説明

圧力容器用ライナ

【課題】 耐圧強度が増大した圧力容器用ライナを提供する。
【解決手段】 圧力容器用ライナ1は、筒状の胴2および胴2の両端開口を閉鎖する鏡板3,4よりなる。圧力容器用ライナ1を、両端が開口した筒状体からなりかつ胴2を構成する第1ライナ構成部材10と、第1ライナ構成部材10の両端部に接合されかつ両鏡板3,4を構成する2つの第2ライナ構成部材11,12とにより形成する。第1ライナ構成部材10の強度を、第2ライナ構成部材11,12の強度よりも小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば自動車産業、住宅産業、軍事産業、航空宇宙産業、医療産業等の種々の分野において、発電のための燃料となる水素ガスや天然ガスを貯蔵する圧力容器、または酸素ガスなどの種々のガスを貯蔵する圧力容器に用いられる圧力容器用ライナに関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、「胴」という用語は、圧力容器用ライナの真っ直ぐな部分を意味し、「鏡板」という用語は、圧力容器用ライナの両端の曲面状の部分を意味するものとする。また、この明細書および特許請求の範囲において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【背景技術】
【0003】
近年、大気汚染対策として、排気ガスのクリーンな天然ガス自動車や、燃料電池自動車の開発が進められている。これらの自動車は、燃料となる天然ガスや水素ガスを高圧で充填した圧力容器を搭載している。圧力容器に充填されるガスの圧力は現状では20〜35MPaが主流であるが、航続距離を延ばすために、充填されるガスのさらなる高圧化が求められている。
【0004】
従来、このような圧力容器として、筒状の胴と胴の両端開口を閉鎖する鏡板とよりなり、両端が開口した円筒状体からなりかつ胴を構成するアルミニウム押出形材製の第1ライナ構成部材と、略椀状でかつ第1ライナ構成部材の両端部に溶接されて鏡板を構成する2つのアルミニウムダイキャスト製第2ライナ構成部材とにより形成された圧力容器用ライナと、圧力容器用ライナの外周面を覆う繊維強化樹脂層とからなり、繊維強化樹脂層が、補強繊維を両第2ライナ構成部材にかかるようにして第1ライナ構成部材の長さ方向に巻き付けるとともにエポキシ樹脂で含浸固定してなるヘリカル巻補強層と、補強繊維を第1ライナ構成部材の周りに周方向に巻き付けるとともにエポキシ樹脂で含浸固定してなるフープ巻補強層とよりなるものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1記載の圧力容器においては、耐圧強度の大部分が繊維強化樹脂層により確保されており、圧力容器に内圧が負荷されて繊維強化樹脂層が変形した場合、その変形分だけ圧力容器用ライナも変形するようになっている。したがって、圧力容器の内圧が繊維強化樹脂層の破壊強度以上になった際に、圧力容器用ライナが破壊される場合には、圧力容器用ライナは適正な破壊挙動を示すこととなり、これとは逆に、圧力容器の内圧が繊維強化樹脂層の破壊強度に達する前に、圧力容器用ライナが破壊される場合には、圧力容器用ライナは不適正な破壊挙動を示すこととなって、洩れが発生するおそれがある。
【0006】
ところで、特許文献1記載の圧力容器用ライナのように、ライナ構成部材どうしの溶接接合部が存在する場合、溶接接合部が溶接時に熱影響を受けて母材に比べて強度が低下する。そして、溶接接合部の強度が低下することや、溶接接合部に余盛が残存したりすることに起因して、内圧が負荷されると溶接接合部に応力が集中し、その結果内圧が繊維強化樹脂層の破壊強度に達する前に、溶接接合部が破損して漏れが発生するおそれがある。このような破損を防止するためには、上記繊維強化樹脂層のヘリカル巻補強層の数を増やしたり、両ライナ構成部材の接合端部の肉厚を大きくしたり、溶接接合部に再溶体化処理および人工時効処理を施したりする必要があり、その圧力容器の重量が大きくなるとともに、コストが高くなるという問題がある。
【特許文献1】特開平9−42595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の目的は、上記問題を解決し、耐圧強度が増大した圧力容器用ライナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
1)筒状の胴および胴の両端開口を閉鎖する鏡板よりなり、少なくとも一端が開口した筒状体からなりかつ胴を構成する第1ライナ構成部材と、第1ライナ構成部材の開口端部に接合されかつ鏡板を構成する第2ライナ構成部材とにより形成された圧力容器用ライナであって、
第1ライナ構成部材と第2ライナ構成部材とが強度差を有している圧力容器用ライナ。
【0009】
2)第1ライナ構成部材および第2ライナ構成部材がそれぞれアルミニウムからなる上記1)記載の圧力容器用ライナ。
【0010】
3)筒状の胴および胴の両端開口を閉鎖する鏡板よりなり、両端が開口した筒状体からなりかつ胴を構成する第1ライナ構成部材と、第1ライナ構成部材の両端部に接合されかつ両鏡板を構成する2つの第2ライナ構成部材とにより形成された圧力容器用ライナであって、
