説明

地盤改良工法

【課題】地中固結体を造成する際に、切削、改良が不要な領域を出来る限り切削、改良しないで済む様な地盤改良工法の提供。
【解決手段】固結体を造成して改良するべき領域までボーリング孔を削孔する工程と、削孔されたボーリング孔に噴射装置(10)を挿入する工程と、同一方向に回転する噴射装置(10)から改良材(固化材、地盤改良材)を包含する噴流(J1、J11)を噴射して、原位置土を切削して、改良材と原位置土を混合して、攪拌することにより改良する工程を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば地中に固結体を造成して、地盤を改良する技術に関する。より詳細には、本発明は、施工するべき地中の領域に地盤改良材や固化材を包含する噴流を噴射して、原位置土を切削すると共に、原位置土と地盤改良材や固化材とを混合、攪拌して、固結体を造成する地盤改良工法に関する。
【背景技術】
【0002】
係る従来の地盤改良工法では、例えば、所定の深度までボーリング孔を削孔し、ボーリング孔に噴射装置を挿入し、地盤改良材や固化材を包含する噴流を噴射しつつ噴射装置を回転する。これにより、噴流によって原位置土を切削すると共に、原位置土と地盤改良材や固化材とを混合、攪拌する。そして、噴射装置を地上側に引き上げれば、原位置土と地盤改良材や固化材とが混合した後に固結して、断面円形の円柱形状の地中固結体が造成される。
連続した壁状の地中固結体を造成する場合には、図19で示す様に、造成しようとする地中壁W(図19では点線で示す)の長さ方向に沿って、上述した様な態様で造成される円柱状地中固結体を複数造成して、その一部を重複させれば良い。
隣接する円柱状地中固結体が重複する範囲については、地中壁Wにおいて必要とされる幅寸法tを確保する様に決定される。
【0003】
ここで、図19において、地中壁Wに要求される幅寸法tを確保するために、造成される円柱状地中固結体においては、点線D1、D2よりも(地中壁Wの)外側の領域LAが存在している。
係る領域LAが存在しなければ、特に重複している部分において、必要な幅寸法tが確保できなくなってしまうからである。
しかし、その様な領域LAは、地中壁Wに要求される幅寸法t或いは強度に対して、過剰に改良されている部分である。
換言すれば、図19における領域LAは、地中壁Wの造成に当たって、切削、改良することが無駄になってしまう領域である。
【0004】
切削、改良することが無駄になってしまう領域LAにおける原位置土の切削と改良を行なわないようにするため、切削、改良される断面形状を非円形にする技術も提案されている。
しかし、係る技術は非常に複雑な構成を具備する機器及び高度な制御技術を必要とする場合が多い。
そのため、図19における領域LAの様な切削、改良が不要な領域に相当する地盤については、出来る限り切削、改良を行なわない技術が求められている。
しかしながら、現時点では、その様な要請に応えることが出来る技術は提案されていない。
【0005】
その他の従来技術として、削孔工程で高圧ジェットを噴射して、先行する削孔工程で地盤が緩んだ領域を包含する範囲を切削して、連続地中壁を造成する技術が提案されている(特許文献1参照)。
係る技術(特許文献1)は有用な技術ではあるが、上述した様な問題を解決するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−144720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、地中固結体を造成する際に、切削、改良が不要な領域を出来る限り切削、改良しないで済む様な地盤改良工法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の地盤改良工法は、
地盤を改良するべき領域までボーリング孔を削孔する工程と、
削孔されたボーリング孔に噴射装置(モニタ10)を挿入する工程と、
同一方向に回転する噴射装置(10)から改良材(例えば、固化材、硬化材、注入材、地盤改良材)を包含する噴流(J1、J1A)を噴射して、原位置土を切削し、改良材と原位置土を混合して、攪拌することにより改良する工程を含み、
当該改良する工程では、造成するべき地中固結体(K、W)の長手方向について地盤を改良する場合(例えば、図1における領域1、1Aの改良)には、改良材を包含する噴流(J1、J1A)の切削距離(到達距離)を長くして、造成するべき地中固結体(K)の長手方向と直交する方向に地盤を改良する場合(例えば、図1における領域3、3Aの改良)には、改良材を包含する噴流(J1、J1A)の切削距離(到達距離)を短くすることを特徴としている。
ここで、前記改良材を包含する噴流(J1、J1A)とは、改良材のみを包含する噴流や、改良材の噴流と高圧エアの噴流とを組み合わせている場合等を含む趣旨の文言である。
【0009】
本発明において、前記改良する工程では、噴射装置(10)の回転速度(角速度v1〜v3等)を増減して、噴流の切削距離(到達距離)を調整するのが好ましい。
具体的には、噴射装置(10)の回転速度(角速度v1〜v3等)を遅くして、噴流の切削距離(到達距離)を長くする工程と、
噴射装置(10)の回転速度(角速度v1〜v3等)を速くして、噴流(J1、J1A)の切削距離(到達距離)を短くする工程を備えているのが好ましい。
【0010】
本発明において、噴射装置(10)から噴射される前記噴流(J1、J1A)の噴射方向が、造成するべき地中固結体(K)の長手方向(長手方向に対して多少傾斜している範囲をも包含する)であり、改良材を包含する噴流(J1、J1A)の切削距離(到達距離)が最長である工程(例えば、図1の1a)と、
噴射装置(10)から噴射される前記噴流(J1、J1A)の噴射方向が、造成するべき地中固結体(K)の長手方向とそれに直交する方向との中間であり、改良材を包含する噴流(J1、J1A)の切削距離(到達距離)が最大切削距離よりも短い工程(例えば、図1の1b及び1d)と、
噴射装置(10)から噴射される前記噴流(J1、J1A)の噴射方向が、造成するべき地中固結体(K)の長手方向と直交する方向(長手方向に直交する方向に対して多少傾斜している範囲をも包含する)であり、改良材を包含する噴流の切削距離(到達距離)が最短である工程(例えば、図1の1c)、
を含んでいるのが好ましい。
【0011】
或いは本発明において、前記改良する工程では、噴射速度及び/又は噴射圧力及び/又は噴射流量を増減して、噴流の切削距離(到達距離)を調節するのが好ましい。
具体的には、前記改良する工程では、噴射速度及び/又は噴射圧力及び/又は噴射流量を増大して、噴流の切削距離(到達距離)を長くする工程と、
噴射速度及び/又は噴射圧力及び/又は噴射流量を減少して、噴流の切削距離(到達距離)を短くする工程を備えているのが好ましい。
【0012】
係る態様(例えば、図1の1a〜1d)では、改良材を包含する噴流(J1、J1A)の切削距離(到達距離)は3通り(r1〜r3)となる。
ただし、改良材を包含する噴流の切削距離(到達距離)を4通り以上にすることが可能である。
【0013】
また本発明において、噴射装置(10)から相互に反対となる方向に2本の噴流(J1、J1A)が噴射される(2本の噴流J1、J1Aが直線状に配置される)のが好ましい(例えば、図1、図2)。
【0014】
或いは、本発明の地盤改良工法は、
固結体(K)を造成して改良するべき領域までボーリング孔を削孔する工程と、
削孔されたボーリング孔に噴射装置(モニタ10)を挿入する工程と、
同一方向に回転する噴射装置(10)から改良材(例えば固化材、硬化材、注入材、地盤改良材)を包含する噴流(J1、J1A)を噴射して、原位置土を切削して、改良材と原位置土を混合して、攪拌することにより改良する工程を含み、
当該改良する工程では、同一方向に回転する噴射装置(10)から4本の噴流(J1、J1A、J11、J11A)が噴射され、4本の噴流(J1、J1A、J11、J11A)の隣接する噴流の噴射方向が90°(対角線の交わる角度)ずつ異なっており、
