説明

圧延装置

【課題】ワイパーブレードの取り付け誤差や歪みの影響を緩和して、押圧力をロールの長さ方向にわたって均一にすし、ワイパーブレードの交換頻度を低減して作業効率を向上させる。
【解決手段】ワークロール3と該ワークロール3の背面を押さえるバックアップロール4との両方に接触するようにワイパー機構5が設けられ、該ワイパー機構5は、両ロール3,4の間にまたぐように配置される帯板状のワイパーブレード11と、該ワイパーブレード11の背部を支持するブラケット12と、これらワイパーブレード11とブラケット12との間に配置された弾性部材13とを備え、ワイパーブレード11の両側縁が両ロール3,4にそれぞれ接触するエッジ部28とされるとともに、弾性部材13は、ワイパーブレード11の両エッジ部28の間の中間位置でワイパーブレード11を表面と直交する方向に押圧付勢している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延用のロールに付着した潤滑油やゴミ等を除去するワイパー機構を備えた圧延装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧延装置においては、圧延用ロール及び圧延材の冷却、これらの間の潤滑等のため、ロール表面に潤滑油が供給される。また、ロールに付着した余分の潤滑油やゴミを除去するためにワイパー機構が設けられており、ロール表面にワイパーブレードが接触している。
この種の圧延装置に設けられるワイパー機構として、従来では例えば特許文献1に記載のものがある。この特許文献1記載のワイパー機構は、樹脂製の平板状のワイパーブレード(ロールワイパー本体)が、その面方向をロール表面の法線方向に一致させた状態で接触し、その背部からスプリングによってロールに押し付けられる構成である。また、そのワイパーブレードはロールの長さ方向に沿って複数個並べられており、それぞれが独立してスプリングで付勢されることにより、ロールの長さ方向にわたって均一な押圧力で押し付けられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2−144201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のワイパー機構において、ロールの長さに匹敵する1本の長いワイパーブレードとした場合、ロールやワイパーブレードの撓み等により、これらの接触状態が長さ方向に不均一になるおそれがあり、このため、ワイパーブレードを複数個に分割して配置したことから、各ワイパーブレードがロールの撓み等に追従して、押圧力をロールの長さ方向に亘って均一にすることが可能である。
しかしながら、現実には、分割された各ワイパーブレード個々については、取り付け時の誤差や歪み等の影響により、ロールとの接触状態が不均一になり易く、押圧力にばらつきが生じるおそれがあり、これにより、ゴミや破片等の巻き込みが発生し、圧痕や凹み傷等が生じる場合があった。このため、ワイパーブレードを頻繁に交換する必要があり、作業の効率を害するおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ワイパーブレードの取り付け誤差や歪みの影響を緩和して、押圧力をロールの長さ方向にわたって均一にし、ワイパーブレードの交換頻度を低減して作業効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の圧延装置は、ワークロールと該ワークロールの背面を押さえるバックアップロールとの両方に接触するようにワイパー機構が設けられ、該ワイパー機構は、両ロールの間にまたぐように配置される帯板状のワイパーブレードと、該ワイパーブレードの背部を支持するブラケットと、これらワイパーブレードとブラケットとの間に配置された弾性部材とを備え、前記ワイパーブレードの両側縁が両ロールにそれぞれ接触するエッジ部とされるとともに、前記弾性部材は、前記ワイパーブレードの両エッジ部の間の中間位置でワイパーブレードを表面と直交する方向に押圧付勢していることを特徴とする。
【0007】
この圧延装置においては、帯板状のワイパーブレードの両エッジ部の間の中間位置が背部から弾性部材によって押圧付勢され、その両エッジ部がロールに接触しているから、弾性部材による付勢位置と、ロールへの接触位置(ワイパーブレードの両エッジ部)とがワイパーブレードの幅方向にずれた状態となり、その間がいわゆる片持ち梁のような状態となる。したがって、弾性部材による付勢位置を固定端として、エッジ部までの間で、ワイパーブレードが表面を凸状に湾曲させる方向に撓むことが可能な状態となっている。この場合、ロールとの接触部が、弾性部材による付勢位置からワイパーブレードの両側方にそれぞれ離間しているので、その付勢位置から各接触部(エッジ部)までの間が左右独立して個々に撓むことができ、その撓みによって取り付け誤差等の影響を緩和し、先端のエッジ部をロールに追従させて、ロール表面の油やゴミを確実に除去することができる。
