説明

圧力発生機構

【課題】 液体の圧力を脈動させることなく液体を永続的に移送することができ、しかも高い圧力を液体に与えることができる圧力発生機構を提供する。
【解決手段】 本発明の圧力発生機構は、液体が収容される複数の圧力容器8a,8bと、複数の圧力容器8a,8bに液体を導入する液体導入部15と、複数の圧力容器8a,8bに加圧気体を供給することにより該複数の圧力容器8a,8bに導入された液体を順次排出する加圧気体供給部16と、複数の圧力容器8a,8bから排出される液体の圧力が常に一定となるように、加圧気体が複数の圧力容器8a,8bに供給されるタイミングを制御する制御部7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小空間内で複数種の流体どうしを反応させる流体反応装置に好適に用いられる圧力発生機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、試薬などの液体どうしを反応させるための流体反応装置として、マイクロリアクタの開発が進められている。このマイクロリアクタは、2種類の液体を微小流路を通過させて液体どうしを混合し、かつ反応させるものである。一般に、流路の幅が小さくなると、レイノルズ数が小さくなり、液体の流れは層流になる。層流領域において液体を速やかに混合させるためには、流路の幅をできるだけ小さくすることが有効である。これは、層流領域では分子拡散が混合の律速因子となり、液体の拡散時間は流路の幅の二乗に比例するからである。すなわち、フィックの法則(T=L/D T:拡散時間 L:移動距離 D:拡散係数)によれば、分子の拡散時間、すなわち液体どうしの混合時間は、合流後の流路幅(Lに相当)の二乗に比例する。したがって、混合時間を短くするためには、流路の幅を小さくすることが効果的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
層流領域においては、流路の流れ方向に液体の濃度差があると、液体が不均一に混合することになる。液体の混合が不均一となると、反応により生成された物質がさらに原液と反応して副生成物が生じ、収率が低下してしまう。したがって、混合前の各液体の流量に脈動があってはならない。しかしながら、液体は、通常、ギヤポンプやピストンポンプなどにより微小流路に移送されるため、液体がポンプの影響を受けて液体の流れに脈動が生じてしまう。また2本のシリンジポンプを使って脈動が発生しないよう制御することは可能であるが、ピストンを駆動するアクチュエータが大きくなったり、ピストンの摺動部分からパーティクルが発生するなど問題を抱えていた。
【0004】
一般に、反応速度の遅い液体を微小流路内で十分に反応させるためには、流路を長くして反応時間を確保する必要が生じる。このため、高い圧力で液体を圧送することが必要となる。しかしながら、従来のポンプは、その出力圧力の上限が0.5MPa以下と低く、高い圧力が必要とされるマイクロリアクタに使用するには困難があった。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたもので、液体の圧力を脈動させることなく液体を永続的に移送することができ、しかも高い圧力を液体に与えることができる圧力発生機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、液体が収容される複数の圧力容器と、前記複数の圧力容器に液体を導入する液体導入部と、前記複数の圧力容器に加圧気体を供給することにより該複数の圧力容器に導入された液体を順次排出する加圧気体供給部と、前記複数の圧力容器から排出される液体の圧力が常に一定となるように、前記加圧気体が前記複数の圧力容器に供給されるタイミングを制御する制御部とを備えたことを特徴とする圧力発生機構である。
【0007】
