説明

地図関連情報編集システム

【課題】 地図データ編集時の移動範囲制限方法により、精度の高いデータ整備を可能とするシステムを提供すること。
【解決手段】 コードとポリゴン図形との関連を備えたデータベースシステムと、ポリゴン図形との内外判定機能を備えたモジュールと、地図編集をする端末と主題データを管理するデータベースシステムとサーバサイド全体を制御するモジュールとからなる地図関連情報編集システムにより、該当ポリゴン図形外となる図形の編集処理を抑止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図関連情報編集システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーナビゲーションや携帯端末による地図の利用など、地図情報システムを活用した製品が一般的に普及している。
地図情報システムを利用する場合には、地図データの質が重要になるが、データの維持・整備には多大なコストが必要になっている。近年では、グーグルマップ等のように、地図データをインターネット網を介して提供するサービスが展開されてきている。その仕組みを利用すれば、背景となる地図はインターネット上から取得可能となっている。その場合は、主題となるデータのみを企業・個人が管理すれば良い。
背景の地図データをインターネット上から取得することで、地図データの維持管理のコストは軽減できるものの、主題となるデータの維持管理コストは依然として必要となっている。
【0003】
具体的な主題データの例としては、企業が保持している顧客データ等である。顧客データを地図システム上に展開し、出店計画や訪問計画に活用している場合、顧客データをいかに編集して維持するかが重要となっている。
顧客データを地図システムに取り込む場合は、ジオコーディング(住所文字列と座標値の対応関係を元に、データの住所文字列から座標値を割り出して地図上にデータを配置する仕組み)が利用される。
【0004】
しかし、住所文字表現の表記ぶれなどから、正確な位置にデータが配置できないことがある。従って、そのような場合には、人が手動で位置を調整する必要がある。位置を調整する場合には、地図編集が可能なシステムを利用することになる。
なお、本発明に関連する公知技術文献としては下記の特許文献1、2がある。
【0005】
【特許文献1】特開2001−283259号
【特許文献2】特開平7−11869号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、人手によってデータを編集する場合は、操作ミスや故意によって位置に関する値が不正となってしまう場合がある。データの位置に関する値が不正となることにより、そのデータを用いた地図情報システムでは、不正な情報を算出するなどの現象が発生してしまう。
位置に関する値が不正とならないようにするためには、座標値に制限値を設ける方法によりある程度抑止することが可能となる。
しかし、制限値とする座標値の特定が課題となる。主題データの内容や位置によって移動可能な範囲が異なるが、その異なる値をそれぞれ特定する明確な方法が存在していなかった。
【0007】
本発明の目的は、地図データ編集時の移動範囲制限方法により、精度の高いデータ整備を可能とする地図関連情報編集システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の地図関連情報編集システムは、住所コードと当該住所コードに対応したポリゴン図形との関連を記憶した第1のデータベースシステムと、前記ポリゴン図形と住所コードに対応する座標値との内外判定機能を備えた第1のモジュールと、地図データを編集する地図データ編集端末と、主題データを管理する第2のデータベースシステムとサーバサイド全体を制御する第2のモジュールとからなる地図関連情報編集システムであって、
前記第1のデータベースシステムは、指定された住所コードに対して該当するポリゴン図形を抽出する手段を備え、
前記第1のモジュールは、指定された座標値とポリゴン図形に対し、座標値がポリゴン図形内に含まれるかどうかを判定する手段を備え、
前記地図データ編集端末は、データ表示手段と、入力装置により指定されたデータを編集する手段と、編集された後の位置に関する情報を前記第2のモジュールに送信する手段を備え、
前記第2のデータベースシステムは、位置に関する文字列情報と住所コードおよび図形情報とジオコーディングマッチングレベルを管理する手段を備え、
前記第2のモジュールは、地図データ編集端末で編集された位置に関する文字列情報に該当する住所コードを前記第2のデータベースシステムから取得する手段と、取得した住所コードを前記第1のデータベースシステムに送信し、送信した住所コードに該当するポリゴン図形を取得する手段と、前記地図データ編集端末で編集されたデータの座標値とポリゴン図形とを前記第1のモジュールに送信し、前記第1のモジュールから内外判定結果を取得し、判定結果を前記地図編集端末に送信する手段と、編集されたデータを前記第2のデータベースシステムに送信する手段とを備えることを特徴とする。
