説明

地盤の液状化抑止方法および液状化抑止性能維持装置

【課題】軟弱地盤の内部を不飽和状態に処理して、液状化強度を向上させる液状化抑止方法、および前記方法を実施するための液状化抑止性能維持装置を提供する。
【解決手段】外周を遮水壁2に囲まれた地盤1の一側に地盤中へ溶液を注入する注入管3を埋設し、他側には地盤中の地下水を汲み上げる揚水管4を設置し、揚水管4を通じて地下水を汲み上げ地盤中に水平方向に動水勾配を形成しつつ、注入管3を通じて混合、反応により微粒物質を析出する2種の溶液を注入し地盤中で混合、反応させて微粒物質を析出させ地盤1中に水平方向に難透水層5を形成する。地盤1中の難透水層5より下側へ届く空気注入管9を埋設し、難透水層5より下側の地盤1中に空気を注入して地盤内の不飽和度を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軟弱地盤の内部を不飽和状態に処理して液状化強度(液状化しにくさ)を向上させ、同軟弱地盤上の建物などの安全性を確保する液状化抑止方法、および前記液状化抑止性能を長期にわたり(半永久的に)維持する方法と、前記方法を実施するための液状化抑止性能維持装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、軟弱地盤などの液状化強度を向上させる処理方法として、下記の方法、工法が提案されている。
(1)下記の特許文献1に開示された地盤の液状化防止方法は、地盤上部を脱気し、更に は地下水を汲み上げて、地盤を静的に圧密し液状化を防止する方法である。
(2)下記の特許文献2に開示された砂質地盤の液状化防止方法、および特許文献3に開 示された地盤改良工法は、それぞれ地盤中に空気を注入して不飽和状態にする方法で ある。
(3)下記の特許文献4、5に開示された液状化防止方法は、それぞれ地下水の揚水と、 空気の注入とを併用する処理法である。
(4)特許文献6に開示された液状化防止方法は、地下水を汲み上げた後に、超微粒子セ メント等の固化剤溶液を注入することを特徴とする。
(5)特許文献7に開示された液状化防止工法は、地盤を上面から空気圧で加圧して地下 水位を低下させ、地盤を不飽和状態にすることを特徴とする。
【0003】
しかし、上記(1)〜(5)の従来技術は、いずれも地盤内を一時的に不飽和状態にする処理方法でしかなく、短時間で元の飽和状態に戻ってしまうので、地盤に必要な液状化強度の恒久性を期待できない。
また、上記(2)および(3)の方法は、そもそも地盤に対する空気の浸透性が悪いので、空気注入管からの空気注入範囲が狭く、その故に空気注入管を小さなピッチで多数本設置する必要があり、面倒で手間がかかる。
【0004】
次に、地盤の不飽和状態を長期にわたり維持する従来技術として、下記の方法、工法が提案されている。
(6)下記の特許文献8に開示された液状化防止方法は、地下水を揚水して地下水位を低 下させ、同時に、溶存空気量の多い水を地盤へ注水して地下水位を回復させることに より、地盤を不飽和状態とする。その上で、地盤の飽和度を計測しつつ、前記の処理 を繰り返し行い、飽和度を設定値に維持する方法である。
(7)特許文献9に開示された液状化防止方法も、地下水を揚水して地下水位を低下させ るが、その後に、地表から水を地盤中へ注水してほぼ当初の地下水位を回復させる。 これによって、地盤を土粒子の間隙水中に気泡が混在する不飽和状態に変換させる。 更に地盤の不飽和状態を観察し、前記の処理を繰り返して、不飽和状態を積極的に維 持する方法である。
(8)特許文献10に開示された液状化防止方法も、地下水を揚水して地下水位を低下さ せ飽和度を低下させることまでは、上記方法と同じである。その上で、飽和度の自然 上昇を監視しつつ、飽和度を設定値以下に維持するため、再揚水を繰り返し行う。
【0005】
【特許文献1】特開平7−158045号公報
【特許文献2】特開平10−102473号公報
【特許文献3】特開平3−156022号公報
【特許文献4】特開2004−360243号公報
【特許文献5】特開平7−158051号公報
【特許文献6】特開平7−158084号公報
【特許文献7】特開平6−330519号公報
【特許文献8】特開2004−204573号公報
【特許文献9】特開平8−3975号公報
【特許文献10】特開2002−256540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献8〜10の液状化防止方法はそれぞれ、地盤を不飽和状態に長く維持する手段まで包含している点が、注目に値する。
しかし、特許文献8の液状化防止方法は、溶存空気量の多い水を注水して地盤を不飽和状態にするというが、地下水温度(通例15℃〜17℃)の条件下では、空気の溶解度は体積比で2%程度と非常に小さく、大量の水を注入する必要がある。ところが、繰り返し水の注入を行う間に、注水口が目詰まり等を起こして注入口の機能を損ない、注入が困難に陥る可能性が高い。