本発明によれば、複数の圧力容器に液体を順次導入し、導入された液体を加圧気体により圧力容器から順次排出させることができる。したがって、液体を間断なく移送することができる。例えば、移送すべき液体が0.5〜1Tonの薬液であっても、総ての薬液が移送されるまで圧力発生機構は移送動作を間断なく行うことができる。また、本発明によれば、制御部により、移送される液体の圧力(各圧力容器から排出される液体の総圧力)が一定となるように加圧気体の圧力容器への供給タイミングが制御されるので、液体の圧力を脈動させることなく液体を移送することができる。さらに、本発明によれば、加圧気体が液体を圧力容器から押し出すので、ピストンなどの摺動部を圧力容器内に設ける必要がない。したがって、コンパクトで、かつクリーンな圧力発生機構を実現することができる。このように機構全体がコンパクトであることは、耐圧性の観点から有利である。
【0008】
本発明の好ましい態様は、前記加圧気体を増圧する増圧機構をさらに備えていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記増圧機構は、作動流体が接触する大径部と気体を加圧する小径部とをそれぞれ有する複数のピストンと、前記複数のピストンが収容される複数のシリンダとを備え、前記複数のピストンは気体を順次加圧して前記加圧気体を形成することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記複数の圧力容器から排出される液体の圧力は1MPa以上であることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、圧力容器内の液体をより高い圧力で移送することができる。なお、本圧力発生機構によって移送される液体の流量は、好ましくは0.01〜10L/h、より好ましくは0.01〜5L/h、さらに好ましくは0.01〜2L/hである。また、本圧力発生機構によって移送される液体の圧力は、好ましくは1〜20MPa、より好ましくは1〜10MPa、さらに好ましくは2〜6MPaである。
【0010】
本発明の好ましい態様は、前記液体導入部は、負圧を利用して前記複数の圧力容器に液体を導入することを特徴とする。
【0011】
本発明の他の態様は、液体を貯留する複数の貯槽と、液体を混合させる混合部と、混合した液体を反応させる反応部と、上記圧力発生機構とを備えたことを特徴とする流体反応装置である。
【発明の効果】
【0012】
以上述べたように、本発明によれば、液体の圧力を脈動させることなく液体を永続的に移送することができ、コンパクトでクリーンな装置を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る圧力発生機構について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一の構成を有する構成部材には互いに対応する符号を付し、その重複する説明を省略する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態に係る圧力発生機構を備えたマイクロリアクタ(流体反応装置)を示す概略図である。図1に示すように、マイクロリアクタは、液体Aおよび液体Bがそれぞれ貯留される2つの貯槽(容器)1A,1Bと、これらの貯槽1A,1Bにそれぞれ接続される圧力発生機構(流体移送機構)2A,2Bと、圧力発生機構2A,2Bにより移送される液体Aおよび液体Bの流量を一定に調整する流量調整弁3A,3Bと、流量調整弁3A,3Bを通過した液体Aと液体Bとを混合させる混合部(混合チップ)50と、混合部50で混合した液体Aおよび液体Bを反応させる反応部(反応チップ)60とを備えている。流量調整弁3A,3Bは混合部50のすぐ上流側に配置されている。
【0015】
貯槽1A内の液体Aは圧力発生機構2Aにより流量調整弁3Aに移送管6Aを介して移送され、ここで液体Aの流量が一定となるように調整される。同様に、液体Bは圧力発生機構2Bにより貯槽1Bから流量調整弁3Bに移送管6Bを介して移送され、その流量が一定となるように調整される。流量調整弁3A,3Bとしては液体マスフローコントローラが好適に用いられる。
【0016】
流量調整弁3A,3Bを通過した液体Aおよび液体Bは混合部50にそれぞれ流入し、合流点50aで液体Aおよび液体Bが合流する。そして、液体Aおよび液体Bは混合部50内の流路を通過しながら混合され、反応が開始される。さらに、混合した液体は反応部60に流入し、蛇行流路60aを通過しながら所定の温度に加温されつつ反応が促進される。反応部60を通過した反応性生物は最終的に採取槽5に回収される。なお、混合部50および反応部60は図示しない温度調整機構によりそれぞれ所定の温度に調整される。なお、本実施形態に用いられる液体の具体例としては、試薬、有機溶剤、生化学物質などが挙げられる。
