説明

地盤注入装置および地盤注入工法

【課題】注入材の配合、混合および注入を同一の装置により、一連の工程として同時に連続して行うことの可能な地盤注入装置および地盤注入工法を提供する。
【解決手段】複数の原料液が個別に貯蔵された複数の原料液貯蔵タンク1a,1b,1c,1d,…inと、注入地点の地盤中に埋設された注入管3と、各原料液貯蔵タンク1a,1b,1c,1d,…inから注入管3に原料液を送り込み、かつ注入管3を介して地盤中に注入する複数の原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nと、原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nを駆動する複数の電動モーター7を備えて構成する。原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nと電動モーター7はそれぞれ一台ずつで一ユニットを構成し、当該ユニットを複数ユニット備え、かつ当該複数のユニットは制御装置14によって一括および/または個々に制御する。原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nは原料液を吸引および吐出するシリンダー6aとピストン6bをそれぞれ備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弱地盤などの地盤中に複数の原料液からなるシリカグラウト等の注入材を地盤中に注入するための地盤注入装置および地盤注入工法に関し、原料液の配合、混合および注入を同一の装置により、一連の工程として同時に連続して行うことができ、また注入地点の地盤状況や注入状況、地下水状況、さらには周辺環境の変化に応じて原料液の種類や配合比率、ゲル化時間などを注入中にリアルタイムで任意に変更することができる。
【背景技術】
【0002】
土木建築工事における地盤注入工法は、地盤中に注入管を用いて薬液やセメントミルク等の地盤注入材を注入することにより、地盤の透水性を減少させたり地盤強度を増大させる地盤改良工法であり、通常の掘削工事はもとより既存構造物の基礎の耐震強化や液状化防止、さらには護岸の吸出し防止工事などにおいて広く実施されている。
【0003】
また、一般に、地盤注入材には水ガラスと反応剤を混合して得られる水ガラスグラウト、水ガラスと酸を混合して得られるシリカゾル、シリカコロイド、あるいはシリカゾルとシリカコロイドを混合して得られるシリカ溶液と反応剤を混合して得られるシリカグラウドといった複数の原料液を混合して得られる注入材が利用されている。
【0004】
さらに、注入に際しては、地盤状況や注入状況、地下水状況、さらには周辺環境の変化に応じて地盤注入材の吐出量、注入圧力、注入速度、配合などを随時変更することにより地盤注入材の逸送や地盤の亀裂、さらには地盤の隆起などが起こらないように管理されている。
【0005】
例えば、透水性の大きい砂質層や礫質層と透水性の小さいシルト層や粘土層などの複数の地層からなる地盤に対してシリカグラウトを注入する場合、透水性の大きい地層に対してはゲル化時間の短いシリカグラウトが注入され、透水性の小さい地層に対してはゲル化時間の長いシリカグラウトが注入される。
【0006】
また、間隙の大きい地層や粘性土の地層にはシリカ濃度の濃い強度の大きい配合が用いられ、間隙の小さい地層にはシリカ濃度の薄い配合が用いられる。また、地下水流がある場合はゲル化時間が早く、シリカ濃度の濃いシリカグラウトや懸濁液を含むシリカグラウトが用いられる。
【0007】
さらに、RC共同溝などの地中構造物の周辺地盤に対して行う場合は、地中構造物に近接する部分に対しては、特にリン酸化合物などの金属イオン封鎖材を多く含むコンクリート保護機能を有する酸性質のシリカグラウトが注入される。
【0008】
また、液状化対策工法のように一定の液状化強度が要求される場合は、礫分の多い層や間隙の多い層には、シリカ濃度の大きい配合が用いられ、細砂層ではシリカ濃度が低くても充分な強度が得られる。
【0009】
また、既設コンクリート構造物の周辺部の耐震補強に際しては、コンクリート構造物の周辺には恒久性に優れ、あるいは金属イオン封鎖剤を含むシリカコロイドが注入され、特に恒久性が必要とされない部分にはシリカゾルグラウト、あるいは金属イオン封鎖剤を含む酸性シリカゾルグラウト、金属イオン封鎖剤を含まない酸性シリカゾルグラウトが注入されることもある。
【0010】
また、空気を水またはシリカ溶液に混入した微粒子の空気(マイクロバブル)を含む水溶液(マイクロバブルグラウト)や微粒子空気を含むシリカ溶液を注入する地盤改良工法も提案されている。
【0011】
このように、一つの連続する対象地盤に対する地盤注入であっても、場所や深さや構成する土層、さらには地中構造物の存在とその位置関係等によって配合処方の異なる地盤注入材を連続的に注入する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−089925号公報
【特許文献2】特開2003−221222号公報
【特許文献3】特開2010−59673号公報
【特許文献4】特開2007−51481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来、地盤注入材の製造と注入に際し、地盤条件に対応して配合を変える場合は、配合ミキサーを用いてバッチ毎に配合をつくり、その配合液を注入ポンプで注入していた。そして、そのバッチの注入が完了した後、新しい配合をつくって注入ポンプで注入する方法をとらなくてはならなかった。或いは、異なった専用の配合装置を用いて配合液を製造する工程と注入する工程を別工程で行って注入していた。
【0014】
すなわち、地盤注入材の製造プラントにおいて注入地点の地盤状況に合った配合の地盤注入材を製造し、次に地盤注入材の注入プラントにおいて製造された地盤注入材を注入地点の地盤中に注入していた。
【0015】
このため、地盤中に地盤注入材を注入しながら同時に、注入地点の地盤状況や注入状況、地下水状況、さらには周辺環境の変化に合せてリアルタイムで原料液の種類や配合比率、吐出量、さらにはゲル化時間などをコントロールすることは実際上困難であった、
その結果、ある層では地盤注入材が多量に広がったり、またある層ではわずかしか注入されなかったり、さらにはゲル化時間の短い改良材を注入すべきところをゲル化時間の長い改良材が注入されてしまう等の注入のむらが生じやすく、最適な注入ができないでしまうことがあった。
【0016】
また、地盤注入材の製造プラントと注入プラントのふたつのプラントを設置する必要があり、その準備に多大な労力と時間を必要とするだけでなく、設置に際して広いスペースを必要とするため特に市街地や都心部における地盤改良に対応しにくい等の課題もあった。
【0017】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、地盤注入材の製造と注入を同一の装置を用い、一連の注入工程として同時に連続して行うことができ、かつ注入地点の地盤状況や注入状況、地下水状況、さらには周辺環境の変化に応じて、注入中に自動的に原料液の種類や配合比率、ゲル化時間などを自由にリアルタイムで変更することのできる地盤注入装置および地盤注入工法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1記載の地盤注入装置は、複数の原料液を合流させ、かつ注入管を介して地盤中に注入する地盤注入装置において、複数の原料液が個別に貯蔵された複数の原料液貯蔵タンクと、注入地点の地盤中に埋設された注入管と、各原料液貯蔵タンクから注入管に地盤の状況に応じた原料液を選択して送り込み、かつ注入管を介して地盤中に注入する複数の原料液圧送ポンプと、当該原料液圧送ポンプを駆動する複数の駆動装置を備え、前記原料液圧送ポンプと駆動装置はそれぞれ一台ずつで一ユニットを構成し、当該ユニットを複数ユニット備え、かつ当該複数のユニットは制御装置によって一括および/または個々に制御され、前記原料液圧送ポンプは原料液を吸引および吐出するシリンダーとピストンをそれぞれ備え、原料液の配合、混合および注入を同時に連続して行えるように構成されていることを特徴とするものである。
【0019】
本発明は、主として水ガラスグラウト、シリカコロイドグラウト、懸濁型グラウト等のゲル化を伴う地盤注入材の注入に適用され、特にシリカゾルグラウト、シリカコロイドグラウト等の酸性から中性領域でゲル化する地盤注入材の注入に適している。
【0020】
図11に示す酸性〜中性領域でゲル化するシリカグラウトは、水ガラスの劣化要因であるアルカリを酸で除去するため、長期耐久性に優れているが、従来の注入材製造装置のように水ガラスと酸をそれぞれ1バッチ毎に計量し混合してミキサー中に配合貯留し、それを注入ポンプで注入している間にさらに1バッチの配合液を準備するという方式(回分式)では、1バッチを注入している間、配合を変更することができないし、また注入中に多くの数のバッチの配合の変更を連続的に行うことは事実上不可能である。
【0021】
また、注入過程が終わらないうちに注入材のゲル化が進行していくので、途中で注入材がゲル化して注入ができなくなったり、また注入中のバッチがまだ残っているうちに新たな配合のバッチを混入するため正確な配合ができず、シリカ濃度の濃い配合を製造することは不可能であった。
【0022】
また、従来の方法では、酸性シリカゾルのシリカ濃度は実用上10wt%程度であった。それに対し本発明の装置を用いると正確な配合が可能であるのみならず、原料液の配合、混合および地盤注入を同一の装置により同時に連続して行うことができ(連続式)、またシリカ濃度40wt%程度まで可能であり、きわめて高強度の地盤改良を正確に行うことができる。
【0023】
さらに、従来工法としてA液とB液を合流注入する方法も用いられているが、この方法は、A液とB液の吐出速度を調整して注入速度、ゲルタイムを調整することは可能であるが、この方法では配合を自動的にかつ正確に調整することも注入材の組合せを自動的に変動することも不可能であった。
【0024】
勿論、図11における所定のシリカ濃度で所定の酸性領域のpH値で所定のゲルタイムの配合液を注入すること等も不可能であった。このため、中性付近の瞬結領域で注入するか、或いはゲルタイムが極端に長い強酸性で注入するしかなかった。
【0025】
本発明では、各原料液圧送ポンプのピストンのストロークを任意に設定して各原料液の吐出量を設定することにより、(1)原料液を正確に配合することができ、(2)ゲル化時間を正確に設定することができ、(3)地盤注入材の注入状況や地盤状況、さらには周辺環境の変化に応じて最適配合の地盤注入材を同一の装置により連続して製造し、同時に地盤注入することができる。(4)また、注入中において各原料液圧送ポンプの原料液吐出量を変更または中断することにより原料液の変更や配合比率を容易にかつ正確に設定して最適なゲルタイムと強度を有する地盤注入材を製造し、同時に地盤注入することができる。
【0026】
また、原料液圧送ポンプと駆動装置は、それぞれ一台ずつで一ユニットを構成し、当該ユニットを複数ユニット備え、かつユニットごとに独立して作動するように個別に駆動装置を備え、さらに各ユニットを全体として一括して制御することにより、原料液の配合、混合および地盤注入を同一の装置により同時に連続して行うことができる。
【0027】
また、必要とする原料液の数に応じた数の注入装置を作動させることができ、さらにメンテナンスもユニットごとに行うことができる。したがって、多機能を有するコンパクトな地盤注入装置であり、車上プラント等、機動性のある地盤注入装置として実用化が可能である。
【0028】
なお、原料液圧送ポンプの駆動装置には電動モーター、電動アクチュエーター、油圧シリンダー等を利用することができ、特に懸濁型グラウト(セメント系グラウト)の注入には、他の溶液注入材に比べて強力な出力を必要とするため油圧シリンダーを利用するのが望ましい。
【0029】
駆動装置を電動モーターとした場合の各原料液圧送ポンプのストロークは、インバーターによって電動モーターを制御することにより、各原料液圧送ポンプの1ストロークの吐出量を容易に設定することができ、また吐出量を容易に変更することもできる。
【0030】
すなわち、ピストンの1ストローク長を長く設定すると、シリンダー内の容積は大きくなり、各原料液貯蔵タンクから注入管に送り込まれる1ストローク当たりの原料液の供給量は多くなる。一方、ピストンのストローク長を短く設定すると、シリンダー内の容積は小さくなり各原料液貯蔵タンクから注入管内に送り込まれる1ストローク当たりの原料液の供給量は少なくなる。
【0031】
また、各原料液圧送ポンプのピストンの1ストロークが全て同じ時間内で完了するように各ピストンを速度制御することにより、各原料液貯蔵タンクから注入管に送り込まれる1ストロークの原料液を正確に配合することができる。
【0032】
このことから、各ユニットの原料液圧送ポンプの作動容量ごとに複数の原料液が正確に配合された地盤注入材を注入することができ、また配合誤差が加算されることもないので設定された最適配合の地盤注入材を製造しながら、同時に注入することができる。
【0033】
また、各原料液圧送ポンプのシリンダーとピストンを水平(左右)方向または鉛直(上下)方向の同一軸線上に一組備え、かつピストンが同一軸線上の同じピストンロッドによって作動するように構成し、そして電動モーターを制御することにより、ピストンが往復動して原料液の吸込みと吐出を交互に行うことができ、これにより原料液圧送ポンプを効率的に作動させて各原料液貯蔵タンクから注入管に原料液を連続的に送り込み、かつ合流させ、そして注入管を介して地盤中に注入することができる。
【0034】
電動アクチュエーターは、内臓する回転エンコーダの制御によって各原料液圧送ポンプのピストンのストロークを任意に設定することができる。
【0035】
なお、本発明によれば、微粒子の空気(マイクロバブル)を混入した水溶液(マイクロバブル液)、空気を混入したシリカ溶液、反応剤を混入したシリカ溶液、反応剤を加えないシリカ溶液並びに、反応剤水溶液、反応剤を加えない水溶液などの原料液のうち、少なくとも二種類の原料液を合流させて注入することもできる。
【0036】
請求項2記載の地盤注入装置は、複数の原料液を合流させ、注入管を介して地盤中に注入する地盤注入装置において、複数の注入地点に埋設された複数の注入管と、各注入地点の注入管どうしを接続する圧送管と、各注入地点の注入管に圧送管を介してそれぞれ接続された複数の原料液注入装置と、前記圧送管に接続され、注入管に圧送される原料液の流路を切り替える複数の流路切替バルブとを備え、前記原料液注入装置は複数の原料液が個別に貯蔵された複数の原料液貯蔵タンクと、各原料液貯蔵タンクから各注入地点の注入管に地盤の状況に応じた原料液を選択して送り込み、かつ注入管を介して地盤中に注入する複数の原料液圧送ポンプと、当該原料液圧送ポンプを駆動する複数の駆動装置を備え、前記原料液圧送ポンプと駆動装置はそれぞれ一台ずつで一ユニットを構成し、当該ユニットを複数ユニット備え、かつ当該複数のユニットは制御装置によって一括および/または個々に制御され、前記原料液圧送ポンプは原料液を吸引および吐出するシリンダーとピストンをそれぞれ備え、かつ原料液の配合、混合および地盤注入を同時に連続して行えるように構成されていることを特徴とするものである。
【0037】
本発明によれば、複数の注入地点に対して原料液の配合、混合および地盤注入を一連の注入工程として連続して同時に行うことができ、また注入地点ごとに地盤状況や注入状況、地下水状況、さらには周辺環境の変化に応じて原料液の種類や配合比率、ゲル化時間などを注入中にリアルタイムで任意に設定し、かつ変更することができる。
【0038】
また、各原料液注入装置から各注入地点に圧送される原料液の流路を切り替える流路切替バルブを備えていることにより、各注入地点に原料液を圧送するための流路を任意に選択して原料液の圧送と注入をきわめて効率的に行うことができる。
【0039】
また、一部の原料液注入装置にトラブルやメンテナンス等の必要が生じて稼動できない場合でも他の原料液注入装置で対応することができる。
請求項3記載の地盤注入装置は、請求項1または2記載の地盤注入装置において、注入管を介して地盤中に吐出される地盤注入材の流量および/または圧力を検出する流量・圧力検出器を備えていることを特徴とするものである。
【0040】
本発明によれば、注入管を介して地盤中に注入される地盤注入材の流量と圧力のデータから地盤注入材の注入状況を把握することができ、これにより地盤注入材の注入圧力と注入流量を所定の範囲に維持しながら注入することができ、また注入の完了、中止、継続あるいは再注入を行うことができる。
【0041】
この場合、検出される地盤注入材の流量および/または圧力データの信号を制御装置に送信し、この情報に基づいて各原料液圧送ポンプを作動させることにより各原料液貯蔵タンクから注入管に送り込まれる原料液の流量と速度等を調整すればよい。また、流量・圧力検出器は注入管または圧送管に取り付けることができる。
【0042】
請求項4記載の地盤注入装置は、請求項1〜3のいずれかひとつに記載の地盤注入装置において、原料液圧送ポンプは、駆動装置を挟んでその両側の同一軸上に対向して設置された一組のシリンダーと、ピストンロッドに連動して前記シリンダー内を往復動する一組のピストンを備えて構成されていることを特徴とするものである。
【0043】
本発明は、原料液圧送ポンプにタンデム型のピストンポンプを利用したものであり、本発明によれば一組のピストンが対応する一組のシリンダー内を交互に往復動して原料液の吸引と圧送を同時に行うことにより、特に従来型の単一シリンダー型のピストンポンプに比べて原料液貯蔵タンクから注入管へ原料液をきわめて効率的に圧送することができる。
【0044】
請求項5記載の地盤注入装置は、請求項1〜4のいずれかひとつに記載の地盤注入装置において、原料液圧送ポンプ、駆動装置および制御装置は自走式または牽引式の台車に搭載されていることを特徴とするものである。
【0045】
本発明は、特に自走式または牽引式による移動式とすることにより、機動性と利便性に優れたコンパクトな地盤注入装置を提供するものであり、特に市街地や都心部の地盤改良工事に適している。
【0046】
なお、原料液貯蔵タンクを原料液圧送ポンプより上側に設置すると、起動時ヘッド(水頭圧)を利用して原料液圧送ポンプに給液できるので、自己給水でき、ポンプの起動が円滑にできる。
【0047】
請求項6記載の地盤注入工法は、請求項1〜5のいずれかひとつに記載の地盤注入装置を用いて地盤中に地盤注入材を注入する地盤注入工法において、制御装置によって原料液の選択と各原料液圧送ポンプのピストンのストロークを制御することにより、地盤状況に応じて選択された複数の原料液を設定された配合比率で注入管に送り込むと共に合流させ、かつ注入管を介して地盤中に注入することを特徴とするものである。
【0048】
本発明によれば、原料液の配合、混合および注入を、同一の装置を用い、一連の注入工程として同時に連続して行うことができ、また注入地点の地盤状況や注入状況、地下水状況、さらには周辺環境の変化に応じて原料液の種類、配合比率、ゲル化時間等をリアルタイムで変更することができ、地盤性状の異なる土層毎に、或いは場所ごとに最適配合の地盤注入材を製造しながら注入することができる。
【0049】
また、各原料液圧送ポンプのピストンの1ストロークが全て同じ時間内で完了するように各ピストンを速度制御することにより、各原料液貯蔵タンクから注入管に送り込まれる1ストロークの原料液を同時に送り込むことができ、これにより各圧送ポンプの1ストローク分の原料液を正確に配合することができる。
【0050】
このことから、各ユニットの圧送ポンプの作動容量ごとに正確に配合された地盤注入材を製造して注入することができ、また配合誤差が加算されることがないので設定された最適配合の地盤注入材を地盤に注入することができる。
【0051】
また、各原料液圧送ポンプのピストンの1ストロークが全て同じ時間内で完了するように各ピストンを速度制御することにより、各原料液貯蔵タンクから注入管に送り込まれる1ストロークの原料液を同時に送り込むことができ、これにより各圧送ポンプの1ストローク分の原料液を正確に配合することができる。
【0052】
また特に、水ガラスおよび/またはコロイダルシリカと、硫酸および/またはリン酸、および/または反応剤や微粒子空気と水を原料液としたシリカグラウトを地盤注入する場合、注入地点の注入状況や地盤状況、地下水状況、さらには周辺環境の変化に応じて水ガラス、コロイダルシリカ、硫酸、リン酸、添加材および水を原料液として、或いは懸濁液や微粒子の空気を含む溶液を適宜選択して注入管に送り込むことにより、所望のシリカグラウトを混合しながら地盤中に注入することができる。
【0053】
その際、水の供給を増減することにより、ゲルタイムと強度を増減することができる。また、添加剤としてはすべての反応剤を用いてゲル化時間を調整できるが、アルカリ材として重曹、炭酸ソーダ、苛性ソーダを用いた場合、或いは酸性塩、塩基性塩などを用いてゲル化時間を早めたり遅延させたりすることができる。
【0054】
また、具体的に以下の例に列挙するように、原料液の組成分の種類や添加量、併用比率を変更することができる。
【0055】
(1) 水ガラス、コロイダルシリカまたは水ガラスとコロイダルシリカとの併用、水ガラスと酸を混合した酸性水ガラス、コロイダルシリカと酸を混合した酸性コロイダルシリカ、水ガラス濃度、コロイダルシリカ濃度、水ガラスとコロイダルシリカの併用比率、合計シリカ量の濃度
【0056】
(2) 硫酸、リン酸または硫酸とリン酸との併用、或いはこれらと塩化アルミニウム等の塩化物、硫酸アルミニウム等の硫酸塩の併用、或いはリン酸塩、
硫酸濃度、リン酸濃度、硫酸とリン酸との併用比率やこれらと塩との併用比率、硫酸とリン酸の合計濃度、或いは各種反応剤の種類、濃度、併用比率、使用量
【0057】
(3) セメント、スラグ、セメントとスラグの混合物とこれらの併用比率と合計濃度
【0058】
(4) 添加材の有無、ならびにその添加量の変更
【0059】
(5) 微粒子空気の気泡の有無、ならびにその混入量の変更
本発明によれば、例えば、砂質層などの透水性の大きい地盤に対しては、酸性水ガラスグラウトの酸や酸性塩の配合量を少なくして、或はアルカリ材を配合してゲル化時間を短くすることにより、短時間のうちに固化させて地盤注入材の逸送を防止し、かつ止水性を確保することができ、また連続して硫酸の配合量を多くしてゲル化時間を長くして浸透性を図ることができる。
【0060】
一方、シルト層や粘土層などの透水性の小さい地盤に対しては、酸や酸性塩の配合量を多くしてゲル化時間を長くすることにより、充分な時間をかけて浸透注入を行うことにより地盤の亀裂や脈状注入を防止することができる。
【0061】
また、透水性が小さすぎて脈状注入にならざるを得ない場合は、シリカ濃度を高くするか、あるいは懸濁液を併用する。さらに、既設構造物のRC基礎の支持地盤に対しては、RC基礎の近傍付近では、リン酸やリン酸化合物等、金属イオン封鎖材を添加したシリカ配合液を用いてRC基礎のコンクリート表面にコンクリート保護膜を形成することによりRC基礎を保護することができる。
【0062】
そして、RC基礎より遠い領域では硫酸使用の配合液を用い、その中間領域では、硫酸とリン酸の比率を変動して併用する。
【0063】
水の配合量を減少してシリカ濃度を高くすることにより地盤の支持力を高めることができ、また水の配合量を増加することにより低いシリカ濃度で止水効果と浸透性を高めることができる。
【0064】
さらに、金属イオン封鎖材とコロイダルシリカを配合することにより、RC基礎のコンクリートの中性化を防止してRC基礎の耐久性を高めることができる。
水産生物に影響する注入領域側では、シリカコロイドによる無公害シリカグラウトを用いることができる。
【0065】
また、微粒子空気の添加の有無と添加量の変化等、注入目的や地盤条件に対応して注入液を製造して注入することにより、液状化対策工を経済的に行なうこともできる。
【0066】
また、注入状況、施工条件、環境条件に応じて少なくとも以下のいずれかの事項について変更することができる。
【0067】
(1) ゲル化時間
(2) シリカ濃度
(3) 懸濁液の使用の有無の選定、使用比率、濃度
(4) 硫酸、リン酸および添加材の選定、使用比率および濃度
(5) pH
(6) 配合水の量や比率
(7) 注入領域、注入深度、地下水条件、土質条件、地中構造物、湖、河川、水産生物などの環境条件に対応した配合
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態を示す概念図である。
【図2】図1に図示する実施形態において電動モーターを駆動装置とした原料液圧送ポンプの概念図である。
【図3】本発明の他の実施形態を示す概念図である。
【図4】図2の実施形態においてアクチュエーター駆動装置とした原料液圧送ポンプの概念図である。
【図5】本発明の他の実施形態を示す概念図である。
【図6】図5の実施形態において油圧シリンダーを駆動装置とした原料液圧送ポンプの概念図である。
【図7】本発明の他の実施形態の概念図である。
【図8】本発明の他の実施形態の概念図である。
【図9】図8における注入装置の拡大図である。
【図10】地盤注入材としてシリカゾルグラウトを注入する方法を示し、(a)は透水性の大きい地層と透水性の小さい地層の複数の層からなる地盤に対する注入方法を示す断面図、(b),(c)はRC地下構造物の周辺地盤に注入する方法を示す断面図である。
【図11】シリカグラウトのpH領域と水ガラス濃度とゲル化時間と強度の一般的な関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0069】
図1,2は、本発明の一実施形態を示す概念図であり、図において、符号1a,1b,1c,1d,…1nは、地盤注入材の原料液が貯蔵された原料液貯蔵タンクであり、地盤注入材の原料液がタンクごとに貯蔵されている。
【0070】
例えば、可塑性の地盤注入材の場合、各原料液貯蔵タンク1a,1b,1c,1d,…1nにはそれぞれ水ガラス、シリカコロイド、硫酸、リン酸、添加剤、水などの原料液がタンクごとに貯蔵されている。
【0071】
符号2a,2b,2c,2d,…2nは原料液圧送ポンプであり、原料液貯蔵タンク1a,1b,1c,1d,…1nから送液管4を介してそれぞれ送り込まれる各原料液を、圧送管5を介して注入地点の地盤中に埋設された注入管3に、それぞれ設定された配合比率で送液するための圧送ポンプである。
【0072】
各原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nは、原料液を吸込みおよび吐出するシリンダー6aとピストン6b、さらにピストン6bを作動させる電動モーター7(駆動装置)を備えている。
【0073】
各原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nのピストン6bは、電動モーター7の出力軸(駆動軸)7aの端部にピストンロッド8が繋がれて同一軸線上で対称に一組ずつ設置され、前記ピストン6bが連動して交互に進退作動するようにされている。
【0074】
電動モーター7の駆動軸7aとピストンロッド8は、動力伝達部9を介して接続されている。そして、電動モーター7の駆動力(回転力)は、動力伝達部9を介して出力軸(駆動軸)7aの端部に繋がるピストンロッド8に、ピストン6b,6bをシリンダー6a内で往復動させる力となって伝達され、これにより各ピストン6b,6bがシリンダー6a,6a内で交互に往復動するようになっている。
【0075】
またこれに伴い、各原料液貯蔵タンク1a,1b,1c,1d,…1nから各圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nの各シリンダー6a内に原料液が送液管4を介して吸込まれ、またシリンダー6a内から圧送管5に吐出される。
【0076】
そして、各圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nから延びる圧送管5は注入管3に接続され、注入管3に接続された各圧送管5の管路は、注入管3内を注入管3の下端部に形成された吐出口までそれぞれ連通している。なお、図1,3において、注入管3内の管路は省略されている。
【0077】
これにより、圧送管5を介して注入管3に圧送された各原料液は、注入管3内の各管路を通り、注入管3の下端部に形成された吐出口付近で合流し、地盤注入材として地盤中に圧入される。
【0078】
また、各原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nの電動モーター7はインバーター10によって制御され、これにより各ピストン6b,6bのストロークが制御されて各原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nから注入管3に圧送される各原料液の1ストロークの吐出量が任意に設定され、また任意に変更されるようになっている。
【0079】
さらに、各原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nと電動モーター7は、それぞれ一台ずつで一ユニットの注入装置を構成し、当該ユニットを複数ユニット備え、かつ一ユニットごとに独立して各原料液貯蔵タンク1a,1b,1c,1d,…1nから送液管4を介して原料液を吸引し、そして圧送管5を介して注入管3に送り込めるようになっている。
【0080】
図3,4は、本発明の他の実施形態を示し、特に原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nの駆動装置として電動アクチュエーター11が用いられている。
【0081】
電動アクチュエーター11は、サーボモータによって回転する所定長さのボールスクリューによって往復動する可動部12を備えており、当該可動部12と各原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nのピストンロッド8はブラケット13を介して連結されている。
【0082】
そして、電動アクチュエーター11が駆動することによりピストンロッド8が往復動し、これによって対向位置にあるピストン6b,6bがシリンダー6a,6a内を交互に往復動するようになっている。
【0083】
また、電動アクチュエーター11は回転エンコーダ(図省略)を備えている。そして、制御装置14において設定されたプログラムによって回転エンコーダによるパルス信号を受けて制御され、各原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nのピストン6bのストロークを任意に設定することができ、これにより各圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nのピストン6bの1ストローク、すなわち原料液の吸引量と吐出量を任意に設定できるようになっている。
【0084】
図5,6は、同じく本発明の他の実施形態を示し、特に原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nを駆動する駆動装置として油圧シリンダー15が用いられている。
【0085】
この場合、各原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nのシリンダー6aとピストン6bは、油圧シリンダー15の水平方向の両端部に対称に一組ずつ設置され、かつ両端のピストン6b,6bは連動して作動するように同一軸線上の同じピストンロッド8の両端部に取り付けられている。
【0086】
また、各原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nのピストンロッド8は、油圧シリンダー15のシリンダーロッドと共用され、油圧シリンダー15の駆動力がピストン6bを往復動させる駆動力として直接伝達されるようになっている。
【0087】
符号16と17は、各原料液の切替バルブであり、切替バルブ16は各送液管4に接続され、切替バルブ17は各圧送管5に接続されている。
【0088】
そして、切替バルブ16の開閉によって各原料液貯蔵タンク1a,1b,1c,1d,…1nから各原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nへ送液管4を介して送り込まれる各原料液の供給と停止が制御されるようになっている。
【0089】
また、切替バルブ17の開閉によって各圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nから各注入地点の注入管3に圧送管5を介して送り込まれる原料液の圧送と停止が制御されるようになっている。
【0090】
すなわち、切替バルブ16と17は、原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nと同調し、原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nの一方のピストン6b(例えば図上左側)が対応するシリンダー6a内を後退する間、当該シリンダー6aに繋がる送液管4中の切替バルブ16は開き、圧送管5中の切替バルブ17が閉じる。
【0091】
前記ピストンロッド8に連結する他方(例えば図上右側)のピストン6bが、シリンダー6a内を前進するときには、このシリンダー6aに繋がる送液管4中の切替バルブ16が閉じ、圧送管5中の切替バルブ17が開くようになっている。
【0092】
こうした原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nの各ピストン6bと切替バルブ16,17の動作は、すべて同調して作動するように制御装置14によって一括制御されている。
【0093】
したがって、一軸上に配置されたシリンダー6a,6a内のピストン6b,6bが前進・後退を交互に作動することで、各原料液貯蔵タンク1a,1b,1c,1d,…1nから各原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nの各シリンダー6a内に各タンク内の原料液が送液管4を介して送り込まれ、同時に各原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nの各シリンダー6aから注入管3に各シリンダー内の原料液が圧送管5を介し、注入管3設定された配合比率で連続して圧送され、そして注入管3の吐出口付近で合流し、地盤注入材として地盤中に圧入される。
【0094】
また、途中で配合比率を変更すると、各原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nのピストン6bのストロークと速度が変わり、各原料液貯蔵タンク1a,1b,1c,1d,…1nから注入管3に各原料液が変更後の配合比率で送り込まれる。そして、地盤注入材として注入管3から地盤中に注入される。
【0095】
なお、注入管3に接続された各圧送管5の管路は、注入管3内を注入管3の下端部に形成された吐出口まで連通している。図5において、注入管3内の管路は省略されている。
【0096】
このように構成された原料液貯蔵タンク1a,1b,1c,1d,…1n、原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nおよび電動モーター7等の駆動装置は、枠組された支持フレーム(図省略)内に組み込まれ、かつ自走式または牽引式の台車(図省略)に搭載することにより自由に移動して利用できるようになっている。
【0097】
また、注入地点における地盤状況、地盤注入材の注入状況、さらには周辺環境の変化に応じて最適配合の地盤注入材をリアルタイムで配合、混合し、同時に地盤中に注入できるようになっている。
【0098】
さらに、地盤に対応した原料液の選択、各原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nおよび切替バルブ16,17の動作は、制御装置14からの指令により連動して行えるようになっている。
【0099】
なお、原料液の種類が原料液圧送ポンプの台数よりも多いときは、例えば図7に図示するように、各原料液圧送ポンプまたは一部の原料液圧送ポンプ2nに複数の原料液貯蔵タンク1n,1n,1n,…1nnを送液管4を介して増設し、各送液管4の途中に切替バルブ16a,16b,16c,…16nを接続する。
【0100】
図7は、一部の原料液圧送ポンプ2nに複数の原料液貯蔵タンク1n,1n,1n,1n4,…1nnを増設し、各送液管4の途中に切替バルブ16a,16b,16c,…16nを接続する例を示したものである。
【0101】
各原料液貯蔵タンク1n,1n,1n,1n4…1nnから原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nに原料液を切替バルブ16a,16b,16c,…,16nを介し、任意に選択して送り込むことができる。
【0102】
例えば、原料液貯蔵タンク1nから原料液圧送ポンプ2nに原料液を送り込むときは、切替バルブ16cのみを原料液圧送ポンプ2n側に開放し、他の切替バルブは全て締める。
【0103】
また、原料液貯蔵タンク1nから原料液圧送ポンプ2nに原料液を送り込むときは、切替バルブ16aのみを圧送ポンプ2n側に開放し、他の切替バルブは全て締める。
【0104】
さらに詳述すると、例えば原料液貯蔵タンク1nから原料液圧送ポンプ2nに原料液を送り込むには、図面上、切替バルブ16cのみを原料液圧送ポンプ2nの右のシリンダー6a側に開放し、他の切替バルブ16a,16b,16d,…16nと右側の切替バルブ17を閉じ、ピストン6bを図面上左側に移動させることにより、原料液貯蔵タンク1n内の原料液は右側のシリンダー6a内に吸引される。
【0105】
この動作と並行して、図面上左側の切替バルブ17を開き、ピストン6bを左方向に移動させることにより、左側のシリンダー6a内に吸引されていた原料液は圧送管5を介して注入管3に送り込まれる。
【0106】
一方、左側の切替バルブ17を閉じ、切替バルブ16cを原料液圧送ポンプ2nの右シリンダー6a側に開放し、他の切替バルブを全て閉じてピストン6bを図面上右側に移動させることにより、原料液貯蔵タンク1n内の原料液が左側のシリンダー6a内に吸引される。
【0107】
そして、この動作と並行して、図面上右側の切替バルブ17を開き、ピストン6bを右方向に移動させることにより右側のシリンダー6a内に吸引されていた原料液は圧送管5を介して注入管3に送り込まれる。
【0108】
このようにすることで、原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nの設置台数以上の多種の原料液を組み合わせて地盤注入材を混合し、同時に注入することができる。
【0109】
制御装置14は、原料液の選択、組合せ、変更、各原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nの駆動や切替バルブ16,17の作動を個別に制御するだけでなく、これらを同調させながら作動させ、各ユニットの圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nのピストン6bのストロークが異なっても全ユニットが所定時間内で作動するようにして全体を一括管理できるようになっている。また、制御装置14は、これらを電気信号の回路によって情報の受け取り指示、データの集積や表示を行って一括管理する。
【0110】
このような構成において、次に、図1,2に図示する地盤注入装置を用い、地盤注入材としてシリカゾルグラウトを注入する地盤注入工法について説明する。
【0111】
(1) 最初に、各原料液貯蔵タンク1a,1b,1c,1d,…1n内にそれぞれ水ガラス、硫酸、リン酸、添加剤、水などのシリカゾルグラウトを製造するための原料液を投入する。
【0112】
(2) 次に、シリカゾルグラウトの配合比率を制御装置14において設定する。配合比率の設定に際しては、たとえば、図10(a)に図示するような透水性の大きい砂質層イと透水性の小さい粘土層やシルト層ロなどの複数の地層からなる地盤を地盤改良する場合は、砂質層イに対しては、短時間で固化して止水性を保持するように硫酸の配合量を多くしてゲル化時間を短くし、シルト層や粘土層ロに対しては、充分な時間をかけて浸透注入を行えるように硫酸の配合量を少なくしてゲル化時間を長くする。
【0113】
以上は、図11で水ガラスをアルカリ領域で注入する場合であるが、酸性領域で注入する場合は、硫酸配合量を多くするとpHの酸性度が強くなり、ゲルタイムが長くなり、硫酸配合量を少なくするとpHが中性に近くなりゲルタイムが短くなる。
【0114】
したがって、土層が変わる毎に水ガラスと酸のそれぞれを送液するピストンの速度やストロークを制御することにより注入液の配合比率を変更して最適のシリカ濃度ゲルタイムの配合液を連続して注入することができる。
【0115】
また、砂質層イとシルト層ロにシリカゾルグラウトを注入する注入管3は、砂質層イとシルト層ロにそれぞれ所定間隔おきに複数挿入し、各層ごとに最適配合のシリカゾルグラウトとなるように各原料液を注入管3に圧送し、そして注入管3の吐出口付近において合流させ、シリカゾルグラウトとして注入する。
【0116】
また、図10(b),(c)に図示するような既設構造物のRC構造の基礎ハの周辺や、地下共同溝などのRC地下構造物ニの周辺の地盤を地盤改良する場合は、これらのRC構造物に近い範囲の地盤ホに対しては、特に水ガラスの配合量を多くして地盤の耐久性を高め、構造物から遠ざかるにつれて水ガラスの配合量を徐々に少なくして経済性を図ることができる。
【0117】
また特に、コロイダルシリカを併用したり、あるいはリン酸やリン酸化合物、金属イオン封鎖材を配合することによりコンクリートの中性化を防止することができる。さらに、これらの配合処方の設定は注入と並行して行うことにより、きわめて効率的に注入することができる。
【0118】
(3) 次に、原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nの電動モーター7を作動させる。そうすると、各圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nのピストン6bがそれぞれシリンダー6b内で交互に往復動し、これに同調してそれぞれに繋がる管路中の切替バルブ16,16と17,17が交互に開閉する。
【0119】
これにより、原料液貯蔵タンク1a,1b,1c,1d,…1n内の水ガラス、硫酸、添加剤、水は、配合処方された配合比に基いてそれぞれ送液管4を介して圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nのシリンダー6a内に吸込まれ、さらに各シリンダー6aから注入管3に圧送管5を介して連続的に送り込まれる。
【0120】
この場合、各原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nにおいて、一方のピストン6bがシリンダー6a内を前進することによりシリンダー6a内に吸込まれていた原料液を注入管3側に圧送し、同時に他方のピストン6bがシリンダー6a内を後退することによりシリンダー6a内に原料液を吸引することで、各原料液貯蔵タンク1a,1b,1c,1d,…1nから注入管3に原料液を連続的に送り込むことができる。
【0121】
またその際、水ガラス、硫酸、添加剤、水の配合処方を変更することにより、各原料液は変更後の配合比率で注入管3に送り込むことができる。
【0122】
(4) そして、注入管3に送り込まれた水ガラス、硫酸、添加剤、水は注入管3内で合流し、所望のシリカゾルグラウトとして地盤中に圧入される。
【0123】
図8と図9は、本発明の他の実施形態を示し、図において、符号18は、複数の注入地点に一定間隔おきに埋設された注入管、19は各注入地点の間に格子目状に敷設され、各注入管18どうしを縦横に接続する圧送管、20は各注入地点に圧送管19を介して原料液を圧送すると共に、各注入地点の地盤中に注入管18を介して原料液を注入する原料液注入装置、そして、符号21は圧送管19の各注入地点に位置する部分にそれぞれ接続され、各注入地点に圧送される原料液の流路を切り替えるための流路切替バルブである。
【0124】
原料液注入装置20は、図9に図示するように地盤注入材の原料液を個別に貯蔵する複数の原料液貯蔵タンク1a,1b,1c,1d,…1nと、各原料液貯蔵タンク1a,1b,1c,1d,…1nからそれぞれ送液管4を介して送り込まれる複数の原料液を各注入地点の注入管18に圧送管19を介し、設定された配合比率で送り込み、かつ注入管18を介して注入地点の地盤中に注入する原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nを備えている。
【0125】
各原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nは、原料液を吸込みおよび吐出するシリンダー6aとピストン6b、ピストン6bを作動させる駆動装置、例えば電動モーター7、さらに電動モーター7を制御するインバーター10を備えている。
【0126】
また、各原料液貯蔵タンク1a,1b,1c,1d,…1nと各原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nのシリンダー6aは送液管4を介して接続され、圧送管19は各原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nのシリンダー6aに接続されている。
【0127】
さらに、注入管18に接続された各圧送管19の管路は、注入管18内を注入管18の下端部に形成された吐出口まで連通している。なお、図9において、注入管18内の管路は省略されている。
【0128】
そして、送液管4と圧送管19に切替バルブ16と17がそれぞれ接続されている。
【0129】
このような構成において、各原料液注入装置20の原料液圧送ポンプ2a,2b,2c,2d,…2nのシリンダー6aとピストン6b、切替バルブ16と17は、制御装置14によって制御されて図1,2に図示する実施形態で説明したように作動する。
【0130】
すなわち、各原料液貯蔵タンク1a,1b,1c,1d,…1n内に貯蔵された各原料液は、送液管4を介して各原料液圧送ポンプの2a,2b,2c,2d,…2nのシリンダー6a内に送り込まれ、圧送管19を介して各注入地点の注入管18に設定された配合比率で圧送される。
【0131】
そして、各注入地点の注入管18に圧送された各原料液は、注入管18内の各管路を通り、注入管18の下端部に形成された吐出口付近で合流し、各注入地点の地盤中に圧入される。
【0132】
またその際、各注入地点の流路切替バルブ21が制御装置14によって制御され、これにより原料液の流路が必要に応じて切り替えられ、最短の流路を介して各注入地点に圧送される。
【0133】
本発明によれば、複数の注入地点に対して地盤注入材の製造と注入を一連の注入工程として連続して同時に行うことができ、また注入地点毎に地盤状況や注入状況、地下水状況、さらには周辺環境の変化に応じて原料液の種類や配合比率、ゲル化時間などを注入中にリアルタイムで任意に変更することができる。
【0134】
また、原料液注入装置20から各注入地点に圧送される原料液の流路を切り替えるための流路切替バルブ21を備えていることにより、注入地点に原料液を圧送するための流路を任意に選択して、原料液の圧送と注入をきわめて効率的に行うことができる。さらに、一部の原料液注入装置20がトラブルやメンテナンス等の理由により稼動できない場合でも他の原料液注入装置によって対応することができる。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、地盤注入材の配合、混合および注入を同一の装置により、一連の工程として同時に連続して行うことができ、また注入地点の地盤状況や注入状況、地下水状況、さらには周辺環境の変化に応じて原料液の種類や配合比率、ゲル化時間などを注入中にリアルタイムで任意に変更することができる。
【符号の説明】
【0136】
1a,1b,1c,1d,…1n 原料液貯蔵タンク
1n,1n,1n,…1nn 原料液貯蔵タンク
2a,2b,2c,2d,…2n 原料液圧送ポンプ
3 注入管
4 送液管
5 圧送管
6a シリンダー
6b ピストン
7 電動モーター(駆動装置)
8 ピストンロッド
9 動力伝達部
10 インバーター
11 電動アクチュエーター(駆動装置)
12 可動部
13 ブラケット
14 制御装置
15 油圧シリンダー(駆動装置)
16 切替バルブ
17 切替バルブ
18 注入管
19 圧送管
20 原料液注入装置
21 流路切替バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の原料液を合流させ、注入管を介して地盤中に注入する地盤注入装置において、複数の原料液が個別に貯蔵された複数の原料液貯蔵タンクと、注入地点の地盤中に埋設された注入管と、各原料液貯蔵タンクから注入管に地盤の状況に応じた原料液を選択して送り込み、かつ注入管を介して地盤中に注入する複数の原料液圧送ポンプと、当該原料液圧送ポンプを駆動する複数の駆動装置を備え、前記原料液圧送ポンプと駆動装置はそれぞれ一台ずつで一ユニットを構成し、当該ユニットを複数ユニット備え、かつ当該複数のユニットは制御装置によって一括および/または個々に制御され、前記原料液圧送ポンプは原料液を吸引および吐出するシリンダーとピストンをそれぞれ備え、かつ前記原料液の配合、混合および注入を同時に連続して行えるように構成されていることを特徴とする地盤注入装置。
【請求項2】
複数の原料液を合流させ、注入管を介して地盤中に注入する地盤注入装置において、複数の注入地点に埋設された複数の注入管と、各注入地点の注入管どうしを接続する圧送管と、各注入地点の注入管に圧送管を介してそれぞれ接続された複数の原料液注入装置と、前記圧送管に接続され、注入管に圧送される原料液の流路を切り替える複数の流路切替バルブとを備え、前記原料液注入装置は複数の原料液が個別に貯蔵された複数の原料液貯蔵タンクと、各原料液貯蔵タンクから各注入地点の注入管に地盤の状況に応じた原料液を選択して送り込み、かつ注入管を介して地盤中に注入する複数の原料液圧送ポンプと、当該原料液圧送ポンプを駆動する複数の駆動装置を備え、前記原料液圧送ポンプと駆動装置はそれぞれ一台ずつで一ユニットを構成し、当該ユニットを複数ユニット備え、かつ当該複数のユニットは制御装置によって一括および/または個々に制御され、前記原料液圧送ポンプは原料液を吸引および吐出するシリンダーとピストンをそれぞれ備え、かつ前記原料液の配合、混合よび注入を同時に連続して行えるように構成されていることを特徴とする地盤注入装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の地盤注入装置において、注入管を介して地盤中に吐出される地盤注入材の流量および/または圧力を検出する流量・圧力検出器を備えていることを特徴とする地盤注入装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかひとつに記載の地盤注入装置において、原料液圧送ポンプは、駆動装置を挟んでその両側の同一軸上に対向して設置された一組のシリンダーと、ピストンロッドに連動して前記シリンダー内を往復動する一組のピストンを備えて構成されていることを特徴とする地盤注入装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかひとつに記載の地盤注入装置において、原料液圧送ポンプ、駆動装置および制御装置は自走式または牽引式の台車に搭載されていることを特徴とする地盤注入装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかひとつに記載の地盤注入装置を用いて地盤中に地盤注入材を注入する地盤注入工法において、制御装置によって原料液の選択と、各原料液圧送ポンプのピストンのストロークを制御することにより、地盤状況に応じて選択された複数の原料液を設定された配合比率で注入管に送り込むと共に合流させ、かつ注入管を介して地盤中に注入することを特徴とする地盤注入工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−47424(P2013−47424A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186310(P2011−186310)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【特許番号】特許第5017488号(P5017488)
【特許公報発行日】平成24年9月5日(2012.9.5)
【出願人】(509023447)強化土株式会社 (31)
【出願人】(000162652)強化土エンジニヤリング株式会社 (116)
【出願人】(592072920)平成テクノス株式会社 (7)
【Fターム(参考)】