説明

圧電モータ

【解決手段】圧電モータは、対向した前面部と後面部及び対向した第1の端面部と第2の端面部を持つ圧電共振子本体を含む。前面部(17)及び前記後面部(18)は、圧電共振子本体の第1の縦軸(15)及び第2の縦軸(16)と実質的に平行である。また端面部(2)は、前記第1の縦軸と実質的に垂直であり、前記第2の縦軸と実質的に平行である。そして、端面部は圧電共振子本体の長さ(L)により区分けられる。前記モータはまた、前記後面部上に配置された共通の電極(6)を少なくても1個含み、さらに長さLに沿って延びている2つの対称的な列で、長さLに沿って前記前面部にわたって配置された励起電極(7−12)を少なくても6n(nは整数で1以上)個含む。前記モータで、前記圧電共振子はLに沿ったn次の縦振動周波数(ν1)とLに沿った3n次の曲げ振動周波数(ν2)を有し、ここで縦振動周波数ν1と曲げ振動周波数ν2は実質的に等しい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年12月19日に出願した米国出願第61/139,439号の利益を請求する非仮出願である。
【0002】
本発明は、電気モータの分野に関し、特に圧電モータの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的に小型の電気モータは、数例を挙げると顕微鏡手術や微生物学、ミクロ電子工学の分野で利用される。残念なことに、これらの分野や他の分野で用いる電気モータの小型化は、一般的にはモータ効率の著しい低下と関連してしまう。例えば、小型の電気モータが10mm未満の直径を用いて動作する様に小型化された時、2%かそれ以下までの効率低下を見ることは珍しいことではない。この効果は通常は圧電モータの小型化には適用されないが、小型化それ自体はさらに設計の複雑化につながる可能性がある。例えば小型化された圧電モータは、通常は低い信頼性を持つ傾向があり、また数例を挙げると、分解能,トルク,速度の様なモータパラメータの低下を経験する傾向がある。
【0004】
一般的に従来の圧電モータの設計は、圧電性の共振子に縦及び曲げ振動の同時励起を促進するための電極を組み込む。その圧電共振子は、当該共振子との間の接触域上の摩擦により動作しているロータと相互に作用する。その様なモータでは、平らな圧電性の共振子が通常使用され、縦及び屈曲の両方の歪みが励起される。
【0005】
従来の圧電モータにおける設計の中には、縦及び曲げの両方の振動を励起するために位置決めされた電極を持つ長方形の圧電共振子を使用した、ドライブ機構を備えたものがある。その結果、少なくても1つの接触パッドを介して動作部(ロータ)と接触することで、その圧電共振子は相互に作用することができる。一般的に、振動子の寸法と振動子の電極の外形は、振動子の長さ方向に沿って第1の縦モードと第2の曲げモードの振動が同時に起こり得る様に構成される。もし、これら2つのモードの周波数が等しいなら、接触パッドは通常は振動する。特に接触パッドは、全ての電極を含んでいる面に平行な平面を楕円形の経路でたどる。接触パッドは摩擦を介して、ロータの回転運動を引き起こす。この様な圧電共振子は、共通の電極が圧電共振子の一つの平らな表面を占めている状態で、通常は前記同時励起を促進するための電極を含んだ面に垂直に対立する。反対側の平らな表面は、それぞれが活性電極を持ち、4つの対称的に配置されたセクターに通常は分けられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の各形態は圧電モータに関係する。本発明の第1形態では、圧電モータが提供される。前記モータは、対向する前面部及び後面部を有すると共に、対向する第1の端面部及び第2の端面部を有する圧電共振子本体を含む。前記前面部及び前記後面部は、圧電共振子本体の第1の縦軸及び第2の縦軸と実質的に平行である。また前記第1の端面部及び前記第2の端面部は、前記第1の縦軸と実質的に垂直であり、前記第2の縦軸とは実質的に平行である。そして、前記前面部及び前記後面部や前記第1の端面部及び前記第2の端面部は圧電共振子本体の長さ(L)により分けられる。前記モータはまた、前記後面部上に配置された共通の電極も少なくても1つ含み、さらに長さLに沿って延びている2つの対称的な列で、長さLに沿って前記前面部にわたって配置された励起電極を少なくとも6n個(nは整数で1以上)含む。前記モータで、前記圧電共振しは長さLに沿った第n次の縦振動周波数(ν1)と長さLに沿った第3n次の曲げ振動周波数(ν2)を有し、ここで縦振動周波数ν1と曲げ振動周波数ν2は実質的に等しい。
