説明

地盤の安定化工法

【課題】 構造物の基礎土壌に土壌以外の物質を加圧注入して基礎土壌の強化を図り、構造物を安定保持する地盤の安定化工法を提供する。
【解決手段】 構造物などの支持土壌を改善あるいは持ち上げ支持するための工法であって、改良対象の地盤60に所要間隔で複数の薬液注入ロッド1を設置し、これら薬液注入ロッド1に化学反応によって拡張機能を有する薬液材を設定したインターバルでもって各注入位置に多点注入する操作を行い、前記薬液注入ロッド1によって前記薬液材を土壌中に加圧注入して拡張させることにより、先行して注入されて形成する拡張固結体50中および/または地中に後続の薬液材をさらに加圧注入し、土壌中にて薬液材を拡張増大させて土壌の圧密度を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の基礎土壌に土壌以外の物質を加圧注入して基礎土壌の強化を図り、構造物を安定保持する地盤の安定化工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
構築物の基礎土壌を強化する手段としては、土壌中に薬液を注入して圧密度を高め軟弱地盤を強化するほか、土壌の液状化による地盤の不等沈下などを予防する薬液注入工法が知られている。この薬液注入工法は、公知の薬液材(主に水ガラス系薬材と硬化材(主にセメント系材料)との混合物)を公知構造の薬液注入ロッドでもって土壌中に注入し、この注入薬液材と土壌中の砂粒との結合によって広範囲で土壌の圧密度を高め、地盤を改良するものであり、このような薬液注入による地盤改良に関しては、たとえば特許文献1で知られている。
【0003】
また、前記薬液注入工法とは別に、拡張機能を有する有機薬材(膨張性樹脂液)を地下空隙部に注入し、その注入された有機薬材の化学反応により拡張固化する機能を利用して土壌の圧密強化を図り、地盤改良並びに構造物の沈下復元を行う工法が特許文献2,3などによって知られている。
【0004】
また、土壌中に袋状の拡張要素を挿入配置して、この拡張要素(袋状物体)に化学反応でもって拡張する薬材(膨張性樹脂液)を注入し、前記拡張要素を膨張させて土壌に押圧力を作用させ、圧密度を高めることにより地盤の改良を行う工法については特許文献4によって知られている。そのほか、改良が必要な地盤の内部において袋体に注入した膨張性樹脂液を化学的反応で膨張させることで、膨張させた樹脂の形状を制御することにより、その膨張性樹脂の機能を発揮させて周辺地盤の圧縮効果や浮力によって建造物などの支持効果を得ることが特許文献5により知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3126896号公報
【特許文献2】特許第4071716号公報
【特許文献3】特開2006−144269号公報
【特許文献4】特表2009−540151号公報
【特許文献5】特開2009−293277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術において、前記特許文献1によって知られる地盤改良工法では、複数箇所の薬液注入位置にて土壌中に瞬結性の薬液材を所要のインターバルで注入対象位置を順次切換えて注入を繰り返すことにより、地盤の強化を行えるようにする多点注入方式のものである。しかしながら、この薬液注入による地盤改良工法は、地盤上の構造物に対する持ち上げ力を確保することに注力されており、どうしても薬液材の注入量も多くなり、一般的な地盤の強化改良を行うには未だ改良する点がある。
【0007】
また、前記特許文献2,3などによって知られる薬液注入工法では、有機薬材を地下空隙部に注入し、その注入された有機薬材の化学反応により拡張する機能を利用して土壌の圧密強化を図り、地盤改良並びに構造物の沈下復元を行うので、土壌中に注入される有機薬材として化学反応により拡張する発泡性の樹脂(膨張性樹脂液)を主成分としたものが用いられている。この工法では、注入される有機薬材が土壌中で発泡して膨張拡大することにより注入部の周辺における土壌を押圧し、この押圧力で土壌を圧密して地盤を強化するとともに、地盤にかかる載荷重を持ち上げることを目的としている。
