地盤撹拌装置
【課題】地盤に形成された孔に挿入した状態で撹拌翼を開閉可能な地盤撹拌装置を提供する。
【解決手段】地盤撹拌装置1は、流体を噴射するための第1の噴射口4aを有するロッド4と、その噴射口4aよりも先端側の位置に、ロッド4の径方向両側に突出するように設けられ、地盤Eを撹拌するための撹拌部材2aと、撹拌部材2aをロッド4の径方向両側に突出した状態と、ロッド4の長手方向に沿った状態との間で、回動させる回動機構5とを備えている。
【解決手段】地盤撹拌装置1は、流体を噴射するための第1の噴射口4aを有するロッド4と、その噴射口4aよりも先端側の位置に、ロッド4の径方向両側に突出するように設けられ、地盤Eを撹拌するための撹拌部材2aと、撹拌部材2aをロッド4の径方向両側に突出した状態と、ロッド4の長手方向に沿った状態との間で、回動させる回動機構5とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤を撹拌するための地盤撹拌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤を撹拌する地盤撹拌工法として、例えば、特許文献1には、ロッドと、このロッドに取り付けられ、地中の任意の点で直径を拡大、縮小できる開閉翼とを備えた地盤撹拌装置を用いた工法が開示されている。この特許文献1に記載された工法では、撹拌翼を閉じた状態でロッドにより地盤を掘削して孔を形成し、所定の深度に到達したら撹拌翼を略水平に開いた状態でその先端から水を噴射しつつ、ロッドを回転させながら所定の距離だけ引き上げて、撹拌翼により地盤内を撹拌し、次に、引き上げた距離と同じ距離だけロッドを下降させた後、撹拌翼の先端から地盤を改良するための薬材を噴射しつつ、再び、ロッドを所定の距離だけ引き上げることにより、撹拌翼で地盤を撹拌する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−33334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された上記工法では、掘削した孔にロッドを挿入した状態で撹拌翼を開閉できることが必要である。
【0005】
そこで、本発明は、地盤に形成された孔に挿入した状態で撹拌翼を開閉可能な地盤撹拌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の地盤撹拌装置は、軸周りに回転可能なロッドと、
前記ロッドに回動可能に連結され、前記ロッドの径方向両側から突出する状態を取り得る撹拌部材と、
前記撹拌部材を、前記ロッドに沿った状態と、前記ロッドの径方向両側から突出した状態との間で、当該撹拌部材の両端部が同じ向きに回動するように駆動する回動機構と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の地盤撹拌装置によれば、ロッドに沿った状態と、ロッドの径方向両側から突出した状態との間で撹拌部材を回動させるための回動機構を備えているので、地盤撹拌装置を地盤に削孔された孔に挿入する際は、撹拌部材をロッドの外周面に沿うように近接させることにより、ロッドの外周面からの撹拌部材の突出量をごくわずかにすることができる。したがって、地盤に削孔された孔に、ロッドを挿入する際に、撹拌部材が支障とならない。また、地盤撹拌装置が所定の深度に到達したら、撹拌部材を回動させて、撹拌部材をロッドの径方向両側に突出した状態にすることにより、地盤を撹拌可能となる。さらに、撹拌作業が終了したら、撹拌部材を回動させて、撹拌部材を再びロッドに沿うように近接させることにより、孔内からロッドを引き上げる際に、撹拌部材が支障とならない。
【0008】
撹拌部材をロッドの径方向両側に突出した状態からロッドの長手方向に沿った状態に回動させる場合は、撹拌部材の一端側を下方へ、他端側を上方へ向かって同じ向きに回転させることにより、撹拌部材を閉じた状態にする。一方、撹拌部材をロッドに沿った状態からロッドの径方向に突出した状態に回動させる場合は、撹拌部材の一端側を上方へ、他端側を下方へ向かって同じ向き(ロッドの径方向両側に突出した状態からロッドの長手方向に沿った状態に回動させる向きとは反対)に回転させることにより、撹拌部材を開いた状態にする。
【0009】
また、本発明において、前記撹拌部材は一対の撹拌翼からなり、該一対の撹拌翼は、それらの基端部において、前記ロッドの径方向に対向する位置で前記ロッドに回動可能に連結されるとともに、該基端部から互いに反対向きに延びるように設けられ、
前記回動機構は、前記一対の撹拌翼の基端部同士を連結する連結材と、少なくとも一方の撹拌翼の基端部に設けられた円弧状の溝と、前記ロッドの外周面に設けられ、前記溝に嵌り込む突起部と、を含み、
前記突起部が前記溝に嵌り込むことで、前記少なくとも一方の撹拌翼が前記突起部にガイドされながら回動することにより、前記一対の撹拌翼は、それらの基端部から前記ロッドに沿って上下に延びる状態と、前記ロッドの径方向に互いに反対向きに突出する状態との間で同じ向きに回動することとすれば、撹拌翼をロッドの径方向に突出した状態とロッドに沿った状態との間で回動させることができる。
【0010】
また、本発明において、前記撹拌部材は、前記ロッドの径方向両側に突出した状態から一端側が自重により下方に回動するとともに、他端側が上方に回動することにより、前記ロッドの長手方向に沿った状態になることとすれば、重力を利用して容易に撹拌部材をロッドに沿った状態にすることができる。
【0011】
また、本発明において、前記撹拌部材は、一端が前記ロッドの外周に設けられた貫通穴に接続されるとともに、前記撹拌部材内を貫通するように形成され、前記ロッド内に供給される流体を送給可能な送給路と、
前記送給路を介して送給される前記流体を噴射するために、前記撹拌部材の突端部に設けられた噴射口と、を有することとすれば、撹拌部材の突端部から流体を噴射し、地盤内に流体を注入することができる。
