説明

圧電アクチュエータ駆動回路、及びそれを備えた圧電アクチュエータ装置

【課題】高いエネルギー効率を得ることができる圧電アクチュエータ駆動回路を提供する。
【解決手段】本発明は、圧電アクチュエータ駆動回路(3)であって、駆動素子(4a)を振動的に変形させる駆動素子駆動回路(8)と、従動素子制御回路(10)と、を有し、従動素子制御回路は、電圧源(22)と、第1の端子が従動素子(4b)に接続されたコイル(28)と、このコイルの第2の端子と電圧源とを接続し、コイルの第2の端子から電圧源の方向にのみ電流を流す一方向導通素子(24)と、コイルの第2の端子とアース電位との間に接続され、制御信号により導通状態と非導通状態に切り換えられるスイッチング素子(26)と、このスイッチング素子を所定のタイミングで非導通状態とすることにより、コイルの第2の端子から電圧源に電力を回生させる制御信号を発生する制御信号生成回路(32,33)と、を有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電アクチュエータ駆動回路に関し、特に、複数の分極部を備え、所定の駆動状態において、複数の分極部のうちの一部が駆動素子として機能し、他の一部は上記駆動素子が駆動されることにより変形される従動素子として機能する圧電アクチュエータを駆動する圧電アクチュエータ駆動回路、及びそれを備えた圧電アクチュエータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
定在波型超音波モータ(ピエゾモータ)等の圧電アクチュエータは、一般に、一体の圧電素子内に複数の分極部が形成されており、それらは正転用(正方向用)分極部と、反転用(逆方向用)分極部とがある。アクチュエータを正転(正方向駆動)させる場合には、正転用(正方向用)分極部を駆動素子として機能させるために高圧電源からのパルスがコイルを介して供給され、駆動力が発生されると共に、反転用(逆方向用)分極部は、従動素子として機能する。一方、アクチュエータを反転(逆方向駆動)させる場合には、反転用(逆方向用)分極部を駆動素子として機能させるために高圧電源からのパルスがコイルを介して供給され、駆動力が発生されると共に、正転用(正方向用)分極部は、従動素子として機能する。
【0003】
特開2007−143269号公報(特許文献1)には、駆動回路及びこれを用いた撮像装置が記載されている。この駆動回路においては、従動素子として機能している分極部は、その一方の端子が常に開放状態とされ、従動素子として機能している分極部からは電流が流れないようになっている。
また、特許3192028号公報(特許文献2)には、超音波モータが記載されている。この超音波モータにおいては、従動素子として機能している分極部は、コイルを介して常に接地されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−143269号公報
【特許文献2】特許3192028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従動素子として機能している分極部は、駆動素子が駆動されることにより変形されるので、従動素子の両端には圧電効果により電圧が発生している。特開2007−143269号公報記載の駆動回路のように、従動素子として機能する分極部が常に開放状態にされていると、分極部から電力が取り出されることはなく、従動素子に発生した電圧を有効に活用することができない。また、従動素子の端子電圧すなわち従動素子の変位量は調整されない。
【0006】
また、特許3192028号公報記載の超音波モータのように、従動素子として機能する分極部がコイルを介して接地されていると、分極部に発生した起電力がコイルを介してアースに流れてしまうので、従動素子が生成した起電力が無駄に消費されることになる。また、電流がアースに流れた結果、従動素子の端子電圧すなわち従動素子の変位量が調整されるが、駆動効率の改善は限定的である。
【0007】
このように、従来の圧電アクチュエータ駆動回路においては、駆動素子の変形が従動素子により妨げられたり、駆動素子に供給されたエネルギーの一部が無駄に消費されることになり、エネルギー効率が低下するという問題がある。
【0008】
従って、本発明は、高いエネルギー効率を得ることができる圧電アクチュエータ駆動回路、及びそれを備えた圧電アクチュエータ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は、複数の分極部を備え、所定の駆動状態において、複数の分極部のうちの一部が駆動素子として機能し、他の一部は駆動素子が駆動されることにより変形される従動素子として機能する圧電アクチュエータを駆動する圧電アクチュエータ駆動回路であって、駆動素子に接続され、入力された駆動信号に基づいて駆動素子に駆動電圧を印加して、駆動素子を周期的に変形させる駆動素子駆動回路と、従動素子に接続された従動素子制御回路と、を有し、従動素子制御回路は、電圧源と、第1の端子が従動素子に接続されたコイルと、このコイルの第2の端子と電圧源との間に接続され、コイルの第2の端子から電圧源の方向にのみ電流を流す一方向導通素子と、コイルの第2の端子とアース電位との間に接続され、制御信号により導通状態と非導通状態に切り換えられるスイッチング素子と、このスイッチング素子を所定のタイミングで非導通状態とすることにより、コイルの第2の端子から電圧源に電力を回生させる制御信号を発生する制御信号生成回路と、を有することを特徴としている。
【0010】
このように構成された本発明においては、駆動素子は、駆動信号に基づいて駆動素子駆動回路により周期的に変形され、これに伴い従動素子も変形される。従動素子は従動素子制御回路に接続されており、従動素子の変形によって従動素子制御回路のコイルの第2の端子に誘起された電力は、所定のタイミングでスイッチング素子が非導通状態に切り換えられることにより、一方向導通素子を介して電圧源に回生される。
【0011】
このように構成された本発明によれば、コイルの第2の端子に誘起された電力が所定のタイミングで電圧源に回生されるので、従動素子が駆動素子の駆動の妨げとなるのを抑制することができ、又は圧電アクチュエータを駆動するエネルギー効率を向上させることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、一方向導通素子は、ダイオードである。
