説明

地下タンクの配管プロテクタ

【課題】給油所などの地下に埋設されたタンクの立上配管と横配管との接続部を保護するFRP製の配管プロテクタ(配管保護筒)に関し、製作及び組立を安価に行うことができ、より完全にプロテクタ内への地下水の浸入を防止できるようにする。
【解決手段】地下タンクの上部に取り付けられる下部体と、この下部体の上に取り付けられる上部体と、この上部体の上端開口を覆う蓋体とで構成して、フランジ締結部を一箇所とし、フランジで締結される部材の一方に他方の筒体内に挿入される挿入筒部を設ける。下部体と上部体とは、その接続部に設けたフランジをボルトで締付けて組立てられている。下部体と上部体の一方は、フランジ相互を締付けたときに相手側の筒体内に挿入される挿入筒部を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、給油所などの地下に設けられる地下タンクの配管引き出し部分を保護するプロテクタ(保護筒)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
給油所の地下にはガソリンや軽油を貯蔵するための地下タンクが設置されている。この種の地下タンクは横置き円筒形で、その上部一箇所に、タンク内に燃料を投入するための配管やタンク内の燃料を地上に設置した給油機に供給するための配管が引き出されている。これらの配管は、タンク上部の外壁を貫通してタンク底部に達している立上配管と、この立上配管の上部に接続されて給油機に向けて延びている横配管とで形成されている。配管プロテクタは、この立上配管と横配管の接続部を保護する箱形の部品で、その下縁を溶接や接着剤で地下タンクの胴に固定して取り付けられている。
【0003】
この配管プロテクタは、地下に設けられるため、鉄製のものは腐食しやすい。そこでこの配管プロテクタをFRP(繊維強化樹脂)製とし、この配管プロテクタの内部を点検するために設けられる鉄製のマンホールを配管プロテクタと切り離して設置した構造が日本国特許公開公報2005‐343503号で提案されている。
【0004】
この公報で提案されている構造は、図5に示されており、地下タンク4の立上配管41を囲って取り付けられるプロテクタ1と、プロテクタから離間して設けられるマンホール51とで構成されている。そして、プロテクタ1はFRP製で、地下タンク4の上部に取り付けられる下部体3と、下部体3の上に取り付けられ、立上配管41に接続される横配管42が挿通される中部体16と、中部体16の上に取り付けられる上部体2と、上部体2の上部開口を覆う蓋体11とで構成されている。また、マンホール51は鉄製で、プロテクタ1の上部体2から離間して設けられる枠体57と、枠体57の上部開口を覆うとで構成されている。
【0005】
地下タンクは、地面を掘削して設置し、設置した後に土を埋め戻し、埋め戻した後の地表面を整地して平にする。そのため、整地した後の地表面からのタンクの設置深さに、各地下タンク毎に若干の設置深さの誤差が生ずる。
【0006】
配管プロテクタ1とマンホール51とを切り離した図5に示すような構造では、マンホール51内の地表面55をその周囲の地表面52とを同一高さにする必要がない。従って、マンホール51内の地表面55をタンク4の設置深さに合せた高さにすればよいので、配管プロテクタ1に高さ調整手段を設ける必要はない。そのため従来構造では、鉄製の配管プロテクタと同様な構造、すなわち下部体の上端のフランジ33と中部体の下端のフランジ17とをボルト12で締結して固定し、中部体の上端のフランジ18と上部体の下端のフランジ23とをボルト12で締結して固定するという方法で配管プロテクタ1を組み立てていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005‐343503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の配管プロテクタは、例えば図5に示す構造では、下部体3、中部体16、上部体2及び蓋体11の4個の部材から構成されているように、構成部材の数が多く、製作や組立に手数が掛るという問題があった。
【0009】
また、設置した地下タンクにおいて、配管プロテクタをFRP製としたものは、鉄製の配管プロテクタを設けたものに比べて、配管プロテクタ内へ地下水が浸入する危険性が高いという問題があった。
【0010】
