説明

地熱および補助熱源を利用したヒートパイプ式道路融雪装置

【課題】 地熱および補助熱源を利用したヒートパイプ式道路融雪装置において、補助ヒータの小容量化および融雪能力の向上を図る。
【解決手段】 ヒートパイプ6の下端吸熱部7が地中の熱源に挿入されるとともに、そのヒートパイプ6の上端放熱部16が路面3の直下に埋設され、更に補助ヒータ9が下端吸熱部7の近傍の地中に設けられた地熱および補助熱源を利用したヒートパイプ式道路融雪装置であって、下端吸熱部7と補助ヒータ9とが、ヒートパイプ6の埋設されている地盤4よりも熱伝導率の高い材料からなる伝熱部材13によって互いに熱授受可能にかつ一体に包み込まれている。またヒートパイプ6の長さ方向での中間部8と地盤4との間には、その地盤4よりも熱伝導率の低い断熱部14,15が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ヒートパイプによって地中から採熱し、その熱によって路面の融雪を行なう道路融雪装置に関し、特に熱量の不足を補助熱源によって補う構成の融雪装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】降雪量の多い地域での道路の融雪は、交通の安全性および生活の簡便性を確保するうえで重要であるが、融雪のために必要とする熱源の温度が比較的低くてよいものの、融雪を行なうべき面積が広いために種々の問題がある。すなわち融雪のための温度が低くてもよいものの、面積が広いことにより必要とする全熱量が相当多く、人工的なエネルギを使用するとすれば、エネルギコストが嵩むことになる。また融雪のための設備は自然環境下に置かれるから、耐久性に優れかつメンテナンスの不必要なものであることが好ましい。
【0003】そこで従来、地熱を熱源としたヒートパイプ式融雪装置が提案されている。これは地下水脈などの比較的温度の高い箇所に向けて地上から掘削孔を形成し、その掘削孔内にヒートパイプの下端吸熱部を挿入するとともに、上端放熱部を路面直下に埋設したものである。このヒートパイプ式融雪装置においては、降雪によって路面温度が低下すれば、下端吸熱部と上端放熱部との温度差により、地中の熱が路面直下に輸送され、その熱によって路面の雪が溶かされる。したがって人工的な熱源を必要としないうえに動力源も不要であるから、ランニングコストが掛からず、またメンテナンスも特に必要としない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述したヒートパイプ式融雪装置では、地中の熱源として10〜15℃前後の箇所を設定している。これは、融雪のための温度としてはその程度の温度が必要であり、またそれ以上の高温の箇所まで掘削すると掘削コストが高くなるからである。その反面、熱量に余裕がないために降雪量が一時的に増大した場合には、充分な融雪を行ない得ず、また熱量の一時的な減少によって充分な融雪を行ない得ない場合がある。このような一時的な事態に対処する手段として、電気ヒータなどの補助熱源をヒートパイプの下端吸熱部の近傍に設置することがある。
【0005】しかしながら、補助熱源を用いてヒートパイプを強制的に加熱することにより下端吸熱部の温度がヒートパイプの周囲の地盤の温度よりも高くなるために、ヒートパイプの輸送する補助熱源の熱うちの大半が、コンテナの長さ方向での中間部周囲の地盤によって奪われてしまい、路面に対して良好に供給されないおそれが多分にあった。またこの種の装置では、補助熱源の熱が掘削孔内の空間または周囲の地盤あるいは流動する地下水などに拡散されてしまい下端吸熱部に対して良好に供給されないおそれがあり、すなわち補助熱源の熱が路面の加熱以外にも消費されてしまうために、補助熱源の大容量化を余儀なくされる問題があった。
