説明

圧電モータ及びその製造方法

【課題】ボンディングワイヤーを用いた煩雑な配線作業を省略することができ、かつ組み立てに際しての部品点数を少なくすることができ、小型化を進めることができる圧電モータを提供する。
【解決手段】ロータと、ロータを回転駆動するためにロータに接触される駆動部4が一面に設けられたステータ1とを備え、ステータ1が、ステータ本体2と、ステータ本体2の一面に積層された複数の圧電素子3と、ステータ本体2と一体化されて設けられた電極配線板5とを備え、複数の圧電素子3と電極配線板5上の複数の電極6とが、ステータ本体2の表面から電極6に至る導電膜からなる複数の配線7により電気的に接続されている、圧電モータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の圧電素子を用いた圧電モータに関し、より詳細には、複数の圧電素子が搭載されているステータを振動させて、ステータに接触されるロータを駆動する圧電モータ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電効果により生じる超音波振動を利用した圧電モータが種々提案されている。圧電モータは、圧電素子により生じる超音波振動を利用するため、超音波モータとも称されている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、図12に示す超音波モータが開示されている。
【0004】
図12に示す超音波モータ101は、固定子102と、固定子102に接触され、移動される移動子103とを有する。固定子102には、複数の圧電素子104が固定されている。圧電素子104は、圧電体104aと、圧電体104aの両端面に設けられた電極104b,104cとを有する。
【0005】
固定子102は、水平方向に延びる固定子本体102aを有する。この固定子本体102aから下方に突出するように、複数の突起102bが設けられている。この複数の突起102bの側面に圧電素子104が一体化されている。
【0006】
他方、固定子本体102aの上面においても、複数の突起102cが形成されている。突起102cは、作用部を構成している。突起102cの先端が、移動子103に接触されている。
【0007】
また、上記固定子本体102aは、支持部材105に連ねられている。支持部材105は、上記固定子本体102aの側面に連結されている支持部105aと、他の部材に固定するための固定部105bとを有する。固定部105bにおいて、超音波モータ101が他の部材や設置場所に固定される。
【0008】
上記固定子102、圧電体104a及び支持部材105は、チタン酸ジルコン酸鉛からなり一体に構成されている。
【0009】
ここでは、圧電素子104aが圧電効果により励振されると、それによって突起102cが振動し、該振動により移動子103がその長さ方向に移動される。
【0010】
他方、特許文献1には、図13に示すリング状の超音波モータも開示されている。リング状の超音波モータ111では、リング状の固定子112が、リング状の固定子112の開口部に配置された支持部材113により支持されている。すなわち、支持部材113は、固定子112の内周面に連結された支持部113aと、支持部113aの内側に設けられた固定部113bとを有する。固定部113bが、他の部材や設置場所に固定される部分である。ここでは、リング状の固定子112の外周面に複数の電極114が設けられており、内周面に電極114と部分的に対向する複数の電極115が配置されている。そして、リング状の固定子112は圧電体からなり、図示の矢印で示す方向に分極されている。すなわち、分極方向が異なる複数の領域が、周方向において分散形成されている。
【特許文献1】特開平6−339287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図12に示す超音波モータ101では、上記のように、固定子102は複雑な形状を有する。従って、PZTを用いて、固定子102や支持部材105を一体に形成することができるとされているが、このような成形は現実には非常に困難であった。加えて、複数の圧電素子104の電極104b,104cに対し、ボンディングワイヤーなどを用いた複雑な配線が必要であった。従って、配線作業が煩雑であり、かつ部品点数が多くなるという問題があった。
