説明

圧縮機

【課題】 環状に配置される吐出室142からの吐出通路104fに接続される共鳴マフラ104hのレイアウトを容易にすると共に、圧縮機の体格増大を抑制する。
【解決手段】 吐出室142は、シリンダヘッド104の径方向外側に、吸入室141を囲んで環状に配置される。環状に配置される吐出室142の周方向の一部を区画部材150によって区画し、区画部材150の裏側に吐出通路の第2通路(接続通路)104f2を形成する。この第2通路104f2は、一端にて吐出通路の第1通路104f1を介して吐出ポート104eと接続し、他端にて共鳴マフラ104hと接続する。区画部材150には連通孔104f3を開設し、これにより吐出室142と第2通路104f2とを接続する。共鳴マフラ104hは、第2通路104f2よりシリンダヘッド104の径方向内側又は下方に向かって延設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用エアコンシステムなどに使用される圧縮機に関し、特に作動流体(冷媒)を吐出又は吸入する通路に脈動低減装置として接続される共鳴マフラの配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、共鳴マフラを一体に備えた圧縮機が開示されている。これは、吐出脈動のうち目的の周波数成分を打ち消すため、圧縮機の吐出室から外部配管への吐出通路の途中に、連通路を介して、所定の容積を有する袋小路状の共鳴空間からなる共鳴マフラを接続したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−297755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吐出脈動低減用の共鳴マフラを圧縮機に一体に形成する場合、共鳴マフラは吐出室と吐出ポートとを接続する吐出通路に接続することになるため、吐出ポートの配置によっては共鳴マフラの配置が困難となったり、圧縮機の体格が増大するという問題があった。
【0005】
特に片頭ピストン式圧縮機では共鳴マフラをシリンダヘッドに配置することが想定されるが、吐出室が吸入室の径方向外側に環状に配置されている場合、環状に配置された吐出室の外側に向けて吐出ポートと接続する吐出通路が形成されるので、圧縮機の体格を増大させることなく、共鳴マフラを吐出通路に接続することが困難であった。
【0006】
また、吸入脈動低減用の共鳴マフラを圧縮機に一体に形成する場合も、同様な問題があり、特に吸入室が吐出室の径方向外側に環状に配置されている場合のレイアウトが困難であった。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑み、共鳴マフラを圧縮機に容易に配置できるようにすると共に、共鳴マフラを一体に形成しても圧縮機の体格が増大しないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る圧縮機は、
吸入室と、吐出室と、吸入側外部冷媒回路と接続する吸入ポートと、吐出側外部冷媒回路と接続する吐出ポートと、前記吸入室と前記吸入ポートとを接続する吸入通路と、前記吐出室と前記吐出ポートとを接続する吐出通路と、前記吸入通路又は前記吐出通路に接続する共鳴マフラとが形成されたハウジングと、
前記ハウジングの中心部に回転可能に支持された駆動軸と、
前記駆動軸の回転によって前記吸入室から吸入した冷媒を圧縮して前記吐出室へ吐出する圧縮機構と、を備え、
前記吸入室及び前記吐出室のうち、いずれか一方の室が前記ハウジングの径方向内側に配置され、他方の室が前記ハウジングの径方向外側に前記一方の室を取り囲むように環状に配置され、
前記共鳴マフラが前記環状に配置される室とこれに対応する前記ポートとを接続する前記通路に接続される。
【0009】
更に、前記共鳴マフラが接続される前記通路は、前記環状に配置される室の上部領域内にて前記環状に配置される室と区画壁により区画され前記ポート及び前記共鳴マフラと接続する接続通路と、前記区画壁に設けられて前記接続通路と前記環状に配置された室とを連通する連通孔とを含んで構成され、
前記共鳴マフラは、前記接続通路より前記ハウジングの径方向内側又は下方に向かって延設される。