第1ライナ構成部材の強度が、第2ライナ構成部材の強度よりも小さくなっている圧力容器用ライナ。
【0011】
4)筒状の胴および胴の両端開口を閉鎖する鏡板よりなり、一端が開口するとともに他端が閉鎖された筒状体からなりかつ胴および一方の鏡板を構成する第1ライナ構成部材と、第1ライナ構成部材の開口端部に接合されかつ他方の鏡板を構成する第2ライナ構成部材とにより形成された圧力容器用ライナであって、
第1ライナ構成部材の強度が、第2ライナ構成部材の強度よりも小さくなっている圧力容器用ライナ。
【0012】
5)第1ライナ構成部材および第2ライナ構成部材がそれぞれアルミニウムからなる上記3)または4)記載の圧力容器用ライナ。
【0013】
6)第1ライナ構成部材の0.2%耐力をX、第2ライナ構成部材の0.2%耐力をYとした場合、20%≦X/Y≦90%の条件を満たす上記5)記載の圧力容器用ライナ。
【0014】
7)筒状の胴および胴の両端開口を閉鎖する鏡板よりなり、少なくとも一端が開口した筒状体からなりかつ胴を構成する第1ライナ構成部材と、第1ライナ構成部材の開口端部に接合されかつ鏡板を構成する第2ライナ構成部材とにより形成された圧力容器用ライナであって、
少なくとも一部に焼鈍処理が施されており、接合の際の熱影響部の長さをHA、焼鈍処理が施された部分の長さをA、胴の長さをLとした場合、HA<A≦Lの条件を満たす圧力容器用ライナ。
【0015】
8)第1ライナ構成部材と第2ライナ構成部材との接合部に、接合の際の熱影響部の全体を含むように焼鈍処理が施されている上記7)記載の圧力容器用ライナ。
【0016】
9)第1ライナ構成部材における熱影響部を除いた部分に焼鈍処理が施されている上記7)記載の圧力容器用ライナ。
【0017】
10)第1ライナ構成部材および第2ライナ構成部材がそれぞれアルミニウムにより形成されている上記7)〜9)のうちのいずれかに記載の圧力容器用ライナ。
【0018】
11)第1ライナ構成部材と第2ライナ構成部材との接合が、溶融溶接法により行われている上記1)〜10)のうちのいずれかに記載の圧力容器用ライナ。
【0019】
12)第1ライナ構成部材と第2ライナ構成部材との接合が、摩擦攪拌接合法により行われている上記1)〜10)のうちのいずれかに記載の圧力容器用ライナ。
【0020】
13)上記1)〜12)のうちのいずれかに記載された圧力容器用ライナの外周面が繊維強化樹脂層で覆われている圧力容器。
【0021】
14)繊維強化樹脂層が、補強繊維を両鏡板にかかるようにして胴の長さ方向に巻き付けてなるヘリカル巻繊維層および補強繊維を胴の周囲に巻き付けてなるフープ巻繊維層と、これらの繊維層に含浸させて硬化させた樹脂とよりなる上記13)記載の圧力容器。
【0022】
15)燃料水素用圧力容器、燃料電池、および燃料水素用圧力容器から燃料電池に燃料水素ガスを送る圧力配管を備えており、燃料水素用圧力容器が上記13)または14)記載の圧力容器からなる燃料電池システム。
【0023】
16)上記15)記載の燃料電池システムを搭載した燃料電池自動車。
【0024】
17)上記15)記載の燃料電池システムを備えたコージェネレーションシステム。
【0025】
18)天然ガス用圧力容器および天然ガス用圧力容器から天然ガスを送り出す圧力配管を備えており、天然ガス用圧力容器が上記13)または14)記載の圧力容器からなる天然ガス供給システム。
【0026】
19)上記18)記載の天然ガス供給システムと、発電機と、発電機駆動装置を備えているコージェネレーションシステム。
【0027】
20)上記18)記載の天然ガス供給システムと、天然ガスを燃料とするエンジンとを備えている天然ガス自動車。
【0028】
21)酸素用圧力容器および酸素用圧力容器から酸素ガスを送り出す圧力配管を備えており、酸素用圧力容器が上記13)または14)記載の圧力容器からなる酸素ガス供給システム。
【発明の効果】
【0029】
上記1)および2)の圧力容器用ライナによれば、第1ライナ構成部材と第2ライナ構成部材とが強度差を有しているので、これを用いた圧力容器に内圧が負荷された場合に、両ライナ構成部材よりも低強度の接合部に応力が集中したとしても、強度の小さいライナ構成部材が変形することによって、接合部にかかる応力が吸収される。したがって、耐圧強度が増大し、内圧が繊維強化樹脂層の破壊強度に達する前の接合部の破損が防止される。しかも、耐圧強度が増大するので、外周面を覆う繊維強化樹脂層のヘリカル巻補強層の数を増やしたり、両ライナ構成部材の接合端部の肉厚を大きくしたり、接合部に再溶体化処理および人工時効処理を施したりする必要がなく、圧力容器用ライナを用いた圧力容器の重量増が防止されるとともに、コストが安くなる。
【0030】