【0007】
本発明の第2形態では、ポンプが備えられる。前記ポンプは圧電モータを含む。前記圧電モータは、対向する前面部及び後面部を有すると共に、対向する第1の端面部及び第2の端面部を有する圧電共振子本体を含む。前記前面部及び前記後面部は、圧電共振子本体の第1の縦軸及び第2の縦軸と実質的に平行である。また前記第1の端面部及び前記第2の端面部は、前記第1の縦軸と実質的に垂直であり、前記第2の縦軸とは実質的に平行である。そして、前記前面部及び前記後面部や前記第1の端面部及び前記第2の端面部は圧電共振子本体の長さ(L)により分けられる。前記モータはまた、前記後面部上に配置された共通の電極も少なくても1つ含み、さらに長さLに沿って延びている2つの対称的な列で、長さLに沿って前記前面部にわたって配置された励起電極を少なくとも6n個(nは整数で1以上)含む。前記モータで、前記圧電共振しは長さLに沿った第n次の縦振動周波数(ν1)と長さLに沿った第3n次の曲げ振動周波数(ν2)を有し、ここで縦振動周波数ν1と曲げ振動周波数ν2は実質的に等しい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一具体例に従って構成された典型的な圧電モータの概略側面図である。
【図2】図1の典型的な圧電モータにおける部分透視図である。
【図3】第1の縦振動モードと第3の曲げ振動モードにおける圧電共振子の変位量を描いた波形図である。
【図4A】本発明の一具体例に従った圧電モータとロータの第1の典型的な構成の上面図である。
【図4B】本発明の一具体例に従った圧電モータとロータの第1の典型的な構成の側面図である。
【図5】本発明の一具体例に従った圧電モータとロータの第2の典型的な構成の側面図である。
【図6A】マイクロ燃料電池での流体ポンプの原動力として、どの様に本発明が使われ得るかを理解するために有用な図面である。
【図6B】マイクロ燃料電池での流体ポンプの原動力として、どの様に本発明が使われ得るかを理解するために有用な図面である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付した図に関連して本発明は説明され、ここで同様の引用された数字は、等価又は同等の要素を指定するために図中に用いられる。この図は寸法通りには描かれておらず、単にこの発明を説明するためだけに提供される。説明のための各実施例に関連して、本発明のいくつかの態様が以下に説明する。数々の具体的な詳細,関係,方法は、本発明の十分な理解を提供するために説明されることを理解されるべきである。関連する当業者は、しかしながら、この発明が具体的な詳細の一つもしくはいくつかを用いることなく、または他の方法を用いて実施され得るとすぐに分かるだろう。他の例で、本発明を分かりにくくすることを避けるため、よく知られた構造または作用は詳細には示されていない。本発明は作用や事象の説明された順序付けに制限されず、作用の中には異なる順序及び/又は他の作用や事象と共に発生するものがあるかもしれない。さらに、すべての説明された作用や事象が、本発明に従った手順で実施されなければならないとは限らない。
【0010】
本発明の各具体例は、直径10mm未満の小型の圧電回転モータの開発に使用され得る、改良された圧電モータを提供する。この様なモータは色々な応用、すなわち数例を挙げると顕微鏡手術や微生物学、ミクロ電子工学を含む、で利用することが可能である。すでに説明した通り、従来の圧電モータは小型化の結果としての問題の影響を受けやすい。一般的にこの様な圧電駆動機構の最小化は、重大な根本的困難性により妨げられる。
【0011】