【0012】
また、本発明において、前記ロッド内に供給される流体が前記ロッドの外周に設けられた貫通穴を介して前記溝内に流入し、前記流体の圧力に応じて、前記撹拌部材を前記ロッドの径方向両側に突出した状態と、前記ロッドに沿った状態との間で、回動させることとすれば、ロッド内に供給される流体の圧力に応じて撹拌部材が回動するため、撹拌部材を回動させるための動力装置を新たに設けることなく、その流体の圧力を調整することにより撹拌部材の回動動作を操作することができる。すなわち、撹拌部材をロッドの径方向に突出するように開きたいときは、ロッド内に所定の圧力の流体を供給することにより、撹拌部材を開くことができる。また、撹拌部材をロッドに沿うように閉じたいときは、ロッド内に流体を供給しない又は供給する流体の圧力を小さくすることにより、撹拌部材を閉じることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、地盤に形成された孔に挿入した状態で撹拌翼を開閉可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る地盤撹拌装置の撹拌部材を開いた状態を示す側面図である。
【図2】撹拌部材を閉じた状態を示す側面図である。
【図3】図2のA−A矢視図である。
【図4】図3のR矢視図で、閉じた状態の撹拌部材を示す図である。
【図5】図3のL矢視図で、閉じた状態の撹拌部材を示す図である。
【図6】図3のR矢視図で、撹拌翼の基端部付近の拡大図である。
【図7】図3のL矢視図で、撹拌翼の基端部付近の拡大図である。
【図8】図4のB−B矢視図である。
【図9】図4のB’−B’矢視図である。
【図10】開いた状態の撹拌部材を示す図である。
【図11】図10のC−C矢視図である。
【図12】ストッパーの拡大図である。
【図13】地盤撹拌装置を用いた施工手順を示す図である。
【図14】地盤撹拌装置を用いた施工手順を示す図である。
【図15】地盤撹拌装置を用いた施工手順を示す図である。
【図16】地盤撹拌装置を用いた施工手順を示す図である。
【図17】地盤撹拌装置を用いた施工手順を示す図である。
【図18】地盤撹拌装置を用いた施工手順を示す図である。
【図19】地盤撹拌装置を用いた施工手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る地盤撹拌装置の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
まず、全体の構成について説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る地盤撹拌装置1の撹拌部材2aを開いた状態を示す側面図である。また、図2は、撹拌部材2aを閉じた状態を示す側面図であり、図3は、図2のA−A矢視図である。
【0018】
図1〜図3に示すように、地盤撹拌装置1は、流体を噴射するための第1の噴射口4aを外周に有するロッド4と、第1の噴射口4aよりも先端側の位置においてロッド4に取り付けられた撹拌部材2aと、を備える。なお、本実施形態では、流体としてグラウト材である薬材を用いた。
【0019】
次に、ロッド4の構造について説明する。
【0020】
ロッド4の先端にはビットが取り付けられている。地盤E内にロッド4を挿入する際は、ロッド4を回転させるとともに、先端から水を噴射し、ビットで地盤Eを掘削する。
【0021】
第1の噴射口4aには、第1のチェック弁4bが取り付けられており、ロッド4内に供給される薬材の圧力が所定の値以上になると第1のチェック弁4bが開いて、薬材が第1の噴射口4aから噴射される。
【0022】
撹拌部材2aは、以下に示す構造となっている。
【0023】
図4及び図5は、それぞれ図3のR、L矢視図で、閉じた状態の撹拌部材2aを示す図であり、図6及び図7は、それぞれ図3のR、L矢視図で、撹拌翼2q、撹拌翼2pの基端部付近の拡大図である。また、図8及び図9は、それぞれ図4のB−B矢視図、B’−B’矢視図であり、図10は、開いた状態の撹拌部材2aを示す図である。そして、図11は、図10のC−C矢視図であり、図12は、ストッパー5bの拡大図である。
【0024】
図4〜図11に示すように、撹拌部材2aは、ロッド4の径方向に対向する位置に、互いに反対向きに延びるように設けられた撹拌翼2pと撹拌翼2qとを備え、これらの基端部同士が連結材2cで結合されている。本実施形態においては、撹拌翼2p及び撹拌翼2qとして、板状の鋼材を用いた。
【0025】
撹拌翼2p及び撹拌翼2qは、その基端部に設けられた表裏一対の円弧状の溝2eがガイドとなり、ロッド4の径方向に突出した状態(すなわち、開いた状態)と、ロッド4の長手方向に沿った状態(すなわち、閉じた状態)との間で回動可能である(回動するための機構については後述する)。
【0026】
撹拌翼2p及び撹拌翼2qが回動する際に、連結材2cが移動する範囲は、ロッド4が支障しないように、ロッド4の側面に切り欠き部2iが設けられている。
【0027】
撹拌部材2aの開閉は、開いた状態から、撹拌翼2pがその基端部を中心に下方に回動すると、連結材2cにて連結された撹拌翼2qが、同時にその基端部を中心に上方に回動することにより、それぞれが閉じた状態となる。撹拌翼2pは撹拌翼2qよりも重量が重いため、外力がかからない状態において、撹拌部材2aは、自重により閉じた状態となる。
【0028】
撹拌部材2aを開閉するための回動機構5は、撹拌翼2pと撹拌翼2qを連結する連結材2cと、ロッド4の外周面に設けられた突起部5aと、撹拌翼2p及び撹拌翼2qの基端部にそれぞれ設けられ、突起部5aが遊嵌可能な円弧状の溝2eと、ロッド4内と溝2e内とを連通する開閉孔4dに設置された第3のチェック弁2kと、ロッド4の外周に設けられ、撹拌翼2qをロッド4に仮固定するためのストッパー5bとから構成される。
【0029】
