説明

圧縮機の取付脚、圧縮機及び圧縮機の製造方法

【課題】圧縮機のケーシングと取付脚との境界付近に塗布される塗料によって圧縮機に外観不良が発生するのを防止する。
【解決手段】取付脚30は、圧縮機ケーシング20のボトム部24に接合される。取付脚30は、基部31と支持部32と塗料排出部としての溝37とを備えている。ボトム部24は、中央にある円孔32が形成されている支持部33によって支持される。この支持部33は、基部31から円孔32に向かって落ち込むように傾斜した支持面32aを持っている。圧縮機ケーシング20の塗装時には、支持部33に形成されている溝37が、支持面32aのボトム部24との接触部分より上側から支持部33の下側へと塗料を導く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機の取付脚、圧縮機及び圧縮機の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒を圧縮するための圧縮機には、特許文献1(実用新案登録第2508727号公報)に示されているように、圧縮機密閉容器(圧縮機のケーシング)を空気調和装置などの据付面に取り付けて支持するための支持脚(取付脚)が設けられる場合がある。
【0003】
従来から、このような取付脚は、ケーシングとは別に作られて接合されることが多い。特に、板材の中央に円孔を打ち抜いて、その円孔にケーシングを嵌め込んで接合する場合には、ケーシングに取付脚が溶接などで取り付けられた後に、取付脚と一緒にケーシングが塗装されるのが一般的である。この塗装の際に、ケーシングと取付脚との境界に溜まった塗料によって不良品が発生することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に、多種類のボトム部の形状に共通に用いることのできる取付脚は、ボトム部の種類が変わってボトム部の形状が変わると、取付脚とボトム部との隙間の形状が変化する。そのため、1種類の取付脚を形状の異なる多種類のボトム部に用いると、塗料の溜まり方がボトム部の種類毎に異なって、隙間の大きくなるような組合せの場合には、塗料が乾き難くなったり、乾いた塗料の表面に皺ができたりする外観不良の問題が発生し易くなる。
【0005】
本発明の課題は、圧縮機のケーシングと取付脚との境界付近に塗布される塗料によって圧縮機に外観不良が発生するのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る圧縮機の取付脚は、圧縮機ケーシングのボトム部に接合される圧縮機の取付脚であって、基部と、ボトム部を載置するため中央に円孔が形成され、基部から円孔に向かって落ち込むように傾斜した支持面を持つ支持部と、支持部に形成され、支持面のボトム部との接触部分より上側から支持部の下側へと塗料を導く塗料排出部と、を備える。
【0007】
第1観点の圧縮機の取付脚によれば、支持面とボトム部との隙間に溜まる余分な塗料を塗料排出部から排出できるので、圧縮機ケーシングのボトム部と取付脚との境界付近に塗料が溜まるのを防止することができる。
【0008】
本発明の第2観点に係る圧縮機の取付脚は、第1観点に係る圧縮機において、支持部は、複数種類の椀状のボトム部に対応可能とするため、支持面の水平断面の形状を円孔と同心円になるように形成されている。
【0009】
第2観点の圧縮機の取付脚によれば、取付脚を複数種類の圧縮機ケーシングに使用可能であるため圧縮機ケーシングの種類に合わせた取付脚の変更の手間や取付脚の在庫を減らせるなど管理の手間や製造の手間や設備を省くことができる。
【0010】
本発明の第3観点に係る圧縮機の取付脚は、第1観点又は第2観点の圧縮機において、塗料排出部は、円孔の周囲に配置されている複数の溝、切り欠き又は開口を含む。
【0011】
第3観点の圧縮機の取付脚によれば、塗料排出部の構成が複数の溝、切り欠き又は開口で簡単なものであるため、塗料排出部を設けることによる取付脚のコストの上昇を防ぐことができる。
【0012】
本発明の第4観点に係る圧縮機は、椀状のボトム部を有する圧縮機ケーシングと、平板状の基部と、ボトム部を載置するため中央に円孔が形成され基部から円孔に向かって落ち込むように傾斜した支持面を持つ支持部と、支持部に形成され支持面のボトム部との接触部分より上側から基部の下側へと塗料を導く塗料排出部とを有する取付脚と、圧縮機ケーシング及び取付脚の表面に一体的に形成されている塗膜と、を備える。
