説明

圧電型加速度センサ

【課題】圧電素子の撓み変形を利用して加速度を検出するように構成された圧電型加速度センサを、容易にかつ低コストで製造可能とし、かつ、その圧電素子の支持強度を十分に確保可能とする。
【解決手段】回路基板22とこれに装着されたカバー24とからなるケース12に、圧電素子14が収容された構成とする。その際、圧電素子14は、その上面側電極28Aの所定部位において、撓み変形し得る態様でカバー24に導通固定された構成とする。これにより圧電素子14の支持構造を簡素化するとともにその支持強度を十分に確保する。また、圧電素子14におけるカバー24との導通固定位置の下面と回路基板22の上面との間に、ねじりコイルバネ20を、圧電素子14の下面側電極28Bと回路基板22の上面に形成された導電層の一部とに導通させるようにして設ける。これにより従来のようなボンディングワイヤ等の配置を不要とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、圧電素子の撓み変形を利用して加速度を検出するように構成された圧電型加速度センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、加速度センサの一形式として圧電型加速度センサが知られている。
【0003】
この圧電型加速度センサは、例えば「特許文献1」に記載されているように、上下両面に電極が形成された板状の圧電素子を備えており、この圧電素子が撓み変形したときにその両電極間に生じる電圧により上下方向の加速度を検出するようになっている。
【0004】
そして、この圧電型加速度センサにおいては、その圧電素子がケースに収容された構成となっているが、その際、この圧電素子は、上記「特許文献1」にも記載されているように、回路基板に実装された構成となっていることが多い。
【0005】
【特許文献1】特開2000−2714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の圧電型加速度センサにおいては、その回路基板に対する圧電素子の実装を、圧電素子が撓み変形し得る態様で行う必要があるため、その実装構造がかなり複雑なものとなる。このため、圧電型加速度センサの製造工程も複雑なものとなり、その製造コストが高くついてしまう、という問題がある。しかも、このように圧電素子を撓み変形し得る態様で支持する実装構造では、圧電素子の支持強度を十分に確保することが容易でない、という問題もある。
【0007】
また、上記従来の圧電型加速度センサにおいては、回路基板の上面に所定パターンで形成された導電層に対して、圧電素子の各電極を導通させることが必要となるが、その際、下面側電極に関しては、これを導電層の一部と直接導通させることが可能である一方、その上面側電極に関しては、ボンディングワイヤ等を介してこれを導電層の一部と導通させることが必要となる。したがって、この点においても、圧電型加速度センサの製造コストが高くついてしまう、という問題がある。
【0008】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、圧電素子の撓み変形を利用して加速度を検出するように構成された圧電型加速度センサにおいて、その製造を容易にかつ低コストで行うことができるとともに圧電素子の支持強度を十分に確保することができる圧電型加速度センサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、圧電素子の導通固定構造に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0010】
すなわち、本願発明に係る圧電型加速度センサは、
上下両面に電極が形成された板状の圧電素子と、この圧電素子を収容するケースとを備えてなり、上記圧電素子の撓み変形を利用して上下方向の加速度を検出するように構成された圧電型加速度センサにおいて、
上記ケースが、上面に所定パターンで導電層が形成された回路基板と、この回路基板に対して上記導電層の一部と導通するようにして上方側から装着された金属製のカバーとからなり、
上記圧電素子が、該圧電素子の上面側電極の所定部位において、撓み変形し得る態様で上記カバーに導通固定されており、
上記圧電素子における上記カバーとの導通固定位置の下面と上記回路基板の上面との間に、導電性を有する弾性部材が、上記圧電素子の下面側電極と上記回路基板の導電層の一部とに導通するようにして設けられている、ことを特徴とするものである。
【0011】
上記構成において「上下両面」や「上下方向」等の方向性を示す用語は、圧電型加速度センサを構成する各部材相互間の位置関係を明確にするために便宜上用いたものであって、これにより圧電型加速度センサを実際に使用する際の方向性が限定されるものではない。すなわち、本願発明に係る圧電型加速度センサは、上記構成に示したままの姿勢で配置された状態では、上下方向の加速度を検出することが可能となり、上記構成に示した姿勢とは異なる姿勢(例えば上記構成に示した姿勢に対して90°回転させた姿勢)で配置された状態では、上下方向以外の方向(例えば水平方向)の加速度を検出することが可能となる。