【0010】
尚、本明細書でいう「上」又は「下」は、圧縮機がシステムとして設置又は搭載された状態を基準とし、その状態での上下方向に対応している。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ハウジングの径方向外側に環状に配置される室(吐出室又は吸入室)とそのポート(吐出ポート又は吸入ポート)とを接続する通路(吐出通路又は吸入通路)に対し、共鳴マフラを接続する場合であっても、ハウジング内に形成した共鳴マフラを容易に接続することが可能となると共に、共鳴マフラを圧縮機に一体に形成しても圧縮機の体格増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態での圧縮機の断面図
【図2】第1の実施形態でのシリンダヘッドの開放端側の図
【図3】図2のA−A断面図
【図4】図2のB−B断面図
【図5】区画部材の斜視図
【図6】第2の実施形態でのシリンダヘッドの開放端側の図
【図7】第2の実施形態での共鳴マフラ部分の断面図(図6のC−C断面図)
【図8】第3の実施形態での共鳴マフラ部分の断面図
【図9】第4の実施形態での共鳴マフラ部分の断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は第1の実施形態での圧縮機(特に可変容量圧縮機)の断面図、図2は第1の実施形態でのシリンダヘッドの開放端側の図、図3は図2のA−A断面図、図4は図2のB−B断面図、図5は区画部材の斜視図である。
【0014】
図1に示す可変容量圧縮機100の基本構成について説明する。
可変容量圧縮機100は、複数のシリンダボア101aを備えたシリンダブロック101と、シリンダブロック101の一端に設けられたフロントハウジング102と、シリンダブロック101の他端にバルブプレート103を介して設けられたシリンダヘッド104とを備えている。
【0015】
シリンダブロック101とフロントハウジング102とによって規定されるクランク室140内を横断して、駆動軸110が設けられ、その中心部の周囲には、斜板111が配置されている。斜板111は、駆動軸110に固定されたロータ112とリンク機構120を介して連結し、駆動軸110に沿ってその傾角が変化可能となっている。
【0016】
リンク機構120は、ロータ112から突設された第1アーム112aと、斜板111から突設された第2アーム111aと、一端側が第1連結ピン122を介して第1アーム112aに対して回動自在に連結され、他端側が第2連結ピン123を介して第2アーム111aに対して回動自在に連結されたリンクアーム121とから構成されている。
【0017】
斜板111の貫通孔111bは斜板111が最大傾角(θmax )と最小傾角(θmin )との範囲で傾動可能となるように形状が形成されており、貫通孔111bには駆動軸110と当接する最大傾角規制部と最小傾角規制部とが形成されている。
【0018】
ロータ112と斜板111との間には斜板111を最小傾角に向けて最小傾角に至るまで付勢する傾角減少バネ114が装着され、また斜板111とバネ支持部材116との間には斜板111の傾角を増大する方向に付勢する傾角増大バネ115が装着されている。最小傾角において傾角増大バネ115の付勢力は傾角減少バネ114の付勢力より大きく設定されているので、斜板111は駆動軸110が回転していないときは、傾角減少バネ114と傾角増大バネ115の付勢力がバランスする傾角に位置する。
【0019】
駆動軸110の一端は、フロントハウジング102の外側に突出したボス部102a内を貫通して外側まで延在し、図示しない動力伝達装置に連結されている。尚、駆動軸110とボス部102aとの間には、軸封装置130が挿入され、内部と外部とを遮断している。駆動軸110及びロータ112はラジアル方向に軸受131、132で支持され、スラスト方向に軸受133、スラストプレート134で支持されている。尚、駆動軸110のスラストプレート134当接部とスラストプレート134との隙間は調整ネジ135により所定の隙間に調整されている。したがって外部駆動源からの動力が動力伝達装置に伝達され、駆動軸110は動力伝達装置と同期して回転可能となっている。
