説明

地盤改良用撹拌装置

【課題】 従来例のような撹拌車のスリップを防止し、回転速度を高めて撹拌効率の良い撹拌装置を提供する。
【解決手段】 下端部に複数本の掘削羽根を放射状に突設してなる回転軸において、
上記掘削羽根の上位において、上記回転軸に回転自在に被嵌されたボスに、先端部を周囲の地盤に食いこませて回り止めとすべき複数本の回り止めアームを放射状に突設し、
上記回り止めアームのボスに、車輪外周部に多数本のピンを突設してなる駆動ピン車を同心的に固定し、
上記複数本の掘削羽根上に、車輪外周部に多数本のピンを突設してなる撹拌ピン車を、それぞれ回転自在に軸支すると共に、各撹拌ピン車のピンを上記駆動ピン車のピンとそれぞれかみ合わせた、
地盤改良用撹拌装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、地盤改良において、掘削土砂を撹拌破砕すると共に土砂と固化材とを撹拌混合するための撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の撹拌装置として、下記の特許文献1に示すように、下端に掘削羽根(4)を有する回転軸(1)の適所に、周囲の地盤に両端部を食いこませて回り止めする横軸(10)のボスを回転自在に被嵌し、上記掘削羽根(4)上に、上面に2枚の撹拌羽根を突出する2個の撹拌摩擦車(14)、(14)を回転自在に軸支すると共に、上記回り止め横軸(10)のボスに駆動摩擦車(16)を固定し、上記撹拌摩擦車(14)、(14)の外周面を駆動摩擦車(16)の外周面に接した状態で、上記回転軸(1)の回転により上記撹拌摩擦車(14)、(14)を公転させつつ、駆動摩擦車(16)との接触により自転させて撹拌を行うものが知られている。
【0003】
しかし、上記摩擦車式撹拌装置では、撹拌車及び駆動車の摩擦による磨耗が甚だしく、その補修整備に費用がかさむばかりでなく、撹拌車のスリップが生じ易く、撹拌に支障を来す欠点があった。
【0004】
これを改善するため、特許文献2に示すように、下端に掘削羽根(2)を有する回転軸(1)に、周囲の地盤に両端部を食いこませて回り止めとする横軸(4)のボスを回転自在に被嵌し、上記回り止め横軸(4)に、複数本撹拌棒(13)…を放射状に突設された撹拌筒(12)、(12)を回転自在に被嵌すると共に、上記回転軸(1)に2本の回転駆動棒(14)、(14)を突設し、上記回転軸(1)の回転により上記駆動棒(14)、(14)が回転しつつ上記撹拌棒(13)…を順次押して回転させ、該駆動棒(14)、(14)及び撹拌棒(13)…の各回転により撹拌を行うものが提案された。
【0005】
しかし、上記提案例では、撹拌棒(13)…の回転速度が、回転軸(1)の1回転で撹拌棒(13)2本を押すだけの極めて遅速な回転であるため、撹拌効率が極めて低い難点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3590620号
【特許文献2】特開平8−120665
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明は、撹拌車のスリップは全くなく、確実に回転して広範囲のスペースを撹拌し、しかも撹拌車が従来より早く回転して効率の良い撹拌を行うことのできる撹拌装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題解決の手段として、本発明者は、車輪の外周部に多数本のピンを突設してなるピン車を撹拌車及び駆動車に使用し、その多数ピンを撹拌ピン及び回転伝達手段として利用することに着想したもので、まず本願第1発明は、
【0009】
下端部に複数本の掘削羽根を放射状に突設してなる回転軸において、
上記掘削羽根の上位において、上記回転軸に回転自在に被嵌されたボスに、先端部を周囲の地盤に食いこませて回り止めとすべき複数本の回り止めアームを放射状に突設し、