そこでこの発明は、構成部材の数が少なく、従って、配管プロテクタの製作及び組立をより安価に行うことができると共に、地下水の浸入が起りやすいというFRP製の配管プロテクタの欠点を解消して、より完全にプロテクタ内部への地下水の浸入を防止できるFRP製の配管プロテクタを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の発明者らは、FRP製の配管プロテクタへの地下水の浸入が生じやすいのは、埋め戻した土の土圧による配管プロテクタの変形が原因であると考えた。本願発明者らの調査によれば、地下タンクを設置した後に埋め戻した土の土圧により、FRP製の配管プロテクタは、鉄製の配管プロテクタに比較して大きく変形する。配管プロテクタの筒体21、31が土圧によって内側へ押し曲げられる変形により、この筒体の上端や下端に固定されているフランジがこれらを締結しているボルトとボルトの間で波打つように変形し、その隙間から地下水が配管プロテクタの内部に浸入してくると推測された。
【0012】
配管プロテクタを組み立てるときは、ボルトで締結する2枚のフランジの合せ面にシール材(コーキング材)を塗布して締め付けているが、FRP製の配管プロテクタは、土圧によってフランジが大きく変形するので、シールが不完全になり、内部に地下水が浸入してくると推測された。
【0013】
この発明の配管プロテクタは、配管プロテクタを構成する部材の数を少なくして、フランジ締結部を一箇所とし、フランジで締結される部材2、3の一方に他方の筒体内に挿入される挿入筒部32を形成した構造とすることにより、上記課題を解決したものである。
【0014】
フランジ23、33で締結される筒体の一方にこのような挿入筒部32を設けると、図3に示すように、土圧Pによって筒体21、31が内側に屈曲した部分では、筒体21、31に固着されたフランジ23、33が相手側フランジとの間の隙間が開く方向に屈曲するけれども、当該部分では、挿入筒部32が相手側の筒体21に押し付けられる方向に屈曲する。
【0015】
そして、フランジ23、33の間にシール材13を多量に塗ってボルト12でフランジ23、33を締め付けると、シール材13が挿入筒部32と相手側筒体21との間にも進入してゆき、この挿入筒部32と相手側筒体21との間に進入したシール材14が筒体21、31が内側に屈曲した部分のフランジ23、33間からの水の浸入を阻止するのである。フランジ23、33を締付けるとき、挿入筒部32の外周面にもシール材を塗布しておくこともできる。
【0016】
配管プロテクタの筒体21、31の平面形状としては、四隅に90度の円弧部分27を設けた角丸四角形(図2参照)、八隅に頂角45度の円弧部分を設けた角丸八角形ないし円形や楕円形とするのが好ましい。隅に円弧部分27を設けた角形断面、円断面及び楕円断面の筒体は、隅に角がある四角形や八角形の筒体に比較して土圧による変形が小さく、従って、配管プロテクタ1内への地下水の浸入をより確実に防止することができる。
【0017】
更に、角に円弧部分27を設けた四角形や八角形断面及び円ないし楕円断面の筒体は、挿入筒部32と相手側の筒体21との間にOリングのようなリング状のシール材を装着することが可能となり、このようなシールリング15を装着することによって、配管プロテクタ1内への地下水の浸入をより確実に防止できる。
【0018】
配管プロテクタの下部体3は、横置き型の地下タンク4の胴の頂部に固定されるため、その下縁34をタンク4の胴の円筒形に合わせた形に切断する必要がある。この加工は、下部体3の断面形状を四角形としたときが最も容易であり、楕円形としたときが最も困難である。従って、角丸四角形断面の筒体とするのが地下水の浸入の防止と製作の容易さを両立する形状として実用上好ましい。
【0019】
配管プロテクタの筒体21、31の断面形状を角丸四角形とした形状において、上端の開口22及び蓋体11を隅に円弧部分を備えない四角形とするときは、図2に示すように、上端開口の周壁部26ないしその下縁の矩形鍔29を、上部体の筒体21の周壁の平面部分(円弧部分を除いた部分)の幅W1、W2と等しい辺の寸法を備えた四辺形とし、筒体21と上端開口22の周壁部26とを繋ぐ上面25は、上記幅の矩形平面28aと、筒体21の円弧部分27から開口周壁部26の角へと繋がる断面が湾曲した扇形面28bで形成するのが、製造及び土圧に対する強度の点で好ましい。
【0020】
本願の発明に係る地下タンクの配管プロテクタは、地下タンク4の立上配管41を囲んで取り付けられる地下タンクの配管プロテクタにおいて、繊維強化樹脂製で、地下タンクの上部に取り付けられる下部体3と、この下部体3の上に取り付けられる上部体2と、この上部体2の上端開口22を覆う蓋体11とで構成されていることを第1の特徴とする。