【0013】
第4観点の圧縮機によれば、支持面とボトム部との隙間に溜まる余分な塗料を塗料排出部から排出できるので、圧縮機ケーシングと取付脚の表面に一体的に塗膜を形成するための塗料が圧縮機ケーシングのボトム部と取付脚との境界付近に溜まるのを防止することができる。
【0014】
本発明の第5観点に係る圧縮機の製造方法は、椀状のボトム部を有する圧縮機ケーシングを準備する工程と、平板状の基部と、ボトム部を載置するため中央に円孔が形成され基部から円孔に向かって落ち込むように傾斜した支持面を持つ支持部と、支持部に形成され支持面のボトム部との接触部分より上側から基部の下側へと塗料を導く塗料排出部とを有する取付脚と、圧縮機ケーシング及び取付脚の表面に一体的に塗膜を形成する工程と、を備える。
【0015】
第5観点の圧縮機の製造方法によれば、塗膜を形成する工程において、支持面とボトム部との隙間に溜まる余分な塗料を塗料排出部から排出できるので、圧縮機ケーシングのボトム部と取付脚との境界付近に塗料が溜まるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1観点に係る圧縮機の取付脚では、圧縮機ケーシングと取付脚との境界付近に塗布される塗料によって圧縮機に外観不良が発生するのを防止することができる。
【0017】
本発明の第2観点に係る圧縮機の取付脚では、取付脚を複数種類の圧縮機に使用可能であるため管理の手間や製造の手間や設備を省くことができ、圧縮機を安価に提供することができる。
【0018】
本発明の第3観点に係る圧縮機の取付脚では、塗料排出部を設けることによるコストの上昇を抑えることができる。
【0019】
本発明の第4観点に係る圧縮機では、圧縮機ケーシングと取付脚の表面に一体的に形成される塗料によって圧縮機に外観不良が発生するのを防止することができる。
【0020】
本発明の第5観点に係る圧縮機の製造方法では、圧縮機ケーシングと取付脚の表面に一体的に塗膜を形成するための塗料によって圧縮機に外観不良が発生するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】圧縮機の外観を説明するための側面図。
【図2】(a)取付脚と底壁部材との組合せを説明するための平面図。(b)図2(a)におけるII−II線断面図。
【図3】(a)取付脚と他の底壁部材との組合せを説明するための平面図。(b)図3(a)におけるIII−III線断面図。
【図4】(a)取付脚と他の底壁部材との組合せを説明するための平面図。(b)図4(a)におけるIV−IV線断面を示す断面図。
【図5】第1実施形態に係る取付脚の構成を示す平面図。
【図6】図5におけるI−I線断面図。
【図7】(a)図5におけるV−V線断面図。(b)図7(a)におけるVI−VI線断面図。
【図8】(a)第2実施形態に係る取付脚の構成を示す平面図。(b)図8(a)におけるVII−VII線断面図。
【図9】(a)第3実施形態に係る取付脚の構成を示す平面図。(b)図9(a)におけるVIII−VIII線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明に係る圧縮機の実施形態は、以下に説明する実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0023】
<第1実施形態>
(1)圧縮機の概要
図1は、第1実施形態に係る圧縮機の外観を示す側面図である。この圧縮機10は、冷媒ガスを圧縮する流体機械であり、圧縮機ケーシング20内に電動機(図示省略)が収容された全密閉型である。圧縮機10は、例えば、屋外の冷凍装置、特に海上輸送用冷凍コンテナに使用される冷凍用圧縮機に用いられる。冷凍装置の能力に応じて、冷凍回路における冷媒の循環量が異なるため、圧縮機10は、設置される冷凍装置の能力に対応して圧縮する冷媒の量が異なる。圧縮する冷媒の量などが大きく異なると圧縮機ケーシング20の容量も変える必要が生じるため、圧縮機10には能力の異なる複数の型式が用意されており、圧縮機10は、型式が異なると外観を異にする場合がある。
【0024】
屋外の冷凍装置に用いられる圧縮機10は、風雨に曝され、特に海上輸送用冷凍コンテナに用いられる場合には、塩分を含む潮風に曝される。圧縮機10の商品価値を高める上で、このような環境にあっても圧縮機10に錆を発生させないことが一つの重要な要素である。錆を発生させないようにするために、どのような型式の圧縮機10においても塗装がされるが、圧縮機10の形状が異なっても塗装によって外観をきれいに仕上げられなければならない。
