説明

圧電素子を備える弾性橋梁支承

橋梁の床版と橋脚との間に設置し、前記橋梁の床版の荷重と変形により発生する衝撃力を減少させる橋梁用弾性支承に多数の圧電素子を装着することにより、橋梁の床版に作用する車両の荷重を計測するとともに、車両通行の際に発生する振動エネルギーを用いて電気エネルギーを生産する、圧電素子を備える弾性橋梁支承の提供。
本発明の圧電素子を備える弾性橋梁支承は、橋梁床版の底面に固設されるアッパープレート(50)と、橋脚の上面に固設されるベースプレート(10)と、前記アッパープレート(50)と前記ベースプレート(10)にそれぞれ締結ボルト(22、42)によって締着される上部固定板(40)及び下部固定板(20)と、前記上部固定板(40)および前記下部固定板(20)に上下両面がそれぞれ熱融着で固定されるとともに、内部には多数の鋼鉄板(31)が多層状に埋め込まれたゴムパッド(30)とを含んでなる橋梁用弾性支承において、前記弾性支承には橋梁の床版から伝達される振動を電気エネルギーに変換させるための多数の圧電素子(1)が構成され、前記圧電素子(1)はゴムパッド(30)内でそれぞれの鋼鉄板(31)の間に積層構成されることを特徴とする。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁支承に関するもので、さらに詳しくは、橋梁の床版支持のために設置される橋座装置の一種である弾性支承に圧電素子を備えることにより、橋梁の床版に作用する車両の荷重を計測するとともに、車両通行の際に発生する振動を電気エネルギーとして活用するようにするためのものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、現代社会において、電気は生活の一部になった必須的エネルギー形態である。このような電気エネルギーは、既に火力、水力、原子力などの様々な方式によって得られており、その特性も優れる。ところが、継続的なエネルギー生産による資源の枯渇とそれによるエネルギー生産の限界性、高費用、及び発電システムによる環境汚染などの多くの問題点を抱えている。よって、最近、かかる問題を認識した各国は、代替エネルギーの開発に対する投資を拡大しつつある。例えば、重点的に開発されている代表的な代替エネルギーとしての太陽光を用いた電圧発生装置が提案されている。これは、太陽光を直接受光する太陽電池を構成し、その太陽電池から発生する電圧を均一に維持する定電圧回路を媒介として蓄電池に前記太陽電池からの電圧を充電させ、必要の際に補助電源として使用できるようにする。
【0003】
しかしながら、前記太陽電池を用いた電力生産は、効率が低い、光量による発電量の違いが大きい、夜には生産できないなどの欠点があって、太陽電池は、一国の主エネルギー源としての役割は果たすことができず、補助的又は試験的なエネルギー源になるしかない。
【0004】
また、潮力、風力及び水力発電によるエネルギー生成装置は、自然条件が適合した地域でのみ補助電源として使用することが可能であり、それによる発生電圧も期待に及ばないか周辺環境による制約を多く受けるうえ、初期施設投資費用が莫大であって一般的であるとはいえない。
【0005】
これにより、代替エネルギー源としてエネルギーのリサイクルに対する関心が増加しつつある。本発明は、エネルギーのリサイクルとして、橋梁の振動エネルギーを電気エネルギーに変換し、前記橋梁に必要な電源を供給することができるようにする。
【0006】
最近、韓国では、全国の橋梁の数が約23,000個に達しており、これからも橋梁の数はさらに増加し、橋梁の規模及び長さも益々大きくなるだろうと予想される。このような橋梁は橋脚上に床版を載せる構造を有し、橋梁上には車両などが高速で通行するので、橋梁には時々刻々変わる動荷重が作用する。特に、大きい橋梁は、その床版の長さが長いため、季節の変化に伴う温度変化による熱変形によって床版の伸縮量が大きくなるので、床版と橋脚との接触部位で相対運動を許容するように設計しなければならない。また、地震などにより橋梁に水平方向に及ぶ大きい衝撃力に備えて、水平方向の衝撃力を緩和させることが可能な支持構造を有しなければならず、前記橋梁には橋梁床版と橋脚との間に弾性支承を設け、床版の変位に対応しながら床版を支持して床版への衝撃力を減少させるようにする。
