説明

地域熱供給システム

【課題】搬送動力を削減すると共に建設費及び維持管理費を削減する。
【解決手段】本発明の地域熱供給システムは、熱供給プラント10からの必要揚程が最小となる近傍の熱需要先Aより下流側且つ熱供給プラント10からの必要揚程が最大となる最遠の熱需要先Cより上流側にサブステーション30が設けられ、サブステーション30には、熱媒循環配管20の往き配管21上に二次ポンプ33a,33bが設けられ、一次ポンプ11a,11bはサブステーション30より上流側の熱需要先A,Bまでの必要揚程を備え、二次ポンプ33a,33bは最遠の熱需要先Cまでの必要揚程を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱媒の一次ポンプと熱源設備とを有する熱供給プラントと複数の熱需要先とが熱媒循環配管を介して接続されて構成される地域熱供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商業施設やマンション等の各ビル群が設置される地域において、ビル毎にそれぞれ個別に冷凍機やボイラ等の冷暖房や給湯用の熱源設備を設置する代わりに、これらのビル群を含む地域全体に対する熱源設備として、特定の場所に熱供給プラントを設置し、該熱供給プラントから各ビルの熱需要先に対して、冷水や温水等の熱媒を供給する地域熱供給システムが注目されている。
【0003】
この種の従来の地域熱供給システムとしては、例えば、図5及び図6に示すように、熱源設備2と最遠端の熱需要先Cの必要揚程を備えたポンプ3とを熱供給プラント1に設置した1ポンプ方式の地域熱供給システムや(例えば、特許文献1、2参照)、特に図示しないが、熱源設備と該熱源設備廻りの必要揚程を受け持つ一次ポンプと各熱需要先への必要揚程に合わせた複数の二次ポンプ(或いは、熱需要先の最大必要揚程に合わせた1台の二次ポンプ)とを熱供給プラントに設置した2ポンプ方式の地域熱供給システムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−210413号公報
【特許文献2】特開2001−153381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の1ポンプ方式の地域熱供給システムでは、熱供給プラント1の近傍の熱需要先A又はBに対しても最遠端の熱需要先Cと同一の圧力で運転されるため、搬送動力の削減ができず、運転効率を高めることができないといった問題があった。
【0006】
一方、上記した従来の2ポンプ方式の地域熱供給システムでは、常に一次ポンプと二次ポンプを稼動させる必要があるため、搬送動力の削減が難しいといった問題があった。また、それぞれの熱需要先毎に二次ポンプを設置した場合には、建設費や維持管理費の削減ができないといった問題もあった。さらに、二次ポンプの運転流量の下限値以下では熱媒逃がし用のバイパス管を通じて運転流量を確保する必要があるため、結果として必要流量以上の熱媒を搬送することとなり、搬送動力の削減が難しいといった問題などもあった。
【0007】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、搬送動力を削減すると共に建設費及び維持管理費を削減することのできる地域熱供給システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するため、本発明は、熱媒の一次ポンプ及び熱源設備を有する熱供給プラントと複数の熱需要先とが往き配管及び還り配管を有する熱媒循環配管を介して接続されて構成される地域熱供給システムであって、前記熱供給プラントからの必要揚程が最小となる近傍の熱需要先より下流側且つ前記熱供給プラントからの必要揚程が最大となる最遠の熱需要先より上流側にサブステーションが設けられ、該サブステーションには、前記熱媒循環配管の往き配管上に設置される二次ポンプが設けられ、前記一次ポンプは前記サブステーションより上流側の熱需要先までの必要揚程を備え、前記二次ポンプは前記最遠の熱需要先までの必要揚程を備えていることを特徴とする。
【0009】
そして、本発明に係る地域熱供給システムは、前記二次ポンプを迂回するように設けられる二次バイパス管と、該二次バイパス管上に設置される開閉弁とを設け、前記二次ポンプより下流側の熱需要先の一部もしくは全ての熱供給流量が所定値を超えた場合、又は前記サブステーション内の往き配管と前記還り配管の差圧が所定値以下の場合、又は前記往き配管の圧力が所定値以下の場合に、前記開閉弁を閉止させると共に前記二次ポンプを稼動させる制御と、前記二次ポンプより下流側の熱需要先の一部もしくは全ての熱供給流量が所定値以下の場合、又は前記サブステーション内の往き配管と前記還り配管の差圧が所定値を超えた場合、又は前記往き配管の圧力が所定値を超えた場合に、前記開閉弁を開放させると共に前記二次ポンプを停止させる制御とを行う制御装置を備えている。
【0010】
また、本発明に係る地域熱供給システムは、前記二次ポンプを常時運転させてもよい。
【0011】