【0012】
他方、図13示す超音波モータ111においても、リング状の固定子112の外周面に設けられた複数の電極114及び内周面に設けられた複数の電極115に多数のボンディングワイヤーを接続しなければならなかった。そのため、配線作業が煩雑であり、かつ部品点数が多くなるという問題があった。
【0013】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、ステータにおける煩雑な配線作業を省略することができ、しかも部品点数を少なくすることができ、従って、小型化を進めることができるとともに、信頼性に優れた圧電モータ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、ロータと、ロータを回転駆動するためにロータに接触される駆動部が一面に設けられたステータとを備え、前記ステータが、前記接触部が設けられた前記一面を有するステータ本体と、前記ステータ本体の一面または該一面とは反対側の面に積層された複数の圧電素子と、前記ステータ本体と一体に設けられており、かつ前記複数の圧電素子を外部に電気的に接続するための複数の電極が形成された電極配線板と、前記複数の圧電素子と前記電極配線板上の前記複数の電極とを電気的に接続しており、前記ステータ本体表面から前記電極に至る導電膜からなる複数の配線とを備える、圧電モータが提供される。
【0015】
本発明に係る圧電モータでは、好ましくは、前記複数の圧電素子が、それぞれ、セラミックスよりなり、対向し合う第1,第2の面を有する圧電板と、圧電板の第1,第2の面にそれぞれ形成された第1,第2の電極とを備え、前記複数の圧電素子と前記ステータ本体とが一体焼成により形成されている。その場合には、圧電モータの組み立てに際しての部品点数をより一層少なくすることができる。
【0016】
本発明に係る圧電モータの他の特定の局面では、前記ステータ本体に連結された支持部材がさらに備えられている。この場合には、支持部材を他の部材や設置場所に連結することにより、ステータの動作にあまり影響を与えることなく、圧電モータを他の部材や設置場所に固定することができる。
【0017】
本発明に係る圧電モータのより限定的な局面では、前記支持部材がセラミックスからなり、前記ステータ本体と一体焼成により一体化されている。この場合には、支持部材もステータ本体と一体化されているので、組み立てに際しての部品点数を少なくすることができる。
【0018】
本発明に係る圧電モータのさらに他の特定の局面では、前記圧電素子の第2の電極が前記ステータ本体の前記一面または反対側の面に固着されている。この場合には、圧電モータの厚みを薄くすることができるとともに、圧電素子をステータ本体と容易に一体化することができる。
【0019】
本発明に係る圧電モータのさらに別の特定の局面によれば、前記ステータ本体が中央に開口を有するリング状の形状を有し、前記電極配線板が前記ステータ本体の前記開口よりも小さな形状を有し、かつ前記ステータ本体のリング状の開口内に前記電極配線板が配置されている。この場合には、圧電モータの小型化を進めることができる。
【0020】
本発明に係る圧電モータの製造方法は、本発明に従って構成された圧電モータの製造方法であって、前記複数のステータ本体が連なったマザーのステータ本体と、マザーのステータ本体中の各ステータ本体に一体化された複数の圧電素子とを有するマザーの構造体を用意する工程と、前記マザーの構造体を切断し、個々の圧電モータのステータ本体及び複数の圧電素子を有する個々のステータを得る工程と、前記ステータと、前記ロータとを組み合わせる工程とを備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る圧電モータでは、ステータ本体の一面または該一面とは反対側の面に複数の圧電素子が積層されており、かつ電極配線板がステータ本体と一体化されており、複数の圧電素子と電極配線上の複数の電極とがステータ本体表面から電極に至る導電膜からなる複数の配線により電気的に接続されているため、圧電モータの製造に際してのボンディングワイヤーなどを用いた煩雑な配線作業を省略することができる。しかも、組み立てに際しての部品点数の低減を図ることができる。従って、小型化を進めることができ、かつ圧電モータの信頼性を高めることが可能となる。