【0012】
上記「板状の圧電素子」は、撓み変形し得るように構成されたものであれば、その具体的な形状は特に限定されるものではなく、例えば、梁状に形成されたものや膜状に形成されたもの等が採用可能である。また、この圧電素子の上面側電極において、カバーに導通固定される「所定部位」の具体的な位置についても、圧電素子が撓み変形し得るような位置であれば特に限定されるものではなく、例えば、梁状に形成されている場合には、その端部あるいは中央部等が採用可能であり、また、膜状に形成されている場合には、その周縁部あるいは中央部等が採用可能である。なお、この「圧電素子」のカバーへの導通固定は、圧電素子が撓み変形したときに該圧電素子とカバーとが干渉してしまわないような位置関係で行う必要があるが、これを実現するための具体的な構成は特に限定されるものではなく、例えば、カバーにおける圧電素子との導通固定部分を下方へ突出させるように形成することにより、あるいは、圧電素子とカバーとの導通固定を金属片等を介して行うこと等により実現可能である。
【0013】
上記「弾性部材」は、圧電素子の下面と回路基板の上面との間に設けられたときに、圧電素子の下面側電極と回路基板の導電層の一部とを導通させるように構成されていれば、その材質や形状等の具体的な構成については特に限定されるものではなく、例えば、金属製のバネや導電性ゴム等が採用可能である。また、この「弾性部材」は、回路基板に対してハンダ付け等により固定された構成となっていてもよいし、回路基板に対して単に水平方向の位置決めがなされた構成となっていてもよい。
【0014】
本願発明に係る圧電型加速度センサの用途は特に限定されるものではなく、通常の加速度センサとして用いることが可能であることはもちろんのこと、その速度変化検出機能を利用して振動センサとして用いることも可能である。
【発明の効果】
【0015】
上記構成に示すように、本願発明に係る圧電型加速度センサは、上下両面に電極が形成された板状の圧電素子の撓み変形を利用して上下方向の加速度を検出するように構成されており、その圧電素子を収容するケースは、上面に所定パターンで導電層が形成された回路基板と、この回路基板に対してその導電層の一部と導通するようにして上方側から装着された金属製のカバーとからなっているが、その際、圧電素子はその上面側電極の所定部位において撓み変形し得る態様でカバーに導通固定されており、また、圧電素子におけるカバーとの導通固定位置の下面と回路基板の上面との間には、導電性を有する弾性部材が圧電素子の下面側電極と回路基板の導電層の一部とに導通するようにして設けられているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0016】
すなわち、本願発明に係る圧電型加速度センサは、その圧電素子が上面側電極の所定部位において撓み変形し得る態様でカバーに導通固定されているので、従来の圧電型加速度センサのように圧電素子が撓み変形し得る態様で回路基板に固定された構成となっている場合に比して、圧電素子の支持構造を簡素化することができ、これにより圧電型加速度センサの製造工程を簡素化してその製造コスト低減を図ることができる。しかも、圧電素子は金属製のカバーに固定されているので、その支持強度を十分に確保することが容易に可能となる。
【0017】
また、本願発明に係る圧電型加速度センサにおいては、上面の所定位置に弾性部材が配置された状態にある回路基板に対して、その上方側からカバーを装着することにより、圧電素子の下面側電極と回路基板の導電層の一部とを導通させることができるので、従来のようにボンディングワイヤ等の配置による導通を図る必要がなくなり、この点においても圧電型加速度センサの製造コスト低減を図ることができる。
【0018】
このように本願発明によれば、圧電素子の撓み変形を利用して加速度を検出するように構成された圧電型加速度センサにおいて、その製造を容易にかつ低コストで行うことができるとともに圧電素子の支持強度を十分に確保することができる。
【0019】
しかも、本願発明に係る圧電型加速度センサにおいて、その圧電素子の下面側電極と回路基板の導電層の一部との導通を図るためには、圧電素子と回路基板との間に弾性部材を配置すれば足りるので、圧電型加速度センサを薄型に形成することが容易に可能となる。特に、従来のようにボンディングワイヤを配置する必要がなくなるので、このボンディングワイヤとカバーとの短絡を防止するためのスペースをケース内に確保する必要もなくなり、その分だけ圧電型加速度センサを薄型化することができる。
【0020】
