説明

圧縮機及びこれを含む空調装置

【課題】圧縮機の効率を極大化することができる最適の大きさを持ちながら作動流体の圧力に耐えられる流入配管及び吐出配管を具備する圧縮機及びこれを含む空調装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る圧縮機30は、作動流体が圧縮機30に流入する流入配管32及び圧縮機30で圧縮された作動流体が流出する吐出配管34が設置され、流入配管32の直径をDとし、吐出配管35の直径をDとしたとき、直径比D/Dが0.5ないし1.0であり、流入配管32が次式を満足する。
(2ση)/(D−0.8t)>Pse
ここで、前記式中、σは流入配管32の許容引張応力[N/mm]、ηは流入配管32の溶接効率、tは流入配管32の厚さ[mm]、Pseは作動流体の蒸発温度による飽和蒸気圧をそれぞれ意味する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機を具備する空調装置に関し、より詳しくは、圧縮機の入口及び出口に連結される作動流体の流入配管及び吐出配管に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、圧縮機は、電気モータのような動力発生装置から動力が伝達されて空気または冷媒のような作動流体に圧縮仕事を加えることで作動流体を圧縮させることにより圧力を高める機械的な装置であって、産業全般にわたって広く使用されている。
【0003】
特に、圧縮機は、室内の温度を外気の温度に関わらず好適な温度に保つ役割をするエアコン・システムや暖房システムのような空調装置において必須として使用される核心的な装置である。
【0004】
近年、冷房サイクル及び熱ポンプサイクルを単一装置で実現し、選択的に室内の冷房及び暖房を遂行することができる冷暖房空調装置(いわゆる、熱ポンプ)の普及が増加しつつある。通常、熱ポンプは、熱交換器を含む室内機、圧縮機、熱交換器を含む室外機、及び膨張機を含む。
【0005】
冷房モードにて使用される際は、室内の熱交換器が蒸発機として作用し、通過する低温及び低圧の液体状の冷媒を蒸発させて室内の熱を吸収することで室内を冷房する。蒸発機を通過した中温及び低圧の冷媒ガスが再び圧縮機を通過することで高温及び高圧の冷媒ガスとなる。これに対し、暖房モードでは、室内の熱交換器が凝縮機として作用して、高温及び高圧のガス状の冷媒が前記凝縮機を通過しながら、室内に熱を放出することで室内を暖房する。すなわち、室外機は、夏期には凝縮機として使用され、冬期には蒸発機として使用される。
【0006】
上記のような空調装置の圧縮機は、冷媒が流入する入口に設置される流入配管及び冷媒が流出する出口に設置される吐出配管を具備する。従来においては、流入配管及び吐出配管の大きさ(直径)が圧縮機の効率に影響を及ぼすか否かについての認識はなかった。すなわち、流入配管及び吐出配管の大きさを決めるに当たって、圧縮機の効率は考慮されていなかった。これにより、従来の圧縮機では効率が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国登録特許公報第10−0639488号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、圧縮機の効率を極大化することができる最適の大きさを持ちながら作動流体の圧力に耐えられる流入配管及び吐出配管を具備する圧縮機及びこれを含む空調装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような目的を達成するために、本発明に係る圧縮機には、作動流体が前記圧縮機に流入する流入配管及び前記圧縮機で圧縮された作動流体が流出する吐出配管が設置される。ここで、前記流入配管の直径をDとし、前記吐出配管の直径をDとしたとき、直径比D/Dが0.5ないし1.0である。そして、本発明に係る圧縮機の一態様において、前記流入配管は次式を満足すればよい。
【0010】
(2ση)/(D−0.8t)>Pse
ここで、前記式中、σは前記流入配管の許容引張応力[N/mm]、ηは前記流入配管の溶接効率、tは前記流入配管の厚さ[mm]、Pseは前記作動流体の蒸発温度による飽和蒸気圧をそれぞれ意味する。
【0011】
また、本発明に係る圧縮機の他の態様において、前記吐出配管は次式を満足すればよい。
【0012】
(2ση)/(D−0.8t)>Psc
ここで、前記式中、σは前記吐出配管の許容引張応力[N/mm]、ηは前記吐出配管の溶接効率、tは前記吐出配管の厚さ[mm]、Pscは前記作動流体の凝縮温度による飽和蒸気圧をそれぞれ意味する。
【0013】
また、前記流入配管及び吐出配管の熱変形率は0.5%以下が好ましい。
【0014】
また、本発明は、上記のような圧縮機を含む空調装置を提供し得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る圧縮機及び空調装置によれば、流入配管及び吐出配管の大きさを最適に設計することで効率を高めることができ、圧縮機の効率増大により空調装置全体としての効率をも高めることができる。圧縮機及び空調装置の効率向上によって、システム全体の運転コストも節減することができる。