【0017】
次に、本実施形態に係る圧力発生機構2A,2Bについて説明する。なお、圧力発生機構2A,2Bは同一の構成を有しているので、以下、圧力発生機構2Aについてのみ説明する。図2は本発明の第1の実施形態に係る圧力発生機構の構成を示す模式図である。図2に示すように、圧力発生機構2Aは、鉛直に配置された2つの圧力容器8a,8bと、これらの圧力容器8a,8b内に負圧を発生させる負圧発生部15と、加圧された気体を圧力容器8a,8bに供給する加圧気体供給部16とを備えている。
【0018】
圧力容器8a,8bの上方には気体導入弁9a,9bおよび気体排出弁10a,10bが配置されている。圧力容器8a,8bは、気体導入弁9a,9bを介して加圧気体供給部16にそれぞれ接続され、さらに、気体排出弁10a,10bを介して負圧発生部15にそれぞれ接続されている。また、圧力容器8a,8bの下方には液体導入弁11a,11bおよび液体排出弁12a,12bが配置されている。そして、圧力容器8a,8bは、液体導入弁11a,11bを介して貯槽1Aにそれぞれ接続され、さらに、液体排出弁12a,12bを介して流量調整弁3Aにそれぞれ接続されている。これらの気体導入弁9a,9b、気体排出弁10a,10b、液体導入弁11a,11b、および液体排出弁12a,12bは、制御部7に接続されており、これらの弁の開閉のタイミング、すなわち加圧気体や液体が圧力容器8a,8bに供給されるタイミングが制御部7によって制御されるようになっている。
【0019】
負圧発生部15は、気体排出弁10a,10bを通じて圧力容器8a,8bに接続されるエジェクタ(例えばガスエジェクタ)17と、圧力容器8a,8b内に形成される負圧を調整する負圧調整弁18と、圧力容器8a,8b内に形成された負圧を測定する圧力センサ19とを備えている。エジェクタ17には導入管20を通じて高圧流体が導入され、排出管21から排出されるようになっている。負圧調整弁18は導入管20に設置されており、エジェクタ17に導入される高圧流体の流量を調整することで、圧力容器8a,8b内に形成される負圧を調整する。圧力センサ19はエジェクタ17と圧力容器8a,8bとの間に配置されており、この圧力センサ19は負圧調整弁18に接続されている。負圧調整弁18には目標値が予め設定されており、負圧調整弁18は、圧力センサ19の測定値に基づいて、圧力容器8a,8b内に発生する負圧が上記目標値と等しくなるように高圧流体の流量を調整するようになっている。
【0020】
加圧気体供給部16は、加圧気体が封入されたガスボンベなどの圧力源22と、加圧気体の圧力を調整するレギュレータ23とを備えている。圧力源22はレギュレータ23を通じて圧力容器8a,8bに連通しており、圧力源22内の加圧気体がレギュレータ23を通過する際、その圧力が所定の設定値に調整されるようになっている。
【0021】
圧力容器8aへの液体Aの導入は次のようにして行われる。まず、気体導入弁9a、液体導入弁11a、および液体排出弁12aを閉じるとともに、気体排出弁10aを開く。この状態で、エジェクタ17により圧力容器8aを真空にする。このとき、液体導入弁11aを開くと、貯槽1Aから液体Aが圧力容器8a内に吸引される。このように、負圧発生部15は液体Aを圧力容器8a,8b内に導入する液体導入部として機能する。
【0022】
圧力容器8aの上端近傍には上限検知器13aが設置されており、この上限検知器13aによって圧力容器8aの内部の液面位置が所定の上限位置に達したことが検知されるようになっている。そして、液体Aの液面位置が所定の上限位置に達すると、上限検知器13aから制御部7に信号が送られ、制御部7は、気体排出弁10aおよび液体導入弁11aを閉じる。これにより液体Aの導入が停止されると同時に、圧力容器8a内に液体Aが閉じ込められる。
【0023】
一方、圧力容器8aから液体Aを排出するときは、気体導入弁9aと液体排出弁12aを同時に開く。これにより、レギュレータ23によって所定の圧力に調整された加圧気体が圧力容器8a内に導入される。圧力容器8a内の液体Aは加圧気体によって加圧され、液体排出弁12aを通って流量調整弁3Aに供給される。
