪郭と面積を同一とする凹部が形成されているので、各凹部にも第1流体及び第2流体が流入し、回転体の他端面に作用して、回転体を第1側方部材に向けて押圧するので、回転体の両端面に作用する押圧力が釣り合うとともに押圧する位置も対称となり、回転体は第1側方部材又は第2側方部材に一方的に摺動するようなことや、回転体の軸が傾いて保持部と摺動するようなことがなくなり、円滑に回転することができる。
【0033】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載したとおり、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記第1側方部材の外側に配置された第1エンドカバーと、前記第2側方部材の外側に配置された第2エンドカバーを備え、前記第1エンドカバーには、少なくとも前記第1流体流入路又は第2流体流入路と夫々連通する第1流体流入口又は第2流体流入口が形成され、前記圧力バランス調整機構は、少なくとも前記第1側方部材と前記第1エンドカバーとで区画される第1閉空間と、前記第1流体又は第2流体を前記第1閉空間に導くように、前記第1エンドカバーに形成された第1連通路と、少なくとも前記第2側方部材と前記第2エンドカバーとで区画された第2閉空間と、前記第1流体又は第2流体を前記第2閉空間に導くように、前記第2側方部材に形成された第2連通路と、を備えている点にある。
【0034】
前記回転体と第1側方部材との隙間には第1流体又は第2流体が進入しているので、第1側方部材には外側方向への圧力が作用する。しかし、少なくとも前記第1側方部材と前記第1エンドカバーとで区画される第1閉空間には、前記第1エンドカバーに形成された第1連通路を介して前記第1流体又は第2流体が導かれ、第1側方部材には回転体方向への圧力が作用し、第1側方部材の両面に作用する押圧力は釣り合うので、薄肉化しても第1側方部材が流体の圧力によって回転軸心方向に歪むような事態が回避されるので、前記回転体と第1側方部材との隙間は一定に保たれ、回転体の円滑な回転が可能となり効率が向上する。
【0035】
同様に、前記回転体と第2側方部材との隙間には第1流体又は第2流体が進入しているので、第2側方部材には外側方向への圧力が作用する。しかし、少なくとも前記第2側方部材と前記第2エンドカバーとで区画された第2閉空間には、前記第2側方部材に形成された第2連通路を介して前記第1流体又は第2流体を前記第2閉空間が導かれ、第2側方部材には回転体方向への圧力が作用し、第2側方部材の両面に作用する押圧力は釣り合うので、薄肉化しても第2側方部材が流体の圧力によって回転軸心方向に歪むような事態が回避されるので、前記回転体と第2側方部材との隙間は一定に保たれ、回転体の円滑な回転が可能となり効率が向上する。
【0036】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載したとおり、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記保持部を収容する筒状のケーシングを備え、前記圧力バランス調整機構は、前記第1及び第2側方部材と前記保持部材の外周面と前記ケーシングの内周面とで区画された外周閉空間と、前記回転体と保持部材との隙間と前記外周閉空間を連通するように、前記保持部材に形成された第3連通路とを備えている点にある。
【0037】
上述の構成によれば、前記回転体と前記第1側方部材及び第2側方部材との隙間を介して、前記回転体の外周面と前記保持部材の内周面との隙間に進入した流体が、前記保持部材に形成された第3連通路を介して、前記保持部材の外周面とケーシングの内周面との外周閉空間に進入する。
【0038】
外周閉空間に導かれた流体の圧力は、回転体と保持部材の内周面との隙間に作用する流体の圧力と略等しく、保持部材の内周面と外周面の両面に作用する押圧力が釣り合うので、保持部材を薄肉化しても径方向に歪むような事態が回避される。そのため、運転中に回転体と保持部材との隙間は広がることなく、所定の隙間が保持されるので円滑に回転できるようになり効率が向上する。
【0039】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載したとおり、上述の第四又は第五特徴構成に加えて、前記第1側方部材と第2側方部材に両端を支持された支軸を備え、前記回転体には回転軸心方向に沿って前記支軸を挿通する挿通空間が形成され、前記第1側方部材又は第2側方部材には、前記挿通空間に第1流体又は第2流体を導く第4連通路が形成されている点にある。
【0040】
上述の構成によれば、支軸は、回転体に形成された挿通空間に挿通され、第1側方部材と第2側方部材に両端を支持される。第1閉空間及び第2閉空間には、第1流体又は第2流体が導かれ、第1側方部材と第2側方部材の前記支軸の支持部にも夫々回転体方向への圧力が作用している。前記第1側方部材又は第2側方部材に形成された第4連通路を介して、前記挿通空間に第1又は第2流体を導くことで、前記第1側方部材及び第2側方部材の前記支軸の支持部を、第1側方部材及び第2側方部材の外側方向へ押圧して、第1側方部材と第2側方部材の前記支軸の支持部に回転体方向に作用する圧力と釣り合わすことで、第1側方部材と第2側方部材の前記支軸の支持部の近傍が回転軸心方向に沿って歪むような事態がなくなるので、前記支軸の軸芯方向への伸縮を防止することができる。
【0041】
同第七の特徴構成は、同請求項7に記載したとおり、上述の第一から第六の何れかの特徴構成に加えて、前記第1流体流入路に供給される第1流体が逆浸透膜装置から排水される高圧濃縮流体であり、前記第2流体流入路に供給される第2流体が前記逆浸透膜装置に給水される被濃縮流体である点にある。
【0042】
上述の構成によれば、逆浸透膜装置から排水される高圧濃縮流体の圧力により逆浸透膜装置に供給される被濃縮流体を昇圧することができるので、逆浸透膜装置からの高圧濃縮流体の余剰圧力を捨てることなく有効なエネルギーとして利用することができる。