【0008】
本発明の圧延装置において、前記弾性部材は前記ワイパーブレードの幅方向に並んで少なくとも二箇所に設けられているとよい。
すなわち、弾性部材が幅方向に並んで配置されることにより、各弾性部材のそれぞれがワイパーブレードの各エッジまでの間の撓みの反力を負担することになるとともに、弾性部材が二つ以上並ぶことにより、一方のエッジ部による反力が反対側のエッジ部に影響することを少なくすることができ、ロールへの追従をより円滑に行わせることができる。
【0009】
本発明の圧延装置において、前記ブラケットは、その両端部が装置本体に固定されるとともに、前記弾性部材は、前記ワイパーブレードの長さ方向に間隔をおいて複数配置され、該ワイパーブレードの長さ方向の中央部の弾性部材の付勢力と両端部の弾性部材の付勢力とが異なっている構成としてもよい。
ブラケットの両端部が装置本体に固定される場合、その取り付け位置によっては、ブラケットの中央部に反りが生じる場合があるが、その分、弾性部材の付勢力をワイパーブレードの中央部と両端部とで異ならせることにより、全体として均一な押圧力として作用させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の圧延装置によれば、ワイパーブレードを背部から押圧付勢する弾性部材をワイパーブレードの両エッジ部の間に配置したから、そのワイパーブレードは、弾性部材による付勢位置から各エッジ部までの間で独立して個々に撓みながらエッジ部をロールの表面に追従させることができ、ロールに対するワイパーブレードの取り付け誤差や歪みの影響を撓むことによって緩和して、ロール表面に均一に接触し、その表面の油やゴミを確実に除去することができる。
また、従来の圧延装置においては、ワイパーブレードの押圧力が長さ方向にわたって均一でない場合があることから、ワイパーブレードの頻繁な交換が必要で、作業効率を害するおそれがあったが、本発明の圧延装置においては、ワイパーブレードの押圧力が均一になるので、ゴミや破片等の巻き込みが防止されて圧痕や凹み傷等が発生しにくい。特にゴム製のワイパーブレードではこれら不具合は非常に発生しにくい。
したがって、本発明の圧延装置によれば、材料の経年変化等による交換は避けられないものの、ワイパーブレードの交換頻度を大幅に低減させ、作業効率を飛躍的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る圧延装置の一実施形態におけるワイパー機構を示す断面図であり、図3の矢印Aで示す位置のワイパー機構を示している。
【図2】図1に示すワイパー機構のB−B線に沿う断面図である。
【図3】本発明に係る圧延装置の一実施形態の全体を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る圧延装置の一実施形態を図面を参照しながら説明する。
本実施形態の圧延装置1は、図3に全体を示したように、被圧延材2に接触する上下に一対のワークロール3と、これらワークロール3の背面にそれぞれ当接する一対の大径のバックアップロール4とが備えられ、ワークロール3とバックアップロール4との間に、複数のワイパー機構5が配設されている。また、図示は省略するが、ワークロール3を回転させる駆動モータ、バックアップロール4を圧下する圧下シリンダ、潤滑油供給機構、被圧延材2を巻き取る巻き取り機等が備えられる。
【0013】
ワイパー機構5は、ワークロール3とバックアップロール4との接触部の前後にそれぞれ設けられ、一組のワークロール3とバックアップロール4との間に二組ずつ、合計四組配設されている。各ワイパー機構5は、図1及び図2に示すように、帯板状のワイパーブレード11と、該ワイパーブレード11の背部を支持するブラケット12と、これらワイパーブレード11とブラケット12との間に配置されたコイルスプリング等の複数の弾性部材13とから構成されている。
【0014】
ワイパーブレード11は、耐熱性、耐油性を有するゴムによって構成され、その背部に形成した凹部14内に、ステンレス鋼等からなる補強板15が収納されている。ワイパーブレード11が柔軟性を有するゴムによって構成されるので、ゴミや破片等の巻き込みが防止されて圧痕や凹み傷等が特に発生しにくくなる。また、耐熱性、耐油性を有するゴムを使用すれば、材料としての経年劣化等によるワイパーブレード11の交換頻度も低減することができる。耐熱性、耐油性及び柔軟性を有するゴムとしては、例えばウレタンゴムなどが挙げられる。