このように構成された本発明によれば、一方向導通素子を安価に構成することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、一方向導通素子はFETにより構成され、このFETのドレイン端子−ソース端子間の寄生ダイオードが一方向導通素子として機能する。
【0014】
このように構成された本発明によれば、FETの寄生ダイオードを一方向導通素子として利用しているので、このFETをスイッチング素子として使用することにより、同一の回路を従動素子制御回路と駆動素子駆動回路に切り換えて使用することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、電圧源は正の電圧源であり、スイッチング素子は、コイルの第1の端子から第2の端子に電流が流れる期間内の所定のタイミングで、導通状態から非導通状態に切り換えられる。
【0016】
このように構成された本発明おいては、スイッチング素子を非導通状態にしたとき、第2の端子に電圧源と同極性の正の電圧が誘起され得る、コイルの第1の端子から第2の端子に電流が流れるとき、スイッチング素子は非導通状態に切り換えられる。これにより、第2の端子に誘起された電力はアース電位に流れ込むことなく、一方向導通素子を通して正の電圧源に回生される。
このように構成された本発明によれば、第2の端子に誘起された電力を確実に電圧源に回生させることができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、電圧源は負の電圧源であり、スイッチング素子は、コイルの第2の端子から第1の端子に電流が流れる期間内の所定のタイミングで、導通状態から非導通状態に切り換えられる。
【0018】
このように構成された本発明おいては、スイッチング素子を非導通状態にしたとき、第2の端子に電圧源と同極性の負の電圧が誘起され得る、コイルの第2の端子から第1の端子に電流が流れるとき、スイッチング素子は非導通状態に切り換えられる。これにより、第2の端子に誘起された電力はアース電位に流れ込むことなく、一方向導通素子を通して負の電圧源に回生される。
このように構成された本発明によれば、第2の端子に誘起された電力を確実に電圧源に回生させることができる。
【0019】
本発明において、好ましくは、スイッチング素子はFETにより構成され、上記制御信号は、FETのゲート端子に入力され、FETのドレイン端子、ソース端子間の導通状態、非導通状態が切り換えられる。
【0020】
このように構成された本発明によれば、スイッチング素子がFETにより構成されているので、非導通状態においてもドレイン端子、ソース端子間には寄生ダイオードが存在する。このため、第2の端子の電圧が電圧源の電圧と逆極性になった場合には、第2の端子の電圧は寄生ダイオードを介してアース電位に流入する。従って、第2の端子の電圧が電圧源の電圧と逆極性になるタイミングでスイッチング素子を導通状態に切り換える必要がなく、簡単な回路でスイッチング素子の制御信号を生成することが可能になる。
【0021】
本発明において、好ましくは、制御信号生成回路は、駆動素子駆動回路に入力された駆動信号、駆動素子に印加される駆動電圧の信号、又はコイルの第1の端子電圧の信号に基づいて制御信号を生成する。
【0022】
このように構成された本発明によれば、駆動信号、駆動電圧の信号、又は第1の端子電圧の信号と、制御信号との間の位相差を調整するだけで、簡単に制御信号を生成することができる。
【0023】
また、本発明の圧電アクチュエータ装置は、ローターと、このローターを駆動する複数の分極部を備えたステーターと、複数の分極部のうちの一部の駆動素子を駆動する本発明の圧電アクチュエータ駆動回路と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
本発明の圧電アクチュエータ駆動回路、及びそれを備えた圧電アクチュエータ装置によれば、高いエネルギー効率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態による圧電アクチュエータ装置全体を示すブロック図である。
【図2】圧電アクチュエータ駆動回路に内蔵されている駆動素子駆動回路の作用を説明する(a)回路図、及び(b)タイミングチャートである。
【図3】圧電アクチュエータ駆動回路に内蔵されている従動素子制御回路の作用を説明する(a)回路図、及び(b)タイミングチャートである。
【図4】本発明の第2実施形態による圧電アクチュエータ装置全体を示すブロック図である。
【図5】圧電アクチュエータ駆動回路に内蔵されている駆動/制御回路の作用を説明する(a)回路図、及び(b)タイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
まず、図1乃至図3を参照して、本発明の第1実施形態による圧電アクチュエータ装置を説明する。
【0027】
図1は、本発明の第1実施形態による圧電アクチュエータ装置全体を示すブロック図である。図2は、圧電アクチュエータ駆動回路に内蔵されている駆動素子駆動回路の作用を説明する回路図及びタイミングチャートである。図3は、圧電アクチュエータ駆動回路に内蔵されている従動素子制御回路の作用を説明する回路図及びタイミングチャートである。
【0028】
図1に示すように、本実施形態の圧電アクチュエータ装置1は、圧電アクチュエータ2と、この圧電アクチュエータ2を駆動する圧電アクチュエータ駆動回路3と、を有する。本実施形態の圧電アクチュエータ装置1は、圧電アクチュエータ2に備えられている複数の分極部を圧電アクチュエータ駆動回路3により駆動することにより、ローター6が正転、又は反転されるように構成されている。
【0029】
図1に示すように、圧電アクチュエータ2は、分極部4a、4bと、摩擦部材5と、ローター6と、を有する。また、圧電アクチュエータ駆動回路3は、駆動素子駆動回路8と、従動素子制御回路10、正転/反転切替スイッチ11a、11bとを有する。
【0030】