【0008】
しかしながら、前記化学反応によって拡張(膨張)する機能を備える有機薬材の注入方式では、あくまでも薬材の化学反応による拡張力のみで注入箇所に隣接する周辺の土壌に圧力を付加する挙動にかかるものである。そのために、この工法では、注入箇所周辺の土壌状態に支配され、抵抗の少ない部分へ注入薬液が流動して膨張し、結果的に注入薬液は注入孔周辺への拡がり(横方向)により比較的抵抗力の少ない方向へ抜けての拡張(膨張)現象が優先し、期待される上下方向への拡張機能を発揮させることが困難である。また、薬液の注入は単一箇所で単独にて拡張押圧機能を発揮させる方式であるので、複数箇所で注入操作を行っても注入位置ごとの押圧力となる。したがって、たとえば注入薬液の拡張押圧力により地盤への載荷重が大きいと持ち上げ機能を発揮することが実務上困難であるという問題点がある。
【0009】
また、前記特許文献4によって知られる工法では、土壌中に挿入された袋状の拡張体内へ注入充填する有機薬材の化学反応により拡張体(袋体)の拡張(膨張)によって隣接部分の土壌に押圧力を付勢し、土壌(地盤)の強化を図ることが開示されている。しかしながら、この種工法においても、土壌を強化するのに用いている有機薬材の拡張機能では、前記拡張機能を有する有機薬材を使用する注入工法と同様の現象で目的を十分に満足することができないという問題点がある。
【0010】
さらに、前記特許文献5で開示されている技術では、前記特許文献4などに開示される技術同様に、膨張性樹脂液を使用して地盤改良を行うに際し、その注入薬材(膨張性樹脂液)本来の機能を発揮させるのに袋体の開口側を別途準備した蓋体を用いて閉じることにより、注入時における膨張圧が上方に逃げるのを阻止するものであるから、その蓋体が使用できる現場であることが条件となり制限を受け、汎用的でないという問題点がある。
【0011】
本発明は、前述のような従来技術の問題点を解決するとともに、構造物の基礎土壌に土壌以外の物質を積極的に加圧注入して基礎土壌(地盤)の強化を図り、構造物を安定保持する地盤の安定化工法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明による地盤の安定化工法は、
構造物などの支持土壌を改善あるいは持ち上げ支持するための工法であって、
改良対象の地盤に対応して所要間隔で複数の薬液注入ロッドを設置し、これら薬液注入ロッドに化学反応によって拡張機能を有する薬液材を、設定したインターバルでもって各注入位置に多点注入する操作を行い、前記薬液注入ロッドによって前記薬液材を土壌中に加圧注入して拡張させることにより、先行して注入されて拡張する薬液材中および/または地中に後続の前記薬液材をさらに加圧注入することにより、土壌中にて薬液材を継続的に拡張増大させて形成される拡張固結体により土壌の圧密度を高めることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明における前記薬液材としては、主としてポリオール系とイソシアネート系との2主成分からなり、薬液注入ロッド先端部で両成分を混合して吐出させて化学反応により拡張機能を発揮させ、発泡硬化するものが用いられる。
【0014】
前記発明において、前記薬液材を多点注入するに際し、薬液材供給源から各薬液注入ロッドには予め設定した所要の時間を置いて順次注入位置を切換えながら加圧注入するのが好ましい。なお、前記薬液材の注入は、ポンプを用いて加圧注入するのが好ましい。こうすると、薬液材がポンプによる加圧での注入により、先行して注入され拡張した注入薬液材にてなる拡張固結体を部分的に割裂させて後続注入薬液材をさらに土壌中に拡散させ、その拡張固結体を拡大させることができる。したがって、土壌中に形成される注入拡張物質による押圧力を広い範囲に拡大して土壌の圧密度を高めることができる。
【0015】