【0024】
圧力容器8aの下端近傍には下限検知器14aが設置されており、この下限検知器14aによって圧力容器8a内の液面位置が所定の下限位置に達したことが検知されるようになっている。そして、液体Aの液面位置が所定の下限位置に達したときに、下限検知器14aから制御部7に信号が送られ、制御部7は、気体導入弁9aおよび液体排出弁12aを閉じる。これにより液体Aの排出が停止される。なお、制御部7は下限検知器14aからの信号を受けた直後に液体の排出動作を停止してもよく、もしくは、信号を受けてから所定時間経過した後に排出動作を停止させるようにしてもよい。
【0025】
なお、圧力容器8bにも、同様に、上限検知器13bおよび下限検知器14bが設置されている。これらの上限検知器13bおよび下限検知器14bの構成、設置位置、動作などは、上述した上限検知器13aおよび下限検知器14aのそれと同じである。また、圧力容器8bは、圧力容器8aと同様の動作を行うように構成されている。ただし、圧力容器8aと圧力容器8bとの間では、液体導入工程と液体排出工程とが交互に行われる。すなわち、圧力容器8aが液体排出工程にあるとき、圧力容器8bは液体導入工程にあり、圧力容器8aが液体導入工程にあるとき、圧力容器8bは液体排出工程にある。
【0026】
図3は2つの圧力容器内の圧力変動を示すグラフである。図3において、実線は圧力容器8a内の圧力を示し、一点鎖線は圧力容器8b内の圧力を示している。a点は気体導入弁9aおよび液体排出弁12aを開いて加圧気体の供給を開始したときの圧力を示しており、このときの圧力は大気圧に等しい。ラインa〜bは、圧力容器8a内の圧力が大気圧からレギュレータ23の設定値まで上昇する過程を示している。ラインb〜cは圧力容器8a内の圧力が上記設定値に維持されている状態を示しており、このときの圧力がマイクロリアクタの流路内の圧力になる。c点は、気体導入弁9aおよび液体排出弁12aを閉じて加圧気体の供給を停止したときの圧力を示し、ラインc〜dは圧力容器8a内の圧力が大気圧まで低下するときの圧力の変化を示している。液体Aを圧力容器8a内に導入するときの圧力の推移はラインe〜f〜g〜hで表される。
【0027】
圧力容器8bの圧力は圧力容器8aと同様に変化し、圧力容器8aの圧力変動を示すラインa〜b〜c〜dと、圧力容器8bの圧力変動を示すラインa´〜b´〜c´〜d´とは交互に現れる。この場合、圧力容器8aへの加圧気体の供給が停止されると同時に、圧力容器8bへの加圧気体の導入が開始される。液体Aを圧力容器8b内に導入するときの圧力の推移はラインe´〜f´〜g´〜h´で表される。このように、2つの圧力容器8a,8bの液体排出工程(すなわち加圧気体の供給)は交互に行われ、一方が液体排出工程にあるとき、他方は液体導入工程にある。したがって、圧力発生機構によって移送される液体の圧力は脈動することがなく、一定に維持される。なお、本実施形態では、2つの圧力容器が設けられているが、3つ以上の圧力容器を設けてもよい。この場合は、常に一定の圧力の液体が圧力容器から排出されるように、各圧力容器での液体排出工程が順次行われる。
【0028】
次に本発明の第2の実施形態に係る圧力発生機構について説明する。図4は本発明の第2の実施形態に係る圧力発生機構を示す模式図である。なお、特に説明しない本実施形態の構成および動作は上述した第1の実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0029】
図4に示すように、本実施形態では、液体導入部として遠心ポンプ24が用いられている。また、液体導入弁11a,11bは圧力容器8a,8bの上方に設置され、気体排出弁の代わりに気体リリーフ弁25a,25bが圧力容器8a,8bの上方に設置されている。これらの液体導入弁11a,11bおよび気体リリーフ弁25a,25bは制御部7に接続され、これらの弁の開閉タイミング(加圧気体および液体の供給および排出のタイミング)は制御部7によって制御される。
【0030】