特に従来の圧電モータの幅の小型化は、そのモータの最小の直径で決まるもので、問題があり得た。例えば、共振子の幅の一桁を超える小型化は、曲げ振動モードの低周波数化をもたらす。通常、この低周波数は、前記第1の縦モードの周波数と前記第2の曲げモードの周波数との間の格差を増やす一因となり、その結果効率を制限する。通常はこの周波数の変化を補うために共振子の長さの増加が必要になり、モータの長さの増加が生じる。さらに、通常は波形が安定している点で保持またはクランプするために、横に圧力をかけている留め具が必要となる。これらの留め具は通常、全体の幅をかなり増大させ、そのモータの達成可能な最小幅をさらに制限する。
【0012】
本発明の様々な具体例に従って構成された圧電モータは、少ししか、又は全くモータの長さを増やすことなく圧電モータの寸法(特に圧電モータの外径)の小型化を可能にすることで、従来の小型化された圧電モータの制限を克服する。これは第1に、前記第1の縦モードと第3の曲げモード(原型としての前記第2の曲げモードの代わり)が前記圧電共振子の前記長さ方向に沿って同時に形成される様な圧電の共振子(圧電共振子)を利用することにより達成される。
【0013】
その結果、本発明の様々な具体例は、電極を持った圧電共振子を含んだ圧電モータを提供し、電極は縦及び曲げ振動モードの同時励起を導く。前記圧電モータは、前記圧電共振子の第1の端上にある少なくとも1つの接触パッドとの間の摩擦推力によって作動するロータを持つ。前記接触パッドは、前記圧電共振子の反対側の第2の端に接触する機械的ばねの様な圧力装置により加えられた圧力の下で、前記ロータに作動することができる。いくつかの具体例で、前記圧電共振子は長さLと幅Bを有する薄い矩形プレート形状もしくは立方形状に形成され、それらのLとBは、その表面に固定された前記電極を持つ(LとBに定義された)平面と垂直に対立する。
【0014】
一般的に、第1次モードに対する圧電共振子の長さLに沿った縦振動の周波数νは、次の式となる。
【数1】

ここで、λは圧電共振子の長さ方向に沿って形成された第1の縦モード振動の波長であり、Lは圧電共振子の長さであり、Cは前記圧電の共振子での縦振動の伝播速度である。第n次振動モードに対する前記共振子の長さLに沿った曲げ振動の振動数νは、以下の式により与えられる。
【数2】

ここで、Bは前記圧電共振子の幅であり、Cは前記圧電の共振子での曲げ振動の伝播速度である。第3次モード(n=3)では、上記数2は以下の様になる。
【数3】

さらに前記接触パッドで、前記ナノ単位の楕円形(nano-ellipse)を形成するのに必要な前記共振を備えるためには、ν=νとなる。その結果、数1と数2はお互いに等しく、以下の式が与えられる。
【数4】

整理した後は以下の様になる。
【数5】

【0015】
したがって、もし第3次曲げモードを使用し、共振子の長さL=37mmで圧電共振子が構成されるなら、数5に従い前記幅(外径)Bはおよそ6.7mmになるだろう。同じ長さL=37mmの従来の圧電モータでは、そのモータの幅はおよそ10mmになっていただろう。したがって、前記第3次曲げモードを利用した前記圧電モータを構成することにより、圧電モータの長さを増やすことなく圧電共振子の幅(したがって前記圧電モータの前記外径)を、従来の圧電モータの幅のおよそ2/3に減らすことが可能になる。その結果として、そのモータの寸法は、大幅に減少する。さらに本発明の具体例に従って構成された圧電モータは、従来の圧電モータで必要だった横に圧力をかけている留め具を使う必要がないので、さらにモータの直径を減らす。結果的に、いくつかの事例で、圧電モータの寸法の50%削減が、本発明に従って構成された圧電モータを利用することにより提供可能となる。
【0016】
本発明の具体例に従って構成された典型的な圧電モータが、図1と図2で説明される。図1は本発明の具体例に従って構成された典型的な圧電モータ100の概略側面図である。図2は、図1の典型的な圧電モータ100の部分斜視図である。図1と図2に示される様に、圧電モータ100は、圧電共振子3,その圧電共振子の第1の端20と結合している接触パッド2a,及び圧電共振子3の第2の端20と接触し、例えばバネの様な留め具装置4を含む。圧電共振子3は、それぞれが圧電共振子3の長さ(L)と幅(B)の向きにある各縦軸15,16により定義される面に実質的に平行な、前面部17と後面部18を含む。接触パッド2aをロータ1aに当てるために、留め具装置4を使用することが可能である。
【0017】