【0020】
シリンダボア101a内には、圧縮機構の主要部をなすピストン136が配置され、ピストン136のクランク室140側に突出している端部の内側空間には、斜板111の外周部が収容され、斜板111は一対のシュー137を介してピストン136と連動する構成となっている。したがって斜板111の回転によりピストン136がシリンダボア101a内を往復動することが可能となる。
【0021】
シリンダヘッド104には、中央部に環状の隔壁104aで区画された吸入室141と、隔壁104aと外周壁104bとで区画され吸入室141を環状に取り囲む吐出室142とが形成され(図2参照)、吸入室141は、シリンダボア101aとは、バルブプレート103に設けられた連通孔103a及び吸入弁(図示せず)を介して連通し、吐出室142は、シリンダボア101aとは、バルブプレート103に設けられた連通孔103b及び吐出弁(図示せず)を介して連通している。
【0022】
フロントハウジング102、シリンダブロック101、バルブプレート103、及び、シリンダヘッド104は、図示しないガスケットを介して接合され、複数の通しボルト105により締結されて、圧縮機ハウジングをなす。
【0023】
シリンダヘッド104には、吸入側外部冷媒回路と接続する吸入ポート104cと、吸入ポート104cと吸入室141とを接続する吸入通路104dとが形成され、これらによって吸入室141はエアコンシステムの吸入側外部冷媒回路と接続されている。吸入通路104dはシリンダヘッド104の径方向外側から吐出室142の一部を横切るように直線状に伸びている。
【0024】
また、吐出室142は後述する吐出通路104f(104f1、104f2、104f3)及び吐出ポート104eを介してエアコンシステムの吐出側外部冷媒回路と接続されている。
【0025】
シリンダヘッド104にはさらに制御弁300が設けられている。制御弁300は吐出室142とクランク室140とを連通する連通路145の開度を調整し、クランク室140への吐出ガス導入量を制御する。またクランク室140内の冷媒は、連通路101c、空間146、バルブプレート103に形成されたオリフィス103cを経由して、吸入室141へ流れる。
【0026】
したがって制御弁300によりクランク室140の圧力を変化させ、斜板111の傾角、つまりピストン136のストロークを変化させることにより、可変容量圧縮機100の吐出容量を可変制御することができる。
【0027】
エアコン作動時、つまり可変容量圧縮機100の作動状態では、外部信号に基づいて制御弁300に内蔵されるソレノイドの通電量が調整され、吸入室141の圧力が所定値になるように吐出容量が可変制御される。制御弁300は、外部環境に応じて、吸入圧力を最適制御することができる。
【0028】
次に吐出通路及び共鳴マフラ等の構成について、図1の他、図2〜図5を参照しつつ、説明する。
シリンダヘッド104の上部領域には、吐出側外部冷媒回路と接続する吐出ポート104eと、吐出ポート104eと吐出室142とを接続する吐出通路104f(104f1、104f2、104f3)とが形成され、これらによって吐出室142はエアコンシステムの吐出側外部冷媒回路と接続されている。
【0029】
吐出通路104fは、吐出ポート104eと同軸に形成された第1通路104f1と、環状に配置された吐出室142内に区画された第2通路104f2と、第2通路104f2と吐出室142とを接続する連通孔104f3とから構成される。
【0030】
第2通路104f2は吐出室142の環状形状に合わせて形成された略扇状の区画部材150(図5参照)を吐出室142内に嵌め込むことにより形成される。
区画部材150は、第2通路104f2と吐出室142とを区画する平板150aと、平板150aの周縁から立ち上がる複数の側板150bとからなり(図5参照)、側板150bの外側端部が隔壁104aと外周壁104bに僅かに押圧されるように圧入状態で嵌め込まれて、区画部材150がシリンダヘッド104に対して保持されるようになっている(図4参照)。
【0031】
