説明

圧力容器

【課題】圧力容器の蓋の開閉を簡便に行えるように構成し、開閉に要する時間を短縮する。
【解決手段】圧力容器12は、略円筒の一端を閉じた形状の容器本体32と、容器本体12の開放側の端の円筒内面に、はまって容器本体の開口を封止する蓋34を有する。容器本体の略円筒の軸線に交差する面内で、蓋の中央部を避けて容器本体と蓋を貫通して、蓋をロックする2本のピン36によって、蓋34をロックする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部を高圧とし、内部で所定の処理を行う圧力容器に関する。
【背景技術】
【0002】
内部を高圧とし、内部で所定の化学反応、加圧加工などを行う圧力容器が知られている。下記特許文献1には、容器内部を高温の水で満たし、高圧にして容器内部に収めた加工対象を加熱加圧する装置が記載されている。この装置の圧力容器は、略円筒の一端を閉じた形状の容器本体と、容器本体の開放側端の円筒内面にはまって、容器本体の開口を封止する蓋とを有している。そして、1本のピンを、容器本体と蓋とに貫通して蓋をロックしている。
【0003】
【特許文献1】実公平4−44358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の公報に記載の装置においては、蓋をロックするピンは1本であり、蓋の中心を貫通している。しかし、容器内に対して、何らかのアクセスを行うために、蓋の中央を貫通する軸、管などを通す場合、ロック用のピンと干渉が生じる。例えば、容器の内容物を撹拌するために、撹拌羽根を先端に有する撹拌軸を蓋中央に貫通させる場合、蓋中央部でピンとの干渉が生じる。
【0005】
本発明は、圧力容器において、軸、管などの構造物が付加された蓋を、ピンにてロックできるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る圧力容器は、容器本体と蓋を貫通するピンを2本とした。2本のピンを中央部から外すように配置することで、蓋中央部に軸、管などの構造物を配置することができる。
【0007】
例えば、容器の内容物を撹拌する撹拌羽根を有する撹拌軸を蓋中央部に通すようにできる。
【0008】
また、容器内部に配置されたヒータに電力を供給するために、容器本体と蓋のそれぞれに接点を設け、これらの接点は、容器の軸線方向に沿った蓋の動きにより接続、切断が可能となっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。図1は、本実施形態の圧力容器を適用した二酸化炭素超臨界装置10の概略構成を示す図である。二酸化炭素超臨界装置は、例えば物質の抽出、反応、晶析、分解、合成、脱脂などの処理を行うのに用いられる。
【0010】
二酸化炭素超臨界装置10は、超臨界状態にある二酸化炭素により所定処理が行われる圧力容器12、圧力容器に供給される液化二酸化炭素を蓄える液化二酸化炭素容器14、処理が終了した二酸化炭素超臨界溶液を捕集する捕集槽16を含む。液化二酸化炭素容器14に蓄えられている液化二酸化炭素は、ポンプ17によって加圧されて加熱器18に送られ、加圧された後、圧力容器12に供給管20を介して供給される。圧力容器12には、圧力容器の内容物を加熱する容器内ヒータ22、内容物を撹拌する撹拌器24が備えられている。処理が終了した溶液は、排出管26により捕集槽16に導かれ、ここで二酸化炭素が気化して処理後の生成物から分離される。分離された二酸化炭素は、冷却器28で冷却され、さらに圧縮機30で圧縮されて液化し、液化二酸化炭素容器14に回収される。
【0011】
圧力容器12は、略円筒であり、円筒の一方の端が閉じられた形状の容器本体32と、容器本体32の開放した端の開口にはまって内部を封止する蓋34を含む。容器本体32と蓋34には、ピン36が、容器本体の側方より貫通しており、蓋34をロックしている。蓋34を開けるときは、ピン36を側方に抜いて、ロックを解除し、蓋34を上方に引き上げる。
【0012】
