説明

地中に埋設された貯留浸透槽

【課題】複数の種類の貯水空間形成部材21、31を用いて1つの地中に埋設された貯留浸透槽10を形成する場合であっても、従来からある貯水空間形成部材をそのまま用いながら、鉛直荷重に対して十分な耐性を持つことをできるようにする。
【解決手段】貯留浸透槽10は下位貯留浸透槽20と上位貯留浸透槽30とを備える。下位貯留浸透槽20は下位貯水空間形成部材21で形成され、上位貯留浸透槽30は上位貯水空間形成部材31で形成される。2つの貯水空間形成部材における鉛直荷重支持部材間の間隔は異なっており、鉛直荷重支持部材間の間隔は下位の貯水空間形成部材21が上位の貯水空間形成部材31よりも広くされている。そして、下位貯留浸透槽20と上位貯留浸透槽30の間には荷重分散部材40が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水等を一時的に貯留するための地中に埋設された貯留浸透槽に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設した貯留浸透槽に雨水を一時的に流入させることで、大量の降雨があったときに、道路側溝から雨水が道路などに流出するのを抑制し、また、中小河川の排水能力を上回る規模の雨水が河川に流れ込むのを防止できるようにした雨水流出抑制施設は、例えば特許文献1に記載されるように、知られている。
【0003】
そのような雨水流出抑制施設で用いられる貯留浸透槽は、いわゆる貯留槽の場合もあり、浸透槽の場合もある。ここで、貯留槽とは、周囲が非透水性シート(遮水シート)で囲われていて、一時的に貯留された雨水は、ポンプ等で揚水して緑化施設への給水源として用いられるか、または貯留槽に設けられた流出管を通して必要時に河川などに放水される形態のものをいい、浸透槽とは、周囲が透水性シートで覆われていて、一時的に貯留された雨水は、透水性シートを通して徐々に周囲の土壌に浸透していくものをいう。いずれの場合も、貯留浸透槽の構築には、施工の容易性から、特許文献2〜6に記載されるように、樹脂材料からなる貯水空間形成部材が用いられることが多い。また、特許文献7に記載のように、下位に位置する貯水空間形成部材として、耐荷重性が大きいコンクリートブロック槽を用いることも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−24447号公報
【特許文献2】特開2004−211316号公報
【特許文献3】特開2005−54403号公報
【特許文献4】特開2005−211755号公報
【特許文献5】特開2008−223418号公報
【特許文献6】特開2008−291498号公報
【特許文献7】特開2007−315026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
地中に埋設する貯留浸透槽を構築する場合、上方からの荷重に対して十分な強度を備えた貯留浸透槽とすることが必要であり、特に、自動車のような重量物が多く通交する車道の下などに貯留浸透槽を埋設する場合には、作用する鉛直荷重が大きくかつ変動するので、その荷重によって変形や破損が生じないだけの強度を持つように貯留浸透槽を構築することが必要となる。
【0006】
1つの種類の貯水空間形成部材のみで貯留浸透槽の貯水部を形成する場合には、鉛直荷重支持部材の位置および間隔(スパン)が同じであることから、貯水空間形成部材を多段に積み重ねて貯留浸透槽とする場合でも、荷重に耐えるだけの強度を持つ貯留浸透槽を構築することは比較的容易である。しかし、特許文献7に記載のように、異なった種類の貯水空間形成部材を用い、それを上下方向に積み重ねることで1つの貯水部を形成することが必要とされる場合には、貯水空間形成部材が異なると鉛直荷重支持部材の位置がそれぞれ異なるのが普通であり、鉛直荷重支持部材を上下方向に直線状に配置した状態で複数の貯水空間形成部材を積み上げていくことは不可能であるか、可能であるとしても極限られた場合(すなわち、複数の貯水空間形成部材における鉛直荷重支持部材がすべて倍数関係の位置に設けられている等の場合)であり、可能性としては、下位に位置する貯水空間形成部材における鉛直荷重支持部材ではない部分に、上位の貯水空間形成部材の垂直荷重支持部材が位置する場合が多くなる。
