説明

圧縮機及び圧縮機の製造方法

【課題】取付脚及び取付脚周辺のケーシングの部分への均一なスプレー塗装が可能な構造を持つ圧縮機を提供する。
【解決手段】取付脚30は、底壁部材23の円筒部23aの水平断面における接線方向よりも径方向に近い向きに第1側面部32及び第2側面部33が延びるように、第1側面部32の上側後縁32bx及び第2側面部33の上側後縁33bxを円筒部23aに接合されている。底壁部材23と取付脚30は、ボトム部23bと第1側面部32の下側後縁32byと第2側面部33の下側後縁33byと底面部31の後縁31bとで囲まれた開口部50により、底面部31とボトム部32bの間の第1空間Sp1から開口部50を挟んで第1空間Sp1の反対側にある第2空間Sp2に続く吹き抜け構造を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機及び圧縮機の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍回路などで用いられる冷媒を圧縮するための圧縮機には、特許文献1(特許第4103432号公報)に示されているように、圧縮機のケーシングを空気調和装置などの据付面に取り付けて支持するための支持脚(取付脚)が設けられる場合がある。図100は、特許文献1に記載されている鏡板(底壁部材)に取り付けられている取付脚を示す平面図であり、図9は、図10におけるIV−IV線断面を示す断面図である。ケーシングの底壁部材120に取り付けられている取付脚130には、脚本体131と傾斜片部132とを有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来から、このような取付脚は、ケーシングとは別に作られて接合されることが多い。特に、重いケーシングを支持する取付脚は、重いケーシングを底から支える支持部材が邪魔になって、スプレー塗装時のスプレーの吹き戻しで固定箇所周辺の塗装が薄くなってしまいがちである。例えば、特許文献1に記載されているような取付脚130では、傾斜片部132と脚本体131が袋小路状になってしまい、破線の矢印(図10参照)で示されているように、スプレーの吹き戻しで塗料が取付脚130の奥まで入っていかない。そこで、スプレーの吹き戻しで塗料が薄くなってしまいがちな部分に予めタッチアップで塗装をしている。
【0004】
本発明の課題は、取付脚及び取付脚周辺のケーシングの部分への均一なスプレー塗装が可能な構造を持つ圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係る圧縮機は、円筒状の胴体部と胴体部の下方を塞ぐ椀状のボトム部とを有するケーシングと、胴体部の中心軸側にそれぞれ縁を持つ底面部と第1側面部と第2側面部とを有する取付脚とを備え、取付脚は、胴体部の水平断面における接線方向よりも径方向に近い向きに第1側面部及び第2側面部が延びるように、第1側面部の縁の上側及び第2側面部の縁の上側をケーシングに接合され、ケーシングと取付脚は、ボトム部と第1側面部の縁の下側と第2側面部の縁の下側と底面部の縁とで囲まれた開口部により、底面部とボトム部の間の第1空間から開口部を挟んで第1空間の反対側にある第2空間に続く吹き抜け構造を形成している。
【0006】
第1観点の圧縮機によれば、第1空間から第2空間へ吹き抜け構造が形成されているので、胴体部の径方向に向けてスプレー塗装をしても塗料を運ぶエアーが吹き抜けるため、ボトム部及び取付脚を吹き戻しなく均一にスプレー塗装できる。
【0007】
本発明の第2観点に係る圧縮機は、第1観点に係る圧縮機において、取付脚は、3つ以上であり、3つ以上の取付脚の第1側面部の縁及び第2側面部の縁は、それぞれ鉛直方向に延びる垂辺を持ち、3つ以上の取付脚は、ケーシングの周囲に配置され、胴体部の側面にそれぞれの第1側面部の垂辺及び第2側面部の垂辺を溶接されてケーシングに接合されている。
【0008】
第2観点の圧縮機によれば、第1側面部の垂辺及び第2側面部の垂辺を溶接されて3つ以上の取付脚がケーシングの周囲に配置される。そのため、ケーシングの周囲から胴体部の径方向に向けてスプレー塗装を行なうと、吹き戻しなく均一なスプレー塗装を行なうことができる。