分極部4a、4bは単一の圧電特性部材内に形成されており、何れか一方が駆動素子として作用し、他方が従動素子として作用するように構成されている。本実施形態においては、分極部4a、4bは、直方体状に形成された単一の圧電特性部材4cと、その一方の面に取り付けられた接地電極4dと、この接地電極4dの反対側に取り付けられた4つの電極4e、4f、4g、4hから構成されている。接地電極4dは、圧電特性部材4cの1つの面全体を覆うように圧電特性部材4cに取り付けられており、アース電位に接続されている。圧電特性部材4cの接地電極4dとは反対側の面には、4つの電極4e、4f、4g、4hが並べて取り付けられている。図1において左上に配置された電極4eと、右下に配置された電極4hは電気的に接続されており、また、右上に配置された電極4fと、左下に配置された電極4gは電気的に接続されている。これにより、電極4f、4gが配置された、図1における圧電特性部材4cの右上部分と左下部分は、分極部4aとして機能し、電極4e、4hが配置された左上部分と右下部分は、分極部4bとして機能する。なお、本明細書においては、本実施形態のように単一の圧電特性部材内に形成された分極部の一部が駆動素子として作用し、他の一部が従動素子として作用する構成についても「複数」の素子あるいは分極部と呼ぶことにする。
【0031】
図1に示す状態においては、駆動素子駆動回路8に接続されている分極部4a、即ち、圧電特性部材4cの図1における右上部分と左下部分が駆動素子として作用し、従動素子制御回路10に接続されている分極部4b、即ち、圧電特性部材4cの左上部分と右下部分が従動素子として作用する。また、各分極部は、駆動素子として作用する場合には、駆動素子駆動回路8から超音波帯域の交番電圧が印加されることにより変形され、超音波振動されるように構成されている。一方、各分極部は、従動素子として作用する場合には、駆動素子の変形と共に変形されるように構成されている。なお、本実施形態においては、圧電アクチュエータ2は、分極部4a、4bのみを備えているが、本発明の圧電アクチュエータ駆動回路は、多数組の分極部を備えた圧電アクチュエータに適用することもできる。
【0032】
摩擦部材5はローター6に対して与圧された突起であり、圧電特性部材の振動と共に振動されるように構成されている。摩擦部材5が振動されると、これに押し付けられているローター6が所定の方向に回転するように構成されている。
【0033】
正転/反転切替スイッチ11aは、駆動素子駆動回路8と分極部4a、4bの間に接続され、駆動素子駆動回路8の出力電圧が、分極部4a又は4bの何れかに印加されるように切り換えられる。正転/反転切替スイッチ11bは、従動素子制御回路10と分極部4a、4bの間に接続され、従動素子制御回路10の出力電圧が、分極部4a又は4bの何れかに接続されるように切り換えられる。本実施形態においては、図1に示すように、駆動素子駆動回路8の出力が分極部4aに印加され、分極部4bが従動素子制御回路10に接続されるように切り換えられるとローター6が正転される。逆に、駆動素子駆動回路8の出力が分極部4bに印加され、分極部4aが従動素子制御回路10に接続されるように切り換えられるとローター6が反転される。
【0034】
駆動素子駆動回路8は、スイッチング素子制御回路12と、電圧源である高圧電源14と、駆動ハイ側スイッチング素子16と、駆動ロー側スイッチング素子18と、駆動コイル20と、を有する。
【0035】
スイッチング素子制御回路12は、超音波帯域の駆動信号と、イネーブル信号に基づいて、駆動ハイ側スイッチング素子16、及び駆動ロー側スイッチング素子18を導通状態又は非導通状態に切り換えるように構成されている。具体的には、スイッチング素子制御回路12は、種々のロジックIC等により構成することができる。
【0036】
高圧電源14は、正の高電圧を発生する電圧源であり、駆動ハイ側スイッチング素子16に接続されている。駆動ハイ側スイッチング素子16が導通状態に切り換えられると、駆動素子には、駆動コイル20を介して高電圧が印加されるように構成されている。
【0037】
駆動ハイ側スイッチング素子16は、本実施形態においては、Nチャンネル型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)により構成されており、そのゲート端子がスイッチング素子制御回路12に接続され、ドレイン端子が高圧電源14に接続され、ソース端子が駆動コイル20に接続されている。
【0038】
駆動ロー側スイッチング素子18は、本実施形態においては、Nチャンネル型のMOSFETにより構成されており、そのゲート端子がスイッチング素子制御回路12に接続され、ドレイン端子が駆動コイル20に接続され、ソース端子が接地されている。
【0039】
駆動コイル20は、その第1の端子である駆動端子20aを介して駆動素子として機能する分極部4a又は4bに接続され、第2の端子20bが、前述のように、駆動ハイ側スイッチング素子16のソース端子、及び駆動ロー側スイッチング素子18のドレイン端子に接続されている。ここで、駆動コイル20と接続された分極部4aまたは4bは、LC共振回路として作用し、圧電アクチュエータ2の共振周波数近傍において駆動端子20aに適切な高電圧が発生するように、駆動コイル20のインダクタンス値は選択されている。
【0040】
従動素子制御回路10は、電圧源である高圧電源22と、一方向導通素子であるダイオード24と、スイッチング素子である従動ロー側スイッチング素子26と、従動コイル28と、コンパレータ30と、位相シフタ32と、を有する。なお、本実施形態において、コンパレータ30及び位相シフタ32は、制御信号生成回路として機能する。
【0041】
高圧電源22は、正の高電圧を発生する電圧源であり、ダイオード24のカソード側に接続されている。なお、図1においては、高圧電源14と高圧電源22は別々に図示されているが、これらは、実際には同一の高圧電源から構成されている。即ち、ダイオード24のカソードと駆動ハイ側スイッチング素子16のドレイン端子は同一の電圧源に接続されている。
【0042】
ダイオード24は、そのカソードが高圧電源22に接続され、アノードが従動ロー側スイッチング素子26及び従動コイル28に接続されている。