【発明の効果】
【0043】
以上説明したとおり、本発明によれば、処理流量を減らすことなくコンパクト化、低コスト化が可能な効率の良い圧力交換装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】海水淡水化施設の概略フロー図
【図2】圧力交換装置を説明する断面図
【図3】回転体の説明図であって、(a)は正面図、(b)は断面図、(c)は背面図
【図4】第1側方部材の説明図であって(a)は正面図、(b)は断面概略図、(c)は背面図
【図5】第2側方部材の説明図であって、(a)は正面図、(b)は断面概略図、(c)は背面図
【図6】(a)は図4(c)に示す第1流体流入路のA−A線断面図、(b)は図4(c)に示す第2流体流出路のB−B線断面図、(c)は図4(c)に示す第2流体流入路のC−C線断面図、(d)は図4(c)に示す第1流体流出路のD−D線断面図
【図7】回転体に形成された各流路と第1側方部材に形成された各流入路及び各流出路の位置を示す説明図
【図8】別実施形態による回転体の説明図
【図9】(a)は別実施形態による圧力交換装置の説明図、(b)は別実施形態による第2閉空間の説明図
【図10】(a)は別実施形態による圧力交換装置の説明図、(b)は別実施形態による第2閉空間の説明図
【図11】従来の圧力交換装置の説明図
【図12】従来の圧力交換装置の説明図
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下に、本発明による圧力交換装置の好ましい実施形態を説明する。
【0046】
図1に示すように、海水淡水化施設は、海水中の夾雑物を取り除く前処理部1と、前処理部1で前処理された海水を貯留するろ過海水槽2と、ろ過海水槽2に貯留された海水を保安フィルターに供給する供給ポンプ3と、逆浸透膜装置6の詰まりを防止するため海水中の微細な異物を除去する保安フィルター4と、保安フィルター4を通過した海水を昇圧する高圧ポンプ5と、昇圧された海水が供給される逆浸透膜装置6を備えている。逆浸透膜装置6によって海水中の各種塩類が除去され、飲料用水や工業用水等として利用できるように淡水化される。
【0047】
逆浸透膜装置6は、浸透膜の一方側の海水に圧力をかけることにより、逆浸透膜の他方側に海水中の各種塩類が除去された淡水を染み出させる装置であり、ろ過するためには、海水を浸透圧以上の所定の圧力にする必要がある。
【0048】
逆浸透膜装置6は、供給された海水のすべてを淡水化できるものではない。例えば、逆浸透膜装置6に供給される海水のうち40%は淡水化されて排水されるが、残りの60%は淡水化されずに非常に圧力の高い高圧濃縮海水として排水される。
【0049】
そこで、逆浸透膜装置6から排水される高圧濃縮海水のもつ余剰圧力を有効なエネルギーとして回収して利用する圧力交換装置10を備えている。
【0050】
ろ過海水槽2から逆浸透膜装置6に供給される海水のうち、40%は高圧ポンプ5で浸透圧以上の所定の圧力、例えば、6.9MPaまで昇圧される。逆浸透膜装置6に供給される残りの60%の海水(以下、「低圧海水」と記す)は、圧力交換装置10が逆浸透膜装置6から排水される高圧濃縮海水から回収した余剰圧力(6.75MPa)と、ブースターポンプ7により6.9MPaまで昇圧される。
【0051】
つまり、圧力交換装置10は、逆浸透膜装置6から排水される高圧濃縮海水Hiの圧力により、被濃縮流体である低圧海水Liを昇圧して、高圧海水Hoとしてブースターポンプ7を経由して逆浸透膜装置6に供給するとともに、圧力交換装置10に供給される低圧海水Liにより前記圧力が回収された後の低圧濃縮海水Loを排水する圧力交換処理を行なう。
【0052】
このように、圧力交換装置10は、逆浸透膜装置6から排水される高圧濃縮海水Hiの余剰圧力を捨てることなく逆浸透膜装置6に供給される低圧海水Liの昇圧に利用して、逆浸透膜装置6でのろ過に必要な圧力の一部を補うので、海水淡水化施設全体のエネルギー効率が向上する。
【0053】
図2に示すように、圧力交換装置10は、第1側方部材20と、第2側方部材30と、保持部材11で区画された空間内で、支軸43の周りに回転する回転体40とで構成される圧力交換部と、該圧力交換部を収容する内周円筒形状のケーシング13と、収容された第1側方部材20側のケーシング端面を封止する第1エンドカバー14と、収容された第2側方部材30側のケーシング端面を封止する第2エンドカバー15等を備えている。
【0054】
ケーシング13は、樹脂材料、FRP又は、二相ステンレス鋼やスーパー二相ステンレス鋼等の金属材料のように、海水に対する耐食性があり、ある程度強度を備えた材料で形成されている。ステンレス鋼等の高強度の金属管を樹脂材料やセラミックスで被覆して耐食性を付加して構成してもよい。これにより、耐食性に劣る安価な材料を利用することができコストダウンが図れる。
【0055】
第1側方部材20、第2側方部材30、回転体40及び保持部材11は、アルミナ等のセラミックス、FRP、又は、二相ステンレス鋼やスーパー二相ステンレス鋼等のように、海水に対する耐食性があり、十分に強度のある材料を用いることができる。また、二相ステンレス鋼やスーパー二相ステンレス鋼を用いた場合には、回転体40と第1側方部材20及び第2側方部材30との対向面を窒化処理し、或は、アルミナ等のセラミックを溶射し、肉盛溶接し、或はHIP処理して摩擦係数を低減する耐磨耗層を形成することが好ましい。
【0056】
回転体40の各端面と第1側方部材20及び第2側方部材30の隙間と、回転体40の外周と保持部材11の隙間があるため、前記隙間には各流体が進入する。
【0057】
当該隙間は狭すぎると回転体40と第1側方部材20又は第2側方部材30、回転体40と保持部材11が摺動して回転に対する抵抗となり、広すぎると高圧の流体から低圧の流体へと漏れる量が多すぎて圧力の交換効率が低下するため、例えば、1〜100μm程度が好ましい。
