説明

圧延装置の制御方法

【課題】被圧延材・作業ロールにスリップ及び傷を発生させず、ロール開放、閉め込みを行う。
【解決手段】圧延装置の制御方法は、走行中の被圧延材1を上下から圧下して圧延する上下の作業ロールRs1、Rs2と、上下の作業ロールRs1、Rs2のギャップを制御するロールギャップ制御装置51、52を有する1台以上の圧延機3を備える圧延装置Sの制御方法であって、制御装置60が、被圧延材1を停止することなく、上下の作業ロールRs1、Rs2が被圧延材1に加える荷重を減少させる第1工程と、被圧延材1が弾性変形状態に到達した状態で、荷重を一定の状態に保持する第2工程と、圧延機3入側及び出側の被圧延材1の少なくとも張力および板速度のうちの何れかが等しい状態で、ロールギャップ制御装置51、52を用いて、作業ロールRs1、Rs2の被圧延材1に対しての閉め込み状態からの被圧延材1に対しての開放を行う第3工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延機に係り、より詳細には作業ロールの開放、閉め込みを行う圧延装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷間圧延機において、特にタンデム圧延機と呼ばれる複数の圧延機が連続する連続圧延機においては、連続圧延機の入側において被圧延材を溶接し、被圧延材(コイル)を連続で圧延している。ここで、圧延製品は、コイル毎に鋼種、板厚、板幅などが異なるため、溶接部が圧延機を通過する際に、圧延スケジュールを変更する処理を行っている。
【0003】
しかしながら、現在圧延しているコイルと、次に圧延するコイルとの板幅、板厚、材質等が大幅に異なる場合、溶接部において被圧延材が破断する恐れがあるため、溶接部通過時に圧延機を一旦停止し、作業ロールをコイルから開放し、コイルの溶接部を通過させてから、再度圧延運転を開始する手法が取られている。
なお、本願に係る文献公知発明としては、下記の特許文献1、2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−34039号公報
【特許文献2】特開昭58−168410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の場合、圧延機が停止した箇所の被圧延材には作業ロールのストップマークが発生し、さらに溶接部を通過させて作業ロールを閉め込み、圧延運転を再開するため、運転が再開して所望の板厚が得られるまでの間の材料は、オフゲージとなり歩留まりが低下する。また、圧延機を停止させ、作業ロールを開放し、溶接部(溶接点)が通過するまで被圧延材を送り出し、再度作業ロールの閉め込みを行い、運転を再開するため、操業効率も低下する。
【0006】
作業ロールの交換作業についても、圧延機を停止しなければならないため、被圧延材にストップマークが発生し、製品の歩留まりが低下すると同時に、圧延機を停止してから作業ロールを被圧延材から開放し、作業ロールを交換、作業ロールの被圧延材への閉め込みが終わるまで、操業することができないため、圧延の操業効率が低下する。
そこで、圧延操業を継続しながら、作業ロールを被圧延材から開放、被圧延材に接触させることができれば、圧延機を停止させる必要が無くなり、歩留まりと生産効率が向上する。また、走間での作業ロール組替(交換)や、圧延で使用するスタンド数の変更など、連続圧延機の操作性を著しく向上させることができる。
【0007】
しかし、圧延操業中に作業ロールを開放、接触させることは容易ではなく、これまで、様々な研究がなされているが、実際に操業現場に適用できる技術は少ない。
圧延中に作業ロールを開放、閉め込みする場合の問題点としては、作業ロール開放、閉め込みの過程で、圧延状態が不安定になり、被圧延材が破断すること、または、作業ロールを被圧延材から開放、接触させる際に作業ロールが被圧延材とスリップし、被圧延材および作業ロールに傷が発生することが挙げられる。
【0008】
被圧延材等の金属帯に応力を加えると変形するが、応力を加えた後に、元の状態に戻る一時的な変形は弾性変形、応力を加えた後に、変形したままの状態になる永久的な変形は塑性変形と称される。そして、弾性変形から塑性変形に移行する際に発生する応力を、降伏点と称す。
圧延の状態において、被圧延材は、作業ロール前後の張力と作業ロールで印加される荷重によって、塑性変形しており、圧延機入側の板厚より圧延機出側の板厚が薄い状態となっている。この圧延機入側と出側の板厚の差を圧下量という。
【0009】
作業ロールの荷重を減少させると、圧下量が減少するが、荷重が降伏点より小さくなると、塑性変形から弾性変形へ移行した場合、圧下量が零または極端に小さくなる。このとき、圧延機入側の被圧延材の速度が増加、圧延機出側の被圧延材の速度が減少し、圧延機入側および出側の張力が急激に増加する。
また弾性変形の状態から、作業ロールの荷重を増加させると、ある点で、降伏点を超え、塑性変形状態に移行する。
【0010】
このとき、急激に圧下量が増加するため、圧延機入側の被圧延材の速度が減少、圧延機出側の被圧延材の速度が増加するため、圧延機入側および出側で張力が急激に減少する。
通常の圧延速度において、被圧延材の張力が急激に変動すると、圧延が不安定になり、絞りと呼ばれる形状不良が発生したり、板端部の張力が上昇するなどして、被圧延材が破断したりする。
また、作業ロールを被圧延材から引き離す場合には、作業ロールを駆動するモータのトルクが変動するために作業ロールの速度が変化する、また、被圧延材の速度が変化し、被圧延材と作業ロールがスリップする。一方、作業ロールを被圧延材へ接触させる際には、作業ロールと被圧延材の速度差により、作業ロールと被圧延材がスリップする。
【0011】
すなわち、走間(被圧延材の走行中)にて作業ロールを開放、閉め込みする際には、作業ロールと被圧延材の速度に差が発生することから、スリップや擦り傷が発生する。
また、作業ロールを開放、閉め込みする段階で、被圧延材が塑性変形から弾性変形、または弾性変形から塑性変形へ急激に移行するため、張力が大きく変動したり、形状が悪化したりして、絞りや板破断の原因となる。
【0012】
そのため、当業者においては、張力の変動量を最小限に留め、被圧延材と作業ロールにスリップを発生させずに、作業ロールの開放、および閉め込みができる方法と装置が求められている。
従って、圧延材および作業ロールに傷を発生させることなく、作業ロールの開放、閉め込みができることが技術課題となっている。
本発明は上記実状に鑑み、被圧延材および作業ロールにスリップおよび傷を発生させること無く、作業ロールの開放、閉め込みが可能となる圧延装置の制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するべく、第1の本発明に関わる圧延装置の制御方法は、走行中の被圧延材を上下から圧下して圧延する上下の作業ロールと、前記上下の作業ロールのギャップを制御するロールギャップ制御装置を有する1台以上の圧延機を備える圧延装置の制御方法であって、制御装置が、前記被圧延材を停止することなく、前記上下の作業ロールが前記被圧延材に加える荷重を減少させる第1工程と、前記被圧延材が弾性変形状態に到達した状態で、前記荷重を一定の状態に保持する第2工程と、前記圧延機入側及び出側の前記被圧延材の少なくとも張力および板速度のうちの何れかが等しい状態で、前記ロールギャップ制御装置を用いて、前記作業ロールの前記被圧延材に対しての閉め込み状態からの前記被圧延材に対しての開放を行う第3工程とを含んでいる。
【0014】