上記構成において、ケース内における回路基板の上面に、圧電素子の両電極間に生じる電圧に応じた信号を出力するための電子部品が、回路基板の導電層の一部と導通するようにして実装された構成とすれば、圧電型加速度センサをより実用に適したものとすることができる。その際、本願発明に係る圧電型加速度センサは、その圧電素子が従来のように回路基板に実装された構成とはなっていないので、電子部品の実装スペースを確保することが容易に可能となり、これにより圧電型加速度センサの小型化を図ることも容易に可能となる。
【0021】
上記構成において、圧電素子を片持ち梁状に形成すれば、その支持構造を簡素化することができるとともに圧電素子自体の製造を容易に行うことができ、これにより圧電型加速度センサをより低コストで製造することができる。
【0022】
その際、この片持ち梁状に構成された圧電素子の先端部に、重錘が取り付けられた構成とすれば、圧電素子を小さな荷重入力に対しても容易に撓み変形させることが可能となり、これにより加速度検出の感度を高めることができる。
【0023】
上記構成において、圧電素子が、該圧電素子と略同一の平面形状を有する金属板に接着固定された構成とすれば、衝撃荷重等のような大きな荷重が作用した場合においても圧電素子が破損してしまうおそれを小さくすることができる。この場合において、金属板は圧電素子の上下いずれの面に対して接着固定されていてもよく、その両面に接着固定された構成とすることも可能である。その際、この金属板の接着固定が圧電素子の上面に対して行われるようにすれば、圧電素子が撓み変形したときに該圧電素子において最も大きな荷重が作用することとなるカバーへの導通固定部分を金属板で構成することができ、これにより圧電素子に対する補強効果を高めることができる。
【0024】
上記弾性部材の具体的な構成が特に限定されないことは上述したとおりであるが、これをねじりコイルバネにより構成すれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0025】
すなわち、仮に弾性部材を、例えば通常のコイルバネで構成したとすると、このコイルバネの端部を導電層の一部にハンダ付けしたような場合には、そのハンダがコイルバネの本体部分に流れ込んでしまい、バネとしての機能が阻害されてしまうおそれがあるが、弾性部材をねじりコイルバネで構成することにより、このねじりコイルバネの端部を導電層の一部にハンダ付けしたような場合においても、そのハンダがねじりコイルバネの本体部分までは流れ込まないようにすることが可能となり、これによりバネとしての機能が阻害されてしまうのを未然に防止することができる。また、弾性部材をねじりコイルバネで構成することにより、このねじりコイルバネを配置するのに必要な上下方向の幅を比較的小さく抑えることができ、これにより圧電型加速度センサの薄型化を図ることが容易に可能となる。
【0026】
あるいは、上記弾性部材を板バネにより構成した場合においても、その形状を適当に設定することにより、この板バネの端部を導電層の一部にハンダ付けしたときに、そのハンダの流れ込みによりバネとしての機能が阻害されてしまわないようにすることが容易に可能となる。また、このように弾性部材を板バネにより構成した場合においても、この板バネを配置するのに必要な上下方向の幅を比較的小さく抑えることができ、これにより圧電型加速度センサの薄型化を図ることが容易に可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0028】
図1は、本願発明の一実施形態に係る圧電型加速度センサ10を示す平面図であり、図2は、図1のII-II
線断面図である。
【0029】
これらの図に示すように、本実施形態に係る圧電型加速度センサ10は、ケース12内に、圧電素子14と、電子部品としてのFET16およびチップ抵抗18と、弾性部材としてのねじりコイルバネ20とが収容されてなり、圧電素子14の撓み変形を利用して上下方向の加速度を検出するようになっている。そして、この圧電型加速度センサ10は、例えばハードディスク等の外部機器の基板に表面実装された状態で用いられるようになっている。
【0030】
ケース12は、水平方向に延びるように配置された回路基板22と、この回路基板22に上方側から装着されたカバー24とからなっている。
【0031】
図3は、上記圧電型加速度センサ10を、その回路基板22にカバー24が装着される前の状態で示す平面図であり、図4は、その回路基板22にカバー24が装着される際の様子を示す、図2と同様の図である。
【0032】
これらの図にも示すように、回路基板22は、略矩形状の平面形状を有しており、その長手方向の長さが5mm程度、長手直交方向の長さが3mm程度、その板厚が0.1mm程度の値に設定されている。そして、この回路基板22における4つのコーナ部および長手方向中央の両側縁部には、それぞれ円弧状の切欠き部が形成されている。
【0033】