【0007】
地中に埋設された貯留浸透槽の場合、雨水とともに流れ込む砂やゴミ等が貯留浸透槽の底部に沈殿物として堆積しがちであることから、貯留浸透槽に沈殿し堆積した砂などを定期的に高圧水やバキュームを用いて除去する作業、すなわちメンテナンス作業がどうしても必要となる。メンテナンス作業を容易に行えるように、下位に位置する貯水空間形成部材は大きな作業用空間を持つことが望ましいが、そのためには、鉛直荷重支持部材間の間隔を大きなものとする必要があり、結果として、貯水空間形成部材の鉛直荷重支持部材でない部分に上位の貯水空間形成部材からの集中荷重が作用する確率が高くなる。それにより、下位に位置する貯水空間形成部材では、鉛直荷重支持部材間を繋ぐ水平面部分での変形や破損が生じやすくなる。それを回避するためには、前記水平面部分の厚みを厚くして強度を大きくするなどの特別の手段を講じることが必要となり、材料単価がアップするのを避けられない。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、複数の種類の貯水空間形成部材を用いて1つの地中に埋設された貯留浸透槽を形成する場合であっても、従来からある貯水空間形成部材をそのまま用いながら、鉛直荷重に対して十分な耐性を持つことをできるようにした貯留浸透槽を開示することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による貯留浸透槽は、地中に埋設された貯留浸透槽であって、少なくとも鉛直荷重を支持する鉛直荷重支持部材間の間隔が異なっている2種類以上の貯水空間形成部材が上下方向に積み上げられて形成されており、前記鉛直荷重支持部材間の間隔は下位の貯水空間形成部材が上位の貯水空間形成部材よりも広くされており、さらに鉛直荷重支持部材間の間隔が異なる下位の貯水空間形成部材と上位の貯水空間形成部材の間には荷重分散部材が配置されていることを特徴とする。
【0010】
上記の貯留浸透槽では、上位の貯水空間形成部材からの荷重はその鉛直荷重支持部材の下端を作用点として下位の貯水空間形成部材に伝達されるが、下位の貯水空間形成部材と上位の貯水空間形成部材の間には荷重分散部材が配置されているので、上位の貯水空間形成部材の鉛直荷重支持部材からの荷重は荷重分散部材によって面方向に分散した状態となって、下位の貯水空間形成部材に作用する。そのために、下位の貯水空間形成部材に集中荷重が作用するのを回避することができ、結果として、上下に位置する貯水空間形成部材間において、互いの鉛直荷重支持部材が一直線状に整列していなくても、また、従来から用いられている貯水空間形成部材をそのまま用いても、下位の貯水空間形成部材に変形や破壊が生じるのを回避することができる。そのために、異なった形態の複数種の貯水空間形成部材を適宜用い、それらを上下方向に積み上げて1つの貯留浸透槽を形成することが可能となり、コストを大きくアップすることなく、種々の形態の貯留浸透槽を構築することができるようになる。
【0011】
代表的には、最も下位に位置する貯水空間形成部材として、鉛直荷重支持部材間の間隔(スパン)が大きなものを用い、上位の貯水空間形成部材として鉛直荷重支持部材間の間隔(スパン)が小さいものを用いて、1つの貯留浸透槽を構築する場合、下位に位置する貯水空間形成部材で形成された貯水槽部分では、人間あるいは機材を入れ込む空間を確保しやすくなり、貯留浸透槽のメンテナンスが容易となる。一方、上位の貯水槽部分では、鉛直荷重支持部材間の間隔が小さいものを用いることで、小さく分割された部品を水平方向と上下方向に組み付けながら貯水槽部分を形成することが可能となり、施工性が大きく向上する。
【0012】
本発明において、荷重分散部材の材料には、貯留浸透槽に予測される上からの荷重の大きさ等を考慮して、適宜の材料を用いることができる。一例として、コンクリート床版、プレキャストコンクリート板、ジオテキスタイル、エキスパンドメタル、グレーチング、または鉄板からなどから選択されるいずれか、または2つ以上の組み合わせ体を挙げることができる。形態の異なる下位の貯水空間形成部材と上位の貯水空間形成部材との境界面に大きな凹凸が存在するような場合には、コンクリート床版やプレキャストコンクリート板を用いることが好ましい。鉛直荷重が比較して小さくかつ両者間の境界面が比較的に平坦面である場合には、ジオテキスタイルのような材料を用いることは望ましく、施工コストの低減が可能となる。