【0009】
本発明の第3観点に係る圧縮機は、第1観点又は第2観点の圧縮機において、第1側面部及び第2側面部は、それぞれ胴体部の外周よりも中心軸側に設けられているブラケット部を持ち、ブラケット部は、上辺をボトム部に溶接されている。
【0010】
第3観点の圧縮機によれば、第1側面部及び第2側面部のブラケット部に対してボトム部からブラケット部を圧縮する方向の力が加わるため、塗装の容易性を損なうことなく、取付脚で支えることが可能な圧縮機の重量の増加を図ることができる。
【0011】
本発明の第4観点に係る圧縮機は、第1観点から第3観点のいずれかの圧縮機において、取付脚は、一枚の金属板を折り曲げることによって底面部と第1側面部と第2側面部とを形成されている。
【0012】
第4観点の圧縮機によれば、一枚の金属板の折り曲げによって取付脚が成形でき、取付脚を安価に得ることができる。
【0013】
本発明の第5観点に係る圧縮機は、第1観点から第4観点のいずれかの圧縮機において、吹き抜け構造の周囲のケーシングと取付脚とに一様に形成されている塗膜をさらに備える。
【0014】
第5観点の圧縮機によれば、タッチアップで塗装しなくてもよくなるため、吹き抜け構造の周囲の塗膜が一様に形成され、ケーシングと取付脚の接合部近傍が錆び難くなる。
【0015】
本発明の第6観点に係る圧縮機の製造方法は、椀状のボトム部を持つ圧縮機のケーシングを準備する工程と、取付脚をプレス成形して、胴体部の中心軸側にそれぞれ縁を持つ底面部と第1側面部と第2側面部とを形成する工程と、胴体部の水平断面における接線方向よりも径方向に近い向きに第1側面部及び第2側面部が延びるように、第1側面部の縁の上側及び第2側面部の縁の上側をケーシングに接合し、ボトム部と第1側面部の縁の下側と第2側面部の縁の下側と底面部の縁とで囲まれた開口部により、底面部とボトム部の間の第1空間から開口部を挟んで第1空間の反対側にある第2空間に続く吹き抜け構造を形成する工程と、吹き抜け構造の周囲のケーシングと取付脚とにスプレーで塗膜を塗布する工程と、を備える。
【0016】
第6観点の圧縮機の製造方法によれば、第1空間から第2空間へ吹き抜け構造が形成されているので、胴体部の径方向に向けてスプレー塗装をしても塗料を運ぶエアーが吹き抜けて吹き戻しがないため、均一な塗膜をボトム部及び取付脚に形成できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1観点に係る圧縮機では、取付脚とケーシングに対して均一なスプレー塗装が容易に行える。
【0018】
本発明の第2観点に係る圧縮機では、取付脚が接合されているケーシングの周囲から胴体部の径方向に向けてスプレー塗装を行なうことができ、スプレー塗装を容易に行えるようにすることで圧縮機の製造コストを下げることができる。
【0019】
本発明の第3観点に係る圧縮機では、塗装の容易性を保ちつつ、取付脚によるケーシング支持の信頼性を向上させることができる。
【0020】
本発明の第4観点に係る圧縮機では、取付脚のコストを削減することで圧縮機を安価に提供できる。
【0021】
本発明の第5観点に係る圧縮機では、吹き抜け構造を形成するケーシングと取付脚の接合部近傍が錆び難く、圧縮機の耐候性を向上させることができる。
【0022】
本発明の第6観点に係る圧縮機の製造方法では、取付脚とケーシングに対して均一な塗膜の形成が容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】圧縮機の外観を説明するための側面図。
【図2】取付脚が接合された底壁部材を示す平面図。
【図3】図2におけるI−I線断面図。
【図4】スプレー塗装時の空気の流れを示す取付脚と底壁部材の部分平面図。
【図5】スプレー塗装時の空気の流れを示す取付脚と底壁部材の部分断面図。
【図6】スプレー塗装時の空気の流れを示す取付脚と底壁部材の部分断面図。
【図7】取付脚が接合された底壁部材の変形例を示す平面図。
【図8】図7におけるII−II線断面図。
【図9】従来の取付脚が接合された底壁部材を示す平面図
