地物形状簡略化装置、簡略化方法およびそのプログラム
【課題】 地図における地物形状は複雑な形状をしており、アプリケーションによって必要とされる簡易な形状を、簡略な手法で生成することが求められていた。
【解決手段】 地物形状を構成する辺を、その方向により4つに分類し(ステップS130)、各分類に属する辺を一つずつ取り出して、その辺またはこれを延長して得た辺から四角形を構成する(ステップS140)。この四角形を候補形状として元の地物形状との重なりやはみ出しを計算し、スコアSCを求める(ステップS145)。このスコアSCが閾値TSより大きいものがあれば、これを簡略化形状として出力する(ステップS160)。閾値TSより大きなスコアSCを有する四角形が見つからなければ(ステップS150)、所定の条件を満たす二つの候補形状の和集合を求め(ステップS180)、これを新たな候補形状として再度スコアSCを計算して、簡略化形状を抽出できないか判定する。こうすることで、簡略な処理により、複雑な地物形状を容易に簡略化することができる。
【解決手段】 地物形状を構成する辺を、その方向により4つに分類し(ステップS130)、各分類に属する辺を一つずつ取り出して、その辺またはこれを延長して得た辺から四角形を構成する(ステップS140)。この四角形を候補形状として元の地物形状との重なりやはみ出しを計算し、スコアSCを求める(ステップS145)。このスコアSCが閾値TSより大きいものがあれば、これを簡略化形状として出力する(ステップS160)。閾値TSより大きなスコアSCを有する四角形が見つからなければ(ステップS150)、所定の条件を満たす二つの候補形状の和集合を求め(ステップS180)、これを新たな候補形状として再度スコアSCを計算して、簡略化形状を抽出できないか判定する。こうすることで、簡略な処理により、複雑な地物形状を容易に簡略化することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頂点数N(Nは5以上の自然数)の多角形として表現された建物や土地などの地物の形状を、頂点数M(Mは3以上、N未満の自然数)の図形に変換する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地図情報はデジタル化されて、自動車のナビゲーションシステムなどに活用されている。こうした地図情報の一つとして、建物の形状がある。いわゆる住宅地図などでは、その場所に存在する建物の平面形状などを再現し、地図の利便性を高めているのである。建物の平面形状は、建築図面に基づいて入力することも可能であるが、多数の建物について、その形状を入力する手間を軽減するために、例えば航空写真を利用し、図形認識などの手法を用いて建物の平面形状を表わすポリゴン(多角形形状)を生成することが行なわれている。
【0003】
こうして生成されたポリゴンは、実際の建物の平面形状(投影図における投影図形状)に基づいているため、建物が複雑な形状をしていれば、当然認識した形状も複雑なものとなり、頂点の数が10以上になることも珍しくない。地図情報としてこうした地物形状を扱う場合には、地図情報として許容されるデータの大きさの制限もあり、またあまりに複雑な形状は地図としての使用上は意味をなさない場合もあり、地物形状としての適切な複雑さ(換言すれば、適切な簡略さ)が求められる。そこで、従来から、複雑な形状のポリゴンを簡略化する技術が提案されていた(下記特許文献1、2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−141554号公報
【特許文献2】特開2003−178299号公報
【0005】
しかしながら、従来の簡略化の技術では、個々の辺について所定の条件に合致するか否かといった判断を繰り返すため、処理に時間がかかるうえ、その割りに頂点数の大幅な削減を実現することができなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、複雑な地物形状の大幅な簡略化が困難であるという課題を解決するものであり、短時間のうちに建物の形状の簡略化を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を実現する本発明の地物形状簡略化装置は、
頂点数N(Nは5以上の自然数)の多角形として表現された地物形状を、頂点数M(Mは3以上、N未満の自然数)の図形に変換する地物形状簡略化装置であって、
前記地物形状を構成する連続したN個の辺の情報を入力する辺情報入力手段と、
該情報を入力したN個の辺を、該辺の起点から終点に向かう方向を基準としてM種類に分類する辺分類手段と、
該分類された辺から、該分類毎に一つの辺を抽出する辺抽出手段と、
該抽出された辺もしくは該辺を延長した辺とにより、頂点が少なくとも3個以上の多角形を、候補形状として構成する候補形状形成手段と、
該形成された候補形状と前記地物形状とを比較して評価値を求める評価値演算手段と、
該評価値に基づいて、前記地物形状を簡略化した簡略化形状を求める簡略化形状決定手段と
を備えたこと
を要旨としている。
【0008】
また、この地物形状簡略化装置に対応した簡略化方法は、
頂点数N(Nは5以上の自然数)の多角形として表現された地物形状を、頂点数M(Mは3以上、N未満の自然数)の図形に変換する方法であって、
前記地物形状を構成する連続したN個の辺の情報を入力し、
該情報を入力したN個の辺を、該辺の起点から終点に向かう方向を基準としてM種類に分類し、
該分類された辺から、該分類毎に一つの辺を抽出し、
該抽出された辺もしくは該辺を延長した辺とにより、頂点が少なくとも3個以上の多角形を、候補形状として構成し、
該形成された候補形状と前記地物形状とを比較して評価値を求め、
該評価値に基づいて、前記地物形状を簡略化した簡略化形状を求めること
を要旨としている。
【0009】
かかる地物形状簡略化装置またはその方法によれば、頂点数Nの多角形として表現された地物形状を、頂点数Mの図形に変換することができる(3≦M<N)。この装置または方法によれは、情報を入力したN個の辺を、該辺の起点から終点に向かう方向を基準としてM種類に分類し、分類された辺から、分類毎に一つの辺を抽出し、抽出された辺もしくは該辺を延長した辺とにより、頂点が少なくとも3個以上の多角形を、候補形状として構成する。その上で、形成された候補形状と地物形状とを比較して評価値を求め、評価値に基づいて、地物形状を簡略化した簡略化形状を求める。従って、簡略な構成で、地物形状の簡略化を実現することができる。辺の起点から終点に向かう方向は、辺がベクトルとして定義されている場合は、その情報をそのまま用いればよく、辺が単に両端の座標により定義されているに過ぎない場合には、そのいずれか一方を起点とし、他方を終点として定義すればよい。この時、一つの辺についていずれか一方が終点とされれば、これに接続された他の辺において、その接続された端点が起点となり、他方が終点となる。地物形状を構成する複数の辺は、順次接続されて閉空間を構成しているから、一つの辺について起点と終点を定めれば、他の辺の起点と終点は、一意に定めることができる。
【0010】
辺の分類は、辺の起点から終点に向かう方向が、全方向をM個に分割したいずれの範囲に属するかにより行なうことができる。面積を有する形状としては三角形が最も辺の数が少ないので、全方向、即ち角度では360度(2π)を3分割した120度ずつの範囲に属することで、総ての辺を三種類に分類するのが最も簡易な構成である。地物形状は四角形を基準とすることが多いことに鑑み、全方向を4個に分割したいずれの範囲に属するかにより行なっても良い。もとより、M=3から順次MをN−1まで増加させ、総ての場合を尽くすことも差し支えない。この場合、総ての場合を尽くして、評価の最も高いものを地物形状の簡略化形状として求めることにしても良いし、順次評価をして所定以上の評価となる簡略化形状が得られたら、そこで処理を打ち切り、辺の分類以下の処理を終了するものとしても良い。
【0011】
全方向をいくつかに分割する際には、予め定めた特定の方向(例えば東方向に相当する角度)を基準として、そこからM個に分割するものとしても良いし、分類しようとする辺の中で最も長い辺を見出し、その辺の方向を基準として、M個に分割するものとしても良い。一般に、地物は、日照を考慮して形作られる場合が多いので、東などの特定の方向を基準とすることは、辺の分類において意味を持っている。また、地物を構成する辺のうち最も長い辺が、その地物の基本的な形状の方向性を示している場合が多いので、最も長い辺を基準にして全方向をM個に分割することは、地物形状を簡略化するための辺の分類として有効である。なお、最も長い辺の方向を0度として、0ないし360/M度を最初の範囲としても良いが、辺が有する方向の情報に誤差を有することを考慮し、最も長い辺の方向を180/M度とし、0ないし360/M度を最初の範囲とすることも現実的である。もとより、現実的な分割数Mが10程度以下であることに鑑み、最も長い辺を10ないし15度程度の予め定めた角度とみなして、全方向をM個に分割することも差し支えない。
【0012】
M種類に分類された辺のうちから、候補形状を形成するための辺の抽出は、種々の手法が想定されるが、例えば辺の長さに着目して抽出するものとすることができる。この場合、長い辺から順に抽出するものとすれば、少ない辺で元の地物形状に近い形状を候補形状とする可能性を高くすることができる。あるいは一つの分類から一つの辺を抽出した時、他の分類からは、先に抽出された辺と特定の関係、例えばなるべく直交に近い関係にある辺を選択すると言った対応も可能である。
【0013】
この他、例えば、M種類に分類された各々の分類に属する辺のうち、絶対値が所定値より大きく、且つ地物形状の周囲長に対して所定の割合より大きな割合を有する辺を抽出の対象とすることも、元の地物形状に近似の形状を候補形状とする上で有効である。
【0014】
抽出された辺を用いて候補形状を形成する場合、抽出された辺を延長した辺を用いる際には、元の地物形状からはみ出さない形状のみを、候補形状として構成することも実際的である。地物形状は、本来隣接する他の地物形状と重なることのないものであり、はみ出さない形状のみを候補形状とすれば、こうした地物形状の持つ特性を保持できるからである。もとより、一定の割合までは、はみ出しを許容したり、隣接する建物についての簡略化済みの形状との関係で、はみ出しを許容するといった対応も可能である。
【0015】
抽出された辺により候補形状を構成する際、隣接する2辺が候補形状の内側に形成する総ての角度が、少なくとも270度(1.5π)以上の所定の角度より小さい形状のみを、候補形状として構成することも可能である。四角形以上の形状では、その形状の内側に向けて凸の角を形成することが一般に可能である。しかし、通常の地物形状としては、内側に凸の角の内角270度以上のものは、特殊な形状として、そのような角を有する形状を候補形状としないことが、処理を簡略化する上で有用である場合が存在する。なお、この角度は、270度以上の所定の角度として設定可能であり、280度、290度など、実際の処理に応じて、予め設定すればよい。
【0016】
こうして得られた候補形状についての評価は、地物形状と候補形状の各面積および両形状の重なりに基づく面積を用いて評価値を演算することにより行なっても良い。こうした評価値を用いた評価には種々の手法を考えることができる。例えば、両形状の重なりに基づく面積として、両形状の重なった部分の面積および地物形状に対して前記候補形状が重ならない部分の面積のうち、少なくとも一方の面積を求め、この面積の地物形状の面積に対する割合を用いて評価値を求める、といった構成を採用することも差し支えない。こうした評価値の演算は、どのような候補形状を、元の地物形状を簡略化した形状として望ましいと考えるか、という観点から種々の手法を予め決めておくことができる。なお、上記の例で、地物形状の面積に対する割合を求めているのは、いわゆる正規化の処理に相当する。こうしておけば、大きな形状でも小さな形状でも同じ手法で評価することができる。