また、前記第2のモジュールは、前記第2のデータベースシステムから位置に関する文字列情報と住所コードとのジオコーディングマッチングレベル、及び文字列情報に対応する住所コードを取得し、取得した住所コードとマッチングレベルを元に前記第1のデータベースシステムからポリゴン図形を取得する手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の地図データ編集範囲を制限する方法によれば、次のような効果がある。
(1)地図編集をする端末にあっては、各編集対象となるデータに応じて編集可能範囲を定めることが可能となり、不正なデータの生成が抑止可能となる。
(2)主題データを管理するデータベースシステムにあっては、マッチングレベルを意図的に変更することにより、住所コードとポリゴン図形との関連を備えたデータベースシステムの内容が変更となっても、柔軟なデータの編集が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を適用した地図データ編集範囲を制限する方法の一実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態の一例を示すシステム構成図であり、本地図データ編集システムは、入力部11、データ処理部12、表示部13を有する地図編集端末1と、サーバサイド全体を制御するモジュール2と、主題データを管理するデータベースシステム3と、コードとポリゴン図形との関連を備えたデータベースシステム4と、ポリゴン図形との内外判定機能を備えたモジュール5から構成されている。
サーバサイド全体とは、アプリケーションサーバやデータベースサーバなどである。
モジュール2とモジュール5は、サーバサイドの例えばアプリケーションサーバに存在する。
【0011】
地図編集端末における入力部11はマウスやキーボードなどが該当する。表示部13は地図画面を表示している。入力部11で編集されたデータのIDと座標値をデータ処理部12が処理する。地図編集端末1とサーバサイド全体を制御するモジュール2とは公衆回線網によるネットワークで接続されている。
サーバサイド全体を制御するモジュール2と、主題データを管理するデータベースシステム3およびコードとポリゴン図形との関連を備えたデータベースシステム4とポリゴン図形との内外判定機能を備えたモジュール5はネットワークで接続されている。
【0012】
図2は、図1における主題データを管理するデータベースシステム3に格納されているデータの構成図を示している。
21はデータを一意に識別する主キーとなるIDである。22は位置に関する文字列情報であり、具体的には『東京都品川区東品川4丁目12番7号』等の情報を格納している。23は住所コード、24はマッチングレベル、25は図形情報を格納している。これらは、ジオコーディング処理(住所文字列と座標値の対応関係を元に、データの住所文字列から座標値を割り出して地図上にデータを配置する仕組み)によって付与されていることを前提としている。
22の住所文字列を元に、該当する住所コード23がジオコーディングによって割り出され、図形情報25が付与される。その際、ジオコーディングによってマッチされたレベルに応じて値が格納される。例えば、22の住所文字列が『東京都品川区東品川』の場合には23の住所コードは『13109』となる。また、図形情報25には、座標値()が格納される。この場合、都道府県・市区町村・大字まで住所文字列がマッチしているため、マッチングレベル24には「3」が格納されている。
主題データとしては、企業が管理している顧客データなどが相当する。
【0013】
図3は、図1におけるコードとポリゴン図形との関連を備えたデータベースシステム4に格納されているデータの構成図を示している。
住所コード31に該当するポリゴン図形32の情報が格納されている。
ポリゴン図形32には、ポリゴンを構成する座標値などが格納されている。このデータは、地図編集端末1を利用する場合には予め準備しておく必要がある。
【0014】
図4は、データが編集された場合の処理の概要を示すフローチャートである。
まず、地図編集端末の処理として、任意の地図編集画面を表示している(ステップ401)。入力部により、地図データを編集(ステップ402)すると、編集された地図データのIDと編集後の座標値とをサーバサイド全体を制御するモジュールに送信する(ステップ403)。
次に、サーバサイド全体を制御するモジュール2の処理は以下のような手順となる。
編集された地図データのIDと座標値を地図編集端末から取得する(ステップ404)。取得したIDを元にして主題データを管理するデータベースシステム3から住所コードを取得する(ステップ405)。
次に、取得した住所コードを元に、コードとポリゴン図形との関連を備えたデータベースシステム4からポリゴン図形を取得する(ステップ406)。
次に、取得したポリゴン図形と座標値をポリゴン図形との内外判定機能を備えたモジュール5に送信する(ステップ407)。
【0015】
ポリゴン図形との内外判定機能を備えたモジュール5は、取得したポリゴン図形と座標値から、その座標値がポリゴン図形に内包されるかどうかを判定する(ステップ408)。
