説明

圧縮制限部材が組み込まれている少なくとも1つのリブを含むガスケット

【課題】 本発明は、気密特性を損なうことなく、安価な製造費で製造可能な簡易設計の新型ガスケットを提供する。
【解決手段】 本発明のガスケットは、2つのシール面(42、44)の間に組み込み可能なガスケットであって、少なくとも1つのリブ(50)を備えている少なくとも1つの鋼板(46)を含み、リブが、横断面に沿って、直接又は間接的に一方のシール面と接触可能な中央部(52)と、この中央部(52)の両側に配置され、直接又は間接的に他方のシール面と接触可能な脚部(54)とを含み、リブ(50)が圧縮制限部材(58)を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮制限部材が組み込まれている少なくとも1つのリブを含むガスケットに関し、このガスケットは、特にシリンダヘッドガスケットとして使用するように構成されている。
【0002】
エンジンブロックとシリンダヘッドとの間に配置されるシリンダヘッドガスケットは、一般に、燃焼室と共働可能な開口部と、流体の通過穴、ねじ切りロッド等の締めつけ手段とを有する1つ又は複数の金属層を含む。
【0003】
本発明は、とりわけ変形膨張現象に起因するエンジンブロックとシリンダヘッドとの間の隙間eの変化と、表面状態、並行関係、平面性その他の、エンジンブロック間又はシリンダヘッド間で変化しうる幾何学的な変動とに対応可能な、いわゆるダイナミックシリンダヘッドガスケットに特に関する。
【背景技術】
【0004】
上記のような形式のガスケットは、一般に、シール壁を形成するように開口部及び/又は穴を取り囲むリブを含む。本発明の説明全体において、リブとは、1つ又は複数の部材を介して直接又は間接的に第1シール面に接触可能な中央部と、この中央部の両側に配置されて1つ又は複数の部材を介して直接又は間接的に第2シール面に接触可能な2つの脚部とを備えた、一定の横断面を有する輪郭を意味する。一般に、リブの輪郭は略Ω字形状(オメガ形状)である。場合に応じて、中央部は、湾曲していてもよいし、又は直線部分を含んでいてもよい。同様に、リブは、シール領域に応じて、円形に沿って長手方向に延びていてもよいし、そうでなくてもよい。
【0005】
シリンダヘッドガスケットをエンジンブロックとシリンダとの間に配置する場合、リブはやや圧縮され、さまざまな部材の外形に合うように変形される。リブは、その弾性のために、エンジンブロックとシリンダヘッドとの間隔eの変化に適合するように動作時に変形可能であって、中央部が直接又は間接的にシリンダヘッドと接触し続け、脚部が直接又は間接的にエンジンブロックと接触し続け、あるいはその反対に中央部がエンジンブロックに、脚部がシリンダヘッドに直接又は間接的に接触し、中央部はエンジンブロック又はシリンダヘッドと無差別に接触可能である。
【0006】
組立又は動作時にリブの弾性を保持し続けてリブが塑性変形に至らないようにするために、一般にストッパ又は止め具と呼ばれる圧縮制限部材がリブに隣接して設けられている。このとき圧縮制限部材は、リブと、燃焼室に対応する開口部との間に配置される。
【0007】
図1、2は、従来技術のガスケット10を示す。このガスケットは、第1シール面12と、第2シール面14との間に配置され、開口部18の付近に配置されている少なくとも1つのリブ16を含む。リブの中央部を20で示し、脚部を22で示す。図1に示す第1の実施形態によれば、ガスケット10は、リブ16が設けられている単一の鋼板24からなり、リブの脚部22が第1シール面12と接触し、中央部20が第2シール面14と接触している。リブ16の圧縮を制限するために、ガスケット10は、リブに隣接してそのリブと開口部との間に配置されるストッパ26を含み、このストッパは、たとえば開口部を画定する鋼板の縁に設けられた折り目として形成されている。
【0008】
図2に示す別の実施形態によれば、ガスケット10は、中央部が互いに向き合って配向されているリブ16を各々が含む少なくとも1つの、好適には2つのいわゆる作動鋼板28を含み、一方で、また作動鋼板の間に配置されているか又は作動鋼板のリブの中央部と接触して配置されている中間鋼板30を含んでおり、中間鋼板がストッパ32を支持し、ストッパは1つ又は複数のリブに隣接するように配置され、たとえば中間鋼板と突合せられて配置されるか、又は図2に示すように開口部を画定する縁に設けられている折り目として配置されている。