【0058】
図2及び図3(a)、(b)、(c)に示すように、回転体40には、その一端側の端面40aから高圧濃縮海水Hiが流入し、圧力が交換された後の低圧濃縮海水Loが流出する第1流路41と、同じく一端側の端面40aから低圧海水Liが流入し、圧力が交換された後の高圧海水Hoが流出する第2流路42とが、回転体40の他端側の端面40b側で連通するように形成された16組の圧力伝達部が回転軸心周りに放射状に配設されている。本実施形態では、高圧濃縮海水Hiと低圧濃縮海水Loが第1流体となり、低圧海水Liと高圧海水Hoが第2流体となる。
【0059】
各第1流路41及び各第2流路42は回転体40の回転軸心方向に貫通形成されいる。回転体40の両端面40a、40bは略同じ形状となっている。尚、第1流路41の断面積と第2流路42の断面積は等しくなるように形成され、圧力損失が生じ難いように構成されている。
【0060】
回転体40には回転軸心方向に沿って支軸43を挿通する挿通空間44が形成されている。挿通空間44は、支軸43の直径に対して十分大きく形成され、支軸43の外周と挿通空間44の内周との隙間は、回転体40と第1側方部材20及び第2側方部材30の隙間に比べて広い隙間となるように構成されている。
【0061】
図2に示すように、支軸43は、第1側方部材20と第2側方部材30に両端を支持されている。支軸43は、両端に雄ねじが切られ、該雄ねじ部分を第1側方部材20と第2側方部材30の夫々に形成された開口に挿通した状態でダブルナットで締め付けることで固定される。支軸43及びナットは押圧機構として機能し、ナットの締め付けを調整することで第1側方部材20と第2側方部材30の中心部分の間隔を調整可能に構成されている。
【0062】
回転体40と第1側方部材20の隙間や、回転体40と第2側方部材30の隙間は、支軸43を取り付けるナットの締め付け具合や、第2エンドカバー36をケーシング11に取り付けるナットの締め付け具合や、スペーサ35の幅を変更することで調整できる。前記隙間を適当な間隔にして、前記隙間に進入する流体の量を調整することができるので、圧力の交換効率の低下を防止することができる。尚、スペーサを弾性部材で構成し、ボルトの締め付けを変えることで厚みを調整したり、弾性部材の厚みや弾性力を変えることで、隙間の調整範囲を変えることもできる。
【0063】
図2及び図4(a)、(b)、(c)に示すように、第1側方部材20には、高圧濃縮海水Hiを回転体40の第1流路41に案内する第1流体流入路21と、高圧濃縮海水Hiとの間で圧力交換された高圧海水Hoを第2流路42から案内する第2流体流出路22と、低圧海水Liを第2流路42に案内する第2流体流入路23と、低圧海水Liとの間で圧力交換された低圧濃縮海水Loを第1流路41から案内する第1流体流出路24とが、その厚み方向に形成されている。
【0064】
第1流体流入路21は、第1側方部材20の開口部21aから開口部21bにかけて回転体40の周方向に沿って複数の第1流路41と連通するように拡径して形成された第1傾斜部としての流路壁21cを備えて構成されている。第2流体流出路22は、第1側方部材20の開口部22aから開口部22bにかけて回転体40の周方向に沿って複数の第2流路42と連通するように拡径して形成された第2傾斜部としての流路壁22cを備えて構成されている。第2流体流入路23は、第1側方部材20の開口部23aから開口部23bにかけて回転体40の周方向に沿って複数の第2流路42と連通するように拡径して形成された第2傾斜部としての流路壁23cを備えて構成されている。第1流体流出路24は、第1側方部材20の開口部24aから開口部24bにかけて回転体40の周方向に沿って複数の第1流路41と連通するように拡径して形成された第1傾斜部としての流路壁24cを備えて構成されている。
【0065】
流路壁21cの傾斜方向と流路壁23cの傾斜方向は円周方向に対して同じ向きに設定され(図6(a)、(c)参照)、流路壁21cの傾斜方向と流路壁22cの傾斜方向が円周方向に対して逆になるように設定され(図6(a)、(b)参照)、流路壁23cの傾斜方向と流路壁24cの傾斜方向が円周方向に対して逆になるように設定され(図6(c)、(d)参照)、各流入路及び流出路がトルク付与機構を構成する
【0066】
第1流体流入路21は、第1側方部材20の開口部20aから開口部21bにかけて回転体40の周方向に沿って複数の第1流路41と連通するように拡径して形成されているので、高圧濃縮海水Hiは流路壁21cに沿って分散し複数の第1流路41に流入することになる。
【0067】
このとき、高圧濃縮海水Hiは回転体40の周方向に沿って流れ、第1流路41の壁面へ圧力を付与する、つまり、回転体40を回転させるトルクを発生することになる。
【0068】
第2流体流出路22は、第1側方部材20の開口部22aから開口部22bにかけて回転体40の周方向に沿って複数の第2流路42と連通するように拡径して形成されているので、隣接する複数の第2流路42を流れる高圧海水Hoが合流して流路壁22cを経て流出することになる。
【0069】
このときに、高圧海水Hoは、第2流路42から第2流体流出路22に流れる水の通水断面積を広くする向きに第2流路42の壁面へ圧力を付与する、つまり、回転体40を回転させるトルクを発生することになる。
【0070】
流路壁21cの傾斜方向と流路壁22cの傾斜方向が逆になるように設定されているので、高圧濃縮海水Hiが第1流体流入路21から第1流路41に流入するときに発生するトルクと、高圧海水Hoが第2流路42から第2流体出路22へと流出するときに発生するトルクが同じ向きになる。
【0071】
つまり、回転体40に流入する高圧濃縮海水Hiと回転体40から流出する高圧海水Hoのエネルギーにより回転体40を回転させるトルクを発生させるので、何れか一方のエネルギーのみにより回転体40を回転させる場合より、大きなトルクを発生させることができる。
【0072】