【0022】
本発明に係る圧電モータの製造方法では、マザーのステータ本体と、該マザーのステータ本体に一体化された複数の圧電素子とを有するマザーの構造体を用意し、該マザーの構造体を切断するだけで、個々の圧電モータのステータ本体及び複数の圧電素子を有する個々のステータを得ることができるので、本発明の圧電モータを効率良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0024】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る圧電モータのステータを示す斜視図である。
【0025】
図1に示すように、ステータ1は、リング状のステータ本体2を有する。リング状のステータ本体2は、外周及び内周が略八角形の形状を有する。ステータ本体2は、上面2aと、上面2aと反対側の面である下面2bとを有する。上面2a上において、周方向に、複数の圧電素子3が積層され、固定されている。
【0026】
圧電素子3は、セラミックスよりなる圧電板3aと、圧電板3aの第1の面に形成された第1の電極3bと、第1の面とは反対側の第2の面に形成された第2の電極3cとを有する。圧電板3aは、圧電セラミックスからなり、本実施形態では、厚み方向に分極されている。もっとも、圧電板3aの分極方向はこれに限定されるものではない。
【0027】
圧電素子3は、第2の電極3b側からステータ本体2の上面2aに積層され、一体化されている。本実施形態では、ステータ本体2と、圧電素子3とは、後述するように一体焼成技術により一体化されている。
【0028】
また、ステータ本体2の上面2aにおいては、隣り合う圧電素子3,3間に複数の突起4が立設されている。突起4はその先端がロータに接触され、ロータを駆動する駆動部を構成している。
【0029】
上記複数の突起4は、ステータ本体2と同じ材料により一体焼成によって一体的に構成されている。
【0030】
リング状のステータ本体2内には、電極配線板5が配置されている。本実施形態では、電極配線板5は、リング状の形状を有する。そして、リング状の電極配線板の外形は、リング状のステータ本体2の開口部よりも小さくされている。従って、電極配線板5が、ステータ本体2の開口部内に配置されている。電極配線板5をステータ本体2の開口の内側に配置することができるので、ステータ1の小型化を進めることができる。なお、電極配線板5は、リング状でなくてもよい。
【0031】
電極配線板5は外周縁から径方向外側に延びる複数本の連結部5aを有する。連結部5aの先端がステータ本体2の内側面に連結されている。電極配線板5の上面には、複数の電極6が配置されている。複数の電極6は、圧電素子3の第1の電極3bまたは第2の電極3cに、複数の配線7により電気的に接続されている。この配線7は、導電膜からなり、ステータ本体2の上面2aから内側面に延び、連結部5aの上面を経て、電極配線板5に至っている。この配線7は、導電ペーストの塗布・焼き付けにより形成された導電膜からなる。また、電極6についても、導電ペーストの塗布・焼き付けにより形成されている。
【0032】
本実施形態の圧電モータでは、ステータ1が上記のような構造を有するため、複数の圧電素子3の第1,第2の電極3b,3cを電気的に接続するために、多数のボンディングワイヤーを用いた複雑な配線作業を必要としない。加えて、多数のボンディングワイヤーを必要としないので、組み立てに際しての部品点数も少なくすることができる。
【0033】
加えて、上記ステータ本体2、圧電素子3、突起4及び電極配線板5が、セラミックス一体焼成技術により得ることができるので、製造工程を簡略化することができる。これを、図2〜図5を参照してより具体的に説明する。
【0034】
図2は、ステータ1から、上記電極6及び配線7を除去した状態を示す斜視図であり、図3はその一部の断面構造を示す部分切欠断面斜視図である。図2及び図3から明らかなように、電極配線板5は、ステータ本体2よりも厚みが薄くされている。そして、上記連結部5aは、ステータ本体2の内側面の中間高さ位置において、ステータ本体2の内側面に連結されている。また、連結部5aは、リング状の電極配線板5の本体部分と同じ厚みを有し、かつ同一平面上において連ねられている。従って、電極配線板5は、リング上のステータ本体2の内側の開口部において、ステータ本体2の厚み方向において、中間の位置に存在する。