特許文献9の液状化防止方法も、地表からの注水を繰り返す結果、注水中に含まれる微細粒分が地表付近に蓄積され、透水性の低い膜を形成し、注水能力が低下することが懸念され、長期の性能維持が困難に陥る可能性が高い。
特許文献10の液状化防止方法は、再揚水を繰り返すことを内容とするが、揚水領域が遮水壁と底盤の難透水層とに囲まれている場合を除き、飽和度の自然上昇は急速で、頻繁に再揚水を繰り返さねばならない。その結果、周辺地盤の地下水位が低下したり地盤沈下などの二次災害を誘引する可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、空気を注入して地盤の不飽和度を高める方法であるが、地盤中に水平方向に難透水層を予め形成し、前記難透水層より下側の地盤中へ空気を注入することにより、注入空気は鉛直方向へ抜け難く、水平方向に拡散、浸透しやすく、空気が地盤内にトラップされやすくして、注入効率を高め、不飽和状態を長期にわたり維持でき、空気注入管の設置本数および空気注入手段の能力、規模を削減できる地盤の液状化抑止方法を提供することである。
【0008】
本発明の次の目的は、地盤の飽和度若しくは不飽和度をセンサーで測定し、不飽和度が低下すると自動的に空気注入を繰り返して不飽和度を高め、また、空気注入の頻度が上がる(注入休止の時間間隔が短くなる。)と、地盤中に水平方向に難透水層を再形成する処理を行って、空気が地盤内にトラップされやすくし、地盤の不飽和状態を長期にわたり(半永久的に)維持することができ、或いは地震で一旦は飽和状態に戻った地盤でも即座に地盤内を不飽和状態に復旧できる液状化抑止方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した従来技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る地盤の液状化抑止方法は、地盤内を不飽和状態にして地盤の液状化を抑止する方法において、
外周を遮水壁2に囲まれた地盤1の一側に地盤中へ溶液を注入する注入管3を埋設し、他側には地盤中の地下水を汲み上げる揚水管4を設置し、揚水管4を通じて地下水を汲み上げ地盤中に水平方向に動水勾配を形成しつつ、前記注入管3を通じて混合、反応により微粒物質を析出する2種の溶液を注入し地盤中で混合、反応させて微粒物質を析出させ地盤1中に水平方向に難透水層5を形成すること、
前記地盤1中の前記難透水層5より下側へ届く空気注入管9を埋設し、前記難透水層5より下側の地盤1中に空気を注入して地盤内の不飽和度を高めることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載した発明に係る地盤の液状化抑止方法は、地盤内を不飽和状態にして地盤の液状化を抑止する方法において、
外周を遮水壁2に囲まれた地盤1の一側に地盤中へ溶液を注入する注入管3を埋設し、他側には地盤中の地下水を汲み上げる揚水管4を設置し、揚水管4を通じて地下水を汲み上げ地盤中に水平方向に動水勾配を形成しつつ、前記注入管3を通じて混合、反応により微粒物質を析出する2種の溶液を注入し地盤中で混合、反応させて微粒物質を析出させ地盤1中に水平方向に難透水層5を形成すること、
前記地盤1中の前記透水層5より下側へ届く空気注入管9を埋設し、前記難透水層5より下側の地盤1中に空気を注入して地盤内の不飽和度を高めること、
前記地盤1中に同地盤の不飽和状態を測定するセンサー15を埋設し、該センサー15の計測値と管理値とを比較し、計測値が管理値を下回ると空気を注入して地盤内の不飽和度を高めることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載した発明に係る地盤の液状化抑止方法は、地盤内を不飽和状態にして地盤の液状化を抑止する方法において、
外周を遮水壁2に囲まれた地盤1の一側に地盤中へ溶液を注入する注入管3を埋設し、他側には地盤中の地下水を汲み上げる揚水管4を設置し、揚水管4を通じて地下水を汲み上げ地盤中に水平方向に動水勾配を形成しつつ、前記注入管3を通じて混合、反応により微粒物質を析出する2種の溶液を注入し地盤中で混合、反応させて微粒物質を析出させ地盤1中に水平方向に難透水層5を形成すること、
前記地盤1中の前記難透水層5より下側へ届く空気注入管9を埋設し、前記難透水層5より下側の地盤1中に空気を注入して地盤内を不飽和状態にすること、
前記地盤1中に地盤の不飽和状態を測定するセンサー15を埋設し、該センサー15の計測値と管理値とを比較し、計測値が管理値を下回ると空気を注入して地盤内の不飽和度を高め、センサー15の計測値が管理値を上回ると空気の注入を止めること、
地盤1中への空気注入を休止する時間に対して、次に空気注入を開始するまでの時間の間隔が管理時間よりも短くなった場合には、再び揚水管4を通じて地下水を汲み上げ地盤中に水平方向に動水勾配を形成しつつ、前記注入管3を通じて混合、反応により微粒物質を析出する2種の溶液を注入し地盤中で混合、反応させて微粒物質を析出させ地盤1中に水平方向に難透水層5を再形成する処置を繰り返すことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載した発明は、請求項1〜3のいずれか一に記載した地盤の液状化抑止方法において、