上記3)〜5)の圧力容器用ライナによれば、胴を構成する第1ライナ構成部材の強度が、第2ライナ構成部材の強度よりも小さくなっているので、これを用いた圧力容器に内圧が負荷された場合に、両ライナ構成部材よりも低強度の接合部に応力が集中したとしても、第1ライナ構成部材が変形することにより、接合部にかかる応力が吸収される。特に、第1ライナ構成部材は胴を構成するものであってその長さは接合部に比較して著しく長いから変形しやすくなっており、第1ライナ構成部材の変形による応力吸収効果が優れたものになる。したがって、耐圧強度が増大し、内圧が繊維強化樹脂層の破壊強度に達する前の接合部の破損が防止される。しかも、耐圧強度が増大するので、外周面を覆う繊維強化樹脂層のヘリカル巻補強層の数を増やしたり、両ライナ構成部材の接合端部の肉厚を大きくしたり、接合部に再溶体化処理および人工時効処理を施したりする必要がなく、圧力容器用ライナを用いた圧力容器の重量増が防止されるとともに、コストが安くなる。また、口金取付部を形成すべき鏡板を構成する第2ライナ構成部材を高強度にすることができる。
【0031】
上記6)の圧力容器用ライナによれば、必要な耐圧性を確保しつつ、確実に接合部の破損を防止することができる。
【0032】
上記7)〜9)の圧力容器用ライナによれば、少なくとも一部に焼鈍処理が施されており、接合の際の熱影響部の長さをHA、焼鈍処理が施された部分の長さをA、胴の長さをLとした場合、HA<A≦Lの条件を満たしているので、焼鈍処理が施された部分を低強度、高延性にすることができる。したがって、この圧力容器用ライナを用いた圧力容器に内圧が負荷された場合に、両ライナ構成部材よりも低強度の接合部に応力が集中したとしても、焼鈍処理が施された部分が伸びるように変形することにより、接合部にかかる応力が吸収される。その結果、耐圧強度が増大し、内圧が繊維強化樹脂層の破壊強度に達する前の接合部の破損が防止される。しかも、耐圧強度が増大するので、外周面を覆う繊維強化樹脂層のヘリカル巻補強層の数を増やしたり、両ライナ構成部材の接合端部の肉厚を大きくしたり、接合部に再溶体化処理および人工時効処理を施したりする必要がなく、圧力容器用ライナを用いた圧力容器の重量増が防止されるとともに、コストが安くなる。
【0033】
上記13)および14)の圧力容器よれば、上記1)〜7)と同様な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、全図面を通じて同一部分および同一物には同一符号を付して重複する説明を省略する。また、以下の説明において、各図面の左右を左右というものとする。
【0035】
実施形態1
この実施形態は図1および図2に示すものである。
【0036】
図1はこの発明の実施形態1の圧力容器用ライナを示し、図2は圧力容器用ライナを用いた圧力容器を示す。
【0037】
図1において、圧力容器用ライナ(1)は、円筒状の胴(2)と、胴(2)の両端開口を閉鎖する部分球面状鏡板(3)(4)と、一方の鏡板(3)に形成された口金取付部(5)とよりなる。口金取付部(5)には、その外端から貫通穴(5a)が形成され、貫通穴(5a)の内周面にめねじ(6)が形成されている。
【0038】
圧力容器用ライナ(1)は、両端が開口した真っ直ぐな円筒状体からなるアルミニウム製第1ライナ構成部材(10)と、略椀状体からなりかつ第1ライナ構成部材(10)の両端部に接合された2つのアルミニウム製第2ライナ構成部材(11)(12)とにより形成されている。第1ライナ構成部材(10)は胴(2)の大部分を構成する。第2ライナ構成部材(11)(12)は、胴(2)の両端部および両鏡板(3)(4)を構成する。また、一方の第2ライナ構成部材(11)には口金取付部(5)が一体に形成されている。第1ライナ構成部材(10)は、たとえば熱間押出により形成されたものであり、第2ライナ構成部材(11)(12)は、たとえば熱間鍛造により形成されたものである。第1ライナ構成部材(10)と第2ライナ構成部材(11)(12)との接合は、たとえばMIG、TIGなどの溶融溶接や、摩擦圧接や、ろう付や、摩擦攪拌接合により行われる。接合部を(13)で示す。
【0039】
第1ライナ構成部材(10)および第2ライナ構成部材(11)(12)は、それぞれ、たとえばJIS A2000系合金、JIS A6000系合金およびJIS A7000系合金のうちのいずれかにより形成されている。これらのライナ構成部材(10)(11)(12)は同じ材料で形成されていてもよいし、あるいは3つのうち少なくとも2つが異なる材料で形成されていてもよい。第1ライナ構成部材(10)の質別は、たとえばO、T1、T4またはT5である。各第2ライナ構成部材(11)(12)の質別は、たとえばT6またはT4である。そして、第1ライナ構成部材(10)の強度は第2ライナ構成部材(11)(12)の強度よりも小さくなっている。ここで、第1ライナ構成部材(10)の0.2%耐力をX、第2ライナ構成部材(11)(12)の0.2%耐力をYとした場合、20%≦X/Y≦90%の条件を満たすことが好ましい。X/Yが過小の場合、第1ライナ構成部材(10)の強度が不足し、圧力容器用ライナの胴(2)としては不適正となり、X/Yが過大の場合、圧力容器用ライナ(1)を用いた圧力容器に内圧が負荷された場合の第1ライナ構成部材(10)の変形が不十分になるおそれがある。
【0040】
たとえば第1ライナ構成部材(10)および両第2ライナ構成部材(11)(12)をそれぞれJIS A6061により形成した場合、これらのライナ構成部材(10)(11)(12)の質別の組み合わせの具体例を表1に例示する。
【表1】

【0041】