噴射装置(10)を回転するに際して、造成するべき地中固結体(K)の対角線方向については改良材を包含する噴流(J1、J1A、J11、J11A)の切削距離(到達距離)を長くして、造成するべき地中固結体(K)の辺方向(対角線間の領域を改良する場合)については、改良材を包含する噴流(J1、J1A、J11、J11A)の切削距離(到達距離)を短くすることを特徴としている(図13)。
【発明の効果】
【0015】
上述する構成を具備する本発明によれば、造成するべき地中固結体(K)の長手方向については、改良材を包含する噴流(J1、J1A)の切削距離(到達距離)を長くして、造成するべき地中固結体(K)の長手方向と直交する方向については、前記噴流(J1、J1A)の切削距離を短くしている。
そのため、改良された領域の断面形状は円形から長方形状に近い形状となり、切削、改良が不要な領域について、原位置土を切削して改良してしまう面積が減少する。その結果、改良材(固化材)の使用量が減少し、無駄な作業(不要な領域の改良)が省略されるので、作業効率が向上して、施工コストを節約することが出来る。
ここで、本発明では噴射装置(10)の回転方向は同一であり、切削距離(到達距離)は増減しても、噴射装置(10)の回転方向を途中で変更する必要が無い。従って、既存の地盤改良用の機器を可能な限り適用して実施することが可能であり、噴射装置(10)の回転方向を逆転するための機構を別途設ける必要が無い。そのため、導入コストの高騰化を防止出来る。
【0016】
さらに、造成するべき地中固結体(K)の長手方向と直交する方向との間の領域を改良する際には、噴流(J1、J1A)の到達距離を、長手方向における到達距離と、長手方向に直交する方向における到達距離の間の到達距離にすれば、改良された領域の断面形状は、さらに長方形状に近くなり、不要な領域であるにも拘らず切削して改良してしまう面積が、さらに減少する。
そのため、改良材(固化材)の使用量がさらに節約され、無駄な作業(不要な領域の改良)がより一層省略される。
【0017】
また、本発明によれば、噴射装置(10)から2本の噴流(J1、J1A)が噴射する場合には、当該噴射装置(10)が半回転すれば上述した形状(例えば、図1の1dで示す形状)に切削され、改良される。
そのため、改良に時間が掛かり過ぎてしまうことは無く、従来の円柱状地中固結体を造成する場合と同様に、効率的な地盤改良が可能である。
ここで、地盤が硬く、噴流による切削が困難な場合であっても、噴流による切削を繰り返すことにより、地盤を上述した形状に切削し、改良することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態の施工手順を平面的に示す工程図である。
【図2】第1実施形態で用いられる噴射装置を示す図である。
【図3】第1実施形態で用いられる噴射装置の回転速度を変化させる圧油供給機構を示すブロック図である。
【図4】第1実施形態で用いられる噴射装置の回転速度を切り換える制御を示すフローチャートである。
【図5】図4の制御の一例を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態の作用効果を示す説明図である。
【図7】第1実施形態において、図1とは異なる施工例を平面的に示す工程図である。
【図8】本発明の第2実施形態を平面的に示す工程図である。
【図9】本発明の第3実施形態を示す平面図である。
【図10】本発明の第4実施形態を示す平面図である。
【図11】本発明の第5実施形態を示す平面図である。
【図12】本発明の第6実施形態を示す説明図である。
【図13】本発明の第7実施形態を垂直断面で示す説明図である。
【図14】本発明の第7実施形態を示す平面図である。
【図15】本発明の第8実施形態を平面的に示す工程図である。
【図16】本発明の第9実施形態を平面的に示す工程図である。
【図17】本発明の第10実施形態を平面的に示す工程図である。
【図18】本発明の第11実施形態の施工手順を示すフローチャートである。
【図19】従来技術の問題点を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1〜図5は、本発明の第1実施形態を示している。
第1実施形態では、地中固結体として連続壁を造成している。
【0020】
第1実施形態においては、図1で示す工程を施工する以前の段階で、図示しないボーリング孔を削孔し、当該ボーリング孔から図2で示す様な噴射装置10を挿入する。そして、噴射装置10を所定深度まで挿入したならば、噴射装置10のノズル10nから一対の噴流J1、J1Aを噴射している。ここで、噴流J1、J1Aの噴射速度、噴射圧力、噴射流量は、一定の値に保たれている。
一対の噴流J1、J1Aは、水平面について(図1における工程(1a)〜(1e)参照)、噴射装置10に対して点対称となる様に噴射される。換言すれば、一対の噴流J1、J1Aと噴射装置10は、常に一直線になっている。
【0021】
図1とその他の図面を参照して説明される実施形態において、噴射装置10から噴射される噴流J1、J1Aは、固化材(例えば、セメントミルク)の噴流と高圧エアの噴流とを組み合わせている。例えば噴流J1、J1Aは、固化材の噴流を高圧エアの噴流で包囲する態様で、地盤中に噴射される。
ただし、固化材のみで噴流を構成しても良い。
【0022】
図1において、噴流J1、J1Aを噴射する工程は、図1の工程(1a)、(1b)、(1c)、(1d)、(1e)の順序で行われる。
図1により平面で示されている工程(1a)〜(1d)では、噴流J1Aで切削された領域1A、2A、3A、4Aには添え字「A」が付されており、噴流J1で切削された領域1、2、3、4には、添え字「A」は付されていない。
また、図1で示す工程(1a)〜(1d)において、符号v1、v2、v3は、噴射装置10(図2参照)が回転する角速度を示しており、
v1<v2<v3
となっている。
なお、工程(1a)〜(1d)において、改良が行なわれている領域(ハッチングを付している領域)の中央に噴射装置10が位置している。ただし、図1では、噴射装置10の図示は省略している。
図1において、改良が行なわれている領域については、ハッチングを施して示している。
【0023】
図1の工程(1a)では、噴射装置10から噴射される噴流J1、J1Aにより、第1の領域1、1A、すなわち、点11〜点12までの半径r1の扇状の領域と、点1A1〜点1A2までの半径r1の扇状の領域における地盤を切削し、固化材と混合して、改良する。
領域1、1Aの中心角度は符号θ1で示されている。ここで、領域1、1Aは、「造成するべき地中固結体の長手方向」における領域に相当する。
第1の領域1、1Aを改良する工程(1a)では、噴射装置10の回転角速度はv1である。
図1の工程(1a)において、符号tは、築造するべき連続壁で必要とされる厚さを示している。
【0024】
領域1、1Aの改良を行った後(工程1aの後)、図1の工程(1b)において、噴射装置10の回転を角速度v2として、噴流J1、J1Aにより、領域2、2Aを改良する。
工程(1b)において、領域2の中心角度は、符号θ2で示されている。
噴射装置10の回転角速度v1、v2は、v1<v2である。そのため、工程(1b)においては、円周方向(矢印R方向)の円周方向の単位面積(単位領域)当たり、噴流J1、J1Aによる改良が行なわれる時間は、工程(1a)に比較して短くなる。そのため、領域2、2Aにおいて、噴流J1、J1Aによる切削距離は、領域1、1Aに比較して短くなる。そして、領域2、2Aでは、半径方向の長さ(噴流J1、J1Aの到達距離)r2は、領域1、1Aの半径方向の長さr1よりも短い(r2<r1)。
【0025】
領域2、2Aの改良を行なった後、図1の工程(1c)では、噴射装置10を角速度v3で回転して、領域3、3Aを改良する。ここで、領域3、3Aは、「造成するべき地中固結体の長手方向と直交する方向」における領域に相当する。
図1の工程(1c)における領域3の中心角度は、符号θ3で示されている。
噴射装置10の角速度v2、v3は、v2<v3となっている。
【0026】
工程(1b)で述べた通り、円周方向の単位面積(単位領域)当たりについて、噴流J1、J1Aによって地盤が切削される時間は、角速度が速いほど短くなり、切削距離は短縮される。