上記回り止めアームのボスに、車輪外周部に多数本のピンを突設してなる駆動ピン車を同心的に固定し、
上記複数本の掘削羽根上に、車輪外周部に多数本のピンを突設してなる撹拌ピン車を、それぞれ回転自在に軸支すると共に、各撹拌ピン車のピンを上記駆動ピン車のピンとそれぞれかみ合わせた、
地盤改良用撹拌装置を提案する。
【0010】
本願第2発明は、
下端部に複数本の掘削羽根を放射状に突設してなる回転軸において、
上記掘削羽根の上位において、上記回転軸に回転自在に被嵌されたボスに、先端部を周囲の地盤に食いこませて回り止めとすべき複数本の回り止めアームを放射状に突設し、
上記回り止めアームの下位において、上記回転軸に、車輪外周部に多数本のピンを突設してなる駆動ピン車を同心的に固定し、
上記複数本の回り止めアームに、車輪外周部に多数本のピンを突設してなる撹拌ピン車を、それぞれ回転自在に軸支すると共に、各撹拌ピン車のピンを上記駆動ピン車のピンとそれぞれかみ合わせた、
地盤改良用撹拌装置を提案する。
【発明の効果】
【0011】
本願第1及び第2発明の地盤改良用撹拌装置によれば、撹拌ピン車と駆動ピン車のピン同志のかみ合いによりスリップの無い確実なかみ合いを継続することができると共に、撹拌ピン車は駆動ピン車とのかみ合いにより回転して、その多数本のピンにより撹拌を遂行することができ、しかも撹拌ピン車の多数本のピンと駆動ピン車の多数本のピンとのかみ合いにより、撹拌ピン車は、従来装置よりも早い回転速度で回転することができ、それにより効率の良い有効撹拌を行うことができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の撹拌装置の一部縦断正面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】(イ)撹拌ピン車の拡大縦断面図である。 (ロ)撹拌ピン車の他の例の同上断面図である。
【図4】(ハ)、(ニ)、(ホ)撹拌ピン車のさらに他の例のそれぞれ拡大縦断面図である。
【図5】撹拌装置の他の実施例の一部縦断正面図である。
【図6】図5のV−V線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願第1及び第2発明における「撹拌ピン車」は、2本に限らず3本又は4本の掘削羽根の上に、又は回り止めアームにそれぞれ回転自在に軸支し、これら3個又は4個の撹拌ピン車を駆動ピン車にそれぞれかみ合わせた構成にすることもできる。
【実施例】
【0014】
以下図面を参照して本願第1発明の実施例について詳述する。図1において、中空回転軸(1)の下端にビット(2)を下向きに突設し、そのやや上位に2本のプロペラ形掘削羽根(3)、(3)を放射状に突設し、さらに上記掘削羽根(3)、(3)と適宜間隔をあけた上位に、ボス(4)を回転軸(1)に対し回転自在に被嵌し、該ボス(4)の外周面に、2本の回り止めアーム(5)、(5)を放射状に突設し、この掘削羽根(3)、(3)と回り止めアーム(5)、(5)の間に本発明の撹拌装置(A)が装備されている。(6)…は、上記回り止めアーム(5)、(5)上位の回転軸(1)外周面に突設されたプロペラ形撹拌羽根、(7)は回転軸(1)上端の接続用オス継手、(17)は回転軸(1)下端部の固化材吐出口である。
【0015】
上記撹拌装置(A)は、本例では、2個の撹拌ピン車(8)、(8)と、これらがかみ合う駆動ピン車(9)とからなる。撹拌ピン車(8)、(8)は、切頭円錐状の車輪(10)の円錐状斜面に多数本のピン(11)…(本例では6本)を等間隔で放射状に突設したもので、これを上記掘削羽根(3)、(3)上に突設されたブラケット(12)、(12)に、切頭面を上に向けた状態で、軸(13)、(13)により回転軸(1)横断平面上で回転自在に軸支してある。
【0016】