従来の圧電共振子とは対照的に、圧電共振子3の長さ方向に沿った更なる留め具装置は必要ではない。第1次の縦振動モードと第3次の曲げ振動モードの組み合わせは、従来の圧電モータの圧電共振子での通常の非対称変形と比較すると、一般的に圧電共振子3での対称変形が生じる。したがって本発明の色々な具体例で、圧電共振子3やロータに接触する接触パッド2aをしっかり固定する手段をさらに追加する必要がない。
【0018】
圧電共振子3で第1次の縦振動モードと第3次の曲げ振動モードを形成するため、圧電共振子3の表面である前面部17上の誘起電極7,8,9,10,11,12,13と、圧電共振子3の後面部18上の共通電極6に交流電圧を印加する必要がある。図1と図2に示される様に、特にモータ100でこの様な励起モードを可能にするため、圧電共振子3の長さLに沿って、3個の電極が2列平行になる様に、6つの電極が圧電共振子の長さ方向に沿って対称的に配置される。前に説明した通り、圧電共振子3の幅(B)と長さ(L)を選択することにより、νまたはνの作動周波数を持った交流電圧を供給することで、両方の励起モードを可能にすることができる。さらに、この交流電圧は電極7〜12の対角線グループと共通電極6に印加される。電極7〜12に関してここで用いられる“対角線グループ(diagonal group)”という用語は、お互いに対角線上に設置され、長さLに沿った電極7〜12に言及する。例えば図1や図2のモータ100で、電極7,9,11は第1の対角線グループであるだろうし、電極8,10,12は第2の対角線グループであるだろう。対角線のグループに交流電圧を印加することにより、圧電共振子3でそれらの励起モードが可能になり、楕円形の経路21aで接触パッド2aの振動が生じる。したがって接触パッド2aのその振動が、接触パッド2aでロータ1aに力を加える結果となり、ロータ1aに回転を起こさせる。
【0019】
ロータ1aの前進と逆転の運動は、その対角線グループの選択により提供される。前に説明した様に、電極7〜12の配置は第1及び第2の対角線グループを提供する。したがって第1の方向にロータ1の運動を提供するには、第1の対角線グループ(電極7,9,11)に交流電圧が印加される。これらの電極(7,9,11)での交流電圧に起因して、接触パッド2aの楕円形の経路21a(時計回りの経路)が生じることで、ロータ1に第1の方向に回転させる振動を供給する。第2の方向にロータ1の運動を提供するには、第2の対角線グループ(電極8,10,12)に交流電圧が印加される。これらの電極(8,10,12)での交流電圧に起因して、接触パッド2aの図示しない楕円形の経路(経路21aと逆回り)が生じることで、ロータ1に第1の方向とは逆である第2の方向に回転させる振動を供給する。ロータ1aとの接触時には、接触パッド2の運動がロータ1aの希望する回転方向と実質的に同じ方向であるから、この様な構造が比較的高い効率のモータを提供する。
【0020】
前に説明した様に、楕円形の経路21aは、第1次の縦振動モードと第3次の曲げ振動モードに従った圧電共振子3の変位の組み合わせにより供給される。これら変位の種類のそれぞれをグラフにしたものを図3に示す。図3は、第1の縦軸に沿った第1次の縦振動モードと第3次の曲げ振動モードに対して、圧電共振子の変位を表現した波形をグラフにしたものである。図3に示すように、圧電共振子3の長さLに沿うと共に第1の縦軸に沿って、第1次の振動モードに起因する圧電共振子3の長さに沿った寸法の変化の振幅がεである。ここでεは、長さL方向の寸法の変位である。第3次の振動モードに起因する圧電共振子3の長さに沿った寸法の変化の振幅がεである。ここでεは、長さLと垂直方向、すなわち幅Bの方向の寸法の変位である。λは曲げ変形の波長であり、λは縦変形の波長である。図3に示すように、第3次の曲げモードは圧電共振子3の長さ方向に沿って、圧電共振子3の対称変形を供給する。したがって、圧電共振子3はその第1の端20の上で接触パッド2に楕円形の経路で振動させるけれども、対称的な振動を誘導させるために、圧電共振子3の長さ方向に沿って圧電共振子3を支持または固定するのに必要な追加の留め具がいらない。
【0021】