注入管3および揚水管4には、高さ方向に位置が異なるが、両管の関係ではレベルおよびピッチがほぼ等しい複数段に注入口と吸水口が設けられ、前記注入管3を通じて混合、反応により微粒物質を析出する2種の溶液を多段に注入し地盤中で混合させて微粒物質を析出させ地盤1中に水平方向に難透水層5を上下に間隔をあけて複数層形成すること、
空気注入管9にも、前記注入管3および揚水管4の注入口および吸水口と高さおよびピッチにほぼ対応する間隔で空気吐出口を複数段に設け、前記複数層の難透水層5それぞれの下側及び中間の地盤1中に空気を注入して、地盤内を不飽和状態にすることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載した発明は、請求項1〜4のいずれか一に記載した地盤の液状化抑止方法において、
混合、反応により微粒物質を析出する2種の溶液は、酸化剤溶液と鉄塩基溶液、又は炭酸塩溶液とカルシウム塩基溶液、若しくは炭酸塩溶液とマグネシウム塩基溶液であることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載した発明は、請求項1〜4のいずれか一に記載した地盤の液状化抑止方法において、
空気注入管9は、1本の空気注入管9が空気吐出口を通じて地盤1中へ空気を注入可能な水平方向範囲が、隣接する空気注入管9との相互間で重なり合うピッチで必要本数だけ埋設することを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の発明に係る地盤の液状化抑止性能維持装置は、地盤内を不飽和状態にして地盤の液状化を抑止する装置であって、
地盤1中へ埋設され地盤中へ2種の溶液を注入する注入管3と、同じ地盤中へ埋設されて地盤中の地下水を汲み上げる揚水管4と、同じ地盤中に埋設されて空気を注入する空気注入管9と、前記注入管3に付設された溶液注入手段6、7、8、前記揚水管4に付設された揚水手段、並びに前記空気注入管9に付設された空気注入手段11と、
前記地盤1中に埋設され地盤1の不飽和状態を測定するセンサー15と、
前記センサー15の計測値が入力され、同計測値と管理値とを比較して計測値が管理値を下回ると空気注入手段11を制御し空気の注入を開始させて地盤内の不飽和度を高め、センサー15の計測値が管理値を上回ると空気の注入を止める制御、および地盤中への空気注入を休止する時間に対して、次に空気注入を開始するまでの時間の間隔が管理時間よりも短くなった場合には、揚水手段を制御して地下水を汲み上げ地盤中に水平方向に動水勾配を形成しつつ、溶液注入手段6、7、8を制御して混合、反応により微粒物質を析出する2種の溶液を注入し地盤中で混合、反応させて微粒物質を析出させ地盤1中に水平方向に難透水層5を再形成する制御を行う制御装置13とから成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載した発明の液状化抑止方法は、地盤1中に水平方向に難透水層5を予め形成し、前記難透水層5より下側の地盤1中へ空気を注入するので、注入空気は鉛直方向へは抜け難く、水平方向へ拡散、浸透しやすいので、注入効率を高められる。その結果、空気注入管4の設置本数は、隣接する空気注入管との間の空気注入水平方向範囲A(図4)が相互に重なり合うピッチPで必要本数だけ埋設すれば足り、設置本数を従来技術に比して削減できる。また、前記の通り注入空気は、水平方向に拡散、浸透しやすく、注入効率が高い上に、注入した空気は、難透水層5の存在により上方には抜けがたく、地盤内にトラップ(貯蔵、貯留)されやすいから、不飽和状態を長期間にわたり維持できる。よって、空気注入手段11の能力、規模を低減でき、費用の削減も図れる。
【0017】
請求項2、3に記載した発明は、地盤1の飽和度若しくは不飽和度をセンサー15で測定し、不飽和度が低下すると自動的に空気注入を行って不飽和度を高める処理を繰り返すので、長期にわたり(半永久的に)地盤の不飽和状態を維持でき、地盤上の建物等の耐震安全性を確保することができる。また、空気注入の頻度が上がる(注入休止の時間間隔が短くなる。)と、地盤中に水平方向に難透水層5を再形成する処置を行って、注入空気による地盤の不飽和度の性能維持を図るので、地盤1の不飽和状態は、半永久的に維持できる。或いは、地震で一旦は飽和状態に戻った地盤でも、難透水層5を再形成し、空気注入を行うことにより地盤内を不飽和状態に復旧できる。
請求項6記載の発明に係る液状化抑止装置は、上記液状化抑止方法の産業上の実施を容易ならしめる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