従動ロー側スイッチング素子26は、本実施形態においては、Nチャンネル型のMOSFETにより構成されており、そのゲート端子が位相シフタ32の出力端子に接続され、ドレイン端子がダイオード24のアノード及び従動コイル20に接続され、ソース端子が接地されている。
【0043】
従動コイル28は、その第1の端子である従動端子28aを介して従動素子として機能する分極部4a又は4bに接続され、第2の端子28bが、前述のように、ダイオード24のアノード、及び従動ロー側スイッチング素子26のドレイン端子に接続されている。
【0044】
コンパレータ30は、従動端子28aから電圧信号が入力され、この電圧信号を所定の電圧値と比較して、ハイレベルの信号又はローレベルの信号を位相シフタ32に出力するように構成されている。これにより、従動端子28aの電圧信号は、ハイレベル又はローレベルに二値化されたデジタル信号に変換される。
【0045】
位相シフタ32は、コンパレータ30から入力されたパルス状のデジタル信号を所定時間遅らせて出力し、入力信号の位相を所定量シフトさせるように構成されている。位相シフタ32の出力信号は、制御信号として従動ロー側スイッチング素子26のゲート端子に接続され、従動ロー側スイッチング素子26の導通状態と、非導通状態を切り替えるように構成されている。位相シフタ32は、具体的には、ロジックIC、オペアンプ、電気抵抗、コンデンサ等により構成されている。
【0046】
次に、図2を参照して、圧電アクチュエータ駆動回路3に内蔵されている駆動素子駆動回路8の作用を説明する。図2(a)は駆動素子駆動回路8を示し、(b)は駆動素子駆動回路8の作用を示すタイミングチャートである。図2(b)のタイミングチャートは、上段から順に、駆動信号、イネーブル信号、駆動ハイ側スイッチング素子16の状態、駆動ロー側スイッチング素子18の状態、駆動コイル20の第2の端子20bの電圧を示している。
【0047】
まず、スイッチング素子制御回路12には、図2(b)上段に示す矩形波状の駆動信号が入力される。駆動信号は、圧電アクチュエータ2の共振周波数近傍の周波数になるよう選択されており、駆動端子20aに適切な高電圧が発生するようになっている。図2(b)2段目のイネーブル信号は、スイッチング素子制御回路12の作動、非作動を設定する信号であり、圧電アクチュエータ駆動回路3が作動されるときは、常にHレベルに設定される。また、イネーブル信号がLレベルにされると、駆動ハイ側スイッチング素子16及び駆動ロー側スイッチング素子18は、駆動信号に関わらず、常に非導通状態となる。
【0048】
図2(b)に示すように、スイッチング素子制御回路12は、駆動信号がLレベルにある場合には、駆動ハイ側スイッチング素子16を非導通状態(オフ)、駆動ロー側スイッチング素子18を導通状態(オン)にする。具体的には、スイッチング素子制御回路12は、駆動ハイ側スイッチング素子16及び駆動ロー側スイッチング素子18の各ゲート端子に信号を送り、これらのFETのオン、オフを切り換える。駆動ハイ側スイッチング素子16がオフ、駆動ロー側スイッチング素子18がオンにされると、駆動コイル20の第2の端子20bは、駆動ロー側スイッチング素子18を介して接地されるので、0Vとなる。
【0049】
次に、駆動信号がLレベルからHレベルに立ち上がると、駆動ロー側スイッチング素子18は直ちにオフに切り換えられ、駆動ハイ側スイッチング素子16は、所定の無駄時間(Dead-Time)T1が経過した後、オンに切り換えられる。駆動ロー側スイッチング素子18がオフ、駆動ハイ側スイッチング素子16がオンに切り換えられると、駆動コイル20の第2の端子20bは、駆動ハイ側スイッチング素子16を介して高圧電源14に接続され、第2の端子20bの端子電圧は、高圧電源14の電圧に立ち上がる。
【0050】
なお、駆動ロー側スイッチング素子18がオフにされた後、駆動ハイ側スイッチング素子16がオンにされるまでの無駄時間T1の間は、駆動ロー側スイッチング素子18、駆動ハイ側スイッチング素子16共にオフであり、このような無駄時間T1を設けることにより高圧電源14とアース電位の間の短絡を防止している。この無駄時間T1(図2(b)の斜線部分)の間は、駆動コイル20の第2の端子20bはハイインピーダンス状態となり、第2の端子20bの電圧は、駆動端子20aの電位と駆動コイル2の電流方向と電流値に依存した値となる。
【0051】
続いて、駆動信号がHレベルからLレベルに立ち下がると、駆動ハイ側スイッチング素子16は直ちにオフに切り換えられ、駆動ロー側スイッチング素子18は、所定の無駄時間T1が経過した後、オンに切り換えられる。駆動ハイ側スイッチング素子16がオフ、駆動ロー側スイッチング素子18がオンにされると、駆動コイル20の第2の端子20bは、駆動ロー側スイッチング素子18を介して接地されるので、再び0Vとなる。
【0052】
以上の作用を繰り返すことにより、駆動コイル20には、パルス状の電圧が印加される。このパルス状の電圧が駆動コイル20のインダクタンス及び駆動素子の容量成分(図1の状態では分極部4aの容量成分)と共振することにより、駆動素子にパルス状の高電圧が印加され、駆動素子が振動的に変形される。
【0053】
次に、図3を参照して、圧電アクチュエータ駆動回路3に内蔵されている従動素子制御回路10の作用を説明する。図3(a)は従動素子制御回路10を示し、(b)は従動素子制御回路10の作用を示すタイミングチャートである。図3(b)のタイミングチャートは、上段から順に、従動コイル28の第2の端子28bの電圧VL、従動ロー側スイッチング素子26を制御する制御信号、従動コイル28に流れる電流IL、従動コイル28の第1の端子である従動端子28aの電圧Vfを示している。
【0054】
駆動素子(図1の状態では分極部4a)が駆動電圧により変形されると、これに伴い従動素子(図1の状態では分極部4b)も変形される。この変形により、従動素子は起電力を発生する。この起電力により従動端子28aには振動的な電圧が発生すると共に、従動コイル28には電流が流れる。
【0055】