一般的に、ロータ1aとその圧電共振子を様々な構成で配置することがあり得る。例えば、接触パッドの楕円形の経路とロータの回転軸が平行とすることがある。図4A及び図4Bはそれぞれ、本発明の具体例に従った圧電共振子3,接触パッド2a及びロータ1aの第1の典型的な構成の上面図及び側面図である。図4A及び図4Bに示すように、ロータ1aの回転軸23aと平行である接触パッド2aに楕円形の経路21a(もしくは逆回りの楕円形の経路と)を供給するために、圧電共振子3,接触パッド2a及び円筒状のロータ1aが配置される。円筒形のロータ1aの平端部に接触するために配置されるのが接触パッド2aであり、これは圧電共振子3の第1の対角線のグループ(図示せず)に印加される交流電圧に起因して、接触パッドが楕円形の経路21aに動く時、方向22aにロータ1aの回転を生じさせる。ロータ1aに方向22aと反対の方向(すなわち逆方向)の回転を起こすために、圧電共振子3の第2の対角線のグループ(図示せず)に交流電圧が印加される。
【0022】
いくつかの具体例では、1つのロータ1aが使用されることもある。しかし別の具体例では、圧電共振子3が2つのロータ1a,1bを同時に回転させられるようにするために、追加の機構30が加えられる。ここでロータ1bは、2つのロータ1a,1bが圧電共振子3の2つの両側の端に位置する様に、ロータ1aから対向して配置される。接触パッド1aと連携する楕円形の経路21aに対して、接触パッド2bが楕円形の経路21bを反対方向に動かすという事実に起因して、ロータ1bの回転方向21bはロータ1aの回転方向22とは反対方向になる。本発明の様々な具体例で、回転軸23a,23bは同じことも異なることもあり得る。さらに、本発明はこの点で制限されないことも理解されるべきである。
【0023】
他の例では、接触パッドの楕円形の経路とロータの回転軸が垂直であることもあり得る。図5は、本発明の具体例に従った圧電共振子3,接触パッド2a及びロータ1aの第2の典型的な構成の側面図である。図5に示すように、ロータ1aの回転軸53aと垂直な接触パッド2aに楕円形の経路21a(もしくは逆回りの楕円形の経路)を供給するために、圧電共振子3,接触パッド2a及び円筒状のロータ1aが配置される。円筒形のロータ1aの外周に接触するために配置されたのが接触パッド2aであり、これは圧電共振子3の第1の対角線グループ(図示せず)に印加される交流電圧に起因して、接触パッドが楕円形の経路21aに動く時、方向52aにロータ1aの回転を生じさせる。ロータ1aに方向52aと反対の方向(すなわち逆方向)の回転を起こすために、圧電共振子3の第2の対角線グループ(図示せず)に交流電圧が印加される。
【0024】
別の具体例では、圧電共振子3の2つの両側の端に位置する2つのロータ1a,1bを同時に回転させる追加の機構60を、圧電共振子3が含むことができる。接触パッド2aと連携する楕円形の経路21aに対して、接触パッド2bが楕円形の経路21bを反対方向に動かすという事実に起因して、ロータ1bの回転方向52bはロータ1aの回転方向52と反対方向になる。本発明の様々な具体例で、回転軸53a,53bは同一方向あるいは異なる方向に配向され得る。
【0025】
2列の対称に配置された6つの電極の配列に関して、本発明の様々な具体例が説明されているが、それらの点で本発明は制限されない。他の具体例では、第3n次の曲げモード及び第n次の縦モードの圧電共振子で励起するために、圧電モータを構成することができる。ここで、nは0より大きい整数値である。この様な励起モードを可能にするため、圧電共振子の長さ方向に沿って、3n個の電極が2列平行なグループで対称的に配置される6n個の電極を、モータは備えなければならない。例えば図1や図2のモータ100は、第3次の曲げモードと第1次の縦モードを使用し(n=1)、したがって圧電共振子の長さ方向に沿って、3個ずつの2つのグループで配置された6個の電極を有する。より高い次元(n>1)の曲げモードを使用する効果は、共振子の長さと幅との間の比の上昇である(数4を参照)。これは、圧電共振子がどの様な長さで与えられても、モータ幅(外径)の更なる減少を一層促進する。前に説明した様に、電極の数に係わらず、前進運動と逆転運動を提供するために、交流電圧は対角線グループに従ってさらに供給される。
【0026】