第3のチェック弁2kは、ロッド4内の薬材の圧力が所定の値以上になると開き、薬材が開閉孔4dを通じて溝2e内に供給される。
【0030】
ロッド4内の薬材が開閉孔4dを通過して溝2e内に供給されると、薬材の圧力が溝2eの一方の端面2fに作用することにより、撹拌翼2p及び撹拌翼2qが開く向きに回動する。
【0031】
撹拌翼2p及び撹拌翼2qが基端部を中心に回動して、突起部5aが溝2eの他方の端面2gに当接すると、撹拌翼2p及び撹拌翼2qは回動を停止し、その状態を維持する。このとき、撹拌翼2p及び撹拌翼2qは略水平状態である。本実施形態においては、撹拌翼2p及び撹拌翼2qの回動する角度範囲が90°になるように溝2eの周方向の長さを形成した。
【0032】
図12に示すように、ストッパー5bは、閉じた状態の撹拌翼2qが接するロッド4の外周部に形成された穴5c内に設置され、凸状でその先端部がロッド4の外周から外方に突出可能な突起体5dと、穴5cの底面と突起体5dとの間に設置されたばね5eとから構成されている。また、ロッド4内の圧力を穴5cに伝達するためのパイロット孔5gが設けられている。
【0033】
ロッド4内を通過する薬材の圧力が、所定の値よりも小さい場合は、ロッド4の外周面より外方に突出して撹拌翼2qの凹部2mに嵌合し、撹拌部材2aの回動を抑制する。一方、ロッド4内を通過する薬材の圧力が、所定の値以上になると、パイロット孔5g内を伝わった圧力により、ばね5eが縮んで突起体5dがロッド4の外周面より内方に引込んで、撹拌部材2aを回動可能な状態にする。
【0034】
撹拌翼2p及び撹拌翼2qの先端には、それぞれ薬材を噴射するための第2の噴射口2bが設けられている。また、撹拌翼2p及び撹拌翼2qには、それぞれロッド4の外周に設けられた供給孔4cを介して供給される薬材を第2の噴射口2bへ送給するための送給路2dが設けられている。
【0035】
供給孔4cには、第2のチェック弁2jが取り付けられていて、ロッド4内に供給される薬材の圧力が所定の値以上になると第2のチェック弁2jが開き、薬材が送給路2dに供給される。
【0036】
ロッド4の回転にともなって撹拌翼2p及び撹拌翼2qを開いた状態で回転させながら、第2の噴射口2bから薬材を噴射することで、第1の噴射口4aからの薬材で噴射混合されたロッド4の周囲の地盤Eを強制撹拌するとともに、さらに外周部分を噴射混合することができる。
【0037】
次に、地盤撹拌装置1を用いた地盤改良を説明する。
【0038】
図13〜図19は、地盤撹拌装置1を用いた施工手順を示す図である。これらの図において、左下り傾斜線のハッチング部分は、薬材にて噴射混合した範囲を示し、また、クロス状のハッチング部分は、噴射混合された範囲を撹拌部材2aにて撹拌混合した範囲を示す。
【0039】
まず、図13に示すように、ロッド4の先端部から削孔水を噴射しながら、所定の深さまで地盤Eを削孔する。このときの削孔水の噴射圧は、例えば、5MPaとしたが、この値に限定されるものではなく、第1のチェック弁4bが開く値よりも小さければよい。
【0040】
そして、図14に示すように、所定の深さまで削孔したら、鋼玉7をロッド4内に落とし込んでロッド4の先端を閉塞する。
【0041】
次に、図15に示すように、ロッド4内に薬材を供給し、ロッド4内の圧力を10MPaに維持すると、第1のチェック弁4bが開き、第1の噴射口4aから薬材が噴射される。このように、第1の噴射口4aから薬材を噴射しつつ、ロッド4を回転させながら引き上げることにより、ロッド4の周囲の地盤E内に薬材を噴射混合する。
【0042】
次に、図16に示すように、閉じている撹拌部材2aの下側に位置する撹拌翼2pの先端が、噴射混合された領域(図中の左下がり傾斜線のハッチング部分)の下端深度に到達するまでの距離だけロッド4を引き上げたら、回転及び引き上げを停止し、その後、ロッド4内の圧力を上昇させる。そして、ロッド4内の圧力が15MPaに至った時点で、ストッパー5bが解除される。
【0043】
その後も引き続き圧を上昇させ、ロッド4内の圧力が20MPaに達すると、図17に示すように、まず、第3のチェック弁2kが開いて撹拌翼2p及び撹拌翼2qが開き始め、さらに、ロッド4内の圧力が22MPaに達すると、第2のチェック弁2jも開いて第2の噴射口2bから薬材が噴射される。
【0044】
撹拌翼2p及び撹拌翼2qの長さは、第1の噴射口4aからの噴射撹拌の半径に概略等しく設定されている。
【0045】
撹拌部材2aの撹拌翼2p及び撹拌翼2qを開いた状態で、第1の噴射口4a及び第2の噴射口2bから薬材を噴射するとともに、ロッド4を回転させながら引き上げることにより、図18に示すように、地盤E内を撹拌部材2aよりも外側の大口径の範囲まで噴射混合するとともに、撹拌部材2aの範囲内の地盤Eを機械撹拌することができる。
【0046】
そして、ロッド4を引き上げながら、所定の範囲を地盤改良したら、ロッド4の回転を停止するとともに、ロッド4内への薬材の供給を停止する。ロッド4内への薬材の供給の停止により、ロッド4内の圧力が低下すると、図19に示すように、重量の重い撹拌翼2pが開いた状態から自重により自然に下方に回動すると同時に、連結材2cで連結された撹拌翼2qが上方に回動することにより、撹拌部材2aは閉じた状態となる。撹拌部材2aを閉じた状態にして、ロッド4を地上に引き上げる。
【0047】
上述した本実施形態によれば、ロッド4内に供給される薬材の圧力に応じて撹拌部材2aが回動するため、撹拌部材2aを回動させるための動力装置を新たに設けることなく、その薬材の圧力を調整することにより撹拌部材2aの回動動作を操作することができる。すなわち、撹拌部材2aを開きたいときは、ロッド4内に所定の圧力の薬材を供給することにより、撹拌部材2aを開くことができる。一方、開いた状態の撹拌部材2aを閉じたいときは、ロッド4内に薬材を供給しない又は供給する薬材の圧力を小さくすることにより、撹拌部材2aを閉じることができる。
【0048】