【0013】
前記荷重分散部材は、非透水性であってもよいが、その場合には、下位の貯水空間形成部材と上位の貯水空間形成部材との間での雨水の移動がなくなるので、別に導水路を形成することが必要となる。それを回避するために、好ましくは、荷重分散部材に通水性を有するものを用いる。それにより、上下の貯水空間形成部材におけるその貯水空間を連通させた状態の1つの貯留浸透槽を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の種類の貯水空間形成部材を用いて1つの地中に埋設された貯留浸透槽を形成する場合であっても、従来からある貯水空間形成部材をそのまま用いながら、鉛直荷重に対して十分な耐性を持つことをできる貯留浸透槽が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による貯留浸透槽が道路下に埋設されている雨水流出抑制施設の一態様を道路の路線方向から見て示す概略図(図1(a))と、図1(a)のb−b線による断面図(図1(b))。
【図2】本発明による貯留浸透槽の他の形態を示す図。
【図3】本発明による貯留浸透槽で用いる貯水空間形成部材の一例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施の形態に基づき説明する。
図1は、本発明による貯留浸透槽が道路下に埋設されている雨水流出抑制施設の一態様を示す。図1において、1は道路における車道を示し、2は歩道を示す。車道1と歩道2の間には、道路に沿って側溝3が設けられている。車道1の下には、道路に沿うようにして所要距離にわたり本発明による貯留浸透槽10が埋設されている。そして、前記貯留浸透槽10には、所定の間隔をごとに管理桝11が設置されている。前記管理桝11には、前記側溝3に流れ込んだ雨水が図示しない導水管や集水桝を介して流入し、流入した雨水は管理桝11から前記貯留浸透槽10に入り込んで、そこに一時的に貯留される。貯留浸透槽10が浸透槽の場合には、貯留浸透槽10に貯留された雨水は、時間とともに、周囲の地盤に浸透していく。また、貯留浸透槽10が貯留槽の場合には、図示しないオリフィスを備えた導水管を通して徐々に下水本管や河川に排水される。なお、12は管理桝11の入り口を閉鎖する蓋であり、管理桝11の蓋12を開けて、そこから人が入り込み、貯留浸透槽10や管理桝11自体を保守管理するようにされる。本発明による貯留浸透槽10では、この保守管理作業、すなわちメンテナンス作業が容易となる。
【0017】
前記貯留浸透槽10は、この例において、下位貯留浸透槽20と上位貯留浸透槽30とを上下に積層した構成であり、下位貯留浸透槽20と上位貯留浸透槽30との間には、ジオテキスタイルが荷重分散部材40としての機能を果たすべく配置されている。以下、それらについて説明する。
【0018】
下位貯留浸透槽20は、樹脂製またはコンクリート製の下位貯水空間形成部材21を所要数だけ並置して形成されている。図1(b)に示すように、下位貯水空間形成部材21は断面がほぼ矩形状であり、透水性を有する下横壁22、上横壁23、および下横壁22と上横壁23を繋ぐ左右の縦壁24、25とで形成される。そして、前記下横壁22と上横壁23と左右の縦壁24、25で囲まれた空間が下位貯水空間となる。
【0019】
下位貯留浸透槽20には、前記した上位貯留浸透槽30の荷重に加えて、埋め戻し土壌や車道1を通交する車両等からの荷重が鉛直荷重として作用するが、その鉛直荷重は、主に、左右の縦壁24、25によって支持される。すなわち、下位貯留浸透槽20において、左右の縦壁24、25は鉛直荷重支持部材として機能する。
【0020】