【0016】
また、本発明に係る圧縮機及び空調装置では、流入配管及び吐出配管の破損を防止することでシステム全体の安全性及び信頼性を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る空調装置の室外機を概略的に示した図である。
【図2】空調装置の圧力−エンタルピー線図である。
【図3】本発明の一実施形態における流入配管及び吐出配管が設置された圧縮機を概略的に示した図である。
【図4】本発明の実施形態における流入配管と流出配管が設置された圧縮機の等エントロピー効率を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る圧縮機を含む空調装置の室外機について図面を参照して詳しく説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る空調装置の室外機を概略的に示した図であり、図2は、図1に示す空調装置の圧力−エンタルピー線図であり、図3は、本発明の一実施形態における流入配管及び吐出配管が設置された圧縮機を概略的に示した図である。
【0020】
図1を参照すれば、本発明の一実施形態に係る空調装置(熱ポンプ)の室外機100は、熱交換器10、冷媒と外気との間での熱交換を促進する熱交換ファン20、冷媒を圧縮する圧縮機30、及び膨張機40を含む。熱交換器10、圧縮機30及び膨張機40は、冷媒が流れる導管50で連結される。図1における矢印は冷媒の流れる方向を示しており、本実施形態では、暖房の場合において冷媒の流れる方向について示している。
【0021】
圧縮機30の前端部には気液分離器60が設置され、圧縮機30の後端部にはオイル分離器70が設置される。気液分離器60は、圧縮機30への液体冷媒の浸透を防止し、オイル分離器70は、圧縮機30から吐出される冷媒からオイルを分離する。オイル分離器70にはオイル回収管52が設置され、圧縮機30に流入され得るオイルを圧縮機30の前端に送る。
【0022】
方向切換バルブ80は、空調装置の冷房モードまたは暖房モードへの切り替えの際に冷媒の流れる方向を切り換える。膨張機40の後端部には収液器90が設置され、液体冷媒を一時的に貯留する。また、遮断バルブ54は、空調装置のメンテナンスなどのため一時的に冷媒の流れを遮断する際に使用される。
【0023】
上記のような空調装置の室外機100における圧縮機30は低温及び低圧の冷媒蒸気を高温及び高圧の冷媒蒸気にする核心的な装置であって、圧縮機30の効率は、空調装置システム全体の効率に決定的な影響を及ぼす。
【0024】
圧縮機30の性能は等エントロピー効率にて示され、等エントロピー効率は圧縮が可逆的に行なわれる場合の等エントロピー圧縮仕事と実質的に圧縮に要される実際の圧縮仕事の割合にて示される。より具体的には、図2で参照されるように、可逆的な圧縮は点線B−C'過程で行なわれ、実際の圧縮は実線B−C過程で行なわれる。したがって、等エントロピー効率μは、次式(1)のように表すことができる。
【0025】
μ=(等エントロピー圧縮仕事)/(実際の圧縮仕事)=(hC'−h)/(h−h)……(1)
ここで、前記式(1)中、hはB地点でのエンタルピー、hはC地点でのエンタルピー、及びhC'はC'地点でのエンタルピーをそれぞれ意味する。
【0026】
上記のように示される圧縮機30の等エントロピー効率は、圧縮機30の入口に連結される流入配管32(図3参照)及び出口に連結される吐出配管34(図3参照)の直径と密接な関係がある。圧縮機30の流入配管32はシステム全体の容量に応じて適正なサイズ(直径)に決められるが、それに伴う吐出配管34のサイズ(直径)の変化は圧縮機30から吐出される冷媒の熱力学的性質に影響を及ぼすようになる。冷媒の熱力学的性質であるエンタルピー、比体積などが変わると、圧縮機30の効率に影響を及ぼすようになるため、圧縮機30の等エントロピー効率が最適になるように圧縮機30に連結される流入配管32と吐出配管34との大きさを決める必要がある。
【0027】
流入配管32の直径[mm]をDとし、吐出配管34の直径[mm]をDとしたとき、直径比D/Dが次式(2)を満足する場合、圧縮機30の等エントロピー効率が最適になる。これは、以下の表1を参照すれば、より明確になる。
【0028】
0.5≦D/D≦1.0……(2)
【0029】
【表1】

【0030】
図4は、本発明の一実施形態における流入配管及び流出配管が設置された圧縮機の等エントロピー効率を示した図である。図4を参照すれば、圧縮機30の等エントロピー効率が直径比0.5及び1.0を基準に急激に変化することが確認できる。
【0031】
そして、本発明の一実施形態による圧縮機30に連結される流入配管32は、蒸発温度に対する飽和蒸気圧力に耐えられるような耐圧性を持つように設計される必要があり、このために流入配管32は、次式(3)を満足する。
【0032】
(2ση)/(D−0.8t)>Pse……(3)
ここで、前記式(3)中、σは流入配管32の許容引張応力[N/mm]、ηは流入配管32の溶接効率、tは流入配管32の厚さ[mm]、Pseは作動流体の蒸発温度による飽和蒸気圧をそれぞれ意味する。