また、前記薬液材を多点注入するに際し、薬液材供給源には、各薬液注入ロッドにそれぞれポンプを接続し、これらポンプの作動もしくは供給路に配した切換弁を制御して加圧注入するのが好ましい。このような操作によっても前記薬液供給源からの集中分配注入操作と同様の効果が期待できる。
【0016】
また、前記発明における薬液材の土壌中への注入は、薬液注入ロッドの注入先端位置を段階的に所要量突入させて行わせ、先行注入されて土壌中で形成された拡張固結体の底部に次の加圧液注入を行わせることにより、初期の注入による拡張固結体の下部にさらなる拡張固結体を付加形成し、前記薬液材による拡張固結体を積層形成させることを特徴とする。
【0017】
前記発明では、このように操作することにより、土壌中に加圧注入される薬液材が先行注入されて拡張してなる拡張固結体を順次拡大して注入箇所周辺の土壌に拡張に伴う押圧力が付勢され、結果的に土壌の圧密度が高まり、地盤を強化することができる。また、土壌中において拡張機能を有する薬液材によって形成される拡張固結体によりその上層部に位置する土壌が持ち上げられる。そして、複数箇所の注入位置ではそれぞれ前記要領で拡張固結体が形成されることにより広い範囲で一斉に土壌が持上げられるので地上に設けられている構造物を無理なく押し上げることができる。
【0018】
またさらに、本発明の薬液材加圧注入は、軟弱地盤に対して所要時間をおいて断続して注入し、土壌中において注入薬液材による拡張固結体を拡大形成して浮力を付加できるようにし、地盤上に設置の構造物を安定支持できる強化地盤を得ることができるようにする。
【0019】
また、本発明では、構造物などの支持土壌を改善あるいは持ち上げ支持するための工法であって、
改良対象の地盤に対応して所要間隔で複数の薬液注入ロッドを設置し、これら薬液注入ロッドに化学反応によって拡張機能を有する薬液材を、予め設定した所要の時間を置いて順次切換え供給する操作を繰り返して加圧注入し、その薬液材の拡張固結体を土壌中に形成した後に、前記拡張固結体の上側土壌中に二液反応型の無機質薬液材を圧入する操作を行い、軟弱地盤の強化を行うことを特徴とするものである。
【0020】
また、前記発明の工法において、改良対象の地盤に対応して所要間隔で複数の薬液注入ロッドを設置し、これら薬液注入ロッドに二液反応型の無機質薬液材を圧入する操作で土壌の改良を行い、この改良地層の上側土壌中に化学反応によって拡張機能を有する薬液材を注入し、その薬液材の拡張固結体によって地表のレベル調整を行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の地盤の安定化工法によれば、化学反応によって拡張機能を有する薬液材を土壌中に注入するに際し、分配設置した薬液注入箇所に、予め設定した時間を置いて各注入箇所を順次切換えながら加圧注入することで、たとえば一台の注入ポンプを使用して前記薬液材を広い範囲で複数注入位置にて土壌中に注入し、先行して注入された薬液材が拡張して硬化するのに追従させて後続注入が行われ、各注入位置での拡張固結体がより拡大形成されて土壌への押圧力を高めることができる。言い換えると、多点注入を薬液材の供給切換えにより、より広範囲で土壌の圧密度を向上させて効率よく地盤の強化を図ることができる。また、前記多点注入をそれぞれの薬液注入ロッドごとにポンプを配置して注入するようにしてもよい。このように、多点注入することにより地盤上に構築された構造物の支持地盤の広い範囲で一様に支持して安定化を図ることができ、かつその多点注入による注入操作を制御することにより地表側への押上げ力を容易に確保できて、不同沈下による地盤の復元も有効に実施することが可能になる。
【0022】