雨水流出抑制施設で用いられる貯留浸透槽10の場合、一般に、貯留浸透槽10の下層部、この例では下位貯留浸透槽20に、雨水とともに流れ込む砂やゴミ等が沈殿物として堆積しがちであることから、それを管理桝11を通して導入する高圧水やバキュームによって除去する作業(メンテナンス作業)が必要とされる。その作業を容易にするために、下位貯留浸透槽20を構成する下位貯水空間形成部材21の上下幅と左右幅は大きくされており、例えば、下横壁22と上横壁23との間の間隔aは25cm程度、左右の縦壁24、25の間隔(スパン)bは50cm程度とされている。
【0021】
上位貯留浸透槽30について説明する。上記した下位貯水空間形成部材21のみを多段に積み上げて、所要の貯水溶量を持つ貯留浸透槽を作ることもできる。しかし、前記したようにメンテナンス性を考慮して、下位貯留浸透槽20を構成する下位貯水空間形成部材21には大型のものが用いられる。一般に、大型の資材は取扱性が良好とはいえず、施工現場までの運搬作業や施工現場での地中への埋設作業等は、小型の資材と比較して困難であり、また施工の自由度も小さくなる。
【0022】
そのために、この例において、上位貯留浸透槽30は、図3に一例を示すような、内部に空間を有する樹脂製の上位貯水空間形成部材31の多数個を交互に交差するようにして多段に積み上げること形成している。なお、この形態の空間を有する貯水空間形成部材はすでに知られたものであり、前記した特許文献1(特開2009−024447号公)や特開2006−266034号公報等に記載されている。
【0023】
図3に示した内部に空間を有する樹脂製の上位貯水空間形成部材31は、特許文献1に記載されるものであり、下端が開放し内部に空間を有する箱状部32aの複数個がX方向に配列した箱列32が、X方向に直交するY方向に間隔Pを空けながら必要列数だけ配列した構成を基本的に備える。1枚の上位貯水空間形成部材31は基本的に正方形であり、その大きさは100×100cm程度である。図3に示すように、上位貯水空間形成部材31の多数枚を、前記箱列32の方向が交互に直角に交差した姿勢で立体姿勢に積み上げることで、前記した上位貯留浸透槽30とされる。必要な場合には、より小型の上位貯水空間形成部材31aを寄せ集めて、また基本の大きさの上位貯水空間形成部材31と組み合わせて、上位貯留浸透槽30を構成することもできる。
【0024】
図3に示す上位貯水空間形成部材31において、1つの箱状部32aの大きさは、X方向幅c:100cm×Y方向幅d:100cm×高さe:100cm程度であり、また、前記箱列32、32間の間隔Pは25cm程度である。そして、箱状部32aの4周の縦壁部33が、前記した埋め戻し土壌や車道1を通交する車両等からの鉛直荷重を支持するための鉛直荷重支持部材として機能する。従って、上位貯留浸透槽30での鉛直荷重支持部材の間隔は、X方向およびY方向のいずれにおいても、下位貯留浸透槽20での鉛直荷重支持部材の間隔よりも狭くなっている。
【0025】
荷重分散部材40について説明する。荷重分散部材40は、上記した上位貯留浸透槽30からの鉛直方向の集中荷重を面方向に分散させるためのものであり、前記したように、この例では透水性を備えたジオテキスタイルを用いている。なお、ジオテキスタイルとは、土木などの用途で広く用いられている材料であり、ジオグリッドも含まれる。ジオグリットの一例として、ポリエステル繊維とアラミド繊維を交繊させたグリッド状の織物を樹脂でコーティングしたファイバーグリッド系ジオグリッドが挙げられる。引張強度は50kN/m〜200kN/m程度であり、重量が50g/m〜1000g/mであり、延び歪みが10%以下であり、軽量であるにもかかわらず強靭で高張力であるといった特性を有する。目合いは、例えば10mm〜50mmのものがよい。他に、ポリエチレンネットタイプの縦ストランドを、アラミド繊維で補強したポリマーグリッド系ジオグリッドも挙げられる。さらに、ジオテキスタイルには、織布(ジオウォーブン)、不織布(ジオノンウォーブン)、編物(ジオニット)が含まれる。
【0026】
上記の例において、上位貯留浸透槽30からの鉛直方向の荷重は、最下位に位置する上位貯水空間形成部材31における箱状部32aの4周の縦壁部33の下縁、および周囲に形成された幅の狭い水平エッジ34等から、集中して荷重分散部材40に作用するが、荷重分散部材40においてその集中荷重は分散され、平均化した状態で、前記した貯留浸透槽10の上横壁23の全面に面荷重として作用する。従って、貯留浸透槽10の上横壁23での上方からの荷重に対する耐力は、荷重分散部材40を配置しない場合よりも小さくすることができ、下位貯留浸透槽20を構成する下位貯水空間形成部材21の低コスト化が可能となる。