【0021】
そして、当該プロテクタの下部体3と上部体2とは、そのそれぞれの筒体31、21の下端と上端に固定されたフランジ33、23をボルト12で締付けることにより組立てられており、当該下部体3と上部体2のいずれかに、フランジ33、23相互を締付けたときに相手側の筒体21内に挿入される挿入筒部32を備えていることを第2の特徴とする。
【0022】
上記構造を備えたこの発明の配管プロテクタにおいて、下部体3及び上部体2の筒体31、21は、四隅に円弧部分27を設けた角丸四角形断面ないし角丸八角形断面とするのが、製作が容易であるなど、実用上の点で好ましい。この場合、上部体の筒体21の上面25は、中央に角のある四角形又は角のある八角形断面の開口周壁部26を設けた角錐面とし、当該角錐面25は、筒体21の円弧部分27と開口周壁部26ないしその下縁の矩形鍔29の角との間に、扇状の面28bが形成される形状とする。
【0023】
一方、下部体3及び上部体2の筒体31、21の断面形状を円筒形とすれば、プロテクタ内部への地下水の浸入を防止する作用を最大にできる。これは、土圧による筒体31、21の変形が小さいこと、及び挿入筒部32とこれが挿入された筒体21との間のシールを容易確実に行うことができるためである。
【発明の効果】
【0024】
上記第1と第2の特徴を備えることにより、下部体3と上部体2とはそのフランジ33、23相互の締付け部における漏水の確実な防止が図られると共に、若干の高さ調整が可能でありながらボルト12で組立てが可能であり、コーキング材13によって、プロテクタ1内への地下水の浸入を確実に防止可能な密閉性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の配管プロテクタの一実施例を示す断面側面図
【図2】図1の配管プロテクタの平面図
【図3】地下水浸入防止作用の原理を示す説明図
【図4】角丸八角形の配管プロテクタの平面図
【図5】従来のFRP製配管プロテクタの例を示す断面側面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、この発明の配管プロテクタの構造を更に説明する。配管プロテクタ1は、地下に埋設された横置き型の地下タンク4の胴の頂面一箇所に下辺を固定して取り付けられている。配管プロテクタ1は、その上端の開口がマンホール51内部の地表面55に露出させた状態で土53内に埋設されている。マンホール51は、配管プロテクタ1から切り離してその上部外側に埋設されている。配管プロテクタ1は、タンク4内に挿入された立上配管41の上部と、この立上配管の上部に接続された横配管42との接続部を囲むように設置されている。
【0027】
配管プロテクタ1は、角丸四角断面の筒体31を備えた下部体3と、同様な断面形状の筒体21及び角のある四角形の上端開口22を備えた上部体2と、上部体2の上端開口22を閉鎖する蓋体11との3個の部材で形成されている。これらの部材は総てFRP製である。
【0028】
下部体3の下辺は、地下タンク4の胴の頂部にガラス繊維で補強した、例えばエポキシなどの接着剤で固着されている。下部体3の角丸四角形の筒体31の上部には、下フランジ33が固着されている。下部体の筒体31は、下フランジ33を越えて上方に突出しており、この突出部が挿入筒部32となっている。下フランジ33には、等ピッチで締結用の多数のボルト孔が設けられている。
【0029】
上部体2は、その内周に下部体の挿入筒部32が挿入可能な寸法の角丸四角断面の筒体21を備えている。筒体21の下端には、上フランジ23が固着されており、下フランジ33のボルト孔に対向する位置にそれぞれボルト孔が設けられている。上部体の筒体21には、現物合せで、すなわちこの上部体の筒体21に横配管42を挿入するときに、その横配管42の位置に合せて配管孔24が加工されている。上部体の筒体21の上面25は、浅い角丸四角錐形に形成され、この上面25の中央に内部点検用の上端開口22の周壁部26が設けられている。
【0030】
上端開口の周壁部26の下縁には、矩形鍔29が形成され、その矩形鍔29の一辺の寸法は、上部体の筒体21の四面の平面部、すなわち四隅の円弧部分27を除いた面の幅寸法W1、W2と等しい。上部体2の上面25は、矩形鍔29と、前記幅W1、W2で斜めに延びる平面28aと、その4面の平面28a相互の間に位置する4枚の扇形面28bとで形成されている。扇形面28bは、底辺を円弧辺とした扇形で、その断面は上面が凸となる方向に僅かに湾曲している。