同様に、低圧海水Liが第2流体流入路23から第2流路42に流入するときのエネルギーにより回転体40に付与されるトルクと、低圧濃縮海水Loが第1流路41から第1流体流出路24へと流出するときのエネルギーにより回転体40に付与されるトルクも同じ向きになる。
【0073】
このように、トルク付与機構が、第1流路41に流入する高圧濃縮海水Hiのエネルギーと第2流路42から流出する高圧海水Hoのエネルギー、及び、第2流路42に流入する低圧海水Liのエネルギーと第1流路41から流出する低圧濃縮海水Loのエネルギーにより回転体40を回転させるトルクを発生させる。
【0074】
従って、回転体40を回転させるための外部動力が不要となる。また、回転体40の回転に伴って、第1流体の流入と流出、第2流体の流出と流入が切り替えられるので、別途の流路の切替機構が不要となる。
【0075】
第1側方部材20には、挿通空間44に高圧濃縮海水Hiを導く第4連通路18が形成されている。挿通空間44及び第4連通路18は、圧力バランス調整機構として機能する。尚、本実施形態では、第4連通路18は、第1連通路17を介して第1閉空間16内に流入した高圧濃縮海水Hiを挿通空間44に導くように構成されているが、これに限らず、第4連通路を第2側方部材30に形成する構成であってもよい。また、高圧濃縮海水Hiのかわりに高圧海水Hoを挿通空間44に導くように構成してもよい。
【0076】
支軸43は、回転体40に形成された挿通空間44に挿通され、第1側方部材20と第2側方部材30に両端を支持される。第1閉空間16及び第2閉空間38には、高圧濃縮海水Hiや高圧海水Hoが導かれ、第1側方部材20と第2側方部材30の支軸43の支持部にも夫々回転体40方向への圧力が作用している。
【0077】
第1側方部材20に形成された第4連通路18を介して、挿通空間44に高圧濃縮海水Hiを導くことで、第1側方部材20及び第2側方部材30の支軸43の支持部を内側から第1側方部材20及び第2側方部材30の外側方向へ押圧する。この外側方向へ押圧する力と第1側方部材20と第2側方部材30の支軸43の支持部に回転体40方向に作用する圧力とを釣り合わすことで、第1側方部材20と第2側方部材30の支軸43の支持部の近傍が回転軸心方向に沿って歪むような事態がなくなるので、支軸43の軸芯方向への伸縮を防止することができる。
【0078】
図2に示すように、第1エンドカバー14には、第1流体流入路21と連通する第1流体流入口25と、第2流体流出路22と連通する第2流体流出口26と、第2流体流入路23と連通する第2流体流入口27と、第1流体流出路24と連通する第1流体流出口28が形成され、ケーシング13にボルトで螺着されている。第1エンドカバー14のケーシング13との接触面には、円周方向にシール19が配設され、ケーシング13の外部に流体が漏れるのが防止される。
【0079】
さらに、第1エンドカバー14の第1側方部材20との対向面側の中央部には凹部が形成され、該凹部と第1側方部材20の外側面とで第1閉空間16を構成し、第1流体流入路21と第1閉空間16とを連通する第1連通路17により、第1閉空間16には高圧濃縮海水Hiが流入するように構成されている。第1閉空間16と第1連通路17は、圧力バランス調整機構を構成し、第1連通路17から第1閉空間16に流入した高圧濃縮海水Hiの圧力は、第1側方部材20を回転体40に向けて押圧するように作用する。
【0080】
この第1側方部材20を回転体40に向けて押圧する力は、回転体40内の第1又は第2流体が、第1側方部材20に作用する押圧力と釣り合うので、第1側方部材を薄肉化しても流体の圧力によって回転軸心方向に歪むような事態が回避され、回転体40と第1側方部材20との隙間は一定に保たれ、回転体の円滑な回転が可能となる。
【0081】
第2側方部材30は、第1側方部材20とで保持部材11及び支軸43を支持するように構成されている。
【0082】
第2側方部材30には、第1側方部材20の各開口部21b、22b、23b、24bに対向する位置に、各開口部21b、22b、23b、24bと同形状(同一輪郭と同一面積)の開口部をもつ凹部31a、32a、33a、34aが形成されている。凹部31a、32a、33a、34aは、圧力バランス調整機構を構成する。ここで、この凹部31a、32a、33a、34aに面する回転体40の端面40bが回転体40を第1側方部材20へ押圧する受圧部となる。
【0083】
高圧濃縮海水Hiが第1流体流入路21から複数の第1流路41に分散して流入するときに、高圧濃縮海水Hiの圧力は回転体40の隣接する第1流路41の間の端面40aに作用し、回転体40を第2側方部材30側へ押圧し、高圧海水Hoが複数の第2流路42から第2流体流出路22へ流出するときに、高圧海水Hoの圧力は回転体40の隣接する第2流路42の間の端面40aに作用し、回転体40を第2側方部材30側へ押圧する。
【0084】
同様に、低圧海水Liが第2流体流入路23から複数の第2流路42に分散して流入するときに、低圧海水Liの圧力は回転体40の隣接する第2流路42の間の端面40aに作用し、回転体を第2側方部材に押圧し、低圧濃縮海水Loが複数の第1流路41から第1流体流出路24へ流出するときに、高圧海水Hoの圧力は回転体40の隣接する第1流路41の間の端面40aに作用し、回転体40を第2側方部材30側へ押圧する。
【0085】
このように、回転体40には、第1流路41及び第2流路に流入出する流体が端面40aに作用するため、第2側方部材30側へと押圧される力が働くが、第2側方部材に形成された凹部31a、32a、33a、34aにも、第1流体及び第2流体が流入し、回転体40の端面40bに作用して、回転体40を第1側方部材20側へ押圧するので、両端面40a、40bに作用する押圧力が釣り合うとともに押圧力の分布も等しくなり、回転体40は第1側方部材20又は第2側方部材30に一方的に摺動するようなことがなくなり、円滑に回転することができる。
【0086】