【0007】
前述したような橋梁の弾性支承は橋梁への衝撃力を減少させるためのものである。前記弾性支承には橋梁に発生する衝撃力がそのまま伝達され、この衝撃力により振動エネルギーが発生する。
【0008】
ところが、従来では、橋梁の床版の荷重と車両走行の際に発生する振動エネルギーの伝達を受ける弾性支承が、前記振動エネルギーの衝撃力を減少させるものに過ぎず、前記橋梁の床版の荷重と車両走行の際に発生する振動エネルギーをリサイクルすることなく浪費している実情であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、橋梁の振動エネルギーをリサイクルことができるようにするためのもので、機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換させることが可能な圧電素子を橋梁弾性支承に適用することにより、橋梁のメンテナンスに必要なエネルギーを環境にやさしく得ることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、橋梁床版の底面に固設されるアッパープレートと、橋脚の上面に固設されるベースプレートと、前記アッパープレートと前記ベースプレートにそれぞれ締結ボルトによって締着される上部固定板及び下部固定板と、前記上部固定板及び前記下部固定板に上下両面がそれぞれ熱融着で固定されるとともに、内部には多数の鋼鉄板が多層状に埋め込まれたゴムパッドとを含んでなる橋梁用弾性支承において、前記弾性支承には橋梁の床版から伝達される振動を電気エネルギーに変換させるための薄板状の圧電素子が構成され、前記圧電素子はゴムパッド内の鋼鉄板同士の間に介在することを特徴とする、圧電素子を備える弾性橋梁支承を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、橋梁の床版と橋脚との間に設けられ、前記橋梁の床版の荷重及び変形により発生する衝撃力を減少させる橋梁用弾性支承に多数の圧電素子を装着し、橋梁の床版の荷重と車両の走行により発生する振動エネルギーを圧電効果による電気エネルギーに変換した後、
蓄電池に充電できる電流にエネルギー変換部を介して変換して蓄電池に充電することにより、前記橋梁のメンテナンスのためのセンサーや街路灯などの必要な電源を供給することができるという効果があり、これにより、橋梁で浪費されていた橋梁の振動エネルギーを、弾性支承部に設けられた圧電フィルム部を介して電気エネルギーとしてリサイクルことができるため、代替エネルギーとして活用することができる。
【0012】
特に、このような圧電素子は、鋼鉄板同士の間に積層されることにより、橋梁支承の水平変形発生の際に鋼鉄板によって保護され、機器損傷の発生が防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の弾性橋梁支承の分解図である。
【図2】本発明の弾性橋梁支承の設置状態を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施例に係る圧電素子が備えられたゴムパッドの詳細断面図である。
【図4】図3のA部の拡大図である。
【図5】本発明におけるゴムパッドの水平変形発生時の状態図である。
【図6】本発明の他の実施例に係るゴムパッドの詳細断面図である。
【図7】本発明の別の実施例に係るゴムパッドの詳細断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の具体的な実施例を詳細に説明する。
【0015】
まず、本実施例に係る圧電素子を備える弾性橋梁支承の全体的な構造は、橋梁の上部構造物(床版)の底面に固設されるアッパープレート50と、橋梁の下部構造物(橋脚)の上面に固設されるベースプレート10と、アッパープレート50とベースプレート10の対向する面にそれぞれ固定される上部固定板40及び下部固定板20と、上部固定板20と下部固定板40との間に結合したゴムパッド30とから構成される。上部固定板20と下部固定板40は締結ボルト22、42によってベースプレート10とアッパープレート50にそれぞれ締着される。