したがって、領域3、3Aの半径方向の長さ(噴流J1、J1Aの到達距離)r3は、領域2、2Aの半径方向の長さr2よりも短くなっている。
【0027】
領域3、3Aの改良を行った後、工程(1d)では、工程(1c)で改良された領域3、3Aと、工程(1a)で改良された領域1、1Aとの間の領域4、4Aの改良を行なう。領域4の中心角度は符号θ4で示されている。
工程(1d)では、噴射装置10の回転は角速度v2であり、工程(1b)の場合と等しい角速度である。ここで、前述したとおり、噴射装置10の回転角速度v1〜v3の大小関係は、v1<v2<v3である。
領域4、4Aの半径方向の長さ(r2:噴流J1、J1Aの到達距離)は、領域2、2Aの半径方向長さr2と等しく、領域3、3Aの半径方向の長さr3よりも長く、領域1、1Aの半径方向長さr1よりも短い。
【0028】
図1、図2で説明した第1実施形態によれば、噴射装置10は同一方向(図1では符号Rの方向)にのみ回転すれば良く、噴射装置10の正転、逆転を変更する必要がない。
噴射装置10の回転方向が常に同一方向であり、逆転はさせないので、噴射装置10の回転方向を逆転するための機構を別途設ける必要が無く、既存の地盤改良用の機器(噴射装置その他)を使用することが可能である。そのため、導入コストの高騰化を防止出来る。
図2で示すように、噴射装置10からは一対の噴流J1、J1Aが(2方向へ)噴射される。そして噴射装置10が半回転すれば、図1の工程(1a)〜工程(1d)で示す改良が行なわれて、領域1、1A、2、2A、3、3A、4、4Aの改良が行なわれる。
ここで、固い地盤であれば、噴射装置10が半回転しても、一対の噴流J1、J1Aが図1(1a)〜(1d)で示す半径方向距離r1、r2、r3まで到達せず、領域1、1A、2、2A、3、3A、4、4Aの改良が完了しない恐れがある。係る場合には、上述した態様にて、噴射装置10をさらに回転すれば良い。換言すれば、噴射装置10を1回点以上回転することにより噴流による切削を繰り返し、以って、地盤を上述した形状に切削し、改良することが出来る。
【0029】
図1の(1a)〜(1d)で示す工程により、領域1、1A、2、2A、3、3A、4、4Aの改良が完了したならば、噴射装置10を所定深度分だけ引き上げる。
所定深度分だけ引き上げたならば、図1の(1a)〜(1d)で説明した工程を繰り返して、深度方向の所定の領域について、図1の(1d)で示す様な平面形状の柱状固結体として、地盤を改良する。
ここで、噴射装置10の引き上げ量は、改良するべき地盤の性質や施工条件により、ケース・バイ・ケースで決定される。
【0030】
深度方向の所定の領域について図1の工程(1d)で示す様な平面形状の柱状固結体として地盤を改良したならば(図1の1eで示す領域K1)、造成するべき連続壁の他の部分(例えば、図1の1eにおける領域K2)について、図1の(1a)〜(1d)で示す工程を順次繰り返して、改良された領域を鉛直方向に延伸する。
図1の(1e)で示すように、改良された部分の間の領域(図1の1eにおける領域K3)についても、図1の(1a)〜(1d)で示す工程を順次繰り返して、改良された領域を横方向(水平方向)に延長する。
これにより、連続壁Wを造成する。
【0031】
図1の(1a)〜(1d)を参照して説明した様に、噴流J1、J1Aを噴射しつつ回転する噴射装置10(図2参照)について、同一方向へ回転し、所定の回転角度だけ回転した時に回転速度(角速度)を変化させるための構成が、図3、図4で例示されている。
図3は、噴射装置10を回転するモータ20の回転速度を制御する構成を示している。
【0032】
図3、図4において、図1の(1a)〜(1d)における角速度v1、v2、v3は、改良するべき地盤の性質や施工条件により、ケース・バイ・ケースである。
例えば、噴射装置10の角速度が「v1」の場合(図1において中心角θ1の範囲)に対応するモータ20の回転数が3rpm、噴射装置10の角速度が「v2」の場合(図1において中心角θ2、θ4の範囲)に対応するモータ20の回転数が6rpm、噴射装置10の角速度が「v3」の場合(図1において中心角θ3の範囲)に対応するモータ20の回転数が10rpmとして、以下に説明する。
【0033】
図3において、機構全体を符号101で示す噴射装置回転制御機構は、モータ20、回転数センサ(例えば、ロータリエンコーダ)22、回転伝達機構24、制御手段(コントロールユニット)30を備えている。
モータ20は、インバータで制御される電動モータ、精密な制御が可能なステッピングモータ、油圧モータ、その他が適用可能である。
モータ20の図示を省略した回転軸は、回転伝達機構24を介して、噴射装置10の回転軸10Rに接続し、噴射装置10を回転する様に構成されている。なお、回転伝達機構24については、公知・既存の回転伝達機構を適宜使用出来る。
なお、回転数センサ22は、ロータリエンコーダに限定されるものではなく、その他の回転センサを使用することも可能である。
【0034】
コントロールユニット30は、インターフェース30I−1、30I−2、回転角決定ブロック32、比較ブロック34、回転速度決定ブロック、回転速度制御信号発生ブロック38を備えている。
回転角決定ブロック32には、信号伝達ラインSL−1及びインターフェース30I−1を介して回転数センサ22の検出結果が伝達される。それと共に、計時手段(例えばタイマー)40からの計時信号が入力される。
回転角決定ブロック32は、入力された検出結果と計時信号に基づいて、噴射装置10の回転角(回転量)を演算して、噴射装置10から噴射される噴流J1、J1Aの位置(図1の矢印R方向位置:噴射装置10の回転量:図1の1aにおいて、点11と点1A2とを結ぶ直線に対する噴流J1、J1Aが形成する角度)を決定する機能を有している。
【0035】
比較ブロック34には、回転角決定ブロック32で決定された噴射装置10の回転角と、記憶ブロック42に記憶された噴射装置10の角度(回転速度を変更するべき位置の角度:例えば、図1の1aにおいて、点11と点1A2とを結ぶ直線に対する噴流J1、J1Aが形成する角度θ1〜θ4)が入力されて、両者が比較される。
比較ブロック34で比較することにより、噴射装置10の回転角が、回転速度を変更するべき位置に対応する角度に到達したか否かを判断する。換言すれば、比較ブロック34は、噴射装置10が回転速度を変更するべき位置に到達したか否かを判断する。
【0036】
比較ブロック34の比較結果は、回転速度決定ブロック36に入力される。すなわち、回転速度決定ブロック36では、図1の1aにおいて、点11と点1A2とを結ぶ直線に対する噴流J1、J1Aが形成する角度が、θ1の範囲内であれば、噴射装置10の角速度が「v1」となるように、モータ20の回転数を例えば3rpmに決定する。
そして、当該角度がθ1〜θ1+θ2の範囲及びθ1+θ2+θ3〜θ1+θ2+θ3+θ4であれば、噴射装置10の角速度が「v2」となるように、モータ20の回転数を例えば6rpmに決定する。
さらに、当該角度がθ1+θ2〜θ1+θ2+θ3の範囲であれば、噴射装置10の角速度が「v3」となるように、モータ20の回転数を例えば10rpmに決定する。
【0037】
回転速度制御信号発生ブロック38には回転速度決定ブロック36の決定結果が入力され、当該決定結果に対応した制御信号(回転速度制御信号)が出力される。出力された制御信号は、インターフェース30I−2及び信号伝達ラインSL−2を介して、モータ20に送出される。
これにより、モータ20は決定された回転速度となり、噴射装置10の角速度がv1、v2、v3に制御される。
【0038】
図3で示す噴射装置回転制御機構101を用いて噴射装置10の回転速度を切り替える制御について、図4のフローチャートをも参照して説明する。
図4において、ステップS1では、回転数センサ22によって噴射装置10の回転角度(例えば、図1の1aにおいて、点11と点1A2とを結ぶ直線に対する噴流J1、J1Aが形成する角度)を検出する。検出された回転角度の情報は、コントロールユニット30に伝送される。