さらに、本発明に係る地域熱供給システムは、前記往き配管の圧力、該往き配管の圧力と前記還り配管の圧力の差圧、前記二次ポンプより下流側の熱需要先の流量の一部若しくは全部のうちの少なくともいずれか一つの情報に基づき、前記二次ポンプの運転台数制御及び又は変速制御する制御装置を備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、搬送動力を削減すると共に建設費及び維持管理費を削減することのできる地域熱供給システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る地域熱供給システムを示す系統図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る地域熱供給システムの圧力線図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る地域熱供給システムの制御方法を示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る地域熱供給システムの変形例を示す系統図である。
【図5】従来例を示す系統図である。
【図6】従来例の圧力線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
図1は本発明の実施の形態に係る地域熱供給システムを示す系統図であり、この地域熱供給システムは、熱供給プラント10と複数の熱需要先A,B,C,Dとが熱媒循環配管20を介して接続されて構成されている。熱供給プラント10は、2台が並列に設置された熱媒の一次ポンプ11a,11b及び熱源設備12a,12bと、サブステーション30とを備えている。熱媒循環配管20は、熱供給プラント10から遠方の熱需要先C,Dとの間に配設される第1往き配管21及び第1還り配管22と、一次ポンプ11a,11b及び熱源設備12a,12bと、熱供給プラント10からの必要揚程が最小となる熱需要先Aを含む熱供給プラント10の近傍の熱需要先A,Bとの間に配設される第2往き配管23及び第2還り配管24とにより構成されている。
【0016】
また、熱供給プラント10には、第1往き配管21と第2往き配管23との分岐位置Pより熱源設備側に、吐出一次ポンプ11a,11bの吐出側配管14と熱源設備12a,12bの吸込み側配管15とを接続する一次バイパス管16が設けられている。そして、この一次バイパス管16上に差圧バイパス弁17が設けられており、この差圧バイパス弁17は、一次ポンプ11a,11bの運転により、バイパス管16の往き配管側圧力(PT0)と還り配管側圧力(PT3)の差圧が上限値以上となった場合に開放されるように制御される。
【0017】
サブステーション30は、近傍の熱需要先A,Bより下流側且つ熱供給プラント10からの必要揚程が最大となる最遠の熱需要先Cより上流側に設けられ、第1往き配管21上に並列に設置される二次ポンプ33a,33bと、二次ポンプ33a,33bを迂回するように設けられる二次バイパス管32と、二次バイパス管32上に設置される開閉弁31とを備えている。そして、図2に示すように、一次ポンプ11a,11bはサブステーション30より上流側の熱需要先A,Bまでの必要揚程を備え、二次ポンプ33a,33bは最遠の熱需要先Cまでの必要揚程を備えている。
【0018】
また、サブステーション30には、制御装置(図示省略)が設けられており、この制御装置は、図3に示すように、最遠の熱需要先Cを含む二次ポンプより下流側にある熱需要先の一部もしくは全部への熱供給流量が所定値を超えた場合、又はサブステーション30内の往き配管21と還り配管22の差圧が所定値以下の場合、又は往き配管21の圧力が所定値以下の場合に、開閉弁31を閉止させると共に二次ポンプ33a,33bを稼動させる。なお、この時、二次ポンプ33a,33bは、第1往き配管21の圧力(PT1)及び第1還り配管22圧力(PT2)又は熱需要先C,Dの流量に基づき台数制御及び又は変速制御されるのが好ましい。
【0019】
また、前記制御装置は、最遠の熱需要先Cを含む二次ポンプより下流側にある熱需要先の一部もしくは全部への熱供給流量が所定値以下の場合、又はサブステーション30内の往き配管21と還り配管22の差圧が所定値を超えた場合、又は往き配管(21)の圧力が所定値を超えた場合に、開閉弁31を開放させると共に二次ポンプ33a,33bを停止させ、一次ポンプ11a,11bにより熱供給プラント10と各熱需要先A,B,C,Dとの間に熱媒を循環させる。
【0020】
なお、上記のサブステーション30内に開閉弁31を設けなくてもよく、その場合、二次ポンプ33a,33bは、常時運転させるものとするが、第1往き配管21の圧力(PT1)、第1往き配管21の圧力(PT1)と第1還り配管22の圧力(PT2)の差圧、熱需要先C,Dの流量の一部若しくは全部のうちの少なくともいずれか一つの情報に基づき台数制御及び又は変速制御されるのが好ましい。また、図示はしないが、二次ポンプ33a,33bを迂回するように熱媒逃がし用のバイパス管を設け、該バイパス管上に圧力逃しの装置(例えば、オリフィス等)を設けることにより、二次ポンプ33a,33bの低流量運転時の保護を図るのが好ましい。
【0021】