【0035】
ステータ1の製造方法をより具体的に説明する。図2では、電極が形成される前のステータ1が示されていたが、本実施形態の製造方法では、上記電極形成前の複数のステータ1が連ねられたマザーの構造体をまず用意する。図5は、マザーの構造体11を示す斜視図である。マザーの構造体11では、図2に示した複数のステータ1が面方向においてマトリクス状に連ねられている。このような構造は、セラミックス一体焼成技術を用いることにより得ることができる。
【0036】
すなわち、本実施形態では、上記ステータ本体2、圧電素子3、複数の突起4及び電極配線板5が、セラミックス一体焼成技術を用いて成形される。この場合、第1,第2の電極3b,3cは、前述したように、導電ペーストの塗布・焼き付けにより形成されるが、該焼き付けは、セラミックスの一体焼成に際し行われる。圧電板3aを構成するセラミックス材料は、圧電素子3に適した適宜の圧電セラミックス、例えばチタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスを用いることができる。もっとも、他の圧電セラミックスを用いてもよい。
【0037】
ステータ本体2、突起4及び電極配線板5は、上記圧電板3aを形成している圧電セラミックスと同じ圧電セラミックスを用いて形成されてもよい。その場合には、セラミックス材料の種類を少なくすることができ、かつ一体焼成に際しての焼成条件のコントロールが容易である。
【0038】
もっとも、ステータ本体2、突起4及び電極配線板5は、それぞれの機能に応じたセラミックス材料により形成されてもよい。例えば、ステータ本体2は、機械的強度に優れたAlなどの絶縁性セラミックスを用いて形成されてもよい。突起4についても同様に、Alなどの機械的強度に優れた絶縁性セラミックスにより構成されることが望ましい。
【0039】
他方、電極配線板5については、電極6や配線7が表面に形成されるので、圧電効果等が生じないように、Alなどの絶縁性セラミックスにより形成されることが望ましい。
【0040】
もっとも、ステータ本体2、突起4及び電極配線板5を構成するセラミックスを、圧電板3aを形成するための圧電セラミックスと異なるセラミックスとした場合には、セラミックス材料の種類は増加することとなる。
【0041】
また、本実施形態の製造方法では、圧電素子3の上面に位置する第1の電極3bも、上記一体焼成により形成されていたが、一体焼成後に、上面に形成される第1の電極3bを導電ペーストの塗布・焼き付け等により形成してもよい。
【0042】
本実施形態の製造方法では、図5に示すマザーの構造体11を得た後に、上記複数の電極6及び複数の配線7を形成する。複数の電極6及び配線7は、導電ペーストの塗布・焼き付けにより形成することができる。もっとも、複数の電極6及び配線7についても、マザーの構造体11を得るための一体焼成に際し、電極3b,3cを形成してもよい。すなわち、焼成前に導電ペーストをパターン印刷し、焼成に際して焼き付けることにより、電極6及び配線7を形成してもよい。
【0043】
次に、マザーの構造体11を厚み方向に切断することにより、図1に示す個々のステータ1を得ることができる。従って、本実施形態の製造方法によれば、複数のステータ本体2が連なったマザーのステータ本体と、マザーのステータ本体において各ステータ本体2に一体化された複数の圧電素子3とを有するマザーの構造体11を用意し、切断するだけで、ステータ本体2に複数の圧電素子3が固定された個々のステータ1を効率良く得ることができる。よって、該ステータとロータとを組み合わせることにより、比較的安全な工程を得るだけで圧電モータを得ることができる。
【0044】
図4は、上記複数の電極6及び配線7の配置を略図的に示す模式的平面図である。各圧電素子3の第1の電極及び第2の電極3b,3cに、それぞれ、配線7の一端が接続され、配線7の他端が、電極配線板5上に形成された電極6に電気的に接続されている。
【0045】
なお、上記実施形態の圧電モータでは、電極配線板5を外部の部材に連結することにより外部の部材に固定される。それによって、外部からの振動等に影響されずに、ステータ1を確実に所望の態様で振動させることができる。