コントロールユニット30は、前記回転角度の情報から、モータ20の回転速度を決定する。より詳細には、コントロールユニット30の比較ブロック34において、ステップS1で検出された回転角度が、回転速度を変更するべき位置の角度(図1の1aにおいて、点11と点1A2とを結ぶ直線に対する噴流J1、J1Aが形成する角度が、θ1、θ2、θ3、θ4)であるか否かを判断する(ステップS2)。
【0039】
回転速度を変更するべき位置の角度でない場合(ステップS2がNO)には、ステップS1に戻る。
一方、回転速度を変更するべき位置の角度に到達している場合(ステップS2がYES)には、ステップS3に進み、噴射装置10の回転速度を所定の角速度に変更する。例えば、図1の1aにおいて、点11と点1A2とを結ぶ直線に対する噴流J1、J1Aが形成する角度が、θ1に到達すれば、噴射装置10の回転速度をv1からv2に変更する。そして、θ1+θ2に到達すれば噴射装置10の回転速度をv3に変更し、θ1+θ2+θ3に到達すれば回転速度をv2に変更する。
【0040】
回転速度を変更したならばステップS4に進み、コントロールユニット30は、噴射中の深度における施工が完了したか否かを判断する。
噴射中の深度における施工が未だ完了していないならば(ステップS4がNO)、ステップS1まで戻り、ステップS1以降を繰り返す。
噴射中の深度における施工が完了したならば(ステップS4がYES)、噴射装置10の回転速度を切り替える制御も終了する。
【0041】
図5は、図4で示す制御の一例を示している。
図5では、モータ20として油圧モータを用い、噴射装置10の回転速度を変更するには、油圧モータに圧油を供給する図示しない油圧ポンプの吐出流量を増減することにより行なう場合の制御を示している。より詳細には、図示しない油圧ポンプに圧油を供給する油圧系統に介装されている開閉弁を適宜開閉することにより、油圧ポンプに供給される圧油流量を増減することにより、油圧ポンプの吐出流量を調整し、以って、油圧モータの回転速度を制御する。
【0042】
図5において、ステップS11では、回転数センサ22によって噴射装置10の回転角度を検出する。コントロールユニット30は、油圧系統に介装されている開閉弁の開閉を切り替えるタイミングであるか否かを判断する(ステップS12)。
開閉弁V1〜V3の開閉を切り替えないのであれば(ステップS12がNO)、ステップS11に戻り、開閉弁の開閉を切り替えるのであれば(ステップS12がYES)、ステップS13に進み、開閉弁V1〜V3の切替を行う。
開閉弁V1〜V3の開閉切替が完了したならばステップS14に進み、コントロールユニット30は、噴射中の深度における施工が完了したか否かを判断する。ステップS14については、図4のステップS4と同様である。
【0043】
次に、図6を参照して、図1〜図5の第1実施形態における作用効果を説明する。
図6の(6a)は、築造するべき連続壁で必要とされる厚さtが1m(1000mm)である場合に、図1〜図5の第1実施形態を実施した状態を示している。
図6の(6a)において、領域1、1Aの施工の際、噴流が到達する距離を1.25m(1250mm)、中心角θ1を60°とすれば、領域1、1Aの合計面積の合計は1.63mとなる。
そして、図6の(6a)の例では、領域2、2Aと領域4、4Aの合計面積は0.13m、領域3、3Aの合計面積は0.88mであり、改良した部分の合計面積は2.64mである。
【0044】
これに対して、図6の(6b)は、従来技術に係る地盤改良を行なった場合を示している。
図6の(6b)では、領域1、1Aにおける噴流到達距離(1.25m)と等しい半径rcを有する円形の領域c1が改良されている。そして、改良面積(rc=1.25mの円c1の面積)は4.91mである。
【0045】
連続壁で必要とされる厚さtは1mで共通しており、当該連続壁の長手方向については、図6の(6a)の領域1、1Aにおける噴流到達距離(1.25m)と、図6の(6b)の半径rc(1.25m)は同一であるため、連続壁の造成範囲については、改良面積は(6a)の場合も(6b)の場合も同じである。
ただし、図6の(6a)において、改良した全ての領域の合計面積(E1)は2.64mであり、図6の(6b)においては改良面積(E2)は4.91mである。
(E1)の改良面積<(E2)の改良面積 であることは明らかであり、図6(6a)、(6b)を比較すれば明らかなように、図1〜図5の第1実施形態では、連続壁の造成に必要な改良面積が同等であっても、地中を改良した面積が小さくなるので、固化材等の材料使用量が少なくて済み、施工コストを低減することができる。
【0046】
また、明確には図示されてはいないが、いわゆる複合地盤で施工するに際しては、地盤の種類により、噴射装置10の角速度v1、v2、v3を変動させる必要がある。
この場合、角速度v1、v2、v3の具体的な数値については、地盤の種類、深度方向寸法、その他の条件により、ケース・バイ・ケースに定められる。
また、角速度を無段階に変動させることにより、地盤改良された領域の平面形状を任意の形状(四角形、楕円形、星型、その他)にすることが可能である。
【0047】
上述した第1実施形態において、連続壁に必要な幅tを変更することが可能である。
図7を参照して、図1で示す幅t(例えば、t=1000mm)よりも、幅t寸法が小さい(例えば、t9=500mm)場合について、説明する。
【0048】
先ず、図7で示す以前の段階で、図示しないボーリング孔を切削し、当該ボーリング孔に図2で示す様な噴射装置10を挿入する。そして、噴射装置10を所定深度まで挿入したならば、噴射装置10のノズル10nから一対の噴流J1、J11(図2参照)を噴射する。
【0049】
図7において、噴流J1、J1Aを噴射する工程は、図7の(7a)、(7b)、(7c)、(7d)の順に行なわれる。
図7において平面で示す工程(7a)〜(7d)では、噴流J11で切削された領域(1A、2A、3A、4A)を示す記号には、添え字「A」が付されている。一方、噴流J1で切削された領域(1、2、3、4)を示す記号には、その様な添え字は付されていない。
【0050】
図7の工程(7a)では、噴射装置10から噴射される噴流J1、J1Aにより、第1の領域1、1A(ハッチングで示す領域)の地盤を切削して、固化材と混合し、改良している。領域1、1Aの中心角度は符号θ71で示されている。
以下、図7で示す工程(7a)〜(7d)において、施工中(噴射中)の領域にはハッチングを施している。
第1の領域1、1Aを改良する場合には、噴射装置10の回転角速度は符号「v1」で示されている。
図7の工程(7a)において、図示右方の符号t7は、築造するべき連続壁で必要とされる厚さ(500mm)を示している。
【0051】
図7の工程(7b)では、噴射装置10の回転を角速度v2として、領域2、2Aを改良する。領域2、2Aの中心角度は符号θ72で示されている。
上述したとおり、噴射装置10の回転角速度v1、v2の大小関係はv1<v2である。
領域2、2Aの半径方向の長さ(領域2、2Aにおける噴流J1、J1Aの到達距離)は、領域1、1Aの半径方向の長さ(領域1、1Aにおける噴流J1、J1Aの到達距離)よりも短い。
【0052】
図7の工程(7c)では、噴射装置10の回転を角速度v3として、領域3、3Aを改良する。領域3、3Aの中心角度は符号θ73で示されている。
上述したとおり、噴射装置10の回転角速度v2、v3の大小関係はv2<v3である。
領域3、3Aの半径方向の長さ(領域3、3Aにおける噴流J1、J1Aの到達距離)は、領域2、2Aの半径方向の長さ(領域2、2Aにおける噴流J1、J1Aの到達距離)よりも短い。
【0053】
図7の工程(7d)では、工程(7c)で改良された領域3、3Aと、工程(7a)で改良された領域1、1Aとの間の領域4、4Aの改良を行なう。その際に、噴射装置10の回転を前記角速度v2である。
領域4、4Aの中心角度は符号θ74(=θ72)で示されている。
領域4、4Aの半径方向の長さ(領域4、4Aにおける噴流J1、J1Aの到達距離)は、領域2、2Aの半径方向の長さ(領域2、2Aにおける噴流J1、J1Aの到達距離)と等しい。
【0054】
図7の工程(7e)では、同一深度の所定の領域について、柱状固結体K71として地盤を改良した領域が、ハッチングを施して平面的に示されている。