このように上記した実施の形態に係る地域熱供給システムによれば、熱供給プラント10に近傍の熱需要先A,Bには熱源機器12a,12bに附帯の一次ポンプ11a,11bによって熱媒供給を行い、遠方の熱需要先C,Dにはサブステーション30の二次ポンプ33a,33bによって熱媒供給を行うように構成されているため、各熱需要先A,B,C,Dの必要揚程に合わせた運転を行うことができる。したがって、搬送動力を削減することができ、運転効率を高めることが可能となる。
【0022】
また、二次ポンプ33a,33bは台数制御装置及び又は変速装置を備えた場合は、熱媒供給圧力や熱需要先の流量により台数制御及び又は変速制御を行うことができるため、搬送動力のさらなる削減が可能となる。
【0023】
さらに、開閉弁31を設けた時に、一次ポンプ11a,11bの運転のみで各需要先A,B,C,Dに対する熱媒供給を行うことができる場合は、二次ポンプ33a,33bを停止させ、開閉弁31を開放させることで、さらなる搬送動力の削減が可能となる。また、搬送動力の削減のためにそれぞれの熱需要先毎に二次ポンプを設置する必要がないため、建設費や維持管理費の削減も可能となる。
【0024】
なお、上記した実施の形態において、サブステーション30は熱供給プラント10内に設けられているが、これは単なる例示に過ぎず、例えば、図4に示すように、熱供給プラント10の外側の熱媒循環配管20上に設置されてもよい。
【0025】
また、サブステーション30は、熱供給プラント10からの必要揚程が最小となる近傍の熱需要先Aより下流側且つ熱供給プラントからの必要揚程が最大となる最遠の熱需要先Cより上流側であれば、熱需要先Bの上流側や熱需要先Dの下流側に設置されてもよい。そして、サブステーション30が熱需要先Bの上流側に設置された場合、一次ポンプ11a,11bはサブステーション30より上流側の熱需要先Aまでの必要揚程を備え、サブステーション30が熱需要先Dの下流側に設置された場合、一次ポンプ11a,11bはサブステーション30より上流側の熱需要先Dまでの必要揚程を備えているのが好ましい。
【0026】
さらに、上記した実施の形態では、二次ポンプ33a,33bを2台設置しているが、これは単なる例示に過ぎず、例えば、二次ポンプを1台又は3台以上設置してもよい。
【0027】
また、一次ポンプ11a,11bの設置台数や設置位置についても、例えば、1台又は3台以上設置したり、熱源設備の上流側に設置したりする等、各種変更が可能であることは言う迄もない。
【符号の説明】
【0028】
10 熱供給プラント
11a,11b 一次ポンプ
12a,12b 熱源設備
14 上流側配管
15 下流側配管
16 一次バイパス管
17 差圧バイパス弁
20 熱媒循環配管
21 第1往き配管
22 第1還り配管
30 サブステーション
31 開閉弁
32 二次バイパス管
33a,33b 二次ポンプ
A,B,C,D 熱需要先


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒の一次ポンプ及び熱源設備を有する熱供給プラントと複数の熱需要先とが往き配管及び還り配管を有する熱媒循環配管を介して接続されて構成される地域熱供給システムであって、
前記熱供給プラントからの必要揚程が最小となる近傍の熱需要先より下流側且つ前記熱供給プラントからの必要揚程が最大となる最遠の熱需要先より上流側にサブステーションが設けられ、該サブステーションには、前記熱媒循環配管の往き配管上に設置される二次ポンプが設けられ、前記一次ポンプは前記サブステーションより上流側の熱需要先までの必要揚程を備え、前記二次ポンプは前記最遠の熱需要先までの必要揚程を備えていることを特徴とする地域熱供給システム。
【請求項2】
前記二次ポンプを迂回するように設けられる二次バイパス管と、該二次バイパス管上に設置される開閉弁とを設け、前記二次ポンプより下流側の熱需要先の一部もしくは全ての熱供給流量が所定値を超えた場合、又は前記サブステーション内の往き配管と前記還り配管の差圧が所定値以下の場合、又は前記往き配管の圧力が所定値以下の場合に、前記開閉弁を閉止させると共に前記二次ポンプを稼動させる制御と、前記二次ポンプより下流側の熱需要先の一部もしくは全ての熱供給流量が所定値以下の場合、又は前記サブステーション内の往き配管と前記還り配管の差圧が所定値を超えた場合、又は前記往き配管の圧力が所定値を超えた場合に、前記開閉弁を開放させると共に前記二次ポンプを停止させる制御とを行う制御装置を備えている請求項1に記載の地域熱供給システム。
【請求項3】
前記二次ポンプを常時運転させる請求項1に記載の地域熱供給システム。
【請求項4】
前記往き配管の圧力、該往き配管の圧力と前記還り配管の圧力の差圧、前記二次ポンプより下流側の熱需要先の流量の一部若しくは全部のうちの少なくともいずれか一つの情報に基づき、前記二次ポンプの運転台数制御及び又は変速制御する制御装置を備えている請求項1に記載の地域熱供給システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−2203(P2011−2203A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147479(P2009−147479)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000191319)新菱冷熱工業株式会社 (78)
【Fターム(参考)】