【0027】
また、一般に、異なった形態の貯水空間形成部材21、31を積層したときの境界面には嵌合部等の凹凸が存在することとなるが、ジオテキスタイルのように基材が繊維からなるものは柔軟性も備えているので、それらの凹凸を吸収することができ、境界面を安定化するのにも寄与することができる。
【0028】
本発明による貯留浸透槽10が道路下に埋設されている雨水流出抑制施設を施工する時の一例を説明する。施工に当たっては、歩道2に沿って車道1の一部を必要な距離だけ掘削する。掘削した溝の底部に、基礎砕石4を敷き詰め、その上に、前記した下位貯水空間形成部材21を用いて下位貯留浸透槽20を所要長さに構築する。次に、構築した下位貯留浸透槽20の上面に前記した荷重分散部材40として機能するジオテキスタイルを敷き詰め、その上に、前記した樹脂製の上位貯水空間形成部材31を交互に交差させながら積層して上位貯留浸透槽30を構築する。それにより、貯留浸透槽10が形成される。なお、樹脂製の上位貯水空間形成部材31は前記したように鉛直荷重支持部材間の間隔(スパン)の小さいものを用いているので、一枚の上位貯水空間形成部材31を下位貯水空間形成部材21よりも小型のものとして形成することが可能であり、そのために、上位貯留浸透槽30の施工性は向上するとともに、施工の自由度も、下位貯留浸透槽20を施工するときと比較して向上する。
【0029】
その際に、好ましくは、基礎砕石4とその上の下位貯留浸透槽20と荷重分散部材40と上位貯留浸透槽30の全体を不織布のような透水性シート5で囲い込むか、少なく上位貯留浸透槽30を不織布のような透水性シート5で囲い込むことで、貯留浸透槽10の積み上げ構成を安定したものとする。
【0030】
貯留浸透槽10を構築する過程で、所要箇所に前記管理桝11を構築し、側溝3に形成した集水桝と管理桝11とを樹脂製の管(不図示)で接続する。
【0031】
次に、貯留浸透槽10の周囲をその上面レベルまで掘削した土壌で埋め戻す。そして、この例では、貯留浸透槽10の上面に、その横幅よりも広い横幅、例えば貯留浸透槽10の側方に0.5〜2m程度の延出する横幅のコンクリート床版13を、その全長にわたり施工する。図1(b)に示すように、コンクリート床版13が前記側溝3の下までの延出するようコンクリート床版13を施工することは好ましい。コンクリート床版13を現場施工することに変えて、プレキャストコンクリート板あるいは鉄板を施工現場に搬入し、それを貯留浸透槽10の上面に設置していくようにしてもよい。
【0032】
次に、配置したコンクリート床版13の上を掘削した土砂や採石である埋め戻し土で埋め戻し、その上に、側溝3および車道1のために舗装工事などを施す。
【0033】
上記の雨水流出抑制施設では、車道や歩道に溜まった雨水は、側溝3から管理桝11を介して貯留浸透槽10に流入するので、一時的な大雨によって道路が冠水状態となるのを阻止することができる。また、車道1の下に埋設されている貯留浸透槽10の上面に配置された横幅の広いコンクリート床版13によって、道路上からの集中した荷重は面方向に分散されるので、大きな集中荷重によって貯留浸透槽10が破損するのを回避することができる。さらに、鉛直荷重を支持する鉛直荷重支持部材間の間隔(スパン)が小さい上位貯留浸透槽30と、その間隔(スパン)が大きい下位貯留浸透槽20との間には、荷重分散部材40として機能するジオテキスタイルを配置しているので、上位貯留浸透槽30からの集中荷重も面方向に分散することができ、集中荷重によって下位貯留浸透槽20が破損するのも回避できる。
【0034】
また、前記コンクリート床版13における、貯留浸透槽10の側方側に延出している部分は、図1(b)に示すように、埋め戻し土壌もしくは現地盤中に横方向に向けて入り込んでいるので、貯留浸透槽10とその周囲の土壌とで歪み率が違うことから生じがちな境目における地表面部分での段差やひび割れを確実に阻止することができる。