したがって、圧電モータにおける2列の隣接する電極の位置すなわち隣接領域は、選択されたあらゆるnに対して、法則化することが可能である。特に、隣接した電極領域の第1の部分は、Lに沿ってiL/nと(3i+1)L/(3n)との間に設置される。また隣接した電極領域の第2の部分は、Lに沿って(3i+1)L/(3n)と(3i+2)L/(3n)との間に設置され、隣接した電極領域の第3の部分は、Lに沿って(3i+2)L/(3n)と(i+1)L/nとの間に設置される。ここでiは整数であり、0以上n−1以下(n−1≧i≧0)である。
【0027】
ここで説明されるモータへの応用例は、超小型の燃料電池ポンプのモータ構成部分としてそれを組み込むことも含むだろう。例えばコンパクトで、安価で、静かなエアフローポンプは、効率的な燃料電池の新たな生成の一環として必要とされる。例えば、平坦な圧電共振子のアクチュエータ(作動装置)を使用した回転インペラーポンプを提供でき、そのアクチュエータはファンを取り付けたロータの回転を起こすための縦−曲げ振動モードの励起原理に影響を与える。圧電共振子を基にしたアクチュエータが使用されたが、ここで説明されたロータリーポンプはいかなるアクチュエータ機構にも利用されることが可能である。図6Aは、1つのファンと、本発明の具体例に従って構成された圧電共振子とを使用したロータリーポンプ600の上面図及び側面図を示す。図6Bは、2つのファンと、本発明の具体例に従って構成された圧電共振子とを使用したロータリーポンプ600の上面図及び側面図を示す。これらの構造は、基部61,圧電共振子62,(複数の)軸受部を持ったロータ63,ファン64,バネ65,及び燃料電池素子66を含む。
【0028】
図6Aでロータリーポンプ600は次の通りに動作する。圧電のアクチュエータ62は電気的に励起され、楕円形の動作軌跡は、その動作の面が圧電共振子62の主要な面と平行な状態で、その両端がたどりながら振動する。その振動の楕円形の経路は、圧電共振子62の曲げと縦の両変形の組み合わせから生じるもので、これは圧電共振子62の電気的な励起により促進される。圧電共振子62の各端の楕円形動作が、圧電共振子と(各)ロータとの接触域の摩擦を介して、(各)ロータ63の回転運動に伝達し、(各)ファン64を回転させることができる様に、圧電共振子62の(各)端はバネ65によって供給される(各)ロータ63への圧力により保持される。
【0029】
もし回転するファン64の断面積Sが1cm(S=1cm)で、圧電共振子62の(各)端の直線動作をファン64の回転動作に変換する係数Kが0.4cm/rev(K=0.4cm/rev)であるならば、空気流量Q=200cm/minを確保するために必要とするファン64の回転速度nは以下の式で求められる。
【数6】

この様な構造の利点は多々ある。ポンプ600を非常に薄型で平坦なコンパクト容器で構成し、燃料電池筐体の壁部と一体部分又は壁部に対する付属品として、その容器を組み立てられ易いようにすることが可能である。もし圧電共振子62の厚さが2mmより薄いなら、そのロータリーポンプはほぼ2〜4cm程度しか場所を塞がないだろう。図6Bに示す様に、ロータリーポンプ650に対する2つのファンの構造は、空気流量の容量を増やし、燃料電池素子66への空気の供給効果をより一層促進させる。この構造は本来エネルギー効率が良く、ロータの軸受部の品質次第では実質的に音を立てなくすることが可能である。この様な各具体例で、ロータリーポンプ650の最小の長さは、主として他の関連したハードウェアと共に、圧電共振子62の長さによって決まる。もし圧電共振子62の厚さが2mmより薄いなら、そのロータリーポンプはほぼ3〜4cm程度しか場所を塞がないだろう。
【0030】
出願人は、ここに上述の明白で理論的な態様を提示するが、その態様は、主に半導体素子の理論に基づき、本発明の各具体例に関してなされた見解を説明しようとするに正確なものであると確信する。しかしながら、本出願の具体例は提示された理論的な態様なしで実施されるかもしれない。加えて出願人は、その提示された理論に制約されるつもりはないことを理解する上で、その理論的な態様を提示する。
【0031】