【0025】
圧縮機10が備える圧縮機ケーシング20は、縦長で円筒状の胴体部材21と、ドーム形状の上部蓋である上壁部材22と、下に凸の曲面を有する椀状の下部蓋である底壁部材23とが気密に接合されて構成されている。底壁部材23のボトム部(圧縮機ケーシング20)を下側から支えるため、底壁部材23の表面23sには、取付脚30が溶接によって接合されている。
【0026】
例えば、圧縮機10がスクロール圧縮機の場合には、圧縮機10の圧縮機ケーシング20の内部には、上述の電動機の他に、この電動機によって駆動される圧縮機構が設けられている。圧縮機構は、圧縮機ケーシング20内に固定された固定スクロール及び、この固定スクロールに組み合わされる可動スクロールを有している。固定スクロール及び可動スクロールの外観は胴体部材21の内壁に沿うように円筒形に形成されている。そして、可動スクロールが電動機に接続されている。
【0027】
圧縮機ケーシング20の上壁部材22には吸入管26が接合され、胴体部材21には吐出管25が接合される。圧縮機構で圧縮される冷媒は、吐出管25から冷凍回路に供給され、冷媒回路を巡回して戻ってきた冷媒は、吸入管26を通して圧縮機構へ吸入される。
【0028】
固定スクロール及び可動スクロールを含む圧縮機構、電動機並びに高圧の冷媒を封じ込めるための圧縮機ケーシング20を備える圧縮機10は当然重くなる。さらに、電動機や圧縮機構が圧縮機10の中で動作するので、圧縮機10自身が振動する。取付脚30は、この重くかつ振動する圧縮機10を支える。そして、支えられる側の底壁部材23にも、このような荷重や振動が加わる。
【0029】
このような荷重や振動に耐えるため、底壁部材23は厚い鉄製の壁を持っている。底壁部材23に溶接される取付脚30も、例えば鋼板で形成される。そして、圧縮機ケーシング20及び取付脚30は耐候性のある塗料に浸漬して塗装される。
【0030】
(2)底壁部材と取付脚
(2−1)複数の底壁部材と取付脚の組合せ
底壁部材23は、胴体部材21から分離された状態で取付脚30に溶接される。図2乃至図4には、互いに型式の異なる3種類の圧縮機用の底壁部材23,23A,23Bが示されている。
【0031】
図2(a)は、図1に示されている底壁部材23とそれに溶接されている取付脚30の構成を示す平面図である。図2(b)は、図2(a)におけるII−II線断面図である。図3(a)は、図2に示されている底壁部材23よりも小型の圧縮機用の底壁部材23Aとそれに溶接されている図2と同じ取付脚30の構成を示す平面図である。図3(b)は、図3(a)におけるIII−III線断面図である。図4(a)は、図2に示されている底壁部材23よりも背の高い底壁部材23Bとそれに溶接されている図2と同じ取付脚30の構成を示す平面図である。図4(b)は、図4(a)のIV−IV線断面図である。図2、図3及び図4に示されている取付脚30は、基部31と円孔32と支持部33とリブ34とボルト孔35とを有しているが、これら取付脚30の構造については後ほど詳しく説明する。
【0032】
図2(a)と図3(a)と図4(a)を比較すると、図2(a)の底壁部材23の外円
の半径が最も大きいことが分かる。また、図2(b)と図3(b)と図4(b)を比較すると、中心軸を通る平面で切断した断面において、図3(b)のボトム部24Aと図4(b)のボトム部24Bの方が図2(b)のボトム部24よりも曲率半径が大きいことが分かる。
【0033】
以上のような形状の相違が3つの底壁部材23,23A,23Bの間にあるため、点線で囲んだ領域40,40A,40Bにできる隙間の大きさが、底壁部材23と取付脚30の組合せ、底壁部材23Aと取付脚30の組合せ、及び底壁部材23Bと取付脚30との組合せで異なっている。そのため、後述する塗料排出部を設けない場合には、それぞれの組合せで、底壁部材23,23A,23Bと取付脚30との間に残る塗料の量が異なるため、塗料の乾き方に大きな差が生じてしまう。このような不具合を解消するために溝37が形成されているが、溝37については後ほど詳細に説明する。
【0034】
(2−2)取付脚の構成