第2の本発明に関わる圧延装置の制御方法は、走行中の被圧延材を上下から圧下して圧延する上下の作業ロールと、前記上下の作業ロールのギャップを制御するロールギャップ制御装置を有する1台以上の圧延機を備える圧延装置の制御方法であって、制御装置が、前記被圧延材を停止することなく、前記被圧延材が弾性変形状態に到達した状態に保持する第1工程と、前記保持された弾性変形状態であって、前記圧延機入側及び出側の前記被圧延材の少なくとも張力および板速度のうちの何れかが等しい状態を少なくとも一部に含んだ状態で、前記ロールギャップ制御装置を用いて、前記被圧延材を停止することなく、前記作業ロールの前記被圧延材に対しての開放状態からの前記被圧延材への閉め込みを行う第2工程と、前記被圧延材を停止することなく、前記上下の作業ロールが前記被圧延材に加える荷重を増加させる第3工程とを、含んでいる。
【0015】
第3の本発明に関わる圧延装置の制御方法は、走行中の被圧延材を上下から圧下して圧延する上下の作業ロールと、前記上下の作業ロールのギャップを制御するロールギャップ制御装置と、前記作業ロールにベンダ力を与える手段とを有する1台以上の圧延機を備える圧延装置の制御方法であって、制御装置が、前記被圧延材の速度を所定の速度に減速させる第1工程と、前記被圧延材の速度が所定の速度に減速されてから、前記被圧延材を停止することなく、前記上下の作業ロールが前記被圧延材に加える荷重を徐々に減少させると共に前記ベンダ力を徐々に減少させる第2工程と、前記上下の作業ロールのベンダ力を上昇させ、かつ前記被圧延材の上下に存在する各前記作業ロール間がスリップしないように調整する第3工程と、前記圧延機入側及び出側の前記被圧延材の少なくとも張力および板速度のうちの何れかが等しい状態で、前記ロールギャップ制御装置を用いて、前記作業ロールの前記被圧延材に対しての閉め込み状態からの前記被圧延材に対しての開放を行う第4工程とを含んでいる。
【0016】
第4の本発明に関わる圧延装置の制御方法は、走行中の被圧延材を上下から圧下して圧延する上下の作業ロールと、前記上下の作業ロールのギャップを制御するロールギャップ制御装置と、前記作業ロールにベンダ力を与える手段とを有する1台以上の圧延機を備える圧延装置の制御方法であって、制御装置が、前記被圧延材を停止することなく、前記圧延機入側及び出側の前記被圧延材の少なくとも張力および板速度のうちの何れかが等しい状態で、前記ロールギャップ制御装置を用いて、前記作業ロールの前記被圧延材に対しての開放状態からの前記被圧延材への閉め込みを行う第1工程と、前記第1工程に同期して、前記上下の作業ロールのベンダ力を減少させた段階から、圧延時に必要となるベンダ力を与える状態とする第2工程と、前記閉め込みを行ってから、前記被圧延材を停止することなく、前記上下の作業ロールが前記被圧延材に加える荷重を徐々に増加させると共に前記ベンダ力を徐々に増加させる第3工程と、その後、前記被圧延材の速度を所定の速度に増加させる第4工程とを含んでいる。
【0017】
第5の本発明に関わる圧延装置の制御方法は、走行中の被圧延材を上下から圧下して圧延する上下の作業ロールと、前記上下の作業ロールのギャップを制御するロールギャップ制御装置と、前記作業ロールにベンダ力を与える手段とを有する1台以上の圧延機を備える圧延装置の制御方法であって、制御装置が、前記被圧延材の速度を所定の速度に減速させる第1工程と、前記被圧延材の速度が所定の速度に減速されてから、前記被圧延材を停止することなく、前記上下の作業ロールが前記被圧延材に加える荷重を徐々に減少させると共に前記ベンダ力を徐々に減少させる第2工程と、前記ベンダ力を上下作業ロール間が解放し、かつ前記被圧延材の上下に存在する各前記作業ロール間がスリップしないように調整する第3工程と、前記圧延機入側及び出側の前記被圧延材の少なくとも張力および板速度のうちの何れかが等しい状態で、前記ロールギャップ制御装置を用いて、前記作業ロールの前記被圧延材に対しての閉め込み状態からの前記被圧延材に対しての開放を行う第4工程とを含んでいる。
【0018】
第6の本発明に関わる圧延装置の制御方法は、走行中の被圧延材を上下から圧下して圧延する上下の作業ロールと、前記上下の作業ロールのギャップを制御するロールギャップ制御装置と、前記作業ロールにベンダ力を与える手段とを有する1台以上の圧延機を備える圧延装置の制御方法であって、制御装置が、前記被圧延材を停止することなく、前記圧延機入側及び出側の前記被圧延材の少なくとも張力および板速度のうちの何れかが等しい状態で、前記ロールギャップ制御装置を用いて、前記作業ロールの前記被圧延材に対しての開放状態からの前記被圧延材への閉め込みを行う第1工程と、前記第1工程に同期して、前記ベンダ力を前記上下作業ロール間が解放し、かつ被圧延材の上下に存在する各前記作業ロール間がスリップしないように調整した段階から、圧延時に必要となる前記ベンダ力を与える状態とする第2工程と、前記閉め込みを行ってから、前記被圧延材を停止することなく、前記上下の作業ロールが前記被圧延材に加える荷重を徐々に増加させると共に前記ベンダ力を徐々に増加させる第3工程と、その後、前記被圧延材の速度を所定の速度に増加させる第4工程とを含んでいる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、被圧延材および作業ロールにスリップおよび傷を発生させることなく、作業ロールの開放、閉め込みが可能となる圧延装置の制御方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る実施形態の走間ロール開放、閉め込みシステムの簡単な構成例のシングルスタンドの圧延装置Sを示す概念図である。
【図2】(a)は、走間(被圧延材1が走行中)の作業ロールの被圧延材からの開放動作時の圧延機の電動機による作業ロールの速度である圧延機速度を示す図であり、(b)は、走間の被圧延材に対する圧延荷重、作業ロールのベンダ圧力を示す図であり、(c)は、走間の圧延機入側および出側の張力実績を示す図であり、(d)は、走間の圧延機入側および出側の被圧延材の速度実績を示す図である。
【図3】走間の作業ロールの被圧延材からの開放の動作フローの例を示す図である。
【図4】(a)は、走間の被圧延材走行中の上・下作業ロールの被圧延材への閉め込み動作時の圧延機の電動機による作業ロールの速度の圧延機速度を示す図であり、(b)は、走間の被圧延材に対する圧延荷重、作業ロールのベンダ圧力を示す図であり、(c)は、走間の圧延機入側および出側の張力実績を示す図であり、(d)は、走間の圧延機入側および出側の被圧延材の速度実績を示す図である。
【図5】走間(被圧延材走行中)に上・下作業ロールを被圧延材に閉め込む際の動作フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る実施形態の走間ロール開放、閉め込みシステムの簡単な構成例のシングルスタンドの圧延装置Sを示す概念図である。
【0022】
<<圧延装置Sの概要>>
本発明に係る実施形態の圧延装置Sは、被圧延材1の溶接部が圧延を担う上・下作業ロールRs1、Rs2を通過する際に、60mpm(メートル/分)以下の低速操業中に被圧延材1から作業ロールRs1、Rs2を予め決められた手順に従って離脱させ、被圧延材1が塑性変形状態から弾性変形状態に至ったかを判定し、上・下作業ロールRs1、Rs2と被圧延材1とを非接触状態とする。その後、被圧延材1が60mpm以下の低速の操業中に上・下作業ロールRs1、Rs2を被圧延材1に接触させ、被圧延材1が弾性変形状態から塑性変形状態に至ったかを判定し、予め決められた手順に従って段階的に圧延状態へ遷移させることで、圧延操業中に上・下作業ロールRs1、Rs2の開放、閉め込みを行う。
【0023】
このように、上・下作業ロールRs1、Rs2と被圧延材1とが60mpm以下の低速で、被圧延材1が塑性変形状態か弾性変形状態かを判定し、予め決められた手順に従って、段階的に上・下作業ロールRs1、Rs2を、被圧延材1から離脱させるとともに、被圧延材1に接触させるため、被圧延材1および上・下作業ロールRs1、Rs2に傷を発生させることがなく、上・下作業ロールRs1、Rs2の被圧延材1からの開放および被圧延材1への閉め込みが可能となる。