外周を遮水壁2に囲まれた地盤1の一側に地盤中へ溶液を注入する注入管3を埋設し、他側には地盤中の地下水を汲み上げる揚水管4を設置し、揚水管4を通じて地下水を汲み上げ地盤中に水平方向に動水勾配を形成しつつ、前記注入管3を通じて混合、反応により微粒物質を析出する2種の溶液を注入し地盤中で混合、反応させて微粒物質を析出させ地盤1中に水平方向に難透水層5を形成する。
前記地盤1中の前記難透水層5より下側へ届く空気注入管9を埋設し、前記難透水層5より下側の地盤中に空気を注入して地盤内を不飽和状態にする。
前記地盤1中に地盤の不飽和状態を測定するセンサー15を埋設し、該センサー15の計測値と管理値とを比較し、計測値が管理値を下回ると空気を注入して地盤内の不飽和度を高め、センサー15の計測値が管理値を上回ると空気の注入を止める。
地盤中への空気注入を休止する時間に対して、次に空気注入を開始するまでの時間の間隔が管理時間よりも短くなった場合には、揚水管4を通じて地下水を汲み上げ地盤中に水平方向に動水勾配を形成しつつ、注入管3を通じて混合、反応により微粒物質を析出する2種の溶液を注入し地盤中で混合、反応させて微粒物質を析出させ地盤1中に水平方向に難透水層5を再形成する処置を繰り返し行う。
【0019】
地盤1の液状化抑止性能維持装置は、地盤中へ埋設され地盤中へ2種の溶液を注入する注入管3と、同じ地盤中へ埋設されて地盤中の地下水を汲み上げる揚水管4と、同じ地盤中に埋設されて空気を注入する空気注入管9と、前記注入管3に付設された溶液注入手段6、7、8と、前記揚水管4に付設された揚水手段、並びに前記空気注入管9に付設された空気注入手段11と、
前記地盤1中に埋設され地盤の不飽和状態を測定するセンサー15と、
前記センサー15の計測値が入力され、同計測値と管理値とを比較し計測値が管理値を下回ると空気注入手段11を制御し空気の注入を開始させて地盤内の不飽和度を高め、センサーの計測値が管理値を上回ると空気の注入を止め制御、および地盤中への空気注入を休止する時間に対して、次に空気注入を開始するまでの時間の間隔が管理時間よりも短くなった場合には、揚水手段を制御して地下水を汲み上げ地盤中に水平方向に動水勾配を形成しつつ、溶液注入手段6、7、8を制御して混合、反応により微粒物質を析出する2種の溶液を注入し地盤中で混合、反応させて微粒物質を析出させ地盤1中に水平方向に難透水層5を再形成する制御を行う制御装置13とで構成する。
【0020】
なお、上記した「混合、反応により微粒物質を析出する2種の溶液」としては、下記のものを好適に使用できる。
(i)酸化剤溶液と鉄塩基溶液の使用。具体的には、過マンガン酸カリウム(KMnO)と硫酸第一鉄(FeSO)とを使用し、混合反応させる。すると、6KMnO+6FeSO+14HO →2MnO+6Fe(OH)+KSO+5HSOと反応して微粒物質2MnO と6Fe(OH) を析出する。
(ii)炭酸塩溶液とカルシウム塩基溶液の使用。具体的には、炭酸ナトリウム(NaCO )と塩化カルシウム(CaCl )を使用し混合反応させる。すると、NaCO+CaCl →CaCO +2NaCl と反応して微粒物質CaCO を析出する。
(iii) 炭酸塩溶液とマグネシウム塩基溶液の使用。具体的には、炭酸ナトリウム(NaCO )と塩化マグネシウム(MgCl )を使用し混合反応させる。すると、MgCO+2NaCl と反応して微粒物質MgCO を析出する。
もっとも、使用する2種の溶液を、上記の種類、組合せに限る意味ではない。以下には混合、反応により微粒物質を析出する2種の溶液として、代表的に、上記酸化剤溶液と鉄塩基溶液の使用する場合について説明する。
【実施例1】
【0021】
以下に、本発明を図示した実施例に基づいて説明する。
まず図1は、請求項1に記載した発明に係る地盤の液状化抑止方法の実施例1を概念的に示している。要するに、外周を遮水壁2に囲まれた地盤1内を不飽和状態にして地盤の液状化を抑止する方法である。飽和度を下げる(又は不飽和度を高める。本願では同じ意味で使用する。)ことにより、軟弱地盤(砂地盤)の液状化抵抗又は液状化強度(液状化しにくさ。)を増大できることは、上記の「背景技術」において説明したように既に周知に属する。
図1の実施例は、外周を遮水壁2に囲まれた建物10の直下地盤1の一側(図1中の左側)に地盤1中へ溶液を注入する注入管3が埋設され、右側に地盤1中の地下水Wを汲み上げる揚水ポンプ内蔵の揚水管4が埋設されている。前記揚水管4を通じて地下水を汲み上げ地盤1中に水平方向に動水勾配を形成しつつ、前記注入管3を通じて酸化剤溶液および鉄塩基溶液の2液を注入し、両液を地盤1中で前記動水勾配に沿う流れの中で混合させ反応させることにより微粒物質を析出させ、前記微粒物質によって地盤1中に水平方向に難透水層5を形成する。
平面図の図示を省略したが、紙面の垂直方向にも、必要に応じて注入管3と揚水管4を一定のピッチで複数本設置して上記の処置を同時期に行い、もって遮水壁2に囲まれた地盤1のほぼ全面にわたり、平面的な拡がりを有する難透水層5を形成する。
