説明

圧縮機駆動装置

【課題】過負荷保護装置を圧縮機に取付けるカバーを必要とせずに、過負荷保護装置の温度検知精度を向上し、信頼性の高い圧縮機駆動装置を提供する。
【解決手段】圧縮機47を駆動する半導体素子3a、およびその駆動を制御する制御回路3、および赤外線温度センサー38が実装されたプリント基板5と、プリント基板5を収納し、赤外線温度センサー38の受光部の対面側を開口した収納ケース1から構成することにより、過負荷保護装置を個別に圧縮機47に取付ける必要がなく、安価な圧縮機駆動装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫等に搭載される冷却システムの圧縮機を駆動する圧縮機駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷蔵庫等の冷却システムには圧縮機が搭載されており、特に、インバータ圧縮機においては、その駆動装置が別に必要であるとともに、圧縮機の温度を検出して圧縮機駆動装置への通電を停止する過負荷保護装置が圧縮機の外郭に取付けられた構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、図面を参照しながら上記従来の圧縮機駆動装置について説明する。
【0004】
図4は、特許文献1に記載された従来の圧縮機駆動装置の回路接続を示すブロック図、図5は、過負荷保護装置の圧縮機への取り付けを示した分解斜視図である。
【0005】
図4および図5において、圧縮機駆動装置100は、内部に整流回路100aおよび駆動回路100bを備えている。
【0006】
インバータ方式の圧縮機104は、外郭に金属板を曲げ加工したブラケット104aが溶接されているほか、3本の接続端子104bがブラケット104aの中央位置に設けられている。
【0007】
圧縮機104の温度を検知する過負荷保護装置108は、ブラケット104aに密着取付けされている。
【0008】
クラスタターミナル116は、圧縮機駆動装置100と接続端子104bを接続している。
【0009】
カバー120は、過負荷保護装置108およびクラスタターミナル116を覆うようにブラケット104aに取り付けられており、過負荷保護装置108に直接風が当たらないようにして、圧縮機104の温度検知の検知精度を向上させている。
【0010】
以上のように構成された圧縮機駆動装置について、以下、その動作を説明する。
【0011】
圧縮機駆動装置100は、AC電源112を電源として、内部の整流回路100aにて整流平滑されたDC電圧を、駆動回路100bにてスイッチング制御し、圧縮機104に通電させることによって、圧縮機104を所望の回転数にて回転させるように制御する。
【0012】
圧縮機駆動装置100が動作すると、圧縮機駆動装置100は発熱し、過負荷時には高温になってしまう。しかしながら、過負荷保護装置108が、ブラケット104aに密着して取付けられているため、圧縮機104の発熱は過負荷保護装置108に熱伝導し、過負荷保護装置108の温度が所定の温度(たとえば100℃)以上になると、過負荷保護装置108の内部接点が開放状態となる。
【0013】
過負荷保護装置108が開放状態となると、圧縮機駆動装置100への通電が遮断され、圧縮機104は停止して、圧縮機104の温度はそれ以上上昇することはない。
【0014】
以上のような動作により、圧縮機104は安全に駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2006−226248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記従来の構成では、過負荷保護装置108を圧縮機104に取付ける作業が必要になり、作業工数が増大するほか、カバー120も必要であるという課題を有していた。
【0017】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、過負荷保護装置を圧縮機に取付ける工数を削減し、カバーを必要とせずに過負荷保護装置の温度検知精度も向上でき、信頼性の高い圧縮機駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記従来の課題を解決するために、本発明の圧縮機駆動装置は、圧縮機を駆動する半導体素子、及びその駆動を制御する制御回路、及び赤外線温度センサーが実装されたプリント基板と、前記プリント基板を収納し、かつ赤外線温度センサー受光部の対面側を開口した収納ケースとで構成したものである。
【0019】
これによって、過負荷保護装置を個別に圧縮機に取付ける必要がなくなり、過負荷保護装置のカバーも不要とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の圧縮機駆動装置は、過負荷保護装置を個別に圧縮機に取付ける必要がないため、過負荷保護装置の取付け工数を削減することができるとともに、負荷保護装置のカバーを必要とせず、安価な圧縮機駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1における圧縮機駆動装置の分解斜視図
【図2】同実施の形態1における圧縮機駆動装置を圧縮機に取付けた状態の側面図
【図3】同実施の形態1における圧縮機駆動装置の回路ブロック図
【図4】従来の圧縮機駆動装置の回路ブロック図
【図5】従来の過負荷保護装置の圧縮機への取り付けを示した分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0022】
請求項1に記載の発明は、圧縮機を駆動する半導体素子、及びその駆動を制御する制御回路、及び赤外線温度センサーが実装されたプリント基板と、前記プリント基板を収納し、かつ前記赤外線温度センサーの受光部の対面側を開口した収納ケースとで構成したものである。
【0023】
かかる構成により、過負荷保護装置を個別に圧縮機に取付ける必要がなく、安価な圧縮機駆動装置を提供することができる。
【0024】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記赤外線温度センサーの受光部を、前記圧縮機の外郭を指向するように取付け、かつ前記収納ケースを直接前記圧縮機に取り付けたものである。
【0025】
かかることにより、過負荷保護装置を個別に圧縮機に取付ける必要がないことに加えて、過負荷保護装置のカバーも不要となり、安価な圧縮機駆動装置を提供することができる。
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0027】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における圧縮機駆動装置の分解斜視図、図2は、同実施の形態1における圧縮機駆動装置を圧縮機に取付けた状態の側面図、図3は、同実施の形態1における圧縮機駆動装置の回路ブロック図である。