図5には、取付脚30の平面形状が示されており、図6には、図5におけるI−I線断面が示されている。上述した鋼板から、プレス成形によって開口部を打ち抜かれるとともに折り曲げられて、取付脚30は形成される。基部31は、元々の鋼板の形状を残す平坦な部分である。取付脚30は、重い圧縮機ケーシング20を支えるために、基部31の外周が折り曲げられて形成されている補強用のリブ34を有する。基部31は、略正三角形状に形成され、正三角形の各辺よりも外にはみ出る円弧状の部分をその一部に持っている。そして、冷凍装置などにボルトなどで据え付けるための3つのボルト孔35が基部31の正三角形の頂点近傍に配置されている。
【0035】
取付脚30の略中央に円孔32を打ち抜かれている。基部31から円孔32に向けて基部31よりも落ち込むように支持部33が形成されている。取付脚30が一枚の鋼板をプレス成形したものであるから、支持面33aも支持部33と同じように円孔32に向かって落ち込むように傾斜している。支持部33は、複数種類の椀状のボトム部24,24A,24Bに対応可能とするため、支持面33aの水平断面の形状を円孔32と同心円になるように形成されている。つまり、支持面33aを水平に切断してできる円の中心が円孔32の中心に一致する。この支持面33aの断面形状は、適用可能な底壁部材23,23A,23Bの形状から想定される中間的なボトム形状に合う曲率半径を有している。このような曲率半径を支持面33aが持っているため、支持面33aとボトム部24との接触部分は、支持面33aに一点鎖線で示されている箇所の近傍に位置する。
【0036】
この支持面33aの接触部分に沿って、一点鎖線で示されている円周を等分するように、6つの溶接用開口36が等間隔に配置されている。この溶接用開口36の円周部は、取付脚30の裏面33bの側からボトム部24,24A,24Bに溶接される。溶接用開口36と溶接用開口36との中間に溝37が設けられている。図5に一点鎖線で示されている円周を等分するように、3つの溝37が等間隔に配置されている。
【0037】
図7(a)には、図5におけるV−V線断面図が示されており、図7(b)には、図7(a)におけるVI−VI線断面図が示されている。また、溝37は、開口36と開口36との中間に位置するように配置されている。この溝37は、ボトム部24が支持面33aに配置された状態で塞がってしまわない程度の深さを持っている。そして、これらの溝37は、平面視において、取付脚30の外周から円孔32にまで真直ぐ続いている。このような溝37は、プレス成形により、取付脚30の成形と同時に成形することができる。この溝37は、一点鎖線近傍の接触部分の上側の支持面33aから支持部33の下側、つまり支持面33aに対向する裏面33bの側へ塗料を排出する役割を果たす。
【0038】
(2−3)圧縮機ケーシングの塗装
通常、圧縮機10の塗装は、底壁部材23に取付脚30が溶接され、胴体部材21に上壁部材22と底壁部材23とを接合して圧縮機ケーシング20が組み立てられた状態で、圧縮機ケーシング20が塗料に浸漬されて塗装が行なわれる。圧縮機ケーシング20を塗料の中から引き上げるときには、上壁部材22が上に向いて底壁部材23が下を向いた状態で引き上げられる。この状態で、図2(b)の領域40、図3(b)の領域40A及び図4(b)の領域40Bの近傍に一旦集まった塗料は、溝37を通過して支持部33の裏面33bに流れる。また、このような溝37によれば、塗装時に、平坦な基部31の上に集まった塗料も、一点鎖線近傍の接触部分の上側の支持面33aから裏面33bの側へ塗料を排出することができる。そのため、図2(b)の領域40、図3(b)の領域40A及び図4(b)の領域40Bの近傍に一旦集まった塗料が十分に排出される時間を実験的に予め求めておけば、その時間以上の塗料排出時間を設定することで、これら領域40,40A,40Bに必要以上に塗料が溜まることがなくなる。
【0039】
上述の塗料排出時間は、塗料の粘度などの性質、一つの取付脚30当たりの溝37の個数、溝37の大きさや形状や配置位置、及び取付脚30に溶接される底壁部材23,23A,23Bの形状などによって異なる。しかし、塗料排出時間を適切に設定することによって、取付脚30に組み合わせる底壁部材23,23A,23Bが変わっても、取付脚30とボトム部24,24A,24Bとの近傍に必要以上に塗料が溜まるのを適切に防止することができる。
【0040】
<第2実施形態>