また、化学反応による拡張機能で土壌中に拡張固結体を形成する薬液材の圧入操作と無機質薬液材を圧入する操作とを併用することにより、たとえば軟弱地盤の改良に際し、先に地盤の下部に化学反応による拡張機能で土壌中に拡張固結体が形成できる薬液材を注入して拡張固結体を形成して後、無機質薬液材の多点注入を行えば、前記拡張固結体によって後続の無機質薬液材の注入による土壌中での拡散を制御でき、過剰な薬液材の注入量を要することなく強固な地盤強化を行うことができ、効果的に地盤の安定化を図ることができるという効果を奏する。また、地盤の下部に二液反応型の無機質薬液材を圧入する操作で土壌の改良を行い、その後に改良した地層の上側土壌中に化学反応によって拡張機能を有する薬液材を注入する操作によれば、後者の注入薬液材によって復元地盤の地表レベルを薬液材の微妙な注入操作で容易に調整することができ、経済効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は本発明の地盤の安定化工法の第1実施形態における態様を表わす全体概要図である。
【図2】図2は要部を模式的に表わす図である。
【図3】図3は本発明の地盤の安定化工法に係る第2実施形態の概要を表わす図である。
【図4】図4は本発明の地盤の安定化工法に係る第3実施形態の概要を表わす図である。
【図5】図5は本発明の地盤の安定化工法に係る第4実施形態の概要を表わす図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に,本発明による地盤の安定化工法の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
(第1実施形態)
本発明の地盤の安定化工法は、基本的に構造物の基盤となっている基礎の下側地盤を安定強化するものであり、前記基盤を貫通して所要の間隔で複数本の薬液注入管ロッドを土壌中に配分して挿入設置し、これら各薬液注入管ロッドにより薬液材を所定の時間で切換えて順次土壌中に加圧注入し、前記基盤に連接する土壌中に広範囲にわたる拡張固結体を形成し、この拡張固結体によって地盤に対する負荷の分散支持と土壌の圧密を図り、地耐力の強化と安定化を促すものである。
【0026】
この実施形態の地盤の安定化工法では、改良しようとする構造物が設置された地盤60に対して、改良計画に基づいて所要の間隔で複数本の薬液注入管ロッド1を構築物の基盤上もしくは地表面から地中に貫入させて設置する。この薬液注入管ロッド1は、二種類の注入薬液材が供給管接続部を備えたヘッド部1aからロッド内を二流路で別個に流動してロッドの先端部に取り付くノズル1bによって両注入薬液材が混合して地中に吐出するようにされている。なお、図示省略するが前記薬液注入管ロッド1は、ロッド先端部に制御信号により開閉できる弁を備えている。
【0027】
この実施形態では、図1および図2にて例示するように、地上部に設置される薬液材供給装置10から分配手段13,14を介して各注入薬液材が加圧供給される。薬液材供給装置10では、予め準備されている二種類の薬液材(A液およびB液(後述))がそれぞれポンプPにて加圧されてそれぞれの分配手段13,14により前記地盤60に配置された複数の薬液注入管ロッド1に供給できるようにされる。また、前記分配手段13,14から各薬液注入管ロッド1に至る配管15,16中には切換弁17,18が設けられ、別途設置の制御手段20(たとえばコンピュータ制御による管理装置)によって予め設定したプログラムにて所要給液時間ごとに他の薬液注入管ロッド1′・・1n(なお、全体を代表して1で表示する)に対する給液配管と切換えて(インターバル方式)供給するようにされる。なお、前記分配手段13,14は、給液タンクからポンプPにより送り出される薬液材を所要数の流路に分岐され、その各分岐路の吐出口に薬液注入管ロッド1への給液配管15,15′・・・n(16,16′・・・n)が接続されるようになっている。また、前記薬液注入管ロッド1には、ヘッド部1aに操作エアシリンダ2が付設され、このエアシリンダ2によって薬液注入管ロッド1の先端部に組み込まれたノズル1bの開閉が行われるようにされている。併せてノズル1bが開いた状態で内部からエアが先端方向に吐出するようにされている。図中符号3はエア供給源(エアコンプレッサ)、4は制御手段20による制御信号で開閉されるエアバルブ、2aは操作シリンダの切換弁、6はエア配管、7は制御信号回路である。