また、ロッド4の側面には、撹拌部材2aの回動にともなって連結材2cが回動するための切り欠き部2iが設けられていて、連結材2cはその切り欠き部2i内を回動するので、ロッド4の外周面からの連結材2cの突出量をごくわずかにすることができる。
【0049】
また、回動機構5は、それぞれストッパー5bを備えているので、圧力が所定の値以上の薬材をロッド4内に供給することにより、ストッパー5bを解除して撹拌部材2aを回動可能な状態にすることができる。したがって、地盤Eを掘削する作業時等の撹拌部材2aを回動させたくないときは、ロッド4内に薬材を供給しない又は供給する薬材をストッパー5bが作動する圧力よりも小さくすることにより、撹拌部材2aの回動を防止することができる。
【0050】
また、撹拌部材2aの撹拌翼2p及び撹拌翼2qがその突端部に第2の噴射口2bを備えているので、同じ噴射圧力でもより大口径の範囲まで薬材による噴射混合をすることができる。さらに、第1の噴射口4aからの噴射により噴射混合された地盤内を撹拌部材2aで撹拌することにより、撹拌部材2aの回転時の回転抵抗が低減されるため、撹拌部材2aを回転させるために必要な回転トルクは小さくてよい。これにより、地盤撹拌装置1本体を小型化することができる。
【0051】
また、ロッド径方向で異なる位置にある第1の噴射口4a及び第2の噴射口2bを備えていることにより、それぞれの噴射口からの薬材の噴射により地盤Eを切削する径が小さくてよいため、地盤Eへの薬材の注入量を少なくできる。これにより、排泥量も少なくなり、排泥処理に要する費用を低減できる。
【0052】
撹拌部材2aを閉じた状態にすると、ロッド4の外周面からの撹拌部材2aの突出量をごくわずかにすることができる。したがって、地表面から地盤Eに削孔された孔に、ロッド4を挿入する際に、撹拌部材2aが支障とならない。
【0053】
なお、第1〜第3のチェック弁4b、2j、2kや撹拌部材2aやストッパー5bの各作動圧は、上述したそれぞれの値に限定されるものではなく、現場条件に応じて設計等により適宜決定される。
【0054】
なお、本実施形態においては、撹拌部材2aを1段のみ設けた場合について説明したが、複数段設けてもよい。
【0055】
また、本実施形態においては、撹拌部材2aの突端部から噴射させる流体として薬材を用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、空気、窒素ガス等の気体や水等の液体やベントナイト泥水等の流動体でもよい。
【0056】
また、本実施形態においては、撹拌部材2aの突端部から噴射する流体を、この撹拌部材2aを回動させるための流体として用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、噴射する流体とは別の駆動用流体(例えば、空気や油)で撹拌部材2aを回動させてもよい。その場合には、ロッド4内に別系統の流路を設けて、その流路を介して撹拌部材2aの溝2e内に駆動用流体を供給すればよい。
【0057】
また、本実施形態においては、薬材を噴射可能な撹拌部材2aを用いた場合について説明したが、撹拌部材2aは、薬材を噴射することなく撹拌機能のみを有するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 地盤撹拌装置
2a 撹拌部材
2b 第2の噴射口
2c 連結材
2d 送給路
2e 溝
2f 一方の端面
2g 他方の端面
2i 切り欠き部
2j 第2のチェック弁
2k 第3のチェック弁
2m 凹部
2p 翼
2q 翼
4 ロッド
4a 第1の噴射口
4b 第1のチェック弁
4c 供給孔
4d 開閉孔
5 回動機構
5a 突起部
5b ストッパー
5c 穴
5d 突起体
5e ばね
5g パイロット孔
7 鋼玉
E 地盤
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤を撹拌するための地盤撹拌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤を撹拌する地盤撹拌工法として、例えば、特許文献1には、ロッドと、このロッドに取り付けられ、地中の任意の点で直径を拡大、縮小できる開閉翼とを備えた地盤撹拌装置を用いた工法が開示されている。この特許文献1に記載された工法では、撹拌翼を閉じた状態でロッドにより地盤を掘削して孔を形成し、所定の深度に到達したら撹拌翼を略水平に開いた状態でその先端から水を噴射しつつ、ロッドを回転させながら所定の距離だけ引き上げて、撹拌翼により地盤内を撹拌し、次に、引き上げた距離と同じ距離だけロッドを下降させた後、撹拌翼の先端から地盤を改良するための薬材を噴射しつつ、再び、ロッドを所定の距離だけ引き上げることにより、撹拌翼で地盤を撹拌する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−33334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された上記工法では、掘削した孔にロッドを挿入した状態で撹拌翼を開閉できることが必要である。
【0005】
そこで、本発明は、地盤に形成された孔に挿入した状態で撹拌翼を開閉可能な地盤撹拌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の地盤撹拌装置は、軸周りに回転可能なロッドと、
前記ロッドに回動可能に連結され、前記ロッドの径方向両側から突出する状態を取り得る撹拌部材と、