【0046】
電極配線板5を外部に連結するためには、好ましくは、図6に示すように、電極配線板5の下面に支持部材8を連結することが望ましい。支持部材8は、円筒状支持部8aと、円筒状支持部8aの上面において、円筒状支持部8aよりも外径が小さい嵌合部8bとを有する。嵌合部8bは、電極配線板5に嵌合されている。また、円筒状支持部8aの上方端面8cが、電極配線板5の下面に接触されている。上記嵌合部8bの高さは、電極配線板5の厚みに等しくされている。そのため、嵌合部8bの上面と、電極配線板5の上面とを面一とすることができ、より確実に支持部材8により電極配線板5を支持することができる。もっとも、嵌合部8bの高さは特に限定されず、また嵌合部8bは設けられずともよい。
【0047】
また、円筒状支持部8aの下端においては、外周から径方向外側に延びるベース8dが設けられている。ベース8dが、圧電モータを設置する部分に取り付けられる部分に相当する。もっとも、ベース8dは必ずしも設けられずともよい。
【0048】
図6に示すように、上記ステータ本体2の上方に突出された突起4に接触するように、一点鎖線で示すロータ9が配置される。このロータ9と、前述したステータ1とを組み合わせることにより本実施形態の圧電モータが構成される。ロータ9は、上記複数の突起4で回転駆動され得る限り、適宜の平面形状を有することができる。例えば、ロータ9は、円環などのリング状の形状を有していてもよく、また円盤や多角形板であってもよい。
【0049】
図7は、本実施形態の圧電モータの駆動原理を説明するための模式的平面図である。
【0050】
対向し合う一対の圧電素子を第1,第2の圧電素子3A,3Bの圧電体は、厚み方向において逆方向となるように分極処理されている。同様に、対向し合う第3,第4の圧電素子3C,3Dの圧電体も、厚み方向において逆方向において分極処理されている。
【0051】
圧電素子3A〜3Dの内、対向し合う第1,第2の圧電素子3A,3Bが、A相駆動部を構成するための圧電素子であり、第3,第4の圧電素子3C,3Dは、B相駆動部を構成するための圧電素子である。A相駆動部については、圧電素子にA+またはA−を付して示し、B相駆動部を構成する圧電素子についてはB+またはB−を付している。A+とA−とは、圧電体が、厚み方向において逆方向に分極されていることを意味する。B相駆動部についても同様に構成されている。
【0052】
上記第1〜第4の圧電素子3A〜3Dは矩形の平面形状を有する。従って、安価にかつ効率良く製造することができる。もっとも、本発明においては、圧電素子3A〜3Dは、矩形以外の平面形状、例えば扇形などの平面形状を有していてもよい。圧電素子3A〜3Dは、同一の平面形状を有する。圧電素子3A〜3Dの内、圧電素子3Aを代表して説明することとする。
【0053】
圧電素子3Aの第1,第2の短辺の中点と中心Oとを結ぶ仮想線を、それぞれ、仮想線E1,E2とする。仮想線E1,E2のなす角度、すなわち中心角は60°である。言い換えれば、圧電素子3Aの第1,第2の短辺の中点間の距離Lは、上記中心角60°に対応する。本実施形態では、3波の定在波が励振され、合成されて3波の進行波が得られる。距離Lは、3波の進行波の波長の長さに対応する中心角をλθとしたときに、λθ/2の中心角に対応する寸法とされている。第2〜第4の圧電素子3A〜3Dの寸法も同じとされている。
【0054】
上記圧電素子の寸法を中心角で規定するのは、圧電素子の上記寸法は、受信からの径方向距離によって変動することによる。すなわち、前述した仮想線E1,E2間の距離は、径方向位置によって変化するため、圧電素子の寸法は、中心角を基準にして表現されている。
【0055】
なお、本明細書においては、上記周方向とは、振動体において発生される2つの定在波及び該2つの定在波の合成により生じる進行波が周回する方向をいうものとする。また、上記中心角を規定するうえでの中心とは、前述した進行波の周回する方向の中心をいうものとする。
【0056】
そして、隣り合う圧電素子間の間隔、すなわち上記周方向に沿う寸法は、上記中心角で30°に相当する。例えば、図7の仮想線E2と、圧電素子3Aに隣り合う圧電素子3Cの圧電素子3A側の短辺の中点とを中心Oとを結ぶ仮想線をE3との間隔は、中心角でλθ/4=30°である。