【0028】
前記薬液注入管ロッド1では、供給される二種類の薬液材を薬液注入管ロッド1の先端部に取り付けられたノズル部分1a(図示省略)で混合して土壌中に注入し、土壌中で二液の混合による化学反応によって地中に浸入する間に発泡して拡張固結体50を形成する。ここで使用される薬液材としては、複数の液体を混合して注入後に拡張固形化する物性のものが使用される。たとえばポリオール系成分の液体(A液という)と、イソシアネート系成分の液体(B液という)とを用い、その両成分の混合によりポリウレタン樹脂として膨張固形化し、拡張固結体50(発泡固結体)が形成される。なお、前記薬液材については、これに限定されるものではなく、同様の機能を発揮するものであれば他の材料であってもよい。
【0029】
本実施形態での地盤の安定化工法によれば、予め地盤60の改良現場の状況に応じて薬液注入箇所の設定に基づき、所要の間隔で複数箇所に薬液注入管ロッド1を設置する。併せて、薬液の注入条件(たとえば、薬液材の一回の注入量や注入間隔(時間)注入箇所の順序など)を制御手段20により設定管理する。また、薬液材供給装置10から前記分配手段13,14を介して各薬液注入管ロッド1に配管する。同時に二種類の薬液材を準備し、薬液材供給装置10の給液タンク11,12に各薬液材(A液とB液)を個別に供給する。
【0030】
薬液材の注入操作は、前記制御手段20における注入条件設定によって薬液供給装置10から各薬液注入管ロッド1に所要時間A液とB液とが供給され、薬液材がノズル部1bで混合されて土壌中に噴出し注入される。すると、土壌中に注入された混合薬液材は、土壌中で化学反応して膨張し、土壌の一部砂粒と混合してやがて拡張硬化して固結体(拡張固結体50)を形成する。この薬液材の注入操作は、前述のように、制御手段20によって各薬液注入管ロッド1への前記薬液材の供給手順を予め設定したインターバルで制御信号で操作して薬液材を切換え供給する。たとえば、1箇所での薬液注入時間を数秒間行うと切換弁17,18が閉じて次の位置に対応する薬液注入管ロッド1へ給液配管15,16が他の給液配管15′、16′に切換えられてA液とB液が供給される。以下、順次この操作が繰り返されて所要時間循環する。
【0031】
このように、薬液材が各薬液注入管ロッド1に短い時間で供給を切換えて行われる。言い換えると、所要のインターバルで多点注入すると、土壌中に形成される膨張性薬液材による拡張固結体50が多数土壌中に形成される。注入時初期注入されて土壌中に形成される拡張固結体50に対して、所要インターバルで次に注入される混合薬液材は、先に形成されつつあり硬化するまでの段階にある拡張固結体50内に圧入されることにより、その硬化層の一部を割裂させて外部に浸透すると同時に拡張(膨張)し、拡張固結体50のボリュウムを拡大させる。
【0032】
また、図示省略するが、各薬液注入管ロッドへの配管中にそれぞれポンプを配置して、各ポンプにより薬液材を供給するようにし、そのポンプの運転もしくはポンプ吐出側配管中に開閉弁を設けて、前記ポンプの駆動・停止もしくは開閉弁の開閉を集中管理する制御手段により、薬液注入時間を数秒間おきに給液・停止の切換えを行う制御をすることで、前記多点注入によるインターバル方式が採用でき、前記同様の作用効果を奏することができる。
【0033】
こうして地盤60の土壌中には、多点で薬液材の浸透拡張が繰り返し行われることにより、硬化進行する拡張固結体50が広がり、薬液材の注入範囲の拡大で広範囲にわたり土壌に薬液材の拡張硬化(膨張硬化)による押圧力が作用し、その反力で接触する土壌の圧密度が高められる。この結果、複数注入箇所で前記挙動により隣接注入部分での拡張固結体50が相互に結合されると、拡張固結体50の範囲が拡大してたとえば地盤60上に設置されている構造物が不同沈下している場合、その基礎地盤を多点で同時に押し上げることになり、構造物を容易に復元することができる。
【0034】