図示では明示しないが、柱状固結体K71の長手方向寸法(図7の7eにおける左右方向)だけ隔てた位置に、図7の(7a)〜(7d)で説明したのと同様な手順で、柱状固結体K71と同様な固結体を造成する。すなわち、図7の(7e)で示す柱状固結体K71の隣接する領域に、柱状固結体K71を改良するのと同様な手順により、柱状固結体K71と同様な固結体を造成する。
長手方向(図7における左右方向)に柱状固結体K71を連続して築造して、所定の長さの連続壁を築造する。
図7で示す変形例のその他の構成及び作用効果は、図1〜図6で説明したのと同様である。
【0055】
図8は、本発明の第2実施形態を平面的に示している。
図1〜図7の第1実施形態においては、領域1、1A、領域2、2A、領域3、3A、領域4、4Aの改良については、同一の改良材(固化材)を使用している。
それに対して、第2実施形態では、改良する領域毎に、異なる材料を噴射して改良している。
より詳細には、第2実施形態では、図8における領域1−1、1A−1、1−2、1A−2、1−3、1A−3については第1の材料(例えば、止水材料)を噴射する(図8の工程8a)。
そして、領域2−4、2A−4、2−5、2A−5、2−6、2A−6、4−10(図8の工程8b)、4A−10、4−11、4A−11、4−12、4A−12(図8の工程8d)については、第2の材料(例えば、強度材料)を噴射する。
さらに、領域3−7、3A−7、3−8、3A−8、3−9、3A−9については第3の材料(例えば、浄化材)を噴射している(図8の工程8c)。
換言すれば、第2実施形態では、領域毎に、噴射装置10の角速度のみならず、噴射する材料をも変更している。
【0056】
図8において、工程(8a)では、先ず符号(1)で示す施工領域において、噴射装置10を回転速度v11によって回転させつつ、領域1−1、1A−1を改良する。
そして、符号(2)で示す施工領域において、回転速度v11で噴射装置10を回転させつつ、領域1−2、1A−2を改良する。さらに、符号(3)で示す施工領域において、回転速度v11で噴射装置10を回転させつつ、領域1−3、1A−3を改良する。
図8において、噴射装置10によって噴射中(改良中)の領域には、ハッチングを施して表現している。
【0057】
図8の工程(8b)では、符号(4)で示す施工領域において、噴射装置10を回転速度v12で回転させて、領域2−4、2A−4を改良する。
そして、符号(5)で示す施工領域において、噴射装置10を回転速度v12で回転させて、領域2−5、2A−5を改良する。
さらに、符号(6)で示す施工領域において、噴射装置10を回転速度v12で回転させて、領域2−6、2A−6を改良する。
【0058】
図8の工程(8c)では、符号(7)で示す施工領域において、噴射装置10を回転速度v13で回転させて、領域3−7、3A−7を改良する。
そして、符号(8)で示す施工領域において、噴射装置10を回転速度v13で回転させて、領域3−8、3A−8を改良する。
さらに、符号(9)で示す施工領域において、噴射装置10を回転速度v13で回転させて、領域3−9、3A−9を改良する。
【0059】
図8の工程(8d)では、符号(10)で示す施工領域において、噴射装置10を回転速度v12で回転させて、領域4−10、4A−10を改良する。
そして、符号(11)で示す施工領域において、噴射装置10を回転速度v12で回転させて、領域4−11、4A−11を改良する。
さらに、符号(12)で示す施工領域において、噴射装置10を回転速度v12で回転させて、領域4−12、4A−12を改良する。
【0060】
図8の(8a)で示す工程では、領域1−1、1A−1、1−2、1A−2、1−3、1A−3の改良に際して、第1の材料として、例えば止水材料を噴射している。
図8の工程(8b)では、領域2−4、2A−4、2−5、2A−5、2−6、2A−6の改良に際して、第2の材料として、例えば強度材料を噴射している。そして、図8の工程(8d)においても、領域4−10、4A−10、4−11、4A−11、4−12、4A−12の改良に際して、第2の材料として、例えば強度材料を使用する。
図8の符号(8c)で示す工程では、領域3−7、3A−7、3−8、3A−8、3−9、3A−9の改良に際して、第3の材料として、例えば、浄化材を噴射している。
【0061】
図8において、改良する領域によって噴射される改良材を変更することにより、施工現場の特性、改良により造成される地中固結体の目的等に対応して、改良材の最適な組み合わせを選択して、実現することが出来る。
換言すれば、改良材と改良される領域との組み合わせを、施工現場の特性、地中固結体の目的に最も合致した組み合わせにすることが可能になる。
【0062】
図8では、3箇所の改良を行っている。
しかし、図1の第1実施形態の様に、1箇所のみ改良して、領域毎に噴射材料(改良材)を変更しても良い。
図8で示す第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果については、図1〜図7の第1実施形態と同様である。
【0063】
次に、図9を参照して、本発明の第3実施形態を説明する。
図1の工程(1e)や図8で示す様な地中固結体(K1〜K3)を連続して、地中連続壁Wを造成する場合であって、当該地中壁Wが直角に折れ曲がったコーナー部を有する場合においては、当該コーナー部に相当する領域は、必ずしも図1〜図8で示す様な地中固結体(K1〜K3)と同一形状に改良する必要はない。
図9で示すように、当該コーナー部9Cについては、断面円形の円筒形状に改良すれば良い。
ここで、断面円形の円筒形状に改良するに際しては、従来・公知の地盤改良技術をそのまま適用することが可能である。
【0064】
図9において、コーナー部9C以外については、図1〜図8で説明した様な態様で、図1〜図8で示す様な形状の地中固結体(K1〜K3)を造成して、地盤を改良している。
上述した様に、地中壁Wに必要な厚さtの範囲を超える部分については、不必要な改良となってしまう。そのため、図1〜図8で示す様に改良を行い、地中壁に必要な厚さtを超える改良部分を出来る限り小さくしている。そして、図1〜図8で示す様な形状の地中固結体(K1〜K3)によれば、地中壁に必要な厚さtを確保しつつ、固化材等の節約を図るためである。
しかしながら、地中壁Wが直角に折れ曲がったコーナー部9cについては、断面円形に改良したとしても、改良部分において、「地中壁Wに必要な厚さtの範囲を超える部分」は、図6(6b)に比較して少ない。コーナー部9Cから地中壁Wが2方向に延在するからである。
【0065】
図9で示す第3実施形態において、コーナー部9Cを断面円形に改良しても、「地中壁Wに必要な厚さtの範囲を超える部分」が少ないので、改良材の浪費とはならず、且つ、容易に施工することが出来る。
第3実施形態におけるその他の構成及び作用効果については、第1実施形態、第2実施形態と同様である。
【0066】
図10は、本発明の第4実施形態を示している。より詳細には、本発明の第4実施形態は、図10の(10a)、(10b)で示されている。
第4実施形態では、図10の(11a)で示すように、断面形状が正方形状の領域の全面を改良している。
図10の(11a)において、改良するべき正方形状の領域における1辺の長さは、符号Aで示されている(例えば、1辺A=8000mm)。
そして、係る正方形状の領域の改良に際して、円形断面の改良領域Mと、図10の(10b)で示す形状の改良領域Eとが混在している。
改良される領域Eは、図10の(10b)における左右方向の寸法が符号「h1(例えば2200mm)」で示されており、図10の(10b)における上下方向の寸法が符号「t1(例えば1000mm)」で示されている。
【0067】
図10の(10a)、(10c)において、改良するべき正方形の領域(1辺が長さ寸法Aの領域)において、その4辺(符号D1〜D4で示す点線)よりも外側の領域を改良することは、無駄な作業であり、改良材の浪費である。
図10(10c)では、改良するべき地盤を断面円形の円筒形状に改良するための従来・公知の地盤改良技術を適用して、改良するべき正方形の領域を、全て、断面円形に改良した場合を示している。