前記撹拌部材を、前記ロッドに沿った状態と、前記ロッドの径方向両側から突出した状態との間で、当該撹拌部材の両端部が同じ向きに回動するように駆動する回動機構と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の地盤撹拌装置によれば、ロッドに沿った状態と、ロッドの径方向両側から突出した状態との間で撹拌部材を回動させるための回動機構を備えているので、地盤撹拌装置を地盤に削孔された孔に挿入する際は、撹拌部材をロッドの外周面に沿うように近接させることにより、ロッドの外周面からの撹拌部材の突出量をごくわずかにすることができる。したがって、地盤に削孔された孔に、ロッドを挿入する際に、撹拌部材が支障とならない。また、地盤撹拌装置が所定の深度に到達したら、撹拌部材を回動させて、撹拌部材をロッドの径方向両側に突出した状態にすることにより、地盤を撹拌可能となる。さらに、撹拌作業が終了したら、撹拌部材を回動させて、撹拌部材を再びロッドに沿うように近接させることにより、孔内からロッドを引き上げる際に、撹拌部材が支障とならない。
【0008】
撹拌部材をロッドの径方向両側に突出した状態からロッドの長手方向に沿った状態に回動させる場合は、撹拌部材の一端側を下方へ、他端側を上方へ向かって同じ向きに回転させることにより、撹拌部材を閉じた状態にする。一方、撹拌部材をロッドに沿った状態からロッドの径方向に突出した状態に回動させる場合は、撹拌部材の一端側を上方へ、他端側を下方へ向かって同じ向き(ロッドの径方向両側に突出した状態からロッドの長手方向に沿った状態に回動させる向きとは反対)に回転させることにより、撹拌部材を開いた状態にする。
【0009】
また、本発明において、前記撹拌部材は一対の撹拌翼からなり、該一対の撹拌翼は、それらの基端部において、前記ロッドの径方向に対向する位置で前記ロッドに回動可能に連結されるとともに、該基端部から互いに反対向きに延びるように設けられ、
前記回動機構は、前記一対の撹拌翼の基端部同士を連結する連結材と、少なくとも一方の撹拌翼の基端部に設けられた円弧状の溝と、前記ロッドの外周面に設けられ、前記溝に嵌り込む突起部と、を含み、
前記突起部が前記溝に嵌り込むことで、前記少なくとも一方の撹拌翼が前記突起部にガイドされながら回動することにより、前記一対の撹拌翼は、それらの基端部から前記ロッドに沿って上下に延びる状態と、前記ロッドの径方向に互いに反対向きに突出する状態との間で同じ向きに回動することとすれば、撹拌翼をロッドの径方向に突出した状態とロッドに沿った状態との間で回動させることができる。
【0010】
また、本発明において、前記撹拌部材は、前記ロッドの径方向両側に突出した状態から一端側が自重により下方に回動するとともに、他端側が上方に回動することにより、前記ロッドの長手方向に沿った状態になることとすれば、重力を利用して容易に撹拌部材をロッドに沿った状態にすることができる。
【0011】
また、本発明において、前記撹拌部材は、一端が前記ロッドの外周に設けられた貫通穴に接続されるとともに、前記撹拌部材内を貫通するように形成され、前記ロッド内に供給される流体を送給可能な送給路と、
前記送給路を介して送給される前記流体を噴射するために、前記撹拌部材の突端部に設けられた噴射口と、を有することとすれば、撹拌部材の突端部から流体を噴射し、地盤内に流体を注入することができる。
【0012】
また、本発明において、前記ロッド内に供給される流体が前記ロッドの外周に設けられた貫通穴を介して前記溝内に流入し、前記流体の圧力に応じて、前記撹拌部材を前記ロッドの径方向両側に突出した状態と、前記ロッドに沿った状態との間で、回動させることとすれば、ロッド内に供給される流体の圧力に応じて撹拌部材が回動するため、撹拌部材を回動させるための動力装置を新たに設けることなく、その流体の圧力を調整することにより撹拌部材の回動動作を操作することができる。すなわち、撹拌部材をロッドの径方向に突出するように開きたいときは、ロッド内に所定の圧力の流体を供給することにより、撹拌部材を開くことができる。また、撹拌部材をロッドに沿うように閉じたいときは、ロッド内に流体を供給しない又は供給する流体の圧力を小さくすることにより、撹拌部材を閉じることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、地盤に形成された孔に挿入した状態で撹拌翼を開閉可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る地盤撹拌装置の撹拌部材を開いた状態を示す側面図である。
【図2】撹拌部材を閉じた状態を示す側面図である。
【図3】図2のA−A矢視図である。
【図4】図3のR矢視図で、閉じた状態の撹拌部材を示す図である。
【図5】図3のL矢視図で、閉じた状態の撹拌部材を示す図である。
【図6】図3のR矢視図で、撹拌翼の基端部付近の拡大図である。
【図7】図3のL矢視図で、撹拌翼の基端部付近の拡大図である。
【図8】図4のB−B矢視図である。
【図9】図4のB’−B’矢視図である。
【図10】開いた状態の撹拌部材を示す図である。
【図11】図10のC−C矢視図である。
【図12】ストッパーの拡大図である。
【図13】地盤撹拌装置を用いた施工手順を示す図である。
【図14】地盤撹拌装置を用いた施工手順を示す図である。
【図15】地盤撹拌装置を用いた施工手順を示す図である。
【図16】地盤撹拌装置を用いた施工手順を示す図である。
【図17】地盤撹拌装置を用いた施工手順を示す図である。
【図18】地盤撹拌装置を用いた施工手順を示す図である。
【図19】地盤撹拌装置を用いた施工手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る地盤撹拌装置の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
まず、全体の構成について説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る地盤撹拌装置1の撹拌部材2aを開いた状態を示す側面図である。また、図2は、撹拌部材2aを閉じた状態を示す側面図であり、図3は、図2のA−A矢視図である。
【0018】
図1〜図3に示すように、地盤撹拌装置1は、流体を噴射するための第1の噴射口4aを外周に有するロッド4と、第1の噴射口4aよりも先端側の位置においてロッド4に取り付けられた撹拌部材2aと、を備える。なお、本実施形態では、流体としてグラウト材である薬材を用いた。