【0017】
こうした地物形状の簡略化において、入力した辺情報に基づいて簡略化形状を求める過程で、頂点数Nの地物形状を簡略化することを中止すべき所定の条件が成立していることを判断し、簡略化の処理を中止することが考えられる。現実の地物形状の簡略化は、総ての場合に可能であるとは限らず、無用な探索の処理を行なわずに、所定の条件により中止した方が、トータルでは望ましい場合も存在するからである。中止条件が成立していると判断した場合には、地物形状を記述するために用意されたフォーマットで記述された地物形状の辺の情報をそのまま出力するものとすればよい。他方、簡略化情報が決定された場合には、簡略化情報を、地物形状が記述されたフォーマットと同一のフォーマットで出力すればよい。もとより、出力するデータに、中止されたか否かのフラグを付与しても良い。
【0018】
簡略化の処理を中止する所定の条件としては、入力した総ての辺の長さが所定の判定値以下である場合や、入力した辺情報から、外形形状が曲線の地物形状を短い直線で近似した辺が存在する場合など、あるいは入力した辺情報に基づいて簡略化形状を求める過程で、予め設定した条件を満足する候補形状が一つも得られなかった場合などを考えることができる。
【0019】
本発明において、候補形状として複数の形状が求められた場合であって、そのうちのいずれの候補形状も、評価値が、予め定めた閾値を超えていない場合には、複数の形状のうち所定の条件を満たす2個以上の形状を合成した形状を新たな候補形状として評価値を求め、評価値が所定の合成条件を満たす場合には、合成した候補形状を、簡略化形状として求めるものとして良い。複雑な形状の建物の場合、単一の候補形状では簡略化できない場合もあり得るからである。
【0020】
もとよりこうした合成の対象となる候補形状はいくつもあり得るから、合成を行なう2個以上の形状が満たす所定の条件としては、各形状の面積が、地物形状の面積に対して、所定の割合以上であるという条件を設けておくことができる。あるいは、2個の形状が重なっていることや、記合成後の候補形状における隣接する2辺が該候補形状の内側に形成する総ての角度が、少なくとも270度以上の所定の角度より小さいことといった条件を設けておくことも差し支えない。複数個の形状の合成を許すと、多数の辺を有する地物形状の簡略化は、極めて複雑なものとなることが考えられる。そこで、通常の地物の形状に基づき、2個の形状を合成するという条件に限ることも差し支えない。「L」形状の地物などは、大部分2個の形状の合成により、簡略化した形状を見出すことができるからである。もとより、「コ」の字形状の地物も存在するから、合成する形状を3個まで、あるいはそれ以上とすることも差し支えない。
【0021】
なお、本発明は、こうした地物形状簡略化装置やその方法として把握されるだけでなく、簡略化方法をコンピュータにより実現するプログラムの発明や、そのプログラムを記録した家禄媒体としての発明等として把握することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の一実施例としての地物形状簡略化装置とその方法について、以下実施例を挙げて説明する。図1は、実施例としての地物形状簡略装置10の概略構成図である。この装置10は、演算処理を行なうCPU21、処理用のワークエリアなどに用いられるRAM22、モニタプログラムなどを記憶するROM23、使用者の指示を入力するマウス付きのキーボード25、処理中の地物形状などを表示するディスプレイ27、地物形状データベースBDBなどを記憶するハードディスク30等を備えている。この実施例では、簡略化の処理の対象となる地物形状は、予め建物を構成する複数の線分の集合として定義されており、データベースを構成している。
【0023】
図2に、地物形状データベースBDBのデータ構造の一例を示す。図示するように、この例では、地物形状データベースBDBには、大きくは、「要素種別」「中抜き面数」「外枠面情報」が記憶されている。要素種別は、このデータベースBDBが、更に上位の地図データベースの一部を構成していることから、地図データベースGDBにおいて、どのような要素に該当するかを示す情報である。本実施例では、要素種別は、地図データベースGDB中では、面や中抜きの情報であることを示す値を持っている。中抜き面数は、一つの地物形状に、中抜きの部分がある場合に、その中抜きの部分の数を示す情報である。このデータベースBDBでは、中抜きはないとして扱うので、総ての地物形状において、中抜き面数は、値0となっている。
【0024】
外枠面情報は、地物形状を示す外枠を構成するn点の座標のデータからなっている。外枠面情報は、外枠面座標点数の情報とここで定義された数nだけの座標のデータとから構成されている。図3は、地物形状データベースBDBに登録された一つの建物についての外枠面情報との対応関係を示す説明図である。図示するように、この地物形状は、17の辺から構成されており、各辺は総て連結点で連結されている。この連結点CPを、連結点CP1から連結点CPnまで、そのx座標およびy座標の組み(x1,y1)・・・(xn,yn)で表わしたものが、地物形状データベースBDBの「外枠面情報」である。この例ではn=17であり、全部で17の連結点CP1ないしCP17の座標データを記録している。この例では、連結点CPの座標を記述しているが、連結点CP1と連結点CPnとは、異なる点であり、連結点CPnの次が連結点CP1であるとして扱うものとして、総ての連続する連結点間には、辺が存在することになる。従って、このデータベースBDBは、連結点CPの座標を記憶しているが、本質的には、地物形状を構成する辺を定義しているのである。建物毎に形状は異なるので、連結点の数も異なるから、このデータベースBDBは、いわゆる可変長のデータベースである。
【0025】
CPU21は、後述する簡略化プログラムを、ハードディスク30から主記憶を構成するRAM22に一旦ロードし、主記憶上のプログラムを実行することにより、この地物形状の簡略化を行なう。図3に示した例では、簡略化された後の形状は例えば図4に示すように、連結点が6個の形状となっている。なお、簡略化後の連結点は、必ずしも元の地物形状が備えていた連結点と一致するとは限らないから、図4では、簡略化後の連結点をVPで表わすものとしている。この場合の簡略化形状も、図2に示したデータベースと同様のフォーマットで定義している。簡略化された地物形状のデータベースを、簡略化地物形状データベースSDBと呼ぶ。この簡略化地物形状データベースSDBも、地物形状データベースBDBと同様ハードディスク30に記憶される。なお、詳しくは後述するが、簡略ができない場合も当然にあり得、この場合には、簡略化されていない元のデータ(図2参照)がそのまま簡略化地物形状データベースSDBに保存される。
【0026】
次に、地物形状簡略化装置10が実行する処理について説明する。図5は、この装置10が実行する処理を示すフローチャートである。簡略化装置10は、地物形状データベースBDBが準備され、キーボード25を介して簡略化処理の開始を指示されると、まず地物形状データベースBDBにアクセスして、データベースBDBから、最初の地物形状データを読み出す処理を行なう(ステップS100)。要するに、ハードディスク30から、図2に示した一つの建物に相当するデータを読み出すのである。続いて、簡略化の閾値TSを読み出す処理を行なう(ステップS110)。この閾値TSは、元の地物形状を簡略化する際のいわば評価を行なうための閾値である。詳しく後述するが、所定の条件で得られた候補形状が、簡略化されたものとしてみなして良いか否かの判断基準を与えるものである。
【0027】
こうした閾値TSは、総ての地物形状に対して一律に同じ値としても良いが、地物形状が有する特性により変更するものとしても良い。例えば、地物形状の複雑さ、つまり通常は連結点CPの数の多寡に応じて変更するものとしても良い。形状が複雑になれば、閾値をある程度下げてやらないと、簡略化ができたと判断することが困難になる場合が想定されるからである。もとより、地物形状の複雑さではなく、地物形状の大きさ(占有面積)や隣接する建物との距離や建物の種別(目標物なのか個人家屋なのか等の種別)などにより、閾値TSを変更するものとしてもよい。実施例では、図6に示すように、着目した地物形状の面積SSに応じて、下限値TSlから上限値TSuの間の値を取るものとしている。即ち、実施例においては、閾値TSは、地物形状の面積SSが下限SL以下であれば値TSlに等しく、地物形状の面積SSが上限SU以上であれば値TSuに等しく、地物形状の面積SSが下限SLから上限SUまでの間に入っている場合には、下限値TSlと上限値TSuとの間を線形補間した値として定義されている。もとより、線形補間などの処理に代えて、閾値TSをテーブルの形で保持し、地物形状データベースBDB内から一つの地物形状のデータを読み出したとき(ステップS100)、その面積を計算し、テーブルを参照して閾値TSを読み込むものとしても良い。
【0028】
こうして地物形状データベースBDBから一つの建物のデータを取得し(ステップS100)、その地物形状の簡略化のための閾値TSを読み込んだ後(ステップS110)、次に簡略化が可能か否かの判断を行なう(ステップS120)。簡略化が可能な否かの判断については、詳しくは図7を用いて後述するが、総ての地物形状について簡略化が可能な訳ではないからである。ステップS120において、簡略化が可能でないと判断された場合は、ステップS125に移行し、地物形状データベースBDBから取得したデータ(図2参照)を、そのまま簡略化後の簡略化地物形状データベースSDBとして出力する処理を行なう。このように簡略化の処理ができない場合でも、データベースSDBにデータを書き出しておくのは、本実施例では、地図を描画するために、簡略化できない地物形状も含めて総ての建物についてのデータを揃えておくためである。単に地物形状の簡略化だけを目的としている場合には、簡略化されなかった地物形状については、データを出力しない構成とすることも差し支えない。
【0029】
簡略化可能か否かの判断の内容について、図7に依拠して説明する。図7は、簡略化の判断処理ルーチン(ステップS120)の詳細を示すフローチャートである。図示するように、この処理が開始されると、まず、地物形状データベースBDBから取得した一つの建物のデータに基づき、この地物形状を構成している各辺のX方向長さおよびY方向長さが、総て所定値L1より小さいか否かの判断を行なうのである(ステップS121)。i番目の連結点CPi と次の連結点CPi+1 間に存在する辺のX方向、Y方向の長さLxi,Lyiは、
Lxi=|xi+1 −xi |
Lyi=|yi+1 −yi |
として簡易に求めることができる。そこで、これらの辺の長さLxi,Lyiが総て所定値L1以下であれば、地物形状が小さな微小建物であるとして、簡略化の処理を行なわないと判断するのである。
【0030】
地物形状を表わす各辺に、長さL1以上のものがあると判断されれば(ステップS121)、続いて、着目している地物形状の一部に曲線図形が含まれるか否かの判断を行なう(ステップS122)。本実施例では、円形のホールなど、外形形状の少なくとも一部に曲線形状が含まれる場合、これを短い直線の連続として記述している。従って、所定値L2以下のショートベクトルが、所定値N1以上連続している場合には、これを曲線形状を近似していると判断し、簡略化の処理の対象から外すという判断を行なうのである。本実施例では、簡略化は、直線近似に拠っているので、もともと曲線形状の図形の簡略化は行なわないとしているのである。なお、実施例では、実際の長さ25センチを1単位として、L1は40単位分として設定した。同様に、実施例では、L2は10単位分(2.5メートル相当)でN1=10として、曲線図形の判断を行なった。もとより、曲線図形を簡略化の処理から排除せず、他の図形と同じように簡略化の処理の対象とすることも差し支えない。