尚、シリンダヘッド104には平板150aが当接して平板150aを位置決めする位置決め面104gが形成され(図4参照)、側板150bの高さは位置決め面104gとシリンダヘッド104の開放側端面との高さの差より僅かに小さく設定されている。そして、区画部材150はシリンダヘッド104にバルブプレート103側が接合することにより抜け止めされている。
【0032】
また、区画部材150は、例えばポリアミド系やポリフェニレンサルファイド系樹脂材料で形成され、区画部材150の一部を切り欠くことにより連通孔104f3が形成されている。
【0033】
第2通路104f2は区画部材150の形状に合わせて円弧状に形成されており、円弧形状の一方の端部に吐出ポート104eに接続する第1通路104f1が接続し、他方の端部に共鳴マフラ104hが接続され、共鳴マフラ104hはシリンダヘッド104と一体に形成されている。つまり第2通路104f2は共鳴マフラ104hを吐出通路104fに接続するための接続通路となっている。尚、連通孔104f3は共鳴マフラ104hに近い領域に配置されている。
【0034】
言い換えれば、環状に配置される吐出室142の周方向の一部を区画部材150によって区画し、区画部材150の裏側に吐出通路の第2通路(接続通路)104f2を形成する。この第2通路104f2は、一端にて吐出通路の第1通路104f1を介して吐出ポート104eと接続し、他端にて共鳴マフラ104hと接続する。区画部材150には連通孔104f3を開設し、これにより吐出室142と第2通路104f2とを接続する。尚、図2において、第1通路104f1は、区画部材150の表側の吐出室142と直接つながっておらず、区画部材150の裏側の第2通路104f2とつながっている。
【0035】
共鳴マフラ104hは、第2通路104f2の下側に延設された円筒状のマフラ空間104h1と、マフラ空間104h1と第2通路104f2とを接続する連通孔104h2とから構成されている(図3参照)。マフラ空間104h1は、シリンダヘッド104の径方向下側から形成され、円筒状のマフラ空間104h1端部は吐出室142の下部領域内に延設されて、閉塞部材160により閉塞されている。尚、シリンダヘッド104には制御弁300が配置されており、共鳴マフラ104hは制御弁300等との干渉を回避し、かつシリンダヘッド104からできるだけ突出しないように適切な位置に配置されている。
【0036】
ここで、連通孔104h2がマフラ空間104h1の上側に配置されているので、マフラ空間104h1内にオイルが流入したり、冷媒が凝縮して液冷媒が停留する可能性があるが、マフラ空間104h1の下部領域は吐出室142の下部領域とオリフィス104iを介して連通しており、オイルや液冷媒はオリフィス104iによって吐出室142に戻るように構成されている。オリフィス104iは、吸入室141と吐出室142との間の隔壁104aの最下部104a1より下に配置されており(図2参照)、この領域には吸入室141が無いので、例えば共鳴マフラ104hが吸入室141によって断面積が狭められた場合等でも、貯油(液)断面積が広く、したがって油面(液面)変動が小さく抑えられて、マフラ空間104h1の実質的な容積変動が小さくなり、共振周波数が大きく変動することはない。オリフィス径はオイルや液冷媒の排出性と共鳴マフラの効果を考慮してできるだけ小さく設定される。
【0037】
したがって各シリンダボア101aから吐出された冷媒による圧力脈動の特定の周波数領域は共鳴マフラ104hによって効果的に減衰され、エアコンシステム側への圧力脈動の影響が軽減できる。
接続通路としての第2通路104f2及び共鳴マフラ104hはシリンダヘッド104の内部に配設されているので、圧縮機の体格が増大することがない。
【0038】
接続通路としての第2通路104f2は吐出室142を区画部材150で区画することにより容易に形成できる。吐出ポート104eと共鳴マフラ104hとが離れて配置されていても、区画部材150で区画される領域を拡大すれば共鳴マフラ104hを容易に吐出通路104f(接続通路としての第2通路104f2)に接続できる。
【0039】
尚、側板150bの高さは位置決め面104gとシリンダヘッド104の開放側端面との高さの差より僅かに小さく設定されているとしたが、これに限定されるものではない。側板150bの高さを位置決め面104gとシリンダヘッド104の開放側端面との高さの差より僅かに大きく設定し、シリンダヘッド104にバルブブレート103側が接合することにより、側板150bの端面が押圧されて側板150bを変形させて位置決め面104gとの間で区画部材150を挟持するようにしてもよい。