上記駆動ピン車(9)は、同じく切頭円錐状の車輪(14)の円錐状斜面に多数本のピン(15)…(本例では8本)を等間隔で放射状に突設したもので、この車輪(14)を、上記回り止めアーム(5)、(5)の下位において、切頭面を下に向けた状態で、回転軸(1)に回転自在に被嵌すると共に、上記回り止めアームのボス(4)にボルト(16)‥により固定し、そのピン(15)…を上記撹拌ピン車(8)、(8)のピン(11)…、(11)…とかみ合わせている。
【0017】
上記撹拌ピン車(8)、(8)及び駆動ピン車(9)の各ピン(11)…、(15)…は、図3(イ)に撹拌ピン車(8)のピン(11)…を例示するように、ピン(11)の基部にオネジ部(18)を設け、これを車輪(10)に設けたメネジ孔(19)に螺合するようにしてある。又、同図(ロ)に示すように車輪(10)のピン孔(20)にピン(11)の基部を嵌入し、テーパーピン(21)を打ちこんで固定してもよい。それにより激しい撹拌時に損傷したピンの付け替えを容易化している。
【0018】
さらにピン取付構造の他の例として、図4(ハ)は、車輪(10)のピン孔(20)に、基端をテーパー面(22)に形成したピン(11)と、その基端側に、上記テーパー面(22)と同一傾斜のテーパー面(23)を有するコマ(24)とを隣接して挿入し、そしてピン(11)に回転自在に縦通されたヘッドつきネジ棒(25)を上記コマ(24)に螺合し、該ネジ棒(25)の回し操作によりピン(11)、コマ(24)をピン孔(20)面に圧接させるものである。同図(ニ)は、車輪(10)のピン孔(20)に、基部を中空開放端に形成したピン(11)と、上記中空開放端に当接した切頭円錐体のコレット(26)とを挿入し、上記ピン(11)に回転自在に縦通されたヘッドつきネジ棒(25)を上記コレット(26)に螺合し、該ネジ棒(25)の回し操作によりコレット(26)を外方へ移動させ、ピン(11)の中空開放部分を拡開させてピン孔(20)面に圧接させるものである。同図(ホ)は、車輪(10)の下面を、ピン孔(20)と連通状態に開口し、該開口に、山形突条(28)を有する座金(27)を上下動自在に嵌合し、ピン(11)の基部に、上記山形突条(28)に対応する谷形環状溝(29)を形成し、ボルト(30)をゆるめて押え板(31)を持ち上げた状態で、ピン(11)をピン孔(20)に挿入し、座金(27)の山形突条(28)に谷形溝(29)を係合した後、ボルト(30)を締めて押え板(31)を押し下げて上記突条(28)と溝(29)の係合を押圧するものである。
【0019】
上例の作用を作業とともに説明する。マストに昇降自在に支持された回転駆動装置の出力軸に撹拌ロッドの上端を接続し、該ロッドの下端に本発明の撹拌装置(A)をオス継手(7)を介して接続する。
【0020】
回転駆動装置の始動により撹拌ロッド及び撹拌装置(A)を回転させて改良すべき地盤にビット(2)、掘削羽根(3)、(3)により掘削を開始する。上記掘削羽根(3)、(3)の回転に伴い撹拌ピン車(8)、(8)が公転し、一方回り止めアーム(5)、(5)が周囲の地盤にアーム先端部を食いこませて回り止め状態となり、それに伴い駆動ピン車(9)が静止状態となり、かくして上記の公転する撹拌ピン車(8)、(8)が駆動ピン車(9)とのかみ合いにより自転しつつ公転して、そのピン(11)…、(11)…により撹拌を行うこととなる。
【0021】
その際、撹拌ピン車(8)、(8)は縦孔(H)内の全域にわたって隈なく公転して撹拌を行うと共に、撹拌ピン車(8)、(8)は、駆動ピン車(9)との多数本のピン(11)…とピン(15)…とのかみ合いによって相当早い速度で回転して有効な撹拌を行う。
【0022】
そこで、上記掘削羽根(3)、(3)により掘削された土砂は上方へ送られ、そこで自転しつつ公転する撹拌ピン車(8)、(8)の多数本のピン(11)…、(11)…による有効な撹拌破砕を受ける。
【0023】
上記掘削、撹拌とともに、吐出口(17)からセメントミルク等の固化材を吐出すれば、該固化材と掘削土砂を撹拌ピン車(8)、(8)の多数ピン(11)…、(11)…により撹拌混合され、良質のソイルセメントに形成される。
【0024】