【0031】
上記ステップS121,S122の判断により、候補形状の生成ができないと判断した場合には、「1」に抜けて、本ルーチンを一旦終了する。「1」は、図5に示した処理の連結箇所であり、この場合には、上述したステップS125に処理は移行し、候補形状は生成できないとして、元の地物形状のデータのコピーを行なうのである。他方、ステップS121,S122で、簡略化の処理が可能と判断された場合には、「NEXT」に抜けて、本処理ルーチンを終了し、図5の処理に戻る。
【0032】
簡略化の処理が可能と判断した場合には、次に、地物形状データベースBDBから取得したデータに含まれる総ての辺を、4つに分類する処理を行なう(ステップS130)。4つ分類するとは、本実施例では、各辺を始点と終点を持つベクトルとみなし、そのベクトルの有する角度θが、4つの象限のいずれに属するかを判定する処理である。4つの象限は、本実施例では、最も長い辺を基準にして定めている。即ち、まず全ての辺を探索して最も長い辺を見出し、この辺の方向を角度0として、−0.25π≦θ<0.25πを第1象限、0.25π≦θ<0.75πを第2象限、0.75π≦θ<1.25πを第3象限、1.25π≦θ<1.75πを第4象限として定めている。その上で、各辺がこれら4つの象限のいずれに属するかにより分類する。図8に、辺S1ないしS8からなる地物形状の一例を示した。この例では、辺S5が最も長いので、この辺を基準にして分類を行なうと、図9に示した結果となる。
【0033】
この実施例で4つに分類したのは、便宜的なものであり、5つに分類しても差し支えない。また、各分類は、辺の方向に基づいて行なっていれば足り、4つに分類する場合であっても、各角度範囲は必ずしも90度ずつである必要はない。各分類の角度範囲は、一つ一つ予め定めておくものとしても良い。また、本実施例では、最も長い辺の方向を基準として、各象限の範囲を定めたが、所定の方向、例えば実際の地図上における東に相当する方向を角度0として、各象限を定めても良い。
【0034】
こうして辺を4つに分類した後、候補形状が生成可能か否かの判断を行なう(ステップS135)。候補形状は、4つの分類の各々から一つの辺を取り出し、都合4つの辺を組み合わせることにより生成される。もとより、元の地物形状が5個以上の連結点CPを有するものであれば、4つに分類された辺を一つずつ取り出しても各辺は必ずしも連結しない。そこで、候補形状の生成時には、各分類から取り出した4つの辺については、適宜延長することにより、候補形状を生成するものとしている。
【0035】
図8に例示した地物形状に沿って、候補形状の生成について説明する。図8に示した地物形状は、8個の連結点CP1ないしCP8を有することから、隣接する各連結点CPを番号の小さい方から大きい方に向かって右周りに接続する8個の辺S1ないしS8から構成されている。各辺S1ないしS8を、ベクトルとみなしてその方向を上記の4つの角度範囲に分類する。なお、方向が分かりやすいように、図8では、各辺は、終点側に矢印を有するベクトルとして示した。分類した結果は、図9に示されている。図9において、第1象限ないし第4象限の4つに分類された各辺については、更に長さが長いものを上位にして分類してある。即ち、全ての辺の中で最も長い辺であるS5が属するのが第1象限となり、第2象限には辺S4、S2が属し、この順に上位の辺S4が長く、第3象限には辺S1、S3、S7が属し、この順に上位の辺S1が最も長く、第4象限には辺S8、S6が属し、この順に上位の辺S8が長くなっている。そこで、各象限に分類された辺のうち、長いものから順次取り出し、それらの組み合わせて、候補形状を生成するのである。生成される候補形状の例を図10および図11に示した。各図において、元の地物形状を破線で、選択した辺を実線で、各辺をその交点まで延長した部分を一点鎖線で、それぞれ示した。図10では、各分類において最も長い辺S1、S4、S5、S8の組み合わせとして、候補形状SS9が生成されている。また図11では、基本的には、図10と同様、各分類から、長い辺を取り出して候補形状を生成しているが、この例では、第3象限に属する辺についてのみ、二つの辺S2、S4から、2番目に長い辺S2を用いて候補形状SS10を生成している。両者を比較すると、候補形状SS9では、図示の領域BB9が、元の地物形状から見るとはみ出した領域となっているのに対して、候補形状SS10では、こうしたはみ出した領域が存在しない。
【0036】
図8ないし図11は、候補形状が生成できた場合を示しているが、形状によっては、候補形状として扱えない形状しか構成できない場合が存在する。そこで、その条件として、本実施例では、次の条件を定めている。即ち、
(1)各分類から取り出した各辺Sの長さをLLとしたとき、
(1−1)LL>L3であること、
(1−2)LL/LA>T4であること
(ここで、LAは、地物形状の周囲長である)、
(2)候補形状における各内角αは、α≦(2π−T5)であること、
という条件を満足する場合にのみ、候補形状が生成可能と判断するのである。なお、実施例では、T5=0.5[rad ]としたが、この大きさは出力する地図の大きさなどによっても影響を受ける。
【0037】
上記条件(1−1)は、絶対値があまりに短い辺を無理に拡長して候補形状を生成させないためであり、条件(1−2)は、絶対値としては所定の長さL3以上ある辺でも、元の地物形状が大きい場合、相対的に小さな辺を拡張して候補形状を生成させないためであり、条件(2)は、図12に示すように、内側にあまりに深く切れ込んだ形状を候補形状としないための条件である。辺を4つに分類して組み合わせる場合には、通常この条件(2)により除外される候補形状は少ないが、分類を5つ以上にした場合などには生じる可能性がある。
【0038】
分類した総ての辺の組み合わせを試しても、上記の条件の総てを満足する形状が得られない場合には、候補形状は生成不可能として(ステップS135)、ステップS125に移行し、上述した地物形状のデータをコピーする処理を行なう。他方、総ての辺の組み合わせを試してみたとき、上記の(1−1)(1−2)(2)の総ての条件が満たされる形状が見出された場合には、候補形状は生成可能であると判断し、次に、候補形状を生成する処理を行なう(ステップS140)。候補形状は、既に図8ないし図11を用いて例示したように、複数生成可能なことが多い。本実施例では、上記の条件を満たして生成できる総ての形状を、候補形状として生成するのである。
【0039】
候補形状を生成した後、次に各候補形状についてのスコアSCを計算する処理を行なう(ステップS145)。スコアSCは、本実施例では、元々の地物形状の面積をA、候補形状の面積をBとして、次式(1)により計算する。
SC=(AB−λ・BB)/A …(1)
ここで、ABは地物形状と候補形状の積面積、BBは、BB=B−AB、つまり候補形状が、地物形状との重なりの形状からはみ出している面積である。また、λは、そのはみ出し量に対する重み付け係数(ペナルティ)である。
【0040】
上記式(1)において、AAを、AA=A−AB、つまり元々の地物形状が、候補形状との重なりの形状からはみ出している面積として定義すると、
SC=(A−AA−λBB)/A
と変形できるから、スコアSCは、結局、着目した候補形状が、地物形状に対して過小である面積AAと、過大である面積BBとを、共に評価していることになる。従って、λ=1とすれば、過小な部分と過大な部分とに等しい重み付けがなされていることになり、λ=0とすれば、過大な部分があっても許容することになり、λ=∞とすれば、はみ出しを一切許容しないことになる。本実施例では、隣接した建物を簡略化した後の簡略化形状が互いに重ならないことを優先して、λ=100に設定してある。なお、全体Aで除しているのは、スコアSCを地物形状の大小に拠らない値とする(正規化する)ためである。
【0041】
スコアSCを計算した後、次に、ステップS140で生成した候補形状スコアSCが、先に読み込んだ(ステップS110)閾値TSより大きいか否かの判断を行なう(ステップS150)。候補形状が複数生成されている場合には、総ての候補形状について判定するのである。ここで、スコアSCが、閾値TSを上回る候補形状が存在すれば、閾値TSを越えるスコアSCを有する候補形状の中から、最もスコアの高い候補形状を簡略化形状として出力する処理を行なう(ステップS160)。出力の形式は、ステップS125で説明したように、地物形状のものと同じフォーマットである。その後、地物形状データベースBDBに保存されている全ての建物について簡略化の処理を完了したかを判別し(ステップS170)、完了していなければ、ステップS100に戻って、地物形状データベースBDBからデータを取得する処理以下を繰り返す。
【0042】
スコアSCを計算した後(ステップS150)、閾値TSを上回るスコアSCを有する候補形状が見いだせなかった場合には(ステップS150)、次に和集合を生成する処理を実行する(ステップS170)。和集合の生成は、次のように行なう。ステップS140で生成した候補形状(いずれも四角形)のうち、面積が大きい順にN2個を取り出し、且つその面積Bの地物形状の面積Aに対する比(B/A)が、所定値T2を越えているものを対象に、2つの四角形同士の和集合を生成して、これを新たな候補形状とするのである。図8に示した例では、図13に示すように、辺S1−S2−S5−S8により形成した四角形dS1、辺S2−S3−S4−S5により形成した四角形dS2との和集合SSorが、新たな候補形状となるのである。なお、二つの四角形に重なりの部分を生じないものについては、簡略化候補とはしないものとした。同様に、重なりがあっても、いずれか一つの内角αが、α≦(2π−T5)となってしまう組み合わせについても除外するものとした。更に、二つの四角形を組み合わせた形状が元の地物形状より複雑な形状となる場合も除いている。
【0043】
その後、和集合が一つでも生成できたかを判断し(ステップS180)、一つも生成できなければ、簡略化の処理をできないとして、上述したステップS125に移行して元のデータをそのまま出力し、着目した地物形状についての簡略化の全処理を終了する。他方、一つでも和集合が生成できた場合には(ステップS180)、ステップS145に戻って、その和集合の形状についてのスコアSCの計算から、上述した処理を繰り返す(ステップS145ないしS160)。和集合の形状について、スコアSCが閾値TSより高いものが存在すれば、そのうちの最上位のスコアの和集合を、簡略化形状として出力する処理を行なう(ステップS160)。いずれの場合もこれで着目した地物形状については簡略化の処理が終了したことになるので、地物形状データベースBDB内の全ての地物形状についての簡略化の処理が完了したかを判別し(ステップS170)、完了するまで、上記の処理を継続する。
【0044】
以上説明した本実施例によれば、多数の複雑な地物形状を、簡略な処理により、四角形またはその二つの和集合の形状に簡略化することができる。従来、地図上に存在する地物形状などの多数の、しかも複雑な形状を、高速に処理して簡略することは極めて困難であった。カーナビゲーションなどに用いられる地図の元になっている詳細な地図(地物形状なども実際に即した形状で入力されている住宅地図など)から、ナビゲーションシステム用の地図を生成する場合など、何千万という数の地物形状を簡略する必要がある場合もあり、こうした処理を高速に行なう簡略化装置および簡略化方法は、極めて有用である。また、本実施例では、簡略化できないものについては無理な簡略化を行なわず、入力した地物形状のデータをそのまま出力しているので、そのまま地図などの描画に用いることができる。全ての地物形状が簡略化されていなくても、大部分の地物形状が簡略化されれば、トータルのデータ容量を低減することができるので、例えば地物形状のデータを容量の限られたDVDなどに収録する際に便利である。また、簡略化されていない形状は、連結点の数を見れば容易に判別できるので、それらのデータのみを抽出し、時間はかかるが例外的な形状でも簡略化する他の簡略化方法を採用して、簡略化の処理を行なうものとしても良い。この場合、多数の地物形状は本実施例の手法で簡略化を済ませているので、例え他の手法が、簡略化の処理に時間を要するものであっても、トータルの時間をさほど長くしないで済ませることができる。