また、遮水壁2に囲まれた液状化抑止対象地盤1が広大で、揚水管4を通じて行う地下水の汲み上げによる動水勾配の形成、および注入管3を通じて行う溶液の注入効果、難透水層5の形成効果が薄れる場合には、当然の設計、施工として、例えば図1の左右方向に注入管3と揚水管4を適度な間隔で交互の配置に複数組埋設して、難透水層5の形成を遮水壁2に囲まれた地盤1のほぼ全面にわたり、共通する平面的な拡がりで行うことは、当業者が必要に応じて当然行う設計事項である。
【0022】
因みに前記の難透水層5を地盤中に形成する技術は、例えば本出願人の特許第3600892号、および特許第3643956号特許発明を利用、応用して実施することができる。
なお、図面には上記難透水層5を上下方向に間隔をあけて多段に3層形成する実施例を示しているが、もとより、難透水層5の層数は地盤の地質、性状等に応じて設計されるもので、1層だけ形成して実施する場合もある。
図5(A)は、難透水層5を1層だけ形成する場合、図5(B)は難透水層5を上下方向に間隔をあけて3層5a、5b、5cを形成する場合の溶液注入管3の構造を概念的にを示している。なお、溶液注入管3の構造の詳細については、本出願人の平成17年4月25日出願に係る特願2005−127124に開示した注入管装置が参照される。
図5に示す溶液注入管3は、要するに、溶液1(例えば酸化剤溶液)を注入する管3aと、溶液2(例えば鉄塩基溶液)を注入する管3bとが並列に配置され、パッカー20で仕切られた区分毎に溶液の注出口3a〜3aおよび3b〜3bを設けた2重管構造に構成されている。
図5(A)の場合、溶液1(酸化剤溶液)は管3aの注出口3aから地盤中へ水平方向に注入され、溶液2(鉄塩基溶液)は管3bの注出口3bからやはり地盤中へ水平方向に注入される。すると、酸化剤溶液と鉄塩基溶液は地盤中を動水勾配に沿って水平方向に流れる過程で混ざり合い反応して、上述したような微粒物質を析出し、この微粒物質が地盤の土粒間隙を埋めて難透水層5を形成する結果となる。
図5(B)の場合は、溶液1(酸化剤溶液)が、管3aの上下に区分された2箇所の注出口群3aと3aから地盤中へ注入され、溶液2(鉄塩基溶液)も、管3bの上下2箇所の注出口群3bと3bから地盤中へ注入される。すると、酸化剤溶液と鉄塩基溶液はそれぞれ地盤中を動水勾配に沿って水平方向に流れる過程で混ざり合い反応して上述したような微粒物質を析出し、それが地盤の土粒間隙を埋めて難透水層5a、5b、5cを3層形成する結果となる。
【0023】
上述した図5(A)、(B)から類推できるように、難透水層5を形成する注入管3、および揚水管4には、高さ方向に位置が異なるが、両管3、4の関係では、レベルおよびピッチがほぼ等しい注入口群と吸水口群が設けられ、上記の対応関係で地盤1中に埋設される。したがって、前記揚水管4を通じて地下水の揚水を行い、且つ注入管3を通じて酸化剤溶液と鉄塩基溶液の如き2液を別系統の注出口から注入し、地盤中で混合、反応させて微粒物質を析出させることにより、地盤1中に水平方向に、難透水層5が層状に形成される。
【0024】
なお、上記難透水層5を形成するための手段として、溶液の注入管3には、2種の溶液1、2の注入手段として、例えば酸化剤溶液タンク6と鉄塩基溶液タンク7が、具体的には図2に示すように、電動弁8(又は電磁弁)を介して接続され、各電動弁8は制御装置13と信号線で接続されている。また、揚水管4については、揚水手段として管内に内蔵した揚水ポンプを備え、これを始動させ又は停止させる制御のため、図2に示すように制御装置13とリレースイッチ14を介して接続されている。勿論、具体的に図示することを省略したが、これらの動力用および制御用の電源も別途用意されている。
【0025】
次に、上記地盤1中に空気を注入する複数本の空気注入管9は、やはり一定のピッチで複数本埋設され、上記のように形成された難透水層5の下側および中間の地盤中に空気を注入し、もって地盤1内の不飽和度を高める処置が行われる。図中の大小の丸印Sが注入した空気泡を誇張して示す。
空気注入のため各空気注入管9にも、前記注入管3および揚水管4の注入口および吸水口と高さ及びピッチにほぼ対応する間隔で、空気吐出口群が例えば3段に区分して設けられ、前記3段に形成した難透水層5それぞれの下側及び中間の地盤中に空気を注入できる構成とされている。したがって、この空気注入管9は、予め形成された前記難透水層5それぞれの下側及び中間の地盤中に届く深さに埋設される。この空気注入管9にも、空気注入手段として、基端部に空気注入用のコンプレッサー11が図示を省略した圧力調整弁、流量弁等を介して接続されている。また、図2に示すように、コンプレッサー11を駆動制御する制御装置13とリレースイッチ12を介して接続されている。これらの具体的な駆動制御の内容については、次の実施例2の説明において纏めて行う。
【0026】