【図10】図9におけるIII−III線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明に係る圧縮機の実施形態は、以下に説明する実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0025】
(1)圧縮機の概要
図1は、第1実施形態に係る圧縮機の外観を示す側面図である。この圧縮機10は、冷媒ガスを圧縮する流体機械であり、ケーシング20内に電動機(図示省略)が収容された全密閉型である。圧縮機10は、例えば、屋外の冷凍装置、特に海上輸送用冷凍コンテナに使用される冷凍用圧縮機に用いられる。
【0026】
屋外の冷凍装置に用いられる圧縮機10は、風雨に曝され、特に海上輸送用冷凍コンテナに用いられる場合には、塩分を含む潮風に曝される。圧縮機10の商品価値を高める上で、このような環境にあっても圧縮機10に錆を発生させないことが一つの重要な要素である。
【0027】
圧縮機10が備えるケーシング20は、上下方向に延びる縦長の円筒状の胴体部材21と、ドーム形状の上部蓋である上壁部材22と、下に凸の曲面を有する椀状の下部蓋である底壁部材23とが気密に接合されて構成されている。そして、ケーシング20を下側から支えるため、底壁部材23の表面23sには、取付脚30が溶接によって接合されている。
【0028】
例えば、圧縮機10がスクロール圧縮機の場合には、圧縮機10のケーシング20の内部には、上述の電動機の他に、この電動機によって駆動される圧縮機構が設けられている。圧縮機構は、ケーシング20内に固定された固定スクロール及び、この固定スクロールに組み合わされる可動スクロールを有している。固定スクロール及び可動スクロールの外観は胴体部材21の内壁に沿うように円筒形に形成されている。そして、可動スクロールが電動機に接続されている。この電動機などへの配線を行なうためのターミナルボックス27が胴体部材21に設けられている。
【0029】
ケーシング20の上壁部材22には吐出管(図示省略)が接続される吐出管ポート26が設けられ、胴体部材21には吸入管(図示省略)が接続される吸入管ポート25が設けられている。圧縮機構で圧縮される冷媒は、吐出管(図示省略)が接続される26から冷凍回路に供給され、冷凍回路を巡回して戻ってきた冷媒は、吸入管ポート25を通して圧縮機構へ吸入される。また、インジェクション管用のポート29が上壁部材22に設けられており、冷凍回路の一部を構成するインジェクション回路がポート29に接続される。さらに、胴体部材21の上部には、ケーシング20の内部にある冷媒の圧力を検出するための圧力検出ポート28が設けられている。
【0030】
固定スクロール及び可動スクロールを含む圧縮機構、電動機並びに高圧の冷媒を封じ込めるためのケーシング20を備える圧縮機10は当然重くなる。さらに、電動機や圧縮機構が圧縮機10の中で動作するので、圧縮機10自身が振動する。取付脚30は、この重くかつ振動する圧縮機10を支える。そして、支えられる側の底壁部材23にも、このような荷重や振動が加わる。
【0031】
このような荷重や振動に耐えるため、底壁部材23は厚い鉄製の壁を持っている。底壁部材23に溶接される取付脚30も、例えばステンレスなどの鋼板で形成される。そして、ケーシング20及び取付脚30は耐候性のある塗料をスプレー塗装される。
【0032】
(2)底壁部材と取付脚
(2−1)取付脚の構造
図2には、底壁部材に溶接された取付脚30の平面形状が示されており、図3には、図2におけるI−I線断面の形状が一部を破断した状態で示されている。取付脚30は、底面部31と第1側面部32と第2側面部33とからなる。底面部31は、平面形状が略方形の平坦な平板であり、図3に示されているように、前縁31aと後縁31bとを有している。底面部31は、後縁31bを底壁部材23の下側に位置させて配置される。底面部31には、前縁31aと後縁31bの中間のやや前縁31a寄りにボルト孔31cが形成されている。このボルト孔31cにボルトが差し込まれて、圧縮機10の取り付けが行われる。
【0033】