まず、従動コイル28に流れる電流ILが正方向(従動コイル28の第2の端子28bから従動端子28aへ向かう方向)である場合には、従動コイル28の第2の端子28bには負の高電圧が発生する。逆に、従動コイル28に流れる電流ILが負方向(従動コイル28の従動端子28aから第2の端子28bへ向かう方向)である場合には、従動コイル28の第2の端子28bには正の高電圧が発生する。
【0056】
図3(b)の時刻t0〜t1においては、電流ILは正であるため、第2の端子28bには負の高電圧が現れ得る。しかしながら、時刻t0〜t1では制御信号がHレベルであるため、従動ロー側スイッチング素子26が導通状態(オン)にされており、第2の端子28bは従動ロー側スイッチング素子26を介して接地されているので、第2の端子28bの電圧VLは0Vに維持される。また、時刻t1〜t2においては、電流ILは負であるため、第2の端子28bには正の高電圧が現れ得るが、この期間も従動ロー側スイッチング素子26がオンであるため、第2の端子28bの電圧VLは0Vに維持される。
【0057】
次いで、時刻t2において、制御信号がLレベルに変更されると、従動ロー側スイッチング素子26は非導通状態(オフ)に切り換えられるので、第2の端子28bに現れる正の高電圧は、アースへ流れることなく、ダイオード24を介して高圧電源22に回生される(時刻t2〜t3)。
【0058】
さらに、時刻t3において、電流ILは負から正に変化し、第2の端子28bには負の高電圧が発生し得るようになる。しかしながら、従動ロー側スイッチング素子26であるMOSFETのドレイン端子、ソース端子間には、ソース側をアノード、ドレイン側をカソードとする寄生ダイオード(破線で図示)が形成されている。このため、第2の端子28b現れた負の電圧は、従動ロー側スイッチング素子26の寄生ダイオードを介してアースに流れ、第2の端子28bの電圧VLは0Vになる(図3(b)の時刻t3)。
【0059】
即ち、時刻t3においては、制御信号は依然としてLレベルであり、従動ロー側スイッチング素子26はオフにされたままであるが、第2の端子28bに発生する負の電圧は、従動ロー側スイッチング素子26のもつ寄生ダイオードにより接地される。このため、従動ロー側スイッチング素子26として、寄生ダイオードをもつFETを使用した場合には、従動コイル28に流れる電流が負から正に変化するとき(図3(b)の時刻t3)に、制御信号をHレベルに切り換えることなく、第2の端子28bを接地することができる。
【0060】
次いで、時刻t4において、制御信号はHレベルに切り換えられ、従動ロー側スイッチング素子26がオンにされる。これにより、第2の端子28bが接地される。しかしながら、上記のように、第2の端子28bに発生する負の電圧は、従動ロー側スイッチング素子26の寄生ダイオードによって既に接地されているので、制御信号をHレベルに切り換えるタイミングは、電流ILが再び負に変化する時刻t5の前であれば、任意に設定することができる。即ち、本実施形態においては、制御信号をHレベルに切り換えるタイミングは、時刻t3から時刻t5の間の任意のタイミングに設定することができる。
【0061】
本実施形態においては、従動ロー側スイッチング素子26に入力される制御信号は、従動端子28aに発生する電圧に基づいて、コンパレータ30及び位相シフタ32により生成される。まず、従動端子28aの電圧信号は、コンパレータ30によって、Hレベル又はLレベルの値をとるパルス状のデジタル信号に変換される。コンパレータ30から出力されたパルス状の信号を位相シフタ32により所定時間遅らせて位相を調整することにより、制御信号を生成することができる。
【0062】
なお、駆動素子駆動回路8に入力される駆動信号、駆動端子20aに発生する電圧の信号、及び従動端子28aに発生する電圧信号は、回転速度や負荷トルクなどの状態により位相関係がわずかに動くので、位相シフタ32による遅れ時間を適宜設定することにより、所望のモータ特性が得られるよう、これらの信号から適切なものを選択して、制御信号を生成すればよい。
【0063】
以上の作用を繰り返すことにより、従動コイル28の第1の端子である従動端子28aの電圧Vfは、図3(b)の最下段に示すように周期的に変化される。このように従動端子28aの電圧Vfが変化されることにより、従動素子(図1の状態では分極部4b)が、駆動素子(図1の状態では分極部4a)の振動的な変形を妨げることが少なくなり、圧電アクチュエータ2のエネルギー効率が改善される。
【0064】
従動端子28aの電圧Vfの波形は、従動コイル28に流れる電流ILが負である期間(時刻t1〜t3)のうちのどのタイミングで従動ロー側スイッチング素子26を非導通状態(オフ)に切り換えるか(図3においては時刻t2)によって変化する。エネルギー効率を向上させるために最適な切り替えのタイミングは駆動する圧電アクチュエータ2の特性により異なるが、適切なタイミングで従動ロー側スイッチング素子26をオフにすることにより、エネルギー効率を向上させることができる。なお、本実施形態においては、従動コイル28の電流が負の極大値となる、従動端子28aの電圧信号が正から負に変化するのタイミング(図3における時刻t2)で従動ロー側スイッチング素子26をオフにすることにより、エネルギー効率を高めることに成功している。好ましくは、従動端子28a(従動コイル28の第1の端子)の電圧が正から負に変化する点(図3における時刻t2)から、従動端子28aの電圧が負から正に変化する点近傍(図3における時刻t4)の期間、従動ロー側スイッチング素子をオフにする。
【0065】
本発明の第1実施形態の圧電アクチュエータ装置によれば、従動コイル28の第2の端子28bに誘起された電力が所定のタイミングで高圧電源22に回生され、かつ、その結果、従動素子(図1の状態における分極部4b)の端子電圧すなわち従動素子の変位量が調整され、従動素子が駆動素子(図1の状態における分極部4a)の駆動の妨げとなるのを抑制することができ、圧電アクチュエータ2を駆動するエネルギー効率を向上させることができる。
【0066】
また、本発明の第1実施形態の圧電アクチュエータ装置によれば、ダイオード24を一方向導通素子として使用して、これを介して電力を高圧電源22に回生しているので、一方向導通素子を安価に構成することができる。
【0067】