【0045】
また、本実施例では、簡略化を評価する閾値TSを、地物形状の面積SSにより図6に示したように変化させている。従って、面積が大きくなるに従って、地物形状と近似の候補形状しか出力しなくなるのである。形状が大きくなれば、一致の割合が等しくなっても、はみ出したり不足していたりする面積それ自体は大きくなる。このため、地物形状の面積SSが大きくなるほど、一致率の高いもののみを簡略化形状として出力することになる。この場合、面積の大きな地物形状ほど、簡略化されにくいことになるが、現実には、大きな地物形状ほど、これを構成する辺の数も多く、様々な候補形状を作り得ること、大きな地物形状ほど、地物形状データベースBDB内での占める割合は相対的に小さくなるから、そのままデータを出力しても全体としてのデータ量の増大はさほど大きなものとならないことなどから、簡略化によりデータ全体の容量の低減の効果は享受することができる。
【0046】
また、本実施例では、スコアSCを計算するとき、係数λを用いて、はみ出し部分についての評価の割合を容易に変更できるようにしている。従って、対象となる地物形状の性質に応じて、はみ出しを許さないという条件(λ=∞)から、はみ出しを重なっていない部分と同程度に評価する条件(λ=1)、更には、はみ出しにスコア上のペナルティを与えない条件(λ=0)まで、簡易に設定することができる。
【0047】
更に、本実施例では、単一の四角形では十分な簡略化が達成できない場合には、所定の条件を満たした候補形状の和集合を求めて新たな候補形状とすることができる。この場合でも、評価の手法は変える必要がなく、また和集合の元になる四角形の候補形状は先に抽出しているので、その取り扱いは容易である。建物は、四角形の組み合わせで実現されることが多いので、四角形かその和集合で簡略化すると、元の形状の特徴を残し易いという利点が得られる。同様の理由から、和集合を求めて再度評価する手法は、簡便なものでありながら、効果は大きい。なお、本実施例では、最初に求める候補形状は、四角形としたが、五角形や六角形まで許容するものとしても良い。また、和集合は二つに限るものではなく、三つあるいはそれ以上の和集合を許容するものとして簡略化の処理を行なっても良い。
【0048】
以上説明した本実施例では、簡略化の処理は、専用の簡略化装置10を用いて行ない、地物形状データベースBDBから、表示や出力を行なうために、簡略化地物形状データベースSDBを形成したが、図5、図7を用いて説明した簡略化のアルゴリズムを表示や出力を行なう装置に組み込んでおき、必要に応じてその場で簡略化の処理を施すものとしてもよい。カーナビゲーションシステムや携帯電話の画面に地図を表示するような場合には、一度に表示に供される地物形状の数はさほど多くないので、必要な地物形状だけ簡略化して表示などを行なうものとすることも可能である。例えば、ネットワークを介して接続された携帯電話などの端末装置に地図を表示する場合、地図データそのものはサーバ側に用意される。しかも端末装置側での表示の倍率は様々なので、倍率によっては、サーバに蓄積した地物形状データベースBDBのデータをそのまま使って建物を表示したい場合も存在する。また縮尺を小さくして、建物の形状を簡略化しつつ表示したい場合も存在する。後者の場合に、縮尺に応じて、閾値TSを調整しつつ、表示しようとする領域に含まれる地物形状のみ簡略化処理を行なうものとすることができる。この場合の簡略化の処理は、サーバ側で行なっても良いし、端末装置側で行なっても良い。
【0049】
以上本発明の一実施例について説明したが、本発明は、こうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内において、種々なる態様で実施できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施例としての簡略化装置10の概略構成図である。
【図2】簡略化装置10における地物形状データベースBDBのデータ構造を説明する説明図である。
【図3】簡略化の対象となる地物形状の一つを例示した説明図である。
【図4】簡略化された後の簡略化形状を例示する説明図である。
【図5】本実施例における簡略化処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】閾値TSの設定手法を示すグラフである。
【図7】簡略化の判断処理ルーチンの一部を示すフローチャートである。
【図8】4つに分類された辺に基づいて候補形状を生成する様子を示す説明図である。
【図9】各辺S1ないしS8の分類の様子を示す説明図である。
【図10】候補形状と地物形状の関係を例示する説明図である。
【図11】候補形状と地物形状の他の関係を例示する説明図である。
【図12】内角の大きさによる制限について説明する説明図である。
【図13】二つの四角形から新たな候補形状を生成する様子を示す説明図である。
【符号の説明】
【0051】
10…地物形状簡略化装置
21…CPU
22…RAM
23…ROM
25…キーボード
27…ディスプレイ
30…ハードディスク
【技術分野】
【0001】
本発明は、頂点数N(Nは5以上の自然数)の多角形として表現された建物や土地などの地物の形状を、頂点数M(Mは3以上、N未満の自然数)の図形に変換する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地図情報はデジタル化されて、自動車のナビゲーションシステムなどに活用されている。こうした地図情報の一つとして、建物の形状がある。いわゆる住宅地図などでは、その場所に存在する建物の平面形状などを再現し、地図の利便性を高めているのである。建物の平面形状は、建築図面に基づいて入力することも可能であるが、多数の建物について、その形状を入力する手間を軽減するために、例えば航空写真を利用し、図形認識などの手法を用いて建物の平面形状を表わすポリゴン(多角形形状)を生成することが行なわれている。
【0003】
こうして生成されたポリゴンは、実際の建物の平面形状(投影図における投影図形状)に基づいているため、建物が複雑な形状をしていれば、当然認識した形状も複雑なものとなり、頂点の数が10以上になることも珍しくない。地図情報としてこうした地物形状を扱う場合には、地図情報として許容されるデータの大きさの制限もあり、またあまりに複雑な形状は地図としての使用上は意味をなさない場合もあり、地物形状としての適切な複雑さ(換言すれば、適切な簡略さ)が求められる。そこで、従来から、複雑な形状のポリゴンを簡略化する技術が提案されていた(下記特許文献1、2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−141554号公報
【特許文献2】特開2003−178299号公報
【0005】
しかしながら、従来の簡略化の技術では、個々の辺について所定の条件に合致するか否かといった判断を繰り返すため、処理に時間がかかるうえ、その割りに頂点数の大幅な削減を実現することができなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、複雑な地物形状の大幅な簡略化が困難であるという課題を解決するものであり、短時間のうちに建物の形状の簡略化を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を実現する本発明の地物形状簡略化装置は、
頂点数N(Nは5以上の自然数)の多角形として表現された地物形状を、頂点数M(Mは3以上、N未満の自然数)の図形に変換する地物形状簡略化装置であって、
前記地物形状を構成する連続したN個の辺の情報を入力する辺情報入力手段と、
該情報を入力したN個の辺を、該辺の起点から終点に向かう方向を基準としてM種類に分類する辺分類手段と、
該分類された辺から、該分類毎に一つの辺を抽出する辺抽出手段と、
該抽出された辺もしくは該辺を延長した辺とにより、頂点が少なくとも3個以上の多角形を、候補形状として構成する候補形状形成手段と、
該形成された候補形状と前記地物形状とを比較して評価値を求める評価値演算手段と、
該評価値に基づいて、前記地物形状を簡略化した簡略化形状を求める簡略化形状決定手段と
を備えたこと
を要旨としている。
【0008】
また、この地物形状簡略化装置に対応した簡略化方法は、
頂点数N(Nは5以上の自然数)の多角形として表現された地物形状を、頂点数M(Mは3以上、N未満の自然数)の図形に変換する方法であって、
前記地物形状を構成する連続したN個の辺の情報を入力し、
該情報を入力したN個の辺を、該辺の起点から終点に向かう方向を基準としてM種類に分類し、
該分類された辺から、該分類毎に一つの辺を抽出し、
該抽出された辺もしくは該辺を延長した辺とにより、頂点が少なくとも3個以上の多角形を、候補形状として構成し、
該形成された候補形状と前記地物形状とを比較して評価値を求め、
該評価値に基づいて、前記地物形状を簡略化した簡略化形状を求めること
を要旨としている。
【0009】
かかる地物形状簡略化装置またはその方法によれば、頂点数Nの多角形として表現された地物形状を、頂点数Mの図形に変換することができる(3≦M<N)。この装置または方法によれは、情報を入力したN個の辺を、該辺の起点から終点に向かう方向を基準としてM種類に分類し、分類された辺から、分類毎に一つの辺を抽出し、抽出された辺もしくは該辺を延長した辺とにより、頂点が少なくとも3個以上の多角形を、候補形状として構成する。その上で、形成された候補形状と地物形状とを比較して評価値を求め、評価値に基づいて、地物形状を簡略化した簡略化形状を求める。従って、簡略な構成で、地物形状の簡略化を実現することができる。辺の起点から終点に向かう方向は、辺がベクトルとして定義されている場合は、その情報をそのまま用いればよく、辺が単に両端の座標により定義されているに過ぎない場合には、そのいずれか一方を起点とし、他方を終点として定義すればよい。この時、一つの辺についていずれか一方が終点とされれば、これに接続された他の辺において、その接続された端点が起点となり、他方が終点となる。地物形状を構成する複数の辺は、順次接続されて閉空間を構成しているから、一つの辺について起点と終点を定めれば、他の辺の起点と終点は、一意に定めることができる。
【0010】
辺の分類は、辺の起点から終点に向かう方向が、全方向をM個に分割したいずれの範囲に属するかにより行なうことができる。面積を有する形状としては三角形が最も辺の数が少ないので、全方向、即ち角度では360度(2π)を3分割した120度ずつの範囲に属することで、総ての辺を三種類に分類するのが最も簡易な構成である。地物形状は四角形を基準とすることが多いことに鑑み、全方向を4個に分割したいずれの範囲に属するかにより行なっても良い。もとより、M=3から順次MをN−1まで増加させ、総ての場合を尽くすことも差し支えない。この場合、総ての場合を尽くして、評価の最も高いものを地物形状の簡略化形状として求めることにしても良いし、順次評価をして所定以上の評価となる簡略化形状が得られたら、そこで処理を打ち切り、辺の分類以下の処理を終了するものとしても良い。
【0011】