【0019】
次に、ロッド4の構造について説明する。
【0020】
ロッド4の先端にはビットが取り付けられている。地盤E内にロッド4を挿入する際は、ロッド4を回転させるとともに、先端から水を噴射し、ビットで地盤Eを掘削する。
【0021】
第1の噴射口4aには、第1のチェック弁4bが取り付けられており、ロッド4内に供給される薬材の圧力が所定の値以上になると第1のチェック弁4bが開いて、薬材が第1の噴射口4aから噴射される。
【0022】
撹拌部材2aは、以下に示す構造となっている。
【0023】
図4及び図5は、それぞれ図3のR、L矢視図で、閉じた状態の撹拌部材2aを示す図であり、図6及び図7は、それぞれ図3のR、L矢視図で、撹拌翼2q、撹拌翼2pの基端部付近の拡大図である。また、図8及び図9は、それぞれ図4のB−B矢視図、B’−B’矢視図であり、図10は、開いた状態の撹拌部材2aを示す図である。そして、図11は、図10のC−C矢視図であり、図12は、ストッパー5bの拡大図である。
【0024】
図4〜図11に示すように、撹拌部材2aは、ロッド4の径方向に対向する位置に、互いに反対向きに延びるように設けられた撹拌翼2pと撹拌翼2qとを備え、これらの基端部同士が連結材2cで結合されている。本実施形態においては、撹拌翼2p及び撹拌翼2qとして、板状の鋼材を用いた。
【0025】
撹拌翼2p及び撹拌翼2qは、その基端部に設けられた表裏一対の円弧状の溝2eがガイドとなり、ロッド4の径方向に突出した状態(すなわち、開いた状態)と、ロッド4の長手方向に沿った状態(すなわち、閉じた状態)との間で回動可能である(回動するための機構については後述する)。
【0026】
撹拌翼2p及び撹拌翼2qが回動する際に、連結材2cが移動する範囲は、ロッド4が支障しないように、ロッド4の側面に切り欠き部2iが設けられている。
【0027】
撹拌部材2aの開閉は、開いた状態から、撹拌翼2pがその基端部を中心に下方に回動すると、連結材2cにて連結された撹拌翼2qが、同時にその基端部を中心に上方に回動することにより、それぞれが閉じた状態となる。撹拌翼2pは撹拌翼2qよりも重量が重いため、外力がかからない状態において、撹拌部材2aは、自重により閉じた状態となる。
【0028】
撹拌部材2aを開閉するための回動機構5は、撹拌翼2pと撹拌翼2qを連結する連結材2cと、ロッド4の外周面に設けられた突起部5aと、撹拌翼2p及び撹拌翼2qの基端部にそれぞれ設けられ、突起部5aが遊嵌可能な円弧状の溝2eと、ロッド4内と溝2e内とを連通する開閉孔4dに設置された第3のチェック弁2kと、ロッド4の外周に設けられ、撹拌翼2qをロッド4に仮固定するためのストッパー5bとから構成される。
【0029】
第3のチェック弁2kは、ロッド4内の薬材の圧力が所定の値以上になると開き、薬材が開閉孔4dを通じて溝2e内に供給される。
【0030】
ロッド4内の薬材が開閉孔4dを通過して溝2e内に供給されると、薬材の圧力が溝2eの一方の端面2fに作用することにより、撹拌翼2p及び撹拌翼2qが開く向きに回動する。
【0031】
撹拌翼2p及び撹拌翼2qが基端部を中心に回動して、突起部5aが溝2eの他方の端面2gに当接すると、撹拌翼2p及び撹拌翼2qは回動を停止し、その状態を維持する。このとき、撹拌翼2p及び撹拌翼2qは略水平状態である。本実施形態においては、撹拌翼2p及び撹拌翼2qの回動する角度範囲が90°になるように溝2eの周方向の長さを形成した。
【0032】
図12に示すように、ストッパー5bは、閉じた状態の撹拌翼2qが接するロッド4の外周部に形成された穴5c内に設置され、凸状でその先端部がロッド4の外周から外方に突出可能な突起体5dと、穴5cの底面と突起体5dとの間に設置されたばね5eとから構成されている。また、ロッド4内の圧力を穴5cに伝達するためのパイロット孔5gが設けられている。
【0033】
ロッド4内を通過する薬材の圧力が、所定の値よりも小さい場合は、ロッド4の外周面より外方に突出して撹拌翼2qの凹部2mに嵌合し、撹拌部材2aの回動を抑制する。一方、ロッド4内を通過する薬材の圧力が、所定の値以上になると、パイロット孔5g内を伝わった圧力により、ばね5eが縮んで突起体5dがロッド4の外周面より内方に引込んで、撹拌部材2aを回動可能な状態にする。
【0034】
撹拌翼2p及び撹拌翼2qの先端には、それぞれ薬材を噴射するための第2の噴射口2bが設けられている。また、撹拌翼2p及び撹拌翼2qには、それぞれロッド4の外周に設けられた供給孔4cを介して供給される薬材を第2の噴射口2bへ送給するための送給路2dが設けられている。
【0035】
供給孔4cには、第2のチェック弁2jが取り付けられていて、ロッド4内に供給される薬材の圧力が所定の値以上になると第2のチェック弁2jが開き、薬材が送給路2dに供給される。
【0036】
ロッド4の回転にともなって撹拌翼2p及び撹拌翼2qを開いた状態で回転させながら、第2の噴射口2bから薬材を噴射することで、第1の噴射口4aからの薬材で噴射混合されたロッド4の周囲の地盤Eを強制撹拌するとともに、さらに外周部分を噴射混合することができる。
【0037】
次に、地盤撹拌装置1を用いた地盤改良を説明する。
【0038】
図13〜図19は、地盤撹拌装置1を用いた施工手順を示す図である。これらの図において、左下り傾斜線のハッチング部分は、薬材にて噴射混合した範囲を示し、また、クロス状のハッチング部分は、噴射混合された範囲を撹拌部材2aにて撹拌混合した範囲を示す。
【0039】
まず、図13に示すように、ロッド4の先端部から削孔水を噴射しながら、所定の深さまで地盤Eを削孔する。このときの削孔水の噴射圧は、例えば、5MPaとしたが、この値に限定されるものではなく、第1のチェック弁4bが開く値よりも小さければよい。
【0040】