ポリゴン図形に内包される場合は、主題データを管理するデータベースシステム3において、図形情報を地図編集端末1から取得されていた座標値で更新する(ステップ409)。
結果として地図編集端末1の処理結果が、主題データを管理するデータベースシステム3に反映される。
【0016】
一方、ステップ408において、座標値がポリゴン図形内に存在していなかった場合は、地図データ編集端末1へエラーを送信する(ステップ410)。
結果として、地図編集端末1において編集された地図データは、編集可能な座標値の範囲外ということで、主題データを管理するデータベースシステム3は登録されない。その結果、地図データの値が不正になることが抑止されている。
例えば、地図編集をした図形は東京都品川区(住所コード:13109)の情報を持ったデータの場合、ステップ405において住所コード『13109』を取得すると、ステップ406では東京都品川区のポリゴン図形を取得することになる。
ステップ408の判定結果がYである場合には、座標値が品川区内に含まれていることを示しているため、その座標値を主題データを管理するデータベースシステム3に登録する。
【0017】
一方、ステップ408において判定結果がNであった場合には、座標値が品川区の範囲外になってしまっているため、地図データ編集結果としては相応しくないため、主題データを管理するデータベースシステム3には反映されない。
上記の処理により、地図データの編集可能な範囲が制限可能となる。
【0018】
図5は、図4と同様にデータが編集された場合の処理の概要を示すフローチャートであるが、加えてマッチングレベルを利用する例となっている。
ステップ501〜ステップ504までは、図4におけるステップ401〜ステップ404までと同じ動作である。
異なる部分について以下に説明する。
まず、取得したIDを元に、主題データを管理するデータベースシステム3から、住所コードとマッチングレベルを取得する(ステップ505)。
次に、住所コードとマッチングレベルを元にポリゴン図形との関連を備えたデータベースシステム4からポリゴン図形を取得する(ステップ506)。
【0019】
例えば、取得した住所コードが『13109』、マッチングレベルが『2』であった場合には、住所コードはレベル2までがジオコーディングの結果として保証されている。レベル2は市区町村を示しているため、従って、ステップ506では、住所コード『13109』に該当する東京都品川区のポリゴンを取得することになる。その後のステップ507〜ステップ510までは、図4のステップ407〜ステップ410と同じ動作である。
また、ステップ505において取得した住所コードが『13109』、マッチングレベルが『1』であった場合には、住所コードはレベル1までがジオコーディングの結果として保証されている。レベル1は都道府県を示しているため、従って、ステップ506では、住所コード『13』に該当する東京都のポリゴンを取得することになる。東京都のポリゴンであるため、編集対象となる地図データが移動可能な座標値は、東京都内全域となる。
以上のように、マッチングレベルによって移動可能な範囲を制限するポリゴンを柔軟に変更可能となっている。
【0020】
移動可能な範囲を制限するポリゴンを柔軟に変更可能なことが、どのようなケースにおいて有用となるかを以下に説明する。
例えば、市町村合併の影響により、住所コードやポリゴン図形が変更になることがある。その場合は図1におけるコードとポリゴン図形との関連を備えたデータベースシステム4の中身を変更することになる。そのような状態が発生してしまっている場合、地図編集された地図の座標値が正しい場合においても、ステップ508においてポリゴン図形に内包されないという判定結果となる場合がある。
【0021】
そのような場合には、図1の主題データを管理するデータベースシステム3において、マッチングレベルを変更することにより、座標値として取りうる範囲を変更することが可能となる。レベル2の値のものを、レベル1に変更することで、市区町村の範囲ではなく、都道府県の範囲が移動可能な範囲となる。
問題の根本解決は、主題データの住所文字列を市町村合併の後の値に変更し、再度ジオコーディング処理を実施して新規の住所コードを割り当てることではあるが、実際には主題データは元々地図以外のシステムで利用されていたものを、地図システムに移行してきているケースが多いため、住所文字列を変更することは困難である。
従って、地図システムで利用する場合には、住所文字列は古い状態ではあるが、座標値は正しい位置に移動させるというケースが発生する。上記のような場合に、本項のマッチングレベルの操作によって移動可能な範囲を柔軟に変更可能であることが有用である。
【0022】
図6は、図1の情報に追加して、データが編集された場合の情報の流れを示した説明図である。
地図編集端末1において編集された地図データのIDと座標値がサーバサイド全体を制御するモジュール2に送信される。
サーバサイド全体を制御するモジュール2は、IDを主題データを管理するデータベースシステム3に送信し、結果として住所コードを取得する。
