説明

地中掘進装置

【課題】地中を掘進する掘進ヘッドの角度を検出し、その信号を確実にキャッチする。
【解決手段】掘進ヘッドの後方に接続した管状の連結ロッドを前進および回転させて地中を掘進する地中掘進装置において、掘進ヘッド2に角度センサ1を接続し、掘進ヘッド2の鉛直方向に対する角度が所定値であることを検知して発光する発光ダイオード16を備えるようにする。地中の掘進なので後方の孔が屈曲していたり水が入っていたりしても光は確実に検出できるから、掘削が地中の奥深くにまで進行した状態であっても掘進ヘッド2の角度を確実に知ることができ、その結果、その角度を基準として掘進ヘッド2の角度を調整することにより、施工精度が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上から地中に向けて小径の配管等を敷設する地中掘進装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物などの構造物の直下を経由して地上から地中に向けて管路を埋設したり、構造物下部の地盤を改良するため薬液を注入したりするのに、従来は構造物の外側に立坑を設け、ここを起点として水平方向にボーリングすることなどが行われていたが、近年、米国において、進行方向を自在に制御できる掘進ヘッドが開発され、これを使用することによって立坑を設けることなく任意に曲がった経路に管路を敷設することが可能となった。特許文献1にはこのような掘進装置、ならびにこれを使用する掘進工法が記載されている。
【0003】
図4はこのような掘進機を使用して構造物の下部を地盤改良する場合の概念図で、符号2は掘進ヘッド、符号3は連結ロッド、符号4は掘進機、符号Sは構造物である。構造物Sの脇の地上から地中に向けて斜めにボーリングを開始し、所定の深さに到達したら掘進ヘッド2の向きを水平方向に変え、以後は水平にボーリングするのである。掘進ヘッド2の後方には可撓性の連結ロッド3が次々に連結される。破線で囲んだ部分が改良する対象地盤である。
【0004】
図5は特許文献1に記載の掘進ヘッド2の実施例の断面図で、符号21はジェットノズル、符号22は高圧流体の供給される流体経路である。ジェットノズル21は掘進ヘッド2の中心軸に対して約5度斜め方向を向いている。したがって掘進ヘッド2に回転を与えながら前進させれば直進するが、回転を与えずに前進させればジェットノズル21に従って斜め方向に進む。
【0005】
図6は同じく特許文献1に記載された掘進機の外観図で、符号40はベース、符号41はその上を移動する前進フレーム、符号42は回転用モータ、符号43はチェーン、符号44は前進用モータ、符号3は前進用の管体である連結ロッドである。前進フレーム41には連結ロッド3を固定するクランプと連結ロッド3を把持して回転させるチャックが備えられており、これに前進機構を組み合わせると連結ロッド3を回転させずに前進させたり、回転させながら前進させたりすることができる。
【0006】
特許文献1には、掘進ヘッド2に無線送信機および指向性アンテナを装備することにより、受信機によって掘進ヘッド2の現在位置を検出することができると記載されており、また掘進ヘッド2の現在の傾度の検出については電解トランスジューサが組み込まれている、と記載されている。
【0007】
施工に当たって、掘進ヘッドの現在位置ならびに傾度は重要な情報であるが、掘進方向を制御するには、掘進ヘッドが現在どの方向を向いているか、すなわち軸芯に対してジェットノズル21が上下左右いずれの方向を向いているか(以下その方向を「角度」という)を知ることも重要である。
【0008】
特許文献2には、掘進ヘッドのケーシングの軸芯に対して直角な環状の空間を設け、その底部に接点を設け、空間内に金属球を挿入して、金属球が空間の底部にあるときに接点が閉じるようにして角度を検出する角度センサが記載されている。
【0009】
図7は特許文献2に記載の角度センサ部分を示す掘進ヘッドの断面図、図8はその要部を示す部分拡大図で、符号51は外周の絶縁カラー、符号14は金属球、符号52a,52bは接点である。
【0010】
絶縁カラー51の内部には環状の空間が形成され、その中に金属球14が挿入されている。例えば図5に示すジェットノズル21が真下の方向を向いている状態で接点52a,52bが真下になるように角度センサ部分をセットすれば、金属球14が重力により空間内の真下の位置に来たとき接点52a,52bが導通し、回路が閉じて電気信号が発せられる。
【0011】
回路が閉じたという信号を地上の作業位置において検知する手段として、電気配線や無線信号には実用上問題があるとして特許文献2では振動モータを例示している。振動モータは携帯電話のマナーモードにおける着信合図用などに実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭61−257501号公報
【特許文献2】特開2008−20363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
振動モータによる音響は、作業現場においては他の騒音にまぎれてキャッチしにくい。有線、無線の電気信号も実用的でないことは特許文献2に記載のとおりである。
【0014】
本発明は、これらの信号に代えて、確実に検知できる新たな他の信号手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、掘進ヘッドの後方に接続した管状の連結ロッドを前進および回転させて地中を掘進する地中掘進装置において、前記掘進ヘッドに、掘進ヘッドの鉛直方向に対する角度が所定値であることを検知して発光する発光手段を備えたことを特徴とする地中掘進装置であり、望ましくは前記の発光手段が発光ダイオードである前記の地中掘進装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、角度信号が確実に検出されるので、掘進工法における施工精度ならびに作業効率が向上するという、すぐれた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明実施例における角度センサの断面図である。