この回路基板22の上面には所定パターンで導電層26A、26B、26Cが形成されており、その下面には所定パターンで導電層26B、26Cが形成されている。その際、この回路基板22の上下両面に形成された導電層26Bは、スルーホール26aを介して互いに導通している。この点は導電層26Cに関しても同様である。また、この回路基板22の上下両面には、それぞれ所定パターンで絶縁層30A、30Bが形成されている。
【0034】
カバー24は、板厚0.1mm程度の金属板のプレス成形品であって、回路基板22よりも一回り小さい略矩形状の平面形状で下方へ向けて開口しており、その高さは、0.9mm程度の値に設定されている。このカバー24は、回路基板22に装着されたとき、その上面に形成された導電層26Cと導通するようになっている。
【0035】
圧電素子14は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系セラミックス製の素子本体の上下両面に、その全域にわたって膜状の電極28A、28Bが形成されてなる板状部材であって、回路基板22の長手方向に延びる横長矩形状の平面形状を有している。その際、この圧電素子14は、その回路基板22の長手方向の長さが2mm程度、長手直交方向の長さが1mm程度の値に設定されており、その板厚は0.04mm程度の値に設定されている。そして、この圧電素子14の上面には、該圧電素子14と同一の平面形状を有する板厚0.05mm程度の金属板32が接着固定されている。この接着固定は、被接着物相互間で導電性が確保される態様で行われている。なお、本実施形態に係る圧電型加速度センサ10において、導通を必要とする他の部分の接着固定についても同様である。
【0036】
この圧電素子14は、その上面側電極28Aの長手方向の一端部において、金属板32および金属片34を介してカバー24に導通固定されており、これにより圧電素子14は片持ち梁状に形成されている。
【0037】
金属片34は、0.1mm程度の板厚を有する略正方形の平板部材として構成されており、その中央には、回路基板22の長手直交方向に延びる長円形の開口部34aが形成されている。この金属片34は、その圧電素子14との導通固定部から圧電素子14の先端部とは反対側に変位した状態で配置されており、その開口部34aの側端縁に圧電素子14の基端縁を一致させるようにした状態で金属板32に接着固定されている。そして、この金属片34は、カバー24の上部底面に対しても接着固定されている。このような金属片34を介在させることにより、金属板32の上面とカバー24の上部底面との間に、金属片34の板厚分の隙間を確保し、これにより圧電素子14が撓み変形したときでも金属板32とカバー24とが干渉してしまわないようにしている。
【0038】
圧電素子14の先端部の下面には、重錘36が接着固定されている。この重錘36は、圧電素子14よりもやや広幅の金属製ブロックとして構成されており、その回路基板22の長手方向に沿った長さは1mm程度、その肉厚は0.3mm程度の値に設定されている。
【0039】
FET16およびチップ抵抗18は、圧電素子14の両電極28A、28B間に生じる電圧に応じた信号を出力するための電子部品として回路基板22の上面に実装されている。その際、これらFET16およびチップ抵抗18は、圧電素子14の基端縁からその長手方向に外れた位置に配置されている。
【0040】
FET16は、入力端子16aと、出力端子16bと、2本の接地端子16cを有するMOS型等のFET(電界効果トランジスタ)であって、その入力端子16aを導電層26A、その出力端子16bを導電層26B、その各接地端子16cを導電層26Cにそれぞれ導通させるようにして、回路基板22にハンダ付けされている。
【0041】
チップ抵抗18は、高抵抗(例えば10MΩ程度)のチップ抵抗であって、その各端子を導電層26A、26Cにそれぞれ導通させるようにして、回路基板22にハンダ付けされている。
【0042】
ねじりコイルバネ20は、金属製のねじりコイルバネであって、コイル部20Aと、このコイル部20Aの両端部から同じ側へ延出する1対のコイル端末20B、20Cとからなっている。
【0043】
このねじりコイルバネ20は、その線径が0.1mm程度で、そのコイル部20Aの巻き径が0.3mm程度に設定されており、その各コイル端末20B、20Cは、それぞれコイル軸方向外方へ向けて折れ曲がるようにしてL字状に形成されている。その際、コイル端末20Bは、コイル部20Aから該コイル端末20BのL字コーナ部までの長さが比較的長めに設定されており、一方、コイル端末20Cは、コイル部20Aから該コイル端末20CのL字コーナ部までの長さが比較的短めに設定されている。
【0044】
このねじりコイルバネ20は、圧電素子14における金属片34との導通固定位置の下面と回路基板22の上面との間に設けられている。その際、このねじりコイルバネ20は、そのコイル軸が回路基板22の長手方向に延びるように配置されており、そのコイル端末20Bにおいて回路基板22の導電層26Aと導通するとともに、そのコイル端末20Cにおいて圧電素子14の下面側電極28Bと導通するようになっている。