なお、表1の例7において、第1および第2ライナ構成部材(10)(11)(12)の質別がいずれもT4であるが、この場合、押出の際の熱間加工温度を異なったものにすること、または熱間鍛造後の冷却速度を異なったものにすることにより、強度を異なったものにする。
【0042】
また、圧力容器用ライナ(1)は、図2に示すように、周囲の全体が、たとえばカーボン繊維強化樹脂などからなる繊維強化樹脂層(14)で覆われ、圧力容器(15)として用いられる。図示は省略したが、繊維強化樹脂層(14)は、補強繊維を胴(2)の長さ方向とほぼ直角をなすように巻き付けてなるフープ巻繊維層に樹脂を含浸硬化させたフープ巻補強層と、補強繊維を胴(2)の長さ方向に対して傾斜するように巻き付けてなるヘリカル巻繊維層に樹脂を含浸硬化させたヘリカル巻補強層とよりなる。各補強層を構成する繊維としては、たとえばカーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などが用いられるが、カーボン繊維を用いることが好ましい。また、各補強層を構成する樹脂としては、たとえばエポキシ樹脂が用いられる。各補強層は、フィラメントワインディング法により樹脂を含浸させた補強繊維、あるいは樹脂を含浸させた補強繊維の束を巻き付けた後、樹脂を硬化させることにより形成される。
【0043】
圧力容器(15)は、燃料水素ガス用強化圧力容器、燃料電池、および燃料水素ガス用強化圧力容器から燃料電池に燃料水素ガスを送る圧力配管を備えた燃料電池システムにおける燃料水素ガス用強化圧力容器として用いられる。燃料電池システムは、燃料電池自動車に搭載される。また、燃料電池システムはコージェネレーションシステムにも用いられる。
【0044】
また、圧力容器(15)は、天然ガス用強化圧力容器および天然ガス用強化圧力容器から天然ガスを送り出す圧力配管を備えた天然ガス供給システムにおける天然ガス用強化圧力容器として用いられる。天然ガス供給システムは、発電機および発電機駆動装置とともにコージェネレーションシステムに用いられる。また、天然ガス供給システムは、天然ガスを燃料とするエンジンを備えている天然ガス自動車に用いられる。
【0045】
さらに、圧力容器(15)は、酸素ガス用強化圧力容器および酸素ガス用強化圧力容器から酸素ガスを送り出す圧力配管を備えた酸素ガス供給システムにおける酸素ガス用強化圧力容器として用いられる。
【0046】
次に、実施形態1の圧力容器用ライナ(1)の実施例について、比較例とともに説明する。
【0047】
実施例1〜14および比較例1〜6
JIS A6061を用いて、外径200mm、長さ600mm、肉厚5mmの円筒状体を熱間押出成形し、この円筒状体に溶体化処理、焼鈍処理、人工時効処理、自然時効処理を適宜施すことにより、質別の異なる複数の第1ライナ構成部材を形成した。また、JIS A6061を用いて、端部の肉厚5mmの略椀状体を熱間鍛造成形し、この略椀状体に溶体化処理、焼鈍処理、人工時効処理、自然時効処理を適宜施すことにより、質別の異なる複数の第2ライナ構成部材を形成した。
【0048】
ここで、溶体化処理条件は、530℃×1時間加熱→水冷であり、人工時効処理条件は180℃×8時間加熱であり、焼鈍処理は400℃×1時間加熱である。
【0049】
そして、第1ライナ構成部材および第2ライナ構成部材の0.2%耐力を測定した。
【0050】
ついで、第1ライナ構成部材の両端部に、それぞれ第1ライナ構成部材よりも高強度でかつ質別が同じである第2ライナ構成部材をTIG溶接法または摩擦攪拌接合法(FSW)により接合し、実施例1〜14の圧力容器用ライナを製造した。また、第1ライナ構成部材の両端部に、それぞれ第1ライナ構成部材と強度が等しい第2ライナ構成部材をTIG溶接法または摩擦攪拌接合法(FSW)により接合し、比較例1〜6の圧力容器用ライナを製造した。
【0051】
評価試験
実施例1〜14および比較例1〜6の圧力容器用ライナの周囲に繊維強化樹脂層を形成し、圧力容器を得た。繊維強化樹脂層は、カーボン繊維からなる3層のフープ巻繊維層にエポキシ樹脂を含浸硬化させたフープ巻補強層と、カーボン繊維からなる3層のヘリカル巻繊維層にエポキシ樹脂を含浸硬化させたヘリカル巻補強層とよりなり、繊維強化樹脂層における樹脂と繊維との割合は6:4としておいた。
【0052】
そして、これらの圧力容器の内圧を水圧により破壊するまで昇圧させ、破壊圧力を求めるとともに、圧力容器用ライナにおける破壊部位を調べた。なお、圧力容器は、使用圧20MPa仕様とし、破壊圧は高圧容器則別添9に示されている使用圧×2.25(=45MPa)、胴部破壊を基準とした。
【0053】
圧力容器用ライナの第1および第2ライナ構成部材の質別、第1および第2ライナ構成部材の0.2%耐力、第1ライナ構成部材の0.2%耐力(X)と第2ライナ構成部材の0.2%耐力(Y)との比率(X/Y)、破壊圧力、破壊部位、ならびに判定結果を表2に示す。なお、判定結果は、破壊圧力が45MPa以上でかつ破壊部位が胴の場合が○、破壊圧力が45MPa未満、あるいは破壊部位が胴以外の場合が×である。
【表2】

【0054】
表2から明らかなように、実施例1〜14の圧力容器用ライナを用いた圧力容器によれば、内圧が繊維強化樹脂層の破壊強度以上になった際に、胴において圧力容器用ライナが破壊されており、圧力容器用ライナは適正な破壊挙動を示している。一方、比較例1〜6の圧力容器用ライナを用いた圧力容器によれば、内圧が繊維強化樹脂層の破壊強度に達する前に胴以外の部位で破壊されており、圧力容器用ライナは不適正な破壊挙動を示している。