なお、上記空気注入管9を地盤1中へ複数本埋設する平面配置としては、具体的に平面図を示すことを省略したが、例えば図4に例示しているように、1本の空気注入管9がその空気吐出口を通じて地盤1中へ空気を注入可能な水平方向範囲Aを前提とし、隣接する空気注入管9との相互間で、前記水平方向範囲A同士が重なり合うピッチPで必要本数だけ埋設する。
本発明の場合、空気注入管9による空気の注入は、上述したように、予め形成された難透水層5の下側、および中間の地盤中に行うので、空気は上方へは抜けがたく、滞留し易い。その分水平方向への拡散、浸透が進みやすいので、既往技術に比較して、前記注入可能な水平方向範囲Aが大きい。よって、空気注入管9を地盤1中へ埋設する平面配置の本数を減らすことができ、その分空気注入管9の埋設作業工数が減り、省力化と工事費の削減が図れる。
【実施例2】
【0027】
次に、図2は、請求項2及び3に記載した発明に係る地盤の液状化抑止方法の実施例を概念的に示す。また、請求項6に記載した発明に係る地盤の液状化抑止装置の実施態様をも概念的に示している。
液状化抑止方法の構成および作用の基本的事項の多くは、上記図1に示した実施例1と共通する。即ち、本実施例2の場合も、地盤1内を不飽和状態にして地盤の液状化を抑止する方法であり、外周を遮水壁2に囲まれた地盤1の一側に地盤中へ溶液を注入する注入管3を埋設し、他側には地盤中の地下水を汲み上げる揚水管4を設置し、揚水管4を通じて地下水を汲み上げ地盤1中に水平方向に動水勾配を形成しつつ、前記注入管3を通じて2種の溶液、一例として酸化剤溶液と鉄塩基溶液を注入し地盤中で混合、反応させて微粒物質を析出させ地盤1中に水平方向に難透水層5を形成する。そして、前記地盤1中に空気注入管9を埋設し、前記のように形成した難透水層5より下側および中間の地盤1中に空気を注入して地盤内の不飽和度を高めるのである。
【0028】
本実施例で特記するべき特徴事項は、前記地盤1中に地盤の不飽和状態を測定するセンサー15を埋設し、該センサー15の計測値(飽和度又は不飽和度)が制御装置13へ入力されることである。
ここでいう地盤の不飽和状態を測定するセンサー15としては、土の導電率を計る導電率計、土中の水分量を計るFDR、又はTDR、或いは土中の酸素濃度を測るDOセンサー等々を使用可能であり、その中から適宜選択して使用する。センサー15も、図2に示したように、上記のように形成した3層の難透水層5それぞれの下側又は中間(層間)へ届くように埋設し、各部位における地盤の不飽和状態の如何を個別的に測定して、それぞれの計測値(飽和度又は不飽和度)が制御装置13へ入力される。
【0029】
制御装置13は、センサー15の計測値入力を受けて、これを予め設定した地盤の不飽和状態を見定める「管理値」と比較する。センサー計測値が管理値を下回ると(ここで「下回る」とは、不飽和度を測定する場合の用語である。飽和度を測定する場合は「上回る」と表現することになる。以下、同じ。)、上記空気注入手段であるコンプレッサー11を始動して地盤中へ空気を注入し地盤内の不飽和度を高める。もとより、その後のセンサー15の計測により、センサー計測値が管理値を上回る結果になると、前記コンプレッサー11を停止させ空気の注入を止める。
【0030】
制御装置13の更なる働きを説明する。上記のようにセンサー15の計測値が逐次入力されることで地盤1の不飽和度、換言すれば、地盤の液状化強度(液状化しにくさ)が常時監視される。そして、地盤の不飽和度が低下するたびに、コンプレッサー11を始動して地盤中へ空気を注入し地盤内の不飽和度を高める処置を繰り返すが、その結果、地盤1中への空気注入を休止する時間に対して、次に空気注入を開始するまでの時間の間隔が、予め制御装置13に定めている「管理時間」(例えば24時間。)よりも短くなった場合には、難透水層5の性能が劣化したとみなされるので、その対策として、難透水層5の再形成を行うことになる。
【0031】
即ち、制御装置13におけるセンサー15の計測値入力の処理に関しては、地盤1中への「空気注入を休止する時間」に対して、次に空気注入を開始するまでの「時間の間隔」も同時に監視される。そして、前記の「時間間隔」が、制御装置13に予め定めている「管理時間」よりも短くなった場合には、先ず上述の揚水手段を制御し揚水管4を通じて地下水を汲み上げて、地盤中に水平方向の動水勾配を形成させる。と同時に、溶液注入手段6、7、8も制御して、注入管3を通じて2種の溶液、例えば酸化剤溶液と鉄塩基溶液を注入し、地盤中で混合、反応させて微粒物質を析出させ、地盤1中に水平方向に難透水層5を再形成する処置を行う。その後に、地盤1中へ空気を注入し地盤1内の不飽和度を高める処置を繰り返す。したがって、地盤1の不飽和度およびその性能は、前記処置の繰り返しにより長期にわたり(半永久的に)維持できる。
【0032】
本発明の上述した液状化抑止方法の制御、即ち地盤の不飽和状態を生成させ維持する処理手順を、図3のフロー図に示しているので、以下、これを概説する。なお、図3は、既に地盤1中に水平方向に難透水層5を形成し、その地盤中へ空気を注入して地盤内の不飽和度を高める処置を一度は行った後の経過を示している。