【0045】
コイル端末20Bは、そのL字コーナ部においてハンダ38により回路基板22にハンダ付けされるとともに、このL字コーナ部の両側近傍の2箇所において耐熱性に優れた接着剤40により回路基板22に接着固定されている。このコイル端末20Bは、平面視において、重錘36から外れた位置において圧電素子14の先端位置近傍まで長尺で延びており、これにより回路基板22に対して安定的に固定されるようなっている。
【0046】
一方、コイル端末20Cは、カバー24が回路基板22に装着されたとき、カバー24に予め導通固定されている圧電素子14に当接して、その下面側電極28Bと導通するとともに、圧電素子14により下方側へ押圧されて弾性変形し、これにより下面側電極28Bとの導通状態を確実に保持するようになっている。なお、図3、4において、実線で示すコイル端末20Cの位置は、カバー24が装着される前の位置を示しており、2点鎖線で示すコイル端末20Cの位置は、カバー24が装着された後の位置を示している。
【0047】
これにより圧電素子14は、その上面側電極28Aが、金属板32、金属片34およびカバー24を介して回路基板22の導電層26Cと導通するとともに、その下面側電極28Bが、弾性部材20を介して回路基板22の導電層26Aと導通するようになっている。
【0048】
そして、本実施形態に係る圧電型加速度センサ10においては、上下方向の加速度により圧電素子14が撓み変形したとき、その両電極28A、28B間に生じる電圧に応じた信号を外部へ出力するようになっている。その際、圧電素子14と並列に配置された高抵抗のチップ抵抗18によりハイパスフィルタを構成するとともに、FET16によりインピーダンス変換を行って出力インピーダンスを下げ、これにより圧電型加速度センサ10を実用に適したものとするようになっている。
【0049】
以上詳述したように、本実施形態に係る圧電型加速度センサ10は、上下両面に電極28A、28Bが形成された板状の圧電素子14の撓み変形を利用して上下方向の加速度を検出するように構成されており、その圧電素子14を収容するケース12は、上面に所定パターンで導電層26A、26B、26Cが形成された回路基板22と、この回路基板22に対してその導電層26Cと導通するようにして上方側から装着された金属製のカバー24とからなっているが、その際、圧電素子14はその上面側電極28Aの所定部位において撓み変形し得る態様でカバー24に導通固定されており、また、圧電素子14におけるカバー24との導通固定位置の下面と回路基板22の上面との間には、金属製のねじりコイルバネ20が圧電素子14の下面側電極28Bと回路基板22の導電層26Aとに導通するようにして設けられているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0050】
すなわち、本実施形態に係る圧電型加速度センサ10は、その圧電素子14が上面側電極28Aの所定部位において撓み変形し得る態様でカバー24に導通固定されているので、従来の圧電型加速度センサのように圧電素子が撓み変形し得る態様で回路基板に固定された構成となっている場合に比して、圧電素子14の支持構造を簡素化することができ、これにより圧電型加速度センサ10の製造工程を簡素化してその製造コスト低減を図ることができる。しかも、圧電素子14は金属製のカバー24に固定されているので、その支持強度を十分に確保することが容易に可能となる。
【0051】
また、本実施形態に係る圧電型加速度センサ10においては、上面の所定位置にねじりコイルバネ20が配置された状態にある回路基板22に対して、その上方側からカバー24を装着することにより、圧電素子14の下面側電極28Bと回路基板22の導電層26Aとを導通させることができるので、従来のようにボンディングワイヤ等の配置による導通を図る必要がなくなり、この点においても圧電型加速度センサ10の製造コスト低減を図ることができる。
【0052】
このように本実施形態によれば、圧電素子14の撓み変形を利用して加速度を検出するように構成された圧電型加速度センサ10において、その製造を容易にかつ低コストで行うことができるとともに圧電素子14の支持強度を十分に確保することができる。
【0053】
しかも、本実施形態に係る圧電型加速度センサ10において、その圧電素子14の下面側電極28Bと回路基板22の導電層26Aとの導通を図るためには、圧電素子14と回路基板22との間にねじりコイルバネ20を配置すれば足りるので、圧電型加速度センサ10を薄型に形成することが容易に可能となる。特に、従来のようにボンディングワイヤを配置する必要がなくなるので、このボンディングワイヤとカバー24との短絡を防止するためのスペースをケース12内に確保する必要もなくなり、その分だけ圧電型加速度センサ10を薄型化することができる。
【0054】