【0035】
図2は、本発明による貯留浸透槽10の他の形態を示している。図2(a)の貯留浸透槽10は、下位貯留浸透槽20を形成する下位貯水空間形成部材21として、図1に基づき説明したものよりも、断面の大きさが小さいものを用いている点と、ジオテキスタイルに代えてコンクリート床版を荷重分散部材40として用いている点で相違している。断面の小さい下位貯水空間形成部材21、特に左右の縦壁の間隔が小さい下位貯水空間形成部材21を用いると、より多くの個数の下位貯水空間形成部材21を並置することが必要となり、隣接する下位貯水空間形成部材21間で段差が生じる可能性が高くなるが、コンクリート床版を荷重分散部材40として用いることにより、その均平化が可能となり、また、コンクリート床版自体の表面が均平なことから、下位貯水空間形成部材21とは異なった形状の上位貯水空間形成部材31からなる上位貯留浸透槽30を安定して積み上げることができる。
【0036】
図2(b)の貯留浸透槽10は、下位貯留浸透槽20を形成する下位貯水空間形成部材21として、縦支柱26を鉛直荷重支持部材に持つ側方が開放した下位貯水空間形成部材21を用いている点で、図2(a)に記載したものと相違している。この場合でも、全体を不織布などの透水性シート5で囲い込むことにより、下位貯留浸透槽20としての機能を果たすことができる。
【0037】
なお、図示しないが、下位貯水空間形成部材21および/または上位貯水空間形成部材31としては、図示したものに限らず、前記した特許文献2〜7に記載されている貯水空間形成部材を適宜選択して用いることができることは当然である。また、貯留浸透槽10を下位貯留浸透槽20と上位貯留浸透槽30の2層構造のものとして説明したが、鉛直荷重支持部材間の間隔が、上位の貯留浸透槽を形成する貯水空間形成部材よりも下位の貯留浸透槽を形成する貯水空間形成部材において広くされていることを条件に、3層以上の貯留浸透槽を積層して1つの貯留浸透槽としてもよい。但し、その場合には、各上下の貯留浸透槽の間に、それぞれ荷重分散部材が配置さが配置される。また、貯留浸透槽10を透水性シートが覆うのではなく、遮水シートで覆うようにしてもよい。その場合には、貯留浸透槽10は貯留槽として作用するので、貯留水の吸い上げポンプを別途配置するか、オリフィスを備えた導水管を通して徐々に貯留水を下水本管や河川に排水できるようにする。
【符号の説明】
【0038】
1…車道、
2…歩道、
3…側溝、
10…貯留浸透槽、
11…管理桝、
20…下位貯留浸透槽、
21…下位貯水空間形成部材、
24、25…左右の縦壁(鉛直荷重支持部材)、
30…上位貯留浸透槽、
31…上位貯水空間形成部材、
32…箱列、
32a…箱状部、
33…箱状部の4周の縦壁部(鉛直荷重支持部材)
40…荷重分散部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設された貯留浸透槽であって、少なくとも鉛直荷重を支持する鉛直荷重支持部材間の間隔が異なっている2種類以上の貯水空間形成部材が上下方向に積み上げられて形成されており、前記鉛直荷重支持部材間の間隔は下位の貯水空間形成部材が上位の貯水空間形成部材よりも広くされており、さらに下位の貯水空間形成部材と上位の貯水空間形成部材の間には荷重分散部材が配置されていることを特徴とする貯留浸透槽。
【請求項2】
前記荷重分散部材は、コンクリート床版、プレキャストコンクリート板、ジオテキスタイル、エキスパンドメタル、グレーチング、または鉄板から選択されるいずれかまたは2つ以上の組み合わせ体であることを特徴とする請求項1に記載の貯留浸透槽。
【請求項3】
前記荷重分散部材は、通水性を有することを特徴とする請求項1に記載の貯留浸透槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−31613(P2012−31613A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170969(P2010−170969)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】