【0055】
実施形態2
この実施形態は図3に示すものである。
【0056】
図3はこの発明の実施形態2の圧力容器用ライナを示す。
【0057】
図3において、実施形態2の圧力容器用ライナ(20)の場合、第1ライナ構成部材(10)の強度、たとえば0.2%耐力は、第2ライナ構成部材(11)(12)の強度、たとえば0.2%耐力よりも小さくなっている必要はなく、両ライナ構成部材(10)(11)(12)の強度は同等となっていてもよい。圧力容器用ライナ(20)における両ライナ構成部材(10)(11)(12)の質別はT6である。ここで、接合前の両ライナ構成部材(10)(11)(12)の質別をT6に調質しておいて、両ライナ構成部材(10)(11)(12)を接合すること、または接合前の両ライナ構成部材(10)(11)(12)の質別をT4に調質しておいて、両ライナ構成部材(10)(11)(12)を接合した後質別をT6に調質することによって、接合された両ライナ構成部材(10)(11)(12)の質別をT6とすることが可能になる。
【0058】
また、圧力容器用ライナ(20)の少なくとも一部分には焼鈍処理が施されている。図示の例では、第1ライナ構成部材(10)と第2ライナ構成部材(11)(12)との両接合部(13)において、接合の際の熱影響部(21)の全体を含むように焼鈍処理が施されている。ここで、接合の際の熱影響部(21)の長さをHA、焼鈍処理が施された焼鈍部分(22)の長さをA、胴(2)の長さをLとした場合、HA<A≦Lの条件を満たしていることが好ましい。HA≧Aであると、焼鈍部分の長さが短くなり、変形が焼鈍部分に集中して低圧で接合部が破断するおそれがあり、A>Lであると、鏡板の径方向の強度が不足して変形するおそれがある。なお、図示の例では、接合部(13)が2つであるから熱影響部(21)も2つ有り、熱影響部(21)の長さHAとは、両熱影響部(21)の合計長さである。また、焼鈍部分(22)も2つ有り、焼鈍部分(22)の長さAとは、両焼鈍部分(22)の合計長さである。
【0059】
その他の構成は、実施形態1の圧力容器用ライナ(1)と同じである。
【0060】
図示は省略したが、圧力容器用ライナ(20)は、実施形態1の圧力容器用ライナ(1)の場合と同様に、周囲の全体が、たとえばカーボン繊維強化樹脂などからなる繊維強化樹脂層で覆われ、圧力容器として用いられる。図示は省略したが、繊維強化樹脂層は、補強繊維を胴の長さ方向とほぼ直角をなすように巻き付けてなるフープ巻繊維層に樹脂を含浸硬化させたフープ巻補強層と、補強繊維を胴の長さ方向に対して傾斜するように巻き付けてなるヘリカル巻繊維層に樹脂を含浸硬化させたヘリカル巻補強層とよりなる。各補強層を構成する繊維としては、たとえばカーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などが用いられるが、カーボン繊維を用いることが好ましい。また、各補強層を構成する樹脂としては、たとえばエポキシ樹脂が用いられる。各補強層は、フィラメントワインディング法により樹脂を含浸させた補強繊維、あるいは樹脂を含浸させた補強繊維の束を巻き付けた後、樹脂を硬化させることにより形成される。
【0061】
圧力容器は、燃料水素ガス用強化圧力容器、燃料電池、および燃料水素ガス用強化圧力容器から燃料電池に燃料水素ガスを送る圧力配管を備えた燃料電池システムにおける燃料水素ガス用強化圧力容器として用いられる。燃料電池システムは、燃料電池自動車に搭載される。また、燃料電池システムはコージェネレーションシステムにも用いられる。
【0062】
また、圧力容器は、天然ガス用強化圧力容器および天然ガス用強化圧力容器から天然ガスを送り出す圧力配管を備えた天然ガス供給システムにおける天然ガス用強化圧力容器として用いられる。天然ガス供給システムは、発電機および発電機駆動装置とともにコージェネレーションシステムに用いられる。また、天然ガス供給システムは、天然ガスを燃料とするエンジンを備えている天然ガス自動車に用いられる。
【0063】
さらに、圧力容器は、酸素ガス用強化圧力容器および酸素ガス用強化圧力容器から酸素ガスを送り出す圧力配管を備えた酸素ガス供給システムにおける酸素ガス用強化圧力容器として用いられる。
【0064】
次に、実施形態2の圧力容器用ライナの実施例について、比較例とともに説明する。
【0065】
実施例15〜22および比較例7〜10
JIS A6061を用いて、外径200mm、長さ600mm、肉厚5mmの円筒状体を熱間押出成形し、この円筒状体に溶体化処理、人工時効処理、自然時効処理を適宜施すことにより、質別T4およびT6の複数の第1ライナ構成部材を形成した。また、JIS A6061を用いて、端部の肉厚5mmの略椀状体を熱間鍛造成形し、この略椀状体に溶体化処理、人工時効処理、自然時効処理を適宜施すことにより、質別T4およびT6の複数の第2ライナ構成部材を形成した。
【0066】
ここで、溶体化処理条件は530℃×1時間加熱→水冷であり、人工時効処理条件は180℃×8時間加熱である。