また、本実施形態に係る圧電型加速度センサ10においては、ケース12内における回路基板22の上面に、圧電素子14の両電極28A、28B間に生じる電圧に応じた信号を出力するためのFET16およびチップ抵抗18が、回路基板22の導電層26A、26B、26Cと適宜導通するようにして実装された構成となっているので、圧電型加速度センサ10をより実用に適したものとすることができる。その際、本実施形態に係る圧電型加速度センサ10は、その圧電素子14が従来のように回路基板に実装された構成とはなっていないので、FET16およびチップ抵抗18の実装スペースを確保することが容易に可能となり、これにより圧電型加速度センサ10の小型化を図ることも容易に可能となる。
【0055】
さらに、本実施形態に係る圧電型加速度センサ10においては、圧電素子14が片持ち梁状に形成されているので、その支持構造を簡素化することができるとともに圧電素子14自体の製造を容易に行うことができ、これにより圧電型加速度センサ10をより低コストで製造することができる。
【0056】
その際、この片持ち梁状に構成された圧電素子14の先端部には、重錘36が取り付けられているので、圧電素子14を小さな荷重入力に対しても容易に撓み変形させることが可能となり、これにより加速度検出の感度を高めることができる。
【0057】
また、本実施形態に係る圧電型加速度センサ10においては、圧電素子14が、該圧電素子14と同一の平面形状を有する金属板32に接着固定されているので、衝撃荷重等のような大きな荷重が作用した場合においても圧電素子14が破損してしまうおそれを小さくすることができる。その際、この金属板32の接着固定は、圧電素子14の上面に対して行われているので、圧電素子14が撓み変形したときに該圧電素子14において最も大きな荷重が作用することとなるカバー24(に固定された金属片34)への導通固定部分を金属板32で構成することができ、これにより圧電素子14に対する補強効果を高めることができる。
【0058】
さらに、本実施形態に係る圧電型加速度センサ10においては、弾性部材としてねじりコイルバネ20が用いられているので、そのコイル端末20Bが導電層26Aにハンダ付けされているにもかかわらず、そのハンダ38がねじりコイルバネ20のコイル部20Aまでは流れ込まないようにすることが可能となり、これによりバネとしての機能が阻害されてしまうのを未然に防止することができる。また、このように弾性部材としてねじりコイルバネ20が用いられていることにより、このねじりコイルバネ20を配置するのに必要な上下方向の幅を比較的小さく抑えることができ、これにより圧電型加速度センサ10の薄型化を図ることが容易に可能となる。
【0059】
しかも、このように弾性部材としてねじりコイルバネ20が用いられていることにより、重錘36の直下にねじりコイルバネ20が配置されないようにすることが可能となるので、板バネ等を用いるようにした場合に比して、重錘36の下方への可動範囲を十分に確保することが容易に可能となり、その分だけ大きな重錘36を用いることができる。そしてこれにより、圧電素子14を小さな荷重入力に対しても容易に撓み変形させて、加速度検出の感度を高めることができる。
【0060】
また、本実施形態に係る圧電型加速度センサ10においては、ねじりコイルバネ20のコイル端末20Bが、そのL字コーナ部(すなわち回路基板22にハンダ付けされている部分)の両側近傍の2箇所において、耐熱性に優れた接着剤40により回路基板22に接着固定されているので、圧電型加速度センサ10が外部機器の基板に表面実装される際、リフロー処理が行われることにより、その際の熱でハンダ38が溶けてしまうようなことがあったとしても、ねじりコイルバネ20を回路基板22に対して位置決めしておくことが可能となる。
【0061】
なお、上記実施形態のねじりコイルバネ20に対して、そのコイル端末20B、20Cの長さや形状等が異なるねじりコイルバネを用いるようにすることも可能である。
【0062】
また、上記実施形態においては、ケース12内に、圧電素子14とともにFET16およびチップ抵抗18が収容された構成となっているものとして説明したが、これらFET16およびチップ抵抗18以外の電子部品が収容された構成、あるいは、これらFET16およびチップ抵抗18が収容されておらず圧電素子14のみが収容された構成とすることも可能である。
【0063】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0064】
図5は、本変形例に係る圧電型加速度センサ110を示す平面図であり、図6は、図5のVI-VI 線断面図である。また、図7は、上記圧電型加速度センサ110を、その回路基板22にカバー24が装着される前の状態で示す平面図であり、図8は、その回路基板22にカバー24が装着される際の様子を示す、図6と同様の図である。
【0065】