このように本実施形態の地盤の安定化工法によれば、分配設置した各薬液材注入箇所に、予め設定したインターバルで順次切換えながら加圧注入することにより、たとえば各薬液材ごとに一台の注入ポンプPを使用して前記薬液材を広い範囲で複数注入位置にて土壌中に注入され、先行して注入された薬液材が拡張硬化するのに追従させて後続注入が行われ、各注入位置での拡張固結体50がより拡大形成されて土壌への押圧力を高めることができる。言い換えると、多点注入を薬液材の切換えにより、より広範囲で土壌の圧密度を向上させて効率よく地盤60の強化を図ることができる。したがって、多点注入により地盤60上に構築された構造物の支持地盤の安定化を図ることができ、かつその多点注入による注入操作を制御することにより従来拡張硬化型の薬液材使用による重載荷重の押し上げ困難であったものを、無理なく地表側への押上げ力を容易に確保でき、不同沈下による地盤60の復元も有効に実施することが可能になったのである。
【0035】
(第2実施形態)
この実施形態の地盤の安定化工法は、基本的に前記第1実施形態の工法と同様であるが、化学反応を伴う薬液材で注入後に土壌中で拡張固結体を形成して圧密度を高める操作において、前記インターバル方式を採用するに当たり、図3に例示するように、既注入形成後の拡張固結体50をさらに上下方向に拡大形成するものである。なお、前記第1実施形態におけると同一もしくは同様の構成のものについては、前記実施形態のものと同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0036】
前記要領で先に薬液材(A液およびB液)の注入によって土壌中に形成された拡張固結体50に対し、当該位置における薬液注入管ロッド1をさらに既設拡張固結体50の内部下層および/またはさらに下部まで貫入させ、その後において前記薬液材の注入操作を繰り返し行うようにする。すると、注入薬液材の化学反応によってすでに形成されている拡張固結体50内に新たに注入された薬液材の拡張作用(膨張作用)によって既製の拡張固結体50の一部が割裂して外側に反応拡大される。あるいは既製の拡張固結体50の下側に新たな拡張固結体50aの層が連接形成される。したがって、必要に応じて薬液注入管ロッド1をさらに下方へ貫入させて薬液材を注入すれば、さらに拡張固結体50bが形成され、多層に積層形成できる。こうして、多層に拡張固結体50,50a,50bと積層状態で形成されることになる。
【0037】
こうすることにより、この実施形態では、地盤60の表層部のみならず深い層まで薬液材による拡張固結体50を上下方向に拡張させて土壌の圧密度を高めることが可能になる。したがって、地盤60の安定性が高められて地上に構築された構造物を安定支持することができる。もちろん、不同沈下による傾斜構造物の復元をもより確実なものとすることができる。
【0038】
(第3実施形態)
この実施形態の地盤の安定化工法は、基本的に前記第1実施形態の工法と同様であるが、化学反応を伴う薬液材の注入後に土壌中で拡張固結体を形成して圧密度を高める操作に、無機質薬液材を用いる地盤の改良手段を併用するもので、軟弱地盤の改良安定化に資するものである。
【0039】
この実施形態の工法は、図4に示すように、たとえば軟弱な地盤61における地上部で構築物の基盤となっているコンクリート基礎の下側地盤に、まず前記化学反応によって発泡して拡張固結体50を形成する薬液材を注入して地層の深部に拡張固結体50を形成する。次いで先に形成された拡張固結体50の上側に、周知の二重管構造のロッド(薬液注入管ロッド1A)を対応する範囲で複数箇所に挿入設置し、この薬液注入管ロッド1Aにより瞬結性の薬液材Aaと硬化材Baを予め設定したインターバルで順次注入して上層部の地層62を改良するものである。なお、前記第1実施形態におけると同一もしくは同様の構成のものについては、前記実施形態のものと同一の符号を付して詳細な説明を省略する。図中符号15aは瞬結性の薬液材配管、16aは硬化材の配管、17a・18aは開閉弁である。
【0040】