底面部31において、これら前縁31aと後縁31bとを繋ぐ2つの側端部31d,31eからはそれぞれ第1側面部32と第2側面部33とが底面部31に対してほぼ直角に延びている。第1側面部32と第2側面部33も、それぞれに前縁32a、33aと後縁32b、33bとを有している。第1側面部32は、図3の二点鎖線を境界とする第1側面本体部32mと第1側面ブラケット部32nとからなる。また、第2側面部33も、二点鎖線を境界として第2側面本体部33mと第2側面ブラケット部33nとに分かれる。
【0034】
第1側面部32及び第2側面部33の後縁32b,33bは、それぞれ、上側後縁32bx,33bxと下側後縁32by,33byからなる。そして、さらに第1側面部32の上側後縁32bxは、底面部31に対して垂直方向に延びる垂辺32bmと、第1側面ブラケット部32nの上側にあたるブラケット部上辺32bnとに分けることができる。同様に、第2側面部33の上側後縁33bxは、底面部31に対して垂直方向(鉛直方向)に延びる垂辺33bmと、第2側面ブラケット部33nの上側にあたるブラケット部上辺33bnとに分けることができる。
【0035】
(2−2)底壁部材の構造
底壁部材23は、円筒状の円筒部23aと、円筒部23aの下に続く皿状のボトム部23bと、円筒部23aの上にある大径部23cの3つの部分からなる。大径部23cは、胴体部材21が嵌め込まれるため、円筒部23aの外径にほぼ等しい内径を持っている。
【0036】
(2−3)底壁部材への取付脚の接合
図2に示されている4つの取付脚30が底壁部材23に溶接によって接合されている。4つの取付脚30は、平面視において、互いに隣接する取付脚30と底壁部材23の中心とのなす角がほぼ90度になるように配置されている。各取付脚30は、その垂辺32bm,33bnを底壁部材23の円筒部23aに溶接される。そのため、平面視において、第1側面部32及び第2側面部33が、およそ円筒部23aの水平断面が呈する円の径方向に沿って延びるように接合される。図2には、4つのうちの左上の取付脚30の第1側面部32が延びる方向が矢印Ar1で示されている。矢印Ar1は円筒部23aの水平断面における径方向にほぼ一致する。また、第2側面部33が延びる方向が矢印Ar2で示され、第2側面部33の径方向が矢印Ar3で示され、接線方向が矢印Ar4で示されている。第2側面部33が延びる矢印Ar2の方向は、矢印Ar3で示されている径方向から少しずれているが、矢印Ar2と矢印Ar3とがなす角θ1が矢印Ar2と矢印Ar4とがなす角θ2より小さくなっている。すなわち、第1側面部32及び第2側面部33は、円筒部23a(胴体部)の水平断面における接線方向よりも径方向に近い向きに延びている。
【0037】
各取付脚30の第1側面部32及び第2側面部33は、第1側面ブラケット部32n及び第2側面ブラケット部33nのブラケット部上辺32bn,33bnをボトム部24に溶接されている。このブラケット部上辺32bn,33bnにも圧縮機10の荷重が掛かる。なお、図1には、取付脚30の第1側面部32及び第2側面部33が底壁部材23に溶接されるときに形成されるビード41,42が示されている。ビード41は、垂辺32bmからブラケット部上辺32bnまで連続して形成され、またビード42は、垂辺33bmからブラケット部上辺33bnまで連続して形成される。
【0038】
(2−4)取付脚周辺の塗装
圧縮機10の塗装は、図1に示されているように、取付脚30が接合されている底壁部材23が胴体部材21に気密に接合された後に行なわれる。図4、図5及び図6にスプレー塗装におけるスプレーによって生じる風の向きが破線の矢印で示されている。図4及び図5は、底壁部材23の側面からスプレーしている状態が示されており、図6にはボトム部23bの下側からスプレーしている状態が示されている。
【0039】
図10に示されている従来の取付脚130と異なり、取付脚30と底壁部材23との間には、図5に示されている開口部50が形成されている。開口部50は、図4に示されている底面部31の後縁31bと第1側面部32の下側後縁32byと第2側面部33の下側後縁33byと、図5に示されているボトム部23bとに囲まれた領域である。
【0040】
図5において、底面部31とボトム部23bとの間の空間が第1空間Sp1である。開口部50を挟んで第1空間Sp1の反対側にある空間が第2空間Sp2である。第2空間Sp2は、ボトム部23bの中心近傍の下側の空間である。ケーシング20のボトム部23bと取付脚30は、この開口部50を持ち、第1空間Sp1から開口部50を通って第2空間Sp2に続く吹き抜け構造を形成している。