圧力容器8aへの液体Aの導入は、気体導入弁9aおよび液体排出弁12aを閉じ、気体リリーフ弁25aおよび液体導入弁11aが開いている状態で遠心ポンプ24を駆動することにより行われる。液体が所定の上限位置に達すると、上限検知器13aから制御部7に信号が送られ、制御部7は上限検知器13aからの信号を受けて気体リリーフ弁25aおよび液体導入弁11aを閉じる。そして、気体導入弁9aおよび液体排出弁12aが開かれ、加圧気体が圧力容器8aに導入される。これにより圧力容器8a内の液体Aが液体排出弁12aを通って排出される。なお、圧力容器8bの操作は圧力容器8aと同一であるが、本実施形態においても、2つの圧力容器8a,8bの液体排出工程は交互に行われ、一方が液体排出工程にあるとき、他方は液体導入工程にある。したがって、圧力発生機構によって移送される液体の圧力は脈動することがなく、一定に維持される。
【0031】
ここで、加圧気体供給部16から供給される加圧気体の圧力を増加させるために、増圧機構を設けてもよい。図5は加圧気体供給部に組み込まれた増圧機構を示す模式図である。図5に示すように、増圧機構は、2つのシリンダ(シリンジ)26a,26bと、これらのシリンダ26a,26b内にそれぞれ収容されるピストン(プランジャ)27a,27bと、圧力源22からの加圧気体の流れを切り換える六方切換弁41a,41bと、シリンダ26a,26bの下流側に配置されるチェック弁42a,42bとを備えている。
【0032】
ピストン27aは、円盤状の大径部28aと円柱状の小径部29aとを備えた2段形状を有している。小径部29aの直径は大径部28aの直径よりも小さくなっており、大径部28aと小径部29aとは一体に成形されている。大径部28aが収容される一次側圧力室30aは、大径部28aによって押圧側室31aと吸引側室32aとに区画されている。これらの押圧側室31aと吸引側室32aとは、切換弁41aを通じてレギュレータ23に連通している。また、小径部29aが収容される二次側圧力室37aは切換弁41aを通じて周囲雰囲気に連通している。
【0033】
圧力源22からの加圧気体(以下、作動流体という)は、切換弁41aを操作することにより、押圧側室31aと吸引側室32aとに交互に供給されるようになっている。すなわち、作動流体が吸引側室32aに供給されると、ピストン27aは二次側圧力室37aの容積が大きくなる方向に移動する。これによりピストン27aは吸引動作を行い、二次側圧力室37a内に雰囲気ガスが吸入される。このとき、押圧側室31a内の気体は切換弁41aを通じて外部に排出される。そして、切換弁41aが操作されると、二次側圧力室37aと周囲雰囲気との連通状態が絶たれるとともに、圧力源22からの作動流体が切換弁41aを通じて押圧側室31aに供給される。これにより、ピストン27aは二次側圧力室37aの容積が小さくなる方向に移動し、二次側圧力室37a内の気体の加圧動作を行う。すなわち、二次側圧力室37a内の雰囲気ガスはピストン27aの小径部29aによって加圧され、加圧気体としてシリンダ26aから排出される。このとき、吸引側室32a内の気体は切換弁41aを通じて外部に放出される。加圧気体はチェック弁42aを通過した後、上述した圧力容器8a,8bに供給される。
【0034】
圧力源22の作動流体の圧力が、例えば0.5MPaである場合、5MPaの加圧気体を得るためには、小径部29aの受圧面積(二次側圧力室37aの横断面積)を大径部28aの受圧面積(一次側圧力室30aの横断面積)の10分の1にすればよい。したがって、この場合は、大径部28aの直径を小径部29aの直径の約3.3倍にすればよい。
【0035】
シリンダ26aの両端近傍には、ピストン27aのストロークエンドを検知するストロークエンドセンサ39a,40aがそれぞれ設けられている。吸引動作を行うピストン27aがストロークエンドに達したとき、ストロークエンドセンサ39aはこれを検知し、切換弁41aが操作される。これにより、ピストン27aは反対方向に移動し、加圧動作を行う。そして、ピストン27aが反対側のストロークエンドに達したとき、ストロークエンドセンサ40aはこれを検知し、切換弁41aが操作される。これにより、ピストン27aは反対方向に移動し、吸引動作を行う。
【0036】