【0006】この発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、補助ヒータの容量が小さくかつ融雪能力の高い地熱および補助熱源を利用したヒートパイプ式道路融雪を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段およびその作用】上記の課題を解決するための手段として、この発明は、ヒートパイプの下端吸熱部が地中の熱源に挿入されるとともに、そのヒートパイプの上端放熱部が路面の直下に埋設され、更に補助ヒータが前記下端吸熱部の近傍の地中に設けられた地熱および補助熱源を利用したヒートパイプ式道路融雪装置において、前記下端吸熱部と前記補助ヒータとが、前記ヒートパイプの埋設されている地盤よりも熱伝導率の高い材料からなる伝熱部材によって互いに熱授受可能にかつ一体に包み込まれるとともに、前記ヒートパイプの長さ方向での中間部と前記地盤との間に該地盤よりも熱伝導率の低い断熱部が設けられていることを特徴とするものである。
【0008】したがってこの発明によれば、下端吸熱部の周囲の地盤の地熱および/あるいは補助ヒータの熱が、ヒートパイプの作動流体を介して上端放熱部まで運ばれるとともに路面に供給され、路面上の積雪が溶かされる。
【0009】また熱伝導率の高い材料からなる伝熱部材によってヒートパイプの下端吸熱部と補助ヒータとが一体に包み込まれた構成であるために、補助ヒータの熱が周囲の地盤あるいは流動する地下水などには伝達されにくく、実質的に下端吸熱部に対してのみ伝達される。なお伝熱部材を備えていることにより、下端吸熱部とその周囲の地盤との間での熱抵抗が小さいために、補助ヒータを使用せずに地熱のみを熱源とした場合においても融雪能力が高い。
【0010】更にこの発明では、断熱材によって中間部と地盤との熱授受が抑制されているために、ヒートパイプの輸送する補助ヒータの熱および地熱が中間部周囲の地中には殆ど奪われず、路面に対して確実に供給される。
【0011】
【発明の実施の形態】つぎにこの発明の一具体例を、図1R>1を参照して説明する。この具体例で対象とする道路1は、コンクリートからなる舗装体2によって路面3が形成された車道であり、舗装体2の下側の地盤4には、掘削孔5が鉛直下方に向けた姿勢で形成されている。この掘削孔5の内部には、ヒートパイプ6の下端吸熱部7および中間部8が掘削孔5の内壁面と接触しない状態で挿入されている。
【0012】また掘削孔5の内部の下端部には、一例として電熱線ヒータからなる補助ヒータ9が配置されている。この補助ヒータ9の配線10は、舗装体2の内部を経由して道路1の路肩箇所11から路面3の上部に延出するとともに、その路肩箇所11の近傍に設けられたスイッチ12および電源13に連結されている。つまり補助ヒータ9の制御を地上において行なうことのできる構成となっている。
【0013】更に掘削孔5の内部の下端部には、この発明の伝熱部材に相当するコンクリートブロック13が形成されていて、このコンクリートブロック13によってヒートパイプ6の下端吸熱部7と補助ヒータ9とが一体に包み込まれた状態に組み付けられている。なおコンクリートブロック13の熱伝導率は、掘削孔5の周囲の地盤4の熱伝導率よりも高く、したがって下端吸熱部7と補助ヒータ9とが熱授受可能な構成となっている。
【0014】これに対してヒートパイプ6の中間部8の外周部は、断熱材14によって被覆されている。なお断熱材14の外周部は、掘削孔5の内壁面に接触しておらず、すなわち断熱材14と掘削孔5との間に空隙15が形成されている。また断熱材14の材料としては、掘削孔5の周囲の地盤4よりも熱伝導率の低い発泡スチロールあるいはポリエチレンフォームまたはグラスウールや断熱モルタルなどが挙げられる。すなわち断熱材14と空隙15とが、この発明の断熱部に相当する。なお断熱材14および空隙15の両方を必ずしも備えなくてもよく、いずれか一方を適宜選択して設けてもよい。
【0015】更にヒートパイプ6の上端放熱部16は、掘削孔5の開口部から延出するとともに、道路1の幅方向(図1での右方向)に向けた姿勢で舗装体2の内部に配設されている。すなわちヒートパイプ6の全体としてのコンテナ形状は、上端放熱部16と中間部8との境界箇所において屈曲したL字状を成している。なお必要に応じた本数のヒートパイプ6(図1では1本のみを図示)が道路1の長さ方向に所定の間隔をあけて設けられている。