【0024】
また、上・下作業ロールRs1、Rs2と被圧延材1とのスリップを防止し、さらに安定的に圧延状態に遷移させることができる。
具体的には、被圧延材1が60mpm以下の低速状態へスムーズに移行するように、ラインの加速・減速レートの変更、被圧延材1の張力、および圧延荷重を段階的に変化させることにより、被圧延材1が塑性変形状態から弾性変形状態へスムーズに移行し、また、被圧延材1が弾性変形状態から塑性変形状態へスムーズに移行することが可能である。
この被圧延材1の弾性変形および塑性変形の圧延状態は、圧延機3の入側または出側の張力実績値の変動、または圧延機入側および出側の被圧延材1速度比の実績により、検出することができる。
【0025】
以下、圧延装置Sについて詳細に説明する。
<<圧延装置Sの全体構成>>
圧延装置Sは、被圧延材1に対して圧延を行う圧延機3の被圧延材1の入側に、被圧延材1を圧延機3に向けて繰り出すとともにその速度を制御する入側速度制御ロール2が設置され、また、圧延機3の被圧延材1の出側に被圧延材1をコイル5として巻き取るテンションリール4が設置されている。
なお、入側速度制御ロール2は、被圧延材1の速度を制御できる機構であればよく、被圧延材1をロールで挟むピンチロールのような機構や、速度制御機能の付いた巻き出しリール、または巻き取り側リールに速度制御機能がついている形態などでもよい。
【0026】
圧延機3の被圧延材1の入側には、圧延機3の入側の被圧延材1の張力を検出する圧延機入側張力検出器9と、圧延機3の入側の被圧延材1の速度を検出する圧延機入側速度検出器6とが設置されている。
また、圧延機3の被圧延材1の出側には、圧延機3の出側の被圧延材1の張力を検出する圧延機出側張力検出器10と、圧延機3の出側の被圧延材1の速度を検出する圧延機出側速度検出器7とが設置されている。
【0027】
圧延機入側・出側速度検出器6、7は、例えば、被圧延材1に対して少し斜めからレーザ光をあててその反射光の入射光との波長の変化から速度変化を読み取る装置等が用いられる。
圧延機入側・出側張力検出器9、10は、例えば、被圧延材1にそれぞれロール9r、10rをあてて、被圧延材1からロール9r、10rに加わる荷重から被圧延材1の張力を読み取る装置等が用いられる。なお、圧延機入側・出側速度検出器6、7および圧延機入側・出側張力検出器9、10は、上記構成に限定されないことは勿論である。
【0028】
圧延機3には、上下独立にそれぞれ上ロール位置制御装置51、下ロール位置制御装置52が設けられており、これらの上ロール位置制御装置51、下ロール位置制御装置52により、上作業ロールRs1と下作業ロールRs2の高さ位置は、独立して操作することが可能となっている。
上ロール位置制御装置51、下ロール位置制御装置52は、それぞれロール位置指令演算装置61の制御指令によって、独立して制御される。
【0029】
また、下作業ロールRs2の上部または上作業ロールRs1の下部に加わる荷重を検出する荷重検出器8が設置されており、この荷重検出器8により、上・下作業ロールRs1、Rs2によって被圧延材1に加えられる圧延荷重が測定されている。
【0030】
張力・速度指令演算装置62は、被圧延材1を繰り出す入側速度制御用ロール2の速度制御装置40に電動機20の速度指令を出力するとともに、圧延機3の速度制御装置41に電動機21の速度指令を出力する。各速度制御装置40、41は、各々の電動機20、21の速度検出器30、31により、各電動機20、21の回転速度を検出し、それぞれの電動機20、21が張力・速度指令演算装置62で演算した速度指令で回転するように制御する。
【0031】
電流指令演算装置63は、圧延機3の出側の被圧延材1に張力を加えるテンションリール4の張力目標値と、圧延された被圧延材1が巻き取られたコイル5の直径および張力・速度指令演算装置62の速度指令とから、所望の張力を得るためのテンションリール駆動電動機22の電流指令を演算する。そして、電流指令演算装置63で演算した電流指令が入力される電流制御装置42は、テンションリール駆動電動機22の電流が電流指令演算装置63にて演算した電流指令に等しくなるように、テンションリール駆動電動機22を制御する。
【0032】
通常の圧延状態に於いては、入側速度制御ロール2による被圧延材1の速度の増減によって、圧延機3入側の被圧延材1の張力を制御し、被圧延材1は、圧延機3により所望の板厚に圧延された後に、テンションリール4に巻き取られる。
走間ロール開放・閉め込み指令演算装置60は、圧延装置Sを統括的に制御する演算装置であり、後記する走間(被圧延材1が走行中)の上・下作業ロールRs1、Rs2の被圧延材1からの開放、閉め込みの制御等を統括的に行っている。
【0033】
すなわち、走間ロール開放・閉め込み指令演算装置60は、上・下ロール位置制御装置51、52を制御するロール位置指令演算装置61へロール閉め込み指令を出力するとともに、張力・速度指令演算装置62に対する速度制御装置40、41への被圧延材1の速度指令、出側の電流指令演算装置63の被圧延材1の張力指令等を出力する。
ここで、走間ロール開放・閉め込み指令演算装置60、ロール位置指令演算装置61、張力・速度指令演算装置62、および電流指令演算装置63は、例えば、PLC(programmable logic controller)において、制御ソフトウェアによって具現化される。また、速度制御装置40、41、電流制御装置42、上・下ロール位置制御装置51、52は、例えば、PLCにおいて、制御ソフトウェア、電子回路等によって具現化される。
【0034】
<上・下作業ロールRs1、Rs2の被圧延材1からの開放動作>
次に、走間(被圧延材1が走行中)に作業ロールRs1、Rs2を被圧延材1から開放する動作について、図2、図3を用いて説明する。
なお、図2(a)は、走間(被圧延材1が走行中)の上・下作業ロールRs1、Rs2の被圧延材1からの開放動作時の圧延機3の電動機21による上・下作業ロールRs1、Rs2の速度である圧延機速度を示す図であり、図2(b)は、走間(被圧延材1が走行中)の被圧延材1に対する圧延荷重、上・下作業ロールRs1、Rs2のベンダ圧力を示す図であり、図2(c)は、走間(被圧延材1が走行中)の圧延機3の入側および出側の被圧延材1の張力実績を示す図であり、図2(d)は、走間(被圧延材1が走行中)の圧延機3の入側および出側の被圧延材1の速度実績を示す図である。
図3は、走間(被圧延材1走行中)の上・下作業ロールRs1、Rs2の被圧延材1からの開放の動作フローの例を示す図である。
【0035】
走間(被圧延材1走行中)に上・下作業ロールRs1、Rs2を開放する際には、先ず、図3のS101において、電動機21により圧延機(ミル)の上・下作業ロールRs1、Rs2を減速(図2(a)の(1)参照)し、図3のS102において、ミル速度が低速領域(30〜50mpm)になったか否か判断する。
ミル速度が低速領域(30〜50mpm)になっていない場合(図3のS102でNo)、図3のS101に移行し、圧延機(ミル)の作業ロールRs1、Rs2を減速する。
一方、ミル速度が低速領域(30〜50mpm)に達した場合(図3のS102でYes)、図3のS103aにおいて、圧延機3の減速レートを変更し(図2(a)の(2)参照)、緩やかに減速させ、極低速状態(30mpm未満)とする。
【0036】
本実施形態では、操業上のオフゲージを最小限に抑えるため、極低速まで減速するが、60mpm未満の低速状態であれば、問題無い。また、減速レートの変更方法は、1段階、または、速度や時間に応じた多段階、無段階でもよく、圧延機3の速度および、圧延機3の入側、出側の被圧延材1の速度および張力が安定して極低速状態へ移行できる速度指令であればよい。