本発明の様々な具体例が前に説明されている間、それらは単に例として提示されているだけで、それに制限されないことを理解されるべきである。本発明の精神や範囲から逸脱することなくここの開示に従って、開示された具体例の数々の変形が作成され得る。したがって、本発明の広さや範囲は、前に説明したいかなる具体例によっても制限されないこととすべきである。むしろ本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲やそれに相当するものに従って定義されるべきである。
【0032】
1つまたはそれ以上の実施に関して解説及び説明しているが、この明細書や付属する図面を読んで理解できる他の当業者は相当する変更や修正箇所に気がつくだろう。さらに、本発明の特定の特性が単にいくつかの実施の一つに関してだけ説明されているかもしれない一方で、あらゆる所定の又は特定の応用のために要求される様に及び好都合な様に、他の実施の他の一つ又はそれ以上の特性にこのような特性が組み合わされるかもしれない。
【0033】
ここで使用された技術は特定の具体例のみで説明する目的であり、本発明を制限する意図はない。次の用語、単数形の“a”、“an”、及び“the”は、特に文脈で明確な指示がない場合は複数形も同様に含むことを意図する。さらに、用語“including”、“includes”、“having”、“has”、“with”又はそれに関した色々なものが詳細な説明及び/又は特許請求の範囲で使用されるという点で、この様な用語は用語“comprising”と同様の方法を含めたことを意図する。
【0034】
特に指示がない場合、ここで使用される全ての用語(技術的、科学的用語も含む)は、この発明が属する当業者によって一般に理解されている様に同じ意味を持っている。例えば一般に辞書を使用して定義される様な用語は、技術に関係のある文脈のこれらの意味と一致する意味を持っていることとして解釈されるべきであり、ここで明確に定義されない場合は理想的もしくは過度に正式な意味で解釈される意志はない。
【符号の説明】
【0035】
1a ロータ
2a 接触パッド
3 圧電共振子
4 留め具装置
7〜12 電極
100 圧電モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する前面部及び後面部を有すると共に、対向する第1の端面部及び第2の端面部を有する圧電共振器本体を備え、
前記前面部及び前記後面部は前記圧電共振子本体の第1の縦軸及び第2の縦軸と実質的に平行であり、前記第1の端面部及び前記第2の端面部は前記第1の縦軸と実質的に垂直で、前記第2の縦軸と実質的に平行であり、前記圧電共振子本体の長さ(L)で前記第1の端面部及び前記第2の端面部が区切られており、
さらに前記後面部に配置された少なくとも1個の共通の電極と、
長さLに沿って延びている2つの対称的な列で、前記前面部にわたって配置された少なくとも6n(nは整数で1以上)個の励起電極と、を備え、
前記圧電共振子本体は長さLに沿った第n次の縦振動周波数(ν1)を有し、さらに長さLに沿った第3n次の曲げ振動周波数(ν2)を有し、縦振動周波数ν1と曲げ振動周波数ν2は実質的に等しいことを特徴とする圧電モータ。
【請求項2】
前記第2の縦軸に沿った前記前面部及び前記後面部の幅を前記圧電共振子本体の幅(B)と定義し、C1が前記圧電共振子本体の縦振動の伝播速度であり、C2が前記圧電共振子本体の曲げ振動の伝播速度であるとすると、nが1の時に、長さLと幅Bの比が、次の式で定義されることを特徴とする請求項1に記載の圧電モータ。
【数7】

【請求項3】
L/Bが5と6の間であることを特徴とする請求項2に記載の圧電モータ。
【請求項4】
L/Bが5.5であることを特徴とする請求項3に記載の圧電モータ。
【請求項5】
前記励起電極が複数の隣接する電極領域での前記対称的な列に定義され、前記複数の隣接する電極領域の第1の部分は、iL/nと(3i+1)L/(3n)との間にLに沿って設置され、隣接した電極領域の第2の部分は、(3i+1)L/(3n)と(3i+2)L/(3n)との間にLに沿って設置され、隣接した電極領域の第3の部分は、(3i+2)L/(3n)と(i+1)L/nとの間にLに沿って設置され、ここでiは整数であり、0以上n−1以下であることを特徴とする請求項1に記載の圧電モータ。
【請求項6】