全方向をいくつかに分割する際には、予め定めた特定の方向(例えば東方向に相当する角度)を基準として、そこからM個に分割するものとしても良いし、分類しようとする辺の中で最も長い辺を見出し、その辺の方向を基準として、M個に分割するものとしても良い。一般に、地物は、日照を考慮して形作られる場合が多いので、東などの特定の方向を基準とすることは、辺の分類において意味を持っている。また、地物を構成する辺のうち最も長い辺が、その地物の基本的な形状の方向性を示している場合が多いので、最も長い辺を基準にして全方向をM個に分割することは、地物形状を簡略化するための辺の分類として有効である。なお、最も長い辺の方向を0度として、0ないし360/M度を最初の範囲としても良いが、辺が有する方向の情報に誤差を有することを考慮し、最も長い辺の方向を180/M度とし、0ないし360/M度を最初の範囲とすることも現実的である。もとより、現実的な分割数Mが10程度以下であることに鑑み、最も長い辺を10ないし15度程度の予め定めた角度とみなして、全方向をM個に分割することも差し支えない。
【0012】
M種類に分類された辺のうちから、候補形状を形成するための辺の抽出は、種々の手法が想定されるが、例えば辺の長さに着目して抽出するものとすることができる。この場合、長い辺から順に抽出するものとすれば、少ない辺で元の地物形状に近い形状を候補形状とする可能性を高くすることができる。あるいは一つの分類から一つの辺を抽出した時、他の分類からは、先に抽出された辺と特定の関係、例えばなるべく直交に近い関係にある辺を選択すると言った対応も可能である。
【0013】
この他、例えば、M種類に分類された各々の分類に属する辺のうち、絶対値が所定値より大きく、且つ地物形状の周囲長に対して所定の割合より大きな割合を有する辺を抽出の対象とすることも、元の地物形状に近似の形状を候補形状とする上で有効である。
【0014】
抽出された辺を用いて候補形状を形成する場合、抽出された辺を延長した辺を用いる際には、元の地物形状からはみ出さない形状のみを、候補形状として構成することも実際的である。地物形状は、本来隣接する他の地物形状と重なることのないものであり、はみ出さない形状のみを候補形状とすれば、こうした地物形状の持つ特性を保持できるからである。もとより、一定の割合までは、はみ出しを許容したり、隣接する建物についての簡略化済みの形状との関係で、はみ出しを許容するといった対応も可能である。
【0015】
抽出された辺により候補形状を構成する際、隣接する2辺が候補形状の内側に形成する総ての角度が、少なくとも270度(1.5π)以上の所定の角度より小さい形状のみを、候補形状として構成することも可能である。四角形以上の形状では、その形状の内側に向けて凸の角を形成することが一般に可能である。しかし、通常の地物形状としては、内側に凸の角の内角270度以上のものは、特殊な形状として、そのような角を有する形状を候補形状としないことが、処理を簡略化する上で有用である場合が存在する。なお、この角度は、270度以上の所定の角度として設定可能であり、280度、290度など、実際の処理に応じて、予め設定すればよい。
【0016】
こうして得られた候補形状についての評価は、地物形状と候補形状の各面積および両形状の重なりに基づく面積を用いて評価値を演算することにより行なっても良い。こうした評価値を用いた評価には種々の手法を考えることができる。例えば、両形状の重なりに基づく面積として、両形状の重なった部分の面積および地物形状に対して前記候補形状が重ならない部分の面積のうち、少なくとも一方の面積を求め、この面積の地物形状の面積に対する割合を用いて評価値を求める、といった構成を採用することも差し支えない。こうした評価値の演算は、どのような候補形状を、元の地物形状を簡略化した形状として望ましいと考えるか、という観点から種々の手法を予め決めておくことができる。なお、上記の例で、地物形状の面積に対する割合を求めているのは、いわゆる正規化の処理に相当する。こうしておけば、大きな形状でも小さな形状でも同じ手法で評価することができる。
【0017】
こうした地物形状の簡略化において、入力した辺情報に基づいて簡略化形状を求める過程で、頂点数Nの地物形状を簡略化することを中止すべき所定の条件が成立していることを判断し、簡略化の処理を中止することが考えられる。現実の地物形状の簡略化は、総ての場合に可能であるとは限らず、無用な探索の処理を行なわずに、所定の条件により中止した方が、トータルでは望ましい場合も存在するからである。中止条件が成立していると判断した場合には、地物形状を記述するために用意されたフォーマットで記述された地物形状の辺の情報をそのまま出力するものとすればよい。他方、簡略化情報が決定された場合には、簡略化情報を、地物形状が記述されたフォーマットと同一のフォーマットで出力すればよい。もとより、出力するデータに、中止されたか否かのフラグを付与しても良い。
【0018】
簡略化の処理を中止する所定の条件としては、入力した総ての辺の長さが所定の判定値以下である場合や、入力した辺情報から、外形形状が曲線の地物形状を短い直線で近似した辺が存在する場合など、あるいは入力した辺情報に基づいて簡略化形状を求める過程で、予め設定した条件を満足する候補形状が一つも得られなかった場合などを考えることができる。
【0019】
本発明において、候補形状として複数の形状が求められた場合であって、そのうちのいずれの候補形状も、評価値が、予め定めた閾値を超えていない場合には、複数の形状のうち所定の条件を満たす2個以上の形状を合成した形状を新たな候補形状として評価値を求め、評価値が所定の合成条件を満たす場合には、合成した候補形状を、簡略化形状として求めるものとして良い。複雑な形状の建物の場合、単一の候補形状では簡略化できない場合もあり得るからである。
【0020】
もとよりこうした合成の対象となる候補形状はいくつもあり得るから、合成を行なう2個以上の形状が満たす所定の条件としては、各形状の面積が、地物形状の面積に対して、所定の割合以上であるという条件を設けておくことができる。あるいは、2個の形状が重なっていることや、記合成後の候補形状における隣接する2辺が該候補形状の内側に形成する総ての角度が、少なくとも270度以上の所定の角度より小さいことといった条件を設けておくことも差し支えない。複数個の形状の合成を許すと、多数の辺を有する地物形状の簡略化は、極めて複雑なものとなることが考えられる。そこで、通常の地物の形状に基づき、2個の形状を合成するという条件に限ることも差し支えない。「L」形状の地物などは、大部分2個の形状の合成により、簡略化した形状を見出すことができるからである。もとより、「コ」の字形状の地物も存在するから、合成する形状を3個まで、あるいはそれ以上とすることも差し支えない。
【0021】
なお、本発明は、こうした地物形状簡略化装置やその方法として把握されるだけでなく、簡略化方法をコンピュータにより実現するプログラムの発明や、そのプログラムを記録した家禄媒体としての発明等として把握することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の一実施例としての地物形状簡略化装置とその方法について、以下実施例を挙げて説明する。図1は、実施例としての地物形状簡略装置10の概略構成図である。この装置10は、演算処理を行なうCPU21、処理用のワークエリアなどに用いられるRAM22、モニタプログラムなどを記憶するROM23、使用者の指示を入力するマウス付きのキーボード25、処理中の地物形状などを表示するディスプレイ27、地物形状データベースBDBなどを記憶するハードディスク30等を備えている。この実施例では、簡略化の処理の対象となる地物形状は、予め建物を構成する複数の線分の集合として定義されており、データベースを構成している。
【0023】
図2に、地物形状データベースBDBのデータ構造の一例を示す。図示するように、この例では、地物形状データベースBDBには、大きくは、「要素種別」「中抜き面数」「外枠面情報」が記憶されている。要素種別は、このデータベースBDBが、更に上位の地図データベースの一部を構成していることから、地図データベースGDBにおいて、どのような要素に該当するかを示す情報である。本実施例では、要素種別は、地図データベースGDB中では、面や中抜きの情報であることを示す値を持っている。中抜き面数は、一つの地物形状に、中抜きの部分がある場合に、その中抜きの部分の数を示す情報である。このデータベースBDBでは、中抜きはないとして扱うので、総ての地物形状において、中抜き面数は、値0となっている。
【0024】
外枠面情報は、地物形状を示す外枠を構成するn点の座標のデータからなっている。外枠面情報は、外枠面座標点数の情報とここで定義された数nだけの座標のデータとから構成されている。図3は、地物形状データベースBDBに登録された一つの建物についての外枠面情報との対応関係を示す説明図である。図示するように、この地物形状は、17の辺から構成されており、各辺は総て連結点で連結されている。この連結点CPを、連結点CP1から連結点CPnまで、そのx座標およびy座標の組み(x1,y1)・・・(xn,yn)で表わしたものが、地物形状データベースBDBの「外枠面情報」である。この例ではn=17であり、全部で17の連結点CP1ないしCP17の座標データを記録している。この例では、連結点CPの座標を記述しているが、連結点CP1と連結点CPnとは、異なる点であり、連結点CPnの次が連結点CP1であるとして扱うものとして、総ての連続する連結点間には、辺が存在することになる。従って、このデータベースBDBは、連結点CPの座標を記憶しているが、本質的には、地物形状を構成する辺を定義しているのである。建物毎に形状は異なるので、連結点の数も異なるから、このデータベースBDBは、いわゆる可変長のデータベースである。
【0025】
CPU21は、後述する簡略化プログラムを、ハードディスク30から主記憶を構成するRAM22に一旦ロードし、主記憶上のプログラムを実行することにより、この地物形状の簡略化を行なう。図3に示した例では、簡略化された後の形状は例えば図4に示すように、連結点が6個の形状となっている。なお、簡略化後の連結点は、必ずしも元の地物形状が備えていた連結点と一致するとは限らないから、図4では、簡略化後の連結点をVPで表わすものとしている。この場合の簡略化形状も、図2に示したデータベースと同様のフォーマットで定義している。簡略化された地物形状のデータベースを、簡略化地物形状データベースSDBと呼ぶ。この簡略化地物形状データベースSDBも、地物形状データベースBDBと同様ハードディスク30に記憶される。なお、詳しくは後述するが、簡略ができない場合も当然にあり得、この場合には、簡略化されていない元のデータ(図2参照)がそのまま簡略化地物形状データベースSDBに保存される。
【0026】
次に、地物形状簡略化装置10が実行する処理について説明する。図5は、この装置10が実行する処理を示すフローチャートである。簡略化装置10は、地物形状データベースBDBが準備され、キーボード25を介して簡略化処理の開始を指示されると、まず地物形状データベースBDBにアクセスして、データベースBDBから、最初の地物形状データを読み出す処理を行なう(ステップS100)。要するに、ハードディスク30から、図2に示した一つの建物に相当するデータを読み出すのである。続いて、簡略化の閾値TSを読み出す処理を行なう(ステップS110)。この閾値TSは、元の地物形状を簡略化する際のいわば評価を行なうための閾値である。詳しく後述するが、所定の条件で得られた候補形状が、簡略化されたものとしてみなして良いか否かの判断基準を与えるものである。
【0027】