【0040】
さらに側板150bの変形を利用して側板150bの外側が隔壁104aと外周壁104bを僅かに押圧するようにして、区画部材150をシリンダヘッド104に対して保持するようにしてもよい。このようにすれば区画部材150をシリンダヘッド104に確実に保持できる。
【0041】
本実施形態によれば、共鳴マフラ104hが接続される吐出通路104fは、環状に配置される吐出室142の上部領域内にて吐出室142と区画壁(区画部材150)により区画され吐出ポート104e及び共鳴マフラ104hと接続する接続通路(第2通路104f2)と、前記区画壁(区画部材150)に設けられて前記接続通路(第2通路104f2)と吐出室142とを連通する連通孔104f3とを含んで構成され、共鳴マフラ104hは、前記接続通路(第2通路104f2)よりハウジング(シリンダヘッド104)の径方向内側又は下方に向かって延設されることにより、ハウジング内に共鳴マフラ104hを配設しても吐出通路104fに容易に接続することが可能となると共に、共鳴マフラ104hを圧縮機に一体に形成しても圧縮機の体格増大を抑制できる。
【0042】
また、本実施形態によれば、環状に配置される吐出室142の周方向の一部に、前記区画壁として、環状に配置される吐出室142と前記接続通路(第2通路104f2)とを区画する区画部材150が配設されて、前記接続通路(第2通路104f2)が円弧状に形成され、その一方の端部側が(第1通路104f1を介して)吐出ポート104eに接続し、他方の端部側が共鳴マフラ104hに接続することにより、吐出ポート104eと共鳴マフラ104hとが離れた位置にあっても共鳴マフラ104hを容易に吐出通路104fに接続できる。
【0043】
また、本実施形態によれば、区画部材150は、内側の吸入室141とその外側に環状に配置される吐出室142とを区画する環状の隔壁104aと、吐出室142の外周側を規定する外周壁104bとの間に、圧入される構成とすることにより、すなわち、区画部材150の一部が隔壁104a及び外周壁104bを押圧することで区画部材150がハウジングに保持される構成とすることにより、区画部材150をハウジングに固定する部材が不要となり、コスト低減に寄与することができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、環状に配置される吐出室142における区画部材150の配設位置に、区画部材150を位置決めする位置決め面104gが形成され、区画部材150は、圧縮機の他の構成部品(バルブプレート103)に押圧されて位置決め面104gとの間に挟持される構成とすることにより、区画部材150をハウジングに固定する部材が不要となり、コスト低減に寄与することができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、共鳴マフラ104hの下部領域は、環状に配置される吐出室142の下部領域に延設されて、環状に配置される吐出室142の下部領域とオリフィス104iを介して連通し、このオリフィス104iは、環状に配置される吐出室142と内側の吸入室141とを区画する隔壁104aの最下部104a1より下側に配置されることにより、次のような効果が得られる。この領域には吸入室141が無いので、例えば共鳴マフラ104hが吸入室141によって断面積が狭められた場合等でも、貯油(液)断面積が広く、その結果マフラ空間104h1の液面変動が小さく抑えられて、マフラ空間104h1の実質的な容積変動が小さくなり、共鳴周波数が大きく変動することを抑制できる。
【0046】
次に本発明の第2の実施形態について図6及び図7により説明する。図6は第2の実施形態でのシリンダヘッドの開放端側の図、図7は第2の実施形態での共鳴マフラ部分の断面図(図6のC−C断面図)である。
【0047】