そして、図14に示すように、所定の深さまで削孔したら、鋼玉7をロッド4内に落とし込んでロッド4の先端を閉塞する。
【0041】
次に、図15に示すように、ロッド4内に薬材を供給し、ロッド4内の圧力を10MPaに維持すると、第1のチェック弁4bが開き、第1の噴射口4aから薬材が噴射される。このように、第1の噴射口4aから薬材を噴射しつつ、ロッド4を回転させながら引き上げることにより、ロッド4の周囲の地盤E内に薬材を噴射混合する。
【0042】
次に、図16に示すように、閉じている撹拌部材2aの下側に位置する撹拌翼2pの先端が、噴射混合された領域(図中の左下がり傾斜線のハッチング部分)の下端深度に到達するまでの距離だけロッド4を引き上げたら、回転及び引き上げを停止し、その後、ロッド4内の圧力を上昇させる。そして、ロッド4内の圧力が15MPaに至った時点で、ストッパー5bが解除される。
【0043】
その後も引き続き圧を上昇させ、ロッド4内の圧力が20MPaに達すると、図17に示すように、まず、第3のチェック弁2kが開いて撹拌翼2p及び撹拌翼2qが開き始め、さらに、ロッド4内の圧力が22MPaに達すると、第2のチェック弁2jも開いて第2の噴射口2bから薬材が噴射される。
【0044】
撹拌翼2p及び撹拌翼2qの長さは、第1の噴射口4aからの噴射撹拌の半径に概略等しく設定されている。
【0045】
撹拌部材2aの撹拌翼2p及び撹拌翼2qを開いた状態で、第1の噴射口4a及び第2の噴射口2bから薬材を噴射するとともに、ロッド4を回転させながら引き上げることにより、図18に示すように、地盤E内を撹拌部材2aよりも外側の大口径の範囲まで噴射混合するとともに、撹拌部材2aの範囲内の地盤Eを機械撹拌することができる。
【0046】
そして、ロッド4を引き上げながら、所定の範囲を地盤改良したら、ロッド4の回転を停止するとともに、ロッド4内への薬材の供給を停止する。ロッド4内への薬材の供給の停止により、ロッド4内の圧力が低下すると、図19に示すように、重量の重い撹拌翼2pが開いた状態から自重により自然に下方に回動すると同時に、連結材2cで連結された撹拌翼2qが上方に回動することにより、撹拌部材2aは閉じた状態となる。撹拌部材2aを閉じた状態にして、ロッド4を地上に引き上げる。
【0047】
上述した本実施形態によれば、ロッド4内に供給される薬材の圧力に応じて撹拌部材2aが回動するため、撹拌部材2aを回動させるための動力装置を新たに設けることなく、その薬材の圧力を調整することにより撹拌部材2aの回動動作を操作することができる。すなわち、撹拌部材2aを開きたいときは、ロッド4内に所定の圧力の薬材を供給することにより、撹拌部材2aを開くことができる。一方、開いた状態の撹拌部材2aを閉じたいときは、ロッド4内に薬材を供給しない又は供給する薬材の圧力を小さくすることにより、撹拌部材2aを閉じることができる。
【0048】
また、ロッド4の側面には、撹拌部材2aの回動にともなって連結材2cが回動するための切り欠き部2iが設けられていて、連結材2cはその切り欠き部2i内を回動するので、ロッド4の外周面からの連結材2cの突出量をごくわずかにすることができる。
【0049】
また、回動機構5は、それぞれストッパー5bを備えているので、圧力が所定の値以上の薬材をロッド4内に供給することにより、ストッパー5bを解除して撹拌部材2aを回動可能な状態にすることができる。したがって、地盤Eを掘削する作業時等の撹拌部材2aを回動させたくないときは、ロッド4内に薬材を供給しない又は供給する薬材をストッパー5bが作動する圧力よりも小さくすることにより、撹拌部材2aの回動を防止することができる。
【0050】
また、撹拌部材2aの撹拌翼2p及び撹拌翼2qがその突端部に第2の噴射口2bを備えているので、同じ噴射圧力でもより大口径の範囲まで薬材による噴射混合をすることができる。さらに、第1の噴射口4aからの噴射により噴射混合された地盤内を撹拌部材2aで撹拌することにより、撹拌部材2aの回転時の回転抵抗が低減されるため、撹拌部材2aを回転させるために必要な回転トルクは小さくてよい。これにより、地盤撹拌装置1本体を小型化することができる。
【0051】
また、ロッド径方向で異なる位置にある第1の噴射口4a及び第2の噴射口2bを備えていることにより、それぞれの噴射口からの薬材の噴射により地盤Eを切削する径が小さくてよいため、地盤Eへの薬材の注入量を少なくできる。これにより、排泥量も少なくなり、排泥処理に要する費用を低減できる。
【0052】
撹拌部材2aを閉じた状態にすると、ロッド4の外周面からの撹拌部材2aの突出量をごくわずかにすることができる。したがって、地表面から地盤Eに削孔された孔に、ロッド4を挿入する際に、撹拌部材2aが支障とならない。
【0053】
なお、第1〜第3のチェック弁4b、2j、2kや撹拌部材2aやストッパー5bの各作動圧は、上述したそれぞれの値に限定されるものではなく、現場条件に応じて設計等により適宜決定される。
【0054】
なお、本実施形態においては、撹拌部材2aを1段のみ設けた場合について説明したが、複数段設けてもよい。
【0055】
また、本実施形態においては、撹拌部材2aの突端部から噴射させる流体として薬材を用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、空気、窒素ガス等の気体や水等の液体やベントナイト泥水等の流動体でもよい。
【0056】
また、本実施形態においては、撹拌部材2aの突端部から噴射する流体を、この撹拌部材2aを回動させるための流体として用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、噴射する流体とは別の駆動用流体(例えば、空気や油)で撹拌部材2aを回動させてもよい。その場合には、ロッド4内に別系統の流路を設けて、その流路を介して撹拌部材2aの溝2e内に駆動用流体を供給すればよい。
【0057】