【0016】つぎに上記のように構成されたこの発明の作用について説明する。この融雪装置においても、降雪量あるいは積雪量が予め定めた値以下である場合には、地熱のみを利用した融雪が行なわれるとともに、多量の降雪(積雪)があった場合には補助ヒータ9を併用した融雪が行なわれる。
【0017】すなわちスイッチ12をオンすることにより補助ヒータ9が発熱し、その熱および地盤4の有する地熱が、コンクリートブロック13を介して下端吸熱部7の内部に溜まる液相の作動流体に伝達される。前述の通り下端吸熱部7と補助ヒータ9とがコンクリートブロック13によって包み込まれ構成であるから、補助ヒータ9の熱が周囲の地盤4あるいは流動する地下水などには伝達されにくく、実質的に下端吸熱部7に対してのみ伝達される。
【0018】これにより下端吸熱部7において液相の作動流体が加熱されて蒸発し、その作動流体蒸気は、温度および内部圧力が共に低くなっている上端放熱部16に向けて流動する。そして作動流体蒸気は上端放熱部16の内面で周囲の舗装体2に放熱して凝縮する。その結果、路面3上に積雪があればそれが速やかに溶かされ、積雪がないとしても凍結が防止される。なお放熱して再度液相になった作動流体は、コンテナの内壁面を下端吸熱部7に向けて流下し、そこで再度加熱されて蒸発する。そして以降、前述と同様の熱輸送サイクルが継続されて、補助ヒータ9の熱ならびに下端吸熱部7の付近の地盤4の地熱によって舗装体2が暖められる。
【0019】ここで補助ヒータ9を動作させていることにより、ヒートパイプ6のうち下端吸熱部7の温度が中間部8の周囲の地盤4の温度に対して高くなる。しかし、断熱材14ならびに空隙15によって中間部8とその周囲の地盤4との熱授受が抑制されているために、ヒートパイプ6の輸送する熱が中間部8の周囲の地盤4によって殆ど奪われることがなく、すなわち補助ヒータ9の熱ならびに地熱を路面3に対して確実に供給することができる。
【0020】このように上記構成の融雪装置によれば、補助ヒータ9の熱が実質的に下端吸熱部7のみに伝達されることに加えて、補助ヒータ9の熱がコンテナの途中で放出されずに路面3まで運ばれるから、容量の小さい補助ヒータ9においても高い融雪能力を得ることができ、換言すれば補助ヒータ9の小容量化を図ることができる。
【0021】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれば、ヒートパイプの下端吸熱部と補助ヒータとが地盤よりも熱伝導率の高い材料からなる伝熱部材によって一体に包み込まれるとともに、ヒートパイプの中間部の外周に地盤よりも熱伝導率の低い断熱部が設けられていて、補助ヒータの熱が実質的に下端吸熱部のみに伝達されることに加えて中間部から地盤に向けた放熱が抑制されるために、補助ヒータの小容量化を図ることができるとともに、融雪能力の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明を車道に適用した具体例を示す概略図である。
【符号の説明】
1…道路、 3…路面、 4…地盤、 5…掘削孔、 6…ヒートパイプ、7…下端吸熱部、 8…中間部、 9…補助ヒータ、 13…コンクリートブロック、 14…断熱材、 15…空隙、 16…上端放熱部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ヒートパイプの下端吸熱部が地中の熱源に挿入されるとともに、そのヒートパイプの上端放熱部が路面の直下に埋設され、更に補助ヒータが前記下端吸熱部の近傍の地中に設けられた地熱および補助熱源を利用したヒートパイプ式道路融雪装置において、前記下端吸熱部と前記補助ヒータとが、前記ヒートパイプの埋設されている地盤よりも熱伝導率の高い材料からなる伝熱部材によって互いに熱授受可能にかつ一体に包み込まれるとともに、前記ヒートパイプの長さ方向での中間部と前記地盤との間に該地盤よりも熱伝導率の低い断熱部が設けられていることを特徴とする地熱および補助熱源を利用したヒートパイプ式道路融雪装置。

【図1】
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