ミル速度が低速時においては、被圧延材1の板厚を一定に保持しようとすると、被圧延材1に加える荷重が上昇することがあるため、図3のS103bにおいて、低速状態にて、荷重一定または荷重が一定値以上にならないよう、下ロール位置制御装置51を操作する(図2(b)の(3)参照)。
【0037】
図3のS104において、ミル速度(圧延機3の速度)が極低速状態になったか否か判断する。ミル速度(圧延機3の速度)が極低速状態にならない場合(図3のS104でNo)、図3のS103a、S103bに移行する。
ミル速度(圧延機3の速度)が極低速状態になった場合(図3のS104でYes)、図3のS105において、ミル速度(圧延機3の速度)を一定に制御し、図3のS106aにおいて、荷重目標値を変更、または下ロール位置制御装置を操作して下ロール位置を下方へ操作し、被圧延材1にかかる圧延荷重を減少させる(図2(b)の(4)参照)。同時に、図3のS106bにおいて、上作業ロールRs1、下作業ロールRs2のベンダ圧力も減少させる(図2(b)の(5a)参照)。
【0038】
また、図3のS106cにおいて、圧延機3の入側および出側の張力が同じになるよう張力目標値を変更する(図2(c)の(5b)参照)。
なお、上作業ロールRs1、下作業ロールRs2のベンダ圧力とは、上作業ロールRs1、下作業ロールRs2の撓み(中央部に被圧延材1が挟まれるために中央部が外方に変形するとともに両端部が内方に変形する撓み)を抑制するため、上作業ロールRs1、下作業ロールRs2のそれぞれの両端部に外方に向けて加える圧力をいう。
【0039】
図3のS107において、圧延機3の入側または出側の被圧延材1に大きな張力変動を検出した(図2(c)の(6a)参照)か否か、または圧延機3の入側および出側の速度実績の差がある一定の範囲内(1%未満)になったか否か(或いは、圧延機3の入側および出側の速度比が1または1近傍値になったか否か)(図2(d)の(6b)参照)、または、被圧延材1への圧延荷重が下限値になった(図2(b)の(6c)参照)か否か判断する。
【0040】
図3のS107で、圧延機3の入側または出側の被圧延材1に大きな張力変動を検出せず、かつ圧延機3の入側および出側の速度実績の差がある一定の範囲内(1%未満)にならず(或いは、圧延機3の入側および出側の速度比が1近傍値にならず)、かつ圧延荷重が下限値にならない場合(図3のS107でNo)、図3のS106a、S106b、S106cに移行する。
【0041】
一方、図3のS107で、入側または出側の大きな張力変動を検出、または圧延機3の入側および出側の速度実績の差がある一定の範囲内(1%未満)(或いは、圧延機3の入側および出側の速度比が1近傍値)、または圧延荷重が下限値になったと判断された場合(図3のS107でYes)、被圧延材1が塑性変形から弾性変形へ移行したと判断し、図3のS108aにおいて、下ロール位置制御装置52を操作し、被圧延材1への圧延荷重を一定に制御し(図2(b)の(7a)参照)、図3のS108bにおいて、上・下作業ロールRs1、Rs2がそれぞれ中間ロールRc1、Rc2または、バックアップロールRb1、Rb2とスリップしないよう、上・下作業ロールRs1、Rs2のベンダ圧力をバランス圧力(ベンダ圧力と上・下作業ロールRs1、Rs2のそれぞれの重さが釣り合う状態)まで上昇させる(図2(b)の(7b)参照)。
【0042】
続いて、図3のS109において、上・下作業ロールRs1、Rs2のベンダ圧力実績がバランス圧力以上に上昇し、かつ圧延機3の入側および出側の張力実績が等しくまたはその差がある一定値の範囲内になった(図2(c)の(8)参照)か否か判断される。
図3のS109において、上・下作業ロールRs1、Rs2のベンダ圧力実績がバランス圧力以上に上昇しないか、または圧延機3の入側および出側の被圧延材1の張力実績が等しくまたはその差がある一定値の範囲内にないと判断された場合(図3のS109でNo)、図3のS108a、S108bに移行する。
【0043】
一方、作業ロールRs1、Rs2のベンダ圧力実績がバランス圧力以上に上昇し、圧延機3の入側および出側の被圧延材1の張力実績が等しく、または、その差がある一定値の範囲内になったと判断された場合(図3のS109でYes)、図3のS110aにおいて、下ロール位置制御装置52を操作し、下作業ロールRs2を下方に移動し被圧延材1から開放する(図2(b)の(9)参照)。
同時に、図3のS110bにおいて、圧延荷重がある一定値以下に減少したら、上ロール位置制御装置51を操作し、上作業ロールRs1の位置を上昇させる(図2(b)の(9)参照)。
【0044】
続いて、図3のS111において、下作業ロールRs2が被圧延材1が搬送されるパスライン位置より所定値Xmm以上の位置に到達したか否か判断される。例えば、被圧延材1の板厚が3mmの場合、Xmmは2mmが設定できる。Xは、被圧延材1と下作業ロールRs2が接触しない値であれば良い。
下作業ロールRs2が被圧延材1が搬送されるパスライン位置より所定値Xmm以上の位置に到達しないと判断される場合(図3のS111でNo)、図3のS110aに移行する。
【0045】
一方、図3のS111で、下作業ロールRs2が被圧延材1が搬送されるパスライン位 置より所定値Xmm以上の位置に到達したと判断される場合(図3のS111でYes)、終了する(図2(b)の(10)参照)。
また、図3のS112において、上作業ロールRs1の位置が、被圧延材1が搬送されるパスライン位置より所定値Xmm以上の位置に到達したか否か判断される。なお、Xは、被圧延材1と上作業ロールRs1が接触しない値であれば良い。
【0046】
上作業ロールRs1の位置がパスラインよりXmm以上の位置に到達していないと判断された場合(図3のS112でNo)、図3のS110bに移行する。
一方、上作業ロールRs1の位置がパスラインよりXmm以上の位置に到達したと判断された場合(図3のS112でYes)、終了する(図2(b)の(10)参照)。
以上が、図3に示す走間(被圧延材1走行中)の上・下作業ロールRs1、Rs2の被圧延材1からの開放の動作フローである。
【0047】
<<走間に上・下作業ロールRs1、Rs2を被圧延材1に閉め込む際の動作>>
次に、圧延装置Sの走間(被圧延材1の走行中)に上・下作業ロールRs1、Rs2を被圧延材1に閉め込む動作について、図5に従って説明する。
【0048】
なお、図4は、被圧延材1が60mpm以下の低速状態において、走間(被圧延材1の走行中)に上・下作業ロールRs1、Rs2を被圧延材1に閉め込む際の動作チャートを示しており、図4(a)は、走間(被圧延材1走行中)の上・下作業ロールRs1、Rs2の被圧延材1への閉め込み動作時の圧延機3の電動機21による上・下作業ロールRs1、Rs2の速度である圧延機速度を示す図であり、図4(b)は、走間(被圧延材1走行中)の被圧延材1に対する圧延荷重、上・下作業ロールRs1、Rs2のベンダ圧力を示す図であり、図4(c)は、走間(被圧延材1走行中)の圧延機3の入側および出側の張力実績を示す図であり、図4(d)は、走間(被圧延材1走行中)の圧延機3の入側および出側の被圧延材1の速度実績を示す図である。
図5は、被圧延材1走行中(走間)に上作業ロールRs1、下作業ロールRs2を被圧延材1に閉め込む際の動作フローを示す図である。
【0049】
走間(被圧延材1走行中)に、上作業ロールRs1、下作業ロールRs2を被圧延材1に閉め込む際には、先ず、図5のS201において、図1に示す被圧延材1が60mpm以下の低速で走行中に、電動機21によりミル(圧延機3)の上・下作業ロールRs1、Rs2の運転を開始し、圧延機速度(上作業ロールRs1、下作業ロールRs2の回転速度)が、60mpm以下の低速の被圧延材1より速い場合には圧延機3(上作業ロールRs1、下作業ロールRs2)を減速させ、圧延機3の上・下作業ロールRs1、Rs2の周速と被圧延材1の速度が同じになるように、速度制御装置41の電動機21への速度指令を調整する(図4(a)の(1)参照)。