シリンダ26b、ピストン27b、および切換弁41bは、上述したシリンダ26a、ピストン27a、および切換弁41aと同様の構成を有しており、同様の動作を行う。ただし、ピストン27aとピストン27bは互いに逆方向に移動するように切換弁41a,41bが操作される。すなわち、ピストン27aが加圧動作を行っているときは、ピストン27bは吸引動作を行い、ピストン27aの吸引動作を行っているときは、ピストン27bは加圧動作を行う。このように、ピストン27aとピストン27bとが交互に加圧動作を行うので、圧力容器8a,8bには常に一定の圧力に保たれた加圧気体が供給される。なお、加圧気体の圧力を安定化させるために、アキュムレータ43がチェック弁42a,42bの下流側に設けられている。
【0037】
この例では、2つのシリンダ、2つのピストンが設けられているが、3以上のシリンダおよびピストンを設けてもよい。この場合は、常に一定の圧力の加圧気体が圧力容器8a,8bに供給されるように、それぞれのピストンが順次加圧動作を行うように切換弁が操作される。
【0038】
雰囲気ガスの種類によっては、反応部60での液体どうしの反応に悪影響を与えてしまう場合がある。したがって、加圧気体として、液体の反応に影響を与えないようなガスを用いることが好ましい。このような例について、図6を参照して説明する。図6は、増圧機構の他の構成例を示す模式図である。この構成例の基本的構成および動作は図5に示す増圧機構と同一であるが、この例では、加圧気体として不活性ガスが使用されている。すなわち、この増圧機構は、不活性ガスが封入された不活性ガス供給源(たとえば、不活性ガスボンベ)44と、この不活性ガス供給源44に接続されたレギュレータ45とをさらに備えている。
【0039】
シリンダ26a,26bの二次側圧力室37a,37bは切換弁41a,41bを介してレギュレータ45に接続されている。具体的には、ピストン27a,27bが吸引動作を行っているときは、二次側圧力室37a,37bと不活性ガス供給源44とは切換弁41a,41bを介して連通する。したがって、不活性ガス供給源44内の不活性ガスは、レギュレータ45を通過した後、二次側圧力室37a,37bに導入される。一方、ピストン27a,27bが加圧動作を行っているときは、二次側圧力室37a,37bと不活性ガス供給源44との連通状態は切換弁41a,41bによって絶たれる。したがって、二次側圧力室37a,37b内の不活性ガスはピストン27a,27bによって加圧され、加圧気体として圧力容器8a,8bに供給される。この場合も、ピストン27a,27bは交互に加圧動作を行う。なお、不活性ガスとしては、窒素、アルゴンなどが用いられる。
【0040】
図7は増圧機構のさらに他の構成例を示す模式図である。図7に示すように、この構成例では、六方切換弁41a,41bの代わりに四方切換弁46a,46bが設けられ、ピストン27a,27bによって加圧された不活性ガス(加圧気体)が不活性ガス供給源側に逆流することを防止するためのチェック弁47a,47bが設けられている。二次側圧力室37a,37bは切換弁46a,46bを介さずにレギュレータ45に直接接続されており、チェック弁47a,47bは、二次側圧力室37a,37bとレギュレータ45との間に配置されている。その他の構成は図6に示す増圧機構の構成と同一である。
【0041】
上述の構成において、ピストン27aが加圧動作を行うと、チェック弁42aが開き、加圧気体が圧力容器8A,8B(図2または図4参照)に移送される。このとき、チェック弁47aの上流側(レギュレータ側)は低圧に、下流側(二次側圧力室側)は高圧となり、これによりチェック弁47aは閉じられる。したがって、加圧気体は、不活性ガス供給源側に逆流することなく、圧力容器8A,8Bに移送される。その後、切換弁46aが操作されると、ピストン27aは吸引動作を行う。このとき、チェック弁42aが閉じられると同時に、チェック弁47aが開かれ、これにより不活性ガス供給源44から不活性ガスが二次側圧力室37aに導入される。なお、ピストン27bによる加圧動作および吸引動作も上述と同様である。
【0042】