これらの図に示すように、本変形例に係る圧電型加速度センサ110は、その基本的な構成は上記実施形態の場合と同様であるが、上記実施形態のねじりコイルバネ20の代わりに板バネ120が弾性部材として用いられている点で上記実施形態の場合と異なっており、また、圧電素子14に接着固定された金属板32とカバー24とを導通固定するための金属片134の構成および重錘136の構成が、上記実施形態の金属片34および重錘36と異なっている。
【0066】
板バネ120は、板厚0.05mm程度の金属製の板バネであって、平面視において略E字形に形成されている。すなわち、この板バネ120は、3本の脚部120A、120B、120Cと、これら3本の脚部120A、120B、120Cの基端部を連絡する連絡部120Dとからなっている。その際、両側に位置する1対の脚部120A、120Bおよび連絡部120Dは、同一平面上において平板状に形成されており、中央に位置する脚部120Cは、その基端部から先端部へ向けて上向きに延びる曲面板状に形成されている。その際、この脚部120Cは、サインカーブに略沿って上向きに湾曲しており、このサインカーブの山を僅かに越えたあたりにその先端縁が位置している。また、この脚部120Cは、各脚部120A、120Bおよび連絡部120Dに対して2倍程度の幅で形成されている。
【0067】
この板バネ120も、上記実施形態のねじりコイルバネ20と同様、圧電素子14における金属片134との導通固定位置の下面と回路基板22の上面との間に設けられている。その際、この板バネ120は、中央の脚部120Cにおいて圧電素子14の下面側電極28Bと導通するとともに、その両側の脚部120A、120Bにおいて回路基板22の導電層26Aと導通するようになっている。
【0068】
これを実現するため、板バネ120は、その3本の脚部120A、120B、120Cが回路基板22の長手方向に延びるように配置されるとともに、その連絡部120Dがカバー24の外周壁における圧電素子14の先端部側に位置する部分の近傍に配置されるようにした状態で、回路基板22に固定されている。この固定は、両側に位置する1対の脚部120A、120Bの各々を、その先端部においてハンダ138により回路基板22にハンダ付けすることにより行われている。
【0069】
また、中央の脚部120Cは、カバー24が回路基板22に装着されたとき、カバー24に予め導通固定されている圧電素子14に当接して、その下面側電極28Bと導通するとともに、圧電素子14により下方側へ押圧されて弾性変形し、これにより下面側電極28Bとの導通状態を確実に保持するようになっている。
【0070】
その際、板バネ120は、その脚部120Cが圧電素子14により押圧されて弾性変形するのに伴って、その連絡部120Dが幾分浮き上がった状態となるが、この連絡部120Dに対して、圧電素子14が撓み変形したときにその重錘136が干渉してしまうようなことはない。なお、図7、8において、実線で示す脚部120Cおよび連絡部120Dの位置は、カバー24が装着される前の位置を示しており、2点鎖線で示す脚部120Cおよび連絡部120Dの位置は、カバー24が装着された後の位置を示している。
【0071】
本変形例の金属片134は、上記実施形態の金属片34よりもかなり大きいサイズで形成されており、その回路基板22の長手方向中央部には、他の部位よりも厚肉で長手直交方向に延びる帯状突起部134aが形成されている。そして、この金属片134は、その帯状突起部134aにおいて圧電素子14の基端部と導通固定するようになっている。その際、帯状突起部134aは0.2mm程度の肉厚で形成されており、他の部位は0.1mm程度の肉厚で形成されている。この金属片134は、その帯状突起部134aの側端縁に圧電素子14の基端縁を一致させるようにした状態で金属板32に接着固定されている。そして、この金属片134は、カバー24の上部底面に対して広い範囲にわたって接着固定されている。
【0072】
重錘136は、その平面形状は上記実施形態の重錘36と同一であるが、そのその肉厚は上記実施形態の重錘36よりもやや薄く、0.2mm程度の値に設定されている。これは、金属片134の帯状突起部134aが上記実施形態の金属片34よりも0.1mm程度厚肉になっていることに対応させたものである。
【0073】
本変形例に係る圧電型加速度センサ110においても、上記実施形態の場合と同様、その製造を容易にかつ低コストで行うことができるとともに、圧電素子14の支持強度を十分に確保することができる。
【0074】
しかも、本変形例に係る圧電型加速度センサ110のように、弾性部材を板バネ120により構成することにより、これを回路基板22に対してハンダ付けする際の取扱いが容易となり、これにより圧電型加速度センサ110の製造を一層容易化することができる。
【0075】