この実施形態では、施工対象となる地層62に対して前記第1実施形態において説明の手順により予定深度で所要範囲に複数本の薬液注入管ロッド1を構築物の基盤上もしくは地表面から地中に貫入させて設置する。その後において膨張性薬液材を制御手段20によって予め設定したインターバルで、たとえば数秒ごとに注入位置を切換えて複数箇所に順次注入し、その薬液材による拡張固結体50を地層62中に形成する。
【0041】
こうして地層62の深部に拡張固結体50が形成された後、改めて周知の二重管構造の薬液注入管ロッド1Aを所要の間隔で複数本設置し、瞬結性の薬液材Aaと硬化材Baとを別途制御手段20Aによって予め設定したインターバルで数秒ごとに注入位置を切換えて順次混合供給して注入する。
【0042】
こうすることにより地盤61では、先に地層62深部に注入して形成されている拡張固結体50でもって軟弱な地盤中に支持層が構成されているので、後続的に注入される瞬結性の薬液材Aaと硬化材Baとの混合材が土壌中に分散する際、前記拡張固結体50によって下方への薬液材の流動浸透が阻止され、地盤の上層部においてこの無機質薬液材による砂粒との混合結合により改良層(固結体65)が形成される。
【0043】
この実施形態の安定化工法によれば、二系統の薬液材を使用して地盤中への注入操作を行うことで、軟弱地盤の深部に形成される拡張固結体50によって、後続して注入される無機薬液材の拡散浸透を阻止する機能を発揮させ、その結果、無機薬液材による薬液注入に際し過度な注入拡散が防止されて固結体65が形成される。したがって、地盤改良工事に際して複合する工法で薬液材の使用量を低減でき、土壌の圧密度を高めて軟弱地盤を経済的に安定化することができるという効果を奏する。
【0044】
(第4実施形態)
この実施形態の地盤の安定化工法は、基本的に前記第3実施形態の工法と同様であるが、無機質薬液材を用いる地盤の改良手段を実施した後に、化学反応を伴う薬液材を注入して先に改良した地層の表層部において改良地盤の表層部でのレベル微調製を行い、圧密精度を高めることが容易な無機質薬液材と化学反応を伴う薬液材とを併用する地盤の改良安定化に資するものである。
【0045】
この実施形態の工法は、図5に示すように、たとえば地盤60における地上部で構築物の基盤となっているコンクリート基礎の下側地盤に、予定深度で所要範囲に所要の間隔で周知の二重管構造の薬液注入管ロッド1Aを複数本設置し、瞬結性の薬液材Aaと硬化材Baとを使用してこれら薬液注入管ロッド1Aを制御手段20Aによって予め設定したインターバルで数秒ごとに注入位置を切換えて順次混合供給して注入し、地盤60の圧密度を高める。その後において、別途薬液注入管ロッド1を所要位置に複数本配置して、これら薬液注入管ロッド1で前記膨張性薬液材を、別途制御手段20によって制御して前記手段で改良された地盤60の上層部に注入し、注入された膨張性薬液材の拡張によって拡張固結体50を形成させることにより、先に改良されて地表レベルが持ち上げられた範囲において、所要レベルに到達していない部分を調整することができ、レベルの微調整が容易にできる。なお、前記第3実施形態におけると同一もしくは同様の構成のものについては、前記実施形態のものと同一の符号を付して詳細な説明を省略している。
【0046】
上述した本発明の地盤の安定化工法によれば、化学反応によって拡張機能を有する薬液材を用いて多点注入することで、地盤上に構築された構造物の支持地盤を広い範囲で一様に支持して安定化を図ることができ、その多点注入による注入操作を制御することにより地表側への押上げ力を容易に確保して不同沈下による地盤の復元も有効に実施することが可能になる。また、構造物の基礎地盤に化学反応によって拡張機能を有する薬液材を注入して拡張固結体を地中に造成することで、前記地盤の押上げ力確保のほかに、地層に伝播する振動の吸収機能を発揮して制震効果が得られるので、たとえば振動を発振する構造体(工作機械や原動機など)の耐震基礎の構築に利用して有効であるといえる。
【符号の説明】
【0047】
1,1′・・1n,1A 薬液注入管ロッド
10 薬液材供給装置
13,14 分配手段