図2は、圧力容器12の構造を示す図である。容器本体32には、開口38が形成されており、蓋34はここにはまって容器本体32を封止する。蓋34には、その中央部に軸線に沿って攪拌器24が取り付けられる撹拌器取り付け孔39が設けられている。また、この撹拌器取り付け孔39を挟むようにして供給管20、排出管26が取り付けられる供給孔40a、排出孔40bが設けられている。これらの撹拌器取り付け孔39、供給孔40aおよび排出孔40bが設けられた中央領域41を避けるようにして、2本の蓋貫通孔42が形成されている。蓋貫通孔42は、容器本体32の円筒の軸線に交差、好ましくは直交する平面内に、中央領域41を避けて、蓋34を貫通して形成されている。
【0013】
容器本体32の開口38の近傍には、蓋34がはまったときの蓋貫通孔42に対応する位置に容器貫通孔44が形成されている。図2において、蓋34を容器本体の開口38に向けて下降させ、蓋貫通孔42と容器貫通孔44の位置がそろったところで、貫通孔42,44に対応して設けられた2本のピン36を側方より挿入して、蓋34をロックする。容器を開放するときには、これとは逆に、2本のピン36を貫通孔42,44より抜いて、蓋34を上方に引き上げる。このような容器の開閉動作において、蓋34は、容器本体32に対して、容器本体の円筒軸線の方向のみに動く。
【0014】
蓋34の容器内に向く面の周縁には、シール構造が設けられている。図2における蓋34の下面近傍の側面にはテーパ面46が設けられており、このテーパ面の傾斜に対応する斜面を有するバックアップリング48、さらにOリング50、止め板52が設けられている。止め板52は、4〜8本の止めビス53により、蓋34の下面に固定される。
【0015】
図3は、容器本体32と蓋34の間のシール構造の詳細を示す断面図である。前述のように蓋34にはテーパ面46が設けられている。このテーパ面46に対応する位置にバックアップリング48が配置されている。バックアップリング48は、Oリング50を介して、止め板52に支持されている。バックアップリング48の断面は、テーパ面46に対応した傾斜の斜面を有する三角形である。バックアップリング48は、容器内部の圧力を受けると、図3において上方に移動する。これと同時に、テーパ面46の作用を受けて、外側に拡がり、容器本体32の内壁面に密着し、Oリング50が内圧を受けて容器本体32と蓋34の隙間に侵入することを防止する。容器本体32と蓋34の隙間はOリング50によりシールされる。
【0016】
図4は、容器内ヒータ22へ電力を供給するための構成に関する。図4に示す状態は、蓋34を容器本体32に挿入する過程を示している。容器本体32には、その内壁面に沿って面状の容器内ヒータ22が配置されている。この容器内ヒータ22は、電力を供給することによって発熱するものである。ヒータ22の上端には、接点ソケット54を支持するブラケット56が固定されている。接点ソケット54に対向するように、蓋34の下面には、接点ピン58が設けられている。接点ピン58には電力を供給する電力線60が接続されている。電力線60は、中央領域40、すなわち蓋貫通孔42が避けている部分に設けられた配線孔62を通して、蓋の上部に抜けている。配線孔62の上部の開口付近には、パッキン64とこれを押さえるパッキン押さえ66が配置され、シールを行っている。接点ソケット54と接点ピン58は、蓋34の、容器の円筒軸線方向の動きのみによって接続、切断が可能となっている。
【0017】
図5は、撹拌器24の構成を示す断面図である。撹拌器24は、蓋34の中心に固定され、容器の内容物を撹拌する撹拌羽根68を先端に有する撹拌軸70が、圧力容器12の軸線に同軸となるように配置されている。撹拌器24のケース72は管形状を有し、ねじ部74によって、蓋34に結合さている。ケース72の先端(図においては下端)にはガスケット76が配置され、圧力容器12の内部をシールしている。ケース72の内部には撹拌軸70が配置され、ケース72の先端より、圧力容器12の内部に延びている。撹拌軸70は、ケース72の内部において、3箇所に設けられた軸受78により回転可能に支持されている。軸受78はカーボン軸受とすることができる。撹拌軸70の一部に、永久磁石80が周方向に配列されて設けられている。この永久磁石80が配置された部分の、ケース72の外側には、アウタロータ82が配置されている。