【0041】
図4、図5及び図6に示されているように、スプレー塗装において、取付脚30の第1側面部32と第2側面部33で囲まれた領域に対してスプレーすると、開口部50つまり吹き抜け構造を塗料とともに風が通り抜けて吹き戻しがない。このように、吹き抜け構造を通り抜けるときに、開口部50の近傍にある底面部31、第1側面部32、第2側面部33及びボトム部23bに塗料が付着して均一な塗膜が形成される。
【0042】
(3)特徴
(3−1)
以上説明したように、ケーシング20が第1側面部32及び第2側面部33のみで支えられ、第1側面部32及び第2側面部33が円筒部23a(胴体部)の水平断面における接線方向よりも径方向に近い向きに延びており、ケーシング20のボトム部23bと取付脚30に形成されている吹き抜け空間が第1空間Sp1(底面部31とボトム部23b)から第2空間Sp2(開口部50の反対側)へ続くので、吹き抜け構造周辺のボトム部23bと取付脚30に対して、ボトム部23bの径方向にスプレーしても吹き戻しがない。そのため、吹き抜け構造周辺のボトム部23bと取付脚30に均一な塗装を容易に行なうことができ、圧縮機10を安価に提供できる。また、タッチアップで予め塗装せずにスプレー塗装だけで塗り斑なく塗膜を形成でき、吹き抜け構造の周囲の塗膜が一様に形成され、ケーシング20と取付脚30の接合部近傍が錆び難くなる。
【0043】
(3−2)
図2に示されているように、第1側面部32の垂辺32bm及び第2側面部33の垂辺33bmを溶接されて4つの取付脚30が底壁部材23(ケーシング20)の周囲に配置される。そのため、ケーシング20の周囲から胴体部材21や底壁部材23(胴体部)の径方向に向けてスプレー塗装を行なうと、吹き戻しなく均一なスプレー塗装を行なうことができる。例えばスプレーに対してケーシング20を胴体部材21の中心軸の周りに回転しながらスプレー塗装ができ、塗装が容易になる。スプレー塗装が容易に行えるようにすることにより、タッチアップで塗装を行う手間を省き、圧縮機10の製造コストを下げることができる。
【0044】
(3−3)
第1側面部32及び第2側面部33は、第1側面ブラケット部32n及び第2側面ブラケット部33nを持っている。第1側面ブラケット部32n及び第2側面ブラケット部33nは、それぞれ第1側面本体部32m及び第2側面本体部33mから続き、第1側面ブラケット部32n及び第2側面ブラケット部33nと第1側面本体部32m及び第2側面本体部33mがワンピースで構成されている。そのため、第1側面ブラケット部32n及び第2側面ブラケット部33nが底壁部材23の径方向に延びることから、塗装の容易性を損なわない。そして、これら第1側面ブラケット部32n及び第2側面ブラケット部33nに対して、第1側面ブラケット部32n及び第2側面ブラケット部33nを圧縮する方向に圧縮機10の荷重が掛かるため、垂辺32bm,33bmに対してせん断方向に掛かる荷重を減らして、取付脚30で支えることが可能な圧縮機10の重量を増加させることができる。その結果、取付脚30によるケーシング支持の信頼性を向上させることができる。
【0045】
この取付脚30は、一枚の金属板の折り曲げによってU字に成形されているので、重い荷重を支えるのに適しており、かつ安価に製造することができる。このような金属板をU字型に曲げた取付脚30を用いることで、圧縮機を安価に提供できる。
【0046】
(4)変形例
(4−1)
上記実施形態では、取付脚30が4つ設けられる場合について説明したが、取付脚30は3つ以上であればよく、例えば図7及び図8に示されているように、3つの取付脚30Aで圧縮機を支えることもできる。図7は、底壁部材23と取付脚30Aの平面図であり、図8は、図7におけるII−II線断面図である。
【0047】
(4−2)
上記実施形態では、取付脚30の形状がU字型に折り曲げられている場合について説明したが、取付脚30の形状はU字型には限られない。例えば、平板状の底面部に垂直に2以上の側面部を溶接してもよい。この場合に、例えば、側面部の幅よりも底面部の幅が広くなるように形成されてもよい。また、例えば、側面部はV字型やW字型やΛ型に底面部に溶接されたような形であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