【0057】
従って、隣り合う圧電素子間は、周方向において中心角でλθ/4隔てられていることとなる。
【0058】
駆動に際し弾性体よりなるリング状のステータ本体2において進行波が発生すると、突起4の先端が楕円運動することとなる。従って、突起4の先端に圧接されているロータ9が回転駆動される。
【0059】
図8は、本発明の第2の実施形態の圧電モータで用いられるステータを示す斜視図であり、図9は図8とは異なる角度から見たステータの斜視図である。第2の実施形態の圧電モータのステータ21は、第1の実施形態と同様に、外周縁が八角形のリング状のステータ本体2を有し、ステータ本体2の上面2aに複数の圧電素子3が積層され、固定された構造を有する。異なるところは、円柱状の突起4に代えて、一対の角柱状の突起4a,4bが隣り合う圧電素子3,3間に配置されていることと、支持部材の形状が異なる点にある。その他の点については同一であるため、同一部分については、同一の参照番号を付することにより、その詳細な説明は省略する。
【0060】
図8及び図9に示すように、ここでは、隣り合う圧電素子3,3間に、一対の角柱状の突起4a,4bが立設されている。このように、ロータを駆動するための接触部としての突起は隣り合う圧電素子3,3間で複数本設けられてもよい。また、円柱状でなく、角柱状などの任意の形状の突起を用いることができる。
【0061】
さらに図8〜図10に示すように、本実施形態では、電極配線板5に、複数本の支持部材22が連結されている。各支持部材22は、電極配線板5の下面から下方に延びる第1の部分22aと、第1の部分22aの下端から水平方向かつ外側方向に延びる第2の部分22bと、第2の部分22bの外側端から下方に延びる第3の部分22cとを有する。第3の部分22cの下端が、ベース23に連結されている。
【0062】
このように、本発明における圧電モータの支持部は、電極配線板5を機械的に支持するのに適した様々な形状とされ得る。
【0063】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、ステータ本体2、圧電素子3、複数の突起4a,4b及び支持部材22がセラミックス一体焼成技術により得られる。従って、部品点数の低減及び製造工程の簡略化を果たすことができる。
【0064】
より具体的には、図11に示すマザーの構造体24を用意する。このマザーの構造体24では、図8に示した複数のステータ21の複数の電極及び配線を除いた構造が連ねられている。従って、マザーの構造体24を経た後に、上記複数の電極6及び複数の配線7を形成し、厚み方向にマザーの構造体24を切断することにより、個々のステータ21を効率良く得ることができる。そして、図10に上方に略図的に示すように、ロータを組み合わせることにより、圧電モータを得ることができる。
【0065】
第2の実施形態においても、上記ステータ本体2、圧電素子3、突起4a,4b、及び支持部材22をセラミックス一体焼成技術で得ることにより、製造工程の簡略化及び部品点数の低減を果たすことができる。また、第2の実施形態においても、各部材を構成するセラミックス材料については、同種の材料を用いてもよく、異なる種類のセラミックスを用いてもよい。
【0066】
また、第1,第2の実施形態では、支持部材8,22もまた、ステータ本体2の焼成工程において一体に焼成したが、支持部材は、ステータを経た後にステータに接合することにより一体化してもよい。
【0067】
また、複数の圧電素子3についても、ステータ本体2を経た後に、複数の圧電素子を接合し、一体化してもよい。もっとも、好ましくは、上記第1,第2の実施形態のように、複数の圧電素子3を、ステータ本体2と一体焼成技術により得ることにより、組み立てに際しての部品点数の低減及び製造工程の簡略化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1の実施形態の圧電モータで用いられるステータを示す斜視図である。
【図2】図1に示したステータから電極及び配線を取り除いた状態を示す斜視図であるぁ
【図3】図2に示したステータの要部を説明するための部分断面斜視図である。
【図4】図1に示した実施形態で用いられているステータの電極及び配線構造を模式的に示す平面図である。