第2の実施形態(図6及び図7)において第1の実施形態(図2及び図3)と異なる部分は、第2通路(接続通路)104f2であり、第2通路(接続通路)104f2は、吐出ポート104eの軸線の延長線上に配置された略円筒状の空間をなし、吐出室142と第2通路104f2とを区画する区画壁104jはシリンダヘッド104と一体に形成されている。第2通路104f2と吐出室142とは連通孔104f3で接続されている。共鳴マフラ104hは第2通路104f2とほぼ同軸でシリンダヘッド104の径方向に延設されている。
【0048】
図6及び図7に示すように共鳴マフラ104hを配置できれば、図2及び図3に示すような区画部材150を使用することなく、第2通路(接続通路)104f2を吐出ポート104e側より形成可能となる。尚、共鳴マフラ104hは吐出ポート104eの軸線と同軸でなくてもよく、共鳴マフラ104hの一端側が第2通路(接続通路)104f2に接続可能なように、共鳴マフラ104hを配置すればよい。
【0049】
本実施形態によれば、接続通路(第2通路104f2)は、円筒状の空間をなしてハウジング(シリンダヘッド104)内に延設され、環状に配置される吐出室142と接続通路(第2通路104f2)とを区画する区画壁104jは、ハウジング(シリンダヘッド104)と一体に形成されることにより、接続通路を区画する別体の区画部材150を使用することなく接続通路を形成できる。
【0050】
また、本実施形態によれば、接続通路(第2通路104f2)は、円筒状の空間をなしてハウジング(シリンダヘッド104)内に径方向に延設され、接続通路(第2通路104f2)の延長線上に共鳴マフラ104hの一端が配置されることにより、共鳴マフラ104hを容易に接続通路に接続できる。
【0051】
次に本発明の第3の実施形態を図8により説明する。図8は第3の実施形態での共鳴マフラ部分の断面図である。
第3の実施形態(図8)において第2の実施形態(図7)と異なる部分は、吐出ポート104eの配置であり、吐出ポート104eが吐出室142の軸方向外側に配置されて、吐出ポート104eと吐出室142とを接続する吐出通路104fが軸方向に形成されている。
【0052】
吐出通路104fは接続通路をなしており、吐出室142と吐出通路104fとを区画する区画壁104jはシリンダヘッド104と一体に形成されている。吐出通路104fには共鳴マフラ104hが接続されている。
【0053】
次に本発明の第4の実施形態を図9により説明する。図9は第4の実施形態での共鳴マフラ部分の断面図である。
第4の実施形態(図9)において第2の実施形態(図7)と異なる部分は、シリンダヘッド104には吐出ポートが配置されず、例えばシリンダブロック101に吐出ポートが配置されることを想定したものである。
【0054】
シリンダヘッド104の径方向に略円筒状をなした空間を形成し、略円筒状の空間を連通孔170aを有する区画用ブッシュ170で区画して共鳴マフラ104hと第2通路(接続通路)104f2とを形成する。第2通路104f2は、第1通路104f1を介して図外の吐出ポートと接続し、また区画壁104jの連通孔104f3を介して吐出室142と接続している。
本実施形態の場合、マフラ空間104h1側から容易に第2通路(接続通路)104f2をシリンダヘッド104と一体に形成できる。
【0055】
尚、以上の実施形態では、吸入室141がハウジング(シリンダヘッド104)の径方向内側(駆動軸の軸線の延長上)に配置され、吐出室142がハウジング(シリンダヘッド104)の径方向外側に吸入室141を取り囲むように配置された圧縮機において、吐出室142と吐出ポート104eとを接続する吐出通路104fに共鳴マフラ104hを接続するものであるが、吐出室と吸入室の配置を逆にして吐出通路を吸入通路に置き換え、吸入通路に共鳴マフラを接続する圧縮機にも、本発明は同様に適用可能である。
【0056】
すなわち、吐出室がハウジング(シリンダヘッド)の径方向内側(駆動軸の軸線の延長上)に配置され、吸入室がハウジング(シリンダヘッド)の径方向外側に吐出室を取り囲むように配置された圧縮機において、吸入室と吸入ポートとを接続する吸入通路に共鳴マフラを接続するものであっても、本発明は同様に適用可能である。
【0057】
また、以上の実施形態では、可変容量圧縮機について説明したが、固定容量圧縮機であってもよく、本発明は圧縮機全般に適用可能である。