【0009】
実質上均質な圧縮応力分布を得るために、ストッパ26又は32の高さhは、長手方向に変化するように構成される。
【0010】
優れた気密性又はシール性を保持しながら、製造コストを削減するため、単一の鋼板からなるガスケットにおける解決方法を優先する傾向がある。しかしながら、こうした場合でも、圧縮制限部材の製造は、一般に問題点が多く、コストが高くなることが指摘されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明は、気密特性を損なうことなく、安価な製造費で製造可能な簡易設計の新型ガスケットを提案することにより、従来技術の不都合を解消することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、2つのシール面の間に組み込み可能なガスケットであって、少なくとも1つのリブを備えている少なくとも1つの鋼板を含み、リブが、横断面に沿って、直接又は間接的に一方のシール面と接触可能な中央部と、中央部の両側に配置されて直接又は間接的に他方のシール面と接触可能な脚部とを含んでおり、リブが圧縮制限部材を含むことを特徴とするガスケットにより解決される。
【0013】
リブに圧縮制限部材を組み込むことによって、簡単な単独作業でこの2つの部材を製造することができるので、このようなガスケットの製造方法を最適化できるとともに、優れた気密性又はシール性を保持しながら製造コストを削減することができる。
【0014】
リブの中央部が、圧縮制限部材の機能を確保するような形状を有していることが好ましい。
【0015】
中央部が、少なくとも1つの波形形状、少なくとも1つの鋸歯形状、少なくとも1つの三角形形状、他の形状のうちの少なくとも1つを含むことが望ましい。
【0016】
1つ又は複数の波形形状の高さhが、約0.04〜0.15mmの範囲にあることが好適である。
【0017】
波形形状の高さ及び/又は数は、リブに沿って変化可能である。
【0018】
圧縮制限部材が分割されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、2つのシール面(42、44)の間に組み込み可能なガスケットに関し、少なくとも1つのリブ(50)を備えている少なくとも1つの鋼板(46)を含み、リブが、横断面に沿って、直接又は間接的に一方のシール面と接触可能な中央部(52)と、中央部(52)の両側に配置され、直接又は間接的に他方のシール面と接触可能な脚部(54)とを含み、リブ(50)が、圧縮制限部材(58)を含むことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
他の特徴及び長所を、添付の図面に関して例示することのみを目的として挙げる本発明の以下の説明から明らかする。
【0021】
図3は、たとえばシリンダヘッドガスケットの場合であり、シリンダヘッド42とエンジンブロック44等の第1及び第2シール面の間に配置可能な、本発明によるガスケットを参照符号40で示す。もちろん本発明は、この用途に限られるものではなく、その反対に、ほぼ偏平なガスケットを必要とするあらゆる用途に適用可能である。
【0022】
2つのシール面42、44を隔てる離隔eと呼ばれる距離は、場合に応じて、動作時に変化可能である。
【0023】
ガスケット40は、被覆された又は被覆されていない、好適には金属製の鋼板46と呼ばれる少なくとも1つの層又はプレートを含む。
【0024】
ガスケットは、各シール面にそれぞれ通じる管路を連通させるように、少なくとも1つの開口部及び/又は穴48を有する。シリンダヘッドガスケットの場合、ガスケットは、燃焼室と共働可能な少なくとも1つの開口部と、流体の通過穴、ねじきりロッド等の締めつけ手段とを含む。
【0025】
周知のように、ガスケットは、好適にはダイナミックな、動的な少なくとも1つのシール壁を、リブ50として含む。
【0026】