ステップS1は、地盤1中に埋設したセンサー15で地盤1内の「不飽和度」の推移を継続的に監視する段階を示す。
ステップS2は、センサー15の計測値が、制御装置13に予め設定された「管理値」と比較される段階を示す。センサー計測値が管理値よりも小さい「Yes」(つまり、不飽和度が低い。)場合は、次のステップS3へ進み、大きい場合「No」は元のステップS1へ戻る。
ステップS3では、前記ステップS2でセンサー計測値が管理値よりも小さいと判断された場合を受けて、コンプレッサー11を始動させ、地盤中に空気を注入して地盤1内の「不飽和度」を高める段階を示す。
【0033】
ステップS4は、上記のように地盤中に空気を注入して地盤内の「不飽和度」を高めた地盤1内の「不飽和度」の推移を、センサー15で相変わらず継続的に監視する段階を示す。
ステップS5は、センサー15の計測値が、制御装置13に設定された「管理値」と比較して大きい「Yes」(不飽和度が充分に大きい。)場合は、次のステップS6へ進み、小さい「No」(不飽和度が不足する。)場合は、元のステップS4へ戻り、空気の注入を継続することを示す。
ステップS6では、前記ステップS5でセンサー計測値が管理値よりも大きい(不飽和度が充分に大きい。)と判断された場合を受けて、コンプレッサー11を停止して、空気注入を休止する段階を示す。
【0034】
ステップS7は、以上とは制御対象が異なる。コンプレッサー11を停止して空気注入を休止した時点から、次にコンプレッサー11を始動して地盤中に空気注入を開始するまでの「時間の間隔」をタイマーで計測して、その「時間間隔」を制御装置13に予め定めた管理値(例えば24時間)と比較する段階を示す。そして、前記の「時間間隔」が管理値よりも小さいとき「Yes」は、上記の難透水層5の性能が劣化して、注入した空気が上方へ抜けやすくなったと判定して次のステップS8へ進む。逆に、前記の「時間間隔」が管理値よりも大きいとき「No」は、難透水層5の性能は依然として維持されているものと判定して、当初のステップS1へ戻ることを示す。
【0035】
ステップS8では、難透水層5の性能が劣化したことに対する処置として、揚水手段を制御して揚水ポンプを稼働させ揚水管4を通じて地下水を汲み上げて地盤中に水平方向の動水勾配を形成させる。と同時に、溶液注入手段6、7、8を制御して、注入管3を通じて2種の溶液、例えば酸化剤溶液と鉄塩基溶液を注入し、地盤中で混合、反応させて微粒物質を析出させ、地盤1中に水平方向に難透水層5を再形成する。
【0036】
ステップS9では、難透水層5の再形成の目安を、上記2種の溶液タンク6、7の液面の監視、すなわち一例として酸化剤溶液と鉄塩基溶液の注入量を液面計で計測し、その計測値が管理値(溶液タンクの渇水ライン)に達した「Yes」のときは、次のステップS10へ進む。
ステップS10では、溶液注入手段6、7、8を制御して、前記酸化剤溶液と鉄塩基溶液の注入を停止する。また、揚水ポンプを停止して地下水の揚水も止めることを示す。
【0037】
以上に本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。本発明の目的と技術的思想を逸脱しない範囲で、当業者が通常行う設計変更などに応じて、更に種々な態様で実施するものであることを念のため申し添える。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例1を示した立面図である。
【図2】本発明の実施例2を示した立面図である。
【図3】本発明の実施例2の処理手順を示したフローである。
【図4】本発明の実施例1の説明図である。
【図5】(A)は1層の難透水層を形成する溶液注入管、(B)は3層の難透水層を形成する溶液注入管の構造を概念的に示した説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1 地盤
2 遮水壁
3 注入管
4 揚水管
5 難透水層
9 空気注入管
15 センサー
13 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤内を不飽和状態にして地盤の液状化を抑止する方法において、
外周を遮水壁に囲まれた地盤の一側に地盤中へ溶液を注入する注入管を埋設し、他側には地盤中の地下水を汲み上げる揚水管を設置し、揚水管を通じて地下水を汲み上げ地盤中に水平方向に動水勾配を形成しつつ、前記注入管を通じて混合、反応により微粒物質を析出する2種の溶液を注入し地盤中で混合、反応させて微粒物質を析出させ地盤中に水平方向に難透水層を形成すること、
前記地盤中の前記難透水層より下側へ届く空気注入管を埋設し、前記難透水層より下側の地盤中に空気を注入して地盤内の不飽和度を高めることを特徴とする地盤の液状化抑止方法。
【請求項2】
地盤内を不飽和状態にして地盤の液状化を抑止する方法において、