このように図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0058】
100 可変容量圧縮機
101 シリンダブロック
101a シリンダボア
102 フロントハウジング
103 バルブプレート
104 シリンダヘッド
104a 隔壁
104b 外周壁
104c 吸入ポート
104d 吸入通路
104e 吐出ポート
104f 吐出通路
104f1 第1通路
104f2 第2通路
104f3 連通孔
104g 位置決め面
104h 共鳴マフラ
104h1 マフラ空間
104h2 連通孔
104i オリフィス
104j 区画壁
110 駆動軸
111 斜板
112 ロータ
120 リンク機構
136 ピストン
140 クランク室
141 吸入室
142 吐出室
150 区画部材
150a 平板
150b 側板
160 閉塞部材
170 区画用ブッシュ
300 制御弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入室と、吐出室と、吸入側外部冷媒回路と接続する吸入ポートと、吐出側外部冷媒回路と接続する吐出ポートと、前記吸入室と前記吸入ポートとを接続する吸入通路と、前記吐出室と前記吐出ポートとを接続する吐出通路と、前記吸入通路又は前記吐出通路に接続する共鳴マフラとが形成されたハウジングと、
前記ハウジングの中心部に回転可能に支持された駆動軸と、
前記駆動軸の回転によって前記吸入室から吸入した冷媒を圧縮して前記吐出室へ吐出する圧縮機構と、を備え、
前記吸入室及び前記吐出室のうち、いずれか一方の室が前記ハウジングの径方向内側に配置され、他方の室が前記ハウジングの径方向外側に前記一方の室を取り囲むように環状に配置され、
前記共鳴マフラが前記環状に配置される室とこれに対応する前記ポートとを接続する前記通路に接続される、圧縮機であって、
前記共鳴マフラが接続される前記通路は、前記環状に配置される室の上部領域内にて前記環状に配置される室と区画壁により区画され前記ポート及び前記共鳴マフラと接続する接続通路と、前記区画壁に設けられて前記接続通路と前記環状に配置された室とを連通する連通孔とを含んで構成され、
前記共鳴マフラは、前記接続通路より前記ハウジングの径方向内側又は下方に向かって延設されることを特徴とする、圧縮機。
【請求項2】
前記環状に配置される室の周方向の一部に、前記区画壁として、前記環状に配置される室と前記接続通路とを区画する区画部材が配設されて、前記接続通路が円弧状に形成され、その一方の端部側が前記ポートに接続し、他方の端部側が前記共鳴マフラに接続することを特徴とする、請求項1記載の圧縮機。
【請求項3】
前記区画部材は、前記内側の室と前記環状に配置される室とを区画する環状の隔壁と、前記環状に配置される室の外周側を規定する外周壁との間に、圧入されることを特徴とする、請求項2記載の圧縮機。
【請求項4】
前記環状に配置される室における前記区画部材の配設位置に、前記区画部材を位置決めする位置決め面が形成され、
前記区画部材は、圧縮機の他の構成部品に押圧されて前記位置決め面との間に挟持されることを特徴とする、請求項2又は請求項3記載の圧縮機。
【請求項5】
前記接続通路は、円筒状の空間をなして前記ハウジング内に延設され、
前記環状に配置される室と前記接続通路とを区画する区画壁は、前記ハウジングと一体に形成されることを特徴とする、請求項1記載の圧縮機。
【請求項6】
前記接続通路は、円筒状の空間をなして前記ハウジング内に径方向に延設され、
前記接続通路の延長線上に前記共鳴マフラの一端が配置されることを特徴とする、請求項5記載の圧縮機。
【請求項7】
前記共鳴マフラの下部領域は、前記環状に配置される室の下部領域に延設されて、前記環状に配置される室の下部領域とオリフィスを介して連通し、
前記オリフィスは、前記環状に配置される室と前記内側の室とを区画する隔壁の最下部より下側に配置されることを特徴とする、請求項1記載の圧縮機。

【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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