第1実施形態では、塗料排出部として溝37を支持部33に設ける態様について説明したが、図8に示されているように、溝37に代えて切り欠き38を設けることもできる。図8(a)には、第2実施形態に係る取付脚の平面形状が示されている。図8(b)には、図8(a)におけるVII−VII線断面図が示されている。
【0041】
図8(a)に示されているように、一点鎖線で示されている円周を等分するように、3つの切り欠き38が等間隔に配置されている。また、切り欠き38は、溶接用開口36と溶接用開口36との中間に位置するように配置されている。切り欠き38は、溝37と同じ程度の幅で、基部31の外周と一点鎖線近傍の接触部分と間の位置から始まって円孔32に達するように延びている。
【0042】
このような切り欠き38によれば、切り欠き38とボトム部24,24A,24Bとで囲まれた空間が溝37よりも大きくなるので、溝37よりも大量に塗料を排出することができる。第2実施形態のように溝37に代えて切り欠き38を設けることにより、溝37を設けた第1実施形態の取付脚30と同様に第2実施形態の取付脚30Aは塗料を十分に排出することができる。
【0043】
<第3実施形態>
第1実施形態では、塗料排出部として溝37を支持部33に設ける態様について説明したが、図9に示されているように、溝37に代えて略長方形状の塗料排出用開口39を設けることもできる。図9(a)には、第3実施形態に係る取付脚の平面形状が示されている。図9(b)には、図9(a)におけるVIII−VIII線断面図が示されている。
【0044】
図9(a)に示されているように、一点鎖線で示されている円周を等分するように、3つの略長方形状の塗料排出用開口39が等間隔に配置されている。また、略長方形状の塗料排出用開口39は、2つの溶接用開口36の中間に位置するように配置されている。略長方形状の塗料排出用開口39は、基部31の外周と一点鎖線近傍の接触部分と間の位置から接触部分よりも下側に達する短辺の長さを持っている。一方塗料排出用開口39の長辺は、溝37の幅よりも大きく、接触部分に沿って円周方向に延びている。
【0045】
このような略長方形状の塗料排出用開口39によれば、溝37と同様に大量に塗料を排出することができる。第3実施形態のように溝37に代えて塗料排出用開口39を設けることにより、溝37を設けた第1実施形態の取付脚30と同様に第3実施形態の取付脚30Bは塗料を十分に排出することができる。
【0046】
(3)特徴
(3−1)
以上説明したように、取付脚30,30A,30Bには、溝37や切り欠き38や塗料排出用開口39(塗料排出部)が、支持面33aのボトム部24,24A,24Bとの接触部分より上側に設けられている。そして、これら溝37や切り欠き38や塗料排出用開口39を通って、支持部33の裏面33bの側、つまり支持部33の下側へと塗料を導くことができる。塗料排出用開口39及び切り欠き38の場合には、塗料排出用開口39及び切り欠き38を通り抜けたところが支持部33の裏面33bの側であり、溝37の場合には、円孔32に達することで支持部33の裏面33bの側、つまり支持部33の下側へと塗料が導かれる。
【0047】
このような溝37や切り欠き38や塗料排出用開口39(塗料排出部)の働きにより、支持面33aとボトム部24,24A,24Bとの隙間に溜まる余分な塗料を排出できるので、圧縮機ケーシング20のボトム部24,24A,24Bと取付脚30との境界付近に塗料が溜まるのを防止することができる。圧縮機ケーシング20と取付脚30との境界付近に塗布される塗料によって圧縮機10に均一な塗膜を形成し易くなり、外観不良が発生するのを防止することができる。
【0048】
これら、溝37や切り欠き38や塗料排出用開口39は、複数形成されているが、一度のプレス加工によって簡単に成形できる。そのため、溝37や切り欠き38や塗料排出用開口39(塗料排出部)を設けることによる取付脚30の製造コストの上昇を防ぐことができる。また、溝37や切り欠き38や塗料排出用開口39は、接触部分の周上に等間隔に配置されている。そのため、塗料の排出に偏りがなく、塗料を均一に保ち易いので、外観をきれいに仕上げ易くなる。
【0049】
(3−2)
取付脚30,30A,30Bの支持部33は、複数種類の椀状のボトム部24,24A,24Bに対応可能とするため、支持面33aの水平断面の形状を円孔32と同心円になるように形成されている。このように1種類の取付脚30を複数種類の圧縮機ケーシング20に使用可能であるため圧縮機ケーシング20の種類に合わせた取付脚の変更の手間や取付脚の在庫を減らせるなど管理の手間や製造の手間や設備を省くことができ、圧縮機を安価に提供することができる。