15,15′・・・15n,16,16′・・・16n 配管
17,18 切換弁
20,20A 制御手段
50,50a,50b 拡張固結体
60
61 地盤
62 地層
65 無機質薬液材による固結体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物などの支持土壌を改善あるいは持ち上げ支持するための工法であって、
改良対象の地盤に対応して所要間隔で複数の薬液注入ロッドを設置し、これら薬液注入ロッドに化学反応によって拡張機能を有する薬液材を、設定したインターバルでもって各注入位置に多点注入する操作を行い、前記薬液注入ロッドによって前記薬液材を土壌中に加圧注入して拡張させることにより、先行して注入されて拡張する薬液材中および/または地中に後続の前記薬液材をさらに加圧注入することにより、土壌中にて薬液材を継続的に拡張増大させて形成される拡張固結体により土壌の圧密度を高めることを特徴とする地盤の安定化工法。
【請求項2】
前記薬液材としては、主としてポリオール系とイソシアネート系との2主成分からなり、薬液注入ロッド先端部で両成分を混合して吐出させて化学反応により拡張機能を発揮させ、発泡硬化するものが用いられる請求項1に記載の地盤の安定化工法。
【請求項3】
前記薬液材を多点注入するに際し、薬液材供給源から各薬液注入ロッドには予め設定した所要の時間を置いて順次注入位置を切換えながら加圧注入する請求項1に記載の地盤の安定化工法。
【請求項4】
前記薬液材の注入は、ポンプを用いて加圧注入する請求項1または3に記載の地盤の安定化工法。
【請求項5】
前記薬液材を多点注入するに際し、薬液材供給源には、各薬液注入ロッドにそれぞれポンプを接続し、これらポンプの作動もしくは供給路に配した切換弁を制御して加圧注入する請求項1に記載の地盤の安定化工法。
【請求項6】
薬液材の土壌中への注入は、薬液注入ロッドの注入先端位置を段階的に所要量突入させて行わせ、先行注入されて土壌中で形成された拡張固結体の底部に次の加圧注入を行わせることにより、初期の注入による拡張固結体の下部にさらなる拡張固結体を形成し、薬液材による拡張固結体を積層形成させることを特徴とする請求項1に記載の地盤の安定化工法。
【請求項7】
前記薬液材加圧注入は、軟弱地盤に対して所要時間をおいて断続して注入し、土壌中において注入薬液材による拡張固結体を拡大形成して浮力を付加できるようにし、地盤上に設置の構造物を安定支持できる強化地盤を得る請求項1〜6のうちのいずれかに記載の地盤の安定化工法。
【請求項8】
構造物などの支持土壌を改善あるいは持ち上げ支持するための工法であって、
改良対象の地盤に対応して所要間隔で複数の薬液注入ロッドを設置し、これら薬液注入ロッドに化学反応によって拡張機能を有する薬液材を、予め設定した所要の時間を置いて順次切換え供給する操作を繰り返して加圧注入し、その薬液材の拡張固結体を土壌中に形成した後に、前記拡張固結体の上側土壌中に二液反応型の無機質薬液材を圧入する操作を行い、軟弱地盤の強化を行うことを特徴とする地盤の安定化工法。
【請求項9】
構造物などの支持土壌を改善あるいは持ち上げ支持するための工法であって、
改良対象の地盤に対応して所要間隔で複数の薬液注入ロッドを設置し、これら薬液注入ロッドに二液反応型の無機質薬液材を圧入する操作で土壌の改良を行い、この改良地層の上側土壌中に化学反応によって拡張機能を有する薬液材を注入し、その薬液材の拡張固結体によって地表のレベル調整を行うことを特徴とする地盤の安定化工法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−208360(P2011−208360A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74150(P2010−74150)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(592072920)平成テクノス株式会社 (7)
【Fターム(参考)】