つまり、各開口部21b〜24bと凹部31a〜34aは同形状で対向する位置にあるため、流体が流入する際に回転体40の端面40aに圧力を作用させる受圧面積は、端面40bの受圧部の受圧面積と等しく、さらに圧力のかかる場所も軸方向に対向することとなり、回転体は軸方向に変位することがなくなる。
【0087】
第2側方部材30の外側には、スペーサ35を介して封止板36が配設されている。封止板36は周囲にはシール37が備えられている。第2エンドカバー15は、封止板36を第2側方部材30側へと押圧するようにケーシング13にボルトで螺着され、第2側方部材30とケーシング13と、封止板36を押圧する第2エンドカバー15とで第2閉空間38が区画されている。
【0088】
スペーサ35は、第2側方部材30と封止板36の間隔を、スペーサ35の厚みで規定される距離を保持するように構成されている。
【0089】
尚、第2側方部材30の凹部31aには、圧力伝達部の流体を第2閉空間38へと導く第2連通路39が厚み方向に貫通形成されている。第2閉空間38と第2連通路39は、圧力バランス調整機構を構成する。
【0090】
第2閉空間38には、圧力伝達部内の流体が第2連通路39を介して流入し、圧力伝達部の圧力が第2連通路39を介して第2閉空間38に伝達され、第2側方部材30を回転体40に向けて押圧するように作用する。
【0091】
回転体40内の高圧濃縮海水Hiと高圧海水Hoが、第2側方部材30に作用する押圧力と釣り合うので、第2側方部材を薄肉化しても流体の圧力によって回転軸心方向に歪むような事態が回避され、回転体40と第2側方部材30との隙間は一定に保たれ、回転体の円滑な回転が可能となる。
【0092】
以上のように、第1側方部材20と第2側方部材30には、回転体40内の流体によって軸心方向外側への圧力がかかるが、上述のように、第1側方部材20の外側の第1閉空間16に第1連通路17を介して第1流体流入路21に供給される高圧濃縮海水Hiが導かれ、第2側方部材30の外側に、第2連通路39から、第1流路41、第2流路42内の流体が導かれる第2閉空間38が形成されている。
【0093】
つまり、第1閉空間16及び第2閉空間38には同じ圧力の流体から圧力が伝達されることとなる。第1側方部材20及び第2側方部材30の夫々の両面に作用する力が釣り合うので、第1側方部材20及び第2側方部材30は、夫々回転体40の回転軸心方向に歪むことを防ぐことができ、支軸43に無駄な応力がかかることがない。
【0094】
尚、スペーサ35の厚みは、ケーシング13の端面から封止板36が僅かに突出する程度に構成されている。スペーサ35の厚みを変えることで、第2側方部材30の回転体40方向への押圧力が変わるため、回転体40の両端面40a、40bと各側方部材20、30の間に形成される隙間を調整することができる。
【0095】
尚、スペーサ35の内周面と外周面を連通する開口部をスペーサ35に形成し、第2閉空間38の流体がスペーサ35の外周側に導かれるように構成していれば、スペーサ35が流体の圧力により径方向に歪むようなことがない。
【0096】
また、第2側方部材30側のみではなく、第1側方部材20側にも同様のスペーサ及び封止板を備え、該スペーサの回転軸心方向の幅を変えることで、又は、両スペーサの回転軸心方向の幅を変えることで、回転体40の両端面40a、40bと各側方部材20、30の間に形成される隙間を調整可能に構成してもよい。
【0097】
保持部材11は、回転体40の直径より僅かに大きい内周径をもち、回転体40の回転軸心方向長さより僅かに長い円筒状部材で構成されている。保持部材11の周面には、第3連通路45が貫通形成され、回転体40と保持部材11の隙間に進入した高圧濃縮海水Hi又は高圧海水Loが第3連通路45を介して、保持部材11の外周面とケーシング13の内周面とで区画される外周閉空間46に流入するように構成されている。第3連通路45と外周閉空間46は、圧力バランス調整機構を構成する。
【0098】
尚、保持部材11は、軸方向や周方向に分割された複数の保持部材で構成することも可能で、分割部に隙間を設けて、該隙間を第3連通路45とすることも可能である。
【0099】
回転体40と第1側方部材20及び第2側方部材30との隙間を介して、回転体40の外周面と保持部材11の内周面との隙間に進入した流体が、保持部材11に形成された第3連通路45を介して、保持部材11の外周面とケーシング13の内周面との外周閉空間46に進入する。
【0100】
外周閉空間46に導かれた流体の圧力は、回転体40と保持部材11の内周面との隙間に作用する流体の圧力と略等しく、保持部材11の内周面と外周面の両面に作用する押圧力が釣り合うので、保持部材11を薄肉化しても径方向に歪むような事態が回避される。そのため、運転中に回転体40と保持部材11との隙間は広がることなく、所定の隙間が保持されるので円滑に回転できるようになる
【0101】
以上のように構成された圧力交換装置10の具体的な圧力交換処理の動作について説明する。
【0102】
図7に示すように、回転体40には、16組の圧力伝達部44、つまり、第1流路41a〜41pと第2流路42a〜42pが回転軸心周りに放射状に配設されている。図7中の二点鎖線で示す領域は、第1側方部材20の第1流体流入路21の開口部21bと、第2流体流出路22の開口部22bと、第2流体流入路23の開口部23bと、第1流体流出路24の開口部24bに対応する領域を表している。
【0103】
第1流体流入路21には、隣接する第1流路41c、41b、41a、41p、41o、41nの6本が同時に連通し、第2流体流出路22には、第1流路41c、41b、41a、41p、41o、41nと回転体40内で連通した第2流路42c、42b、42a、42p、42o、42nが同時に連通する。第2流体流入路23には、隣接する第2流路42f、42g、42h、42i、42j、42kの6本が同時に連通し、第1流体流出路24には、第2流路42f、42g、42h、42i、42j、42kと回転体40内で連通した第1流路41f、41g、41h、41i、41j、41kが連通する。