【0050】
図5のS202において、圧延機3(上作業ロールRs1、下作業ロールRs2)と被圧延材1の速度差が零または一定範囲内に入ったか否か判断される。
圧延機3(上作業ロールRs1、下作業ロールRs2)と被圧延材1の速度差が零または一定範囲内に入っていないと判断された場合(図5のS202でNo)、図5のS201に移行する。
【0051】
一方、圧延機3(上作業ロールRs1、下作業ロールRs2)と被圧延材1の速度差が零または一定範囲内に入ったと判断された場合(図5のS202でYes)、図5のS203a、S203bにおいて、図1に示す走間ロール開放・閉め込み指令演算装置60が、ロール位置指令演算装置61へロール閉め込み指令を出力し、ロール位置指令演算装置61が上ロール位置制御装置51および下ロール位置制御装置52に、閉め込み方向の指令を出力し、上・下作業ロールRs1、Rs2で被圧延材1を閉め込む(図4(b)の(2)参照)。
【0052】
図5のS204において、荷重検出器8(図1参照)にて被圧延材1の圧延荷重を検出し、圧延荷重が一定値以上になったか否か判断される。
圧延荷重が一定値以上になっていない場合(図5のS204でNo)、図5のS203a、S203bに移行する。
一方、圧延荷重が一定値以上になった場合(図5のS204でYes)、図5のS205において、ロール位置指令演算装置61(図1参照)が、圧延荷重が一定になるよう、下ロール位置制御装置52に位置指令を出力し、荷重一定制御を行う(図4(b)の(3)参照)。
【0053】
続いて、図5のS206において、上・下作業ロールRs1、Rs2のベンダ圧力を、バランス圧力から、減少させる(図4(b)の(4)参照)。
図5のS207において、上・下作業ロールRs1、Rs2のベンダ圧力のバランス圧力からの減少が完了したか判断される。
図5のS207において、上・下作業ロールRs1、Rs2のベンダ圧力のバランス圧力からの減少が完了しないと判断された場合(図5のS207でNo)、図5のS206に移行する。
【0054】
一方、上・下作業ロールRs1、Rs2のベンダ圧力のバランス圧力からの減少が完了した場合(図5のS207でYes)、図5のS208aにおいて、走間ロール開放・閉め込み指令演算装置60(図1参照)の指令によりロール位置指令制御装置61が下ロール位置制御装置52へ閉め込み指令を出力し、下ロール位置制御装置52の指令により下作業ロールRs2で被圧延材1を閉め込み被圧延材1への荷重を上昇させる(図4(b)の(5)参照)、同時に図5のS208bにおいて、被圧延材1の形状変化を最小限に抑えるため上・下作業ロールRs1、Rs2のベンダの圧力を上記荷重とともに増加させる(図4(b)の(6)参照)。また、図5のS208cにおいて、走間ロール開放・閉め込み指令演算装置60が、張力・速度指令演算装置62の圧延機3の入側の速度制御装置40、41への張力指令および出側の電流指令演算装置63への張力指令を圧延スケジュール設定値へ変更する(図4(c)の(7)参照)。
【0055】
被圧延材1への圧延荷重を上昇させる段階にて、被圧延材1が弾性変形状態から塑性変形状態へ移行する。この状態の遷移は、図1に示す圧延機3の入側または出側の圧延機入側張力検出器9または圧延機出側張力検出器10で検出される張力実績値が減少すること、または圧延機3の入側の圧延機入側速度検出器6および出側の圧延機出側速度検出器7でそれぞれ検出される被圧延材1の板速度実績に速度差が現れること(或いは、被圧延材1の入側と出側の速度比が1でなくなること)から検出できる。
【0056】
図5のS209において、圧延荷重が目標荷重に到達し、かつ、走間ロール開放・閉め込み指令演算装置60の張力変更が完了したか否か判断される。
被圧延材1への圧延荷重が目標荷重に到達していないか、または、走間ロール開放・閉め込み指令演算装置60の張力変更が完了していない場合(図5のS209でNo)、図5のS208a、図5のS208b、図5のS208cに移行する。
一方、圧延荷重が目標荷重に到達し、かつ、走間ロール開放・閉め込み指令演算装置60の張力変更が完了した場合(図5のS209でYes)、図5のS210において、圧延機3の加速レートを低下させた状態から圧延機3の加速を開始する(図4(a)の(8)参照)。
【0057】
続いて、図5のS211において、圧延機3(上作業ロールRs1、下作業ロールRs2)の速度がある一定の速度以上に達したか否か判断される。
圧延機3(上作業ロールRs1、下作業ロールRs2)の速度がある一定の速度以上に達していない場合((図5のS211でNo)、図5のS210に移行する。
一方、圧延機3の速度がある一定の速度以上に達した場合(図5のS211でYes)、図5のS212において、加速レートを通常の加速レートへ戻して更に加速して(図4(a)の(9)参照)、通常の圧延状態へ移行する(図4(a)の(10)参照)。
【0058】
ここで、加速レートの変更は、1回のみ変更する1段階でも、圧延機3の速度(上作業ロールRs1、下作業ロールRs2の回転速度)または時間により多段階に変化させてもよく、さらには連続的に無段階に変化させてもよい。
以上が、図5に示す圧延装置Sの走間(被圧延材1の走行中)に上・下作業ロールRs1、Rs2を被圧延材1に閉め込む動作のフローである。
【0059】
<<まとめ>>
本実施形態の圧延装置S(図1参照)では、被圧延材1の圧延から上・下作業ロールRs1、Rs2の開放まで、各々の状態を段階的に遷移させて、走間(被圧延材1の走行中)に上・下作業ロールRs1、Rs2の被圧延材1からの開放、被圧延材1への閉め込みを行う。また、これらの動作を、被圧延材1の送りが60mpm以下で行うことにより、製品(圧延品)のオフゲージを最小限に抑え、さらに上・下作業ロールRs1、Rs2と被圧延材1に傷を発生させること無く、上・下作業ロールRs1、Rs2を開放、閉め込みさせることができる。
【0060】
圧延装置Sにおいて、上・下作業ロールRs1、Rs2を開放する場合は、先ず、通常の圧延状態から減速し、低速での圧延状態とする。
このとき、安定した圧延状態を保持しながら減速するため、段階的に減速しても良い。
被圧延材1の送りを30mpm未満の極低速とすれば、さらに安全に上・下作業ロールRs1、Rs2の開放、閉め込み処理が可能となる。被圧延材1の送りが低速(30mpm以上)の圧延状態から、極低速(30mpm未満)へ減速する際には、減速レートが大きい、すなわち早く減速させると、圧延機3の上・下作業ロールRs1、Rs2が停止してしまうため、圧延機3の上・下作業ロールRs1、Rs2の速度指令の減速レートを段階的に変化させ、緩やかに減速させる。
【0061】
また、低速時において、被圧延材1の板厚が目標値になるように、上・下作業ロールRs1、Rs2間のギャップを制御すると、上・下作業ロールRs1、Rs2の被圧延材1への荷重が上昇し、被圧延材1の板形状が悪化する。
そこで、低速圧延状態から極低速圧延状態に移行する場合には、上・下作業ロールRs1、Rs2にかかる荷重(圧延荷重)が一定の値になるように上・下作業ロールRs1、Rs2間のギャップを制御する。このとき、被圧延材1は、圧延機3の入側の板厚より、出側の板厚が薄くなっており、被圧延材1が上・下作業ロールRs1、Rs2の荷重によって圧延され塑性変形する状態となっている。
【0062】
その後、圧延状態(塑性変形状態)から徐々に上・下作業ロールRs1、Rs2間のギャップを開放し、上・下作業ロールRs1、Rs2による荷重をある一定の値、または被圧延材1が弾性変形状態になるまで減少させ、被圧延材1を弾性変形の状態にする。