場合に応じて、リブ50を、連続又は不連続とし、円形又は非円形の形状で延伸するものとすることができる。例としてリブ50を、図5に示すように、燃焼室に対応して設けられている開口部48を取り囲む形状に形成することができる。この場合、リブはほぼ円形形状であり、開口部48を画定するガスケットの縁部からほぼ一定の距離をおいて配置可能である。
【0027】
リブ50を、横断面に応じて、直接又は間接的に一方のシール面と接触させることができ、この実施例では、エンジンブロック44と直接接している中央部52と、中央部52の両側に配置され、直接又は間接的に他方のシール面と接触可能であり、この場合にはシリンダヘッド42と直接接している脚部54とを含む。
【0028】
中央部52は、この中央部52と一方の脚部54を結合可能であり、多少傾斜して形成されている2つの分枝部56を含む。脚部54は、補完的に、鋼板46の他の部分に結合される直線部分と、この直線部分を中央部の一方の分枝部56に結合する曲線部分とをそれぞれ含んでいる。
【0029】
組立又は動作時にリブ50の弾性を保持し、リブの圧縮を制限するために、ガスケット40は圧縮制限部材を含む。
【0030】
本発明によれば、リブ50、好適には中央部52が圧縮制限部材を含む。本発明によれば、中央部52の横断面は、圧縮制限機能をもたらす形状を有する。このため、図3に示すように、中央部52は少なくとも1つの波形形状部58を含む。本発明は、この形状に制限されるものではなく、圧縮制限部材を、鋸歯状形状、三角形形状、又はその他の形状に形成することができる。また中央部は、これらの全ての形状の組み合わせを含むことができる。
【0031】
別の変形実施形態によれば、中央部52を、図4に示すように、複数の波形形状部58を含む形状に形成することができる。
【0032】
例として、シール部材の諸特性に応じて、波形形状部の波形の隣接する凹部と凸部とを隔てる距離を約0.4〜0.8mmの範囲で変化させ、高さhを約0.04〜0.15mmの範囲で変化させることができる。
【0033】
本発明の別の特徴によれば、圧縮制限部材の圧縮抵抗又は圧縮応力分布を、波形形状部の高さ及び/又は数を調整することによって、リブ50に沿って変化させることができる。
【0034】
また、圧縮制限部材を分割することもできる。
【0035】
変形実施形態によれば、ガスケット40を、図6A、6B、6D、6E、6F、6Gに示すように1つの鋼板46から形成することも、図6C、6H、6Lに示すように2つの鋼板46から形成することも、図6I、6J、6K、6Mに示すように2つ以上の鋼板46から形成することも可能である。
【0036】
場合に応じて、中央部を、図6A〜6Dに示すように1つの波形形状部から形成し、他の図に示すように複数の波形形状部から形成することができる。波形形状部を、中央部分に対して心合わせして形成することも、図6Dに示すように心を外して、ずらして形成することもできる。
【0037】
波形形状部を、全て同じ形状のものから形成することも、あるいは図6Fに示すように異なる形状のものから形成することもできる。
【0038】
1つ又は複数の波形形状部は、図6Aに示すように第1の方向に向かって配向されていても(図では波形の中央が上方に配向している)、あるいは図6Bに示すように第2の方向に向かって配向されていてもよい(図では波形の中央が下方に配向している)。
【0039】
場合に応じて、波形形状部の波形の曲率半径を、図6E、6Gに示すように幾分小さくすることができる。
【0040】
少なくとも2つのリブを組み込んだ変形実施形態では、リブを、図6C、6H、6I、6J、6K、6L、6Mに示すように互いに対向するように配置することも、あるいはそうでなく、反対向きに配置することもできる。
【0041】
リブを付けられている鋼板は、図6C、6H、6I、6J、6Mに示すように、各リブが波形形状部を含んでいても、又は図6K、6Lに示すしたように、1つのリブのみが波形形状部を含んでいてもよい。
【0042】
さらに、図6J、6Kに示すように、リブを付けられている鋼板の間に偏平鋼板を設けることもでき、あるいは図6Iに示すように、リブを付けられている鋼板の一方の側に偏平鋼板を当接させることもできる。
【0043】
もちろん、本明細書において、全ての構成を図示したわけではなく、これらの構成は無限に変化させることが可能である。
【0044】
好適な実施形態によれば、圧縮制限部材を組み込まれているリブの輪郭を、たとえば1回の型打ち作業により、1回の作業工程により形成することが可能である。