また、ブラケット12は、ワイパーブレード11とほぼ同じ大きさの支持板部16の両端部に、圧延装置1の装置本体17に固定される取付板部18が一体に形成されており、支持板部16に両取付板部18が直角に形成されていることにより断面コ字状をなしている。
【0015】
そして、このブラケット12の支持板部16と平行にワイパーブレード11が取り付けられている。この場合、支持板部16には複数のねじ孔19が形成されており、このねじ孔19に、ワイパーブレード11及び補強板15を貫通するボルト21が固定され、このボルト21を囲むようにしてワイパーブレード11の補強板15と支持板部16との間に弾性部材13が設けられている。
支持板部16に形成されているねじ孔19は、支持板部16の長さ方向に相互に間隔を開けて列をなすように配置されるとともに、そのねじ孔19の列が、支持板部16の幅方向に離間して二列形成されている。同様にワイパーブレード11及びその補強板15にも、貫通孔22,23が二列形成され、これら貫通孔22,23から挿入されて支持板部16の各ねじ孔19に固定されたボルト21の回りにそれぞれ弾性部材13が配設されている。
【0016】
この場合、ワイパーブレード11及び補強板15の貫通孔22,23は、ボルト21の軸部よりも大径に形成され、ワイパーブレード11及び補強板15がボルト21の軸方向に沿って移動できるようになっている。また、ワイパーブレード11の貫通孔22には、ボルト21の頭部24が収容される座ぐり部25が形成され、弾性部材13による押圧付勢に対してボルト21の頭部24でワイパーブレード11の抜け止めがなされる構成である。
なお、ブラケット12の取付板部18は、装置本体17にねじ26によって固定されるが、そのねじ26を挿通する孔27が長孔に形成され、装置本体17に対してブラケット12を支持板部16の表面と直交する方向に移動して、ロール3,4に対する取り付け位置を調整することができるようになっている。
【0017】
このように構成した圧延装置1において、各ワイパー機構5のワイパーブレード11は、図3に示すように、ワークロール3とバックアップロール4との間にまたがるように配置され、ワイパーブレード11の両側縁が、各ロール3,4に接触してロール表面から油やゴミ等を掻き取るエッジ部28とされている。
そして、図3に示すように、各ワイパー機構5のワイパーブレード11をワークロール3とバックアップロール4との間に前後からそれぞれ接触させて運転するのであるが、各ワイパー機構5においては、その弾性部材13を若干圧縮させた状態としてワイパーブレード11のエッジ部28をロール3,4に押圧接触させる。
【0018】
この運転状態で、ワイパーブレード11は、ボルト21による支持部分で弾性部材13によって背面側から押圧付勢され、ロール3,4に接触しているエッジ部28により図1に矢印aで示すようにロール3,4の半径内方に向けて押圧力を作用させ、ロール3,4の回転に伴い、ロール3,4の表面をエッジ部28が押圧状態で相対的に摺動して、ロール表面の油やゴミを除去するのである。
このワイパーブレード11のロール3,4への接触状態において、ワイパーブレード11は、ボルト21による支持位置、つまり弾性部材13による付勢位置を固定端とし、その固定端から距離Lだけ離間したエッジ部28を自由端とし、その自由端のエッジ部28にロール3,4からの反力が集中荷重として作用した、いわゆる片持ち梁のような支持状態になる。そして、そのエッジ部28に作用する反力により、弾性部材13による付勢位置を中心として図1の矢印bで示すようにワイパーブレード11が撓ませられる。
【0019】
この場合、ワイパーブレード11には、ワイパーブレード11の長さ方向に沿ってボルト21及び弾性部材13の列が二列設けられていることにより、図1に示すように各列の弾性部材13による付勢位置が幅方向に距離Xの間隔をおいて二箇所配設され、そのそれぞれが対応するエッジ部28の撓みによる反力を受けることになる。そして、これら付勢位置が幅方向に離間していることから、一方の付勢位置に作用するエッジ部28の反力が他方の付勢位置に影響することは少なくなる。言い換えれば、各エッジ部28は、他方のエッジ部28とは独立して自由に撓むことができる。
一方、このワイパーブレード11の長さ方向においては、ワイパーブレード11がゴム製で比較的柔軟であるため、各弾性部材13による付勢位置毎にロール表面に対応して個々に撓み変形することができる。
【0020】
このように、ワイパーブレード11が幅方向及び長さ方向のそれぞれに自由に撓み変形することにより、該ワイパーブレード11の取り付け誤差や歪み等による押圧力への影響を緩和し、ワークロール3及びバックアップロール4のそれぞれにおいて、これらロール3,4の長さ方向にわたってワイパーブレード11が均一な押圧力で密着して、ロール表面の油やゴミを確実に除去することができる。