なお、上記撹拌ピン車(8)、(8)により撹拌破砕された土砂及び撹拌混合された固化材と土砂の混合物は、撹拌ピン車(8)、(8)の真上に位置する回り止めアーム(5)、(5)に打ちつけられて、さらに撹拌、破砕、混合を受け、さらにその上位の撹拌羽根(6)…により撹拌を受ける。
【0025】
本願第2発明の実施例を図5、6に示す。回り止めアーム(5a)…の下位において、回転軸(1a)に駆動ピン車(9a)をキー(21a)により回転不能に固定し、撹拌ピン車(8a)は、本例では2本の回り止めアーム(5a)、(5a)…の各下面に固定された2個のブラケット(12a)、(12a)にそれぞれ回転自在に軸支された2個からなり、各撹拌ピン車(8a)、(8a)の各ピン(11a)…、(11a)…を上記駆動ピン車(9a)のピン(15a)…とそれぞれかみ合わせてある。
【0026】
本例では、回転軸(1a)の回転により駆動ピン車(9a)が回転し、それとかみ合う2個の撹拌ピン車(8a)、(8a)をそれぞれ回転させて各ピン(11a)…により撹拌を行なう。
【0027】
本願第1及び第2発明における撹拌ピン車(8)、(8a)及び駆動ピン車(9)、(9a)は、図1に示すようにピン(11)の軸心線と回転軸(1)の軸心線とのなす角度(d1)、及びピン(15)の軸心線と回転軸(1)の軸心線とのなす角度(d2)は、
1,d2=約5°〜85°
の角度範囲にあることが望ましい。上記角度範囲におくことにより、
(1) d1,d2=90°のとき、かみ合うピン(11)…とピン(15)…が水平面上に位置し、それらピン(11)…、(15)…上に残った礫等をピン(11)…、(15)…の間にかみ込むおそれが生じるが、そのようなおそれを除く。
(2) ピン(11)…、(15)…の長さを長くすることができる。
【符号の説明】
【0028】
A、Aa 撹拌装置
1、1a 回転軸
3、3a 掘削羽根
4、4a ボス
5、5a 回り止めアーム
8、8a 撹拌ピン車
9、9a 駆動ピン車
11、11a、15、15a ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端部に複数本の掘削羽根を放射状に突設してなる回転軸において、
上記掘削羽根の上位において、上記回転軸に回転自在に被嵌されたボスに、先端部を周囲の地盤に食いこませて回り止めとすべき複数本の回り止めアームを放射状に突設し、
上記回り止めアームのボスに、車輪外周部に多数本のピンを突設してなる駆動ピン車を同心的に固定し、
上記複数本の掘削羽根上に、車輪外周部に多数本のピンを突設してなる撹拌ピン車を、それぞれ回転自在に軸支すると共に、各撹拌ピン車のピンを上記駆動ピン車のピンとそれぞれかみ合わせた、
地盤改良用撹拌装置。
【請求項2】
下端部に複数本の掘削羽根を放射状に突設してなる回転軸において、
上記掘削羽根の上位において、上記回転軸に回転自在に被嵌されたボスに、先端部を周囲の地盤に食いこませて回り止めとすべき複数本の回り止めアームを放射状に突設し、
上記回り止めアームの下位において、上記回転軸に、車輪外周部に多数本のピンを突設してなる駆動ピン車を同心的に固定し、
上記複数本の回り止めアームに、車輪外周部に多数本のピンを突設してなる撹拌ピン車を、それぞれ回転自在に軸支すると共に、各撹拌ピン車のピンを上記駆動ピン車のピンとそれぞれかみ合わせた、
地盤改良用撹拌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−80201(P2011−80201A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231115(P2009−231115)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(500303814)キューキ工業株式会社 (2)
【出願人】(000177416)三和機材株式会社 (144)
【Fターム(参考)】