【図2】本発明実施例における接点部分の概念図である。
【図3】本発明の他の実施例における接点部分の概念図である。
【図4】本発明に係わる掘進工法の概念図である。
【図5】従来の技術における掘進ヘッドの断面図である。
【図6】従来の技術における掘進機の外観図である。
【図7】他の従来の技術における角度センサの断面図である。
【図8】図7の要部を拡大して示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
地中の掘進において、掘進ヘッド後方に形成される孔の内部は暗黒であり、地下水が侵入して孔の内部が水で満たされている場合も多い。このような状態で、先端の掘進ヘッドから光が発射されると、孔の内部が明るくなるので、すぐに、かつ確実に検知できる。孔がまっすぐでなくても光は届くので何ら問題はないし、孔の中に水があってもかまわない。
【0019】
なお、本発明で掘削の対象としているのは、内部に人が立ち入ることができず、通常の機器を持ち込むことも困難な小径管であり、具体的には呼び径で200mm以下のものである。
【0020】
図1は本発明実施例の掘進ヘッド後方に接続された角度センサを示す断面図で、掘進ヘッドにつづく最初の連結ロッド3の内部にセットされており、符号1は角度センサ、符号10はそのケーシング、符号12a,12bは追って説明する接点部分、符号15は基板、符号16は後方に向けて発光する発光ダイオード、符号17は耐圧ガラス、符号18はバッテリーである。連結ロッド3の内部は高圧流体が流れるので、角度センサ1は全体が防水かつ耐圧である必要があり、発光ダイオード16は内部に取り付け、後方には窓を設けて耐圧ガラス17を取り付けている。
【0021】
したがって、ケーシング10は、バッテリー18や電気回路等を全て内部に収め、電線の口出し部等を設けない密閉かつ耐圧構造である。また、密閉構造であっても、耐圧ガラス17を設けてあることにより、発光手段からの光のみはその耐圧ガラス17を通して外部に放射される。なお、この耐圧ガラス17には、必要に応じ、レンズ機能を付与することもできる。
【0022】
また一方、上記の角度センサ1を取り付けた連結ロッド3はその後方に接続される他の連結ロッド3と元来同じもので、前後端に接続用のねじを備えており、寸法例を挙げれば、単位長さ490mm、外径63.5mm、内径43.5mmである。
【0023】
図2は接点部分の一例を示す概念図で、符号11a,11bは接点を構成するレールである。レール11a,11bは直接接触はしていないが、金属球14が両者にまたがって位置することにより導通する。すなわち、金属球14が重力の作用によって最も低い位置に安定することにより接点11a,11bが短絡されて電気の閉回路が構成される。したがって、金属球14がもっとも低い位置に安定する状態における掘進ヘッドの角度を設計上、予め決めておくことにより、掘進ヘッドの鉛直方向に対する角度が所定値であることが検知できる。
【0024】
図3は接点部分の他の例を示す概念図で、符号12a,12bは金属製の外筒、符号13a,13bはこれら外筒12a,12bの一端にはめられた樹脂などの絶縁体の栓である。栓13a,13bの表面には金属板が貼り付けてあり、外筒12a,12bの内部にはそれぞれ金属球14が挿入されている。
【0025】
2本の外筒12a,12bは角度センサ1の底部に、傾斜させて対称に取り付けられているので、取り付け面が水平になったとき、2本の外筒12a,12bと栓13a,13bの金属板とが一斉に導通し、これらに接続させた電線により閉回路が構成される。
【0026】
なお、接点としては特許文献2に記載の図8に示したものでもよいし、以上の各例において金属球14に代えて導電性の丸棒状の部材を使用したり、空間内に水銀を封入してもよい。
【0027】
発光手段としては発光ダイオードの他に通常の小型電球やレーザ発信機でもよい。電源はケーシング10内に電池を収めるのが最も簡便であるが、地上から電源コードを接続してもよい。なお、発光信号を地上の作業位置でキャッチする手段は、目視でもよいし、光学カメラ、CCDカメラなどの受光手段を用いてもよい。光は管内の泥水などで減衰することもあるから、カメラ類を使用する場合はできるだけ深く装入して発光手段に近づけるのがよいことはいうまでもない。なお、発光手段が光を発することにより知り得る角度は、設計上、予め決めておくことができるので、掘進ヘッドの後方に接続して連結ロッドを、地上側で、光が発せられた状態を基準にして、所定角度回転させることにより、掘進ヘッドの角度を適宜に調整することができる。
【符号の説明】
【0028】
1…角度センサ、 2…掘進ヘッド、 3…連結ロッド、 4…掘進機、 10…ケーシング、 11…レール、 12…外筒、 13…栓、 14…金属球、 15…基板、 16…発光ダイオード、 17…耐圧ガラス、 18…バッテリー、 21…ジェットノズル、 22…流体経路、 40…ベース、 41…前進フレーム、 42…回転用モータ、 43…チェーン、 44…前進用モータ、 51…絶縁カラー、 52…接点、 S…構造物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘進ヘッドの後方に接続した管状の連結ロッドを前進および回転させて地中を掘進する地中掘進装置において、
前記掘進ヘッドに、掘進ヘッドの鉛直方向に対する角度が所定値であることを検知して発光する発光手段を備えたことを特徴とする地中掘進装置。
【請求項2】
前記の発光手段が発光ダイオードである請求項1に記載の地中掘進装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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