外周を遮水壁に囲まれた地盤の一側に地盤中へ溶液を注入する注入管を埋設し、他側には地盤中の地下水を汲み上げる揚水管を設置し、揚水管を通じて地下水を汲み上げ地盤中に水平方向に動水勾配を形成しつつ、前記注入管を通じて混合、反応により微粒物質を析出する2種の溶液を注入し地盤中で混合、反応させて微粒物質を析出させ地盤中に水平方向に難透水層を形成すること、
前記地盤中の前記難透水層より下側へ届く空気注入管を埋設し、前記難透水層より下側の地盤中に空気を注入して地盤内の不飽和度を高めること、
前記地盤中に同地盤の不飽和状態を測定するセンサーを埋設し、該センサーの計測値と管理値とを比較し、計測値が管理値を下回ると空気を注入して地盤内の不飽和度を高めることを特徴とする地盤の液状化抑止方法。
【請求項3】
地盤内を不飽和状態にして地盤の液状化を抑止する方法において、
外周を遮水壁に囲まれた地盤の一側に地盤中へ溶液を注入する注入管を埋設し、他側には地盤中の地下水を汲み上げる揚水管を設置し、揚水管を通じて地下水を汲み上げ地盤中に水平方向に動水勾配を形成しつつ、前記注入管を通じて混合、反応により微粒物質を析出する2種の溶液を注入し地盤中で混合、反応させて微粒物質を析出させ地盤中に水平方向に難透水層を形成すること、
前記地盤中の前記難透水層より下側へ届く空気注入管を埋設し、前記難透水層より下側の地盤中に空気を注入して地盤内を不飽和状態にすること、
前記地盤中に地盤の不飽和状態を測定するセンサーを埋設し、該センサーの計測値と管理値とを比較し、計測値が管理値を下回ると空気を注入して地盤内の不飽和度を高め、センサーの計測値が管理値を上回ると空気の注入を止めること、
地盤中への空気注入を休止する時間に対して、次に空気注入を開始するまでの時間の間隔が管理時間よりも短くなった場合には、再び揚水管を通じて地下水を汲み上げ地盤中に水平方向に動水勾配を形成しつつ、注入管を通じて混合、反応により微粒物質を析出する2種の溶液を注入し地盤中で混合、反応させて微粒物質を析出させ地盤中に水平方向に難透水層を再形成する処置を繰り返すことを特徴とする地盤の液状化抑止方法。
【請求項4】
注入管および揚水管には、高さ方向に位置が異なるが、両管の関係ではレベルおよびピッチがほぼ等しい複数段に注入口と吸水口が設けられ、前記注入管を通じて混合、反応により微粒物質を析出する2種の溶液を多段に注入し地盤中で混合、反応させて微粒物質を析出させ地盤中に水平方向に難透水層を上下に間隔をあけて複数層形成すること、
空気注入管にも、前記注入管および揚水管の注入口および吸水口と高さおよびピッチにほぼ対応する間隔で空気吐出口を複数段に設け、前記複数層の難透水層それぞれの下側及び中間の地盤中に空気を注入して地盤内を不飽和状態にすることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載した地盤の液状化抑止方法。
【請求項5】
混合、反応により微粒物質を析出する2種の溶液は、酸化剤溶液と鉄塩基溶液、又は炭酸塩溶液とカルシウム塩基溶液、若しくは炭酸塩溶液とマグネシウム塩基溶液であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載した地盤の液状化抑止方法。
【請求項6】
空気注入管は、1本の空気注入管が空気吐出口を通じて地盤中へ空気を注入可能な水平方向範囲が、隣接する空気注入管との相互間で重なり合うピッチで必要本数だけ埋設することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載した地盤の液状化抑止方法。
【請求項7】
地盤内を不飽和状態にして地盤の液状化を抑止する装置であって、
地盤中へ埋設され地盤中へ2種の溶液を注入する注入管と、同じ地盤中へ埋設されて地盤中の地下水を汲み上げる揚水管と、同じ地盤中に埋設されて空気を注入する空気注入管と、前記注入管に付設された2種の溶液注入手段、前記揚水管に付設された揚水手段、並びに前記空気注入管に付設された空気注入手段と、
前記地盤中に埋設され地盤の不飽和状態を測定するセンサーと、
前記センサーの計測値が入力され、同計測値と管理値とを比較して計測値が管理値を下回ると空気注入手段を制御し空気の注入を開始させて地盤内の不飽和度を高め、センサーの計測値が管理値を上回ると空気の注入を止める制御、および地盤中への空気注入を休止する時間に対して、次に空気注入を開始するまでの時間の間隔が管理時間よりも短くなった場合には、揚水手段を制御して地下水を汲み上げ地盤中に水平方向の動水勾配を形成しつつ、溶液注入手段を制御して混合、反応により微粒物質を析出する2種の溶液を注入し地盤中で微粒物質を析出させ地盤中に水平方向に難透水層を再形成する制御を行う制御装置とから成ることを特徴とする、地盤の液状化抑止性能維持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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