アウタロータ82は、略円環形状を有し、その内周面に周方向に沿って永久磁石84が配列されている。アウタロータ82の外周には、V字溝86が形成されており、ここにVベルト88が掛けられている。このVベルト88は、モータ90に駆動されるVプーリ92にも掛けられており、モータ90の駆動力をアウタロータ82に伝達している。アウタロータ82が回転すると、永久磁石84により形成される磁界も回転し、この磁界に引きずられるようにして永久磁石80を備えた撹拌軸70が回転する。ケース72の後端(図中上端)には、エア抜き機構を備えたシールナット94がねじ結合して、ケース72の内部をシールしている。
【0018】
図6は、供給管20、排出管26と、供給孔40a、排出孔40bの接合部の構造を示す図である。両者は共通の構造を有しており、以下の説明は、供給管20と供給孔40aについて行う。供給孔40aには、径の変わる段付き部96、これに続くテーパ部98が形成されている。供給管20の先端にはテーパ部98に対応するようにテーパが形成されている。供給管20の先端近くには、逆ねじ部100が設けられ、これに逆ねじカラー102がねじ結合されている。供給孔40aの入口付近には、ねじ部104が設けられており、これに噛み合うようにグランドナット106が結合されている。グランドナット106を締め込むと、その先端が逆ねじカラー102を押し込み、これにより供給管20の先端がテーパ部98に押しつけられ、この部分がシールされる。
【0019】
本実施形態の圧力容器12は、ピン36を、容器本体32と蓋34に側方より貫通させるという簡単な動作で蓋34のロックを行うことができる。ねじなどを用いた回転動作を必要とせず、短時間で開閉を行うことができる。また、容器内部に設けた容器内ヒータ22へ電力を供給する電力線60の接続についても蓋34の開閉と同時に行われるので、開閉に要する時間の短縮に貢献する。また、ピン36を2本としたことにより、蓋34の中央部分に撹拌器24を配置することができた。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態の圧力容器を適用した二酸化炭素超臨界装置の概略構成を示す図である。
【図2】圧力容器の概略を示す図である。
【図3】圧力容器のシールに関する構造を示す図である。
【図4】圧力容器内に設けた容器内ヒータへの電力供給に関する構造を示す図である。
【図5】圧力容器の内容物を撹拌する撹拌器の概略構成を示す図である。
【図6】圧力容器の蓋と供給管、排出管のシール構造を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
10 二酸化炭素超臨界装置、12 圧力容器、22 容器内ヒータ、24 撹拌器、32 容器本体、34 蓋、36 ピン、42 蓋貫通孔、44 容器貫通孔、54 接点ソケット、56 ブラケット、58 接点ピン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒の一端を閉じた形状の容器本体と、
容器本体の開放側の端の円筒内面にはまって容器本体の開口を封止する蓋と、
容器本体の略円筒の軸線に交差する面内で、蓋の中央部を避けて容器本体と蓋を貫通して、蓋をロックする2本のピンと、
を有する、圧力容器。
【請求項2】
請求項1に記載の圧力容器であって、蓋の中央に容器本体の軸線に沿って配置された撹拌軸を有し、撹拌軸は先端に撹拌羽根を有している、圧力容器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の圧力容器であって、
容器本体の内部に配置され、電力の供給によって発熱するヒータと、
ヒータに接続されたヒータ側接点と、
蓋に配置され、ヒータに電力を供給する電力配線が接続された蓋側接点と、
を有し、
容器本体の略円筒軸線方向の蓋の動きによって、ヒータ側接点と蓋側接点の接続および切断が行われる、圧力容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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