さらに、本発明の第1実施形態の圧電アクチュエータ装置によれば、従動コイル28の電流が負(第1の端子から第2の端子の方向に電流が流れている状態)の期間に、従動ロー側スイッチング素子26は非導通状態(オフ)に切り換えられる。これにより、第2の端子28bに電力が誘起され、ダイオード24を通して確実に高圧電源22に回生させることができる。
【0068】
また、本発明の第1実施形態の圧電アクチュエータ装置によれば、従動ロー側スイッチング素子26がMOSFETにより構成されているので、非導通状態(オフ)においてもドレイン端子、ソース端子間には寄生ダイオードが存在する。このため、第2の端子28bの電圧が高圧電源22の電圧と逆極性の負電圧になった場合には、第2の端子28bの電圧は寄生ダイオードを介してアース電位に流入する。従って、第2の端子28bの電圧が高圧電源22の電圧と逆極性の負電圧になるタイミングで従動ロー側スイッチング素子26を導通状態に切り換える必要がない。そのため、従動コイル28の第1の端子28aの電位の正負により従動ロー側スイッチング素子26の制御信号を生成する際、コンパレータ30の遅れ時間を位相シフタで調整するときに、従動ロー側スイッチング素子26をオフにするタイミングを、従動コイル28の第1の端子28aの電位が正から負に切り替わるタイミングさえ一致させれば、従動ロー側スイッチング素子26をオンにするタイミングは、該電位が負から正に切り替わるタイミングに必ずしも一致させる必要は無い。これにより、簡単な回路で従動ロー側スイッチング素子26の制御信号を生成することが可能になる。
【0069】
さらに、本発明の第1実施形態の圧電アクチュエータ装置によれば、制御信号は、従動素子に発生する電圧波形の信号に基づいて生成されるので、この従動端子の電圧波形をコンパレータ30でデジタル化し、位相シフタ32で位相差を調整するだけで、簡単に制御信号を生成することができる。
【0070】
また、上述した本発明の第1実施形態においては、高圧電源14として正の電圧源を使用し、従動コイル28の第1の端子から第2の端子に電流が流れているとき、従動ロー側スイッチング素子をオフに切り換え、電力を高圧電源14に回生させていた。変形例として、高圧電源に負の電圧源を使用し、従動コイル28の第2の端子から第1の端子に電流が流れているとき、従動ロー側スイッチング素子をオフに切り換え、電力を高圧電源に回生さることもできる。即ち、従動コイル28の第2の端子から第1の端子に電流が流れているとき、従動ロー側スイッチング素子をオフに切り換えることにより、第2の端子には負の電圧が発生するので、負の電圧源に電力を回生させることができる。
【0071】
次に、図4及び図5を参照して、本発明の第2実施形態の圧電アクチュエータ装置を説明する。本実施形態の圧電アクチュエータ装置は、圧電アクチュエータ駆動回路の構成が、上述した第1実施形態とは異なる。従って、ここでは、本実施形態の第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の点については説明を省略する。
図4は、本発明の第2実施形態による圧電アクチュエータ装置全体を示すブロック図である。図5は、圧電アクチュエータ駆動回路に内蔵されている駆動/制御回路の作用を説明する回路図及びタイミングチャートである。
【0072】
図4に示すように、本実施形態の圧電アクチュエータ装置100に備えられている圧電アクチュエータ駆動回路103は、2つの駆動/制御回路108、110が内蔵されている。上述した第1実施形態においては、駆動素子駆動回路8は常に駆動素子として作用する分極部に接続され、従動素子制御回路10は、常に従動素子として作用する分極部に接続されていた。これに対して、本実施形態においては、駆動/制御回路108は常に分極部4bに接続され、駆動/制御回路110は常に分極部4aに接続されている。ここで、駆動/制御回路110は、分極部4aが駆動素子として機能する場合には駆動素子駆動回路として機能し、分極部4aが従動素子として機能する場合には従動素子制御回路として機能する。同様に、駆動/制御回路108は、分極部4bが駆動素子として機能する場合には駆動素子駆動回路として機能し、分極部4bが従動素子として機能する場合には従動素子制御回路として機能する。
【0073】
図4に示すように、駆動/制御回路108は、スイッチング素子制御回路112と、駆動/制御切換スイッチ113と、電圧源である高圧電源114と、Hレベル信号源115と、ハイ側スイッチング素子116と、ロー側スイッチング素子118と、コイル120と、コンパレータ119と、位相シフタ121と、を有する。同様に、駆動/制御回路110は、スイッチング素子制御回路123と、駆動/制御切換スイッチ125と、電圧源である高圧電源122と、Hレベル信号源127と、ハイ側スイッチング素子124と、ロー側スイッチング素子126と、コイル128と、コンパレータ130と、位相シフタ132と、を有する。駆動/制御回路108と駆動/制御回路110は同一の構成を備えており、回路の切り換えにより、駆動素子駆動回路又は従動素子制御回路として機能する。
【0074】
さらに、圧電アクチュエータ駆動回路103は、駆動信号の信号源(図示せず)と駆動/制御回路108、110の間に接続された切換スイッチ111を有する。本実施形態においては、この切換スイッチ111により駆動信号が入力された方の駆動/制御回路が駆動素子駆動回路として機能し、他方の駆動/制御回路が従動素子制御回路として機能する。図4に示されている状態においては、駆動信号が駆動/制御回路108に入力され、Hレベル信号源115がスイッチング素子制御回路112に接続され、位相シフタ132がスイッチング素子制御回路123に接続されている。この状態においては、駆動/制御回路108が駆動素子駆動回路として機能し、駆動/制御回路110が従動素子制御回路として機能する。また、駆動信号が駆動/制御回路110に入力され、Hレベル信号源127がスイッチング素子制御回路123に接続され、位相シフタ121がスイッチング素子制御回路112に接続された状態においては、駆動/制御回路108が従動素子制御回路として機能し、駆動/制御回路110が駆動素子駆動回路として機能する。
【0075】