また、本変形例に係る圧電型加速度センサ110は、その金属片134が上記実施形態の金属片34よりもかなり大きいサイズで形成されており、かつ、その圧電素子14に対する支持が、長手方向中央部の帯状突起部134aにおいて行われているので、圧電素子14の支持強度を一層高めることができる。ただし、本変形例に係る圧電型加速度センサ110においても、金属片134の代わりに上記実施形態の金属片34を用いることが可能であり、このようにした場合には圧電型加速度センサ110をさらに薄型化することが可能となる。
【0076】
さらに、本変形例に係る圧電型加速度センサ110においても、板バネ120における両側の各脚部120A、120Bを、その先端部において回路基板22にハンダ付けしたときに、そのハンダ138が中央の脚部120Cにまで流れ込んでしまうことはないので、バネとしての機能が阻害されてしまうことはない。
【0077】
また、本変形例に係る圧電型加速度センサ110においても、各脚部120A、120Bを、その先端部近傍部位において回路基板22に接着しておき、これによりリフロー処理対策を図るようにしてもよい。
【0078】
なお、上記実施形態および変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本願発明の一実施形態に係る圧電型加速度センサを示す平面図
【図2】図1のII-II 線断面図
【図3】上記圧電型加速度センサを、その回路基板にカバーが装着される前の状態で示す平面図
【図4】上記圧電型加速度センサにおいて、その回路基板にカバーが装着される際の様子を示す、図2と同様の図
【図5】上記実施形態の変形例に係る圧電型加速度センサを示す平面図
【図6】図5のVI-VI 線断面図
【図7】上記変形例に係る圧電型加速度センサを、その回路基板にカバーが装着される前の状態で示す平面図
【図8】上記変形例に係る圧電型加速度センサにおいて、その回路基板にカバーが装着される際の様子を示す、図6と同様の図
【符号の説明】
【0080】
10、110 圧電型加速度センサ
12 ケース
14 圧電素子
16 FET(電子部品)
16a 入力端子
16b 出力端子
16c 接地端子
18 チップ抵抗(電子部品)
20 ねじりコイルバネ(弾性部材)
20A コイル部
20B、20C コイル端末
22 回路基板
24 カバー
26A、26B、26C 導電層
26a スルーホール
28A 上面側電極
28B 下面側電極
30A、30B 絶縁層
32 金属板
34、134 金属片
34a 開口部
36、136 重錘
38、138 ハンダ
40 接着剤
120 板バネ(弾性部材)
120A、120B、120C 脚部
120D 連絡部
134a 帯状突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下両面に電極が形成された板状の圧電素子と、この圧電素子を収容するケースとを備えてなり、上記圧電素子の撓み変形を利用して上下方向の加速度を検出するように構成された圧電型加速度センサにおいて、
上記ケースが、上面に所定パターンで導電層が形成された回路基板と、この回路基板に対して上記導電層の一部と導通するようにして上方側から装着された金属製のカバーとからなり、
上記圧電素子が、該圧電素子の上面側電極の所定部位において、撓み変形し得る態様で上記カバーに導通固定されており、
上記圧電素子における上記カバーとの導通固定位置の下面と上記回路基板の上面との間に、導電性を有する弾性部材が、上記圧電素子の下面側電極と上記回路基板の導電層の一部とに導通するようにして設けられている、ことを特徴とする圧電型加速度センサ。
【請求項2】
上記ケース内における上記回路基板の上面に、上記圧電素子の両電極間に生じる電圧に応じた信号を出力するための電子部品が、上記回路基板の導電層の一部と導通するようにして実装されている、ことを特徴とする請求項1記載の圧電型加速度センサ。
【請求項3】
上記圧電素子が、片持ち梁状に形成されている、ことを特徴とする請求項1または2記載の圧電型加速度センサ。
【請求項4】
上記圧電素子の先端部に、重錘が取り付けられている、ことを特徴とする請求項3記載の圧電型加速度センサ。
【請求項5】
上記圧電素子が、該圧電素子と略同一の平面形状を有する金属板に接着固定されている、ことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の圧電型加速度センサ。
【請求項6】
上記弾性部材が、ねじりコイルバネにより構成されている、ことを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の圧電型加速度センサ。
【請求項7】
上記弾性部材が、板バネにより構成されている、ことを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の圧電型加速度センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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