【0031】
横配管42は、上部体の筒体21に設けた配管孔24を貫通しており、この配管孔の周囲には、横配管42の外周との間の隙間を密封するゴム製のシールリング43が装着されている。立上配管41の上部と横配管42とは、ゴム製の、従って可撓性のある接続具44で接続されている。上端開口22は、この接続部からの燃料の漏れや配管プロテクタ内への地下水の浸入を点検するための開口である。
【0032】
配管プロテクタ1の上方の地表部には、配管プロテクタ1の上部を囲むように鉄製のマンホール51が設置されており、このマンホールには鉄蓋54が取り付けられている。マンホールの外側の地表面52とマンホールの内側の地表面55とは、必ずしもその高さ(レベル)は一致していない。すなわち、マンホール51内の地表面55は、配管プロテクタ1の上端開口22の高さに合せて設定されている。
【0033】
上部体2は、下フランジ33の上面にゲル状のシール材13を多量に塗布した後、上フランジを載せてボルト12で上フランジ23と下フランジ33とを締結することによって下部体3上に固定される。このとき、下部体の挿入筒部32は、上部体の筒体21との間に若干の間隙を持った状態で上部体の筒体21の下端の内側に挿入される。そして、上フランジ23と下フランジ33とを締結したとき、その間に塗布されたシール材13が挿入筒部32と上部体の筒体21との間に押し込まれ(図3の符号14)、フランジ23、33相互の間、及び挿入筒部32と相手側の筒体21との間の両方がシール材13、14で封鎖されることとなる。この挿入筒部32と上部体の筒体21との間に進入したシール材の作用については、前述したとおりである。
【0034】
また、図4に示すように、挿入筒部32にOリング15などのリング状のシールリングを嵌めた状態で上部体の筒体21に挿入すれば、上述のようにして進入したフランジ相互間のシール材に加えて、このシールリング15によるシール効果も発揮させることができる。
【符号の説明】
【0035】
2 上部体
3 下部体
4 タンク
11 蓋体
22 上端開口
21 筒体
22 上端開口
23 上フランジ
25 上面
26 開口周壁部
27 円弧部分
28b 扇形面
31 筒体
32 挿入筒部
33 下フランジ
41 立上配管
42 横配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下に埋設されたタンク(4)の立上配管(41)と横配管(42)との接続部を囲んで地下に設けられる繊維強化樹脂製の地下タンクの配管プロテクタにおいて、地下タンクの上部に取り付けられる下部体(3)と、この下部体(3)の上に取り付けられる上部体(2)と、この上部体(2)の上端開口(22)を覆う蓋体(11)とで構成され、前記下部体(3)と上部体(2)とは、そのそれぞれの筒体(31,21)の下端部と上端部に固着されたフランジ(33,23)をボルト(12)で締付けることにより組立てられ、当該下部体3と上部体2の一方には、フランジ(33,23)相互を締付けたときに相手側の筒体(21)内に挿入される挿入筒部(32)を備えていることを特徴とする、地下タンクの配管プロテクタ。
【請求項2】
前記下部体(3)及び上部体(2)の筒体(31,21)は、四隅に円弧部分(27)を設けた角丸四角形断面ないし角丸八角形断面とされ、上部体の筒体(21)の上面(25)は、中央に角のある四角形又は角のある八角形断面の開口周壁部(26)を備えた角錐面とされ、当該角錐面(25)は、筒体(21)の円弧部分(27)と開口周壁部(26)の角との間に、円弧断面の扇形面(28b)が形成されていることを特徴とする、請求項1記載の配管プロテクタ。
【請求項3】
下部体(3)及び上部体(2)の筒体(31,21)が円筒形であることを特徴とする、請求項1記載の配管プロテクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−84297(P2011−84297A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237577(P2009−237577)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(593140956)玉田工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】