本実施形態における駆動/制御回路108、110の構成は、第1実施形態における従動素子制御回路10とほぼ同一である。第1実施形態の従動素子制御回路10においては、高圧電源22と従動ロー側スイッチング素子26の間にダイオード24が接続されていたのに対し、本実施形態においては、駆動/制御回路108の高圧電源114とロー側スイッチング素子118の間には、ハイ側スイッチング素子116として、MOSFETが接続されている。
【0076】
次に、図5を参照して、圧電アクチュエータ駆動回路103に内蔵されている駆動/制御回路108の作用を説明する。図5(a)は駆動/制御回路108を示し、(b)は駆動/制御回路108の作用を示すタイミングチャートである。図5(b)のタイミングチャートは、上段から順に、駆動信号、イネーブル信号、駆動ハイ側スイッチング素子116の状態、駆動ロー側スイッチング素子118の状態、コイル120の第2の端子120bの電圧を示している。また、図5(b)のタイミングチャートの前半部分は駆動/制御回路108が駆動素子駆動回路として機能する場合の作用を示し、タイミングチャートの後半部分は駆動/制御回路108が従動素子制御回路として機能する場合の作用を示している。
【0077】
まず、スイッチング素子制御回路112には、図5(b)上段に示す矩形波状の駆動信号が入力される。図5(b)2段目のイネーブル信号は、スイッチング素子制御回路112の作動状態を設定する信号であり、駆動/制御回路108が駆動素子駆動回路として機能する場合には、常にHレベルに設定される。また、後述するように、駆動/制御回路108が従動素子制御回路として機能する場合には、位相シフタ121の出力信号が、イネーブル信号としてスイッチング素子制御回路112に入力される。
【0078】
図5(b)の前半部分に示すように、駆動/制御回路108を、駆動素子駆動回路として機能させる場合には、スイッチング素子制御回路112に駆動信号が入力されると共に、Hレベル信号源115からイネーブル信号として常にHレベルの信号が入力される。これにより、ハイ側スイッチング素子116及びロー側スイッチング素子118は、第1実施形態における駆動ハイ側スイッチング素子16及び駆動ロー側スイッチング素子18と同様に制御され、コイル120を介して駆動素子が駆動される。
【0079】
また、図5(b)の後半部分に示すように、駆動/制御回路108を従動素子制御回路として機能させる場合には、スイッチング素子制御回路112には、駆動信号は入力されず(Lレベルに維持される)、また、位相シフタ121の出力信号がイネーブル信号として入力される。
【0080】
まず、ハイ側スイッチング素子116は、駆動信号がLレベルに維持されることにより、非導通状態(オフ)に維持される。一方、ロー側スイッチング素子118は、イネーブル信号がHレベルの間は導通状態(オン)に切り換えられ、イネーブル信号がLレベルにされると非導通状態(オフ)に切り換えられる。ハイ側スイッチング素子116及びロー側スイッチング素子118が共に非導通状態に切り換えられている間は、コイル120の第2の端子120bはハイインピーダンス状態となり、第2の端子120bの電圧は、第1の端子120aの電位とコイル120の電流方向と電流値に依存した値となる。
なお、イネーブル信号がLレベルにされている間は、駆動信号に関わらずハイ側スイッチング素子116及びロー側スイッチング素子118は常に非導通状態とされる。従って、図5(b)の後半部分に破線で示すような駆動信号が加えられたとしても、ハイ側スイッチング素子116は非導通状態に維持される。
【0081】
ここで、ハイ側スイッチング素子116を構成するMOSFETのドレイン端子、ソース端子間には、ソース側をアノード、ドレイン側をカソードとする寄生ダイオード(破線で図示)が形成されている。このため、MOSFETであるハイ側スイッチング素子116をオフの状態に維持することにより、ハイ側スイッチング素子116は、第1実施形態におけるダイオード24と同様に機能する。従って、駆動/制御回路108を、従動素子制御回路として機能させる場合には、ハイ側スイッチング素子116は、上記のように常にオフにされている。また、上記のように、スイッチング素子制御回路112には、コンパレータ119及び位相シフタ121を介してイネーブル信号が、制御信号として入力される。これにより、ロー側スイッチング素子118がオン、オフされ、ロー側スイッチング素子118がオフにされている期間の一部で、コイル120の第2の端子120bに現れる正の高電圧が高圧電源114に回生される。このように、駆動/制御回路108を第1実施形態における従動素子制御回路10と同様に機能させることができる。
【0082】
同様に、駆動/制御回路110においては、高圧電源122とロー側スイッチング素子126の間には、ハイ側スイッチング素子124として、MOSFETが接続されている。駆動/制御回路110を従動素子制御回路として機能させる場合には、ハイ側スイッチング素子124は常にオフに維持されると共に、スイッチング素子制御回路123には、コンパレータ130及び位相シフタ132を介して制御信号が入力される。また、駆動/制御回路110を駆動素子駆動回路として機能させる場合には、スイッチング素子制御回路123に駆動信号が入力されると共に、Hレベル信号源127からイネーブル信号として常にHレベルの信号が入力される。
【0083】
なお、本実施形態においては、制御信号は、従動端子の電圧波形(駆動/制御回路108又は110が従動素子制御回路として機能しているときのコイルの第1の端子120a、128aにおける電圧波形)に基づいて生成される。上述したように、制御信号は所望のモータ特性が得られるよう、位相シフタにおける遅れ時間を適宜設定することにより、駆動信号、又は、駆動端子の電圧波形(駆動/制御回路108が駆動素子駆動回路として機能しているときは第1の端子120a、駆動/制御回路110が駆動素子駆動回路として機能しているときは第1の端子128aにおける電圧波形)の電圧波形から生成すればよい。
【0084】
本発明の第2実施形態の圧電アクチュエータ装置100によれば、MOSFETの寄生ダイオードを一方向導通素子として利用しているので、このMOSFETをハイ側スイッチング素子116、124として使用することにより、同一の駆動/制御回路108、110を従動素子制御回路と駆動素子駆動回路に切り換えて使用することができる。