【0028】
図1において、変性ポリフェニレンエーテル樹脂等の樹脂により射出成形された収納ケース1には、内部にプリント基板5が収納できるように、プリント基板5の大きさに対して若干大きい開口部9と、本圧縮機駆動装置取付けのための孔を設けた複数の取付け脚1cおよび1dが設けられている。
【0029】
プリント基板5は、周知の如くガラス布・ガラス不織布エポキシ樹脂板の表面に銅箔パターンが形成されたもので、複数の電子部品がはんだ付け実装され、整流回路2および駆動回路3を形成している。
【0030】
さらに、プリント基板5には、赤外線温度センサー38、接続用のコネクタ14およびコネクタ15も実装されている。また、4箇所の角部には、複数の基板取り付け穴5aが設けられている。
【0031】
収納ケース1には、コネクタ14およびコネクタ15からのコードを引き出すための開口したコード引出部17が形成されており、コードを引き出し作業の後、カバー11を取り付けすることによって閉口されるようになっている。また、収納ケース1の赤外線温度センサー38の受光部の対面側には、受光用穴35が開口されている。
【0032】
収納ケース1の内部4箇所には、開口部9に向かって突出した突出部1aが一体成型されて設けられており、この突出部1aには、空洞部を備えた筒状のゴムブッシュ19が、突出部1aをゴムブッシュ19の空洞部に嵌め込むように、それぞれ取り付けられている。
【0033】
突出部1aの高さは、ゴムブッシュ19の高さよりも高く、先端がゴムブッシュ19より突出するようになっており、この突出した部分が、プリント基板5の基板取り付け穴5aに嵌るようになっている。また、このゴムブッシュ19は、プリント基板5を収納ケース1に収納取付けた状態で、収納ケース1とプリント基板5によって挟み込まれている。
【0034】
収納ケース1の開口部9のそれぞれの角部には、取付け穴1bが開けられているほか、プレス加工されたアルミ合金製のアルミ板21の角部には、孔21aが開けられており、アルミ板固定用ネジ25にてアルミ板21を収納ケース1に固定して、開口部9を閉口できるようになっている。
【0035】
アルミ板21の内側面に密着して絶縁シート29が、例えば、2枚重ねられて固定ネジ31にて取り付けられているが、この絶縁シート29は安全規格を満足する電気絶縁性能(例えば、1750V、1分間の絶縁耐力試験に耐える)を持っている。
【0036】
プリント基板5には、駆動回路3を構成する部品である圧縮機駆等動用のIPM(イン
テリジェントパワーモジュール)等である半導体素子3aが実装されているが、半導体素子3aだけは、コネクタ14等の他の部品とは反対側のアルミ板21と対向する実装面に実装されている。
【0037】
半導体素子3aは、絶縁シート29が取り付けられたアルミ板21と密着しており、アルミ板21を収納ケース1に取付けることによって、プリント基板5がゴムブッシュ19を圧縮状態にしている。
【0038】
クラスタターミナル44は、コード42によりコネクタ14に接続されている。電源コード44は、AC電源に接続される。密閉型の圧縮機47は、その外郭に接続端子47aを有するほか、金属板を折り曲げ加工したブラケット51が、溶接により取付けられている。
【0039】
収納ケース1は、収納ケース1の底部がブラケット51と向き合う方向に、取付け脚1cを取り付けネジ55でブラケット51に固定されることによって、圧縮機47に取り付けられている。
【0040】
また、クラスタターミナル40は、圧縮機47の接続端子47aに接続されている。プリント基板5に実装されている赤外線温度センサー38は、収納ケース1に設けられた受光用穴35を介して、圧縮機47の表面温度を検出できるようにしている。
【0041】
以上のように構成された圧縮機駆動装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0042】
圧縮機駆動装置は、従来例と同様に、AC電源45を電源として、内部の整流回路2にて整流平滑されたDC電圧を、駆動回路3にてスイッチング制御し、圧縮機47に通電させることによって、圧縮機47を所望の回転数にて回転させるように制御する。
【0043】
圧縮機駆動装置が動作すると、圧縮機駆動装置は発熱し、過負荷時には高温になってしまうが、赤外線温度センサー38が圧縮機47の表面温度を検知し、その温度が所定の温度(たとえば100℃)以上になると、駆動回路3が停止し、圧縮機47への通電を停止する。この動作によって圧縮機47の温度がそれ以上に上昇することを抑える。
【0044】
以上のように本実施の形態においては、プリント基板5に実装された赤外線温度センサー38で圧縮機47の温度を検知しているため、異常温度による保護動作機能を維持しつつ、改めて圧縮機47に過負荷保護装置を取付ける工数を必要とせず、またカバーを必要としないことから、安価な圧縮機駆動装置を提供することができる。
【0045】
また、本実施の形態においては、圧縮機駆動装置を圧縮機47に直接取り付けられているが、赤外線温度センサーの受光部を圧縮機に指向させておけば、圧縮機駆動装置を別置きとしても同じ効果が生まれ、過負荷保護装置を取付ける工数を必要とせず、安価な圧縮機駆動装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のように、本発明にかかる圧縮機駆動装置は、過負荷保護装置を圧縮機に取付ける工数を削減しながら、過負荷保護装置の温度検知の安定性も確保できるので、過負荷保護装置を使用した他の装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 収納ケース
3 制御回路
3a 半導体素子
5 プリント基板
35 受光用穴
38 赤外線温度センサー
47 圧縮機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機を駆動する半導体素子、及びその駆動を制御する制御回路、及び赤外線温度センサーが実装されたプリント基板と、前記プリント基板を収納し、かつ前記赤外線温度センサーの受光部の対面側を開口した収納ケースとで構成した圧縮機駆動装置。
【請求項2】
前記赤外線温度センサーの受光部を、前記圧縮機の外郭を指向するように取付け、かつ前記収納ケースを直接前記圧縮機に取り付けた請求項1に記載の圧縮機駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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