【0050】
(4)変形例
(4−1)
上記各実施形態では、3つの溝37や切り欠き38や塗料排出用開口39を形成しているが、塗料や圧縮機ケーシング20に合わせて、溝37や切り欠き38や塗料排出用開口39の形状や個数は適宜変更してもよい。例えば、3本よりも多くの溝37、3個よりも多くの切り欠き38や塗料排出用開口39を設けてもよい。塗料排出部として開口を形成する場合、開口は取付脚と圧縮機ケーシングとの接触部分の下側にまで達するように設けられるが、必ずしも接触部分の下側にまで延びていなければならないものではない。しかし、複数種類の圧縮機ケーシングの対応するためには、全ての種類について圧縮機ケーシングと組み合わされた取付脚の接触部分に開口が存在するように開口が設けられることが好ましい。
【0051】
(4−2)
溝と切り欠きと塗料排出用開口とを適宜組み合わせるなど、異なる形態の塗料排出部を組み合わせて構成してもよい。
【0052】
(4−3)
上記第1実施形態では、溝37を外周から円孔32まで延ばして構成しているが、基部31の外周と一点鎖線近傍の接触部分と間の位置から円孔32に達するように延ばしてもよい。
【0053】
(4−4)
上記各実施形態では、溝37や切り欠き38や塗料排出用開口39を溶接用開口36の間に一つだけ設ける例が示されているが、溶接用開口36の間に設けられる溝37や切り欠き38や塗料排出用開口39は2つ以上であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 圧縮機
20 圧縮機ケーシング
30 取付脚
32 円孔
33 支持部
33a 支持面
36 溶接用開口
37 溝
38 切り欠き
39 塗料排出用開口
【先行技術文献】
【特許文献】
【0055】
【特許文献1】実用新案登録第2508727号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機ケーシング(20)のボトム部(24,24A,24B)に接合される圧縮機(10)の取付脚(30,30A,30B)であって、
基部(31)と、
前記ボトム部を載置するため中央に円孔(32)が形成され、前記基部から前記円孔に向かって落ち込むように傾斜した支持面(33a)を持つ支持部(33)と、
前記支持部に形成され、前記支持面の前記ボトム部との接触部分より上側から前記支持部の下側へと塗料を導く塗料排出部(37,38,39)と、
を備える、圧縮機の取付脚。
【請求項2】
前記支持部は、複数種類の椀状のボトム部に対応可能とするため、前記支持面の水平断面の形状を前記円孔と同心円になるように形成されている、
請求項1に記載の圧縮機の取付脚。
【請求項3】
前記塗料排出部は、前記円孔の周囲に配置されている複数の溝(37)、切り欠き(38)又は開口(39)を含む、
請求項1又は請求項2に記載の圧縮機の取付脚。
【請求項4】
椀状のボトム部(24,24A,24B)を有する圧縮機ケーシング(20)と、
平板状の基部(31)と、前記ボトム部を載置するため中央に円孔(32)が形成され前記基部から前記円孔に向かって落ち込むように傾斜した支持面(33a)を持つ支持部(33)と、前記支持部に形成され前記支持面の前記ボトム部との接触部分より上側から前記基部の下側へと塗料を導く塗料排出部(37,38,39)とを有する取付脚(30,30A,30B)と、
前記圧縮機ケーシング及び前記取付脚の表面に一体的に形成されている塗膜と、
を備える、圧縮機。
【請求項5】
椀状のボトム部(24,24A,24B)を有する圧縮機ケーシング(20)を準備する工程と、
平板状の基部(31)と、前記ボトム部を載置するため中央に円孔が形成され前記基部から前記円孔に向かって落ち込むように傾斜した支持面(33a)を持つ支持部(33)と、前記支持部に形成され前記支持面の前記ボトム部との接触部分より上側から前記基部の下側へと塗料を導く塗料排出部(37,38,39)とを有する取付脚(30,30A,30B)と、
前記圧縮機ケーシング及び前記取付脚の表面に一体的に塗膜を形成する工程と、
を備える、圧縮機の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate