説明

地盤改良用注入装置

【課題】 噴射液体による削孔壁面の削孔効率を十分に高めながら、噴射圧力に基づく反力に起因する注入管の撓み変形、偏芯、さらには注入管の強度劣化を回避可能にする。
【解決手段】 モニター機構9の外周面にこの外周面を円周方向に2つに分けた領域の一方の領域側に噴射口が臨むように複数の噴射ノズル10を設け、その複数の噴射ノズル10が斜めの上下方向に列設されるように配置し、この噴射ノズル10上方の注入管1の外周を覆うようにロットセントラライザー16を設けた構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固化材液噴射ノズルおよびエアー噴射ノズルが設けられたモニター機構を下部に有し、その上方にロッドセントラライザーを有する注入管を地盤中に挿入し、該注入管の上部にスイベルを連結し、該スイベルより固化材液およびエアーを高圧供給し、注入管を通しモニター機構の固化材液噴射ノズルから固化材液を管外方(例えば、水平方向)へ連続的に噴射させるとともに、エアー噴射ノズルから固化材液噴射ノズルの周囲にエアーを高圧で連続的に噴射させて注入管を回転させつつ地盤中より引き上げることにより、主に固化材液の噴射力で周囲の地盤を掘削し、その掘削領域に固化材液を注入撹拌して地盤改良体を築造する地盤改良用注入装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、固化材液を高圧噴射撹拌して軟弱地盤を固化改良する軟弱地盤改良工法は、よく知られている。この軟弱地盤改良工法は、下部にモニター機構を有する注入管の上部にスイベルを連結し、この注入管を地上から地盤中の所定深さまで挿入し、その後、注入管の上部に設けたスイベルの固化材液供給口から固化材液を高圧で供給し、注入管下部のモニター機構の固化材液噴射ノズルから固化材液を管外方水平方向へ連続的に噴射させ、注入管を回転させつつ引き上げることにより、連続的に噴射する固化材液の噴射力(噴流)でその周囲の地盤を掘削するとともに、その掘削領域に固化材液を注入撹拌して地盤改良体を築造するものである。
【0003】
この地盤改良工法では、図13に示すような内管32内が固化材液の供給通路34となり、内管32と外管33の間がエアーの供給通路35となっている二重管の注入管31を用いる。この注入管31は下部に固化材液噴射ノズル41と、この固化材液噴射ノズル41の周囲からエアーを噴射するエアー噴射ノズル42が設けられたモニター機構39を有する。この注入管31の上部には固化材液供給口37とエアー供給口38が設けられたスイベル36が連結されている。スイベル36の固化材液供給口37より高圧供給した固化材液を固化材液の供給通路34を介しモニター機構39の固化材液噴射ノズル41より噴射させると同時に、スイベル36のエアー供給口38より高圧供給したエアーをエアーの供給通路35を介しエアー噴射ノズル42より固化材液噴射ノズル41の周囲に噴射させて、地盤改良する。
【0004】
また、図14に示すように内管32内が固化材液の供給通路34となり、内管32と中間管40の間が水の供給通路43となり、中間管40と外管33の間がエアーの供給通路35となっている三重管の注入管45を用いて行う地盤改良方法がある。この注入管45は、下部に固化材液噴射ノズル41と、この固化材液噴射ノズル41の周囲からエアーを噴射するエアー噴射ノズル42と、固化材液噴射ノズル41より上方の180度対称位置に設けられた水噴射ノズル44とが設けられたモニター機構39を有する。この注入管45の上部には、固化材液供給口37と、エアー供給口38と、水供給口46とを有するスイベル36が連結されている。スイベル36の固化材液供給口37より高圧供給した固化材液を固化材液の供給通路34を介しモニター機構39の固化材液噴射ノズル41より噴射させると同時に、スイベル36のエアー供給口38より高圧供給したエアーをエアーの供給通路35を介しエアー噴射ノズル42より固化材液噴射ノズル41の周囲に噴射させ、さらにスイベル36の水供給口46より高圧供給した水を水噴射ノズル44から噴射させて、地盤改良するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、上部にスイベル36を、下部にモニター機構39を備える注入管31、45の地盤中への挿入は、スイベル36の固化材液供給口37から水を高圧供給し、固化材液の供給通路34を介しモニター機構39の先端の開口47より下向き吐出しつつ地盤を削孔し挿入する場合と、ボーリングマシン等で先行して削孔した後に、この削孔に挿入する場合とがある。
【0006】
そして、従来の地盤改良用注入管のモニター機構では、単口の固化材液噴射ノズルが1個のもの、単口の固化材液噴射ノズルが180度対称位置に配置されて2個が存在するもの及び単口の固化材液噴射ノズルが1個で、該固化材液噴射ノズルより上方の180度反対側に水噴射ノズルが1個設けられているもの、等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−091026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の地盤改良用注入装置のモニター機構は、注入管下部のモニター機構の固化材液噴射ノズルから固化材液を管外方へ水平かつ連続的に噴射させるとともに、その注入管を回転させながら引き上げることで、その固化材液の噴射圧力で地盤内の削孔壁面を掘削しながら地盤を固め、地盤改良を行うものであるところ、この固化材液の噴射によってモニター機構上部のロッドが前記噴射力に伴う反力を受けて撓み変形、偏芯するという不都合があった。また、その反力の大きさに偏りが生じたり、撓み変形が繰り返されることにより、前記注入管の強度劣化を招いたりするという不都合があった。
【0009】
これに対して、前記注入管の撓み変形、偏芯を回避するために、前記モニター機構の複数の噴射ノズルをその円周方向の対称位置(例えば、円周を180度で分けた2つの半周部分のそれぞれ)に配置したり、噴射反力が円周方向の各位置で近似するようにノズル径や固化材液の供給圧力を適切に調整したりすることも考えられる。しかし、前記対称位置に噴射ノズルを別々に設けることはコストの上昇を招き、さらに各噴射ノズルにおける噴射圧力の低下を招き、削孔壁面の掘削効率が悪くなるという不都合がある。また、噴射ノズル径や固化材液の供給圧力を噴射ノズルごとに調整する場合には、この調整設備コストおよびメインテナンスコストが多大なものになってしまう。
【0010】
本発明は、かかる従来の不都合に着目してなされたものであり、その目的とするところは、少ない噴射ノズル数であるにも拘わらず、また噴射ノズルが注入管の中心より偏った位置(前記半周部分)に設けられても、噴射液体による削孔壁面の削孔効率を十分に高めながら、前記噴射圧力に基づく前記反力に基づく注入管の撓み変形、偏芯、さらには注入管の強度劣化を回避できる地盤改良用注入装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するために、本発明に係る地盤改良用注入装置は、噴射ノズルが設けられたモニター機構を下部に有し、該モニター機構の噴射ノズルは固化材液噴射ノズルが中心に位置し、その外側にエアー噴射ノズルが同心的に二重ノズルの格好で設けられ、固化材液噴射ノズルから噴射する固化材液の周囲に同時に同方向にエアーが噴射可能となっている注入管であり、前記注入管のモニター機構の噴射ノズルは、周面を円周方向に2つに分けた半周面の一方に複数が所定間隔で斜め方向に列設され、これらの噴射ノズルの上方における注入管の周囲には噴射ノズルからの固化材液およびエアーの噴射で生ずる噴射圧力の反力による注入管の撓み、偏芯を防止するロットセントラライザーが設けられていることを特徴とする。
【0012】
この構成により、各噴射ノズルから噴射された噴射流体による地盤(削孔壁面)の削孔、攪拌機能の相乗効果が得られるとともに、注入管を回転して噴射流体を噴射させた際に、モニター機構下方の噴射口からの噴射が、回転方向に遅れてくる上方の噴射口からの噴射に先行するため、噴射流体は地盤の削孔壁面を、時間差を以って順次効率よく掘削し、掘削された土砂を攪拌するために、固化材液と土砂との攪拌効率が向上するほか、例えば噴射ノズルを円周方向に並列したものよりも、小口径の注入管の使用で対応可能になる。
【0013】
前記噴射ノズルは、複数個をモニター機構の全周面に設けるのではなく、モニター機構を円周方向に2分割した略半周面の一方に設けられるので、噴射のノズルの口数を減らせる分ノズル径を大きくしたり、噴射距離を長くしたりすることができ、これにより所期の噴射圧力の高いまたは噴射流量の大きい噴射流体を削孔壁面に集中させることができ、削孔壁面の掘削効率および掘削した土砂の攪拌効率を高めることができる。さらに、噴射ノズルの噴射口をモニター機構の片側(半周面)に集中的に配置したことで、噴射ノズルの砲身を長くすることができ、噴射流体の流れの平滑化および安定化を実現できる。また、各噴射ノズルの斜め配置によって、掘削した土砂の流れが注入管の回転方向とは逆の固化材液中に逃げやすくなり、噴射による掘削効率が向上する。
【0014】
一方、モニター機構の直上に設けられたロットセントラライザーは、その外周が掘削された地盤中の削孔の壁面に近接または接触する。このため、注入管が円周方向の偏った位置の噴射ノズルから固化材液を噴出している際に噴射反力を受けることがあっても、そのロットセントラライザーの触れ量が削孔壁によって規制されるために僅かであり、注入管が撓み変形、偏芯することはない。
【0015】
また、本発明にかかる地盤改良用注入装置は、前記モニター機構に所定間隔で斜め方向に列設された複数の噴射ノズルが、各噴射方向の中心軸が互いに平行になるように設けたことを特徴とする。
この構成により、削孔壁面の所定領域に対して噴射流体を均等に作用させることができ、削孔壁面の掘削および掘削された土砂の攪拌の効率を向上することができる。
【0016】
また、本発明にかかる地盤改良用注入装置は、前記モニター機構に所定間隔で斜め方向に列設した複数の噴射ノズルが、注入管に直交する方向から上方に45度〜70度の範囲で斜めに列設されていることを特徴とする。
この構成により、噴射流体削孔壁面に対する掘削効率を最適化でき、0度〜45度や70度〜90度の範囲で生じる掘削効率の顕著な低下を避けることができる。
【0017】
また、本発明にかかる地盤改良用注入装置は、前記モニター機構に所定間隔で斜め方向に列設された複数の噴射ノズルは、噴射角度を水平方向より斜め下方に向けて設けたことを特徴とする。
この構成により、掘削廃泥屑の流動を掘削済みの下方に向ける効果があり、削孔内の流体の還流がスムースになって掘削効率がさらに向上する。また、複数の噴射位置からの流体噴射によって、掘削した土砂がスムースに下方へ逃げ、掘削後の土砂が他の噴射ノズルからの噴射流体の噴射を妨げることを回避できる。
【0018】
また、本発明にかかる地盤改良用注入装置は、前記ロットセントラライザーは、注入管に対し回転自在にもうけられていることを特徴とする。
この構成により、噴射ノズルからの噴射流体の噴射圧力で注入管が受ける反力を削孔内壁に接するロットセントラライザーが受けることにより、注入管が撓み変形、偏芯することを未然に回避することができる。この場合において、ロットセントラライザーが注入管の回りに回転自在であることにより、ロットセントラライザーは注入管の回転に追従することはない。このため注入管の回転および上昇に伴ってこのロットセントラライザーが引き上げられる際に、このロットセントラライザーの味噌摺り運動が発生するのを抑えることができ、これによりロットセントラライザーとの干渉による削孔壁面の損傷を回避できる。
【0019】
なお、具体的には、本発明に係る地盤改良用注入装置は、注入管の上部にスイベルが連結され、前記注入管は、内管と外管の二重管となっていて、内管内が固化材液供給通路、内管と外管との間がエアー供給通路となっており、固化材液供給通路がモニター機構の固化材液噴射ノズルに連通し、エアー供給通路がエアー噴射ノズルに連通しスイベルから供給された固化材液およびエアーは、それぞれの供給通路を介し噴射ノズルに供給される。
この構成により、固化材液およびエアーの噴射を1本の注入管およびモニター機構により実現できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、噴射ノズルからの噴射流体による削孔壁面の削孔効率を大幅に向上でき、その噴射流体の噴射圧力に基づいて発生する反力が注入管を撓み変形、偏芯させることを確実に防止でき、以って注入管の強度劣化を効果的に防止できる。
【0021】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための最良の形態を添付の図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態による地盤改良用注入装置を示す縦断面図である。
【図2】図1におけるA‐A線断面図である。
【図3】本発明におけるモニター機構を示す説明図である。
【図4】本発明における別のモニター機構を示す説明図である。
【図5】本発明におけるモニター機構に設置される噴射ノズルの配置例を示す説明図である。
【図6】本発明による地盤改良用注入装置のモニター機構による削孔壁面の掘削状況を示す説明図である。
【図7】図6におけるロットセントラライザーを示す断面図である。
【図8】図6における別のロットセントラライザーを示す断面図である。
【図9】図6におけるロットセントラライザーの反力支持作用を示す説明図である。
【図10】他のロットセントラライザーを示す斜視図(a)およびその部分断面図(b)である。
【図11】さらに他のロットセントラライザーを示す斜視図である。
【図12】本発明における地盤改良用注入装置による地盤改良の実行手順を示す説明図である。
【図13】従来の地盤改良用注入管を示す断面図である。
【図14】従来の他の地盤改良用注入管を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施の形態にかかる地盤改良用注入装置を、図1乃至図9を参照して説明する。
【0024】
図1は、上部にスイベル6が連結され、下部にモニター機構9を備える地盤改良用注入管1(単に、注入管と称することもある。)を示している。地盤改良用注入管1は、内管2と外管3の二重管で形成され、内管2内が固化材液の供給通路4となり、内管2と外管3との間がエアーの供給通路5となっている。
スイベル6は、固化材液の供給口7と、エアーの供給口8を備え、固化材液の供給口7は、通路7aを介し注入管1の固化材液の供給通路4に連通し、エアーの供給口8は、通路8aを介し注入管1のエアーの供給通路5に連通している。
【0025】
モニター機構9には、噴射ノズル10が設けられている。該モニター機構9の噴射ノズル10は、固化材液噴射ノズル11が中心に位置し、その外側にエアー噴射ノズル12が同心的に二重ノズルの格好で設けられ、固化材液噴射ノズル11から噴射する固化材液の周囲に同時に同方向にエアーが噴射可能になっている。固化材液噴射ノズル11には注入管1の固化材液供給通路4が連通し、エアー噴射ノズル12には注入管1のエアー供給通路5が連通し、スイベル6の固化材液供給口7より高圧供給された固化材液は、注入管1の固化材液供給通路4を介し固化材液噴射ノズル11から噴射でき、スイベル6のエアー供給口8より高圧供給されたエアーは、注入管1のエアー供給通路5を介しエアー噴射ノズル12から噴射できるようになっている。
【0026】
図3は、固化材液の噴射ノズル11とエアーの噴射ノズル12で構成される3個の噴射ノズル10が、モニター機構9の円周方向に並設された場合を示す。具体的には、噴射ノズル10は、モニター機構9の外周面を円周方向に2つに分けた領域の一方の領域側に噴射口が臨むように設けられている。また、この噴射ノズル10は3個が所定間隔をおいて前記一方の領域の外周面に斜め方向に列設されている。ここでは、噴射口が前記一方の領域側に偏って臨むように設けられているため、図2に示すように噴射ノズル10をその噴射口の反対側へ長く延設することができる。これにより、後述のように固化材液の噴射を安定化させたり、噴射距離を延ばしたりすることができる。
【0027】
また、図4は、固化材液噴射ノズル11とエアー噴射ノズル12で構成される4個の噴射ノズル10が、モニター機構9の円周方向に並設された場合を示す。具体的には、噴射ノズル10は、モニター機構9の外周面を円周方向に2つに分けた領域の一方の領域側に噴射口が臨むように設けられている。また、この噴射ノズル10は4個が所定間隔をおいて前記一方の領域の外周面に斜め方向に列設されている。そして、図3および図4に示す3個または4個の噴射ノズル10は、注入管1における円周方向の異なった高さ位置から噴射する固化材液やエアーを地盤である削孔壁面に噴射することで、噴射ノズル数に応じた所定幅の領域を効率的に掘削することができる。
【0028】
このように、モニター機構9の片側の領域に噴射口が臨むように設置された噴射ノズル10は、上下方向に斜めに配置されることで、モニター機構9に対する噴射ノズル10数を少なくし、これによって固化材液およびエアーの噴射流体を、同一のポンプ能力を使用しているにも拘わらず、少ない噴射ロスにて削孔壁面に強力に作用させることができる。また、例えば削孔壁面を噴射ノズル10の「噴射口数−1」を掘削面として効率的に掘削することができる。
【0029】
また、固化材液の噴射ノズル11およびエアーの噴射ノズル12からなる噴射ノズル10を、モニター機構9の外周面を円周方向に2つに分けた領域の一方の領域側に噴射口が臨むように設けた場合には、2つに分けた領域の両方に噴射口が臨むように設けた場合に比べて、その噴射ノズル10の口径を大きくすることができ、固化材液およびエアー噴射有効距離を伸ばすことができる。また、小径の固化材液の噴射ノズル11およびエアーの噴射ノズル12が例えば4個設けられた場合と、大径の固化材液の噴射ノズル11およびエアーの噴射ノズル12が例えば3個設けられた場合とで、各固化材液および各エアーをそれぞれ同量宛て噴射させることもできる。
【0030】
各噴射ノズル10は一定の間隔であるものの、注入管1の軸方向(垂直方向)に向かって斜めに列設されるとともに、注入管1の回転方向において、最下方位置の噴射ノズル10からの噴射流体の噴射が先行して、削孔壁面に向かって噴射された順次その斜め上の噴射ノズル10から噴射流体の噴射が行われるので、削孔壁面の下方から上方へ効果的に掘削していくこととなる。従って、掘削された土砂と固化材液とが噴射流体の噴流に影響を与えることなく掘削できる。
【0031】
この場合において、掘削によって固化材液とエアーからなる掘削流体によって混合された土砂は削孔の底側に沈殿し易くなり、地上に上昇する余剰液中の土砂粒子を減少させることができる。なお、モニター機構9における噴射ノズル10の傾斜配置として、図5(a)に示すように、傾斜配置された例えば3個の噴射ノズル10の中心を結ぶ線L1が仮想上の水平線L2に対しなす角度を60度としたもの、図5(b)に示すように、各噴射ノズル10の上下間隔L3および径を大きくしたもの、図5(c)に示すように、3個の噴射ノズル10の中心を結ぶ線L4が仮想上の水平線L5に対しなす角度を45度として、噴射ノズル10の上下間隔および径をさらに大きくしたものなどが、考えられる。
【0032】
また、本発明では、モニター機構9外周の前記半分の領域に偏って噴射ノズル10の噴射口を臨ませるように設けたことで、噴射ノズル10の全長(砲身)を大きくすることができ、これによって噴射流体の噴射距離を延ばすことができるとともに、その噴射流体を整流して安定化させることができる。また、モニター機構9の全周面に噴射ノズル10の噴射口を望ませた場合に比べて、噴射ノズル10の設置数が少ないため、その分噴射口の口径を大きくしたり噴射距離を長くしたりしても、所期の噴射圧力が得られる。なお、噴射流量や噴射距離を長くしない場合には、噴射流体やエアーの供給用ポンプの小型化や小容量化を実現できる。この場合において、斜め下方に配置された噴射ノズル10のうち中央の噴射ノズル10は、これの斜め上及び斜め下にある噴射ノズルによる噴射流に援護されて到達距離をさらに伸長できることとなり、掘削効率を上げることができる。
【0033】
図6は、噴射モニター9の直上部に位置するように、注入管1の外周にロットセントラライザー16を装着したものを示す。このロットセントラライザー16は地盤26の削孔27の内周面に僅かの間隙をおいて接するように進入される。そして掘削作業時にモニター機構9内の噴射ノズル10が噴射流体を噴出する際に発生する反力を受けることで、注入管1が撓み変形、偏芯するのを防止するように機能する。このロットセントラライザー16は、例えば図7に示すように、全体として円筒状をなし、この円筒部16aと、この円筒部16aの上端および下端を注入管1の周面に固定する固定部16b、16cとからなる。固定部16bは円錐状をなし、ここに円筒部16aの内外に連通する複数個の切欠17が設けられている。
【0034】
また、固定部16cにも円筒部16aの内外に連通する複数数個の切欠18が設けられている。これらの切欠17、18は削孔27内に注入管1が進入する際および地上に引き上げられる際に、ロットセントラライザー16の昇降方向に自由に固化材液やや掘削後の土砂粒子が移動可能な流通路となっている。なお、このロットセントラライザー16のサイズおよび強度は前記反力に対応する削孔サイズおよび削孔壁に関する所定数に基づいて設計される。
【0035】
注入管1の外径が、例えば90ミリとした場合には、このロットセントラライザー16の外径が150〜200ミリとされる。そして、前記モニター機構9に前述のように斜めに設けた噴射ノズル10が3個である場合には、注入管1に作用する前記反力を60キログラム以下に抑えることができ、ロットセントラライザー16はこの反力を充分かつ安全に受けることができ、結果として注入管1の撓み変形、偏芯を回避することができる。
【0036】
図8は、他のロットセントラライザー16Aを示す。このロットセントラライザー16Aは、注入管1外周の上下の2箇所に取り付けられたベアリング19、20を介して水平回転自在に取り付けられている。このため、ベアリング19、20の一方のメタルは柱入管1の外周における上下2箇所に溶接などによって固着され、他方のメタルはロットセントラライザー16Aの上下両端の固定部16b、16dに溶接などによって固着されている。このベアリング19、20によってロットセントラライザー16Aは、モニター機構9の直上における注入管1の回りに回転自在に支持された形態となる。固定部16dは固定部16bと同様に全体として円錐状をなし、これに複数個の切欠18が形成されている。
【0037】
図7に示すロットセントラライザー16を持つ注入管1は、これを回転させながら削孔27内から引き上げる際に、図9に示すように、噴射ノズル10からの噴射流体の噴射圧力を受けて、噴射ノズル10から噴射される噴射流体の噴射方向Sとは逆方向Pの反力を受ける。このため、注入管1の下部が矢印Q方向に撓み変形、偏芯しようとする。しかし、この矢印Q方向の変形、偏芯は、ロットセントラライザーが削孔壁面に接触(干渉)することで規制され、従って、注入管1の撓み変形、偏芯を確実に防止できる。
【0038】
一方、注入管1の回転中においては、その注入管1の撓み変形、偏芯に伴って、注入管1の回転によるロットセントラライザー16の微妙な味噌擂り運動が惹起される場合がある。この場合には、図8に示すように、注入管1の回りにベアリング19、20を介して回転自在なロットセントラライザー16Aを取り付けた構成とする。これにより、回転式のロットセントラライザー16Aは注入管1の回転に対してフリーとなり、従って、削孔壁面との回転摩擦を生じることはない。この結果、ロットセントラライザー16Aは味噌擂り運動をすることもない。また、注入管1とともにロットセントラライザー16Aが強制的に回転させられることもない。
【0039】
なお、ロットセントラライザーは、前記実施の形態に限定されるものではない。噴射ノズル10が、モニター機構9の外周面を円周方向に2つに分けた領域の一方の領域側に噴射口が臨むように設けられていることにより、噴射ノズル10から噴射流体(固化材液およびエアー)を噴射すると、その噴射圧力の反力で注入管1に撓み変形が生じたり、注入管1が削孔に対し偏芯することが生ずる。ロットセントラライザーは、このような注入管1の撓み変形、偏芯を防止するものである。従って、ロットセントラライザーは、噴射ノズル10からの固化材液およびエアーの噴射により生ずる噴射圧力の反力での注入管1の撓み変形、偏芯を防止できる構成であればよい。例えば、図10(a)(b)に示すような円筒環16Bや、図11に示すような噴射ノズル10が設けられている一方の領域でない他方の領域に位置して固定された反力受け板16C等を例示できる。円筒環16Bは、注入管1に対し固定式でも回転式でもよいが、図10(b)に示すような回転可能の方が好ましいことは前記した通りである。
【0040】
また、前述のようにモニター機構の周面に所定間隔で斜め方向に列設された複数の噴射ノズルは、噴射口の向き(噴射角度)を、図6の矢印Rで示すように水平方向より斜め下方に向けることもできる。この場合には、掘削面が傾斜することで、掘削後の掘削土と固化材液が下方に流下して掘削後の流れがスムースになる。また、掘削後の固化材液に混合された土砂のうち比重が大きい砂分等は削孔の底部に沈殿し易くなり、地上部に上昇する余剰液中の土砂粒子を減少させることができる。
【0041】
次に、前記実施形態にかかる注入管1を用いて地盤改良する手順を、図12を用いて説明する。
まず、この地盤改良方法で使用する施工装置22の一例を説明する。施工装置22はリーダ23を備え、このリーダ23にはスライド板24がリーダ23に沿って摺動自在(進退自在)に設けられ、このスライド板24にはドリルヘッド25が固設され、スライド板24には給進装置(図示省略)が連結され、リーダ23に沿って進退移動できるようになっている。下部にモニター機構9を有する地盤改良用注入管1は、ドリルヘッド25に取り付けられ、注入管1にはこのドリルヘッド25の駆動で回転を与えられることができ、また、スライド板24にはドリルヘッド25が固設されているので、給進装置(図示省略)でスライド板24をリーダ23に沿って進退させることで、注入管1はドリルヘッド25と共に進退させることができる。給進装置としては、シリンダまたはリーダ23の上端乃至下端に設けられたスプロケットに懸回されて駆動するチェーン、を例示することができる。
【0042】
そこで、まず、図12(a)に示すように施工装置22のドリルヘッド25に注入管1を取付け、施工装置22を地盤改良する位置にセットする。この時の注入管1の上部には、スイベル6が連結される。次に図12(b)に示すように地盤改良する位置に注入管1を、地盤の所定の深度まで挿入する。この注入管1の地盤への挿入は、スイベル6の固化材液供給口7から水を高圧供給し、固化材液の供給通路4を介しモニター機構9の先端の開口13より下向きに吐出しつつ地盤を削孔し挿入するか、ボーリングマシン等で先行して削孔し、その削孔に挿入する。前者の方法で注入管1を挿入した場合には、所定の深度に到達した後に固化材液供給通路4よりボール15を投入し、開口13を閉塞する(図1参照)。なお、14は逆止弁である。
【0043】
次に、図12(c)に示すようにスイベル6より固化材液およびエアーを高圧供給し、注入管1下端のモニター機構9の固化材液噴射ノズル11およびエアー噴射ノズル12より固化材液およびエアーを噴射しつつ注入管1を回転させて引き上げる。すると固化材液およびエアーの噴射力が周辺地盤の削孔壁面に衝突し、周囲の地盤を掘削し、その噴射された固化材液で掘削領域が充填され地盤改良体21が築造される。従って、図12(c)から(d)に示すように注入管1を引き上げるにつれて下方より順次上方に亘って地盤改良体21が築造される。図12(d)は、注入管1が地上に引き上げられ、地盤の所定区間に地盤改良体21が築造された様子を示している。
【0044】