本構成例によれば、切換弁に要求される耐圧性能を低くすることができ、また六方切換弁を備えた場合に比べて構造を簡素化することができる。なお、四方切換弁46a,46bおよびチェック弁47a,47bを図5に示す増圧機構に組み込んでもよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係る圧力発生機構を備えたマイクロリアクタ(流体反応装置)を示す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る圧力発生機構の構成を示す模式図である。
【図3】2つの圧力容器内の圧力変動を示すグラフである。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る圧力発生機構の構成を示す模式図である。
【図5】加圧気体供給部に組み込まれた増圧機構を示す模式図である。
【図6】増圧機構の他の構成例を示す模式図である。
【図7】増圧機構のさらに他の構成例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0044】
1A,1B 貯槽
2A,2B 圧力発生機構
3A,3B 流量調整弁
5 採取槽
6A,6B 移送管
7 制御部
8a,8b 圧力容器
9a,9b 気体導入弁
10a,10b 気体排出弁
11a,11b 液体導入弁
12a,12b 液体排出弁
13a,13b 上限検知器
14a,14b 下限検知器
15 負圧発生部(液体導入部)
16 加圧気体供給部
17 エジェクタ
18 負圧調整弁
19 圧力センサ
20 導入管
21 排出管
22 圧力源
23 レギュレータ
24 遠心ポンプ(液体導入部)
25a,25b 気体リリーフ弁
26a,26b シリンダ
27a,27b ピストン
28a,28b 大径部
29a,29b 小径部
30a,30b 一次側圧力室
31a,31b 押圧側室
32a,32b 吸引側室
37a,37b 二次側圧力室
39a,39b,40a,40b ストロークエンドセンサ
41a,41b 切換弁
42a,42b チェック弁
43 アキュムレータ
44 不活性ガス供給源
45 レギュレータ
46a,46b 切換弁
47a,47b チェック弁
50 混合部
60 反応部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が収容される複数の圧力容器と、
前記複数の圧力容器に液体を導入する液体導入部と、
前記複数の圧力容器に加圧気体を供給することにより該複数の圧力容器に導入された液体を順次排出する加圧気体供給部と、
前記複数の圧力容器から排出される液体の圧力が常に一定となるように、前記加圧気体が前記複数の圧力容器に供給されるタイミングを制御する制御部とを備えたことを特徴とする圧力発生機構。
【請求項2】
前記加圧気体を増圧する増圧機構をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の圧力発生機構。
【請求項3】
前記増圧機構は、作動流体が接触する大径部と気体を加圧する小径部とをそれぞれ有する複数のピストンと、
前記複数のピストンが収容される複数のシリンダとを備え、
前記複数のピストンは気体を順次加圧して前記加圧気体を形成することを特徴とする請求項2に記載の圧力発生機構。
【請求項4】
前記複数の圧力容器から排出される液体の圧力は1MPa以上であることを特徴とする請求項2または3に記載の圧力発生機構。
【請求項5】
前記液体導入部は、負圧を利用して前記複数の圧力容器に液体を導入することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の圧力発生機構。
【請求項6】
液体を貯留する複数の貯槽と、
液体を混合させる混合部と、
混合した液体を反応させる反応部と、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の圧力発生機構とを備えたことを特徴とする流体反応装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−272276(P2006−272276A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−99397(P2005−99397)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】