こうした閾値TSは、総ての地物形状に対して一律に同じ値としても良いが、地物形状が有する特性により変更するものとしても良い。例えば、地物形状の複雑さ、つまり通常は連結点CPの数の多寡に応じて変更するものとしても良い。形状が複雑になれば、閾値をある程度下げてやらないと、簡略化ができたと判断することが困難になる場合が想定されるからである。もとより、地物形状の複雑さではなく、地物形状の大きさ(占有面積)や隣接する建物との距離や建物の種別(目標物なのか個人家屋なのか等の種別)などにより、閾値TSを変更するものとしてもよい。実施例では、図6に示すように、着目した地物形状の面積SSに応じて、下限値TSlから上限値TSuの間の値を取るものとしている。即ち、実施例においては、閾値TSは、地物形状の面積SSが下限SL以下であれば値TSlに等しく、地物形状の面積SSが上限SU以上であれば値TSuに等しく、地物形状の面積SSが下限SLから上限SUまでの間に入っている場合には、下限値TSlと上限値TSuとの間を線形補間した値として定義されている。もとより、線形補間などの処理に代えて、閾値TSをテーブルの形で保持し、地物形状データベースBDB内から一つの地物形状のデータを読み出したとき(ステップS100)、その面積を計算し、テーブルを参照して閾値TSを読み込むものとしても良い。
【0028】
こうして地物形状データベースBDBから一つの建物のデータを取得し(ステップS100)、その地物形状の簡略化のための閾値TSを読み込んだ後(ステップS110)、次に簡略化が可能か否かの判断を行なう(ステップS120)。簡略化が可能な否かの判断については、詳しくは図7を用いて後述するが、総ての地物形状について簡略化が可能な訳ではないからである。ステップS120において、簡略化が可能でないと判断された場合は、ステップS125に移行し、地物形状データベースBDBから取得したデータ(図2参照)を、そのまま簡略化後の簡略化地物形状データベースSDBとして出力する処理を行なう。このように簡略化の処理ができない場合でも、データベースSDBにデータを書き出しておくのは、本実施例では、地図を描画するために、簡略化できない地物形状も含めて総ての建物についてのデータを揃えておくためである。単に地物形状の簡略化だけを目的としている場合には、簡略化されなかった地物形状については、データを出力しない構成とすることも差し支えない。
【0029】
簡略化可能か否かの判断の内容について、図7に依拠して説明する。図7は、簡略化の判断処理ルーチン(ステップS120)の詳細を示すフローチャートである。図示するように、この処理が開始されると、まず、地物形状データベースBDBから取得した一つの建物のデータに基づき、この地物形状を構成している各辺のX方向長さおよびY方向長さが、総て所定値L1より小さいか否かの判断を行なうのである(ステップS121)。i番目の連結点CPi と次の連結点CPi+1 間に存在する辺のX方向、Y方向の長さLxi,Lyiは、
Lxi=|xi+1 −xi |
Lyi=|yi+1 −yi |
として簡易に求めることができる。そこで、これらの辺の長さLxi,Lyiが総て所定値L1以下であれば、地物形状が小さな微小建物であるとして、簡略化の処理を行なわないと判断するのである。
【0030】
地物形状を表わす各辺に、長さL1以上のものがあると判断されれば(ステップS121)、続いて、着目している地物形状の一部に曲線図形が含まれるか否かの判断を行なう(ステップS122)。本実施例では、円形のホールなど、外形形状の少なくとも一部に曲線形状が含まれる場合、これを短い直線の連続として記述している。従って、所定値L2以下のショートベクトルが、所定値N1以上連続している場合には、これを曲線形状を近似していると判断し、簡略化の処理の対象から外すという判断を行なうのである。本実施例では、簡略化は、直線近似に拠っているので、もともと曲線形状の図形の簡略化は行なわないとしているのである。なお、実施例では、実際の長さ25センチを1単位として、L1は40単位分として設定した。同様に、実施例では、L2は10単位分(2.5メートル相当)でN1=10として、曲線図形の判断を行なった。もとより、曲線図形を簡略化の処理から排除せず、他の図形と同じように簡略化の処理の対象とすることも差し支えない。
【0031】
上記ステップS121,S122の判断により、候補形状の生成ができないと判断した場合には、「1」に抜けて、本ルーチンを一旦終了する。「1」は、図5に示した処理の連結箇所であり、この場合には、上述したステップS125に処理は移行し、候補形状は生成できないとして、元の地物形状のデータのコピーを行なうのである。他方、ステップS121,S122で、簡略化の処理が可能と判断された場合には、「NEXT」に抜けて、本処理ルーチンを終了し、図5の処理に戻る。
【0032】
簡略化の処理が可能と判断した場合には、次に、地物形状データベースBDBから取得したデータに含まれる総ての辺を、4つに分類する処理を行なう(ステップS130)。4つ分類するとは、本実施例では、各辺を始点と終点を持つベクトルとみなし、そのベクトルの有する角度θが、4つの象限のいずれに属するかを判定する処理である。4つの象限は、本実施例では、最も長い辺を基準にして定めている。即ち、まず全ての辺を探索して最も長い辺を見出し、この辺の方向を角度0として、−0.25π≦θ<0.25πを第1象限、0.25π≦θ<0.75πを第2象限、0.75π≦θ<1.25πを第3象限、1.25π≦θ<1.75πを第4象限として定めている。その上で、各辺がこれら4つの象限のいずれに属するかにより分類する。図8に、辺S1ないしS8からなる地物形状の一例を示した。この例では、辺S5が最も長いので、この辺を基準にして分類を行なうと、図9に示した結果となる。
【0033】
この実施例で4つに分類したのは、便宜的なものであり、5つに分類しても差し支えない。また、各分類は、辺の方向に基づいて行なっていれば足り、4つに分類する場合であっても、各角度範囲は必ずしも90度ずつである必要はない。各分類の角度範囲は、一つ一つ予め定めておくものとしても良い。また、本実施例では、最も長い辺の方向を基準として、各象限の範囲を定めたが、所定の方向、例えば実際の地図上における東に相当する方向を角度0として、各象限を定めても良い。
【0034】
こうして辺を4つに分類した後、候補形状が生成可能か否かの判断を行なう(ステップS135)。候補形状は、4つの分類の各々から一つの辺を取り出し、都合4つの辺を組み合わせることにより生成される。もとより、元の地物形状が5個以上の連結点CPを有するものであれば、4つに分類された辺を一つずつ取り出しても各辺は必ずしも連結しない。そこで、候補形状の生成時には、各分類から取り出した4つの辺については、適宜延長することにより、候補形状を生成するものとしている。
【0035】
図8に例示した地物形状に沿って、候補形状の生成について説明する。図8に示した地物形状は、8個の連結点CP1ないしCP8を有することから、隣接する各連結点CPを番号の小さい方から大きい方に向かって右周りに接続する8個の辺S1ないしS8から構成されている。各辺S1ないしS8を、ベクトルとみなしてその方向を上記の4つの角度範囲に分類する。なお、方向が分かりやすいように、図8では、各辺は、終点側に矢印を有するベクトルとして示した。分類した結果は、図9に示されている。図9において、第1象限ないし第4象限の4つに分類された各辺については、更に長さが長いものを上位にして分類してある。即ち、全ての辺の中で最も長い辺であるS5が属するのが第1象限となり、第2象限には辺S4、S2が属し、この順に上位の辺S4が長く、第3象限には辺S1、S3、S7が属し、この順に上位の辺S1が最も長く、第4象限には辺S8、S6が属し、この順に上位の辺S8が長くなっている。そこで、各象限に分類された辺のうち、長いものから順次取り出し、それらの組み合わせて、候補形状を生成するのである。生成される候補形状の例を図10および図11に示した。各図において、元の地物形状を破線で、選択した辺を実線で、各辺をその交点まで延長した部分を一点鎖線で、それぞれ示した。図10では、各分類において最も長い辺S1、S4、S5、S8の組み合わせとして、候補形状SS9が生成されている。また図11では、基本的には、図10と同様、各分類から、長い辺を取り出して候補形状を生成しているが、この例では、第3象限に属する辺についてのみ、二つの辺S2、S4から、2番目に長い辺S2を用いて候補形状SS10を生成している。両者を比較すると、候補形状SS9では、図示の領域BB9が、元の地物形状から見るとはみ出した領域となっているのに対して、候補形状SS10では、こうしたはみ出した領域が存在しない。
【0036】
図8ないし図11は、候補形状が生成できた場合を示しているが、形状によっては、候補形状として扱えない形状しか構成できない場合が存在する。そこで、その条件として、本実施例では、次の条件を定めている。即ち、
(1)各分類から取り出した各辺Sの長さをLLとしたとき、
(1−1)LL>L3であること、
(1−2)LL/LA>T4であること
(ここで、LAは、地物形状の周囲長である)、
(2)候補形状における各内角αは、α≦(2π−T5)であること、
という条件を満足する場合にのみ、候補形状が生成可能と判断するのである。なお、実施例では、T5=0.5[rad ]としたが、この大きさは出力する地図の大きさなどによっても影響を受ける。
【0037】
上記条件(1−1)は、絶対値があまりに短い辺を無理に拡長して候補形状を生成させないためであり、条件(1−2)は、絶対値としては所定の長さL3以上ある辺でも、元の地物形状が大きい場合、相対的に小さな辺を拡張して候補形状を生成させないためであり、条件(2)は、図12に示すように、内側にあまりに深く切れ込んだ形状を候補形状としないための条件である。辺を4つに分類して組み合わせる場合には、通常この条件(2)により除外される候補形状は少ないが、分類を5つ以上にした場合などには生じる可能性がある。
【0038】
分類した総ての辺の組み合わせを試しても、上記の条件の総てを満足する形状が得られない場合には、候補形状は生成不可能として(ステップS135)、ステップS125に移行し、上述した地物形状のデータをコピーする処理を行なう。他方、総ての辺の組み合わせを試してみたとき、上記の(1−1)(1−2)(2)の総ての条件が満たされる形状が見出された場合には、候補形状は生成可能であると判断し、次に、候補形状を生成する処理を行なう(ステップS140)。候補形状は、既に図8ないし図11を用いて例示したように、複数生成可能なことが多い。本実施例では、上記の条件を満たして生成できる総ての形状を、候補形状として生成するのである。
【0039】
候補形状を生成した後、次に各候補形状についてのスコアSCを計算する処理を行なう(ステップS145)。スコアSCは、本実施例では、元々の地物形状の面積をA、候補形状の面積をBとして、次式(1)により計算する。
SC=(AB−λ・BB)/A …(1)
ここで、ABは地物形状と候補形状の積面積、BBは、BB=B−AB、つまり候補形状が、地物形状との重なりの形状からはみ出している面積である。また、λは、そのはみ出し量に対する重み付け係数(ペナルティ)である。
【0040】
上記式(1)において、AAを、AA=A−AB、つまり元々の地物形状が、候補形状との重なりの形状からはみ出している面積として定義すると、
SC=(A−AA−λBB)/A
と変形できるから、スコアSCは、結局、着目した候補形状が、地物形状に対して過小である面積AAと、過大である面積BBとを、共に評価していることになる。従って、λ=1とすれば、過小な部分と過大な部分とに等しい重み付けがなされていることになり、λ=0とすれば、過大な部分があっても許容することになり、λ=∞とすれば、はみ出しを一切許容しないことになる。本実施例では、隣接した建物を簡略化した後の簡略化形状が互いに重ならないことを優先して、λ=100に設定してある。なお、全体Aで除しているのは、スコアSCを地物形状の大小に拠らない値とする(正規化する)ためである。
【0041】