図10(10c)において、断面円形の改良領域における断面の半径寸法は、符号r1(例えば、1250mm)で示されている。
【0068】
図10の(10a)では、図10(10b)で示す形状に改良された領域Eは、上辺D1全体に沿って4箇所配置している。そして、左右の辺D2及び辺D4において、上辺D1近傍に1箇所、下辺D3に近い側に1箇所配置されている。そして、図10の(10a)では、図10(10b)で示す形状に改良された領域Eは、合計8箇所である。
そして図10の(10a)では、円形の改良領域Mは、合計14箇所である。
一方、図10の(10c)においては、合計22箇所の円形改良領域Mが存在する。
【0069】
図10の(10a)と(10c)とを比較すれば明らかな様に、円形改良領域Mと図10の(10b)で示す形状に改良された領域Eを組み合わせた(10a)の方が、円形改良領域Mのみが存在する場合(10c)に比較して、4辺D1〜D4の外側における無駄な改良を行なった範囲が少なくなっている。
さらに、図10の(10a)、(10c)は、共に、改良箇所が合計22箇所であり、地盤改良作業の総工程数は同一である。
【0070】
このことから、図10(10a)で示す第4実施形態では、従来技術(改良範囲の断面が全て円形)に比較して、地盤改良作業の総工程数が増加してしまうことはない。そして、第4実施形態では、従来技術(改良範囲の断面が全て円形)に比較して、地盤改良とは無関係な領域を改良してしまうと言う無駄を省略して、改良材の使用量、施工のコスト及び労力を大幅に節約することが可能である。
【0071】
第4実施形態におけるその他の構成及び作用効果については、第1実施形態〜第3実施形態と同様である。
【0072】
図11は、本発明の第5実施形態を示している。より詳細には、第5実施形態は、図11(11b)で示されている。
図11の第5実施形態は、例えば、シールド掘削機の発進立坑90を防護するため、周辺地盤を改良する作業に適用される。
図11の第5実施形態においても、図11の実施形態と同様に、円形改良領域と、図10(10b)で示す様な形状の改良領域Eとを組み合わせることにより、地盤改良の必要がない領域を地盤改良するという無駄を、出来る限り行なわない様に工夫されている。
【0073】
図11(11a)は、従来技術を用いて、断面円形の円筒形状の地中固結体95のみを造成し、以って、シールド掘削機の発進立坑90の坑口部分を防護するため周辺地盤を改良した状態を示している。
図11の(11a)において、符号DM1〜DM3で示す点線よりも外側の領域は、シールド掘削機の発進立坑90の坑口部分を防護するのには不必要である。すなわち、点線DM1〜DM3よりも外側の領域は、地盤改良が不必要(シールド掘削機の発進立坑90の坑口部分における防護については、地盤改良が不必要)な領域である。
なお、図11(11b)において、発進立坑90の坑口部分近傍の円形断面地中固結体(改良領域)95の径寸法は、図11(11a)の円形断面地中固結体(改良領域)95の径寸法と等しい。
【0074】
図11(11b)は、本発明の第5実施形態を適用して、シールド掘削機の発進立坑90の坑口部分を防護するため周辺地盤を改良した状態を示している。
図11(11b)において、点線DM1に沿った範囲中、発進立坑90の坑口部分から最も離隔した範囲(図11の11bでは右方の範囲)は、断面形状が非円形の改良領域Eとなっている。上述の様に、改良領域Eについては、図10(10b)で示すのと同様である。
点線DM3に沿った範囲中、発進立坑90の坑口部分から最も離隔した範囲(図11の11bでは右方の範囲)も、図10(10b)で示す様な形状の改良領域Eである。
点線DM1、DM3に沿った領域おいて、発進立坑90の坑口部分に近接した範囲(図11の11bでは左方の範囲)には円形改良領域97が造成されている。ここで、図11(11a)における円形改良領域95の径寸法に比較して、円形改良領域97の径寸法は小さく設定されている。
【0075】
図11(11a)と図11(11b)とを比較すれば明らかな様に、径寸法の異なる2種類の円形改良領域95、97と、図10(10b)で示す形状の改良領域Eを組み合わせた図11(11b)の方が、同一径の円形改良領域95のみを造成した図11(11a)の場合に比較して、点線DM1〜DM3の外側における改良範囲が減少する。
さらに、図11(11a)と図11(11b)は、改良箇所は共に合計9箇所であるため、シールド掘削機の発進立坑90の坑口部分における防護のための地盤改良作業における総工程数は増加しない。
従って、図11(11b)の第5実施形態によれば、シールド掘削機の発進立坑90の坑口部分における防護に寄与しない領域を改良するという無駄が抑制され、改良材の使用量や、労力、コストが節約される。
【0076】
第5実施形態におけるその他の構成及び作用効果については、第1実施形態〜第4実施形態と同様である。
【0077】
図12は、本発明の第6実施形態を示している。
図1〜図11の各実施形態では、噴射装置10から固化材(或いは、改良材)の噴流が、2本一対で噴射されている。
これに対して、図12の第6実施形態では、噴射装置10Aから、固化材(或いは、改良材)の噴流が、2本ずつ2対、合計4本噴射されている。
図12(12a)で示す様に、2本一対の噴流J1、J1Aと、2本一対の噴流J11、J11Aは、噴射装置10Aの垂直方向(12aの矢印V方向)について離隔した位置から、それぞれ噴射されている。
そして、一対の噴流J1、J1Aと、一対の噴流J11、J11Aは、平面から見ると相互に直交している。すなわち、4本の噴流は、平面から見ると、噴射方向が90°異なっており、4方向に噴射している。
【0078】
図12(12b)において、中心角θ1で示す領域において、噴射装置10Aの回転速度(角速度)ω1は遅く、4本の噴流J1、J1A、J11、J11Aの到達距離は長い。
一方、中心角θ2で示す領域において、噴射装置10Aの回転速度(角速度)ω2は速く、4本の噴流J1、J1A、J11、J11Aの到達距離は短い。
ここで、 ω1<ω2 である。
【0079】
その結果、噴射装置10Aが90°回転すると、4本の噴流J1、J1A、J11、J11Aによって、図12の(12c)で示すように、正方形に近い断面形状Kbに切削、改良される。
図12(12c)において、改良するべき正方形領域の4辺が符号D1〜D4で示されており、従来技術で正方形領域を改良した場合の断面円形の改良部の周縁が点線CR13で示されている。図12(12c)から明らかなように、図12の第6実施形態による改良部の断面形状Kbであれば、辺D1〜D4外側の領域(地盤改良が無駄になる領域)における改良部面積は、従来の円形断面の改良体における無駄な領域(点線CR13と辺D1〜D4で挟まれた領域の面積)に比較して極めて小さくなる。
そのため、改良材の使用量や、労力、コストを節約することが出来る。
【0080】
第4実施形態、第5実施形態において、図10の(10b)で示す形状(E)に改良することに代えて、第6実施形態で示す様な形状(Kb)に改良することも可能である。
第6実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図11の各実施形態と同様である。
【0081】
図13及び図14は、本発明の第7実施形態を示している。
第7実施形態では、図14の紙面に垂直な方向に立坑を掘削しており、地中の領域を底盤状(断面円形で、鉛直方向に所定の厚みを有している改良領域)に改良しても(符号200で示す円盤状改良体)、その上方(図13では上方の立坑部分、図14では紙面に垂直な方向で手前側)の領域には、受動土圧Pが作用している。
係る受動土圧Pを支持するため、従来技術では、図14における底盤状改良領域200のみならず、その上方の地盤を地上近くまで改良しなければならない。
【0082】
これに対して第7実施形態では、図13で示すように、同一立坑において、円形の領域200と、長方形の領域300とが造成されている。すなわち、底盤状に改良された領域200の上方に地中梁300を造成し、地中梁300によって受動土圧Pを支持している。