【0104】
第1流体流入路21に流入した高圧濃縮海水Hiが、第1流路41c、41b、41a、41p、41o、41nの夫々に分散して流入するときに、高圧濃縮海水Hiは、流路壁21cに沿って流れ、回転体40には、図7中一点鎖線矢印が示すように時計回りのトルクが付与される。
【0105】
第1流路41c、41b、41a、41p、41o、41nに流入した高圧濃縮海水Hiの圧力は、夫々回転体40内で連通した第2流路42c、42b、42a、42p、42o、42nの海水に伝達され、高圧海水Hoが第2流路42c、42b、42a、42p、42o、42nから第2流体流出路22へと流出する。
【0106】
高圧海水Hoが第2流路42c、42b、42a、42p、42o、42nから第2流体流出路22へと流出する際に、流れを広くするように流路壁22cに沿って流れ、回転体40には、図7中一点鎖線矢印が示すように時計回りのトルクが付与される。
【0107】
第2流体流入路23に流入した低圧海水Liが、第2流路42f、42g、42h、42i、42j、42kの夫々に分散して流入するときに、低圧海水Liは、流路壁23cに沿って流れ、回転体40には、図7中一点鎖線矢印が示すように時計回りのトルクが付与される。
【0108】
第2流路42f、42g、42h、42i、42j、42kに流入した低圧海水Liの圧力は、夫々回転体40内で連通した第1流路41f、41g、41h、41i、41j、41kの濃縮海水に伝達され、低圧濃縮海水Loが第1流路41f、41g、41h、41i、41j、41kから第1流体流出路24へと流出する。
【0109】
低圧濃縮海水Loが第1流路41f、41g、41h、41i、41j、41kから第1流体流出路24へと流出する際に、流れを広くするように流路壁24cに沿って流れ、回転体40には、図7中一点鎖線矢印が示すように時計回りのトルクが付与される。
【0110】
以上のように、第1流体流入路21から第1流路41に流入する高圧濃縮海水Hiが回転体40に与えるトルクと、第2流路42から第2流体流出路22へ流出する低圧海水Loが回転体40に与えるトルクと、第2流体流入路23から第2流路42に流入する低圧海水Liが回転体40に与えるトルクと、第1流路41から第1流体流出路24へ流出する低圧濃縮海水Loが回転体40に与えるトルクが、同一方向となり、本実施形態では、回転体40は時計周りに回転することになる。
【0111】
このように、回転体40の回転によって、ある圧力伝達部を構成する第1流路41と第2流路42の組と、夫々連通する第1流体流入路21と第2流体流出路22、第2流体流入路23と第1流体流出路24とが切り替わり、高圧濃縮海水Hiから高圧海水Hoへの圧力の伝達、及び、低圧海水Liから低圧濃縮海水Loへの圧力の伝達が連続的に行われ、つまり、第1流体と第2流体の圧力交換処理が連続的に行われる。
【0112】
尚、第1流路41及び第2流路42内では、濃縮海水と海水が混在することになるが、各々の流体は塩分濃度差があるため境界部分は拡散によりある一定量が常に混ざった領域となるだけで、当該領域は、ピストンのような役目をしながら第1流路41及び第2流路42の内部で揺動することになる。
【0113】
図7に示すように、第1流体流入路21、第2流体流出路22、第2流体流入路23、第1流体流出路24の何れにも連通しない第1流路41d、41e、41l、41m及び、第2流路42d、42e、42l、42mでは、圧力の交換は行われない。
【0114】
本実施形態では、第1流体流入路21、第2流体流出路22、第2流体流入路23、第1流体流出路24に、回転体の回転に伴って第1流路及び第2流路が同時に5本又は6本ずつ連通する場合について説明したが、同時に連通する本数は、これに限らない。尚、同時に連通する本数が少なく、何れにも連通しない本数が多いと、装置から排水される水の脈動が大きくなる。また、流体流入路及び流体流出路の何れにも連通しない本数が少ないと、高圧の流体から低圧の流体への漏れ量が増加する。
【0115】
回転体40は、回転体40に流入する高圧濃縮海水Hi及び低圧海水Li、回転体40から流出する高圧海水Ho及び低圧濃縮海水Loのエネルギーによって回転するように構成されているため、例えば、流入する各流体のエネルギーのみで回転する場合より、大きなトルクを付与することができる。
【0116】
流路壁21c、22c、23c、24cの形状が変わると、流入路から各流路に流入する流体、及び、各流路から流出路に流出する流体の流れの方向が変わり、回転体に加わるトルクが変わるので回転体の回転数が変わる。つまり、回転体40の回転数は、流路壁21c、22c、23c、24cの形状に依存する。圧力交換装置の処理流量は、回転体40の回転数に依存するため、当該形状を変更して、回転体40の回転数を調整することで圧力交換装置の処理流量を容易に調整できる。例えば、当該形状の異なる第1側方部材を用意しておき、交換することで、容易に処理流量を調整できる。
【0117】
上述のように、第1側方部材20に、第1流体流入路21、第1流体流出路24、第2流体流入路23、第2流体流出路22が形成され、回転体40の一端側から圧力伝達部へ第1流体又は第2流体を流入させて、回転体40内で第1流体と第2流体との圧力を交換し、前記一端側から第2流体又は第1流体を流出させる構成であるので、同じ流量の圧力交換処理を行なう場合に、従来の圧力交換装置のように直管で構成された圧力伝達部と比較して、同じ流量の圧力交換処理を行なう場合に回転体の回転軸心方向の長さが短くなり、装置のコンパクト化と低コスト化を図ることができ、また、圧力交換処理の流量を増加させる必要がある場合でも、回転体の回転軸心方向の長さが短くなることで装置の極端な大型化を回避することができる。
【0118】