【0067】
ついで、質別T6の第1ライナ構成部材の両端部に、それぞれ質別T6でかつ第1ライナ構成部材と同強度の第2ライナ構成部材をTIG溶接法または摩擦攪拌接合法(FSW)により接合して圧力容器用ライナを製造した(製造条件1)。また、質別T4の両端部に、それぞれ質別T4でかつ第1ライナ構成部材と同強度の第2ライナ構成部材をTIG溶接法または摩擦攪拌接合法(FSW)により接合した後、両ライナ構成部材を質別T6となるように調質して圧力容器用ライナ(製造条件2)を製造した。ここで、TIG溶接法による各接合部の熱影響部の胴長手方向の長さは20mmであり、FSWによる各接合部の熱影響部の胴長手方向の長さは10mmである。したがって、両ライナ構成部材がTIG溶接された圧力容器用ライナの熱影響部の長さは40mmであり、FSWされた圧力容器用ライナの熱影響部の長さは20mmである。
【0068】
そして、圧力容器用ライナから試験片を作成し、接合部の引張強度、0.2%耐力および伸びを測定した。
【0069】
また、第1ライナ構成部材と第2ライナ構成部材との両接合部において、接合の際の熱影響部の全体を含むように焼鈍処理を施して、実施例15〜22の圧力容器用ライナを得た。一方、第1ライナ構成部材と第2ライナ構成部材との両接合部において、接合の際の熱影響部の一部分に焼鈍処理を施して、比較例7〜10の圧力容器用ライナを得た。いずれの場合にも、焼鈍処理は、トーチを使用し、処理部の表面温度が400℃以上となるように、非接触温度計により温度を制御しながら施した。なお、焼鈍処理は、焼鈍処理を施した部分の長手方向の中心と、熱影響部の長手方向の中心とが一致するように行った。
【0070】
評価試験
実施例15〜22および比較例7〜10の圧力容器用ライナの周囲に繊維強化樹脂層を形成し、圧力容器を得た。繊維強化樹脂層は、カーボン繊維からなる3層のフープ巻繊維層にエポキシ樹脂を含浸硬化させたフープ巻補強層と、カーボン繊維からなる3層のヘリカル巻繊維層にエポキシ樹脂を含浸硬化させたヘリカル巻補強層とよりなり、繊維強化樹脂層における樹脂と繊維との割合は6:4としておいた。
【0071】
そして、これらの圧力容器の内圧を水圧により破壊するまで昇圧させ、破壊圧力を求めるとともに、圧力容器用ライナにおける破壊部位を調べた。なお、圧力容器は、使用圧20MPa仕様とし、破壊圧は高圧容器則別添9に示されている使用圧×2.25(=45MPa)、胴部破壊を基準とした。
【0072】
圧力容器用ライナの製造条件、第1および第2ライナ構成部材との接合部の焼鈍前の引張強度、接合部の0.2%耐力および接合部の伸び、各接合部における焼鈍処理を施した部分の長さ、破壊圧力、破壊部位、ならびに判定結果を表3に示す。なお、表3中の焼鈍処理長さは、2つの熱影響部を含む部分に施された焼鈍部分の合計長さである。さらに、判定結果は、破壊圧力が45MPa以上でかつ破壊部位が胴の場合が○、破壊圧力が45MPa以上でかつ破壊部位が胴以外の場合が△、破壊圧力が45MPa未満でかつ破壊部位が胴以外の場合が×である。
【表3】

【0073】
表3から明らかなように、実施例15〜22の圧力容器用ライナを用いた圧力容器によれば、内圧が繊維強化樹脂層の破壊強度以上になった際に、胴において圧力容器用ライナが破壊されており、圧力容器用ライナは適正な破壊挙動を示している。一方、比較例7〜10の圧力容器用ライナを用いた圧力容器によれば、内圧が繊維強化樹脂層の破壊強度に達する前に、圧力容器用ライナが破壊されるか、あるいは胴以外の部位で破壊されており、圧力容器用ライナは不適正な破壊挙動を示している。
【0074】
実施形態2の圧力容器用ライナ(20)において、第1ライナ構成部材(10)と第2ライナ構成部材(11)(12)との両接合部(13)における熱影響部(21)の全体を含むように焼鈍処理が施されているる代わりに、第1ライナ構成部材(10)における熱影響部(21)を除いた部分に焼鈍処理が施されていてもよい。この焼鈍部分を図3に符号(30)で示す。この場合も、接合の際の両熱影響部(21)の合計長さをHA、焼鈍処理が施された焼鈍部分(30)の長さをA、胴(2)の長さをLとした場合、上記と同様の理由により、HA<A≦Lの条件を満たしていることが好ましい。
【0075】
次に、実施形態2を模した実施例と、実施形態2の圧力容器用ライナにおいて、第1ライナ構成部材(10)と第2ライナ構成部材(11)(12)との両接合部(13)における熱影響部(21)の全体を含むように焼鈍処理が施されている代わりに、第1ライナ構成部材(10)における熱影響部(21)を除いた部分に焼鈍処理が施された場合を模した実施例とを、比較例とともに説明する。
実施例23〜62および比較例11〜40
JIS A6061を用いて、長さ300mm、幅30mm、厚さ6mmの第1ライナ構成部材(10)を模した第1試料と、長さ100mm、幅30mm、厚さ6mmの第2ライナ構成部材(11)(12)を模した第2試料とを熱間加工により形成した。両試料の質別はT1である。また、第1試料および第2試料に溶体化処理、人工時効処理、自然時効処理を適宜施すことにより、質別T4およびT6とした。
【0076】
ここで、溶体化処理条件は530℃×1時間加熱→水冷であり、人工時効処理条件は180℃×8時間加熱である。