【0033】
また、本発明の一実施形態による圧縮機30に連結される吐出配管34は、凝縮温度に対する飽和蒸気圧力に耐えられるような耐圧性を持つように設計される必要があり、このために吐出配管34は、次式(4)を満足する。
【0034】
(2ση)/(D−0.8t)>Psc……(4)
ここで、前記式(4)中、σは吐出配管34の許容引張応力[N/mm]、ηは吐出配管34の溶接効率、tは吐出配管34の厚さ[mm]、Pscは作動流体の凝縮温度による飽和蒸気圧をそれぞれ意味する。
【0035】
前記のような式(1)ないし式(4)を満足する圧縮機は、等エントロピー効率が最適になり、冷媒による圧力によって破損しない堅固な圧縮機の配管を具備することができる。
【0036】
また、圧縮機30の流入配管32及び吐出配管34を設計するに当たって、材料の性質も十分に考慮しなければならない。特に、配管を設計する際は、温度変化に耐えられるような十分な耐熱性を持つことが要求される。ある物体の温度変化はその体積の変化を引き起こすため、物体に熱が加えられると、物体は熱が加えられた基準点から熱変形を引き起こすようになる。このような熱変形率yは、次式(5)によって求めることができる。
【0037】
y=δ/L=αDT……(5)
ここで、前記式(5)中、δは熱変形量[mm]、Lは物体の長さ[mm]、αは熱膨脹係数[1/℃]、及びDTは温度差[℃]をそれぞれ意味する。
【0038】
圧縮機30は、低温及び低圧の冷媒を高温及び高圧の冷媒に圧縮する装置であって、冷媒の圧縮後に温度変化を伴うようになる。このような温度の変化による流入配管32及び吐出配管34の熱変形は、システム全体の効率に影響を及ぼすようになるため、その影響が最小化するように流入配管32及び吐出配管34の熱変形率が決められる必要がある。このために、本発明の一実施形態に係る圧縮機30に連結される流入配管32及び吐出配管34の熱変形率は、0.5%以下とされる。
【0039】
なお、上記では圧縮機が空調装置に適用される実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、圧縮機が使用されるあらゆる産業装置に適用可能である。
【0040】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明及び添付した図面の範囲内で種々変形した態様を実施することが可能であり、かかる変形態様も本発明の範囲内に属することはいうまでもない。
【符号の説明】
【0041】
10 熱交換器
20 熱交換ファン
30 圧縮機
32 流入配管
34 吐出配管
40 膨張機
50 導管
52 オイル回収管
54 遮断バルブ
60 気液分離器
70 オイル分離器
80 方向切換バルブ
90 収液器
100 室外機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体を高圧に圧縮する圧縮機であって、
前記作動流体が前記圧縮機に流入する流入配管及び前記圧縮機で圧縮された作動流体が流出する吐出配管が設置され、
前記流入配管の直径をDとし、前記吐出配管の直径をDとしたとき、直径比D/Dが0.5ないし1.0であり、
前記流入配管が次式を満足することを特徴とする圧縮機。
(2ση)/(D−0.8t)>Pse
ここで、前記式中、σは前記流入配管の許容引張応力[N/mm]、ηは前記流入配管の溶接効率、tは前記流入配管の厚さ[mm]、Pseは前記作動流体の蒸発温度による飽和蒸気圧をそれぞれ意味する。
【請求項2】
前記流入配管及び吐出配管の熱変形率が0.5%以下であることを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の圧縮機を含むことを特徴とする空調装置。
【請求項4】
作動流体を高圧に圧縮する圧縮機であって、
前記作動流体が前記圧縮機に流入する流入配管及び前記圧縮機で圧縮された作動流体が流出する吐出配管が設置され、
前記流入配管の直径をDとし、前記吐出配管の直径をDとしたとき、直径比D/Dが0.5ないし1.0であり、
前記吐出配管が次式を満足することを特徴とする圧縮機。
(2ση)/(D−0.8t)>Psc
ここで、前記式中、σは前記吐出配管の許容引張応力[N/mm]、ηは前記吐出配管の溶接効率、tは前記吐出配管の厚さ[mm]、Pscは前記作動流体の凝縮温度による飽和蒸気圧をそれぞれ意味する。
【請求項5】
前記流入配管及び吐出配管の熱変形率が0.5%以下であることを特徴とする請求項4に記載の圧縮機。
【請求項6】
請求項4または5に記載の圧縮機を含むことを特徴とする空調装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−180874(P2010−180874A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219528(P2009−219528)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(508303139)エルエス エムトロン リミテッド (16)
【Fターム(参考)】