【0016】
ゴムパッド30の内部には、ゴムパッド30の膨張を妨害して垂直荷重に対して耐荷力を増大させることにより垂直荷重を受け止めるようにするための多数の鋼鉄板31が所定の間隔で配置される。
【0017】
このようなゴムパッド30の上面と下面はそれぞれ上部固定板20と下部固定板40に密着した状態でそれぞれ熱融着される。
【0018】
特に、本発明におけるゴムパッド30の内部には、橋梁の上版の荷重と車両の走行により発生する振動エネルギーを電気エネルギーに変換する圧電素子1が取り付けられるが、前記圧電素子1は、薄板状をして2枚の鋼鉄板31の間に結合する積層型構造をなすことにより、鋼鉄板31によって上下部が保護されるように配置した。
【0019】
すなわち、図3に示すように、多数の圧電素子1が鋼鉄板31同士の間に面接触形態で積層構成され、各圧電素子1から発生した電流が充電できるように蓄電池2と連結される。
【0020】
また、それぞれの圧電素子1は互いに電気的に直列接続されるが、ゴムパッド30のせん断変形が発生しても電気的短絡現象が防止されるように圧電素子1の相互間を螺旋状のコイル型電線3で連結した。鋼鉄板31には、前記コイル型電線3が貫通するように電線案内孔31aを図4のように設けた。
【0021】
図面中の未説明符号11、51は、それぞれ橋脚および床版コンクリートに埋め込み固定されるアンカーソケットを示す。
【0022】
次に、このような構成を持つ本発明の弾性橋梁支承の施工設置による作用効果について説明する。
【0023】
まず、橋脚と橋梁の床版との間に本発明の弾性支承が施工された状態で、橋梁の床版の荷重と車両の走行により発生する振動力がゴムパッド30へ伝達されることにより、内部に取り付けられている圧電素子1の圧電効果によって電気エネルギーが発生する。
【0024】
すなわち、それぞれの圧電素子1は、ゴムパッド30の流動性によって鋼鉄板31による加圧力が伝達され、これにより、互いに直列に連結されているそれぞれの圧電素子1に圧力が加えられることにより電力生産が行われるが、圧電素子1を介して伝送を受けたAC電流電圧は、トランス(図示せず)で整流された後、整流回路部でDC電圧に変換される。変換された電圧は蓄電池2に充電される。
【0025】
よって、蓄電池2に充電された電流を用いて有無線で過積載車両のモニタリング装置として活用されるか、或いは橋梁の街路灯などの施設物の電力資源として活用されることが可能である。
【0026】
特に、橋梁支承に前記垂直荷重と共に水平変形が発生しても、本発明の圧電素子1は、鋼鉄板31によって保護されるので、損傷発生が防止できる。
【0027】
また、圧電素子1から発生する電流の強さによって橋梁床版の上載荷重の変化を確認することにより、車両重量の間接的な計測に活用されることが好ましい。
【0028】
また、圧電素子1から発生する電流の変動信号を用いて、橋梁構造物の健全性の評価に必要な情報を提供することができる。
【0029】
一方、図6は本発明の他の実施例として、圧電素子1と鋼鉄板31との面接触による酸化発生などの悪影響を防止するために、鋼鉄板31の表面に突起部32を設けたことを示す。
【0030】
すなわち、図示の如く、鋼鉄板31の圧電素子対向側の表面に多数の突起部32を設けると、鋼鉄板と圧電素子との接触が点接触となるので、接触面積を最小化することができて鋼鉄板31の酸化発生による悪影響を最小化することができるとともに、点の形で加圧力が作用するので、より安定な電力生産を図ることができる。
【0031】
また、図7は本発明の別の実施例に係る鋼鉄板31のコーティング構造を示すもので、圧電素子1の対向面に絶縁のためのパラフィン層をコーティングによって形成させたものである。
【0032】
すなわち、コーティング層を形成させるための主材料として、流動パラフィン50〜85重量%に、厚さの均一化を一定に維持させるために、アクリル系再分散粉末樹脂3〜10重量%、消石灰1〜6重量%、MEHEC(Methyl Ethyl Hydroxypropyl Ethyl Cellulose)1〜6重量%を混合した組成物から、パラフィン層33を形成させることが好ましい。
【0033】