同時に、圧延機3の入側と出側の被圧延材1の張力が等しくなるように、入側、出側のロール(入側速度制御ロール2、テンションリール4)の速度または、巻き取りリールであるテンションリール4のトルクを変更する。
【0063】
この過程で、被圧延材1が塑性変形状態から弾性変形状態に遷移する瞬間に、圧延機3の入側および出側の被圧延材1の張力または被圧延材1の速度が変動する。そこで、圧延機3の入側および出側の被圧延材1の張力の変動を最小限に抑えるため、圧延機3の入側および出側の作業ロール(入側速度制御ロール2およびテンションリール4)の速度、またはテンションリール4のトルクを変更する。
【0064】
これらの作業ロールの入側速度制御ロール2の速度およびテンションリール4の速度、またはテンションリール4のトルクの変更量は、被圧延材1の張力の実績または、被圧延材1の速度実績から算出する。結果として、被圧延材1の張力の変動を最小限に抑えることができ、安定した操業を継続することができる。
また、上・下作業ロールRs1、Rs2の荷重を減少させる際には、上・下作業ロールRs1、Rs2の撓み量が変化し、被圧延材1の形状も変化するため、被圧延材1の板形状の変化が最小になるよう、上・下作業ロールRs1、Rs2の撓み量を補正する上・下作業ロールRs1、Rs2のベンダの圧力を減少させる。
【0065】
次に、上・下作業ロールRs1、Rs2と中間ロールRc1、Rc2、バックアップロールRb1、Rb2がスリップしないように、上・下作業ロールRs1、Rs2のベンダの圧力を上昇させ、さらに上・下作業ロールRs1、Rs2を開放して、被圧延材1から上・下作業ロールRs1、Rs2を引き離す。このとき、被圧延材1および上・下作業ロールRs1、Rs2の速度は1〜60mpm程度の周速であり、上・下作業ロールRs1、Rs2が停止しているのとほぼ同様の状態で被圧延材1から作業ロールRs1、Rs2を引き離すことができるため、上・下作業ロールRs1、Rs2と被圧延材1とのスリップが発生しない。
【0066】
さらに、被圧延材1の送りが30mpm未満の極低速状態とすれば、スリップが発生する可能性を極限まで減少させることが可能である。
このように、低速状態で段階的に上・下作業ロールRs1、Rs2を被圧延材1から開放することにより、上・下作業ロールRs1、Rs2と被圧延材1に擦り傷などを発生させることなく、操業中に上・下作業ロールRs1、Rs2を開放することができる。
【0067】
上・下作業ロールRs1、Rs2を接触させる際は、上・下作業ロールRs1、Rs2のベンダの圧力を上・下作業ロールRs1、Rs2と中間ロールRc1、Rc2またはバックアップロールRb1、Rb2とスリップしない圧力まで増加させ、被圧延材1を低速状態まで減速または加速し、圧延機入側速度検出器6、圧延機出側速度検出器7等の板速度計などの被圧延材1の速度検出手段で、被圧延材1の速度を検出し、上・下作業ロールRs1、Rs2の速度と被圧延材1の速度が一致するように、上・下作業ロールRs1、Rs2の速度を制御する。
【0068】
また、上・下作業ロールRs1、Rs2の速度が被圧延材1の速度に追従するよう、上・下作業ロールRs1、Rs2の速度制御装置41のDrooping量(電動機21の負荷電流を減少させるモータ回転速度の補正)をある一定の値に設定する。上・下作業ロールRs1、Rs2が被圧延材1に接触する際に、被圧延材1と上・下作業ロールRs1、Rs2の速度に差がある場合に、圧延機3のモータである電動機21にトルクが発生する。Drooping量を最適な値に設定することで、トルク電流を打ち消すように作業ロール駆動モータである電動機21の速度指令が補正されるため、被圧延材1と上・下作業ロールRs1、Rs2のスリップを防止できる。
【0069】
上側の上作業ロールRs1の位置を被圧延材1のパスラインに合わせ、下作業ロールRs2の位置を徐々に上昇させて、上・下作業ロールRs1、Rs2を被圧延材1に接触させる。上・下作業ロールRs1、Rs2が被圧延材に接触する接触状態は、荷重検出器8で検出することができる。荷重検出器8で上・下作業ロールRs1、Rs2の荷重を検出したら、上・下作業ロールRs1、Rs2の荷重が被圧延材1の弾性変形状態を保つような一定の値になるように下側の下作業ロールRs2の高さ位置を制御する。上・下作業ロールRs1、Rs2の荷重が一定の値になったら、上・下作業ロールRs1、Rs2のベンダの圧力を減少させる。
【0070】
次に、被圧延材1が圧延状態(塑性変形状態)になるまで、下側の下作業ロールRs2の位置を上昇させ、上・下作業ロールRs1、Rs2を閉め込む。被圧延材1が塑性変形状態になると、被圧延材1の圧延機3の入側板厚より圧延機3の出側板厚の方が小さくなるため、圧延機3の入側および出側の被圧延材1の速度が変化する。
したがって、被圧延材1が弾性変形状態から塑性変形状態へ遷移する状態は、圧延機3の入側の圧延機入側速度検出器6および出側の圧延機出側速度検出器7で被圧延材1の速度差(或いは速度比)を測定することにより、検出することができる。
【0071】
被圧延材1が弾性変形状態から、塑性変形状態へ変化する際には、圧延機3の入側および出側の被圧延材1の張力が減少するため、圧延機3の入側および出側の張力検出器である圧延機入側張力検出器9、圧延機出側張力検出器10、または圧延機入側および出側の被圧延材1の速度検出器の圧延機入側速度検出器6、圧延機出側速度検出器7の実績から圧延機入側および出側のロール速度、すなわち入側速度制御ロール2の速度およびテンションリール4の速度、またはテンションリール4のトルク変更量を算出し、補正する。この結果、被圧延材1の張力の変動量を最小限に抑えることができる。
【0072】
また、上・下作業ロールRs1、Rs2を閉め込む際には、被圧延材1の形状が変化しないように、上・下作業ロールRs1、Rs2の荷重の上昇と同時に上・下作業ロールRs1、Rs2のベンダ圧力を上昇させる。
圧延機3の入側および出側の被圧延材1の張力を設定張力へ変更するように入側および出側のロール速度(入側速度制御ロール2の速度およびテンションリール4の速度)、または巻き取りリール(テンションリール4)のトルクを変更する。
被圧延材1の圧延状態が塑性変形状態に移行して、張力変動がある一定範囲内に収束してから、圧延機3の上・下作業ロールRs1、Rs2を加速し、通常の圧延の運転状態にする。
【0073】
以上、本発明の観点まとめると、
第1の観点の圧延装置は、
走行中の被圧延材を上下から圧下して圧延する上下の作業ロールと、前記上下の作業ロールのギャップを制御するロールギャップ制御装置を有する1台以上の圧延機を備える圧延装置であって、
前記作業ロールが前記被圧延材に加える荷重を検出する荷重検出手段と、
前記圧延機入側および出側の前記被圧延材の速度を検出する被圧延材速度検出手段と、
前記圧延機入側および出側の被圧延材の張力を測定する張力検出手段と、
前記圧延機の作業ロールを駆動する電動機の速度を検出する電動機速度検出手段と、
前記圧延機入側および出側の前記被圧延材の張力または前記電動機の速度指令を演算する張力・速度指令演算手段と、
前記電動機速度検出手段により測定された速度実績と前記速度指令から、前記電動機の速度を制御する速度制御手段と、
前記作業ロールの位置を演算するロール位置演算手段と、
前記被圧延材の走行中に前記作業ロールの前記被圧延材に対する開放・閉め込みを行う制御を担う走間ロール開放・閉め込み指令演算装置とを備え、
該走間ロール開放・閉め込み指令演算装置は、
前記被圧延材を停止することなく、前記荷重を増加または減少させ、前記被圧延材が弾性変形状態に到達した状態で、前記荷重を一定の状態に保持し、前記圧延機入側および出側の前記被圧延材の少なくとも張力および板速度のうちの何れかが等しい状態で、前記ロールギャップ制御装置を用いて、前記作業ロールの前記被圧延材に対しての閉め込み状態からの前記被圧延材に対しての開放または前記作業ロールの前記被圧延材に対しての開放状態からの前記被圧延材への閉め込み制御を行う