スコアSCを計算した後、次に、ステップS140で生成した候補形状スコアSCが、先に読み込んだ(ステップS110)閾値TSより大きいか否かの判断を行なう(ステップS150)。候補形状が複数生成されている場合には、総ての候補形状について判定するのである。ここで、スコアSCが、閾値TSを上回る候補形状が存在すれば、閾値TSを越えるスコアSCを有する候補形状の中から、最もスコアの高い候補形状を簡略化形状として出力する処理を行なう(ステップS160)。出力の形式は、ステップS125で説明したように、地物形状のものと同じフォーマットである。その後、地物形状データベースBDBに保存されている全ての建物について簡略化の処理を完了したかを判別し(ステップS170)、完了していなければ、ステップS100に戻って、地物形状データベースBDBからデータを取得する処理以下を繰り返す。
【0042】
スコアSCを計算した後(ステップS150)、閾値TSを上回るスコアSCを有する候補形状が見いだせなかった場合には(ステップS150)、次に和集合を生成する処理を実行する(ステップS170)。和集合の生成は、次のように行なう。ステップS140で生成した候補形状(いずれも四角形)のうち、面積が大きい順にN2個を取り出し、且つその面積Bの地物形状の面積Aに対する比(B/A)が、所定値T2を越えているものを対象に、2つの四角形同士の和集合を生成して、これを新たな候補形状とするのである。図8に示した例では、図13に示すように、辺S1−S2−S5−S8により形成した四角形dS1、辺S2−S3−S4−S5により形成した四角形dS2との和集合SSorが、新たな候補形状となるのである。なお、二つの四角形に重なりの部分を生じないものについては、簡略化候補とはしないものとした。同様に、重なりがあっても、いずれか一つの内角αが、α≦(2π−T5)となってしまう組み合わせについても除外するものとした。更に、二つの四角形を組み合わせた形状が元の地物形状より複雑な形状となる場合も除いている。
【0043】
その後、和集合が一つでも生成できたかを判断し(ステップS180)、一つも生成できなければ、簡略化の処理をできないとして、上述したステップS125に移行して元のデータをそのまま出力し、着目した地物形状についての簡略化の全処理を終了する。他方、一つでも和集合が生成できた場合には(ステップS180)、ステップS145に戻って、その和集合の形状についてのスコアSCの計算から、上述した処理を繰り返す(ステップS145ないしS160)。和集合の形状について、スコアSCが閾値TSより高いものが存在すれば、そのうちの最上位のスコアの和集合を、簡略化形状として出力する処理を行なう(ステップS160)。いずれの場合もこれで着目した地物形状については簡略化の処理が終了したことになるので、地物形状データベースBDB内の全ての地物形状についての簡略化の処理が完了したかを判別し(ステップS170)、完了するまで、上記の処理を継続する。
【0044】
以上説明した本実施例によれば、多数の複雑な地物形状を、簡略な処理により、四角形またはその二つの和集合の形状に簡略化することができる。従来、地図上に存在する地物形状などの多数の、しかも複雑な形状を、高速に処理して簡略することは極めて困難であった。カーナビゲーションなどに用いられる地図の元になっている詳細な地図(地物形状なども実際に即した形状で入力されている住宅地図など)から、ナビゲーションシステム用の地図を生成する場合など、何千万という数の地物形状を簡略する必要がある場合もあり、こうした処理を高速に行なう簡略化装置および簡略化方法は、極めて有用である。また、本実施例では、簡略化できないものについては無理な簡略化を行なわず、入力した地物形状のデータをそのまま出力しているので、そのまま地図などの描画に用いることができる。全ての地物形状が簡略化されていなくても、大部分の地物形状が簡略化されれば、トータルのデータ容量を低減することができるので、例えば地物形状のデータを容量の限られたDVDなどに収録する際に便利である。また、簡略化されていない形状は、連結点の数を見れば容易に判別できるので、それらのデータのみを抽出し、時間はかかるが例外的な形状でも簡略化する他の簡略化方法を採用して、簡略化の処理を行なうものとしても良い。この場合、多数の地物形状は本実施例の手法で簡略化を済ませているので、例え他の手法が、簡略化の処理に時間を要するものであっても、トータルの時間をさほど長くしないで済ませることができる。
【0045】
また、本実施例では、簡略化を評価する閾値TSを、地物形状の面積SSにより図6に示したように変化させている。従って、面積が大きくなるに従って、地物形状と近似の候補形状しか出力しなくなるのである。形状が大きくなれば、一致の割合が等しくなっても、はみ出したり不足していたりする面積それ自体は大きくなる。このため、地物形状の面積SSが大きくなるほど、一致率の高いもののみを簡略化形状として出力することになる。この場合、面積の大きな地物形状ほど、簡略化されにくいことになるが、現実には、大きな地物形状ほど、これを構成する辺の数も多く、様々な候補形状を作り得ること、大きな地物形状ほど、地物形状データベースBDB内での占める割合は相対的に小さくなるから、そのままデータを出力しても全体としてのデータ量の増大はさほど大きなものとならないことなどから、簡略化によりデータ全体の容量の低減の効果は享受することができる。
【0046】
また、本実施例では、スコアSCを計算するとき、係数λを用いて、はみ出し部分についての評価の割合を容易に変更できるようにしている。従って、対象となる地物形状の性質に応じて、はみ出しを許さないという条件(λ=∞)から、はみ出しを重なっていない部分と同程度に評価する条件(λ=1)、更には、はみ出しにスコア上のペナルティを与えない条件(λ=0)まで、簡易に設定することができる。
【0047】
更に、本実施例では、単一の四角形では十分な簡略化が達成できない場合には、所定の条件を満たした候補形状の和集合を求めて新たな候補形状とすることができる。この場合でも、評価の手法は変える必要がなく、また和集合の元になる四角形の候補形状は先に抽出しているので、その取り扱いは容易である。建物は、四角形の組み合わせで実現されることが多いので、四角形かその和集合で簡略化すると、元の形状の特徴を残し易いという利点が得られる。同様の理由から、和集合を求めて再度評価する手法は、簡便なものでありながら、効果は大きい。なお、本実施例では、最初に求める候補形状は、四角形としたが、五角形や六角形まで許容するものとしても良い。また、和集合は二つに限るものではなく、三つあるいはそれ以上の和集合を許容するものとして簡略化の処理を行なっても良い。
【0048】
以上説明した本実施例では、簡略化の処理は、専用の簡略化装置10を用いて行ない、地物形状データベースBDBから、表示や出力を行なうために、簡略化地物形状データベースSDBを形成したが、図5、図7を用いて説明した簡略化のアルゴリズムを表示や出力を行なう装置に組み込んでおき、必要に応じてその場で簡略化の処理を施すものとしてもよい。カーナビゲーションシステムや携帯電話の画面に地図を表示するような場合には、一度に表示に供される地物形状の数はさほど多くないので、必要な地物形状だけ簡略化して表示などを行なうものとすることも可能である。例えば、ネットワークを介して接続された携帯電話などの端末装置に地図を表示する場合、地図データそのものはサーバ側に用意される。しかも端末装置側での表示の倍率は様々なので、倍率によっては、サーバに蓄積した地物形状データベースBDBのデータをそのまま使って建物を表示したい場合も存在する。また縮尺を小さくして、建物の形状を簡略化しつつ表示したい場合も存在する。後者の場合に、縮尺に応じて、閾値TSを調整しつつ、表示しようとする領域に含まれる地物形状のみ簡略化処理を行なうものとすることができる。この場合の簡略化の処理は、サーバ側で行なっても良いし、端末装置側で行なっても良い。
【0049】
以上本発明の一実施例について説明したが、本発明は、こうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内において、種々なる態様で実施できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施例としての簡略化装置10の概略構成図である。
【図2】簡略化装置10における地物形状データベースBDBのデータ構造を説明する説明図である。
【図3】簡略化の対象となる地物形状の一つを例示した説明図である。
【図4】簡略化された後の簡略化形状を例示する説明図である。
【図5】本実施例における簡略化処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】閾値TSの設定手法を示すグラフである。
【図7】簡略化の判断処理ルーチンの一部を示すフローチャートである。
【図8】4つに分類された辺に基づいて候補形状を生成する様子を示す説明図である。
【図9】各辺S1ないしS8の分類の様子を示す説明図である。
【図10】候補形状と地物形状の関係を例示する説明図である。
【図11】候補形状と地物形状の他の関係を例示する説明図である。
【図12】内角の大きさによる制限について説明する説明図である。
【図13】二つの四角形から新たな候補形状を生成する様子を示す説明図である。
【符号の説明】
【0051】
10…地物形状簡略化装置
21…CPU
22…RAM
23…ROM
25…キーボード
27…ディスプレイ
30…ハードディスク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂点数N(Nは5以上の自然数)の多角形として表現された地物形状を、頂点数M(Mは3以上、N未満の自然数)の図形に変換する地物形状簡略化装置であって、
前記地物形状を構成する連続したN個の辺の情報を入力する辺情報入力手段と、
該情報を入力したN個の辺を、該辺の起点から終点に向かう方向を基準としてM種類に分類する辺分類手段と、
該分類された辺から、該分類毎に一つの辺を抽出する辺抽出手段と、
該抽出された辺もしくは該辺を延長した辺とにより、頂点が少なくとも3個以上の多角形を、候補形状として構成する候補形状形成手段と、
該形成された候補形状と前記地物形状とを比較して評価値を求める評価値演算手段と、
該評価値に基づいて、前記地物形状を簡略化した簡略化形状を求める簡略化形状決定手段と
を備えた地物形状簡略化装置。
【請求項2】
前記辺分類手段は、前記辺の方向が、全方向をM個に分割したいずれの範囲に属するかにより分類する手段である請求項1記載の地物形状簡略化装置。
【請求項3】
前記全方向のM個の分割は、前記分類する辺のうち最も長い辺の方向を基準とし行なう請求項2記載の地物形状簡略化装置。
【請求項4】
前記辺抽出手段は、前記M種類に分類された各々の分類に属する辺のうち、長い辺から順に所定個数を抽出して、前記評価値演算手段により演算に供する請求項1記載の地物形状簡略化装置。
【請求項5】
前記辺抽出手段は、前記M種類に分類された各々の分類に属する辺のうち、絶対値が所定値より大きく、且つ前記地物形状の周囲長に対して所定の割合より大きな割合を有する辺を抽出の対象とする請求項1記載の地物形状簡略化装置。
【請求項6】
前記候補形状形成手段は、前記抽出された辺を延長した辺を用いる際、前記地物形状からはみ出さない形状のみを、前記候補形状として構成する請求項1記載の地物形状簡略化装置。
【請求項7】
前記候補形状形成手段は、前記辺により候補形状を構成する際、隣接する2辺が候補形状の内側に形成する総ての角の角度が、少なくとも270度以上の所定の角度より小さい形状のみを、前記候補形状として構成する請求項1記載の地物形状簡略化装置。
【請求項8】
前記評価値演算手段は、前記地物形状と前記候補形状の各面積および両形状の重なりに基づく面積を用いて評価値を演算する請求項1記載の地物形状簡略化装置。
【請求項9】
請求項8記載の地物形状簡略化装置であって、