n=1であることを特徴とする請求項1に記載の圧電モータ。
【請求項7】
n=2であることを特徴とする請求項1に記載の圧電モータ。
【請求項8】
前記3n個の励起電極からなる第1の対角線グループが電気的に連結され、前記3n個の励起電極からなる第2の対角線グループが電気的に連結されることを特徴とする請求項1に記載の圧電モータ。
【請求項9】
前記第1の端に配置された少なくても1個の接触素子と、
前記第2の端に機械的に連結された少なくても1個のバネ荷重支持物と、
前記第1の縦軸及び前記第2の縦軸と平行に、前記接触素子にナノ単位の楕円形動作をさせるために、前記共通の電極と、前記第1の対角線グループ又は前記第2の対角線グループに交流電圧を印加する少なくとも1個の交流電圧電源をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の圧電モータ。
【請求項10】
前記交流電圧電源の周波数ν3は、実質的に縦振動周波数ν1又は曲げ振動周波数ν2であることを特徴とする請求項9に記載の圧電モータ。
【請求項11】
回転軸を有する少なくとも1個のロータをさらに備え、前記ナノ単位の楕円形動作部分で前記接触素子と物理的に接触する様に前記ロータが配置されるとき、このロータは前記第1の端の上に配置されることを特徴とする請求項9に記載の圧電モータ。
【請求項12】
ロータは、前記回転軸と前記ナノ単位の楕円形動作が平行な配列になる様に配置されたことを特徴とする請求項11に記載の圧電モータ。
【請求項13】
前記圧電共振子の2つの対向する端のそれぞれに配置された2個のロータをさらに備えることを特徴とする請求項12に記載の圧電モータ。
【請求項14】
ロータは、前記回転軸と前記ナノ単位の楕円形動作が垂直な配列になる様に配置されたことを特徴とする請求項11に記載の圧電モータ。
【請求項15】
前記圧電共振子の2つの対向する端のそれぞれに配置された2個のロータをさらに備えることを特徴とする請求項14に記載の圧電モータ。
【請求項16】
前記圧電共振子本体が実質的に立方形であることを特徴とする請求項1に記載の圧電モータ。
【請求項17】
前記圧電共振子本体の前記前面部及び前記後面部は、前記立方形の奥行き(D)により区切られ、奥行きDは長さLより小さく、奥行きDは幅Bより小さいことを特徴とする請求項1に記載の圧電モータ。
【請求項18】
前記圧電共振子本体は前記第1及び前記第2の縦軸と垂直方向に対立することを特徴とする請求項1に記載の圧電モータ。
【請求項19】
圧電モータを備えたポンプであって、
前記圧電モータは、対向する前面部及び後面部を有すると共に、対向する第1及び第2の端面部を有する圧電共振器本体を備え、
前記前面部及び前記後面部は前記圧電共振子本体の第1の縦軸及び第2の縦軸と実質的に平行であり、前記第1の端面部及び前記第2の端面部は前記第1の縦軸と実質的に垂直で、前記第2の縦軸と実質的に平行であり、前記圧電共振子本体の長さ(L)で前記第1の端面部及び前記第2の端面部が区切られており、
さらに前記後面部上に配置された少なくとも1個の共通の電極と、
長さLに沿って延びている2つの対称的な列で、前記前面部にわたって配置された少なくとも6n(nは整数で1以上)個の励起電極と、を備え、
前記圧電共振子本体は長さLに沿った第n次の縦振動周波数(ν1)を有し、さらに長さLに沿った第3n次の曲げ振動周波数(ν2)を有し、縦振動周波数ν1と曲げ振動周波数ν2は実質的に等しいことを特徴とするポンプ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【公表番号】特表2012−513188(P2012−513188A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542371(P2011−542371)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/068217
【国際公開番号】WO2010/080432
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(511148042)ディスカバリー テクノロジー インターナショナル,インク. (5)
【Fターム(参考)】