また、本実施形態においては、薬材を噴射可能な撹拌部材2aを用いた場合について説明したが、撹拌部材2aは、薬材を噴射することなく撹拌機能のみを有するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 地盤撹拌装置
2a 撹拌部材
2b 第2の噴射口
2c 連結材
2d 送給路
2e 溝
2f 一方の端面
2g 他方の端面
2i 切り欠き部
2j 第2のチェック弁
2k 第3のチェック弁
2m 凹部
2p 翼
2q 翼
4 ロッド
4a 第1の噴射口
4b 第1のチェック弁
4c 供給孔
4d 開閉孔
5 回動機構
5a 突起部
5b ストッパー
5c 穴
5d 突起体
5e ばね
5g パイロット孔
7 鋼玉
E 地盤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を撹拌するための地盤撹拌装置であって、
軸周りに回転可能なロッドと、
前記ロッドに回動可能に連結され、前記ロッドの径方向両側から突出する状態を取り得る撹拌部材と、
前記撹拌部材を、前記ロッドに沿った状態と、前記ロッドの径方向両側から突出した状態との間で、当該撹拌部材の両端部が同じ向きに回動するように駆動する回動機構と、を備えることを特徴とする地盤撹拌装置。
【請求項2】
前記撹拌部材は一対の撹拌翼からなり、該一対の撹拌翼は、それらの基端部において、前記ロッドの径方向に対向する位置で前記ロッドに回動可能に連結されるとともに、該基端部から互いに反対向きに延びるように設けられ、
前記回動機構は、前記一対の撹拌翼の基端部同士を連結する連結材と、少なくとも一方の撹拌翼の基端部に設けられた円弧状の溝と、前記ロッドの外周面に設けられ、前記溝に嵌り込む突起部と、を含み、
前記突起部が前記溝に嵌り込むことで、前記少なくとも一方の撹拌翼が前記突起部にガイドされながら回動することにより、前記一対の撹拌翼は、それらの基端部から前記ロッドに沿って上下に延びる状態と、前記ロッドの径方向に互いに反対向きに突出する状態との間で同じ向きに回動することを特徴とする請求項1に記載の地盤撹拌装置。
【請求項3】
前記撹拌部材は、前記ロッドの径方向両側に突出した状態から一端側が自重により下方に回動するとともに、他端側が上方に回動することにより、前記ロッドの長手方向に沿った状態になることを特徴とする請求項1又は2に記載の地盤撹拌装置。
【請求項4】
前記撹拌部材は、
一端が前記ロッドの外周に設けられた貫通穴に接続されるとともに、前記撹拌部材内を貫通するように形成され、前記ロッド内に供給される流体を送給可能な送給路と、
前記送給路を介して送給される前記流体を噴射するために、前記撹拌部材の突端部に設けられた噴射口と、を有することを特徴とする請求項1〜3のうち何れか一項に記載の地盤撹拌装置。
【請求項5】
前記ロッド内に供給される流体が前記ロッドの外周に設けられた貫通穴を介して前記溝内に流入し、前記流体の圧力に応じて、前記撹拌部材を前記ロッドの径方向両側に突出した状態と、前記ロッドに沿った状態との間で、回動させることを特徴とする請求項1〜4のうち何れか一項に記載の地盤撹拌装置。
【請求項1】
地盤を撹拌するための地盤撹拌装置であって、
軸周りに回転可能なロッドと、
前記ロッドに回動可能に連結され、前記ロッドの径方向両側から突出する状態を取り得る撹拌部材と、
前記撹拌部材を、前記ロッドに沿った状態と、前記ロッドの径方向両側から突出した状態との間で、当該撹拌部材の両端部が同じ向きに回動するように駆動する回動機構と、を備えることを特徴とする地盤撹拌装置。
【請求項2】
前記撹拌部材は一対の撹拌翼からなり、該一対の撹拌翼は、それらの基端部において、前記ロッドの径方向に対向する位置で前記ロッドに回動可能に連結されるとともに、該基端部から互いに反対向きに延びるように設けられ、
前記回動機構は、前記一対の撹拌翼の基端部同士を連結する連結材と、少なくとも一方の撹拌翼の基端部に設けられた円弧状の溝と、前記ロッドの外周面に設けられ、前記溝に嵌り込む突起部と、を含み、
前記突起部が前記溝に嵌り込むことで、前記少なくとも一方の撹拌翼が前記突起部にガイドされながら回動することにより、前記一対の撹拌翼は、それらの基端部から前記ロッドに沿って上下に延びる状態と、前記ロッドの径方向に互いに反対向きに突出する状態との間で同じ向きに回動することを特徴とする請求項1に記載の地盤撹拌装置。
【請求項3】
前記撹拌部材は、前記ロッドの径方向両側に突出した状態から一端側が自重により下方に回動するとともに、他端側が上方に回動することにより、前記ロッドの長手方向に沿った状態になることを特徴とする請求項1又は2に記載の地盤撹拌装置。
【請求項4】
前記撹拌部材は、
一端が前記ロッドの外周に設けられた貫通穴に接続されるとともに、前記撹拌部材内を貫通するように形成され、前記ロッド内に供給される流体を送給可能な送給路と、
前記送給路を介して送給される前記流体を噴射するために、前記撹拌部材の突端部に設けられた噴射口と、を有することを特徴とする請求項1〜3のうち何れか一項に記載の地盤撹拌装置。
【請求項5】
前記ロッド内に供給される流体が前記ロッドの外周に設けられた貫通穴を介して前記溝内に流入し、前記流体の圧力に応じて、前記撹拌部材を前記ロッドの径方向両側に突出した状態と、前記ロッドに沿った状態との間で、回動させることを特徴とする請求項1〜4のうち何れか一項に記載の地盤撹拌装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−275713(P2010−275713A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126926(P2009−126926)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
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