前記評価値演算手段は、前記両形状の重なりに基づく面積として、両形状の重なった部分の面積および前記地物形状に対して前記候補形状が重ならない部分の面積のうち、少なくとも一方の面積を求め、該面積の前記地物形状の面積に対する割合を用いて前記評価値を求める地物形状簡略化装置。
【請求項10】
請求項1記載の地物形状簡略化装置であって、
前記辺情報入力手段が入力した辺情報に基づいて前記簡略化形状を求める過程で、前記頂点数Nの地物形状を簡略化することを中止すべき所定の条件が成立していることを判断する中止条件判別手段を備え、
前記簡略化形状決定手段は、
前記簡略化情報が決定された場合には、該簡略化情報を、前記地物形状が記述されたフォーマットと同一のフォーマットで出力すると共に、
前記中止条件が成立していると判断した場合には、前記フォーマットで記述された地物形状の辺の情報をそのまま出力する
地物形状簡略化装置。
【請求項11】
前記中止条件判別手段は、前記辺情報を入力した総ての辺の長さが所定の判定値以下である場合には、前記中止条件が成立していると判断する請求項10記載の地物形状簡略化装置。
【請求項12】
前記中止条件判別手段は、前記入力した辺情報から、外形形状が曲線の地物形状を短い直線で近似した辺が存在する場合には、前記中止条件が成立していると判断する請求項10記載の地物形状簡略化装置。
【請求項13】
前記中止条件判別手段は、前記入力した辺情報に基づいて前記簡略化形状を求める過程で、予め設定した条件を満足する候補形状が一つも得られなかった場合には、前記中止条件が成立していると判断する請求項10記載の地物形状簡略化装置。
【請求項14】
請求項1記載の地物形状簡略化装置であって、更に、
前記候補形状として複数の形状が求められた場合であって、そのうちのいずれの候補形状も前記評価値が、予め定めた閾値を超えていない場合には、該複数の形状のうち所定の条件を満たす2個以上の形状を合成した形状を新たな候補形状として前記評価値を求め、該評価値が所定の合成条件を満たす場合には、該合成した候補形状を、前記簡略化形状として求める手段を備えた
地物形状簡略化装置。
【請求項15】
請求項14記載の地物形状簡略化装置であって、
前記合成を行なう2個以上の形状が満たす所定の条件は、各形状の面積が、前記地物形状の面積に対して、所定の割合以上であるという条件を含む地物形状簡略化装置。
【請求項16】
請求項14記載の地物形状簡略化装置であって、
前記所定の合成条件は、
前記2個以上の形状が重なっていること、
前記合成後の候補形状における隣接する2辺が該候補形状の内側に形成する総ての角度が、少なくとも270度以上の所定の角度より小さいこと
である地物形状簡略化装置。
【請求項17】
頂点数N(Nは5以上の自然数)の多角形として表現された地物形状を、頂点数M(Mは3以上、N未満の自然数)の図形に変換する方法であって、
前記地物形状を構成する連続したN個の辺の情報を入力し、
該情報を入力したN個の辺を、該辺の起点から終点に向かう方向を基準としてM種類に分類し、
該分類された辺から、該分類毎に一つの辺を抽出し、
該抽出された辺もしくは該辺を延長した辺とにより、頂点が少なくとも3個以上の多角形を、候補形状として構成し、
該形成された候補形状と前記地物形状とを比較して評価値を求め、
該評価値に基づいて、前記地物形状を簡略化した簡略化形状を求める
地物形状簡略化方法。
【請求項18】
頂点数N(Nは5以上の自然数)の多角形として表現された地物形状を、頂点数M(Mは3以上、N未満の自然数)の図形に変換する処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記地物形状を構成する連続したN個の辺の情報を入力する機能を実現するプログラムコードと、
該情報を入力したN個の辺を、該辺の起点から終点に向かう方向を基準としてM種類に分類する機能を実現するプログラムコードと、
該分類された辺から、該分類毎に一つの辺を抽出する機能を実現するプログラムコードと、
該抽出された辺もしくは該辺を延長した辺とにより、頂点が少なくとも3個以上の多角形を、候補形状として構成する機能を実現するプログラムコードと、
該形成された候補形状と前記地物形状とを比較して評価値を求める機能を実現するプログラムコードと、
該評価値に基づいて、前記地物形状を簡略化した簡略化形状を求める機能を実現するプログラムコードと
を含んだプログラム。
【請求項1】
頂点数N(Nは5以上の自然数)の多角形として表現された地物形状を、頂点数M(Mは3以上、N未満の自然数)の図形に変換する地物形状簡略化装置であって、
前記地物形状を構成する連続したN個の辺の情報を入力する辺情報入力手段と、
該情報を入力したN個の辺を、該辺の起点から終点に向かう方向を基準としてM種類に分類する辺分類手段と、
該分類された辺から、該分類毎に一つの辺を抽出する辺抽出手段と、
該抽出された辺もしくは該辺を延長した辺とにより、頂点が少なくとも3個以上の多角形を、候補形状として構成する候補形状形成手段と、
該形成された候補形状と前記地物形状とを比較して評価値を求める評価値演算手段と、
該評価値に基づいて、前記地物形状を簡略化した簡略化形状を求める簡略化形状決定手段と
を備えた地物形状簡略化装置。
【請求項2】
前記辺分類手段は、前記辺の方向が、全方向をM個に分割したいずれの範囲に属するかにより分類する手段である請求項1記載の地物形状簡略化装置。
【請求項3】
前記全方向のM個の分割は、前記分類する辺のうち最も長い辺の方向を基準とし行なう請求項2記載の地物形状簡略化装置。
【請求項4】
前記辺抽出手段は、前記M種類に分類された各々の分類に属する辺のうち、長い辺から順に所定個数を抽出して、前記評価値演算手段により演算に供する請求項1記載の地物形状簡略化装置。
【請求項5】
前記辺抽出手段は、前記M種類に分類された各々の分類に属する辺のうち、絶対値が所定値より大きく、且つ前記地物形状の周囲長に対して所定の割合より大きな割合を有する辺を抽出の対象とする請求項1記載の地物形状簡略化装置。
【請求項6】
前記候補形状形成手段は、前記抽出された辺を延長した辺を用いる際、前記地物形状からはみ出さない形状のみを、前記候補形状として構成する請求項1記載の地物形状簡略化装置。
【請求項7】
前記候補形状形成手段は、前記辺により候補形状を構成する際、隣接する2辺が候補形状の内側に形成する総ての角の角度が、少なくとも270度以上の所定の角度より小さい形状のみを、前記候補形状として構成する請求項1記載の地物形状簡略化装置。
【請求項8】
前記評価値演算手段は、前記地物形状と前記候補形状の各面積および両形状の重なりに基づく面積を用いて評価値を演算する請求項1記載の地物形状簡略化装置。
【請求項9】
請求項8記載の地物形状簡略化装置であって、
前記評価値演算手段は、前記両形状の重なりに基づく面積として、両形状の重なった部分の面積および前記地物形状に対して前記候補形状が重ならない部分の面積のうち、少なくとも一方の面積を求め、該面積の前記地物形状の面積に対する割合を用いて前記評価値を求める地物形状簡略化装置。
【請求項10】
請求項1記載の地物形状簡略化装置であって、
前記辺情報入力手段が入力した辺情報に基づいて前記簡略化形状を求める過程で、前記頂点数Nの地物形状を簡略化することを中止すべき所定の条件が成立していることを判断する中止条件判別手段を備え、
前記簡略化形状決定手段は、
前記簡略化情報が決定された場合には、該簡略化情報を、前記地物形状が記述されたフォーマットと同一のフォーマットで出力すると共に、
前記中止条件が成立していると判断した場合には、前記フォーマットで記述された地物形状の辺の情報をそのまま出力する
地物形状簡略化装置。
【請求項11】
前記中止条件判別手段は、前記辺情報を入力した総ての辺の長さが所定の判定値以下である場合には、前記中止条件が成立していると判断する請求項10記載の地物形状簡略化装置。
【請求項12】
前記中止条件判別手段は、前記入力した辺情報から、外形形状が曲線の地物形状を短い直線で近似した辺が存在する場合には、前記中止条件が成立していると判断する請求項10記載の地物形状簡略化装置。
【請求項13】
前記中止条件判別手段は、前記入力した辺情報に基づいて前記簡略化形状を求める過程で、予め設定した条件を満足する候補形状が一つも得られなかった場合には、前記中止条件が成立していると判断する請求項10記載の地物形状簡略化装置。
【請求項14】
請求項1記載の地物形状簡略化装置であって、更に、
前記候補形状として複数の形状が求められた場合であって、そのうちのいずれの候補形状も前記評価値が、予め定めた閾値を超えていない場合には、該複数の形状のうち所定の条件を満たす2個以上の形状を合成した形状を新たな候補形状として前記評価値を求め、該評価値が所定の合成条件を満たす場合には、該合成した候補形状を、前記簡略化形状として求める手段を備えた
地物形状簡略化装置。
【請求項15】
請求項14記載の地物形状簡略化装置であって、
前記合成を行なう2個以上の形状が満たす所定の条件は、各形状の面積が、前記地物形状の面積に対して、所定の割合以上であるという条件を含む地物形状簡略化装置。
【請求項16】
請求項14記載の地物形状簡略化装置であって、
前記所定の合成条件は、
前記2個以上の形状が重なっていること、
前記合成後の候補形状における隣接する2辺が該候補形状の内側に形成する総ての角度が、少なくとも270度以上の所定の角度より小さいこと
である地物形状簡略化装置。
【請求項17】
頂点数N(Nは5以上の自然数)の多角形として表現された地物形状を、頂点数M(Mは3以上、N未満の自然数)の図形に変換する方法であって、
前記地物形状を構成する連続したN個の辺の情報を入力し、
該情報を入力したN個の辺を、該辺の起点から終点に向かう方向を基準としてM種類に分類し、
該分類された辺から、該分類毎に一つの辺を抽出し、
該抽出された辺もしくは該辺を延長した辺とにより、頂点が少なくとも3個以上の多角形を、候補形状として構成し、
該形成された候補形状と前記地物形状とを比較して評価値を求め、
該評価値に基づいて、前記地物形状を簡略化した簡略化形状を求める
地物形状簡略化方法。
【請求項18】
頂点数N(Nは5以上の自然数)の多角形として表現された地物形状を、頂点数M(Mは3以上、N未満の自然数)の図形に変換する処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記地物形状を構成する連続したN個の辺の情報を入力する機能を実現するプログラムコードと、
該情報を入力したN個の辺を、該辺の起点から終点に向かう方向を基準としてM種類に分類する機能を実現するプログラムコードと、
該分類された辺から、該分類毎に一つの辺を抽出する機能を実現するプログラムコードと、
該抽出された辺もしくは該辺を延長した辺とにより、頂点が少なくとも3個以上の多角形を、候補形状として構成する機能を実現するプログラムコードと、
該形成された候補形状と前記地物形状とを比較して評価値を求める機能を実現するプログラムコードと、
該評価値に基づいて、前記地物形状を簡略化した簡略化形状を求める機能を実現するプログラムコードと
を含んだプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−87331(P2007−87331A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−278427(P2005−278427)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(597151563)株式会社ゼンリン (155)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(597151563)株式会社ゼンリン (155)
【Fターム(参考)】
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