前記固化材液およびエアーの供給は、施工装置22が固化材液およびエアーそれぞれの供給用のポンプ(図示省略)を備え、それぞれのポンプが配管によりスイベル6の固化材液供給口7およびエアーの供給口8に連結している。従って、固化材液は、スイベル6の固化材液供給口7より高圧供給され、通路7aおよび固化材液供給通路4を介し固化材液噴射ノズル11より噴射され、エアーは、スイベル6のエアー供給口8より高圧供給され、通路8aおよびエアー供給通路5を介してエアー噴射ノズル12より噴射される。
【0045】
以上のように、本実施形態では、モニター機構9の外周面にこの外周面を円周方向に2つに分けた領域の一方の領域側に噴射口が臨むように複数の噴射ノズル10を設け、その複数の噴射ノズル10が斜めの上下方向に列設されるように配置し、この噴射ノズル10上方の注入管1の外周を覆うようにロットセントラライザー16を設けたことにより、少ない噴射ノズル10数であるにも拘わらず、また噴射ノズル10が注入管1の中心より偏った位置(前記半周部分)に設けられても、噴射液体による削孔壁面の削孔効率を大幅に向上できるとともに、前記噴射圧力により発生する前記反力に基づく注入管1の撓み変形を防止することができ、以って注入管の強度劣化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、噴射ノズルからの噴射流体による削孔壁面の削孔効率を大幅に向上でき、その噴射流体の噴射圧力に基づいて発生する反力が注入管を撓み変形させないようにすることができ、固化材液の噴射力で削孔壁面を掘削し、その掘削流域に固化材液を注入、攪拌して地盤改良体を築造する場合等に有用である。
【符号の説明】
【0047】
1 注入管
2 内管
3 外管
6 スイベル
9 モニター機構
10 噴射ノズル
11 固化材液噴射バルブ
12 エアー噴射バルブ
16、16A、16B、16C ロットセントラライザー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射ノズルが設けられたモニター機構を下部に有し、該モニター機構の噴射ノズルは固化材液噴射ノズルが中心に位置し、その外側にエアー噴射ノズルが同心的に二重ノズルの格好で設けられ、固化材液噴射ノズルから噴射する固化材液の周囲に同時に同方向にエアーが噴射可能となっている注入管であり、
該注入管のモニター機構の噴射ノズルは、周面を円周方向に2つに分けた半周面の一方に複数が所定間隔で斜め方向に列設され、これらの噴射ノズルの上方における注入管の周囲には噴射ノズルからの固化材液およびエアーの噴射で生ずる噴射圧力の反力による注入管の撓み、偏芯を防止するロットセントラライザーが設けられていることを特徴とする地盤改良用注入装置。
【請求項2】
前記モニター機構に所定間隔で斜め方向に列設された複数の噴射ノズルは、噴射方向の中心軸が互いに平行になるように設けたことを特徴とする請求項1記載の地盤改良用注入装置。
【請求項3】
前記モニター機構に所定間隔で斜め方向に列設した複数の噴射ノズルが、注入管に直交する方向から上方に45度〜70度の範囲で斜めに列設されていることを特徴とする請求項1または2記載の地盤改良用注入装置。
【請求項4】
前記モニター機構の周面に所定間隔で斜め方向に列設した複数の噴射ノズルが、噴射角度を水平方向より斜め下方に向けて設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の地盤改良用注入装置。
【請求項5】
前記ロットセントラライザーは、注入管に対し回転自在にもうけられていることを特徴とする請求項1記載の地盤改良用注入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−122272(P2012−122272A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274530(P2010−274530)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(510225971)株式会社イズミエンジニアリング (2)
【出願人】(591247798)原工業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】