【図5】図1に示したステータを得るのに用意されるマザーの構造体を示す斜視図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の圧電モータの略図的断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る圧電モータの動作原理を説明するための模式的平面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る圧電モータに用いられるステータを説明するための斜視図である。
【図9】図8に示したステータを別の角度から示す斜視図である。
【図10】第2の実施形態の圧電モータを説明するための模式的断面図である。
【図11】第2の実施形態において用意されるマザーの構造体を示す斜視図である。
【図12】従来の超音波モータの一例を説明するための部分切欠斜視図である。
【図13】従来の超音波モータの他の例を説明するための模式的平面図である。
【符号の説明】
【0069】
1…ステータ
2…ステータ本体
2a…上面
2b…下面
3…圧電素子
3a…圧電板
3b…第1の電極
3c…第2の電極
3A〜3D…圧電素子
4…突起
4a,4b…突起
5…電極配線板
5a…連結部
6…電極
7…配線
8…支持部材
8a…円筒状支持部
8b…嵌合部
8c…上方端面
8d…ベース
9…ロータ
11…構造体
21…ステータ
22…支持部材
22a…第1の部分
22b…第2の部分
22c…第3の部分
23…ベース
24…構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、ロータを回転駆動するためにロータに接触される駆動部が一面に設けられたステータとを備え、
前記ステータが、前記接触部が設けられた前記一面を有するステータ本体と、前記ステータ本体の一面または該一面とは反対側の面に積層された複数の圧電素子と、前記ステータ本体と一体に設けられており、かつ前記複数の圧電素子を外部に電気的に接続するための複数の電極が形成された電極配線板と、前記複数の圧電素子と前記電極配線板上の前記複数の電極とを電気的に接続しており、前記ステータ本体表面から前記電極に至る導電膜からなる複数の配線とを備える、圧電モータ。
【請求項2】
前記複数の圧電素子が、それぞれ、セラミックスよりなり、対向し合う第1,第2の面を有する圧電板と、圧電板の第1,第2の面にそれぞれ形成された第1,第2の電極とを備え、前記複数の圧電素子と前記ステータ本体とが一体焼成により形成されている、請求項1に記載の圧電モータ。
【請求項3】
前記ステータ本体に連結された支持部材をさらに備える、請求項1または2に記載の圧電モータ。
【請求項4】
前記支持部材がセラミックスからなり、前記ステータ本体と一体焼成により一体化されている、請求項3に記載の圧電モータ。
【請求項5】
前記圧電素子の第2の電極が前記ステータ本体の前記一面または反対側の面に固着されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧電モータ。
【請求項6】
前記ステータ本体が中央に開口を有するリング状の形状を有し、前記電極配線板が前記ステータ本体の中央の開口よりも小さな形状を有し、かつ前記ステータ本体のリング状の開口内に前記電極配線板が配置されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の圧電モータ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の圧電モータの製造方法であって、前記複数のステータ本体が連なったマザーのステータ本体と、マザーのステータ本体中の各ステータ本体に一体化された複数の圧電素子とを有するマザーの構造体を用意する工程と、
前記マザーの構造体を切断し、個々の圧電モータのステータ本体及び複数の圧電素子を有する個々のステータを得る工程と、
前記ステータと、前記ロータとを組み合わせる工程とを備える、圧電モータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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