因みに特許文献1記載のように、ロールの法線方向に沿ってブレードと弾性部材とを配置する場合であると、これらの取り付け誤差等がロールへの接触状態に直接的に影響することになるが、本実施形態の場合には、取り付け誤差等の影響をワイパーブレード11が部分的に撓み変形することによって緩和して、全体としてロール3,4に均一に接触することができる。また、特許文献1記載の従来技術の場合には、ゴミや破片等の巻き込みが発生して圧痕や凹み傷等が生じる場合があり、このため、ワイパーブレードの頻繁な交換が必要であったが、本実施形態の場合には、押圧力が均一であるので、これらの不具合の発生は極めて少なくなり、交換頻度が大幅に低減される。
【0021】
このようなワイパー機構5において、各弾性部材13の付勢力は通常はすべて均一でよいが、図2に示す取り付け構造の場合、装置本体17にブラケット12の取付板部18をねじ26によって固定すると、そのねじ26の締め付け力によって両取付板部18と支持板部16との間の連結部分に、両取付板部18が広がる方向にモーメントが作用し、支持板部16のワイパーブレード11に向けた表面が中央部を凹面とするように湾曲することがある。そのような湾曲が生じると、ワイパーブレード11からロール3,4への押圧力が両端部より長さ方向の中央部で小さくなり、均一な押圧がなされなくなる。そこで、このような支持板部16の湾曲現象が生じる場合は、その湾曲の程度に応じて、ワイパーブレード11の長さ方向の中央部に配置される弾性部材の弾性力を両端部の弾性部材よりも大きく設定しておくことにより、ロール3,4への押圧力を長さ方向にわたって均一にすることができる。
また、ブラケット12の取り付け状態によっては、支持板部16が中央部を凸面とするように逆方向に湾曲する場合も生じ得るが、その場合は、長さ方向の中央部の弾性部材に比べて両端部の弾性部材の弾性力を大きく設定しておけばよい。
【0022】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、ワイパーブレードをブラケットに支持するボルトの位置を幅方向に離間する二箇所に設けているが、ワイパーブレードの幅方向中央部の一箇所のみに設ける構成を除くものではない。
また、ワイパーブレードの表面は平坦面としているが、長さ方向の中央部を若干突出させる方向にわずかな湾曲面として、ロールの長さ方向中央部の押圧力を若干大きくすることにより、ロール表面の油やゴミを中央部から両端部へ向けて流すように掻き取る構成としてもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 圧延装置
2 被圧延材
3 ワークロール
4 バックアップロール
5 ワイパー機構
11 ワイパーブレード
12 ブラケット
13 弾性部材
14 凹部
15 補強板
16 支持板部
17 装置本体
18 取付板部
19 ねじ孔
21 ボルト
22,23 貫通孔
24 頭部
25 座ぐり部
26 ねじ
27 孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークロールと該ワークロールの背面を押さえるバックアップロールとの両方に接触するようにワイパー機構が設けられ、該ワイパー機構は、両ロールの間にまたぐように配置される帯板状のワイパーブレードと、該ワイパーブレードの背部を支持するブラケットと、これらワイパーブレードとブラケットとの間に配置された弾性部材とを備え、前記ワイパーブレードの両側縁が両ロールにそれぞれ接触するエッジ部とされるとともに、前記弾性部材は、前記ワイパーブレードの両エッジ部の間の中間位置でワイパーブレードを表面と直交する方向に押圧付勢していることを特徴とする圧延装置。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記ワイパーブレードの幅方向に並んで少なくとも二箇所に設けられていることを特徴とする請求項1記載の圧延装置。
【請求項3】
前記ブラケットは、その両端部が装置本体に固定されるとともに、前記弾性部材は、前記ワイパーブレードの長さ方向に間隔をおいて複数配置され、該ワイパーブレードの長さ方向の中央部の弾性部材の付勢力と両端部の弾性部材の付勢力とが異なっていることを特徴とする請求項1又は2記載の圧延装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−188359(P2010−188359A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32922(P2009−32922)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)