次に、サーバサイド全体を制御するモジュール2は、住所コードをコードとポリゴン図形との関連を備えたデータベースシステム4に送信し、結果としてポリゴン図形を取得する。
次に、サーバサイド全体を制御するモジュール2は、ポリゴン図形との内外判定機能を備えたモジュール5にポリゴン図形と座標値を送信し、結果として判定結果を取得する。
取得した結果が真の場合は、主題データを管理するデータベースシステム3の座標値を変更し、偽の場合には地図編集端末1にエラーを送信する。
【0023】
図7は、データが編集された場合の処理の説明図である。
701は地図表示画面である。地図データ702を入力部により座標値を変更する場合、地図データ702に該当するポリゴンが703となる。ポリゴン703の範囲であれば編集は可能であるが、範囲外の座標値に編集した場合はエラーとなる。
【0024】
以上のように、本実施の形態の地図編集システムによれば、次のような効果がある。
(1)地図編集端末にあっては、各編集対象となるデータに応じて編集可能範囲を定めることが可能となり、不正なデータの生成が抑止可能となる。
(2)主題データを管理するデータベースシステムにあっては、マッチングレベルを意図的に変更することにより、住所コードとポリゴン図形との関連を備えたデータベースシステムの内容が変更となっても、柔軟なデータの編集が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態例を示すシステム構成図である。
【図2】主題データを管理するデータベースシステムに格納されているデータの構成図である。
【図3】コードとポリゴン図形との関連を備えたデータベースシステムに格納されているデータの構成図である。
【図4】データが編集された場合の処理の概要を示すフローチャートである。
【図5】データが編集された場合の処理の概要を示すフローチャート(マッチングレベルを使用)である。
【図6】データが編集された場合の情報の流れの説明図である。
【図7】データが編集された場合の処理の説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1…地図編集端末、2…サーバサイド全体を制御するモジュール、3…主題データを管理するデータベースシステム、4…コードとポリゴン図形との関連を備えたデータベースシステム、5…ポリゴン図形との内外判定機能を備えたモジュール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
住所コードと当該住所コードに対応したポリゴン図形との関連を記憶した第1のデータベースシステムと、前記ポリゴン図形と住所コードに対応する座標値との内外判定機能を備えた第1のモジュールと、地図データを編集する地図データ編集端末と、主題データを管理する第2のデータベースシステムとサーバサイド全体を制御する第2のモジュールとからなる地図関連情報編集システムであって、
前記第1のデータベースシステムは、指定された住所コードに対して該当するポリゴン図形を抽出する手段を備え、
前記第1のモジュールは、指定された座標値とポリゴン図形に対し、座標値がポリゴン図形内に含まれるかどうかを判定する手段を備え、
前記地図データ編集端末は、データ表示手段と、入力装置により指定されたデータを編集する手段と、編集された後の位置に関する情報を前記第2のモジュールに送信する手段を備え、
前記第2のデータベースシステムは、位置に関する文字列情報と住所コードおよび図形情報とジオコーディングマッチングレベルを管理する手段を備え、
前記第2のモジュールは、地図データ編集端末で編集された位置に関する文字列情報に該当する住所コードを前記第2のデータベースシステムから取得する手段と、取得した住所コードを前記第1のデータベースシステムに送信し、送信した住所コードに該当するポリゴン図形を取得する手段と、前記地図データ編集端末で編集されたデータの座標値とポリゴン図形とを前記第1のモジュールに送信し、前記第1のモジュールから内外判定結果を取得し、判定結果を前記地図編集端末に送信する手段と、編集されたデータを前記第2のデータベースシステムに送信する手段とを備えることを特徴とする地図関連情報編集システム。
【請求項2】
前記第2のモジュールは、前記第2のデータベースシステムから位置に関する文字列情報と住所コードとのジオコーディングマッチングレベル、及び文字列情報に対応する住所コードを取得し、取得した住所コードとマッチングレベルを元に前記第1のデータベースシステムからポリゴン図形を取得する手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の地図関連情報編集システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−197436(P2008−197436A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33264(P2007−33264)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】