【0077】
ついで、質別T4の第1試料の両端部に、それぞれ質別T4の第2試料をTIG溶接法または摩擦攪拌接合法(FSW)により接合した(製造条件1)。また、質別T6の第1試料の両端部に、それぞれ質別T6の第2試料をTIG溶接法または摩擦攪拌接合法(FSW)により接合した(製造条件2)。また、質別T4の第1試料の両端部に、それぞれ質別T4の第2試料をTIG溶接法または摩擦攪拌接合法(FSW)により接合した後、両試料を質別T6となるように調質した(製造条件3)。また、質別T1の第1試料の両端部に、それぞれ質別T1の第2試料をTIG溶接法または摩擦攪拌接合法(FSW)により接合した後、第1試料を質別T4となるように調質するとともに第2試料を質別T6となるように調質した(製造条件4)。さらに、質別T4の第1試料の両端部に、それぞれ質別T6の第2試料をTIG溶接法または摩擦攪拌接合法(FSW)により接合した(製造条件5)。ここで、TIG溶接法による各接合部の熱影響部の胴長手方向の長さは20mmであり、FSWによる各接合部の熱影響部の胴長手方向の長さは10mmである。したがって、両ライナ構成部材がTIG溶接された圧力容器用ライナの熱影響部の長さは40mmであり、FSWされた圧力容器用ライナの熱影響部の長さは20mmである。
【0078】
そして、第1試料と第2試料との接合体から試験片を作成し、接合部の引張強度、0.2%耐力および伸びを測定した。
【0079】
また、第1試料と第2試料との両接合部において接合の際の熱影響部の全体を含むように焼鈍処理を施すこと、試験片全体に焼鈍処理を施すこと、あるいは第1試料における熱影響部を除いた中央部に焼鈍処理を施すことにより実施例23〜62の試験片を得た。一方、第1試料と第2試料との両接合部において接合の際の熱影響部の一部分に焼鈍処理を施すこと、第1試料における熱影響部を除いた中央部に焼鈍処理を施すこと、あるいは全く焼鈍処理を施さないことにより比較例11〜40の試験片を得た。いずれの場合にも、焼鈍処理は、トーチを使用し、処理部の表面温度が400℃以上となるように、非接触温度計により温度を制御しながら施した。なお、熱影響部を含む焼鈍処理は、焼鈍処理を施した部分の長手方向の中心と、熱影響部の長手方向の中心とが一致するように行った。
【0080】
評価試験
実施例23〜62および比較例11〜40の試験片を破断するまで引っ張り、破断部位を調べた。
【0081】
試験片の製造条件、第1試料と第2試料との接合部の焼鈍前の引張強度、接合部の0.2%耐力および接合部の伸び、焼鈍処理を施した部分の長さおよび位置、破断部位、ならびに判定結果を表4および表5に示す。なお、表4および表5中の焼鈍処理長さとは、焼鈍処理を2箇所に施した際にはその合計長さであり、焼鈍処理を1箇所に施した際にはその長さである。また、焼鈍処理長さが500mmということは、試験片全体に焼鈍処理を施したことを意味する。さらに、判定結果は、破壊部位が焼鈍処理を施した部分である場合が○、破壊部位が熱影響部である場合が×である。
【表4】

【0082】
【表5】

【0083】
上記実施形態1および2においては、圧力容器用ライナ(1)(20)の胴(2)は円筒状であるが、これに限定されるものではなく、適当な形状、たとえば横断面だ円形であってもよい。ここで、「だ円形」という語には、数学で定義されるだ円の他に、だ円に近似した形状、たとえば長円形も含むものとする。
【0084】
また、上記実施形態1および2においては、圧力容器用ライナ(1)(20)は、両端が開口した筒状体からなる第1ライナ構成部材(10)と、第1ライナ構成部材(10)の両端部に接合された2つの第2ライナ構成部材(11)(12)とにより形成されているが、これに限定されるものではなく、一端が開口するとともに他端が閉鎖された筒状体からなりかつ胴および一方の鏡板を構成する第1ライナ構成部材と、第1ライナ構成部材の開口端部に接合されかつ他方の鏡板を構成する第2ライナ構成部材とにより形成されていてもよい。この場合、第1ライナ構成部材には口金取付部を有する鏡板、または口金取付部を有さない鏡板のいずれもが一体に形成されることがある。このような第1ライナ構成部材は、公知の適当な熱間加工法により形成される。
【0085】
さらに、上記実施形態2の圧力容器用ライナ(20)が、一端が開口するとともに他端が閉鎖された筒状体からなりかつ胴および一方の鏡板を構成する第1ライナ構成部材と、第1ライナ構成部材の開口端部に接合されかつ他方の鏡板を構成する第2ライナ構成部材とにより形成される場合、接合部は1つになるから、熱影響部および焼鈍部分も1つである。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】(a)はこの発明の実施形態1の圧力容器用ライナを示す斜視図であり、(b)は同じく分解斜視図である。
【図2】図1の圧力容器用ライナを用いた圧力容器の縦断面図である。
【図3】この発明の実施形態2の圧力容器用ライナを示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0087】
(1)(20):圧力容器用ライナ
(2):胴
(3)(4):鏡板
(10):第1ライナ構成部材