この際、成分間の混合安定性のために、BAM(Buthyl Acrylate Monomer)が0.5〜2重量%でさらに混合されてもよい。
【0034】
このように鋼鉄板31の表面にパラフィン層33を形成させると、鋼鉄板31と圧電素子1との間が絶縁状態になるので、圧電素子1内における電気エネルギーの漏洩発生が防止されて蓄電池2側へより安定な電気エネルギーの供給が可能となる。
【0035】
以上、本発明の特定の実施例が説明及び図示されたが、本発明の圧電素子を備える弾性橋梁支承の構造が当業者によって多様に変形実施できることは自明である。
【0036】
ところが、それらの変形実施例は本発明の技術的思想又は範囲から個別的に理解されてはならず、それらの変形実施例についても本発明の特許請求の範囲内に含まれるものと理解すべきであろう。
【符号の説明】
【0037】
1 圧電素子
2 蓄電池
3 コイル型電線
10 ベースプレート
11 アンカーソケット
20 下部固定板
22、42 締結ボルト
30 ゴムパッド
31 鋼鉄板
31a 電線案内孔
32 突起部
33 パラフィン層
34 切開部
40 上部固定板
50 アッパープレート
51 アンカーソケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁床版の底面に固設されるアッパープレートと、橋脚の上面に固設されるベースプレートと、前記アッパープレートと前記ベースプレートにそれぞれ締結ボルトによって締着される上部固定板及び下部固定板と、前記上部固定板および前記下部固定板に上下両面がそれぞれ熱融着で固定されるとともに、内部には多数の鋼鉄板が多層状に埋め込まれたゴムパッドとを含んでなる橋梁用弾性支承において、
前記弾性支承には橋梁の床版から伝達される振動を電気エネルギーに変換させるための多数の圧電素子が高さを異ならしめて一定の間隔で構成され、前記それぞれの圧電素子は2枚の鋼鉄板と一組をなしてゴムパッド内で鋼鉄板同士の間に積層状に構成されることを特徴とする、圧電素子を備える弾性橋梁支承。
【請求項2】
前記圧電素子は薄板状をして前記鋼鉄板と面接触して加圧力が直接伝達されるように構成され、前記鋼鉄板の圧電素子対向面には多数の突起部が設けられることを特徴とする、請求項1に記載の圧電素子を備える弾性橋梁支承。
【請求項3】
前記それぞれの圧電素子は互いに電気的に直列接続され、前記ゴムパッドのせん断変形に対応できるコイル型電線で互いに連結され、前記鋼鉄板には前記コイル型電線が案内されるように電線案内孔が設けられることを特徴とする、請求項1に記載の圧電素子を備える弾性橋梁支承。
【請求項4】
前記鋼鉄板の圧電素子対向面には絶縁のためのパラフィン層がコーティングによって形成されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の圧電素子を備える弾性橋梁支承。
【請求項5】
前記パラフィン層には、厚さの均一化を一定に維持させるために、アクリル系再分散粉末樹脂、消石灰、MEHEC(Methyl Ethyl Hydroxypropyl Ethyl Cellulose)が含まれることを特徴とする、請求項4に記載の圧電素子を備える弾性橋梁支承。
【請求項6】
前記パラフィン層にはBAM(Buthyl Acrylate Monomer)がさらに混合されることを特徴とする、請求項5に記載の圧電素子を備える弾性橋梁支承。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−505383(P2013−505383A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530758(P2012−530758)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【国際出願番号】PCT/KR2009/007080
【国際公開番号】WO2011/040675
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(509080082)コングック ユニヴァーシティ インダストリアル コーペレーション コーポレーション (4)
【Fターム(参考)】