【0085】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、圧電アクチュエータ駆動回路は、ローターを駆動する圧電アクチュエータの駆動に使用されていたが、本発明の圧電アクチュエータ駆動回路は、リニア型のアクチュエータ等、任意の圧電アクチュエータの駆動に適用することができる。
【0086】
また、上述した実施形態においては、圧電アクチュエータ駆動回路は、正転及び反転駆動が可能に構成されていたが、本発明を、一方向の駆動のみ可能な圧電アクチュエータ駆動回路に適用することもできる。
また、図1あるいは図4に示した圧電アクチュエータのほかに、複数の分極部を備えるものであれば、任意の積層方式、任意の分極方式、任意の配線方式の圧電アクチュエータの駆動に適用することができる。
【0087】
さらに、上述した実施形態においては、正の高圧電源を使用して駆動素子を駆動していたが、高圧電源として、負の高圧電源を使用することもできる。また、上述した実施形態においては、Nチャンネル型のMOSFETをスイッチング素子として使用していたが、高圧電源の極性等を考慮して、Pチャンネル型のMOSFETをスイッチング素子として使用することもできる。
【符号の説明】
【0088】
1 圧電アクチュエータ装置
2 圧電アクチュエータ
3 圧電アクチュエータ駆動回路
4a、4b 分極部(駆動素子、従動素子)
5 摩擦部材
6 ローター
8 駆動素子駆動回路
10 従動素子制御回路
11a、11b 正転/反転切替スイッチ
12 スイッチング素子制御回路
14 高圧電源(電圧源)
16 駆動ハイ側スイッチング素子
18 駆動ロー側スイッチング素子
20 駆動コイル
20a 駆動端子
20b 第2の端子
22 高圧電源(電圧源)
24 ダイオード(一方向導通素子)
26 従動ロー側スイッチング素子
28 従動コイル(コイル)
28a 従動端子(第1の端子)
28b 第2の端子
30 コンパレータ(制御信号生成回路)
32 位相シフタ(制御信号生成回路)
100 本発明の第2実施形態の圧電アクチュエータ装置
103 圧電アクチュエータ駆動回路
108 駆動/制御回路
110 駆動/制御回路
111 切換スイッチ
112 スイッチング素子制御回路
113 駆動/制御切換スイッチ
114 高圧電源(電圧源)
115 Hレベル信号源
116 ハイ側スイッチング素子(一方向導通素子)
118 ロー側スイッチング素子
119 コンパレータ(制御信号生成回路)
120 コイル(コイル)
120a 第1の端子
121 位相シフタ(制御信号生成回路)
123 スイッチング素子制御回路
122 高圧電源(電圧源)
124 ハイ側スイッチング素子(一方向導通素子)
125 駆動/制御切換スイッチ
126 ロー側スイッチング素子
127 Hレベル信号源
128 コイル(コイル)
128a 第1の端子
130 コンパレータ(制御信号生成回路)
132 位相シフタ(制御信号生成回路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分極部を備え、所定の駆動状態において、上記複数の分極部のうちの一部が駆動素子として機能し、他の一部は上記駆動素子が駆動されることにより変形される従動素子として機能する圧電アクチュエータを駆動する圧電アクチュエータ駆動回路であって、
上記駆動素子に接続され、入力された駆動信号に基づいて上記駆動素子に駆動電圧を印加して、上記駆動素子を周期的に変形させる駆動素子駆動回路と、
上記従動素子に接続された従動素子制御回路と、を有し、
上記従動素子制御回路は、
電圧源と、
第1の端子が上記従動素子に接続されたコイルと、
このコイルの第2の端子と上記電圧源との間に接続され、上記コイルの第2の端子から上記電圧源の方向にのみ電流を流す一方向導通素子と、
上記コイルの第2の端子とアース電位との間に接続され、制御信号により導通状態と非導通状態に切り換えられるスイッチング素子と、
このスイッチング素子を所定のタイミングで非導通状態とすることにより、上記コイルの第2の端子から上記電圧源に電力を回生させる制御信号を発生する制御信号生成回路と、
を有することを特徴とする圧電アクチュエータ駆動回路。
【請求項2】
上記一方向導通素子は、ダイオードである請求項1記載の圧電アクチュエータ駆動回路。
【請求項3】
上記一方向導通素子はFETにより構成され、このFETのドレイン端子−ソース端子間の寄生ダイオードが上記一方向導通素子として機能する請求項1記載の圧電アクチュエータ駆動回路。
【請求項4】
上記電圧源は正の電圧源であり、上記スイッチング素子は、上記コイルの第1の端子から第2の端子に電流が流れる期間内の所定のタイミングで、導通状態から非導通状態に切り換えられる請求項1乃至3の何れか1項に記載の圧電アクチュエータ駆動回路。
【請求項5】
上記電圧源は負の電圧源であり、上記スイッチング素子は、上記コイルの第2の端子から第1の端子に電流が流れる期間内の所定のタイミングで、導通状態から非導通状態に切り換えられる請求項1乃至3の何れか1項に記載の圧電アクチュエータ駆動回路。
【請求項6】
上記スイッチング素子はFETにより構成され、上記制御信号は、FETのゲート端子に入力され、FETのドレイン端子、ソース端子間の導通状態、非導通状態が切り換えられる請求項1乃至4の何れか1項に記載の圧電アクチュエータ駆動回路。
【請求項7】
上記制御信号生成回路は、上記駆動素子駆動回路に入力された上記駆動信号、上記駆動素子に印加される上記駆動電圧の信号、又は上記コイルの第1の端子電圧の信号に基づいて上記制御信号を生成する請求項1乃至5の何れか1項に記載の圧電アクチュエータ駆動回路。
【請求項8】
ローターと、
このローターを駆動する複数の分極部を備えたステーターと、
上記複数の分極部のうちの一部の駆動素子を駆動する請求項1乃至6の何れか1項に記載の圧電アクチュエータ駆動回路と、
を有することを特徴とする圧電アクチュエータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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