その結果、受動土圧Pを確実に支持すると共に、底盤状領域200から地上近くまでの全領域を改良する必要が無くなり、改良体の容積を減少して、施工期間を短縮し、施工のための労力、材料費、その他のコストを節約することが出来る。
【0083】
図13で示すように、改良された底盤200は平面形状が円形であるが、地中梁300の平面形状は長方形である。
そして図14で示すように、地中梁300は、地盤を、図10の(10b)における形状(E)に改良し、当該改良された領域(E)を受動土圧Pが作用する方向(図13では横方向)に連続させることにより、造成することが出来る。
そして、図10の(10b)で示す形状(E)に改良された領域を連続させて地中梁300を造成すれば、円形に改良した領域を連続させて地中梁を造成することに比較して、地中梁300の造成に必要がない領域を切削し改良してしまうことが抑制され、施工コストをさらに節約することが出来る。
【0084】
なお、地中梁300の造成に当たっては、図10の(10b)で示す形状に改良された領域(E)を連続させることに代えて、図12で示す第6実施形態で示す改良体(断面Kbの改良体)を造成して、連続させることも可能である。
図13、図14の第7実施形態におけるその他の構成と作用効果は、図1〜図12の各実施形態と同様である。
【0085】
図15は本発明の第8実施形態を示している。
図1〜図5の第1実施形態では、一箇所を改良するに際して、領域1、1A、領域2、2A、領域3、3A、領域4、4Aの4区画に分割して、噴射装置10の角速度を変化させて施工しているが、区画数については、4つに限定されるものではない。6区画以上に分割して、噴射装置10の角速度を4種類以上に変化させて施工することも可能である。
図15の第8実施形態では、1箇所当たりの工程数を6工程(6区画)にて施工している。
【0086】
図15において、工程(15a)は、図1の工程(1a)と同じであり、領域1及び領域1Aを改良する。この時の噴射装置10の回転速度はv1である。
また、図15の工程(15b)は、図1の工程(1b)と同じであり、領域2及び領域2Aを改良する。この時の噴射装置10の回転速度はv2である。
【0087】
図15の工程(15c)では、領域3Qと3QAを改良する。この時の噴射装置10の回転速度はv3である。
図15の工程(15d)では、領域4Qと4QAを改良する。この時の噴射装置10の回転速度はv4である。
【0088】
図15の工程(15e)では、領域5Qと5QAを改良する。この時の噴射装置10の回転速度はv3であり、領域3Qと3QAを改良する際の回転速度と同一である。
図15の工程(15f)では、領域6Qと6QAを改良する。この時の噴射装置10の回転速度はv2であり、領域2及び領域2Aを改良する際の回転速度と同一である。
領域6Qと6QAを改良すれば、改良は完了となる。
噴射装置10は半回転で改良が完了する。ただし、地盤が固い場合には、1回転以上回転して、噴流による切削を繰り返せば良い。
ここで、噴射装置10の回転速度v1〜v4の間には以下の関係がある。
v1<v2<v3<v4
【0089】
図15の第8実施形態によれば、連続壁(必要な厚さ寸法が符号tで示されている)の外側の領域、すなわち、連続壁築造に無関係な部分における改良面積が、第1実施形態に比較して、さらに減少する。そのため、材料使用量、労力、コストがさらに節約される。
図15の第8実施形態におけるその他の構成及び作用効果については、図1〜図14で示す実施形態と同様である。
【0090】
図16は、本発明の第9実施形態を示している。
図15の第8実施形態では、1箇所当たりの工程数を6工程にしており、第1実施形態〜第7実施形態(1箇所当たり4工程)に比較して増加している。これに対して、図16の第9実施形態では、1箇所当たりの工程数を2工程に減少している。
図16において、工程(16a)は、図1の工程(1a)と同じであり、領域1及び領域1Aを改良する。この時の噴射装置10の回転速度はv1である。
図16の工程(16b)は、図1の工程(1b)と同じであり、領域2及び領域2Aを改良する。この時の噴射装置10の回転速度はv2である。
【0091】
噴射装置10は半回転して、領域2、2Aを改良すれば、その深度における改良が完了する。
ただし、地盤が固い場合には、噴射装置10を1回転以上回転して、噴流による切削を繰り返せば良い。
噴射装置10の回転速度v1、v2は、 v1<v2 となっている。
図16の第9実施形態におけるその他の構成及び作用効果については、図1〜図15の実施形態と同様である。
【0092】
図17は本発明の第10実施形態を示している。
第1実施形態〜第9実施形態では、例えば図1の(1e)で示す断面形状を有する改良体K1〜K3が、垂直方向に延伸して造成される。
しかし、例えば、図1の工程(1e)で示す断面形状を有する改良体K1〜K3は、水平方向に延長するように造成することも可能である。
図17の第10実施形態は、改良体が水平方向に延長して造成される実施形態である。
ここで、「水平方向に延長して造成する」という文言は、水平面に対して傾斜している方向に延長して延在する様に、改良体を造成する場合も包含している。
【0093】
図17の工程(17a)では、可撓性を有する中空ロッド50を具備する自在ボーリングマシンを用いて、削孔を行う(いわゆる「曲がりボーリング」)。
係る自在ボーリングマシンとして、公知、既存のものを適用することが出来る。
【0094】
図17の工程(17b)において、所定位置まで削孔したならば、可撓性を有する中空ロッド50の先端に噴射装置10を配置して、噴射装置10から一対の噴流J1、J1Aを噴射して、地盤を切削して地盤改良を行う。
【0095】
図17の工程(17c)において、噴射装置10をロッド50の中心軸を回転軸として回転し、中心角θ1で示す領域を地盤改良する。
中心角θ1で示す領域を地盤改良する際に、噴射装置10の回転速度は符号「v1」で示されている。
なお、図17の工程(17c)は、図1で示す工程(1a)に対応している。
【0096】
図17の工程(17d)において、噴射装置10を回転軸として、中心角θ2で示す領域を地盤改良する。
中心角θ2で示す領域を地盤改良している際に、噴射装置10は回転速度「v2」で回転する。
ここで、回転速度v1、v2は、 v1<v2 である。
図17の工程(17d)は、図1で示す工程(1b)に対応している。
【0097】
図17の工程(17e)において、噴射装置10をロッド50の中心軸を回転軸として回転し、中心角θ3で示す領域を地盤改良する。図17(17e)において、噴射装置10の回転速度は、符号「v3」で示されている。
ここで、回転速度v1、v2、v3は v1<v2<v3 である。
図17の工程(17e)は、図1で示す工程(1c)に対応している。
【0098】
図17の工程(17f)において、噴射装置10をロッド50の中心軸を回転軸として回転し、中心角θ4(θ4=θ2)で示す領域を地盤改良する。この場合、噴射装置10は回転速度v2で回転する。
図17の工程(17f)は、図1で示す工程(1d)に対応している。
【0099】
図17の工程(17g)において、図17の工程(17c)〜(17f)により改良された領域SLから、可撓性中空ロッド50の軸線方向AXについて、所定距離DRだけ、当該ロッド50及び噴射装置60を地上側(図示しないボーリングマシン側)に引き出す。
図17の工程(17g)では、ロッド50及び噴射装置60の引き出し方向は、矢印Puで示されている。
そして、図17の工程(17c)〜(17g)を繰り返す。
【0100】
図17では明確には図示されていないが、原位置土と改良材(固化材)との混合物が重力により下方へ移動して、掘削された領域の上方に空隙部(いわゆる「巣」)が出来ないようにするため、いわゆる「水平方向地盤改良」の分野における公知技術を用いて、「巣」の形成を防止している。
【0101】
図17の第10実施形態におけるその他の構成及び作用効果については、図1〜図16の各実施形態と同様である。
【0102】
次に、図1及び図18を参照して、本発明の第11実施形態を説明する。