【0045】
図7では、本発明による圧縮制限部材を組み込まれているリブを含む鋼板の圧縮試験の結果を例として示す。この試験は、厚み約0.25mmの鋼板で、高さ約0.05mmの圧縮制限部材を使用して行った。
【0046】
上記圧縮試験は、荷重200 kN、すなわちエンジンブロックにおけるシリンダヘッドの通常の締めつけにより発生しうる値より大きな値(曲線66)を負荷して実施した。
【0047】
図では、荷重軽減に対応する曲線68が、参照符号70で示す鋼板の厚みの値を上回るところにあって、そのために係止機能が本発明により適切に確保されていることが理解される。グラフでは、この係止値を参照符号72で示す。
【0048】
もちろん、本発明は、図示及び記載した上記の実施形態に制限されるものではなく、その反対に、特に各部材の寸法及び形状に関してあらゆる変形実施形態にわたる。
【0049】
さらに、本発明によるガスケットは、シリンダヘッドガスケットの分野に制限されるものではなく、他の用途でも使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】従来技術によるガスケットの第1の実施形態を示す横断面図である。
【図2】従来技術によるガスケットの第2の実施形態を示す横断面図である。
【図3】2つのシール面の間に配置されている本発明によるガスケットを示す横断面図である。
【図4】本発明によるガスケットのリブの断面を詳細に示す横断面図である。
【図5】本発明によるガスケットの一部を示す上面図である。
【図6】図6A〜6Mは、本発明によるガスケットの様々な変形実施形態を示す図である。
【図7】本発明によるリブの変形曲線を示すグラフである。
【符号の説明】
【0051】
10 ガスケット
12 第1シール面
14 第2シール面
16 リブ
18 開口部
20 中央部
22 脚部
24 鋼板
26 ストッパ
28 作動鋼板
30 中央鋼板
32 ストッパ
40 ガスケット
42 シリンダヘッド
44 エンジンブロック
46 鋼板
48 開口部
50 リブ
52 中央部
54 脚部
56 分枝部
58 波形形状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのシール面(42、44)の間に組み込み可能なガスケットであって、
少なくとも1つのリブ(50)を備えている少なくとも1つの鋼板(46)を含み、
前記リブが、横断面に沿って、直接又は間接的に一方のシール面と接触可能な中央部(52)と、この中央部(52)の両側に配置され、直接又は間接的に他方のシール面と接触可能な脚部(54)とを含み、
前記リブ(50)が圧縮制限部材(58)を含むことを特徴とするガスケット。
【請求項2】
前記リブ(50)の前記中央部(52)が、前記圧縮制限部材(58)の機能を確保するような形状を有することを特徴とする請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
前記中央部(52)が、少なくとも1つの波形形状(58)、少なくとも1つの鋸歯形状、少なくとも1つの三角形形状、他の形状のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項2に記載のガスケット。
【請求項4】
1つ又は複数の前記波形形状の高さhが、約0.04〜0.15mmの範囲にあることを特徴とする請求項3に記載のガスケット。
【請求項5】
前記波形形状の高さ及び/又は数が、リブに沿って変化可能であることを特徴とする請求項3又は4に記載のガスケット。
【請求項6】
前記圧縮制限部材が分割されていることを特徴とする請求項1に記載のガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−90549(P2006−90549A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−274793(P2005−274793)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(501479868)カール・フロイデンベルク・カーゲー (73)
【Fターム(参考)】