10 圧縮機
20 ケーシング
21 胴体部材
22 上壁部材
23 底壁部材
23b ボトム部
30,30A 取付脚
31 底面部
32 第1側面部
33 第2側面部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0049】
【特許文献1】特許第4103432号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の胴体部(21,23)と前記胴体部の下方を塞ぐ椀状のボトム部(23a)とを有するケーシング(20)と、
前記胴体部の中心軸側にそれぞれ縁(31b,32b,33b)を持つ底面部(31)と第1側面部(32)と第2側面部(33)とを有する取付脚(30)とを備え、
前記取付脚は、前記胴体部の水平断面における接線方向よりも径方向に近い向きに前記第1側面部(32)及び前記第2側面部(33)が延びるように、前記第1側面部の前記縁の上側(32bx)及び前記第2側面部の前記縁の上側(32bx)を前記ケーシングに接合され、
前記ケーシングと前記取付脚は、前記ボトム部と前記第1側面部の前記縁の下側(32by)と前記第2側面部の前記縁の下側(33by)と前記底面部の前記縁とで囲まれた開口部(50)により、前記底面部と前記ボトム部の間の第1空間(Sp1)から前記開口部を挟んで前記第1空間の反対側にある第2空間(Sp2)に続く吹き抜け構造を形成している、圧縮機。
【請求項2】
前記取付脚は、3つ以上であり、
3つ以上の前記取付脚の前記第1側面部の前記縁及び前記第2側面部の前記縁は、それぞれ鉛直方向に延びる垂辺を持ち、
3つ以上の前記取付脚は、前記ケーシングの周囲に配置され、前記胴体部の側面にそれぞれの前記第1側面部の前記垂辺及び前記第2側面部の前記垂辺を溶接されて前記ケーシングに接合されている、請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記第1側面部及び前記第2側面部は、それぞれ前記胴体部の外周よりも前記中心軸側に設けられているブラケット部(32n,33n)を持ち、
前記ブラケット部は、上辺(32bn,33bn)を前記ボトム部に溶接されている、
請求項1又は請求項2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記取付脚は、一枚の金属板を折り曲げることによって前記底面部と前記第1側面部と前記第2側面部とを形成されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記吹き抜け構造の周囲の前記ケーシングと前記取付脚とに一様に形成されている塗膜をさらに備える、
請求項1から4のいずれか一項に記載の圧縮機。
【請求項6】
椀状のボトム部(23b)を持つ圧縮機(10)のケーシング(20)を準備する工程と、
取付脚(30)をプレス成形して、それぞれ前記胴体部の中心軸側に縁(31b,32b,33b)を持つ底面部(31)と第1側面部(32)と第2側面部と(33)を形成する工程と、
前記胴体部の水平断面における接線方向よりも径方向に近い向きに前記第1側面部及び前記第2側面部が延びるように、前記第1側面部の前記縁の上側(32bx)及び前記第2側面部の前記縁の上側(33bx)を前記ケーシングに接合し、前記ボトム部と前記第1側面部の前記縁の下側(32b)と前記第2側面部の前記縁の下側(33by)と前記底面部の前記縁とで囲まれた開口部(50)により、前記底面部と前記ボトム部の間の第1空間から前記開口部を挟んで前記第1空間の反対側にある第2空間に続く吹き抜け構造を形成する工程と、
前記吹き抜け構造の周囲の前記ケーシングと前記取付脚とにスプレーで塗膜を塗布する工程と、
を備える、圧縮機の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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