(11)(12):第2ライナ構成部材
(13):接合部
(21):熱影響部
(22):焼鈍部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の胴および胴の両端開口を閉鎖する鏡板よりなり、少なくとも一端が開口した筒状体からなりかつ胴を構成する第1ライナ構成部材と、第1ライナ構成部材の開口端部に接合されかつ鏡板を構成する第2ライナ構成部材とにより形成された圧力容器用ライナであって、
第1ライナ構成部材と第2ライナ構成部材とが強度差を有している圧力容器用ライナ。
【請求項2】
第1ライナ構成部材および第2ライナ構成部材がそれぞれアルミニウムからなる請求項1記載の圧力容器用ライナ。
【請求項3】
筒状の胴および胴の両端開口を閉鎖する鏡板よりなり、両端が開口した筒状体からなりかつ胴を構成する第1ライナ構成部材と、第1ライナ構成部材の両端部に接合されかつ両鏡板を構成する2つの第2ライナ構成部材とにより形成された圧力容器用ライナであって、
第1ライナ構成部材の強度が、第2ライナ構成部材の強度よりも小さくなっている圧力容器用ライナ。
【請求項4】
筒状の胴および胴の両端開口を閉鎖する鏡板よりなり、一端が開口するとともに他端が閉鎖された筒状体からなりかつ胴および一方の鏡板を構成する第1ライナ構成部材と、第1ライナ構成部材の開口端部に接合されかつ他方の鏡板を構成する第2ライナ構成部材とにより形成された圧力容器用ライナであって、
第1ライナ構成部材の強度が、第2ライナ構成部材の強度よりも小さくなっている圧力容器用ライナ。
【請求項5】
第1ライナ構成部材および第2ライナ構成部材がそれぞれアルミニウムからなる請求項3または4記載の圧力容器用ライナ。
【請求項6】
第1ライナ構成部材の0.2%耐力をX、第2ライナ構成部材の0.2%耐力をYとした場合、20%≦X/Y≦90%の条件を満たす請求項5記載の圧力容器用ライナ。
【請求項7】
筒状の胴および胴の両端開口を閉鎖する鏡板よりなり、少なくとも一端が開口した筒状体からなりかつ胴を構成する第1ライナ構成部材と、第1ライナ構成部材の開口端部に接合されかつ鏡板を構成する第2ライナ構成部材とにより形成された圧力容器用ライナであって、
少なくとも一部に焼鈍処理が施されており、接合の際の熱影響部の長さをHA、焼鈍処理が施された部分の長さをA、胴の長さをLとした場合、HA<A≦Lの条件を満たす圧力容器用ライナ。
【請求項8】
第1ライナ構成部材と第2ライナ構成部材との接合部に、接合の際の熱影響部の全体を含むように焼鈍処理が施されている請求項7記載の圧力容器用ライナ。
【請求項9】
第1ライナ構成部材における熱影響部を除いた部分に焼鈍処理が施されている請求項7記載の圧力容器用ライナ。
【請求項10】
第1ライナ構成部材および第2ライナ構成部材がそれぞれアルミニウムにより形成されている請求項7〜9のうちのいずれかに記載の圧力容器用ライナ。
【請求項11】
第1ライナ構成部材と第2ライナ構成部材との接合が、溶融溶接法により行われている請求項1〜10のうちのいずれかに記載の圧力容器用ライナ。
【請求項12】
第1ライナ構成部材と第2ライナ構成部材との接合が、摩擦攪拌接合法により行われている請求項1〜10のうちのいずれかに記載の圧力容器用ライナ。
【請求項13】
請求項1〜12のうちのいずれかに記載された圧力容器用ライナの外周面が繊維強化樹脂層で覆われている圧力容器。
【請求項14】
繊維強化樹脂層が、補強繊維を両鏡板にかかるようにして胴の長さ方向に巻き付けてなるヘリカル巻繊維層および補強繊維を胴の周囲に巻き付けてなるフープ巻繊維層と、これらの繊維層に含浸させて硬化させた樹脂とよりなる請求項13記載の圧力容器。
【請求項15】
燃料水素用圧力容器、燃料電池、および燃料水素用圧力容器から燃料電池に燃料水素ガスを送る圧力配管を備えており、燃料水素用圧力容器が請求項13または14記載の圧力容器からなる燃料電池システム。
【請求項16】
請求項15記載の燃料電池システムを搭載した燃料電池自動車。
【請求項17】
請求項15記載の燃料電池システムを備えたコージェネレーションシステム。
【請求項18】
天然ガス用圧力容器および天然ガス用圧力容器から天然ガスを送り出す圧力配管を備えており、天然ガス用圧力容器が請求項13または14記載の圧力容器からなる天然ガス供給システム。
【請求項19】
請求項18記載の天然ガス供給システムと、発電機と、発電機駆動装置を備えているコージェネレーションシステム。
【請求項20】
請求項18記載の天然ガス供給システムと、天然ガスを燃料とするエンジンとを備えている天然ガス自動車。
【請求項21】
酸素用圧力容器および酸素用圧力容器から酸素ガスを送り出す圧力配管を備えており、酸素用圧力容器が請求項13または14記載の圧力容器からなる酸素ガス供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−300193(P2006−300193A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−121934(P2005−121934)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】