ことを特徴とする圧延装置である。
【0074】
第2の観点の圧延装置は、
第1の観点の圧延装置において、
前記走間ロール開放・閉め込み指令演算装置は、前記荷重の増減時および前記作業ロールの開放、閉め込み時、前記作業ロールのベンダ圧力を補正する制御を行う
ことを特徴とする圧延装置である。
【0075】
第3の観点の圧延装置は、
第1または第2の観点の圧延装置において、
前記走間ロール開放・閉め込み指令演算装置は、前記被圧延材の速度が30メートル/分未満の状態で前記作業ロールの開放、閉め込みの制御を行う
ように制御することを特徴とする圧延装置である。
【0076】
第4の観点の圧延装置は、
第1から第3の観点のうちの何れかの圧延装置において、
前記走間ロール開放・閉め込み指令演算装置は、前記被圧延材速度検出手段によって検出される前記被圧延材の圧延機入側と出側の速度から、前記圧延機入側と出側の被圧延材の速度比を求め、前記被圧延材が塑性変形状態かまたは弾性変形状態かを判定する速度比圧延判定手段を有する
ことを特徴とする圧延装置である。
【0077】
第5の観点の圧延装置は、
第1から第4の観点のうちの何れかの圧延装置において、
前記走間ロール開放・閉め込み指令演算装置は、前記張力検出手段によって検出された前記圧延機入側および出側の前記被圧延材の張力の変動から、前記被圧延材の塑性変形から弾性変形への遷移または前記被圧延材の弾性変形から塑性変形への遷移を検出する張力圧延判定手段を有する
ことを特徴とする圧延装置である。
【0078】
第6の観点の圧延装置の制御方法は、
走行中の被圧延材を上下から圧下して圧延する上下の作業ロールと、前記上下の作業ロールのギャップを制御するロールギャップ制御装置を有する1台以上の圧延機を備える圧延装置の制御方法であって、
制御装置が、
前記被圧延材を停止することなく、前記上下の作業ロールが前記被圧延材に加える荷重を増加または減少させる第1工程と、
前記被圧延材が弾性変形状態に到達した状態で、前記荷重を一定の状態に保持する第2工程と、
前記圧延機入側及び出側の前記被圧延材の少なくとも張力および板速度のうちの何れかが等しい状態で、前記ロールギャップ制御装置を用いて、前記作業ロールの前記被圧延材に対しての閉め込み状態からの前記被圧延材に対しての開放または前記作業ロールの前記被圧延材に対しての開放状態からの前記被圧延材への閉め込みを行う第3工程とを
含むことを特徴とする圧延装置の制御方法である。
【0079】
第7の観点の圧延装置の制御方法は、
第6の観点の圧延装置の制御方法において、
前記荷重の増減時および前記作業ロール開放、閉め込み時に、前記上下の作業ロールのベンダ圧力を補正する第4工程を含む
ことを特徴とする圧延装置の制御方法である。
【0080】
第8の観点の圧延装置の制御方法は、
第6または第7の観点の圧延装置の制御方法において、
前記第1工程は、前記被圧延材の速度が30メートル/分未満の時、前記被圧延材を停止することなく、前記荷重を増加または減少させる
ことを特徴とする圧延装置の制御方法である。
【0081】
第9の観点の圧延装置の制御方法は、
第6から第8の観点のうちの何れかの圧延装置の制御方法において、
前記圧延機入側および出側の前記被圧延材の速度を検出し、前記圧延機入側と出側の被圧延材の速度比を算出し、前記被圧延材が塑性変形状態かまたは弾性変形状態かを判定する第5工程を含む
ことを特徴とする圧延装置の制御方法である。
【0082】
第10の観点の圧延装置の制御方法は、
第6から第9の観点のうちの何れかの圧延装置の制御方法において、
前記圧延機入側および出側の前記被圧延材の張力を検出し、該張力の変動を検出することで、前記被圧延材の塑性変形から弾性変形への遷移または前記被圧延材の弾性変形から塑性変形への遷移を検出する第6工程を含む
ことを特徴とする圧延装置の制御方法である。
【0083】
<<作用効果>>
上記圧延装置Sによれば、被圧延材1が低速操業中に圧延状態を段階的に遷移させることで、作業ロールRs1、Rs2や被圧延材1に擦り傷やスリップを発生させることなく、作業ロールRs1、Rs2を開放、締め込みすることが可能である。
従って、圧延を続けながら、上・下作業ロールRs1、Rs2の開放、閉め込みを行うことができる。
【0084】
そのため、圧延中に上・下作業ロールの組替えを行ったり、圧延機3を停止しないで、被圧延材1の溶接点を上・下作業ロールRs1、Rs2を開放した状態で通過させることも可能となり、被圧延材1の板厚、板幅変更の自由度が向上する。
こうして、操業モードの変更、および溶接部のある被圧延材1のスケジュール変更の自由度が大きくなる。
【0085】
さらには、連続圧延機においては圧延を継続しながら、圧延するスタンド数(圧延を行う圧延機3の台数)を変更することが可能となる。
また、被圧延材1にロールマークが発生しないことから、歩留まりが向上するとともに、圧延機3を停止せずに操業を継続することが可能となり、操業効率が飛躍的に向上する。
【産業上の利用可能性】
【0086】
冷間圧延設備における走間(被圧延材1の走行中)上・下作業ロールの組替え、走間圧延スタンド(圧延機3)数変更、走間操業方法切替えなどに幅広く利用可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 被圧延材
3 圧延機
6 圧延機入側速度検出器
7 圧延機出側速度検出器
8 荷重検出器
9 圧延機入側張力検出器
10 圧延機出側張力検出器
21 電動機
31 速度検出器
41 速度制御装置(制御装置)
51 上ロール位置制御装置(ロールギャップ制御装置)
52 下ロール位置制御装置(ロールギャップ制御装置)
60 走間ロール開放・閉め込み指令演算装置(制御装置)
61 ロール位置指令演算装置(制御装置)
62 張力・速度指令演算装置(制御装置)
Rs1 上作業ロール(作業ロール)
Rs2 下作業ロール(作業ロール)
S 圧延装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中の被圧延材を上下から圧下して圧延する上下の作業ロールと、前記上下の作業ロールのギャップを制御するロールギャップ制御装置を有する1台以上の圧延機を備える圧延装置の制御方法であって、
制御装置が、
前記被圧延材を停止することなく、前記上下の作業ロールが前記被圧延材に加える荷重を減少させる第1工程と、
前記被圧延材が弾性変形状態に到達した状態で、前記荷重を一定の状態に保持する第2工程と、
前記圧延機入側及び出側の前記被圧延材の少なくとも張力および板速度のうちの何れかが等しい状態で、前記ロールギャップ制御装置を用いて、前記作業ロールの前記被圧延材に対しての閉め込み状態からの前記被圧延材に対しての開放を行う第3工程とを
含むことを特徴とする圧延装置の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の圧延装置の制御方法において、
前記荷重の増減時および前記作業ロール開放時に、前記上下の作業ロールのベンダ圧力を補正する第4工程を含む
ことを特徴とする圧延装置の制御方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の圧延装置の制御方法において、
前記第1工程は、前記被圧延材の速度が30メートル/分未満の時、前記被圧延材を停止することなく、前記荷重を減少させる
ことを特徴とする圧延装置の制御方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちの何れか一項に記載の圧延装置の制御方法において、
前記圧延機入側および出側の前記被圧延材の速度を検出し、前記圧延機入側と出側の被圧延材の速度比を算出し、前記被圧延材が塑性変形状態かまたは弾性変形状態かを判定する第5工程を含む