さらに、第1流体流入路及び流出路、第2流体流入路及び流出路が第1側方部材20にのみ形成されているため、各流体の流入路又は流出路と接続する配管を第1側方部材20側に纏めて設置すればよく、従来の装置のように回転体の両端側に夫々流体の流入路又は流出路と接続する配管を設置する場合と比較して、配管設置作業やメンテナンス作業等の作業性が良好になる。つまり、配管が第1側方部材20側にまとまることで、配管を含めた設置スペースが小さくなる。さらに、配管を外すことなく、配管のない第2側方部材30側からメンテナンス可能となり、メンテナンス性が向上する。
【0119】
上述の実施形態では、第1流路41の断面積と第2流路42の断面積は等しくなるように形成することで、流路断面積の変化による余分な圧力損失が低減できるように構成したが、第1流路41と第2流路42の断面積は完全に等しい必要はない。
【0120】
上述の実施形態では、第1流路41と第2流路42は回転体40の他端側の端面40b側で連通した構成であるが、図8(a)に示すように、端面40bから端面40a側に所定距離離隔した位置で連通する構成であってもよい。つまり、連通部は端面40aと端面40bの間の任意の位置であってもよい。回転体40の端面40aと端面40bが全く同形状となり同面積となるので、回転体40の軸心方向の圧力バランスがよい。
【0121】
さらには、図8(b)に示すように、第1流路41及び第2流路42の回転体40の端面40b側を一部の開口部40cや40dを除いて閉塞するように構成してもよい。
【0122】
第1流路41及び第2流路42の断面形状は、真円や楕円等の円形状、三角、四角等の多角形状であってもよく、第1流路41及び第2流路42の本数や断面形状を変更することで、圧力伝達部44の総容量を変更して、圧力交換装置10の処理流量を変更することができる。尚、図3(a)に示した第1流路41及び第2流路42の断面形状は、回転体の断面に対し開口率を大きく取れる点で好ましい。
【0123】
上述の実施形態では、保持部材11と第2側方部材30を別体で構成したが、保持部材11と第2側方部材30をカップ状に一体形成し、第1側方部材20で閉じられる空間内に回転体40が配置されるように構成してもよい。
【0124】
上述の実施形態では、第1流体流入路21、第2流体流出路22、第2流体流入路23、第1流体流出路24のように、各流入路と流出路が一対ずつ、つまり、夫々1つずつ、合計すると4つ備えられる構成であるが、各流入路と流出路は夫々2つ以上の複数であってもよい。複数備える場合は、回転体40に流入及び回転体40から流出する各流体の圧力バランスの観点から各流入路及び流出路は回転軸心周りに点対称に配置されることが好ましい。
【0125】
上述の実施形態では、トルク付与機構は、第1流路41に流入する、又は、第1流路41から流出する濃縮海水のエネルギー、及び、第2流路42に流入する、又は、第2流路42から流出する海水のエネルギーにより回転体40にトルクを付与する構成であるが、前記トルク付与機構は、少なくとも第1流路41に流入する、第1流路41から流出する濃縮海水のエネルギー、又は、第2流路42に流入する、第2流路42から流出する海水のエネルギーにより回転体40にトルクを付与するように構成すればよい。
【0126】
何れかのエネルギーのみを利用する場合、第2流路42より第1流路41のほうが、回転体40の半径方向外側に配置されているため、第1流路41に流入する高圧濃縮海水Hiのエネルギーを利用して回転体40にトルクを付与するように構成するとエネルギー効率がよい。
【0127】
上述の実施形態では、回転体40は第1流体及び第2流体のエネルギーにより回転する構成について説明したが、回転体40に駆動軸を連結し、駆動機等の外部動力で回転するように構成してもよい。外部動力で回転体40を回転駆動できるため、安定した回転を得ることができるので装置の信頼性が向上する。
【0128】
上述の実施形態では、第2エンドカバーと保持部材を別体で説明したが、第2エンドカバーと保持部材を一体で構成してもよい。
【0129】
上述の実施形態では、保持部材とケーシングを別体で説明したが、ケーシングを備えずに、保持部材をケーシングとしても機能させてもよい。ただし、この場合は保持部材の内周と外周の圧力バランス調整機構を有しない構成となる。
【0130】
上述の実施形態では、第2閉空間を1つの空間として説明したが、スペーサ35に第2閉空間38を区画する区画壁38cを備えて、例えば、図9(a)、(b)に示すように、高圧の流体が流入する空間38aと、低圧の流体が流入する空間38bの2つの空間に区画し、空間38aには連通路39aから高圧流体が流入し、空間38bには連通路39bから低圧流体が流入するように構成してもよい。
【0131】
さらに、例えば、図10(b)に示すように、第1側方部材20に形成された第1流体流入路21と第2流体流出路22と第2流体流入路23と第1流体流出路24と対応する位置の4つの空間(高圧の流体が流入する2つの空間38a、低圧の流体が流入する2つの空間38b)に区画して、夫々の空間に夫々対応する流体が流入するように構成してもよい。このように、第2閉空間を複数の空間に区画することで、第2側方部材の両面に作用する押圧力を均等にすることができるので、第2側方部材の変形がさらに抑制される。
【0132】
上述の実施形態では、スペーサ35と第2エンドカバー36を別体で説明したが、図10(a)に示すように、スペーサ35と第2エンドカバー36を一体で構成し、第2側方部材30との間で、第2閉空間を構成することもできる。
【0133】
上述の何れの実施形態でも、第1流体流入路に高圧濃縮海水を流入させ、第2流体流入路に被濃縮流体である低圧海水を流入させる構成について説明したが、第1流体流入路に被濃縮流体である低圧海水を流入させ、第2流体流入路に高圧濃縮海水を流入させてもよい。
【0134】
以上説明した圧力交換装置の具体的構成は実施形態の記載に限定されるものではなく、本発明による作用効果を奏する範囲において適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0135】