図1〜図17の実施形態では、領域毎に噴流の到達距離を変化させるに際して、噴射装置10の回転速度(角速度)を変化させている。しかしながら、噴射装置10の回転速度(角速度)を変化させることに代えて、噴射速度、噴射圧力、噴射流量を変化させても良い。第11実施形態では、噴射装置10の回転速度(角速度)を変化させることに代えて、噴射速度、噴射圧力、噴射流量を変化させている。
噴流の到達距離を増加するのであれば、噴射装置10の回転速度(角速度)を遅くすることに代えて、噴射速度、噴射圧力、噴射流量を増加している。一方、噴流の到達距離を減少するのであれば、噴射装置10の回転速度(角速度)を速くすることに代えて、噴射速度、噴射圧力、噴射流量を減少している。
【0103】
第11実施形態では、図1において、噴射装置10から噴射される噴流の噴射速度、噴射圧力、噴射流量は、改良された範囲における中心角がθ1の範囲内にある場合(図1の工程1a)に最大とする。そして、図1の工程(1b)では若干減少せしめ、図1の工程(1c)では最小となる様に設定する。
図1の工程(1d)では、図1の工程(1b)における噴射速度、噴射圧力、噴射流量と等しくなる様に設定する。
【0104】
第11実施形態において、噴射装置の噴射速度、噴射圧力、噴射流量を変化させる制御について、主に図18を参照して説明する。
図18のステップS11において、コントロールユニット30は、施工領域が、図1において中心角θ1の範囲(図1の工程1aを行なう範囲:図1の1aにおいて、点11と、点1A2を結んだ直線から、角度θ1の範囲)であるか否かを判断する。
施工領域が、中心角θ1の範囲であれば(ステップS11がYES)、ステップS12でコントロールユニット30は、噴射速度及び/又は噴射圧力及び/又は噴射流量が最大となるように制御する。係る制御の具体的態様については、噴射装置10の構成により、従来技術を適宜適用することにより行なわれる。
そして、ステップS11まで戻る。
【0105】
一方、施工領域が、中心角θ1の範囲でなければ(ステップS11がNO)、ステップS13に進む。
ステップS13では、コントロールユニット30は、施工領域が、中心角θ2の範囲(図1の工程1b、1dを行なう範囲:図1の1b、1dにおいて、角度θ2の範囲)であるか否かを判断する。
施工領域が、中心角θ2の範囲であれば(ステップS13がYES)、ステップS14でコントロールユニット30は、噴射速度及び/又は噴射圧力及び/又は噴射流量を、ステップS12における数値よりも少ない値となる様に制御する。
そして、ステップS13まで戻る。
【0106】
施工領域が、中心角θ2の範囲でなければ(ステップS13がNO)、ステップS15に進む。
ステップS15では、コントロールユニット30は、施工領域が、中心角θ3の範囲(図1の工程1cを行なう範囲:図1の1cにおいて、角度θ3の範囲)であるか否かを判断する。
施工領域が、中心角θ3の範囲であれば(ステップS15がYES)、ステップS16でコントロールユニット30は、噴射速度及び/又は噴射圧力及び/又は噴射流量を、ステップS14で決定した値よりも更に減少した数値となる様に制御する。
そして、ステップS15まで戻る。
【0107】
施工領域が、中心角θ3の範囲でなければ(ステップS15がNO)、ステップS17に進む。
ステップS17では、コントロールユニット30は、所定の深度における改良工事が完了したか否かを判断する。
所定の深度における改良工事が完了していないのなら(ステップS17がNO)、ステップS11まで戻り、再びステップS11以降を繰り返す。
一方、所定の深度における改良工事が完了したのであれば(ステップS17がYES)、ステップS18に進み、噴射装置10を所定量だけ引き上げる。そして、ステップS11以降を繰り返す。
【0108】
噴射速度、噴射圧力、噴射流量を変化させた場合においても、図1〜図17と同様に、無駄な切削、改良をすること無く、必要な改良を行なうことが出来る。
ここで、噴射速度、噴射圧力、噴射流量を無段階に変動させることにより、地盤改良された領域の平面形状を任意の形状(四角形、楕円形、星型、その他)にすることが可能である。
図18の第11実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図17の実施形態(噴射装置10の角速度を変化させる場合)と同様である。
【0109】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない。
例えば、図示の実施形態では、1箇所の地盤を改良するのに4工程(第1実施形態)、6工程(第8実施形態)、2工程(第9実施形態)で行なっているが、この工程数を変化することが可能である。
また、図示の実施形態では、本発明が地中連続壁の造成に適用されている場合について多く記載されているが、本発明の適用範囲は地中連続壁の造成には限定されない。
さらに、図示の実施形態では、噴射装置10は時計方向に回転して改良材等を噴射しているが、反時計方向に回転させても良い。
【符号の説明】
【0110】
10・・・噴射装置
20・・・油圧モータ
22・・・回転数センサ/ロータリエンコーダ
30・・・コントロールユニット
101・・・噴射装置回転制御機構
V1・・・第1の方向制御弁/第1の開閉弁
V11・・・第1の流量調整弁
V20・・・電磁比例流量制御弁
V30・・・方向制御弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を改良するべき領域までボーリング孔を削孔する工程と、
削孔されたボーリング孔に噴射装置を挿入する工程と、
同一方向に回転する噴射装置から改良材を包含する噴流を噴射して、原位置土を切削し、改良材と原位置土を混合して、攪拌することにより改良する工程を含み、
当該改良する工程では、造成するべき地中固結体の長手方向について地盤を改良する場合には、改良材を包含する噴流の切削距離を長くして、造成するべき地中固結体の長手方向と直交する方向に地盤を改良する場合には、改良材を包含する噴流の切削距離を短くすることを特徴とする地盤改良工法。
【請求項2】
前記改良する工程では、噴射装置の回転速度を増減して、噴流の切削距離を調整する請求項1の地盤改良工法。
【請求項3】
前記改良する工程では、噴射速度及び/又は噴射圧力及び/又は噴射流量を増減して、噴流の切削距離を調節する請求項1の地盤改良造成工法。
【請求項4】
噴射装置から噴射される前記噴流の噴射方向が、造成するべき地中固結体の長手方向であり、改良材を包含する噴流の切削距離が最長である工程と、
同一方向に回転する噴射装置から噴射される前記噴流の噴射方向が、造成するべき地中固結体の長手方向とそれに直交する方向との中間であり、改良材を包含する噴流の切削距離が最大切削距離よりも短い工程と、
噴射装置から噴射される前記噴流の噴射方向が、造成するべき地中固結体の長手方向と直交する方向であり、改良材を包含する噴流の切削距離が最短である工程を含んでいる請求項1〜3の何れか1項の地盤改良工法。
【請求項5】
固結体を造成して改良するべき領域までボーリング孔を削孔する工程と、
削孔されたボーリング孔に噴射装置を挿入する工程と、
同一方向に回転する噴射装置から改良材を包含する噴流を噴射して、原位置土を切削して、改良材と原位置土を混合して、攪拌することにより改良する工程を含み、
当該改良する工程では、噴射装置から4本の噴流が噴射され、4本の噴流の隣接する噴流の噴射方向が90°ずつ異なっており、
噴射装置を回転するに際して、造成するべき地中固結体の対角線方向については改良材を包含する噴流の切削距離を長くして、造成するべき地中固結体の辺方向については、改良材を包含する噴流の切削距離を短くすることを特徴とする地盤改良工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−97550(P2012−97550A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276684(P2010−276684)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(390002233)ケミカルグラウト株式会社 (79)
【出願人】(390025759)株式会社ワイビーエム (26)
【Fターム(参考)】