ことを特徴とする圧延装置の制御方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちの何れか一項に記載の圧延装置の制御方法において、
前記圧延機入側および出側の前記被圧延材の張力を検出し、該張力の変動を検出することで、
前記被圧延材の塑性変形から弾性変形への遷移または前記被圧延材の弾性変形から塑性変形への遷移を検出する第6工程を含む
ことを特徴とする圧延装置の制御方法。
【請求項6】
走行中の被圧延材を上下から圧下して圧延する上下の作業ロールと、前記上下の作業ロールのギャップを制御するロールギャップ制御装置を有する1台以上の圧延機を備える圧延装置の制御方法であって、
制御装置が、
前記被圧延材を停止することなく、前記被圧延材が弾性変形状態に到達した状態に保持する第1工程と、
前記保持された弾性変形状態であって、前記圧延機入側及び出側の前記被圧延材の少なくとも張力および板速度のうちの何れかが等しい状態を少なくとも一部に含んだ状態で、前記ロールギャップ制御装置を用いて、前記被圧延材を停止することなく、前記作業ロールの前記被圧延材に対しての開放状態からの前記被圧延材への閉め込みを行う第2工程と、
前記被圧延材を停止することなく、前記上下の作業ロールが前記被圧延材に加える荷重を増加させる第3工程とを、
含むことを特徴とする圧延装置の制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載の圧延装置の制御方法において、
前記荷重の増減時および前記作業ロール閉め込み時に、前記上下の作業ロールのベンダ圧力を補正する第4工程を含む
ことを特徴とする圧延装置の制御方法。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の圧延装置の制御方法において、
前記第1工程は、前記被圧延材の速度が30メートル/分未満の時、前記被圧延材を停止することなく、前記荷重を増加させる
ことを特徴とする圧延装置の制御方法。
【請求項9】
請求項6から請求項8のうちの何れか一項に記載の圧延装置の制御方法において、
前記圧延機入側および出側の前記被圧延材の速度を検出し、前記圧延機入側と出側の被圧延材の速度比を算出し、前記被圧延材が塑性変形状態かまたは弾性変形状態かを判定する第5工程を含む
ことを特徴とする圧延装置の制御方法。
【請求項10】
請求項6から請求項9のうちの何れか一項に記載の圧延装置の制御方法において、
前記圧延機入側および出側の前記被圧延材の張力を検出し、該張力の変動を検出することで、前記被圧延材の塑性変形から弾性変形への遷移または前記被圧延材の弾性変形から塑性変形への遷移を検出する第6工程を含む
ことを特徴とする圧延装置の制御方法。
【請求項11】
走行中の被圧延材を上下から圧下して圧延する上下の作業ロールと、前記上下の作業ロールのギャップを制御するロールギャップ制御装置と、前記作業ロールにベンダ力を与える手段とを有する1台以上の圧延機を備える圧延装置の制御方法であって、
制御装置が、
前記被圧延材の速度を所定の速度に減速させる第1工程と、
前記被圧延材の速度が所定の速度に減速されてから、前記被圧延材を停止することなく、前記上下の作業ロールが前記被圧延材に加える荷重を徐々に減少させると共に前記ベンダ力を徐々に減少させる第2工程と、
前記上下の作業ロールのベンダ力を上昇させ、かつ前記被圧延材の上下に存在する各前記作業ロール間がスリップしないように調整する第3工程と、
前記圧延機入側及び出側の前記被圧延材の少なくとも張力および板速度のうちの何れかが等しい状態で、前記ロールギャップ制御装置を用いて、前記作業ロールの前記被圧延材に対しての閉め込み状態からの前記被圧延材に対しての開放を行う第4工程とを
含むことを特徴とする圧延装置の制御方法。
【請求項12】
走行中の被圧延材を上下から圧下して圧延する上下の作業ロールと、前記上下の作業ロールのギャップを制御するロールギャップ制御装置と、前記作業ロールにベンダ力を与える手段とを有する1台以上の圧延機を備える圧延装置の制御方法であって、
制御装置が、
前記被圧延材を停止することなく、前記圧延機入側及び出側の前記被圧延材の少なくとも張力および板速度のうちの何れかが等しい状態で、前記ロールギャップ制御装置を用いて、前記作業ロールの前記被圧延材に対しての開放状態からの前記被圧延材への閉め込みを行う第1工程と、
前記第1工程に同期して、前記上下の作業ロールのベンダ力を減少させた段階から、圧延時に必要となる前記ベンダ力を与える状態とする第2工程と、
前記閉め込みを行ってから、前記被圧延材を停止することなく、前記上下の作業ロールが前記被圧延材に加える荷重を徐々に増加させると共に前記ベンダ力を徐々に増加させる第3工程と、
その後、前記被圧延材の速度を所定の速度に増加させる第4工程とを
含むことを特徴とする圧延装置の制御方法。
【請求項13】
走行中の被圧延材を上下から圧下して圧延する上下の作業ロールと、前記上下の作業ロールのギャップを制御するロールギャップ制御装置と、前記作業ロールにベンダ力を与える手段とを有する1台以上の圧延機を備える圧延装置の制御方法であって、
制御装置が、
前記被圧延材の速度を所定の速度に減速させる第1工程と、
前記被圧延材の速度が所定の速度に減速されてから、前記被圧延材を停止することなく、前記上下の作業ロールが前記被圧延材に加える荷重を徐々に減少させると共に前記ベンダ力を徐々に減少させる第2工程と、
前記ベンダ力を上下作業ロール間が解放し、かつ前記被圧延材の上下に存在する各前記作業ロール間がスリップしないように調整する第3工程と、
前記圧延機入側及び出側の前記被圧延材の少なくとも張力および板速度のうちの何れかが等しい状態で、前記ロールギャップ制御装置を用いて、前記作業ロールの前記被圧延材に対しての閉め込み状態からの前記被圧延材に対しての開放を行う第4工程とを
含むことを特徴とする圧延装置の制御方法。
【請求項14】
走行中の被圧延材を上下から圧下して圧延する上下の作業ロールと、前記上下の作業ロールのギャップを制御するロールギャップ制御装置と、前記作業ロールにベンダ力を与える手段とを有する1台以上の圧延機を備える圧延装置の制御方法であって、
制御装置が、
前記被圧延材を停止することなく、前記圧延機入側及び出側の前記被圧延材の少なくとも張力および板速度のうちの何れかが等しい状態で、前記ロールギャップ制御装置を用いて、前記作業ロールの前記被圧延材に対しての開放状態からの前記被圧延材への閉め込みを行う第1工程と、
前記第1工程に同期して、前記ベンダ力を前記上下作業ロール間が解放し、かつ被圧延材の上下に存在する各前記作業ロール間がスリップしないように調整した段階から、圧延時に必要となる前記ベンダ力を与える状態とする第2工程と、
前記閉め込みを行ってから、前記被圧延材を停止することなく、前記上下の作業ロールが前記被圧延材に加える荷重を徐々に増加させると共に前記ベンダ力を徐々に増加させる第3工程と、
その後、前記被圧延材の速度を所定の速度に増加させる第4工程とを
含むことを特徴とする圧延装置の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−45627(P2012−45627A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−267361(P2011−267361)
【出願日】平成23年12月6日(2011.12.6)
【分割の表示】特願2009−95563(P2009−95563)の分割
【原出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(502251784)三菱日立製鉄機械株式会社 (130)
【Fターム(参考)】