6:逆浸透膜装置
10:圧力交換装置
11:保持部材
13:ケーシング
14:第1エンドカバー
15:第2エンドカバー
16:第1閉空間
17:第1連通路
18:第4連通路
20:第1側方部材
21:第1流体流入路
21a:開口部
21b:開口部
21c:流路壁
22:第2流体流出路
22a:開口部
22b:開口部
22c:流路壁
23:第2流体流入路
23a:開口部
23b:開口部
23c:流路壁
24:第1流体流出路
24a:開口部
24b:開口部
24c:流路壁
30:第2側方部材
31a、32a、33a、34a:凹部
35:スペーサ
36:封止板
37:シール
38:第2閉空間
39:第2連通路
40:回転体
41:第1流路
42:第2流路
43:支軸
44:挿通空間
45:第3連通路
46:外周閉空間
Hi:高圧濃縮海水(濃縮流体)
Li:低圧海水(被濃縮流体)
Ho:高圧海水(被濃縮流体)
Lo:低圧濃縮海水(濃縮流体)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流体と第2流体との間で圧力を交換する圧力交換装置であって、
一端側から第1流体が流入及び流出する第1流路と前記一端側から第2流体が流入及び流出する第2流路とが連通するように形成された圧力伝達部が、回転軸心周りに配設された回転体と、
第1流体を前記第1流路に案内する第1流体流入路と、第1流体との間で圧力交換された第2流体を前記第2流路から案内する第2流体流出路と、第2流体を前記第2流路に案内する第2流体流入路と、第2流体との間で圧力交換された第1流体を前記第1流路から案内する第1流体流出路とが、厚み方向に形成された第1側方部材と、
前記回転体を第1側方部材との間で保持部材を介して回転可能に挟持する第2側方部材と、で構成される圧力交換部を備え、
第1流路及び第2流路が前記回転体を貫通するように形成され、
前記第1流体又は第2流体により、圧力交換部の圧力バランスを調整する圧力バランス調整機構を備えている圧力交換装置。
【請求項2】
前記第1側方部材は、少なくとも、第1流体流入路のうち前記回転体との対向面側に、前記回転体の周方向に沿って複数の第1流路と連通するように形成された第1流体流入路開口部と、第2流体流入路のうち前記回転体との対向面側に、前記回転体の周方向に沿って複数の第2流路と連通するように形成された第2流体流入路開口部と、を備え、
前記圧力バランス調整機構は、前記第1側方部材に形成された前記第1流体流入路と第2流体流出路と第2流体流入路と第1流体流出路の前記回転体との対向面側の各開口部に相対する、前記回転体の第1側方部材との対向面側の受圧面積と、前記回転体の第2側方部材との対向面側の受圧面積とを略同一とする受圧部を備えている請求項1記載の圧力交換装置。
【請求項3】
前記第1側方部材は、少なくとも、第1流体流入路のうち前記回転体との対向面側に、前記回転体の周方向に沿って複数の第1流路と連通するように拡径して形成された第1傾斜部と、第2流体流入路のうち前記回転体との対向面側に、前記回転体の周方向に沿って複数の第2流路と連通するように拡径して形成された第2傾斜部と、を備え、
第1傾斜部の傾斜方向と第2傾斜部の傾斜方向が同じになるように設定され、
前記第1流路に流入する第1流体のエネルギーと、前記第2流路に流入する第2流体のエネルギーにより前記回転体にトルクを付与するトルク付与機構を備え、
前記圧力バランス調整機構は、
前記第1側方部材に形成された前記第1流体流入路と第2流体流出路と第2流体流入路と第1流体流出路の前記回転体との対向面側の各開口部と、
前記第2側方部材の前記回転体との対向面に形成された、前記各開口部に対向する前記各開口部と輪郭と面積を同一とする凹部を備えている請求項2記載の圧力交換装置。
【請求項4】
前記第1側方部材の外側に配置された第1エンドカバーと、前記第2側方部材の外側に配置された第2エンドカバーを備え、
前記第1エンドカバーには、少なくとも前記第1流体流入路又は第2流体流入路と夫々連通する第1流体流入口又は第2流体流入口が形成され、
前記圧力バランス調整機構は、
少なくとも前記第1側方部材と前記第1エンドカバーとで区画される第1閉空間と、
前記第1流体又は第2流体を前記第1閉空間に導くように、前記第1エンドカバーに形成された第1連通路と、
少なくとも前記第2側方部材と前記第2エンドカバーとで区画された第2閉空間と、
前記第1流体又は第2流体を前記第2閉空間に導くように、前記第2側方部材に形成された第2連通路と、
を備えている請求項1から3の何れかに記載の圧力交換装置。
【請求項5】
前記保持部を収容する筒状のケーシングを備え、
前記圧力バランス調整機構は、
前記第1及び第2側方部材と前記保持部材の外周面と前記ケーシングの内周面とで区画された外周閉空間と、
前記回転体と保持部材との隙間と前記外周閉空間を連通するように、前記保持部材に形成された第3連通路とを備えている請求項1から4の何れかに記載の圧力交換装置。
【請求項6】
前記第1側方部材と第2側方部材に両端を支持された支軸を備え、
前記回転体には回転軸心方向に沿って前記支軸を挿通する挿通空間が形成され、
前記第1側方部材又は第2側方部材には、前記挿通空間に第1流体又は第2流体を導く第4連通路が形成されている請求項4又は5記載の圧力交換装置。
【請求項7】
前記第1流体流入路に供給される第1流体が逆浸透膜装置から排水される高圧濃縮流体であり、前記第2流体流入路に供給される第2流体が前記逆浸透膜装置に給水される被濃縮流体である請求項1から6の何れかに記載の圧力交換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−206019(P2012−206019A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73730(P2011−73730)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】